説明

半導体レーザー励起固体レーザー装置

【課題】半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送して、該半導体レーザー光を励起光として固体レーザー媒質に入射するようにした半導体レーザー励起固体レーザー装置において、光ファイバーの脱着をレーザーの特性を変化させること無く高精度に行えるようにする。
【解決手段】光ファイバーにおける半導体レーザー光の出射側端部側に、コリメーターレンズを固定的に配設し、レーザー共振器を配置したレーザーヘッドに、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光を集光して固体レーザー媒質に入射する集光レンズを固定的に配設し、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光が、集光レンズにより固体レーザー媒質に集光して入射されるように、コリメーターレンズと集光レンズとを着脱自在に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザー励起固体レーザー装置に関し、さらに詳細には、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を励起光として用い、当該励起光により固体レーザー媒質を励起する固体レーザー装置である半導体レーザー励起固体レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を励起光として用い、当該励起光により固体レーザー媒質を励起する固体レーザー装置である半導体レーザー励起固体レーザー装置が知られている。
【0003】

こうした半導体レーザー励起固体レーザー装置の励起方法としては、種々の励起方法が知られているが、端面励起(エンドポンプ)と称される励起方法によれば、半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが同軸となるため、固体レーザー媒質内に作られる励起ボリュームとレーザー共振器のモードボリュームとの重なりがよくなり、効率よくレーザーエネルギーを得ることができる。
【0004】
この端面励起においては、励起光たる半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致しているほど効率は上がり、レーザーの安定性や最大パワーが向上し、ビームパターンが良くなる。
【0005】
従って、端面励起を用いた半導体レーザー励起固体レーザー装置においては、励起光たる半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とを高い精度で位置合わせする必要があった。
【0006】

従来、励起光たる半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とを高い精度で位置合わせする手法としては、例えば、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーの一方の端部たる入射側端部(始端部)に入射して、当該光ファイバーにより入射した半導体レーザー光を他方の端部たる出射側端部(終端部)まで導光して転送し、当該光ファイバーの終端部からレーザー共振器内に半導体レーザー光を入射するという手法が知られている。
【0007】
より詳細には、上記手法は、半導体レーザーから始端部に半導体レーザー光を入射される光ファイバーの終端部を、筐体内にレーザー共振器、固体レーザー媒質ならびに当該固体レーザー媒質に半導体レーザー光を集光するためのレンズ系などを収納したレーザーヘッドに接続し、当該光ファイバーの終端部とレーザーヘッドとを固定した状態においてレーザー共振器の調整を行って半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とを一致させ、半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致した状態を保持するようにするというものである。
【0008】

ところで、上記したようなレーザーヘッドに光ファイバーが接続された半導体レーザー励起固体レーザー装置を、当該半導体レーザー励起固体レーザー装置のレーザー光を利用する各種の装置に搭載する場合などには、当該搭載作業の作業スペースなどの関係から、レーザーヘッドから光ファイバーを取り外す必要がある。
【0009】
このため、レーザーヘッドと光ファイバーとは、容易に着脱することができるように接続することが好ましいものであった。
【0010】

ここで、レーザー励起用半導体レーザーの半導体レーザー光を転送するために用いる転送用の光ファイバーの終端部を、レーザーヘッドに着脱自在に接続可能とするために、一般にはSMA型やFC型と称されるコネクタが使用されている。
【0011】
これらのコネクタは、光ファイバーの終端部周辺を樹脂や金属などで固定しフェルールを形成し、レーザーヘッド側にはこのフェルール形状に合わせたレセプタクルを筐体に設置し、こうしたフェルールとレセプタクルとを嵌合させることにより、レーザーヘッドと光ファイバーとを着脱自在に接続可能に構成するものである。
【0012】
そして、上記したフェルールとレセプタクルとを嵌合させる構成のコネクタを備えた半導体レーザー励起固体レーザー装置においては、レーザー共振器に対する光ファイバーの終端部の位置合わせの精度が、フェルールとレセプタクルとの嵌合の精度により決定され、フェルールとレセプタクルとの嵌合の精度により、フェルールとレセプタクルとの着脱を行った際におけるレーザー共振器に対する光ファイバーの終端部の位置合わせの再現性が決定されものであった。
【0013】
即ち、フェルールとレセプタクルとの嵌合の精度を高めることにより、フェルールとレセプタクルとの着脱を行った際におけるレーザー共振器に対する光ファイバーの終端部の位置合わせの再現性を高めることができるものであった。
【0014】

しかしながら、フェルールとレセプタクルとの嵌合の精度を高め過ぎると、フェルールとレセプタクルとの抜き差しが困難となったり、フェルールをレセプタクルに嵌合する際にフェルールの変形などが起こりやすいので、フェルールとレセプタクルとの嵌合の精度をあまり高め過ぎず、フェルールとレセプタクルとがある程度の裕度をもって嵌合することができるようにする必要があった。
【0015】

ここで、図1には、フェルールとレセプタクルとがある程度の裕度をもって嵌合することができるようにした従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図(構成の一部を破断して示す。)が示されている。
【0016】
なお、以下の説明においては、説明を簡明化して技術内容の理解を容易にするために、励起光の波長は808nmであり、固体レーザー媒質としてNd:YVO結晶を用いることにより、半導体レーザー励起固体レーザー装置から波長1064nmのレーザー光を出射するものとして説明する。
【0017】

この図1に示す従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置100は、レーザーヘッド102の筐体104内に配設した出力ミラー106とエンドミラー108とによりレーザー共振器が構成されており、このレーザー共振器内に、固体レーザー媒質110としてNd:YVO結晶が配置されている。
【0018】
ここで、出力ミラー106は、波長1064nmのレーザー光を、例えば、20%の透過率で透過するとともに波長1064nmのレーザー光を、例えば、80%の反射率で反射する部分反射ミラーであり、また、エンドミラー108は、波長808nmのレーザー光を、例えば、97%の透過率で透過するとともに波長1064nmのレーザー光を、例えば、99.9%の反射率で反射するダイクロイックミラーである。
【0019】
そして、固体レーザー媒質110は、後述する励起用半導体レーザー(LD)112により出射された波長808nmの半導体レーザー光を励起光として入射することにより励起されて、波長1064nmのレーザー光を誘導放出する。
【0020】

より詳細には、半導体レーザー励起固体レーザー装置100は、波長808nmの半導体レーザー光を出射する励起用半導体レーザー112と、励起用半導体レーザー112から出射され所定の集光光学系(図示せず。)により集光された励起光たる半導体レーザー光を始端部114aから入射するとともに当該入射した励起光たる半導体レーザー光を終端部114bから出射する転送用の光ファイバー114と、光ファイバー114の終端部114bに形成されたフェルール116と、筐体104に形成された孔部104aに配設されるとともにフェルール116と所定の裕度をもって嵌合するレセプタクル118と、筐体104内に配置されるとともに光ファイバー114の終端部114bより出射された励起光たる半導体レーザー光を平行光とするためのコリメーターレンズ120と、筐体104内に配置されるとともにコリメーターレンズ120から出射された平行光の励起光たる半導体レーザー光を集光する集光レンズ122と、集光レンズ122により集光された励起光たる波長808nmの半導体レーザー光を、例えば、97%の透過率で透過するとともに波長1064nmのレーザー光を、例えば、99.9%の反射率で反射するダイクロイックミラーであるエンドミラー108と、エンドミラー108を透過したりエンドミラー108に反射されたレーザー光を一方の端面110aから入射される固体レーザー媒質110と、固体レーザー媒質110の他方の端面110bから出射された波長1064nmのレーザー光を、例えば、20%の透過率で透過するとともに波長1064nmのレーザー光を、例えば、80%の反射率で反射する部分反射ミラーである出力ミラー106とを有して構成されている。
【0021】
ここで、出力ミラー106、エンドミラー108、固体レーザー媒質110、レセプタクル118、コリメーターレンズ120および集光レンズ122は、光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致する状態を保持するようにして筐体104に取り付けられ、レーザーヘッド102を構成している。
【0022】
そして、レーザーヘッド102の筐体104には、出力ミラー106を透過した波長1064nmのレーザー光を、レーザーヘッド102の外部へ出射するための窓部124が設けられている。
【0023】
従って、出力ミラー12を透過した波長1064nmのレーザー光は、窓部124を介して半導体レーザー励起固体レーザー装置100の出力として、レーザーマーキングやレーザー溶接といった各種のレーザー加工などを含む種々の分野に利用される。
【0024】
なお、励起用半導体レーザー112より出射される励起光の出力は、例えば、10W以上とする。
【0025】

以上の構成において、半導体レーザー励起固体レーザー装置100によるレーザー発振を説明すると、まず、励起用半導体レーザー112より出射された波長808nmの半導体レーザー光(励起光)が図示しない集光光学系により集光されて光ファイバー114の始端部114aに入射され、始端部114aより入射した半導体レーザー光は、光ファイバー14内を伝播して終端部114bから出射される。
【0026】
そして、終端部114bから出射された半導体レーザー光は、コリメーターレンズ120により平行光とされ、平行光とされた半導体レーザー光は集光レンズ122により集光され、半導体レーザー光はエンドミラー108を通過して固体レーザー媒質110の端面110aに集光されて入射される。
【0027】
この固体レーザー媒質110の端面110aからの半導体レーザー光の入射により、半導体レーザー光が固体レーザー媒質110に吸収され、固体レーザー媒質110から波長1064nmのレーザー光が誘導放出される。
【0028】
上記のようにして固体レーザー媒質110から誘導放出されたレーザー光は、出力ミラー106とエンドミラー108とからなるレーザー共振器を往復することにより増幅され、増幅されたレーザー光は出力ミラー106からレーザー共振器の外部へ出力され、窓部124を介して半導体レーザー励起固体レーザー装置100の外部へ出力される。
【0029】

ここで、図2(a)には、図1に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置100において、フェルール116とレセプタクル118とを嵌合させて光ファイバー114の終端部114bをレーザーヘッド102の筐体104に取り付けた際に、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度により生ずる半導体レーザー光の光軸のずれ、換言すれば、光ファイバー114の終端部114aから出射される半導体レーザー光のビームの集光位置のずれの状態を概念的に表した説明図が示されている。
【0030】
また、図2(b)には、図2(a)に示す各構成部材の配置距離の関係を図2(a)と対応して表す説明図が示されている。
【0031】
なお、図2(a)において、実線で示す光ファイバー114と破線で示す光ファイバー114とが、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度により生ずるレーザーヘッド102に対する接続位置のずれを表している。
【0032】

この図2(a)を参照しながら説明すると、光ファイバー114の終端部114aから出射される半導体レーザー光は広い拡がり角をもっているが、この広い拡がり角をもった半導体レーザー光をコリメーターレンズ120によりコリメートして平行光とし、平行光とした半導体レーザー光を集光レンズ122により固体レーザー媒質110の端面110aに集光する。
【0033】
従って、コリメーターレンズ120は、光ファイバー114の終端部114aからFa(Fa:コリメーターレンズ120の焦点距離)の距離だけ離した場所に置くことにより、光ファイバー114の終端部114aから出射された半導体レーザー光のビームがコリメートされる。
【0034】
その後に、コリメーターレンズ120により平行光とされた半導体レーザー光は、集光レンズ122により当該集光レンズ122からFb(Fb:集光レンズ122の焦点距離)だけ離れた位置に集光される。
【0035】
このとき、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光のビームの直径(ビーム径)たる集光径φbは、光ファイバー114の終端部114aの直径φa、FaおよびFbにより決定され、
φb=φa×Fb/Fa
によりあらわされる。
【0036】
ここで、光ファイバー114の終端部114aのレーザーヘッド102への取り付け位置が、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度により本来の取り付け位置からずれた場合に、そのずれ量(光軸に対して垂直方向のずれ量)をHaとすると、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量Hbは、
Hb=Ha×Fb/Fa
によりあらわされる。
【0037】
上記したことより、半導体レーザー光の集光径に対するずれ量の割合は、
Hb/φb=Ha/φa
であり、コリメーターレンズ120や集光レンズ122の倍率によらず、光ファイバー114の終端部114aのレーザーヘッド102への取り付け位置のずれの割合と同等となる。
【0038】
従って、フェルール116とレセプタクル118とを嵌合する際に、光ファイバー114の終端部114aの直径φaに対して10%のずれが生じた場合には、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置においても集光径φbに対して10%のずれが生じることとなり、光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致しなくなるという問題点が生ずるものであった。
【0039】
図2(c)を参照しながら、具体的に説明すると、光ファイバー114の終端部114aの直径φaが400μm(φa=400μm)であり、Faが25mm(Fa=25mm)であり、Fbが50mm(Fb=50mm)であるときに、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度による本来の取り付け位置からのずれ量Haが40μm(Ha=40μm)となった場合には、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光の集光径φbは800μm(φb=800μm)となり、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量Hbは80μmと(Hb=80μm)なる。
【0040】
このように、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度による本来の取り付け位置からのずれ量と同じ割合だけ、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における集光径もずれることになり、光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致しなくなるものであった。
【0041】

以上において説明したように、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の精度を高めることにより、フェルール116とレセプタクル118との着脱を行った際におけるレーザー共振器に対する光ファイバー114の終端部114bの位置合わせの再現性を高めることはできるが、フェルール16とレセプタクル118との抜き差しが困難となったり、フェルール116をレセプタクル118に嵌合する際にフェルール116の変形などが起こりやすいという弊害があった。
【0042】
こうした弊害を解消するため、フェルール116とレセプタクル118とがある程度の裕度をもって嵌合することができるようにすると、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の裕度による本来の取り付け位置からのずれ量と同じ割合だけ、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における集光径もずれることになり、光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸とが一致しなくなるものであった。
【0043】
さらに、フェルール116とレセプタクル118との嵌合の精度を高めると、フェルール116をレセプタクル118に抜き差しする際に、フェルール116とレセプタクル118とが無用にぶつかって、レセプタクル118によりフェルール116が削られて粉末状の粉塵が発生することとなっていた。
【0044】
そして、こうして発生された粉塵や半導体レーザー励起固体レーザー装置100を設置している場所に存在する塵埃などが光ファイバー114の終端部114bの端面に付着し、その状態で励起用半導体レーザー112を駆動して半導体レーザー光を発光させると、光ファイバー114の終端部114bにダメージが生じさせるという問題点があった。
【0045】
なお、上記した粉塵などにより光ファイバー114の終端部114bにダメージを生じさせるという問題点は、光ファイバー114の終端部114bの端面の面積は非常に小さく(例えば、50μm〜800μm程度である。)、かつ、励起用半導体レーザー112から出射される半導体レーザー光の輝度が高いため生じるものである。
【0046】
このため、フェルール116をレセプタクル118に抜き差しする際には、ファイバースコープなどによる光ファイバー114の終端部114bの端面の検査および洗浄が必要とされており、その作業が繁雑かつ長い作業時間を要するものとなっていた。
【0047】

こうしたフェルール116をレセプタクル118に抜き差しすることに関する問題点や、光ファイバー114の終端部114bにダメージを生じさせるという問題点を解決するための手法として、特許文献1として提示する特表平10−502496号公報の図6や図7に開示された手法が提案されている。
【0048】
この特許文献1に開示する手法は、光ファイバーの終端部に鏡筒を接続し、当該鏡筒内にコリメーターレンズと集光レンズとの2枚のレンズを配置するようにしたものである。
【0049】

図3には、上記した光ファイバーの終端部に接続された鏡筒内にコリメーターレンズと集光レンズとの2枚のレンズを配置するようにした従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図(構成の一部を破断して示す。)が示されている。
【0050】
また、図4(a)(b)(c)には、図3に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置に関し、図2(a)(b)(c)にそれぞれ相当する説明図が示されている。
【0051】
以下、図3ならびに図4(a)(b)(c)を参照しながら、光ファイバーの終端部に接続された鏡筒内にコリメーターレンズと集光レンズとの2枚のレンズを配置するようにした従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置について説明するが、以下の説明においては、図1ならびに図2(a)(b)(c)を参照しながら説明した半導体レーザー励起固体レーザー装置100と同一または相当する構成などについては、上記において用いた符号と同一の符号を用いてそれぞれ示すことにより、その詳細な構成ならびに作用などの説明は適宜に省略することとする。
【0052】

この図3に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置200は、レセプタクル118が筐体104に形成された孔部104aから取り除かれるとともに、一方の端部側にレセプタクル118’を配設するための孔部202aが形成され、かつ、他方の端部側に筐体104に形成された孔部104aと略同径に形成された開口部202bを形成した鏡筒202が筐体104に取り付けられていて、鏡筒202内にコリメーターレンズ120と集光レンズ122とを配設している点において、上記した半導体レーザー励起固体レーザー装置100と異なっている。
【0053】
また、光ファイバー114の終端部114bにはフェルール116’が形成されており、フェルール116’とレセプタクル118’とは極めて高い精度で嵌合するように構成されている。
【0054】
なお、符号204は、鏡筒202を筐体104に着脱自在に取り付けるためのボルトである。鏡筒202は、孔部202aと孔部104aとが連通するようにして、ボルト204により筐体104に取り付けられている。
【0055】

上記した半導体レーザー励起固体レーザー装置200によれば、フェルール116’とレセプタクル118’とは常に固定しておき、各種の装置に搭載する場合などは、ボルト204を外して筐体104から鏡筒202を取り外して作業すればよい。
【0056】
即ち、半導体レーザー励起固体レーザー装置200においては、フェルール116’をレセプタクル118’に抜き差しする必要がないので、フェルール116’とレセプタクル118’とは極めて高い精度で嵌合するように構成することができ、上記したフェルール116をレセプタクル118に抜き差しすることに関する問題点を解決することができる。
【0057】
また、半導体レーザー励起固体レーザー装置200においては、鏡筒202、コリメーターレンズ120および集光レンズ122により、光ファイバー114の終端部114bの周囲を遮蔽することができるので、光ファイバー114の終端部114bに粉塵や塵埃が付着するのを防止して、光ファイバー114の終端部114bの端面を保護することができ、上記した光ファイバー114の終端部114bにダメージを生じさせることに関する問題点を解決することができる。
【0058】

ここで、半導体レーザー励起固体レーザー装置200における光ファイバー114の終端部114aから出射される半導体レーザー光のビームの集光位置のずれの大きさは、鏡筒202と筐体104とを着脱自在に構成しているので、鏡筒202と筐体104との取り付け位置の精度によって決定される。
【0059】
図4(a)(b)(c)を参照しながら説明するが、コリメーターレンズ120を光ファイバー114の終端部114aからFa(Fa:コリメーターレンズ120の焦点距離)の距離だけ離した場所に置き、鏡筒202と筐体104との取り付け位置のずれ量をHaとし、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれの量をHbとすると、Hbは、
Hb=Ha
によりあらわされる。
【0060】
従って、光ファイバー114の終端部114aの直径φaをとし、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光のビームの直径(ビーム径)たる集光径をφbとすると、半導体レーザー光の集光径に対するずれ量の割合は、
Hb/φb=Ha/φa×Fa/Fb
となり、鏡筒202と筐体104との取り付け位置のずれ量のFa/Fb倍となる。
【0061】
図4(c)を参照しながら、具体的に説明すると、光ファイバー114の終端部114aの直径φaが400μm(φa=400μm)であり、Faが25mm(Fa=25mm)であり、Fbが50mm(Fb=50mm)であるときに、鏡筒202と筐体104との取り付け位置のずれ量(光ファイバー114の終端部114bの位置のずれ量)Haが40μm(Ha=40μm)となった場合には、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光の集光径φbは800μm(φb=800μm)となり、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量Hbは40μmと(Hb=40μm)なる。
【0062】

従って、半導体レーザー励起固体レーザー装置200においては、光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸との不一致の度合いを半導体レーザー励起固体レーザー装置100とほぼ同等とすることができ、かつ、光ファイバー114の終端部114bの端面の保護も図ることができるものであった。
【0063】

しかしながら、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置が数%のずれただけでもレーザー出力が数十%変動することが知られており、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量Hbは小さければ小さいほどよいものであり、そのため光ファイバー114の終端部114bより出射された半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸との不一致の度合いをより低減することのできる技術が要望されていた。
【0064】
即ち、固体レーザー媒質に励起光として半導体レーザー光を入射する光ファイバーの脱着を、レーザーの特性を変化させること無く高精度に行うことを可能にする技術が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特表平10−502496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0066】
本発明は、上記したような従来の技術の有する問題点や要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送して、該半導体レーザー光を励起光として固体レーザー媒質に入射するようにした半導体レーザー励起固体レーザー装置において、光ファイバーの脱着をレーザーの特性を変化させること無く高精度に行えるようにした半導体レーザー励起固体レーザー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0067】
上記目的を達成するために、本発明は、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送し、光ファイバーにより転送した半導体レーザー光をレーザー共振器内に配置された固体レーザー媒質に入射して、半導体レーザー光により固体レーザー媒質を励起する半導体レーザー励起固体レーザー装置において、光ファイバーにより転送した半導体レーザー光を出射する出射側端部側にコリメーターレンズを固定し、レーザーヘッド側に集光レンズを固定し、コリメーターレンズと集光レンズとの間に着脱機構を設けるようにしたものである。
【0068】

即ち、本発明は、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送し、光ファイバーにより転送した半導体レーザー光を、レーザーヘッドに配置されたレーザー共振器内に位置する固体レーザー媒質に入射して、半導体レーザー光により固体レーザー媒質を励起する半導体レーザー励起固体レーザー装置であって、光ファイバーにおける半導体レーザー光の出射側端部側に、コリメーターレンズを固定的に配設し、レーザー共振器を配置したレーザーヘッドに、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光を集光して固体レーザー媒質に入射する集光レンズを固定的に配設し、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光が、集光レンズにより固体レーザー媒質に集光して入射されるように、コリメーターレンズと集光レンズとを着脱自在に連結するようにしたものである。
【0069】
また、本発明は、半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送し、光ファイバーにより転送した半導体レーザー光を、レーザーヘッドに配置されたレーザー共振器内に位置する固体レーザー媒質に入射して、半導体レーザー光により固体レーザー媒質を励起する半導体レーザー励起固体レーザー装置であって、光ファイバーにおける半導体レーザー光の出射側端部が固定的に配設され、出射側端部から半導体レーザー光が入射される鏡筒と、鏡筒内に固定的に配設されるとともに、出射側端部から鏡筒内に入射された半導体レーザー光を平行光とするコリメーターレンズと、レーザーヘッド内に固定的に配設され、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光を集光して固体レーザー媒質に入射する集光レンズと、コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光が、集光レンズにより固体レーザー媒質に集光して入射されるように、鏡筒とレーザーヘッドとを着脱自在に連結する連結手段とを有するようにしたものである。
【0070】
また、本発明は、上記固体レーザー媒質を、Nd:YVO結晶、Nd:GdVO結晶、Nd:YLF結晶、Nd:YAG結晶またはYb:YAG結晶のいずれかであるようにしたものである。
【0071】
また、本発明は、上記レーザー共振器内に配置された非線形光学結晶を有するようにしたものである。
【0072】
また、本発明は、上記レーザー共振器内に配置されたQスイッチを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0073】
本発明は、以上説明したように構成されているので、レーザー共振器を備えたレーザーヘッドと当該レーザーヘッドに励起光として半導体レーザー光を導光する光ファイバーとを着脱自在に接続可能に構成しても、半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸との不一致の度合いを低減することができるようになるという優れた効果を奏する。
【0074】
換言すれば、本発明は、励起用半導体レーザーから出射された励起光を転送用の光ファイバーにより転送して固体レーザー媒質に入射するようにした半導体レーザー励起固体レーザー装置において、転送用の光ファイバーの脱着をレーザーの特性を変化させること無く高精度に行えるようになるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、フェルールとレセプタクルとがある程度の裕度をもって嵌合することができるようにした従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図である。なお、その構成の一部を破断して示している。
【図2】図2(a)は、図1に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置において、フェルールとレセプタクルとを嵌合させて光ファイバーの終端部をレーザーヘッドの筐体に取り付けた際に、フェルールとレセプタクルとの嵌合の裕度により生ずる半導体レーザー光の光軸のずれ、換言すれば、光ファイバーの終端部から出射される半導体レーザー光のビームの集光位置のずれの状態を概念的に表した説明図である。また、図2(b)は、図2(a)に示す各構成部材の配置距離の関係を図2(a)と対応して表す説明図である。
【0076】
また、図2(c)は、光ファイバーの終端部から出射される半導体レーザー光のビームの集光位置のずれの状態を具体的数値とともに示した説明図である。
【図3】図3は、光ファイバーの終端部に接続された鏡筒内にコリメーターレンズと集光レンズとの2枚のレンズを配置するようにした従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図である。なお、その構成の一部を破断して示している。
【図4】図4(a)(b)(c)は、図3に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置に関し、図2(a)(b)(c)にそれぞれ相当する説明図である。
【図5】図5は、本発明による半導体レーザー励起固体レーザー装置の実施の形態の一例について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図である。なお、その構成の一部を破断して示している。
【図6】図6(a)(b)(c)は、図5に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置に関し、図2(a)(b)(c)にそれぞれ相当する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による半導体レーザー励起固体レーザー装置の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
【0078】
なお、以下の説明においては、図1ならびに図2(a)(b)(c)を参照しながら説明した半導体レーザー励起固体レーザー装置100あるいは図3ならびに図4(a)(b)(c)を参照しながら説明した半導体レーザー励起固体レーザー装置200と同一または相当する構成などについては、上記において用いた符号と同一の符号を用いてそれぞれ示すことにより、その詳細な構成ならびに作用などの説明は適宜に省略することとする。
【0079】

ここで、図5には、本発明による半導体レーザー励起固体レーザー装置の実施の形態の一例について、その各構成部材の配置関係をあらわす説明図(構成の一部を破断して示す。)が示されている。
【0080】
また、図6(a)(b)(c)には、図5に示す半導体レーザー励起固体レーザー装置に関し、図2(a)(b)(c)にそれぞれ相当する説明図が示されている。
【0081】

この図5に示す本発明による半導体レーザー励起固体レーザー装置10は、レセプタクル118が筐体104に形成された孔部104aから取り除かれるとともに、一方の端部側にレセプタクル118’を配設するための孔部12aが形成され、かつ、他方の端部側に筐体104に形成された孔部104aより若干小径に形成された開口部12bを形成した鏡筒12が筐体104に取り付けられていて、鏡筒12内にコリメーターレンズ120を配設している点において、上記した半導体レーザー励起固体レーザー装置100と異なっている。
【0082】
また、光ファイバー114の終端部114bにはフェルール116’が形成されており、フェルール116’と孔部12aに固定されたレセプタクル118’とは極めて高い精度で嵌合するように構成されている。
【0083】
なお、符号14は、鏡筒12を筐体104に着脱自在に取り付けるためのボルトである。鏡筒12は、孔部12aと孔部104aとが連通するようにして、ボルト14により筐体104に取り付けられている。
【0084】
また、鏡筒12の開口部12b側の端部には、筐体12の孔部12aと所定の公差で嵌合するように形成された係合突部12cが形成されている。
【0085】
従って、光ファイバー114の終端部114bとコリメーターレンズ120とを固定した鏡筒12をレーザーヘッド102に固定する際には、孔部12aに係合突部12cを嵌め込むことにより容易に位置合わせすることができ、その後にボルト14により鏡筒12と筐体104とを固定すればよい。
【0086】
このとき、上記した公差は、鏡筒12とレーザーヘッド102との着脱作業の容易さと必要とされる精度とにより適宜に調整すればよい。
【0087】
なお、励起用半導体レーザー112より出射される励起光の出力は、例えば、10W以上とする。
【0088】

以上の構成において、半導体レーザー励起固体レーザー装置10においては、光ファイバー114の終端部114bから出射された半導体レーザー光が、鏡筒12内に入射され、さらにコリメーターレンズ120に入射されて平行光とされる。
【0089】
そしてこの平行光とされた半導体レーザー光は集光レンズ122に入射され、エンドミラー108を透過した後に、レーザー共振器内に配置された固体レーザー媒質106の端面106aに集光されることになる。
【0090】

ここで、半導体レーザー励起固体レーザー装置10では、光ファイバー114の終端部114bを固定した鏡筒12内にコリメーターレンズ120のみを固定し、集光レンズ122はレーザーヘッド102の筐体104内に固定されている。
【0091】
なお、半導体レーザー励起固体レーザー装置10においては、鏡筒12に光ファイバー114の終端部114bを固定する際に、フェルール116’とレセプタクル118’とにより構成されるコネクタ構造を用いたが、接着やねじ込などにより固定してもよい。
【0092】
また、鏡筒12にコリメーターレンズ120を固定する際にも、接着やねじ込などにより固定してもよい。
【0093】
なお、鏡筒12に光ファイバー114の終端部114bやコリメーターレンズ120を固定する作業時に、終端部114bの端面が外部雰囲気に触れないようにすると、塵や埃などによる終端部114bの端面の損傷を防止することができる。
【0094】

上記した半導体レーザー励起固体レーザー装置10によれば、フェルール116’とレセプタクル118’とは常に固定しておき、各種の装置に搭載する場合などは、ボルト14を外して筐体104から鏡筒12を取り外して作業すればよい。
【0095】
即ち、半導体レーザー励起固体レーザー装置10においては、フェルール116’をレセプタクル118’に抜き差しする必要がないので、上記において説明したフェルール116をレセプタクル118に抜き差しすることに関する問題点を解決することができる。
【0096】
また、半導体レーザー励起固体レーザー装置10においては、鏡筒12およびコリメーターレンズ120により、光ファイバー114の終端部114bの周囲を遮蔽することができるので、光ファイバー114の終端部114bに粉塵や塵埃が付着するのを防止して、光ファイバー114の終端部114bの端面を保護することができ、上記において説明した光ファイバー114の終端部114bにダメージを生じさせることに関する問題点を解決することができる。
【0097】

以下に、上記した半導体レーザー励起固体レーザー装置10によれば、鏡筒12とレーザーヘッド102との着脱を繰り返しても、従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置と比較して、励起光たる半導体レーザー光の光軸とレーザー共振器の光軸との位置合わせの精度を著しく向上することができる点について、図6(a)(b)(c)を参照しながらより詳細に説明する。
【0098】
即ち、光ファイバー114の終端部114aの直径φaとし、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光のビームの直径(ビーム径)たる集光径をφbとし、コリメーターレンズ120から出射された半導体レーザー光の直径φcとし、鏡筒12と筐体104との取り付け位置のずれ量をHaとし、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれの量をHbとし、コリメーターレンズ120から出射された半導体レーザー光の垂直方向のずれ量をHcとし、光ファイバー114の開口数(Numerical Aperture:NA)をNA(NA=sinθ)とすると、
φb=φa×Fb/Fa
φc=2×Fa×tanθ=2×Fa×((NA)/(1−(NA)1/2
Hb=Hc×φb/φc
(φc>>φa)
となる。
【0099】
従って、Hbは、
Hb=Ha×((φa×Fb×(1−(NA)1/2)/(2×Fa×(NA))
によりあらわされる。
【0100】
従って、半導体レーザー光の集光位置における集光径に対するずれ量は、鏡筒12と筐体104との取り付け位置のずれ量よりも著しく小さくすることができる。
【0101】
図6(c)を参照しながら、具体的に説明すると、光ファイバー114の終端部114aの直径φaが400μm(φa=400μm)であり、Naが0.2(Na=0.2)であり、Faが25mm(Fa=25mm)であり、Fbが50mm(Fb=50mm)であるときに、鏡筒12と筐体104との取り付け位置のずれ量(光ファイバー114の終端部114bの位置のずれ量)Haが40μm(Ha=40μm)となった場合には、コリメーターレンズ120から出射された半導体レーザー光の直径φcは10,200μm(φc=10,200μm)となり、コリメーターレンズ120から出射された半導体レーザー光の垂直方向のずれ量をHcは40μm(Hc=40μm)となり、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置における半導体レーザー光の集光径φbは800μm(φb=800μm)となり、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量Hbは3.1μmと(Hb=3.1μm)なる。
【0102】
このように、従来の半導体レーザー励起固体レーザー装置と比較すると、集光レンズ122からFbだけ離れた集光位置におけるずれ量を著しく低減することができる。
【0103】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形して他の実施の形態を構成してもよい。
【0104】
(1)上記した実施の形態においては、ボルト14を連結手段として用いて、鏡筒12と筐体104とを着脱自在に連結するように構成したが、鏡筒12と筐体104とを着脱自在に連結するための構成はこれに限られるものではないことは勿論であり、例えば、ネジ結合などの連結手段を用いるようにしてもよい。
【0105】
(2)上記した実施の形態においては、固体レーザー媒質106としてNd:YVO結晶を用いたが、本発明において用いることのできる固体レーザー媒質はこれに限られるものではないことは勿論であり、例えば、Nd:GdVO結晶、Nd:YLF結晶、Nd:YAG結晶あるいはYb:YAG結晶などを用いるようにしてもよい。
【0106】
(3)上記した実施の形態において、レーザー共振器内に非線形光学結晶を配置して、レーザー出力として基本発振波長の高調波を得るようにしてもよいことは勿論である。
【0107】
例えば、固体レーザー媒質110としてNd:YVO結晶を用いた上記した実施の形態の場合には、その基本発振波長は1064nmの近赤外であるが、可視領域や紫外領域の波長を有するレーザー光を得るために、レーザー共振器内に非線形光学結晶を配置して、レーザー出力として基本発振波長の高調波を得るようにしてもよい。
【0108】
具体的には、図5に配置構成において、例えば、出力ミラー106とエンドミラー108との間に非線形光学結晶を配置し、出力ミラー106が波長1064nmの光を反射するとともに波長532nmの光を透過するように構成する。
【0109】
これにより、波長532nmのレーザー光をレーザー共振器の外部へ出力することができる。
【0110】
(4)上記した実施の形態において、レーザー共振器内にQスイッチを配置してパルス発振させ、よりエネルギー密度の高いレーザー光を出力するようにしてもよいことは勿論である。
【0111】
(5)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、産業用や民生用などの各種の分野、例えば、レーザーマーキングやレーザー溶接といった各種のレーザー加工などを含む種々の産業分野や、レーザープリンターやレーザースキャンディスプレイなどを含む種々の民生分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 半導体レーザー励起固体レーザー装置
12 鏡筒
12a 孔部
12b 開口部
12c 係合突部
14 ボルト
100 半導体レーザー励起固体レーザー装置
102 レーザーヘッド
104 筐体
104a 孔部
106 出力ミラー
108 エンドミラー
110 固体レーザー媒質
112 励起用半導体レーザー(LD)
114 光ファイバー
114a 始端部
114b 終端部
116、116’ フェルール
118、118’ レセプタクル
120 コリメーターレンズ
122 集光レンズ
124 窓部
200 半導体レーザー励起固体レーザー装置
202 鏡筒
202a 孔部
202b 開口部
204 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送し、前記光ファイバーにより転送した半導体レーザー光を、レーザーヘッドに配置されたレーザー共振器内に位置する固体レーザー媒質に入射して、半導体レーザー光により前記固体レーザー媒質を励起する半導体レーザー励起固体レーザー装置であって、
前記光ファイバーにおける半導体レーザー光の出射側端部側に、コリメーターレンズを固定的に配設し、
前記レーザー共振器を配置したレーザーヘッドに、前記コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光を集光して前記固体レーザー媒質に入射する集光レンズを固定的に配設し、
前記コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光が、前記集光レンズにより前記固体レーザー媒質に集光して入射されるように、前記コリメーターレンズと前記集光レンズとを着脱自在に連結する
ことを特徴とする半導体レーザー励起固体レーザー装置。
【請求項2】
半導体レーザーから出射された半導体レーザー光を光ファイバーにより転送し、前記光ファイバーにより転送した半導体レーザー光を、レーザーヘッドに配置されたレーザー共振器内に位置する固体レーザー媒質に入射して、半導体レーザー光により前記固体レーザー媒質を励起する半導体レーザー励起固体レーザー装置であって、
前記光ファイバーにおける半導体レーザー光の出射側端部が固定的に配設され、前記出射側端部から半導体レーザー光が入射される鏡筒と、
前記鏡筒内に固定的に配設されるとともに、前記出射側端部から前記鏡筒内に入射された半導体レーザー光を平行光とするコリメーターレンズと、
前記レーザーヘッド内に固定的に配設され、前記コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光を集光して前記固体レーザー媒質に入射する集光レンズと、
前記コリメーターレンズにより平行光とされた半導体レーザー光が、前記集光レンズにより前記固体レーザー媒質に集光して入射されるように、前記鏡筒と前記レーザーヘッドとを着脱自在に連結する連結手段と
を有することを特徴とする半導体レーザー励起固体レーザー装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の半導体レーザー励起固体レーザー装置において、
前記固体レーザー媒質は、Nd:YVO結晶、Nd:GdVO結晶、Nd:YLF結晶、Nd:YAG結晶またはYb:YAG結晶のいずれかである
ことを特徴とする半導体レーザー励起固体レーザー装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の半導体レーザー励起固体レーザー装置において、
前記レーザー共振器内に配置された非線形光学結晶を
有することを特徴とする半導体レーザー励起固体レーザー装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の半導体レーザー励起固体レーザー装置において、
前記レーザー共振器内に配置されたQスイッチを
有することを特徴とする半導体レーザー励起固体レーザー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−233805(P2011−233805A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104839(P2010−104839)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(510057408)株式会社シングルモード (2)
【Fターム(参考)】