説明

半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法

半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法であって、その方法は、半導体デバイスを提供する工程(S1)であって、半導体デバイスは半導体デバイスの空洞と半導体デバイスの外部表面との間に連続的に配置される半導体酸化物区域を含む工程と、半導体デバイスを、第1の温度で所定の時間の間、希ガスを有する周囲雰囲気に曝露する工程(S3)と、その所定の時間が経過した後、第1の温度と異なる第2の温度を設定する工程(S5)とを含み、半導体酸化物区域は、第2の温度に比べて第1の温度で希ガスに対してより高い透過率を示す、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスから派生した方法を用いて、例えば、シリコンで作られたマイクロ共振器、振動センサ、振動ジャイロスコープおよびマイクロエレクトロメカニカルシステムを、低コストで大量に製造することができる。構成部品の寸法が小さいため、これらの振動子は、真空中で動作しなければならない。共振器の場合、空洞内の圧力は、通常、約1×10-2パスカルから約1×102パスカルの範囲内にある。
【0003】
個々のデバイスに基づく密閉ハウジング技術は比較的高価であり、その上、シリコンウエハのソーイング時に既にデバイスを保護しておく必要があるので、ウエハレベルで早くも共振器をカプセル化することが広範囲に行われている。この場合、デバイスを含むウエハに、表面にそれぞれの窪みを配置した第2のシリコンウエハを提供し、この第2のシリコンウエハは、最終的に真空下で密閉した形で第1のウエハに接合される。さまざまな方法が、用いられる相互接続技術として考慮され、一方で、ウエハをガラスまたは金属ハンダを用いて接続してもよく、他方で、ウエハを陽極接合によって密閉してもよい。
【0004】
実際の接合の前に、ウエハは調節されクランプ内に固定される。ウエハ間の薄いスペーサによって、ウエハが互いに直接接触しないことを確保する。クランプ配置を導入したら、ウエハの周りとウエハ間との空間を排気し、加熱板を用いて上部ウエハと下部ウエハとを加熱した後、ウエハ表面を(スペーサを除去してから)互いに接触し、最終的に実際の接合を実行する。
【0005】
用いられるスペーサの厚さは、50μmから500μmの範囲内にある。しかしながら、ウエハ間の距離は、既に、近似的に1×102パスカル未満の圧力でのガス分子の平均自由行程に対応する寸法の範囲内にあり、そのため、ウエハ間の空間内のガスの挙動は、主として拡散プロセスによって支配される結果、明らかに、ガスを除去することは、より難しく、より時間を要するようになる。
【0006】
ウエハ間の距離が小さく、半導体デバイス、例えばセンサの内部の空洞内の内部体積と内部表面積との間の比が比較的好ましくないので、1×102パスカルより明らかに低い内圧を実現することができるように、ウエハを接続するのは、経験上、難しい。
【0007】
ウエハ間の表面のガス抜けが比較的遅いため、ウエハ上に配置された半導体デバイスのさまざまな空洞内の設定圧力が一定でないことが、この状況を悪化する。半導体デバイスの空洞は、ウエハ端ではしばしば明らかに1×102パスカル未満の圧力に達するが、ウエハ内のもっと内側に配置されたさまざまな空洞内で得られる真空は、ほとんどがこれより明らかに劣る。したがって、接合の前のウエハの排気時に圧力分布が発生し、前記圧力分布の最小値はウエハ端に位置し、最大値はウエハ中心に位置する。上部ウエハまたは下部ウエハの中に破損点を導入しても、ウエハは、接合時に上部加熱板および下部加熱板とそれぞれ接触するので、利点とはならない。
【0008】
結局、プロセス期間内に、ウエハ全体にわたって、大量生産に適する均一性で、空洞内の低い内圧を実現するには、センサ空洞内にゲッタ材料を追加するしかない。ゲッタ材料を追加すると、実際の接合プロセスの間または後に別の活性化が必要になり、この追加の活性化によって、接合プロセスの時間は伸びるが、ゲッタを用いるだけで、1×10-2パスカルから1×102パスカルの範囲の真空を確保することができる。ゲッタを利用することは、通常想定される少なくとも10年から15年の寿命のためにも、絶対に省くことはできない。
【0009】
しかしながら、真空を確保にしても、半導体デバイス、例えばセンサの内部の空洞の真空カプセル化の全問題は表面的にしか解決されない。実際には、共鳴作動センサなど、空洞を有する半導体デバイスは、空洞内の臨界圧力値未満の真空を必要とするだけでなく、一定の圧力範囲内の真空が必要である。すなわち、空洞内の圧力を所望の圧力範囲内にするか、または維持するために、ゲッタ材料によって吸収されないガス、通常は希ガスを加える必要がある。
【0010】
しかしながら、ウエハ間の距離が小さく、したがって、拡散挙動を特徴とする圧力領域が存在するので、ガスを導入することは、排気だけによって真空を実現しようとした従来の試みと同じように、難しくおよび/または問題がある。特に、ウエハ全体にわたるセンサまたは半導体デバイスの空洞内の内圧の分布の実現可能な一様性は、デバイスの必要な機能に不十分であることが証明されている。
【0011】
窒素とある比率のアルゴンなどの希ガスとからなるガス混合物を使用することによって、改善を実現することができる。すなわち、接合の直前に、ウエハが約5×102パスカルの圧力に曝露される。高めの圧力を利用すると、この圧力領域では、ガスの挙動はもはや拡散プロセスだけによって支配されないので、ウエハ間でも速めの圧力補償が可能になる。接合の後、ゲッタは残存窒素を吸収するが、希ガスは空洞またはセンサ空洞内に残る。
【0012】
内圧を空洞内に形成する上述の方法で実現される結果は、ウエハを接合する前に、所定の圧力を環境内に設定することによって、複数の半導体デバイス間の圧力分布または内圧分布の改善を生じるが、実現された結果は、このように実現されたデバイスの正しい機能にはまだ十分ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、努力を必要とせず、および/または、効率的であり、特に、多数の半導体デバイスにおいてより均一な内圧分布を可能にする、半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に記載の方法によって実現される。
【0015】
本発明は、半導体デバイスの空洞と外部表面との間に、SiO2で作られているものなどの半導体酸化物区域を含む半導体デバイスでは、半導体酸化物区域を、所定の内圧を実現するように特定の希ガスを通過するためのある種のバルブとして用いることができるという知見に基づいている。特に、本発明の知見は、半導体酸化物区域が希ガスに対して浸透性または透過性である、および/または、バルブが開いている、第1の温度でデバイスを希ガス雰囲気に曝露してから、半導体酸化物区域が希ガスに対して低浸透性または不浸透性、または、低透過性または不透過性である、および/または、バルブが閉じている、例えば、半導体デバイスの目標利用温度範囲内、すなわち、許容動作温度にある、別の温度に再設定することで、所定の内圧を実現することができるということである。希ガス周囲雰囲気ならびに曝露時間を適当に設定することによって、後で所望の圧力が空洞内に生じるように、半導体酸化物区域を通る半導体デバイスの空洞中への希ガス原子の導入を制御することができる。
【0016】
所定の内圧を形成する本発明の方法の利点は、その方法が、空洞が既に形成された状態に基づく点である。その結果、その方法は、ウエハレベルと、既に切り離されたチップ上および/またはチップレベルとの両方で実行することができる。
【0017】
本発明のさらなる利点は、希ガス雰囲気の圧力を所望の内圧より高くしてもよく、好ましくは高くし、これによって、例えば、ウエハ上に配置することができる非常に多数の半導体デバイス全体にわたって、非常に一様な内圧の設定を実現することができる点である。言い換えると、ウエハ上に配置された半導体デバイスを、すべてネオンで一様に囲むことができる。このようにして、半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する本発明の方法は、高度に制御可能である。同時に、これによって、空洞内の内圧を所定の値に非常に効率的に設定することが可能になる。
【0018】
本発明の1つの実施の態様で配置される、例えば、ウエハ上の複数のデバイス全体にわたる内圧の分布が一様であるほど、高い比率のデバイスがデバイスの利用について指定された範囲内にある電気的機能を示す結果となる。したがって、歩留りは高くなり、空洞内の内圧が従来の方法によって設定されるデバイスと比較すると、製造コストが必然的に低下する。
【0019】
さらに、本発明は、例えば、デバイスも配置されているプロセスチャンバの中に、希ガスを導入することによって、半導体デバイスの希ガス雰囲気への曝露を、非常に繊細な漏れ試験として用いる可能性を提供する。欠陥接合を示すチップは、希ガス雰囲気、または超過圧力に曝露されると、実際に、明らかに内圧が高くなりすぎる。このようにして、欠陥接合を示すチップは、続く試験方法で非常に迅速に見分けることができる。もちろん、ウエハレベルのデバイスにも同じことが当てはまる。
【0020】
全体として、本発明の方法では、チップレベルとウエハレベルとの両方で、または、ウエハバッチ内でも、半導体デバイスの空洞内の内圧を設定することができる。したがって、この方法は、非常に高いレベルの柔軟性を示す。
【0021】
半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成するその方法のさらなる利点は、本発明の1つの実施の態様で使用されるゲッタには新たな負担がない点である。ゲッタは、希ガスを吸収しないように実施することができる。さらに、半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成するその方法は、ゲッタを活性化することと組み合わせることができる。この状況で特に有利なことは、曝露時に、温度および露出時間を、ゲッタが活性化されるように設定することができる点である。所定の内圧は、第1の周囲雰囲気状態の中で自然に定まり、同時に、ゲッタは、空洞内の望ましくないガス原子を除去する。したがって、空洞内の内圧が所定の値を有することになる半導体デバイスを非常に効率的に製造することができる。
【0022】
本発明の好適な実施の形態が添付図面を参照して以下により詳細に説明されるが、これらの図面としては:
図1は、本発明の実施の態様による方法を使用することができる空洞を有する半導体デバイスを示し、
図2は、本発明の実施の態様による半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法を示し、
図3は、二酸化シリコンを通るさまざまなガスの透過に対する透過率の値のグラフを示し、
図4は、部分的に異なる差圧の場合の二酸化シリコン層を通るさまざまな希ガスの透過に対する透過率の値のグラフを示し、
図5Aおよび図5Bは、ヘリウムによる超過圧力試験の前後の特定量のマイクロセンサの品質係数の分布の比較表現を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、所定の内圧が内部に形成される空洞を有し、それを目的として本発明の実施の態様による方法を用いることができる、半導体デバイスを示す。
【0024】
図1は、その上に適用された多結晶シリコンで作られた構造化層3を有する基板2を示し、構造化層3は、その上に配置された構造物を有し、構造物は、二酸化シリコンで作られた区域5、多結晶シリコンで作られたものなどの導電層15、およびエピタクティック多結晶シリコン層などの構造化層6を含む。この配置は、上に配置されカバーとして働く基板9を有し、基板9は、基板2に対向する側に析出された構造化シリコン酸化物層4を有し、構造化シリコン酸化物層4の上には、金などのボンドメタル7が析出される。カバー9は、ボンドメタル7を介して、基板2を含む下部配置に機械的に接続される。下記の考察によって明らかになるように、基板2、二酸化シリコン層4および5、区域7、多結晶シリコン層6、ならびにカバー9によって多少、密閉された空洞10が形成されるように、ボンドメタルおよび/またはボンド区域からなる区域7が横方向に配置される。
【0025】
空洞10内で、多結晶シリコン層6内に、例えば、振動または共鳴構造などのマイクロメカニカル構造を定める多結晶シリコン区域11が形成される。空洞10内で、すなわち空洞の内部に、基板2に対向するカバー9の表面の上に、ゲッタ13が配置される。
【0026】
図1は、例として、多結晶シリコン区域11の平均的な1つを示し、それは、層3の上に配置された導電層15の上に配置され、したがって、導電層15と接触し、および/または、ある電位にすることができ、一方、この平均区域における部分は、層15の別の導電性部分の上に浮揚して延び、そのため、層15の後者部分と平均シリコン区域11との間に電圧を印加することによって、機械的な曲げまたは振動運動を引き起こすことができるようになっている。
【0027】
空洞10を囲む配置の外側に、アルミニウムパッドなど、2つの端子パッド17が配置される。2つのアルミニウムパッド17の一方は、基板2と電気的に結合され、他方のアルミニウムパッド17は、導電層15を介して、平均区域11のカンチレバーの自由可動端からギャップによって離間した多結晶シリコン区域11のさらに別の1つに電気的に結合され、そのため、例えば、2つの隣接する区域の間の電位差を設定することによって共振周波数を微調整するように働く。
【0028】
図から分るように、4および5において、図に示した半導体デバイスの空洞10と外部18との間に、二酸化シリコンの連続路が延びる。空洞10内に所望の内圧を設定する以下に説明する方法では、ここで、この連続路と二酸化シリコンの性質とを使用し、その性質とは、二酸化シリコンが、ある種の状況では他の状況に比べて半導体デバイスの環境18中に存在する希ガスに対してより高い透過率を有するということからなる。
【0029】
図1を参照すると、図1の半導体デバイスの提供または製造では、複数のそのようなデバイスが一緒に形成されることは自明である。例えば、ウエハ2の上の複数の区域に、上述した構造3、5、6が形成される。その後、さらに別のウエハの上に配置された状態の複数のカバー9が、結果として空洞10が形成されるように、これらの構造に接合される。接合が起こる圧力は、例えば、要求され、以下に説明する方法によって次に設定される圧力より小さい。以下の方法は、分離状態の個別のデバイスに、すなわち、デバイスチップに、すなわち個別にまたはグループで、あるいは、カバー9とともに提供された状態のウエハ2に適用することができる。
【0030】
以下で、図2は、図1に示した半導体デバイスの内部の空洞10内に所定のまたは所望の内圧を形成する方法を例示する。
【0031】
工程S1では、例えば、図1に示され、説明された半導体デバイスが提供される。
【0032】
続いて、半導体デバイスは、工程S3において、ネオンが二酸化シリコンを通って拡散することができる第1の温度で、所定の時間の間、周囲ネオン雰囲気に曝露される。このために、デバイスは、例えば、プロセスチャンバの中に入れられ、半導体デバイスが少なくともネオンガスを含む周囲雰囲気の中に存在するように、プロセスチャンバの中にネオンが導入される。曝露時に、チャンバ内の周囲雰囲気の温度、または周囲温度は、例えば、200℃から700℃の間の値、好ましく300℃から400℃の間の値に設定される。曝露時のプロセスチャンバ内の圧力は、例えば、2×105パスカルから20×105パスカルの間の値、好ましくは3×105パスカルから7×105パスカルの範囲内の値、特に好ましくは4×105パスカルに設定される。このように設定されたチャンバ内の温度および圧力をある時間維持し、デバイスは、このように設定されたネオン雰囲気中に置かれる。この時間の間に、曝露されたデバイスの外部表面と空洞の内部との間の二酸化シリコン中に延びる上述の連続路を通って空洞の中にネオンが入りまたは拡散し、拡散速度は、デバイス空洞内の内圧とプロセスチャンバ内の圧力との間の差に依存する。これが、曝露時間とチャンバ圧力とを適当に選択することによって、所望の内圧を設定することができる理由である。暴露時間は、例えば、30分間から240分間の範囲内にある。
【0033】
状況によって、曝露S3の間のプロセスチャンバ内の周囲ネオン温度全体を上述の透過温度に設定する必要がない可能性があることは自明である。むしろ、例えば、この目的のために特に提供することができ、空洞の内部と外部との間の二酸化シリコン内に延びる連続路に沿ってそれから短い距離で延びる抵抗線によるなど、二酸化シリコンのまたは二酸化シリコンでの局部加温を実行することも可能である。
【0034】
言い換えると、半導体デバイスの空洞10内に内圧を形成する。この内圧は、プロセスチャンバ内に位置するネオンの粒子、すなわち原子が、二酸化シリコン層4、5を通って空洞10の中に拡散するという事実によって生じる。この場合、プロセスチャンバ内に設定されたネオンのための条件下では、目標利用範囲と比べて、または通常120℃を超えない半導体デバイスの許容動作条件下と比べて、より高い透過率を有するという二酸化シリコン層4、5の性質を利用する。
【0035】
続いて、工程S5において、曝露S3が終了され、および/または、温度が透過温度から、二酸化シリコンを通るネオンの拡散が起こらないより低い温度に再設定される。これは、例えば、単に、所定の時間が経過したらプロセスチャンバから半導体デバイスを取り出すことによって実行される。プロセスチャンバの外の標準状態下では、温度はより低く、そのため、ネオンに対する二酸化シリコン層4、5の透過率は、周囲雰囲気状態中またはプロセスチャンバ内に設定された周囲雰囲気の条件下でより著しく低いか、またはほぼゼロである。したがって、半導体デバイスのプロセス処理時に空洞10に入ったネオン原子は、目標利用範囲の条件下では空洞10の中に残り、これによって、空洞10内のネオン原子の濃度に依存する内圧は、目標利用範囲の条件下では、半導体デバイスの寿命にわたってほぼ一定のままである。
【0036】
工程S5の後、空洞は、例えば、パッキング工程との関連で、カプセル化材料によって、最終的に密閉される。詳しくは、カプセル化材料は、例えば、二酸化シリコンの露出された場所を被覆し、その結果、二酸化シリコン内の空洞の内部と外部との間の連続路を完全に防ぐことができる。
【0037】
例えば、ネオン圧力4×105パスカル、ネオン温度300℃、および曝露および/または実効期間60分間で本発明の半導体デバイスのプロセス処理を実行した後、空洞内の内圧を測定すると、空洞10内に存在する内圧は、約10パスカルの値であった。
【0038】
本発明の上述の実施の態様では、ネオンに対する二酸化シリコンの透過率が利用された。しかしながら、類似の拡散効果、または温度による透過率の変動は、希ガスと半導体酸化物の他の組み合わせでも確認することができる。ネオンと二酸化シリコンとの組合せの場合、曝露時の透過率は、基準としての標準状態、または許容動作温度範囲、または例えば85℃におけるよりも、好ましくは500倍から5000倍の範囲で高い。
【0039】
本発明の上述の実施の態様では、約300℃の範囲内の温度が好ましい。しかしながら、ネオンの原子が二酸化シリコン層4、5を透過することができる任意の温度がプロセスチャンバ内に設定されてもよい。
【0040】
本発明の上述の実施の態様では、基板2、カバー9およびそれらの上に配置される層は、メタルボンド7を介して機械的に相互接続される。しかしながら、それらの代替としては、シリコンボンドまたは二酸化シリコンボンド、あるいはガラスまたは金属ハンダによるジョイントなどの任意の接続がある。
【0041】
本発明の上述の実施の態様では、プロセスチャンバ内の4×105パスカルの圧力が好ましいが、ネオンガスの原子が二酸化シリコン層を透過し、そのため半導体デバイスの環境から空洞10に入ることができる任意の圧力を環境内に設定してもよい。
【0042】
先の述べた本発明の実施の態様による試みでは、半導体デバイスは、上述の条件下で約1時間の間、プロセスチャンバ内でプロセス処理される。しかしながら、空洞10内の圧力を所定の値に設定する際、任意の時間が可能である。この状況では、プロセスチャンバ内に設定される周囲雰囲気のその条件下で半導体デバイスがプロセス処理される間の時間または期間は、好ましくは20分間から20時間の範囲内に、より好ましくは約1時間の範囲内にある。
【0043】
上記の本発明による方法の例では、半導体デバイスの内部の空洞10内に10パスカルの内圧が設定された。しかしながら、本方法を用いて、半導体デバイスのプロセス処理時のプロセスチャンバ内の支配的圧力より低い、任意の内圧が空洞10内に設定されてもよい。しかしながら、0.01パスカルから100パスカルの範囲内、より好ましくは約10パスカルの範囲内の内圧が設定される。
【0044】
本発明の上述の実施の態様では、ネオンは、図1に示した二酸化シリコン層を通って半導体デバイスの空洞10に入る。しかしながら、代わりに、半導体デバイスの空洞10と周囲との間に、プロセスチャンバ内でのプロセス処理時に、希ガスに対して目標値範囲の周囲条件下より高い透過率を示す任意の半導体酸化物層が配置されてもよい。
【0045】
本発明の上述の実施の態様では、半導体デバイスは、例えば、カプセル化されたマイクロ共振器またはカプセル化された振動ジャイロスコープであるが、空洞を有する任意の半導体デバイスが代わりとなるものである。
【0046】
プロセスチャンバ内での半導体デバイスのプロセス処理時に、例えば、図1のゲッタ13のゲッタ活性化を同時に実行すると、有利である。ゲッタ活性化には、例えば、30分間にわたる350℃の実効温度が必要である。ゲッタ13は、好ましくは、ジルコニウムおよび/またはチタンを含み、空洞10内に位置するガス原子を吸収する層である。好ましくは、プロセス時に空洞10に入るネオンガス原子は、ゲッタ13によって吸収されない。これによって、図2に示した本発明の実施の態様による方法が実行されると、主にネオンガス原子が空洞10内に見いだされる結果となる。したがって、空洞10内の内圧を、所定の値に効率的に設定することができる。
【0047】
図2に示した本発明の実施の態様による方法では、例えば、センサなどの半導体デバイスの空洞10内の内圧を微調整または設定するために、ネオンの性質が利用される。これは、好ましくは、半導体デバイスの接合の後、および/または半導体デバイスを分離した後でも、実行することができる。半導体デバイスの接合とは、例えば、図1の場合のように、金5とシリコン6とを接続するか、または基板2を含む材料構造および/またはカバー9を含む材料構造の上にそれぞれ配置された2つのボンドメタルを溶融することによって、カバー9とその上に配置された層とがある製造工程を意味すると理解され、特に、本発明によって、結果として空洞10が生じ、空洞10と外部との間に半導体酸化物区域が途切れずに延びる。
【0048】
図2に示した方法について、特に有利な点は、接合の後に半導体デバイスを自由に利用できることである。すなわち、内圧の設定時に、ウエハ上のすべての側に空洞10を有する半導体デバイスの周りに、ネオンガスを流し、それによって、半導体デバイスをウエハ上に配置すると、非一様性を回避することができる。
【0049】
図3は、二酸化シリコンに対する4×105パスカルでのHならびに希ガスHeおよびNeの透過率の値の温度依存性を例示する。x軸上に温度をケルビン単位で線形プロットし、y軸上に透過率をm3Pa/秒単位で対数プロットする。曲線19がネオンの透過率の変化、曲線21が水素の透過率の変化、曲線23がヘリウムの透過率の変化を、それぞれの場合に4×105パスカルの周囲圧力で示す。この状況では、透過率は、それぞれのガスが、例えば、図1に示した半導体デバイスの空洞10にどの程度の速さで入ることができるか、または拡散することができるかを示す尺度である。
【0050】
図に示したすべてのガスの透過率は温度に依存し、半導体デバイスの温度、すなわち周囲温度が増加すると、指数的に増加する。図3は、ヘリウムが水素より高い透過率を示し、水素はネオンより高い透過率を有することも示している。温度の増加に伴う透過率の増加に起因して、ネオンは(図4参照)、約330℃の温度で、ヘリウムが室温で到達するのと同じ値に達する。図3に示した曲線の特性は、ヘリウムがネオンの速度より約5000倍高い速度で空洞10の中に拡散することも示している。
【0051】
より詳細に条件を解析すると、300℃〜400℃でネオンの透過は十分に大きく、比較的短い時間、好ましくは数時間内に圧力を設定することができるが、一方、室温の範囲内の透過は、測定することができないほどであり、例えば、10パスカル〜40パスカルの想定内圧で10年から15年の期間にわたっても感知できるほどのネオンの損失を完全に回避するのに十分なほど小さいことが明らかである。
【0052】
図4は、チャンバと空洞の内部との間のさまざまな差圧での半導体デバイスの二酸化シリコン部分に対するネオンおよびヘリウムの透過率値の温度依存性を例示する。図4に示したグラフのx軸上に温度値を線形目盛りでプロットし、y軸上に透過率値を対数目盛りでプロットする。曲線特性25は圧力差4×10パスカルでのネオンの透過率の例を示し、一方、曲線特性27は圧力差1×105パスカルでのネオンの透過率を示す。曲線特性29は、圧力差1×105パスカルでのヘリウムの透過率を表す。
【0053】
透過率は、差圧に依存すること、すなわち、特定の温度で、差圧が1×105パスカルのネオンの透過率は、差圧が4×10パスカルの透過率より著しく高いことが分かる。差圧は、空洞10内で見いだされる内圧と周囲圧力との間で発生する。図4のグラフから、半導体デバイスの目標利用範囲内の室温または周囲条件下での透過は、半導体デバイスの機能に必要な範囲内にあることも分かる。これは、半導体デバイスの目標利用範囲内の透過が、例えば、10年から15年の範囲である半導体デバイスの寿命全体で、ネオンガス原子が空洞10から二酸化シリコン層4、5を通って半導体デバイスの環境の中に拡散または漏出するのはわずかな程度でしかないような高さであることを意味する。したがって、空洞10内に形成された所定の内圧は、半導体デバイスの寿命全体でほぼ一定のままである。
【0054】
半導体デバイスの目標利用範囲とは、特定の価値によって半導体デバイスを使用することができる周囲条件か、または状況に合わせた設定による使用または動作が想定される周囲条件を意味すると理解される。これらは、通常、約1×105パスカルの範囲内の大気圧、−50℃から130℃、またはこれらより狭い温度範囲内にある。
【0055】
図2の方法が同様にプロセス処理されたデバイスの内圧の変動に対して及ぼす好影響の例を示すために、図5A〜図5Bは、ヘリウムによる超過圧力試験、すなわち、ヘリウムが超過圧力雰囲気で空洞に入る試験の前後の、例えば、図1によって、カプセル化された所定の数のマイクロ共振器における品質または品質係数の分布の比較表現を示す。これらのマイクロセンサは、シリコンだけではなく、SiO2(図1参照)で作られた絶縁層も部分的に含むので、超過圧力試験時に、ヘリウムが入ることを観測することができる。
【0056】
図5Aは、ヘリウム試験の前の複数のマイクロ共振器内の品質またはQ係数の分布を表し、一方、図5Bは、ヘリウム試験の後のマイクロ共振器の品質の分布を示している。
【0057】
複数のマイクロ共振器のうちのある数のマイクロ共振器が属する品質範囲の境界をx軸上にプロットし、そのマイクロ共振器の数をy軸上にプロットした。図5Bでは、ある品質が属する範囲の境界をx軸上にプロットし、一方、それぞれの範囲内の品質を示すマイクロ共振器の数をy軸上にプロットした。
【0058】
マイクロ共振器またはマイクロセンサは、超過圧力試験時に入るヘリウムを考慮して内圧を所定の値に設定した空洞10内に配置される。ヘリウムは、主として、二酸化シリコン層4、5を通って空洞10に入る。
【0059】
図5Bは、ヘリウムによる超過圧力試験時に空洞10内の内圧を設定することによって、より一様なマイクロ共振器の品質の分布を実現することができることを示している。図5Aで、著しい数のマイクロ共振器が約2000から約10000の範囲の品質を示したが、ヘリウムによる超過圧力試験の後のマイクロ共振器の品質は、1600から4000の範囲内に集中している。
【0060】
品質は、空洞10内の内圧に強く依存する。したがって、調べた複数のマイクロ共振器全体の品質の分布は、調べた量のマイクロ共振器全体の内圧の分布の尺度であり、センサの内圧を、内圧の結果を表す共振器の減衰から、および品質から導くことができる。
【0061】
ヘリウム試験の後、調べた複数のマイクロ共振器の空洞10の内部の品質、ひいては、内圧の分布は、一様さを増す。すなわち、それぞれのマイクロ共振器の空洞内の内圧の一様性は増大する。言い換えると、調べた量の個別のマイクロ共振器の間の品質の変動は、ヘリウム試験の後、小さくなる。したがって、ヘリウム試験によって、空洞10内の内圧は設定された。しかしながら、ヘリウム試験の後、デバイスを連続利用する場合、それ以上のヘリウムの損失を一切防ぐために、デバイスは、以後、極めて低い温度範囲内で取り扱わなければならない。
【0062】
上述の手順と同様にして、温度調節した真空チャンバ内で過充填を実行した後、半導体デバイスの内部体積からネオンを再び除去してもよいが、この目的の場合、暴露時間はおそらく数日を要することがあることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の実施の態様による方法を使用することができる空洞を有する半導体デバイスを示す。
【図2】図2は、本発明の実施の態様による半導体デバイスの空洞内に所定の内圧を形成する方法を示す。
【図3】図3は、二酸化シリコンを通るさまざまなガスの透過に対する透過率の値のグラフを示す。
【図4】図4は、部分的に異なる差圧の場合の二酸化シリコン層を通るさまざまな希ガスの透過に対する透過率の値のグラフを示す。
【図5A】図5Aは、ヘリウムによる超過圧力試験の前の特定量のマイクロセンサの品質係数の分布の比較表現を示す。
【図5B】図5Bは、ヘリウムによる超過圧力試験の後の特定量のマイクロセンサの品質係数の分布の比較表現を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの空洞(10)内に所定の内圧を形成する方法であって、前記方法は、
前記半導体デバイスを提供する工程(S1)であって、前記半導体デバイスは前記半導体デバイスの前記空洞(10)と前記半導体デバイスの外部表面との間に連続的に配置される半導体酸化物区域(4、5)を含む工程、
前記半導体デバイスを、第1の温度で所定の時間の間、希ガスを有する周囲雰囲気に曝露する工程(S3)、および
前記所定の時間が経過した後、前記第1の温度と異なる第2の温度を設定する工程(S5)を含み、
前記半導体酸化物区域(4、5)は、前記第2の温度に比べて前記第1の温度で前記希ガスに対してより高い透過率を示す、方法。
【請求項2】
前記半導体デバイスを前記周囲雰囲気に曝露する前記工程は、
前記周囲雰囲気内に前記所定の時間の間、所定の周囲圧力および所定の周囲温度を設定する副工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周囲圧力および前記周囲温度を設定する前記工程は、前記所定の周囲圧力が2×105パスカルから20×105パスカルの範囲内にあるように実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周囲圧力および前記周囲温度を設定する前記工程は、前記所定の周囲温度が200℃から700℃の範囲内にあるように実行される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周囲圧力および前記周囲温度を設定する前記工程は、前記所定の周囲温度が300℃から400℃の範囲内にあるように実行される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
曝露する前記工程は、前記所定の時間が20分間から20時間の範囲内にあるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
曝露する前記工程は、前記所定の時間が20分間から240分間の範囲内にあるように実行される、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
曝露する前記工程は、前記希ガスがネオンであるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
提供する前記工程は、前記半導体酸化物区域が二酸化シリコンを含むように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記希ガス、前記半導体酸化物区域の半導体酸化物ならびに前記第1および第2の温度は、前記希ガスに対する前記透過率が前記第2の温度に比べて前記第1の温度で500倍から50000倍の範囲内で高くなるように選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
曝露する前記工程は、前記所定の内圧が0.01パスカルから100パスカルの範囲内にあるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
提供する前記工程は、いくつかの半導体デバイスの配置をウエハ上に提供する工程を含み、さらに、すべての半導体デバイスについて曝露する前記工程と前記温度を設定する前記工程とは、一緒に実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
提供する前記工程は、曝露する前記工程の前に、前記空洞(10)内の圧力が前記所定の内圧より低くなるように実行される、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
提供する前記工程は、活性化時に、前記周囲雰囲気内の前記希ガスと異なるガスを吸収するために、前記空洞内にゲッタ材料を配置する工程を含み、曝露する前記工程は、少なくとも、前記ゲッタ材料が活性化されるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
提供する前記工程は、前記半導体デバイスがマイクロメカニカルデバイスを含むように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
提供する前記工程は、前記半導体デバイスがマイクロ共振器または振動ジャイロスコープを含むように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
設定する前記工程は、前記所定の時間が経過した後、前記温度が−50℃から130℃の範囲内にあるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
設定する前記工程は、前記所定の時間が経過した後、前記温度が前記半導体デバイスの前記目標利用温度範囲に対応する範囲内にあるように実行される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
設定する前記工程は、周囲圧力を0.9×105パスカルから1.2×105パスカルの範囲内に設定する工程をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−527730(P2008−527730A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550731(P2007−550731)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000040
【国際公開番号】WO2006/074871
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】