説明

半導体マイクロデバイス

【課題】半導体マイクロデバイスの可動部への静電気の影響を緩和する。
【解決手段】本体1は枠体部1aと可動体部1bとを有し、可動体部1bは枠体部1aの内側にビーム1cを介して設けられており、第一の固定基板2には固定電極4が可動体部1b側表面に設けられており、第二の固定基板3にはダミー電極5が可動体部1b側表面に設けられており、可動体部1bは第一の固定基板2と可動体部1bとの距離の変化を測定するための可動電極6を有する半導体マイクロデバイスであって、可動体部1bには当該可動体部1bが固定電極4またはダミー電極5に接触する際に直接接触することを防ぐ第一接触部7が固定電極4側とダミー電極5側に設けられており、固定電極4上とダミー電極5上の少なくともいずれかには可動体部1bが近接した際に第一接触部7と接触する第二接触部8が対向して設けられており、第一接触部7と第二接触部8の材料は絶縁体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、半導体マイクロデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロマシンニング技術を利用して可動電極と固定電極が形成された半導体マイクロデバイスが提案されている。
例えば、特開2006−175554号公報(特許文献1)である。
この半導体マイクロデバイスは微小電気機械要素と集積回路とが1つの半導体素子形成基板に形成されたMEMSデバイスであって、素子形成基板が、第一の半導体基板と、第一の半導体基板の厚み方向の一表面側に設けられ少なくとも一部が第一の半導体基板よりも抵抗率の大きな第二の半導体基板とを有した多層基板であり、微小電気機械要素が少なくとも第一の半導体基板に形成されるとともに、集積回路が第二の半導体基板において第一の半導体基板よりも抵抗率の大きな部分に形成されてなることを特徴とする。
そして注目すべきは前記素子形成基板には検出質量体と固定電極である固定櫛歯片とが設けられ、前記検出質量体には可動電極である可動櫛歯片が設けられている点である。
各固定櫛歯片と各可動櫛歯片とは互いに離間しており、検出質量体が変位する際の固定櫛歯片と可動櫛歯片との距離変化に伴う静電容量の変化を検出できるようにしてある。すなわち、固定櫛歯片と可動櫛歯片とにより検出質量体の変位を検出する検出手段が構成されている。
微小電気機械要素を抵抗率の比較的小さな第一の半導体基板に形成し、集積回路を抵抗率の比較的大きな第二の半導体基板に形成することにより、微小電気機械要素と集積回路との両方の高性能化が可能になり、デバイス全体としての高性能化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−175554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の半導体マイクロデバイスは前記検出質量体が浮遊部となっている。
【0005】
このような構成の場合、前記固定電極と前記可動電極が直接接触することを防止する為に接触部を設ける必要があるが、その場合、前記接触部での接触帯電によって、静電気が発生し、可動部である可動電極が静電気の影響を受けて特性異常が起こる。
【0006】
本願発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接触部での接触帯電を起こりにくくし、可動部の特性異常をもたらす静電気の影響を緩和する半導体マイクロデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の半導体マイクロデバイスは本体と前記本体の一面に形成された第一の固定基板とその反対面に形成された第二の固定基板とを有する半導体素子と、前記半導体素子が収納された表面実装型のパッケージとを備え、前記本体は枠体部と可動体部とを有し、前記可動体部は前記枠体部の内側にビームを介して設けられており、前記第一の固定基板には固定電極が前記可動体部側表面に設けられており、前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられており、前記可動体部は前記第一の固定基板と前記可動体部との距離の変化を測定するための可動電極を有する半導体マイクロデバイスであって、前記可動体部には当該可動体部が前記固定電極または前記ダミー電極に接触する際に直接接触することを防ぐ第一接触部が前記固定電極側と前記ダミー電極側に設けられており、前記固定電極上と前記ダミー電極上の少なくともいずれかには前記可動体部が近接した際に前記第一接触部と接触する第二接触部が対向して設けられており、前記第一接触部と前記第二接触部の材料は絶縁体であることを特徴とする。
【0008】
またこの半導体マイクロデバイスは、前記第二接触部と当該第二接触部と対向する前記第一接触部の材料は互いに同一の材料であることが好ましい。
【0009】
またこの半導体マイクロデバイスは、前記第一接触部と前記第二接触部の材料はいずれもSiOであることが好ましい。
【0010】
またこの半導体マイクロデバイスは、対向する前記第一接触部と前記第二接触部はいずれかが他方より平面視で大きいことが好ましい。
【0011】
またこの半導体マイクロデバイスは、前記第二接触部は当該第二接触部と対向する前記第一接触部より平面視で大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の半導体マイクロデバイスは、接触部において同一の材料を用いることで接触帯電を起こりにくくし、静電気の影響による半導体マイクロデバイスの固着(スティクション)を生じにくくすることができ、長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願実施形態1の半導体マイクロデバイスを示し、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略断面図である。
【図2】同上の半導体マイクロデバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上の半導体マイクロデバイスにおける半導体素子の概略分解斜視図である。
【図4】同上の半導体マイクロデバイスにおける半導体素子の本体部を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略下面図である。
【図5】同上の半導体マイクロデバイスにおける半導体素子の本体部を示し、図4(a)のD−D’概略断面図である。
【図6】同上の半導体マイクロデバイスの要部説明図である。
【図7】同上の半導体マイクロデバイスの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1〜7は実施形態1にかかる半導体マイクロデバイスを示している。
【0015】
この半導体マイクロデバイスは本体1と本体1の一面に形成された第一の固定基板2とその反対面に形成された第二の固定基板3とを有する半導体素子Aと、半導体素子Aが収納された表面実装型のパッケージ101とを備え、本体1は枠体部1aと可動体部1bとを有し、可動体部1bは枠体部1aの内側にビーム1cを介して設けられており、第一の固定基板2には固定電極4が可動体部1b側表面に設けられており、第二の固定基板3にはダミー電極5が可動体部1b側表面に設けられており、可動体部1bは第一の固定基板2と可動体部1bとの距離の変化を測定するための可動電極6を有する半導体マイクロデバイスであって、可動体部1bには当該可動体部1bが固定電極4またはダミー電極5に接触する際に直接接触することを防ぐ第一接触部7が固定電極4側とダミー電極5側に設けられており、固定電極4上とダミー電極5上の少なくともいずれかには可動体部1bが近接した際に第一接触部7と接触する第二接触部8が対向して設けられており、第一接触部7と第二接触部8の材料は絶縁体である。
【0016】
またこの半導体マイクロデバイスは、第二接触部8と当該第二接触部8と対向する第一接触部7の材料は互いに同一の材料である。
【0017】
またこの半導体マイクロデバイスは、第一接触部7と第二接触部8の材料はいずれもSiOである。
【0018】
またこの半導体マイクロデバイスは、対向する第一接触部7と第二接触部8はいずれかが他方より平面視で大きい。
【0019】
ここで、この半導体マイクロデバイスは、第二接触部8は当該第二接触部8と対向する第一接触部7より平面視で大きい。
【0020】
以下、実施形態1のより具体的な説明を行う。
【0021】
本実施形態の半導体マイクロデバイスは、図1および図2に示すように、MEMSチップの一種である加速度センサチップからなる半導体素子Aと、半導体素子Aが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0022】
パッケージ101は、一面(図1(b)における上面)が開放された箱状に形成されるとともに半導体素子Aに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102と、プラスチックパッケージ本体102の上記一面を閉塞する形でプラスチックパッケージ本体102に気密的に接合されるパッケージ蓋(リッド)103とで構成されている。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により製品名称や製造日時などを示す表記113が形成されている。
【0023】
半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであって、図3ないし図5に示すように、半導体基板であるSOI基板を用いて形成された本体1と、ガラス基板を用いて形成され本体1の一表面側(図5における上面側)に固定された第一の固定基板2と、ガラス基板を用いて形成され本体1の他表面側に固定された第二の固定基板3とを備えている。ここにおいて、本体1および各固定基板2,3の外周形状は矩形状であり、各固定基板2,3は本体1と同じ外形寸法に形成されている。また、本実施形態では、半導体基板として、シリコン基板からなる支持基板上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)上にn形のシリコン層(活性層)を有するSOI基板を用いているが、SOI基板に限らず、例えば、シリコン基板を用いてもよい。また、各固定基板2,3が、ガラス基板を用いて形成されているが、ガラス基板に限らず、シリコン基板を用いて形成してもよい。
【0024】
本体1は、2つの平面視矩形状の開口窓14が上記一表面に沿って並設された枠体部1aと、枠体部1aの各開口窓14の内側において各固定基板2,3からそれぞれ2μm離間して配置された2つの平面視矩形状の可動体部1bと、枠体部1aの各開口窓14の内側で可動体部1bを挟む形で配置され上記一表面側において枠体部1aと可動体部1bとを連結した各一対のビーム1cとを備えており、枠体部1aが各固定基板2,3と接合されている。なお、半導体素子Aは、枠体部1aの周部が全周に亘って各固定基板2,3の周部と接合されており、枠体部1aと各固定基板2,3とで、チップサイズパッケージが構成されている。
【0025】
ところで、本体1の枠体部1aには、各開口窓14それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔15が2つの開口窓14と同じ方向に並設されており、各窓孔15の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対のビーム1cの並設方向に沿って配置されている。
【0026】
各固定子16は、窓孔15の内周面との間、可動体部1bの外周面との間、および隣り合う固定子16との間に隙間が形成されており、互いに分離独立して電気的に絶縁されており、枠体部1aとも電気的に絶縁されている。ここにおいて、各固定子16は、両固定基板2,3と接合されている。また、本体1の上記一表面側において、各固定子16には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成され、枠体部1aにおいて隣り合う窓孔15の間の部位にも、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成されている。
【0027】
また、第一の固定基板2には、各パッド18を各別に露出させる複数(ここでは、5つ)のテーパ状の貫通孔17が形成されている。ここで、第一の固定基板2は、各貫通孔17を、本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成してあり、本体1において各パッド18それぞれの外周縁から離れた各部位に各貫通孔17の周部が接合されるように開口面積を設定してある。本実施形態における半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであり、各固定子16に形成された各パッド18は後述の各固定電極4に電気的に接続され、枠体部1aに形成されたパッド18は後述の各可動電極6に電気的に接続されている。以上説明した複数のパッド18は、半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。なお、半導体素子Aは、各パッド18を、第一の固定基板2における本体1側とは反対側の表面において当該半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置して適宜の配線により各固定電極4および各可動電極6と電気的に接続するようにしてもよい。
【0028】
以下、図3の左側に示した直交座標系のように、可動体部1bが並ぶ方向をy軸方向、本体1の上記一表面に沿う面内でy軸方向に直交する方向をx軸方向、x軸方向とy軸方向とに直交する方向(つまり、本体1の厚み方向)をz軸方向として説明する。
【0029】
半導体素子Aにおける各ビーム1cは、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)の役割を果たし、枠体部1aおよび可動体部1bに比べて薄肉に形成されており、可動体部1bは、枠体部1aに対して一対のビーム1cの回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対のビーム1cは、枠体部1aに対して可動体部1bが揺動自在となるように枠体部1aと可動体部1bとを連結している。言い換えれば、枠体部1aの開口窓14の内側に配置される可動体部1bは、当該可動体部1bから相反する2方向へ延長された2つのビーム1cを介して枠体部1aに揺動自在に支持されている。ここにおいて、枠体部1aは、SOI基板の支持基板1aa、絶縁層1ab、シリコン層1acそれぞれを利用して形成してある。これに対して、ビーム1cは、SOI基板におけるシリコン層を利用して形成してあり、枠体部1aよりも薄肉となっている。また、可動体部1bは、SOI基板の支持基板1ba、絶縁層1bb、シリコン層1bcそれぞれを利用して形成してある。半導体素子Aの本体1は、バルクマイクロマシニング技術などを利用して形成してある。
【0030】
また、各固定子16は、SOI基板に適宜加工を施してから当該SOI基板を第二の固定基板3に陽極接合により接合した後に、枠体部1aから分離されている。
【0031】
ところで、可動体部1bには、当該可動体部1bの過度の変位を規制する第一接触部7が設けられており、これらに対向するように固定電極4上とダミー電極4上に第二接触部8が設けられている(図5参照)。これによって、可動体部1bの過度の変位によるビーム1cの破損や各固定基板2,3の破損などを防止することができる。
【0032】
ここで図6を参照して第一接触部7と第二接触部8の構造について詳しく説明する。
【0033】
両接触部7,8はともに同じ絶縁体材料であるSiOで形成されている。帯電列が同じ材料を用いることによって、両接触部7,8が互いに接触、摩擦した際に生じる接触帯電の発生を低減し、帯電による可動体部1aの固着の発生を低減することができる。
【0034】
また、第一接触部7は可動体部1b表面を熱酸化して生成したSiO形成することが可能なため、これに接触する第二接触部8をSiOのCVD(Chemical Vapor Deposition)酸化膜によって形成することで別途別部材で第一接触部7を形成する必要がなくなり、製造容易とすることができる。
【0035】
第二接触部8は平面視において第一接触部7よりも大きく形成されている。一方が他方より大きいため、両接触部7,8同士が接触しやすくすることができる。なお、第一接触部7を第二接触部8よりも平面視で大きくすることによっても同様の効果を奏することが可能であるが、第二接触部8が設けられる固定電極4、ダミー電極5上の方が、第一接触部7が設けられる可動体部1b上よりも形成可能な領域が多いため、第二接触部8が第一接触部7よりも平面視で大きい方が、より好ましい。
ここで第一接触部7は厚みが1μm、面積が600μmであり、第二接触部8は厚みが0.1μmであり面積が2000μmである。第二接触部8の厚みを第一接触部7の厚みより大きくすることでより両接触部7,8同士が接触しやすくすることができる。
【0036】
また、第二接触部8は固定電極4上とダミー電極5上のいずれにも設けることが好ましいが、片側にのみ設けることによっても部品点数、製造プロセス数を削減しつつ一定の効果を奏することができる。
【0037】
この場合、可動体部1bと第一の固定基板2,可動体部1bと第二の固定基板3とでより接触頻度が高い側に両接触部7,8を設けることが好ましい。例えば可動体部1bと第二の固定基板3との間を離間させた場合、両者の接触頻度が低くなるため、反対側の可動体部1bと第一の固定基板2間に、第一接触部7と第二接触部8とを設けることで部品点数、製造プロセス数を削減しつつ高い効果を奏することができる。
【0038】
あるいは、本実施例のように可動体部1bと両固定基板2,3の間隔がそれぞれ等間隔(2μm)である場合は、両固定基板2,3のいずれかに0.1μm程度の厚みを有する第二接触部8を設けることでも部品点数、製造プロセス数を削減しつつ一定の効果を奏することができる。なお、当然のことながら、当該第二接触部8の厚みをさらに大きくすることで、より当該第二接触部8の接触頻度が高くなり当該第二接触部8が設けられていない固定基板に接触する可能性を小さくすることができる。
【0039】
また可動体部1bが、本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への変位するための空間を確保するために、可動体部1bは、支持基板1ba、シリコン層1bcをエッチングすることによって薄肉に形成している。
【0040】
これら各部位の厚みを薄くせずに、第一の固定基板2の基礎となるガラス基板における本体1との対向面に可動体部1bの変位空間形成用凹部を形成し、当該変位空間形成用凹部の内底面に固定電極4を形成するようにしてもよい。また、半導体素子Aは、本体1の上記他表面側に接合される第二の固定基板3側への可動体部1bの変位空間を確保するために、可動体部1bおよび枠体部1aにおける開口窓14の周部それぞれに対応する各部位における支持基板の厚みを薄くしてあるが、これら各部位の厚みを薄くせずに、第二の固定基板3の基礎となるガラス基板における本体1との対向面に可動体部1bの変位空間形成用凹部を形成するようにしてもよい。なお、本実施形態では、SOI基板を用いて半導体素子Aを形成しているので、シリコン基板を用いて形成する場合に比べて、各ビーム1cの厚み寸法の精度を高めることができる。
【0041】
さらに、ここにおいて、本実施形態の半導体マイクロデバイスは、半導体素子Aの各接触部を接触させるに十分な静電界を印加するバイアスユニット9を備えたチップ検査測定部9を有するICチップBが、半導体素子Aとともにパッケージ101に収納されている。なお、本実施形態はあくまで一例であり、バイアスユニット9を用いることなくチップ検査測定部9を構成してもよい。また、製造時点においてチップ検査を行う場合、チップ検査部10は必ずしも有する必要はない。
ICチップBは、ASIC(Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されており、裏面全面がシリコーン系樹脂を用いて接着されている。また、ICチップBには半導体素子Aの出力信号を信号処理する信号処理回路も形成されている。なお、ICチップBの機能は、半導体素子Aの機能に応じて適宜設計すればよく、半導体素子Aと協働するものであればよい。また、ICチップBは、必ずしも、半導体素子Aと同一のパッケージ101に収納する必要はなく、この場合は、半導体素子Aの各パッド18に一端部が接続されるボンディングワイヤWの他端部をプラスパッケージ本体102のリード112のインナリード112aに接続すればよい。ただし、ICチップBを半導体素子Aと同じパッケージ101に収納した場合のほうが、異なるパッケージに収納する場合に比べて、半導体マイクロデバイス全体の小型化および低コスト化を図れるとともに加速度の検出精度の向上を図れる。
【0042】
本実施形態では、ICチップBが1枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、半導体素子AがSOI基板と2つのガラス基板とを用いて形成されており、半導体素子Aの厚みがICチップBの厚みに比べて大きくなっているので、上述のプラスチックパッケージ本体102の底部において半導体素子Aを搭載する搭載面をICチップBの搭載部位よりも凹ませてある(したがって、半導体素子Aを搭載する部位は底部の肉厚が他の部位に比べて薄くなっている)。なお、本実施形態では、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としてあるが、この数値は一例であり、半導体素子AやICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0043】
本実施形態における半導体素子Aは、上述の説明から分かるように、各可動体部1bがy軸方向に沿って延長された一対のビーム1cを介して枠体部1aに連結され、第一の固定基板2において各可動体部1bそれぞれに対向する部位ごとにx軸方向に沿って金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極41、52が並設されるとともに、各可動体部1bに可動電極6が設けられており、z軸方向において対向して対をなす可動電極6と固定電極4との対の間に空隙が形成されている。ここで、各一対のビーム1cは、平面視における可動体部1bのy軸方向に沿った中心線の延長線上に形成されている。
【0044】
また、本体1の可動体部1bは、上記他表面側において可動体部1bのy軸方向の中心線(ここでは、一対のビーム1cを結ぶ直線に一致する)におけるx軸方向の両側に、矩形状に開口され互いに大きさの異なる凹部12,13が形成されており、当該両側の部分で平面サイズが同じであるにもかかわらず互いに質量が異なっている。また、本体1は、可動体部1bにおいて開口サイズの大きな凹部13内に、凹部13の矩形状の内底面の2つの対角線に沿ったX字状の補強壁19が、凹部13の内底面と内側面とに連続する形で形成されている。また、本体1は、隣り合う開口窓14それぞれに配置された2つの可動体部1bに関して、当該本体1の上記一表面に沿った面内において一方の可動体部1bが他方の可動体部1bを180°回転させた形で形成されている。
【0045】
半導体素子Aは、上述の説明から分かるように、対となる可動電極6と固定電極4とを有する構造を二つ有している。よって本体1に設けられた可動電極6と第一の固定基板2に設けられた固定電極4との対を4対有しており、可動電極6と固定電極4との対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。要するに、半導体素子Aは、可動体部1bが振動することにより、対をなす固定電極4と可動電極6との対向面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。
【0046】
なお、以下では、説明の便宜上、4個の固定電極4について、図3における左上の固定電極4の符号を4Aa、左下の固定電極4の符号を4Ab、右上の固定電極4の符号を4Ba、右下の固定電極4の符号を4Bbとし、2個の可動電極6について、図3における左側の可動電極6の符号を6A、右側の可動電極6の符号を6Bとして説明する。
【0047】
ここにおいて、図3において4つの固定子16それぞれに形成された4つのパッド18について、左側から順に符号を18Aa,18Ab,18Ba,18Bbとすれば、各パッド18Aa,18Ab,18Ba,18Bbは、それぞれ、固定子16、および第二の固定基板2において固定電極4と連続一体に形成された金属配線26(図5参照)を介して固定電極4Aa,4Ab,4Ba,4Bbと電気的に接続されている。ここで、本体1は、各固定子16における可動体部1b側の端部の表面を本体1の上記一表面よりも後退させてあり、固定子16における当該端部の表面に、第二の固定基板2の金属配線26が圧接される連絡用導体部が形成されている。また、枠体部1aに形成されたパッド18は、可動電極6A,6Bの両方と電気的に接続されている。
【0048】
ここで、半導体素子Aの基本的な動作例について説明する。
【0049】
いま、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態で、半導体素子Aに対してx軸方向(x軸の正方向)の加速度がかかって各可動体部1bが一対のビーム1cを回動軸として回動して各可変容量コンデンサの静電容量が変化する。ここにおいて、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態での各可変容量コンデンサの静電容量をC0とし、x軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極6Aと固定電極4Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極6Aと固定電極4Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可動電極6Bと固定電極4Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可動電極6Bと固定電極4Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0+ΔC
CBb=C0−ΔC
となる。ここで、一方の可動体部1b側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の可動体部1b側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBa−CBb)との和は4ΔCとなる。
【0050】
また、同様に、半導体素子Aにz軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極6Aと固定電極4Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極6Aと固定電極4Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可動電極6Bと固定電極4Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可動電極6Bと固定電極4Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0−ΔC
CBb=C0+ΔC
となる。ここで、一方の可動体部1b側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の可動体部1b側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBb−CBa)との和は4ΔCとなる。
【0051】
しかして、{(CAa−CAb)+(CBa−CBb)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのx軸方向に作用した加速度を検出することができ、{(CAa−CAb)+(CBb−CBa)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのz軸方向に作用した加速度を検出することができる。
【0052】
本実施形態によれば、第一接触部7、第二接触部8の材料が絶縁体であるため、接触帯電を起こりにくくし、静電気の影響による固着(スティクション)を生じにくくすることができ、特性異常を軽減することができる。また、対向する接触部同士は帯電列に差がない、互いに同一の材料であるため、より接触帯電を起こりにくくすることができる。また、第一接触部7と第二接触部8はSiOで設けられているので製造容易とすることができる。また、第一接触部7と第二接触部8はいずれかが他方より平面視で大きいため、より両者を接触させやすくすることができる。また、第二接触部8はこれに接触する第一接触部7より大きいため、より製造容易とすることができる。
【符号の説明】
【0053】
A 半導体素子
1 本体
1a 枠体部
1b 可動体部
1c ビーム
2 第一の固定基板
3 第二の固定基板
4 固定電極
5 ダミー電極
6 可動電極
7 第一接触部
8 第二接触部
9 バイアスユニット
10 チップ検査測定部
B ICチップ
101 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と前記本体の一面に形成された第一の固定基板とその反対面に形成された第二の固定基板とを有する半導体素子と、
前記半導体素子が収納された表面実装型のパッケージとを備え、
前記本体は枠体部と可動体部とを有し、
前記可動体部は前記枠体部の内側にビームを介して設けられており、
前記第一の固定基板には固定電極が前記可動体部側表面に設けられており、
前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられており、
前記可動体部は前記第一の固定基板と前記可動体部との距離の変化を測定するための可動電極を有する半導体マイクロデバイスであって、
前記可動体部には当該可動体部が前記固定電極または前記ダミー電極に接触する際に直接接触することを防ぐ第一接触部が前記固定電極側と前記ダミー電極側に設けられており、
前記固定電極上と前記ダミー電極上の少なくともいずれかには前記可動体部が近接した際に前記第一接触部と接触する第二接触部が対向して設けられており、
前記第一接触部と前記第二接触部の材料は絶縁体であることを特徴とする半導体マイクロデバイス。
【請求項2】
前記第二接触部と当該第二接触部と対向する前記第一接触部の材料は互いに同一の材料であることを特徴とする請求項1記載の半導体マイクロデバイス。
【請求項3】
前記第一接触部と前記第二接触部の材料はいずれもSiOであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体マイクロデバイス。
【請求項4】
対向する前記第一接触部と前記第二接触部はいずれかが他方より平面視で大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体マイクロデバイス。
【請求項5】
前記第二接触部は当該第二接触部と対向する前記第一接触部より平面視で大きいことを特徴とする請求項4に記載の半導体マイクロデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220262(P2012−220262A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84018(P2011−84018)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】