説明

半導体レーザ素子

【課題】上部クラッド層とp型半導体層との接触抵抗を低減しつつ、上部クラッド層の形成時間の短縮を図ることができる半導体レーザ素子を提供すること。
【解決手段】半導体レーザ素子101は、n型クラッド層14、n型クラッド層14上に形成されたn型ガイド層15、n型ガイド層15上に形成された発光層10、および発光層10上に形成されたp型半導体層12を備え、p型半導体クラッド層を有しない窒化物半導体積層構造2と、p型半導体層12上に形成された透明電極5とを含む。透明電極5は、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21と、第1導電性膜21上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの先行技術に係る半導体レーザ素子は、特許文献1に開示されている。この半導体レーザ素子は、基板と、この基板上に形成されたIII族窒化物半導体積層構造とを含む。III族窒化物半導体積層構造は、n型半導体層、発光層、およびp型半導体層を積層して構成されている。n型半導体層はn型AlGaNクラッド層およびn型GaN(またはInGaN)ガイド層を含み、p型半導体層はp型AlGaN電子ブロック層およびp型GaN(またはInGaN)ガイド・コンタクト層を含む。p型GaN(またはInGaN)ガイド・コンタクト層の表面に、ZnOからなるp型透明電極がオーミック接触している。p型電極は、上部クラッド層として兼用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−94360号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の半導体レーザ素子は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備え、p型半導体クラッド層を有しない窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含む(請求項1)。
【0005】
この構成によれば、発光層では、n型ガイド層側から注入される電子とp型半導体層から注入される正孔との再結合による発光が生じる。その光は、n型クラッド層と上部クラッド層との間に閉じ込められ、窒化物半導体積層構造の積層方向と垂直な方向に伝搬する。半導体レーザ素子では、その伝搬方向の両端に共振器端面が形成されており、この一対の共振器端面間で、誘導放出を繰り返しながら光が共振増幅され、その一部がレーザ光として共振器端面から出射される。
【0006】
窒化物半導体積層構造は、p型半導体クラッド層を有していない。窒化物半導体積層構造がp型半導体クラッド層を有する場合には、窒化物半導体積層構造の形成工程において、比較的低温で発光層を形成してから、発光層の場合よりも高い温度でp型半導体クラッド層を形成することになる。そのため、p型半導体クラッド層を形成する際に、発光層に対して熱によるダメージが加わる虞がある。それに対して、この発明では、窒化物半導体積層構造がp型半導体クラッド層を有していないので、窒化物半導体積層構造の形成工程において発光層に対して熱によるダメージが加わるといった不具合を防止できる。
【0007】
上部クラッド層は、n型クラッド層との間で発光層の光を閉じ込めるために、ある程度の厚さを有する必要がある。しかし、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜は、成膜速度が遅いので、第1導電性膜だけで上部クラッド層を構成すると、上部クラッド層を形成するのに時間がかかってしまう。一方、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は、成膜速度は比較的速いものの、p型窒化物半導体に対する接触抵抗が高い。そこで、本発明では、上部クラッド層においてp型半導体層に接触する部分を酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜で構成して接触抵抗の低減が図られている。その一方で、第1導電性膜と、その上に形成された酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを上部クラッド層に含ませることによって、上部クラッド層の形成速度の向上を図ることができる。より具体的には、第1導電性膜を必要最小限の膜厚に形成することにより、上部クラッド層の形成に要する時間を短くでき、それによって生産性を向上できる。
【0008】
また、この発明の半導体レーザ素子は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記半導体レーザ素子は、p型窒化物半導体からなるクラッド層を含まない(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、発光層では、n型ガイド層側から注入される電子とp型半導体層から注入される正孔との再結合による発光が生じる。その光は、n型クラッド層と上部クラッド層との間に閉じ込められ、窒化物半導体積層構造の積層方向と垂直な方向に伝搬する。半導体レーザ素子では、その伝搬方向の両端に共振器端面が形成されており、この一対の共振器端面間で、誘導放出を繰り返しながら光が共振増幅され、その一部がレーザ光として共振器端面から出射される。
【0010】
半導体レーザ素子は、p型窒化物半導体からなるクラッド層(p型半導体クラッド層ということにする)を含んでいない。半導体レーザ素子がp型半導体クラッド層を有する場合には、p型半導体クラッド層は、窒化物半導体積層構造のp型半導体層に含まれる。この場合、窒化物半導体積層構造の形成工程において、比較的低温で発光層を形成してから、発光層の場合よりも高い温度でp型半導体クラッド層を形成することになる。そのため、p型半導体クラッド層を形成する際に、発光層に対して熱によるダメージが加わる虞がある。それに対して、この発明では、半導体レーザ素子がp型半導体クラッド層を有していないので、窒化物半導体積層構造の形成工程において発光層に対して熱によるダメージが加わるといった不具合を防止できる。
【0011】
上部クラッド層は、n型クラッド層との間で発光層の光を閉じ込めるために、ある程度の厚さを有する必要がある。しかし、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜は、成膜速度が遅いので、第1導電性膜だけで上部クラッド層を構成すると、上部クラッド層を形成するのに時間がかかってしまう。一方、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は、成膜速度は比較的速いものの、p型窒化物半導体に対する接触抵抗が高い。そこで、本発明では、上部クラッド層においてp型半導体層に接触する部分を酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜で構成して接触抵抗の低減が図られている。その一方で、第1導電性膜と、その上に形成された酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを上部クラッド層に含ませることによって、上部クラッド層の形成速度の向上を図ることができる。より具体的には、第1導電性膜を必要最小限の膜厚に形成することにより、上部クラッド層の形成に要する時間を短くでき、それによって生産性を向上できる。
【0012】
また、この発明の半導体レーザ素子は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記p型半導体層は、前記上部クラッド層側の表層部にp型ガイド層を備え、前記p型ガイド層と前記第1導電性膜とが接触している(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、発光層では、n型ガイド層側から注入される電子とp型半導体層から注入される正孔との再結合による発光が生じる。その光は、n型クラッド層と上部クラッド層との間に閉じ込められ、窒化物半導体積層構造の積層方向と垂直な方向に伝搬する。半導体レーザ素子では、その伝搬方向の両端に共振器端面が形成されており、この一対の共振器端面間で、誘導放出を繰り返しながら光が共振増幅され、その一部がレーザ光として共振器端面から出射される。
【0014】
上部クラッド層は、n型クラッド層との間で発光層の光を閉じ込めるために、ある程度の厚さを有する必要がある。しかし、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜は、成膜速度が遅いので、第1導電性膜だけで上部クラッド層を構成すると、上部クラッド層を形成するのに時間がかかってしまう。一方、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は、成膜速度は比較的速いものの、p型窒化物半導体に対する接触抵抗が高い。そこで、本発明では、上部クラッド層においてp型半導体層(p型ガイド層)に接触する部分を酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜で構成して接触抵抗の低減が図られている。その一方で、第1導電性膜と、その上に形成された酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを上部クラッド層に含ませることによって、上部クラッド層の形成速度の向上を図ることができる。より具体的には、第1導電性膜を必要最小限の膜厚に形成することにより、上部クラッド層の形成に要する時間を短くでき、それによって生産性を向上できる。
【0015】
前記p型ガイド層は、InGaNからなることが好ましい(請求項4)。このようなp型ガイド層は、Alを含む組成の場合に比べて、低温で形成できる。そのため、発光層に対する熱ダメージを一層低減できる。
また、この発明の半導体レーザ素子は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、開口部を有する絶縁膜と、前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された上部クラッド層とを含み、前記上部クラッド層が、前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含む(請求項5)。
【0016】
この構成によれば、発光層では、n型ガイド層側から注入される電子とp型半導体層から注入される正孔との再結合による発光が生じる。その光は、n型クラッド層と上部クラッド層との間に閉じ込められ、窒化物半導体積層構造の積層方向と垂直な方向に伝搬する。半導体レーザ素子では、その伝搬方向の両端に共振器端面が形成されており、この一対の共振器端面間で、誘導放出を繰り返しながら光が共振増幅され、その一部がレーザ光として共振器端面から出射される。
【0017】
p型半導体層上には、開口部を有する絶縁膜が形成されていて、上部クラッド層は、この開口部を介してp型半導体層に接するように絶縁膜上に形成されている。絶縁膜は、開口部以外の領域において、p型半導体層と上部クラッド層とを絶縁するとともに、p型半導体層から上部クラッド層へ向かう光を閉じ込める。
上部クラッド層は、p型半導体層に電流を供給する電極となる。上部クラッド層は、絶縁膜の開口部に入り込んでp型半導体層に接している。これにより、上部クラッド層とp型半導体層との電気的接続は、開口部内に制限されるので、電流狭窄構造を形成できる。一般的な半導体レーザ素子は、たとえばp型半導体層にリッジ部を形成することによって電流狭窄構造を形成している。ところが、リッジ部を形成するためのエッチングのときにリッジ部の側面および根元部分の半導体結晶に欠陥が生じ、これにより、デバイス特性が悪くなる虞がある。しかも、細いリッジ部を外部応力から保護して素子破壊を防ぐためには、いわゆるJunction down(接合下向き姿勢。リッジ部が実装基板に対向する姿勢)で実装基板にダイボンディングすることができず、実装状態は、いわゆるJunction up(接合上向き姿勢)に制限される。これに対して、本発明では、窒化物半導体積層構造はリッジ部を有しておらず、上部クラッド層にもリッジ部が存在せず、上部クラッド層は、絶縁膜の開口部を入り込んでp型半導体層に接している。そのため、リッジ部形成のためのエッチングに起因するデバイス特性悪化の懸念がなく、かつJunction down(接合下向き姿勢)の実装姿勢をとることができる。
【0018】
そして、Junction downによって、実装基板に接合(ダイボンディング)した場合には、発光層で生じる熱を、上部クラッド層から実装基板へと効率的に逃がすことができるから、半導体レーザ素子を効率的に冷却でき、これにより、素子の温度特性の向上を図ることができる。
上部クラッド層は、n型クラッド層との間に発光層で生じた光を閉じ込めるために、ある程度の厚さを有する必要がある。しかし、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜は、成膜速度が遅いので、第1導電性膜だけで上部クラッド層を構成すると、上部クラッド層を形成するのに時間がかかってしまう。一方、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は、成膜速度は比較的速いものの、p型窒化物半導体に対する接触抵抗が高い。そこで、本発明では、上部クラッド層においてp型半導体層に接触する部分を酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜で構成して接触抵抗の低減が図られている。その一方で、第1導電性膜と、その上に形成された酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを上部クラッド層に含ませることによって、上部クラッド層の形成速度の向上を図ることができる。より具体的には、第1導電性膜を必要最小限の膜厚に形成することにより、上部クラッド層の形成に要する時間を短くでき、それによって生産性を向上できる。
【0019】
前記絶縁膜の厚さ方向から見た平面視において、前記開口部の幅は、1μm以上100μm以下であることが好ましい(請求項6)。
前記絶縁膜の厚さは、200nm以上400nm以下であることが好ましい(請求項7)。この構成によれば、開口部以外の領域におけるp型半導体層と上部クラッド層との間での絶縁性や、p型半導体層から上部クラッド層へ向かう光の閉じ込め効果の向上を図ることができる。
【0020】
前記第1導電性膜の電子濃度は、1×1019cm-3以上であることが好ましい(請求項8)。前記第1導電性膜は、前記発光層の発光波長に対して70%以上の透過率を有する(すなわち透明である)ことが好ましい(請求項9)。同様に、前記第2導電性膜は、前記発光層の発光波長に対して70%以上の透過率を有する(すなわち透明である)ことが好ましい(請求項10)。
【0021】
前記第1導電性膜は、Snを3%以上の組成で含むことが好ましい(請求項11)。この構成によれば、第1導電性膜の導電性の向上を図ることができる。
前記p型半導体層と前記第1導電性膜との接触抵抗は、1×10-3Ω・cm以下であることが好ましい(請求項12)。
前記第1導電性膜は、ITOからなることが好ましい(請求項13)。これにより、p型半導体層との接触抵抗を十分に低減できる。
【0022】
前記第1導電性膜の厚さは、2nm以上30nm以下であることが好ましい(請求項14)。この構成によれば、第1導電性膜の成膜時間を必要最小限に抑えることができるので、上部クラッド層の形成速度の向上を図ることができる。
前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含むZnOからなることが好ましい(請求項15)。前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含むMgZnOからなることが好ましい(請求項16)。前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含み、Mg組成が50%以下のMgZnOからなることが好ましい(請求項17)。前記III族原子は、GaまたはAlであることが好ましい(請求項18)。
【0023】
前記第2導電性膜の厚さは、400nm以上600nm以下であることが好ましい(請求項19)。この構成によれば、第2導電性膜が所定の厚さを有するので、上部クラッド層によるn型クラッド層との間での光の閉じ込め効果の向上を図ることができる。
前記第1導電性膜および第2導電性膜の屈折率は、前記発光層の屈折率より小さいことが好ましい(請求項20)。前記p型半導体層は、Mgを1×1019cm-3以上の濃度で含むことが好ましい(請求項21)。前記発光層は、InGaNからなることが好ましい(請求項22)。
【0024】
請求項23記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記p型半導体層が、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層を含み、共振器方向に延びたストライプ状のリッジ部を有し、当該リッジ部において50nm以上の層厚を有しており、前記リッジ部の両側において前記p型半導体層に接する絶縁膜をさらに含み、前記第1導電性膜が、前記リッジ部において前記p型半導体層に接し、前記絶縁膜上にまで延びている、半導体レーザ素子である。
【0025】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0026】
さらに、この発明では、p型半導体層には、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層が備えられている。これにより、電子を発光層へと反射でき、発光層への電子注入効率を高めることができる。さらに、p型半導体層には、共振器方向に延びたストライプ状のリッジ部が形成されており、そのリッジ部に第1導電性膜が接している。そして、そのリッジ部の両側に絶縁膜が配置されて、p型半導体層に接している。これにより、電流狭窄構造を形成でき、かつp型半導体層よりも屈折率の低い絶縁膜を発光層に近づけて配置できることから、横方向(共振器方向および窒化物半導体積層構造の積層方向に直交する方向)に関する発光層への光閉じ込めが強くなる。すなわち、リッジ部においてp型半導体層の層厚を50nm以上として縦方向(窒化物半導体積層構造の積層方向)に関する光閉じ込めを強化しながらも、絶縁膜を発光層に近づけて横方向の光閉じ込めを強めることができるので、発振閾値の低減に寄与できる。
【0027】
なお、電子ブロック層は、リッジ部の両側におけるp型半導体層の表面よりも深い位置において当該p型半導体層内に配置されていることが好ましい。これにより、発光層に対向する全領域に渡って電子ブロック層を配置できるので、発光層への電子注入効率を高めることができる。
p型半導体層の層厚が50nm未満の場合には、あえてリッジ部を形成しなくても絶縁層を発光層に十分に近づけることができ、横方向に関する光閉じ込めを十分に行うことができる。
【0028】
請求項24記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記p型半導体層が、前記発光層上に形成された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に形成され、厚さが10nm以上50nm以下であって、p型不純物(たとえばMg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされている第2p型ガイド層とを含む、半導体レーザ素子である。
【0029】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0030】
さらに、この発明では、p型半導体層が、発光層上に形成された第1p型ガイド層と、この第1p型ガイド層上に形成された第2p型ガイド層とを有している。第1p型ガイド層および第2p型ガイド層は、発光層へのキャリヤ閉じ込めおよび光閉じ込めに寄与する。第2p型ガイド層は、さらに、第1および第2導電性膜と接するコンタクト層としての役割をも担う。第2p型ガイド層は、厚さが10nm以上50nm以下とされることにより、キャリヤ閉じ込め効果および光閉じ込め効果を発揮できる。さらに、第2p型ガイド層は、p型不純物(たとえばMg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされていることによって、第1導電性膜との接触抵抗が低減されている。ただし、p型不純物を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングしたp型窒化物半導体層の電気抵抗は高くなるので、その層厚を50nm以下とすることによって、直列抵抗の低減が図られている。これにより、半導体レーザ素子の直列抵抗を低減して、その発熱を抑制できるので、発振閾値の低減に寄与することができる。10nmは、p型不純物(たとえばMg)を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングできる窒化物半導体層の厚さの下限である。
【0031】
たとえば、p型半導体層は、共振器方向に沿ってストライプ状に形成されたリッジ部を有していてもよい。リッジ部における第2p型ガイド層が、厚さ50nm、幅2μm、長さ30μm(共振器長)に形成されている場合に、第2p型ガイド層へのp型不純物(たとえばMg)のドーピング濃度が1×1020cm−3以上であれば、第2p型ガイド層での電気抵抗は8Ω以下にできる。
【0032】
請求項25記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記p型半導体層が、前記発光層上に形成された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に形成されAl組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層と、前記電子ブロック層上に形成され、厚さが10nm以上50nm以下であって、p型不純物(Mg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされている第2p型ガイド層とを含む、半導体レーザ素子である。
【0033】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0034】
さらに、この発明では、p型半導体層には、第1および第2p型ガイド層の間に、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層が備えられている。これにより、電子を発光層へと反射でき、発光層への電子注入効率を高めることができる。
さらに、この発明では、電子ブロック層を挟んで配置された第1および第2p型ガイド層が、発光層へのキャリヤ閉じ込めおよび光閉じ込めに寄与する。第2p型ガイド層は、さらに、第1および第2導電性膜と接するコンタクト層としての役割をも担う。第2p型ガイド層は、厚さが10nm以上50nm以下とされることにより、キャリヤ閉じ込め効果および光閉じ込め効果を発揮できる。さらに、第2p型ガイド層は、p型不純物(たとえばMg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされていることによって、第1導電性膜との接触抵抗が低減されている。ただし、p型不純物を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングしたp型窒化物半導体層の電気抵抗は高くなるので、その層厚を50nm以下とすることによって、直列抵抗の低減が図られている。これにより、半導体レーザ素子の直列抵抗を低減して、その発熱を抑制できるので、発振閾値の低減に寄与することができる。10nmは、p型不純物(たとえばMg)を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングできる窒化物半導体層の厚さの下限である。
【0035】
たとえば、p型半導体層は、共振器方向に沿ってストライプ状に形成されたリッジ部を有していてもよい。この場合に、リッジ部は前記第2p型ガイド層に形成されることが好ましい。そして、電子ブロック層は、リッジ部の両側における第2p型ガイド層の表面よりも深い位置に配置されることが好ましい。
また、リッジ部の両側には、絶縁膜が配置されることが好ましい。これにより、縦方向の光閉じ込めのために第2p型ガイド層が比較的厚く形成される場合であっても、絶縁膜を発光層に近づけて配置できるので、横方向の光閉じ込めを強くして、発振閾値の低減を図ることができる。
【0036】
前記第1導電性膜は、インジウム組成が90%以上のITO(InxSn1-xO。0.9≦x<1)からなることが好ましい(請求項26)。
また、前記第1導電性膜および前記第2導電性膜の合計膜厚が400nm以上であることが好ましい(請求項27)。これにより、第1および第2導電性膜は、十分な光閉じ込め機能を有することができる。
【0037】
請求項28記載の発明は、前記第2導電性膜上に形成されたp側電極パッドをさらに含み、前記第2導電性膜の共振器方向に直交する方向の幅が、前記p側電極パッドの前記共振器方向に直交する方向の幅よりも大きい、請求項23〜27のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子である。この構成により、p側電極パッドを介して半導体レーザ素子を外部接続できる。p側電極パッドの幅が、第2導電性膜の幅よりも小さいので、p側電極パッドをパターニングするときのエッチングを第2導電性膜で停止させることができる。すなわち、第2導電性膜をエッチングストッパとして利用して、p側電極パッドをパターニングできる。
【0038】
p側電極パッドは、たとえば、Au(金)を含んでいてもよい。この場合、p側電極パッドを形成する工程は、Au膜(電極パッド膜)を形成する工程と、そのAu膜をドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)でパターニングする工程とを含む。この場合に、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は、Auのための反応性イオンエッチングに対して耐性を有するので、Au膜のエッチングは第2導電性膜で停止する。もしも、電極パッド膜の下地膜が絶縁膜(たとえば酸化シリコン膜)である場合には、この絶縁膜は、電極パッド膜のためのエッチングに対して耐性を有しない場合がある。したがって、p型半導体層上に、当該p型半導体層を部分的に露出させる絶縁膜が形成されている場合には、第2導電性膜は当該絶縁膜上にまで延びて形成されていることが好ましい。そして、p側電極パッドを第2導電性膜よりも幅狭に形成することによって、第2導電性膜をエッチングストッパとして利用して、p側電極パッドのパターニングを行える。
【0039】
p型半導体層上に絶縁膜が形成されていて、この絶縁膜にp側電極パッドの縁部が接する構成の場合、p側電極パッドのパターニングのためのエッチングの際に、絶縁膜が損傷を受けて、p型半導体層が露出してしまうおそれがある。この場合、いわゆるJunction Downによって基板上に半導体レーザ素子を実装しようとすると、半田等のロウ材がp型半導体層に接し、意図しない電流経路が形成されてしまうおそれがある。このような不具合は、p側電極パッドを第2導電性膜よりも幅狭に形成する前述の構成によって回避できる。
【0040】
請求項29記載の発明は、素子マウント面を有するマウント部材をさらに含み、前記p側電極パッドが、前記素子マウント面に対向し、当該素子マウント面に接合されている、請求項28に記載の半導体レーザ素子である。この構成により、いわゆるJunction Downでマウント部材上に搭載された半導体レーザ素子を提供できる。これにより、マウント部材を介する効率的な放熱が可能であるので、発振効率を高めることができる。また、p側電極パッドが第2導電性膜よりも幅狭であるので、半田等のロウ材が窒化物半導体積層構造の領域外に流れ出ることを抑制できる。これにより、ショート等の接続不具合を抑制できる。
【0041】
前記マウント部材は、サブマウント基板であってもよいし、ステムであってもよい。
請求項30記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、前記p型半導体層が、前記発光層上に積層された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に積層されたp型電子ブロック層と、前記p型電子ブロック層上に積層され前記第1p型ガイド層よりもp型不純物濃度が高い第2p型ガイド層と、前記第2p型ガイド層上に積層され前記第2p型ガイド層よりもp型不純物濃度が高いp型コンタクト層とを含む、半導体レーザ素子である。
【0042】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0043】
さらに、この発明では、p型半導体層には、第1および第2p型ガイド層の間に、p型電子ブロック層が備えられている。これにより、電子を発光層へと反射でき、発光層への電子注入効率を高めることができる。p型電子ブロック層を挟んで配置された第1および第2p型ガイド層は、発光層へのキャリヤ閉じ込めおよび光閉じ込めに寄与する。p型コンタクト層は、第2導電性膜と接する。p型コンタクト層は、そのp型不純物濃度が高くされているので、第2導電性膜との接触抵抗が低くなっている。第2p型ガイド層はp型コンタクト層よりもp型不純物濃度が低く、さらに第1p型ガイド層は第2p型ガイド層よりもp型不純物濃度が低い。すなわち、発光層に近づくほど、p型不純物濃度が低くなっており、不純物による光の吸収を抑制する構造となっている。
【0044】
この発明の一実施形態では、少なくとも前記p型コンタクト層の一部が掘り込まれてリッジ部が形成されている(請求項30)。これにより、リッジ部に電流を集中させる電流狭窄構造を形成することができる。リッジ部は、共振器方向に沿ってストライプ状に形成されることが好ましい。そして、リッジ部の両側には、絶縁膜が配置されることが好ましい。これにより、p型コンタクト層を含むp型半導体層の層厚を或る程度確保して縦方向の光閉じ込めを図りつつ、絶縁膜を発光層に近づけて配置することにより横方向の光閉じ込めを強化できる。これにより、発振閾値を低減できる。
【0045】
前記第2p型ガイド層の層厚は、50nm以下であることが好ましい(請求項32)。とくに、前述のようなリッジ部が形成される場合に、第2p型ガイド層の層厚を50nm以下とすることにより、リッジ部の両側の絶縁膜を発光層に一層近づけることができる。これにより、横方向の光閉じ込めを一層強化できるので、発振閾値の低減に寄与できる。
さらに、前記p型コンタクト層のp型不純物濃度が1×1020cm−3以上であり、前記第1p型ガイド層および前記第2p型ガイド層のp型不純物濃度が5×1018cm−3以上5×1019cm−3以下であることが好ましい(請求項33)。この構成により、p型コンタクト層と第2導電性膜との接触抵抗を低減し、かつ第1および第2p型ガイド層による光の吸収を抑制できる。
【0046】
前記p型半導体層の総膜厚は、1500Å以下であることが好ましい(請求項34)。これにより、素子の薄型化を図ることができる。
請求項35記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、前記第2導電性膜に接するように形成され、TiNを含むp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子である。
【0047】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0048】
さらに、この発明では、第2導電性膜に接して形成されたp側電極パッドが、TiNを含む。p側電極パッド中のTiNは、製造工程中の素子半製品に対して熱処理が施されたとき、第2導電性膜からの酸素原子の拡散を抑制し、p側電極パッドが高抵抗化したり、p側電極パッドが剥がれたりすることを抑制または防止する。たとえば、n型層にオーミック接触するn側電極パッドを形成するために、素子半製品に対して600℃〜700℃の熱処理(シンター)が必要な場合がある。このような熱処理を経た後であっても、TiNを含むp側電極パッドを低抵抗に保つことができ、窒化物半導体積層構造に対するp側電極パッドの強固な密着性を保持できる。
【0049】
より具体的には、前記p側電極パッドは、前記第2導電性膜側から順に積層されたTi層、TiN層およびAu層を有する積層電極膜を含むことが好ましい(請求項36)。この構成によれば、第2導電膜中の酸素原子の拡散をTiN層で阻止できるので、素子半製品に対する熱処理(たとえば400℃〜900℃)が行われる場合であっても、積層電極膜からなるp側電極パッドを低抵抗に保つことができ、かつ窒化物半導体積層構造に対するp側電極パッドの強固な密着性を保持できる。Ti層およびTiN層の形成はスパッタ法で行われてもよい。また、Au層の形成は蒸着法で行われてもよい。
【0050】
p側電極パッドには、Ti/TiN/Au積層電極膜の他にも、TiN単膜、第2導電性膜の表面からTiN層およびAu層を順に積層した積層電極膜、第2導電性膜の表面からTiN層およびAl層を順に積層した積層電極膜などを適用できる。
請求項37記載の発明は、素子マウント面を有するマウント部材をさらに含み、前記p側電極パッドが、前記素子マウント面に対向し、当該素子マウント面に接合されている、請求項35または36に記載の半導体レーザ素子である。この構成により、いわゆるJunction Downでマウント部材上に搭載された半導体レーザ素子を提供できる。これにより、マウント部材を介する効率的な放熱が可能であるので、発振効率を高めることができる。また、p側電極パッドがTiNを含むので、動作時に発生した熱の影響によって、第2導電性膜中の酸素原子がp側電極パッド中に拡散して抵抗値が増加したり、p側電極パッドが剥がれたりすることを回避できる。前記マウント部材は、サブマウント基板であってもよいし、ステムであってもよい。
【0051】
請求項38記載の発明は、前記発光層に対して前記p側電極パッドとは反対側において前記窒化物半導体積層構造に接合されたn側電極パッドをさらに含み、前記n側電極パッドが、TiNを含む、請求項35〜37のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子である。
前記n側電極パッドは、前記窒化物半導体積層構造側から順に積層されたAl層、TiN層およびAu層を有する積層電極膜を含むものであってもよい(請求項39)。このほか、n側電極パッドとしては、TiN単膜、前記窒化物半導体積層構造側からAl層およびTiN層を順に積層した積層電極膜、前記窒化物半導体積層構造側からTiN層およびAu層を順に積層した積層電極膜などが適用されてもよい。
【0052】
n側電極パッドとしては、前述の構成のほか、前記窒化物半導体積層構造側から順に積層されたAlコンタクトメタル層、Ni層およびAu層を有する積層電極膜を例示できる。この他にも、Alコンタクトメタル層、Pt層およびAu層を有する積層電極膜をn側電極パッドに適用してもよい。
請求項40記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、開口部を有する絶縁膜と、前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、前記第2導電性膜に接するように形成され、前記開口部に対応する領域に凹部を有するp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子である。
【0053】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0054】
また、この発明では、p型半導体層上に開口部を有する絶縁膜が形成されていて、その開口部を介して第1導電性膜がp型半導体層に接している。これにより、電流狭窄構造が形成されているので、効率的にレーザ発振を生じさせることができる。そして、その開口部に対応する領域では、第2導電性膜に接して形成されたp側電極パッドに凹部が形成されている。したがって、p側電極パッドを実装基板に対向させてJunction Downで接合したときに、開口部に対応する領域(レーザ発振が生じる部分)に大きな応力がかかることがない。これにより、接合時等に発光層にダメージが生じることを回避できるから、半導体レーザ素子を実装基板にJunction Downで接合して構成される製品の歩留まりおよび信頼性を向上できる。また、Junction Down接合を容易に採用できるので、放熱性に優れた製品を提供できる。
【0055】
この発明の一実施形態では、前記開口部がストライプ状に形成されており、前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに垂直な方向の幅が前記絶縁膜の当該方向の幅以下の透明電極を形成している(請求項41)。この場合、ストライプ方向が共振器方向となる。第1および第2導電性膜の幅が絶縁膜の幅以下であるので、開口部以外で第1導電性膜または第2導電性膜が窒化物半導体積層構造に接することはない。第1および第2導電性膜によって形成される透明電極の幅を絶縁膜の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことにより、透明電極上に形成されたp側電極パッドの幅も広くできる。これにより、Junction Down接合を採用したときに、p側電極パッドを介する放熱がより効率的になる。
【0056】
この発明の一実施形態では、前記開口部がストライプ状に形成されており、前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに垂直な方向の幅が前記窒化物半導体積層構造の当該方向の幅以下の透明電極を形成している(請求項42)。この場合も、ストライプ方向が共振器方向となる。第1および第2導電性膜によって形成される透明電極は、窒化物半導体積層構造の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことが好ましい。これにより、透明電極上に形成されるp側電極パッドの幅を広くできるから、Junction Down接合を採用したときに、p側電極パッドを介する放熱がより効率的になる。
【0057】
前記p側電極パッドの前記ストライプに直交する方向の幅が、前記透明電極の当該方向の幅以下であることが好ましい(請求項43)。p側電極パッドの幅は、透明電極の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことが好ましい。これにより、p側電極パッドの幅を広くできるから、Junction Down接合を採用したときに、p側電極パッドを介する放熱がより効率的になる。
【0058】
この発明の一実施形態では、前記開口部がストライプ状に形成されており、前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに平行な方向の両端縁が、前記ストライプに平行な方向に関する前記窒化物半導体積層構造の両端面からそれぞれ後退した位置に形成された透明電極を形成している(請求項44)。
また、この発明の他の実施形態では、前記開口部がストライプ状に形成されており、前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに平行な方向の端縁付近における幅と当該方向の中央部における幅とが異なる透明電極を形成している(請求項45)。
【0059】
この発明の一実施形態では、前記p型半導体層が、高さ0.5μm以下に形成されたストライプ状のリッジ部を含み、前記開口部が前記リッジ部の頂面を露出させるように形成されている(請求項46)。高さ0.5μm以下のリッジ部は、絶縁膜の厚さよりも低い頂面を有することができる。そのため、p型半導体層にリッジ部を形成しても、p側電極パッドは絶縁膜の開口部に対応する領域に凹部を有することができる。よって、p型半導体層にリッジ部を形成して縦方向の光閉じ込めを強化しながら、Junction Down接合に有利な構造の半導体レーザ素子を提供できる。
【0060】
前記p型半導体層は、前記開口部において露出する表面を有するp型コンタクト層を含むことが好ましく、この場合に、前記p型コンタクト層のp型不純物濃度が1×1020cm−3以上であることが好ましい(請求項47)。この構成により、第1導電性膜とp型半導体層との接触抵抗を低くすることができるので、直列抵抗が低い半導体レーザ素子を提供できる。
【0061】
請求項48記載の発明は、n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備え、共振器方向両端に一対の共振器端面を有する窒化物半導体積層構造と、前記p型半導体層上に形成され、前記共振器方向に沿うストライプ状の開口部を有する絶縁膜と、前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、前記第2導電性膜に接するように形成され、前記一対の共振器端面とそれぞれ整合する一対の端縁を有するp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子を提供する。
【0062】
この構成により、第1および第2導電性膜が上部クラッド層として機能して、発光層への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜で構成された電極は、p型半導体層に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0063】
また、この発明では、p型半導体層上に開口部を有する絶縁膜が形成されていて、その開口部を介して第1導電性膜がp型半導体層に接している。これにより、電流狭窄構造が形成されているので、効率的にレーザ発振を生じさせることができる。
さらにこの発明では、p側電極パッドは、一対の共振器端面とそれぞれ整合する一対の端縁を有している。換言すれば、p側電極パッド6は、共振器方向の全長に渡って、第2導電性膜に接するように形成されている。これにより、共振器方向の全長に渡って、一様に電流を注入できるので、電流密度を共振器方向に関するいたるところで一様にできる。それによって、光出力特性を向上することができる。
【0064】
この発明の一実施形態では、前記p側電極パッドが、前記第2導電性膜に接する第1金属膜と、前記第1金属膜に積層された第2金属膜(耐酸化性金属材料からなることが好ましい。)とを含む積層金属膜からなり、前記第1金属膜の前記共振器方向に関する両端縁は、前記一対の共振器端面とそれぞれ整合しており、前記第2金属膜の前記共振器方向に関する両端縁は、前記一対の共振器端面からそれぞれ所定距離だけ後退した位置に配置されている(請求項49)。
【0065】
この構成によれば、第1金属膜は、共振器方向の全長に渡って第2導電性膜に接しているので、共振器方向のいたるところで一様に電流を注入できる。その一方で、第2金属膜の両端縁は、共振器端面から後退して配置されている。したがって、基板の劈開によって共振器端面を形成するときに、第2金属膜の影響を受けないので、良好な共振器端面を得ることができ、それによって、一層優れた特性の半導体レーザ素子を実現できる。とくに、第2金属膜が金(耐酸化性金属材料の一例)からなる場合(請求項51)には、その延性が高いので、このような構造をとることが好ましい。
【0066】
この発明の他の実施形態では、前記p側電極パッドを構成する積層金属膜が、前記第1および第2金属膜の間に配置され、前記第2金属膜のエッチングに対する耐性を有する第3金属膜をさらに含む(請求項50)。この構成により、第3金属膜をエッチングストッパとして利用して、第2金属膜をエッチングし、共振器端面近傍の領域を選択的に除去することができる。
【0067】
この発明のさらに他の実施形態では、前記第1金属膜が、前記第2金属膜のエッチングに対する耐性を有している(請求項51)。この構成により、第1金属膜をエッチングストッパとして利用して、第2金属膜をエッチングし、共振器端面近傍の領域を選択的に除去することができる。第1および第2金属膜は互いに接していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子の構成を説明するための模式的な斜視図であり、要部を切り欠いて示している。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図2に示す半導体レーザ素子の製造方法を示す図解的な断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図である。
【図5】図5は、この発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。
【図6】図6は、この発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。
【図7】図7は、上部クラッド層としての透明電極の層厚と閾値電流との関係を調べた結果を示す。
【図8】図8は、サブマウントにJunction Downで第3または第4の実施形態の半導体レーザ素子を接合した構造を示す図解的な断面図である。
【図9】図9は、この発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。
【図10】図10は、p型GaNコンタクト層および第2p型GaNガイド層の各層厚と閾値電流との関係を計算した結果を示す。
【図11】図11は、この発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。
【図12A】図12Aは、ZnO膜上にTi/TiN/Au積層電極膜からなる電極パッドを形成して抵抗特性を測定した結果を示す(実施例)。
【図12B】図12Bは、ZnO膜上にTi/Ni/Au積層電極膜からなる電極パッドを形成して抵抗特性を測定した結果を示す(比較例)。
【図12C】図12Cは、ZnO膜上にTi/Au積層電極膜からなる電極パッドを形成して抵抗特性を測定した結果を示す(比較例)。
【図13】図13Aおよび図13Bは、前記抵抗特性の測定方法を説明するための断面図および平面図である。
【図14】図14は、サブマウントにJunction Downで前記第6の実施形態の半導体レーザ素子を接合した構造を示す図解的な断面図である。
【図15】図15は、この発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。
【図16】図16Aは、前記第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の図解的な平面図である。また、図16Bは、その一部の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面を示す。
【図17】図17Aおよび図17Bは、前記第7の実施形態の第1変形例を説明するための平面図および断面図である。
【図18】図18Aおよび図18Bは、前記第7の実施形態の第2変形例を説明するための平面図および断面図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは、前記第7の実施形態の第3変形例を説明するための平面図および断面図である。
【図20】図20は、前記第7の実施形態の第4変形例を示す平面図である。
【図21】図21は、前記第7の実施形態の第5変形例を示す平面図である。
【図22】図22は、前記第7の実施形態の第6変形例を示す平面図である。
【図23】図23は、前記第7の実施形態の第7変形例を示す平面図である。
【図24】図24は、この発明の第8の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な部分断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。
【図25】図25は、この発明の第9の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。
【図26】図26は、第9の実施形態に係る半導体レーザ素子の図解的な平面図である。
【図27】図27は、第9の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に沿った縦断面を示す。
【図28】図28は、共振器方向の各部における電流密度を計算したシミュレーション結果を示す。
【図29】図29は、第9の実施形態による光出力特性の改善を説明するための光出力特性図である。
【図30】図30は、この発明の第10の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。
【図31】図31は、第10の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な平面図である。
【図32】図32は、第10の実施形態に係る半導体レーザ素子の共振器方向に沿う縦断面図である。
【図33】図33は、第9の実施形態の変形例を示す平面図である。
【図34】図34は、第10の実施形態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子の構成を説明するための模式的な斜視図であり、要部を切り欠いて示してある。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
この半導体レーザ素子101は、基板1と、基板1上に結晶成長(エピタキシャル成長)によって形成された窒化物半導体積層構造2と、基板1の裏面(窒化物半導体積層構造2と反対側の表面)に接触するように形成されたn側電極パッド3と、窒化物半導体積層構造2の表面に接触するように形成された絶縁膜4と、絶縁膜4上に形成されて窒化物半導体積層構造2の表面に部分的に接触するp側電極としての透明電極5とを備えたファブリペロー型のものである。図1では、説明の便宜上、透明電極5の一部を切り欠いて示しており、透明電極5の断面が見えている。
【0070】
基板1は、この実施形態では、GaN単結晶基板で構成されている。この基板1は、m面を主面としたものであり、この主面上における結晶成長によって、窒化物半導体積層構造2が形成されている。したがって、窒化物半導体積層構造2は、m面を結晶成長主面とする窒化物半導体からなる。なお、各図では、m軸方向、c軸方向およびa軸方向を指し示す矢印が図示されている。
【0071】
窒化物半導体積層構造2は、発光層10(活性層)と、n型半導体層11と、p型半導体層12とを備えている。各図において、ドットを付した部分が発光層10である。n型半導体層11は、発光層10に対して基板1側に配置されており、p型半導体層12は、発光層10に対して透明電極5側に配置されている。こうして、発光層10が、n型半導体層11およびp型半導体層12によって挟持されていて、ダブルヘテロ接合が形成されている。発光層10には、n型半導体層11から電子が注入され、p型半導体層12から正孔が注入される。これらが発光層10で再結合することにより、光が発生するようになっている。
【0072】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14(たとえば1.0μm厚)およびn型ガイド層15(たとえば100nm厚)を積層して構成されている。
一方、p型半導体層12は、発光層10上に形成されている。p型半導体層12は、全体で、Mgを1×1019cm-3以上の濃度で含んでいる。p型半導体層12は、発光層10側から順に、p型電子ブロック層16(たとえば20nm厚)、およびp型ガイド・コンタクト層17(たとえば100nm厚)を積層して構成されている。p型ガイド・コンタクト層17は、p型半導体層12における透明電極5側の表層部に位置している。
【0073】
n型クラッド層14は、基板1上に形成されている。n型クラッド層14は、発光層10からの光を当該発光層10側へと閉じ込める光閉じ込め効果を生じるものである。n型クラッド層14は、AlGaNにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、1×1018cm−3)することによってn型半導体とされている。n型クラッド層14は、n型ガイド層15よりもバンドギャップが広い。これにより、n型クラッド層14は、n型ガイド層15よりも十分に小さな屈折率を有するので、良好な閉じ込めを行うことができ、低閾値および高効率の半導体レーザ素子101を実現できる。
【0074】
n型ガイド層15は、n型クラッド層14上に形成されている。n型ガイド層15は、発光層10にキャリヤ(電子)を閉じ込めるためのキャリヤ閉じ込め効果を生じる半導体層である。これにより、発光層10における電子および正孔の再結合の効率が高められるようになっている。n型ガイド層15は、GaNにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、1×1018cm−3)することによりn型半導体とされている。
【0075】
発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。発光層10は、たとえばInGaNを含む多重量子井戸(MQW:Multiple-Quantum Well)構造を有しており、電子と正孔とが再結合することにより光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。発光層10は、具体的には、InGaN層(100Å厚以下。たとえば3nm厚)とGaN層(たとえば9nm厚)とを交互に複数周期繰り返し積層して構成されている。この場合に、InGaN層は、Inの組成比が5%以上とされることにより、バンドギャップが比較的小さくなり、量子井戸層を構成する。一方、GaN層は、バンドギャップが比較的大きなバリア層(障壁層)として機能する。たとえば、InGaN層とGaN層とは交互に2〜7周期繰り返し積層されて、MQW構造の発光層10が構成されている。発光波長は、量子井戸層(InGaN層)におけるInの組成を調整することによって、たとえば、400nm以上550nm以下とされている。前記MQW構造は、Inを含む量子井戸の数が3以下とされることが好ましい。
【0076】
発光波長を405nm近傍の青紫色領域とするときには、量子井戸層におけるIn組成は、6%〜8%(たとえば、7%)とするとよい。また、発光波長を460nm近傍の青色領域とするときには、量子井戸層におけるIn組成は、12%〜16%(たとえば、14%)とするとよい。また、発光波長を530nm近傍の緑色領域とするときには、量子井戸層におけるIn組成は、21%〜25%(たとえば、23%)とするとよい。
【0077】
p型電子ブロック層16は、発光層10上に形成されている。p型電子ブロック層16は、AlGaNにp型ドーパントとしてのたとえばMgをドープ(ドーピング濃度は、たとえば、5×1018cm−3)して形成されたp型半導体であり、発光層10からの電子の流出を防いで、電子および正孔の再結合効率を高めている。
p型ガイド・コンタクト層17は、p型電子ブロック層16上に形成されている。p型ガイド・コンタクト層17は、透明電極5とのオーミックコンタクトをとるための低抵抗層(コンタクト層)としての機能を有するとともに、発光層10にキャリヤ(正孔)を閉じ込めるためのキャリヤ閉じ込め効果を生じる半導体層としての機能をも有する層である。これにより、発光層10における電子および正孔の再結合の効率が高められるようになっている。p型ガイド・コンタクト層17は、InGaNからなり、InGaNにたとえばp型ドーパントとしてのMgを高濃度にドープする(ドーピング濃度は、たとえば、3×1019cm−3)ことによってp型半導体とされている。
【0078】
この実施形態では、p型半導体層12は、リッジ形状等に整形されておらず、その表面は平坦面となっている。この平坦な表面に接するように絶縁膜4がp型半導体層12上に形成されている。
絶縁膜4は、たとえば、ZrOまたはSiOからなり、その厚さは、200nm以上400nm以下である。絶縁膜4には、開口部20が形成されている。開口部20は、絶縁膜4の幅方向(a軸方向)中間部において、c軸方向(共振器方向)における絶縁膜4の全域に亘って延びる帯状(ストライプ状)に形成されている。開口部20は、絶縁膜4を、その厚さ方向(m軸方向)において貫通している。当該厚さ方向から見た平面視において、開口部20は、a軸方向(共振器方向に直交する方向)において1μm以上100μm以下の幅を有している。この幅は、p型半導体層12側へ近付くに従って狭くなっている。そのため、絶縁膜4において開口部20を幅方向から縁取る1対の側面部は、p型半導体層12側へ近付くに従って接近する1対の傾斜面4Aとなっている。開口部20では、p型半導体層12のp型ガイド・コンタクト層17の表面が露出されている。
【0079】
透明電極5は、絶縁膜4上に形成されていて、開口部20を介してp型半導体層12のp型ガイド・コンタクト層17にオーミック接触している。そのため、透明電極5は、絶縁膜4上に形成されているとともに、開口部20においてp型半導体層12上にも形成されている。透明電極5は、絶縁膜4側から順に第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。透明電極5全体は、400nm程度の厚みを有している。
【0080】
第1導電性膜21は、2nm以上30nm以下(好ましくは10nm)の厚みを有する透明な酸化膜である。「透明」とは、発光層10の発光波長に対して透明であることであり、具体的には、たとえば、発光波長の透過率が70%以上の場合をいう。第1導電性膜21は、絶縁膜4の表面(図2における上面)における開口部20以外の全領域と、絶縁膜4において開口部20を縁取る1対の傾斜面4Aの全領域と、p型ガイド・コンタクト層17の表面において開口部20から露出された全領域とに亘って連続して形成されている。つまり、第1導電性膜21は、開口部20を介してp型ガイド・コンタクト層17(p型半導体層12)に接するように絶縁膜4上に形成されている。
【0081】
第1導電性膜21は、以下の特性(1)〜(3)を有する材料からなる。
特性(1):電子濃度が1×1019cm-3以上である。
特性(2):透過率が発光層10の発光波長に対して70%以上である。
特性(3):仕事関数が5.0eV以上である。
以上の特性を有するものとして、酸化インジウム(In)系の材料が挙げられる。具体的には、この実施形態では、第1導電性膜21は、ITOからなる。この場合、第1導電性膜21と、これが接するp型半導体層12との接触抵抗は、1×10-3Ω・cm以下になっている。第1導電性膜21を構成する酸化インジウム系の材料は、Snを3%以上の組成で含んでいることが好ましい。
【0082】
第2導電性膜22は、400nm以上600nm以下の厚みを有する透明な酸化膜である。つまり、第2導電性膜22の透過率は、発光層10の発光波長に対して70%以上である。第2導電性膜22は、第1導電性膜21の表面(図2における上面)上の全域に亘って形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化ガリウム(Ga)系または酸化錫(SnO)系の材料からなる。具体的には、第2導電性膜22は、GaもしくはAlのIII族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含むZnOまたはMgZnOからなる。第2導電性膜22がMgZnOからなる場合、Mg組成を変更することによって第2導電性膜22の屈折率を調整できる。MgZnOにおけるMg組成は、50%以下であることが好ましい。具体的に、第2導電性膜22を構成するMgZnOは、MgxZn1-xO(0≦x<1)と表わすことができる。
【0083】
透明電極5は、上部クラッド層として、n型クラッド層14との間で、発光層10からの光を当該発光層10側へと閉じ込める光閉じ込め効果を生じるものである。そのため、透明電極5に含まれる第1導電性膜21および第2導電性膜22の屈折率は、発光層10の屈折率より小さい。具体的には、発光層10の屈折率が2.4であるのに対し、ITOからなる場合における第1導電性膜21の屈折率は2.1であり、ZnOからなる場合における第2導電性膜22の屈折率は2.2である。また、SiOからなる場合における絶縁膜4の屈折率は1.4と小さいことから、絶縁膜4も光閉じ込め効果を生じる。
【0084】
発光層10からの光が透明電極5とn型クラッド層14との間で閉じ込められることから、この半導体レーザ素子101には、p型窒化物半導体からなるクラッド層(p型半導体クラッド層)が存在しない。つまり、窒化物半導体積層構造2は、p型半導体クラッド層を有していない。
n側電極パッド3は、たとえば、基板1側から順にAl層、Ti層およびAu層を積層した多層構造を有しており、そのAl層が基板1にオーミック接触している。
【0085】
このような構成により、p型半導体クラッド層を設けていない構造でありながら、良好な光閉じ込め効果を得ることができ、発振効率を高めて、低閾値(低VF)化に寄与することができる。また、p型半導体層12がp型半導体クラッド層を含まない構造であるため、透明電極5から発光層10までの距離が短い。そのため、電流狭窄および横方向(a軸方向)の光閉じ込めのためにp型半導体層12をリッジ形状に形成する必要がなく、また、電気抵抗も低くなる。しかも、Alを含むp型半導体クラッド層を設けると、このp型半導体クラッド層自体が高抵抗層となるが、このようなp型半導体クラッド層を必要としない本実施形態の構成により、電気抵抗を効果的に低減できる。こうして、簡単な構成でありながら、良好な発振効率を実現でき、低閾値化を実現することができる。リッジ構造を必要としない簡単な構造であるため、製造工程も簡素化できる。
【0086】
窒化物半導体積層構造2は、c軸方向両端における劈開により形成された一対の端面24,25(劈開面)を有している。一対の端面24,25は、互いに平行であり、いずれもc軸方向(共振器方向)に垂直である。こうして、n型ガイド層15、発光層10およびp型ガイド・コンタクト層17によって、端面24,25を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、発光層10で発生した光は、共振器端面24,25の間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、共振器端面24,25からレーザ光として素子外に取り出される。
【0087】
共振器端面24,25は、それぞれ絶縁膜(図示せず)によって被覆されている。共振器端面24は、+c軸側端面であり、共振器端面25は、−c軸側端面である。すなわち、共振器端面24の結晶面は+c面であり、共振器端面25の結晶面は−c面である。−c面側の絶縁膜は、アルカリに溶けるなど化学的に弱い−c面を保護する保護膜として機能することができ、半導体レーザ素子101の信頼性の向上に寄与する。
【0088】
+c面である共振器端面24を被覆するように形成された絶縁膜は、たとえばZrOの単膜からなる。これに対し、−c面である共振器端面25に形成された絶縁膜は、たとえばSiO膜とZrO膜とを交互に複数回繰り返し積層した多重反射膜で構成されている。+c面側の絶縁膜を構成するZrOの単膜は、その厚さがλ/2n(ただし、λは発光層10の発光波長。nはZrOの屈折率)とされている。一方、−c面側の絶縁膜を構成する多重反射膜は、膜厚λ/4n(但しnはSiOの屈折率)のSiO膜と、膜厚λ/4nのZrO膜とを交互に積層した構造となっている。
【0089】
このような構造により、+c軸側の共振器端面24における反射率は小さく、−c軸側の共振器端面25における反射率が大きくなっている。より具体的には、たとえば、共振器端面24の反射率は20%程度とされ、共振器端面25における反射率は99.5%程度(ほぼ100%)となる。したがって、共振器端面24から、より大きなレーザ出力が出射されることになる。すなわち、この半導体レーザ素子101では、共振器端面24が、レーザ出射端面とされている。
【0090】
このような構成によって、n側電極パッド3および透明電極5を電源に接続し、n型半導体層11およびp型半導体層12から電子および正孔を発光層10に注入することによって、この発光層10内で電子および正孔の再結合を生じさせ、たとえば、波長400nm〜550nmの光を発生させることができる。この光は、n型クラッド層14と透明電極5(上部クラッド層)との間に閉じ込められ、窒化物半導体積層構造2の積層方向と垂直な共振器方向(c軸方向)に伝搬する。具体的には、この光は、共振器端面24,25の間をガイド層15,17に沿ってc軸方向(共振器方向)に往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、レーザ出射端面である共振器端面24から、より多くのレーザ出力が外部に取り出されることになる。
【0091】
以上のように、半導体レーザ素子101は、p型半導体クラッド層を有していない。つまり、窒化物半導体積層構造2は、p型半導体クラッド層を有していない。窒化物半導体積層構造2がp型半導体クラッド層を有する場合には、窒化物半導体積層構造2の形成工程において、比較的低温で発光層10を形成してから、発光層10の場合よりも高い温度でp型半導体クラッド層を形成することになる。そのため、p型半導体クラッド層を形成する際に、発光層10に対して熱によるダメージが加わる虞がある。それに対して、この実施形態では、窒化物半導体積層構造2がp型半導体クラッド層を有していないので、窒化物半導体積層構造2の形成工程において発光層10に対して熱によるダメージが加わるといった不具合を防止できる。
【0092】
透明電極5は、n型クラッド層14との間で発光層10の光を閉じ込めるために、ある程度の厚さを有する必要がある。しかし、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21は、成膜速度が遅いので、第1導電性膜21だけで透明電極5を構成すると、透明電極5を形成するのに時間がかかってしまう。一方、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は、成膜速度は比較的速いものの、p型窒化物半導体に対する接触抵抗が高い。そこで、本実施形態では、透明電極5においてp型半導体層12(p型ガイド・コンタクト層17)に接触する部分を酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21で構成して接触抵抗の低減が図られている。特に、第1導電性膜21は、ITOからなるので、p型半導体層12との接触抵抗を十分に低減できる。その一方で、第1導電性膜21と、その上に形成された酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22とを透明電極5に含ませることによって、透明電極5の形成速度の向上を図ることができる。より具体的には、第1導電性膜21を必要最小限の膜厚に形成することにより、透明電極5の形成に要する時間を短くでき、それによって生産性を向上できる。
【0093】
また、p型ガイド・コンタクト層17は、InGaNからなるので、Alを含む組成の場合に比べて、低温で形成できる。そのため、発光層10に対する熱ダメージを一層低減できる。
また、絶縁膜4は、開口部20以外の領域において、p型半導体層12と透明電極5とを絶縁する。絶縁膜4では、開口部20において電流狭窄を行うことができ、絶縁膜4は、上部クラッド層としての透明電極5とともに発光層10への光閉じ込めに寄与する。絶縁膜4の厚さが200nm以上400nm以下であるから、絶縁膜4は、開口部20以外の領域におけるp型半導体層12と透明電極5との間での絶縁性を十分に確保できるとともに、p型半導体層12から透明電極5へ向かう光の閉じ込め効果の向上を図ることができる。
【0094】
透明電極5は、p型半導体層12に電流を供給する電極となる。透明電極5は、絶縁膜4の開口部20に入り込んでp型半導体層12に接している。これにより、透明電極5とp型半導体層12との電気的接続は、開口部20内に制限されるので、電流狭窄構造を形成できる。一般的な半導体レーザ素子は、たとえばp型半導体層12にリッジ部を形成することによって電流狭窄構造を形成している。ところが、リッジ部を形成するためのエッチングのときにリッジ部の側面および根元部分の半導体結晶に欠陥が生じ、これにより、デバイス特性が悪くなる虞がある。しかも、細いリッジ部を外部応力から保護して素子破壊を防ぐためには、いわゆるJunction down(接合下向き姿勢。リッジ部が実装基板に対向する姿勢)で実装基板にダイボンディングすることができず、実装状態は、いわゆるJunction up(接合上向き姿勢)に制限される。これに対して、本実施形態では、窒化物半導体積層構造2はリッジ部を有しておらず、透明電極5にもリッジ部が存在せず、透明電極5は、絶縁膜4の開口部20を入り込んでp型半導体層12に接している。そのため、リッジ部形成のためのエッチングに起因するデバイス特性悪化の懸念がなく、かつJunction down(接合下向き姿勢)の実装姿勢をとることができる。
【0095】
そして、Junction downによって、実装基板に接合(ダイボンディング)した場合には、発光層10で生じる熱を、透明電極5から実装基板へと効率的に逃がすことができるから、半導体レーザ素子101を効率的に冷却でき、これにより、素子の温度特性の向上を図ることができる。
なお、透明電極5にリッジ部分があれば、透明電極5をJunction downによって実装基板に接合することはできないので、半導体レーザ素子101では、n側電極パッド3を、Junction upによって実装基板に接合するしかない。この場合、n側電極パッド3が半導体レーザ素子101において発光層10に比較的遠い位置にあるので、発光層10の熱をn側電極パッド3側の実装基板へ円滑に逃がすことは困難である。
【0096】
また、絶縁膜4の開口部20は、比較的精度よく形成できることから、半導体レーザ素子101の順方向電圧(VF)が個体間でばらつくことを防止できる。
そして、第1導電性膜21は、Snを3%以上の組成で含むので、導電性の向上を図ることができる。また、第1導電性膜21の厚さが2nm以上30nm以下であるから、第1導電性膜21の成膜時間を必要最小限に抑えることができるので、透明電極5の形成速度の向上を図ることができる。
【0097】
また、第2導電性膜22が、400nm以上600nm以下の所定の厚さを有するので、透明電極5によるn型クラッド層14との間での光の閉じ込め効果の向上を図ることができる。
図3は、図2に示す半導体レーザ素子の製造方法を示す図解的な断面図である。
図3を参照して、まず、ウエハ50を準備する。ウエハ50は、各半導体レーザ素子101の基板1となる。そして、ウエハ50上に窒化物半導体積層構造2が成長させられる。窒化物半導体積層構造2のp型ガイド・コンタクト層17上に、開口部20と同じパターンのレジスト膜(図示せず)が形成される。そして、そのレジスト膜を覆い、レジスト膜が形成されていない領域でp型ガイド・コンタクト層17を覆うように絶縁膜4が形成される。その後、絶縁膜4の一部をレジスト膜(図示せず)とともにリフトオフしてパターニングすることによって、図3に示すように、絶縁膜4にストライプ状の開口部20が形成される。次いで、図2に示すように、開口部20を介してp型ガイド・コンタクト層17にオーミック接触する透明電極5が形成され、その後、基板1にオーミック接触するn側電極パッド3が形成される。n側電極パッド3の形成は、たとえば、抵抗加熱または電子線ビームによる金属蒸着装置によって行うことができる。また、透明電極5の形成は、たとえば、スパッタ法で行うことができる。
【0098】
次の工程は、個別素子への分割である。すなわち、ウエハ50を、絶縁膜4の開口部20が延びる方向(c軸方向)およびこれに垂直な方向に劈開して、半導体レーザ素子101を構成する個々の素子が切り出される。c軸方向に平行な方向に関する分割はa面に沿って行われる。また、c軸方向に垂直な方向に関する分割はc面に沿う劈開によって行われる。このc面に沿う劈開によって、+c面(劈開面)からなる共振器端面24と、−c面(劈開面)からなる共振器端面25とが形成される(図1参照)。
【0099】
共振器端面24,25には、それぞれ前述の絶縁膜が形成される(図1参照)。この絶縁膜の形成は、たとえば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)成膜法によって行うことができる。c軸方向に垂直な方向に関するウエハ分割(c面に沿う劈開)を行ってバー状体を形成し、このバー状体の側面(c面)に絶縁膜を形成し、その後に、バー状体をa面に沿って分割するとよい。これにより、共振器端面24,25への絶縁膜の形成工程を複数のチップに関して共通に行うことができる。
【0100】
以上の結果、個々の半導体レーザ素子101(図1および図2参照)が完成する。
図4は、この発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する断面が示されている。図4において、前述の第1の実施形態の半導体レーザ素子101の各部に対応する部分には同一の参照符号を付す。この半導体レーザ素子102では、p型半導体層12におけるp型ガイド・コンタクト層17において、平面視で、絶縁膜4において開口部20以外の部分に一致する部分が、それ以外の部分(開口部20に一致する部分)に比べて薄くなっている。そのため、p型ガイド・コンタクト層17において、平面視で開口部20に一致する部分は、透明電極5側へ突出するリッジ部(凸部)40となっていて、開口部20内に入り込んでいる。すなわち、p型ガイド・コンタクト層17は、共振器方向に沿ってストライプ状に形成されたリッジ部40を有している。なお、図4におけるリッジ部40の断面は、透明電極5側へ向けて幅狭となる略等脚台形状であるが、この形状でなくてもよい。
【0101】
この場合、p型ガイド・コンタクト層17において平面視で開口部20に一致しない部分が薄くなることで、絶縁膜4が発光層10に接近する。これにより、絶縁膜4における電流狭窄の効果が高まるとともに、絶縁膜4は、発光層10への光閉じ込めに一層効果的に寄与する。
リッジ部40の高さは、この実施形態では、絶縁膜4の表面以下である。そして、絶縁膜4において開口部20を縁取る傾斜面4Aと、リッジ部40の両側の傾斜面とによって、リッジ部40の両側に一対の断面V字形の溝が形成されている。第1導電性膜21は、当該一対の溝に入り込んで形成されており、その表面は平坦面となっている。この平坦な表面上に、第2導電性膜22が形成されている。したがって、第2導電性膜22は、平坦な表面を有している。すなわち、リッジ部40の高さが絶縁膜4の厚さ以下であるため、透明電極5はリッジ部を有していない。そのため、p型ガイド・コンタクト層17にリッジ部40を形成して光閉じ込めを強化した構造でありながら、Junction Downによる接合にも対応可能である。
【0102】
図5は、この発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。この図5において、第2の実施形態の半導体レーザ素子(図4)の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
この半導体レーザ素子103は、基板1と、窒化物半導体積層構造2と、n側電極パッド3と、絶縁膜4と、上部クラッド層としての透明電極5と、p側電極パッド6とを備えている。窒化物半導体積層構造2は、基板1上に順に積層された、n型半導体層11、発光層10およびp型半導体層12を備えている。基板1は、m面を主面とするGaN基板であってもよい。絶縁膜4は、たとえばSiOからなる。
【0103】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14およびn型ガイド層15を積層して構成されている。発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。
p型半導体層12は、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、第1p型ガイド層171上に形成されたp型電子ブロック層16と、p型電子ブロック層16上に形成された第2p型ガイド層172とを含む。第2p型ガイド層172は、透明電極5との電気的接続のためのコンタクト層を兼ねる。第2p型ガイド層172には、共振器方向に沿って形成されたストライプ状のリッジ部40が形成されている。第1p型ガイド層171には、p型不純物としてのMgが、たとえば1×1019cm−3程度の濃度でドーピングされており、その厚さは、50nm程度である。p型電子ブロック層16は、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなり、その厚さは20nm程度である。第2p型ガイド層172は、第1p型ガイド層171よりも高濃度でp型不純物を含む。より具体的には、第2p型ガイド層172には、p型不純物としてのMgが、たとえば1×1020cm−3以上(より具体的は、1×1020cm−3程度)の濃度でドーピングされている。第2p型ガイド層172は、p型電子ブロック層16の全域を覆うように形成されており、リッジ部40における厚さは、たとえば10nm以上50nm以下(より具体的には、20nm程度)である。p型半導体層12は、リッジ部40において、全体で50nm以上(より具体的には100nm程度)の層厚を有している。p型電子ブロック層16は、リッジ部40の両側における第2p型ガイド層172よりも深い位置に配置されている。すなわち、リッジ部40の両側において、第2p型ガイド層172は、その底部を残すように掘り込まれている。
【0104】
絶縁膜4は、リッジ部40の両側に配置されていて、開口部20からリッジ部40を露出させている。すなわち、絶縁膜4は、リッジ部40の両側において、第2p型ガイド層172に接している。
透明電極5は、p型半導体層12側から順に、第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。第1導電性膜21は、酸化インジウム系の材料(たとえばITO)からなる。第1導電性膜21は、より具体的には、インジウム組成が90%以上のITO(InxSn1-xO。0.9≦x<1)からなっていてもよい。第1導電性膜21は、開口部20に入り込んで、リッジ部40の頂面および両側面に接しており、さらに、開口部20外の絶縁膜4の表面にまで延びて形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなり、第1導電性膜21の表面全域を覆うように形成されている。第1導電性膜21および第2導電性膜22の合計膜厚(透明電極5の膜厚)は、400nm以上(たとえば600nm程度)であることが好ましい。
【0105】
p側電極パッド6は、透明電極5にオーミック接触する金属電極であり、たとえば透明電極5の表面にTi層およびAu層を順に積層した積層電極膜からなっていてもよい。p側電極パッド6は、共振器方向および窒化物半導体積層構造2の積層方向に直交する共振器直交方向(図5の左右方向)の幅が、透明電極5よりも狭い。換言すれば、第2導電性膜22の共振器直交方向の幅は、p側電極パッド6の共振器直交方向の幅よりも広い。
【0106】
このような構成の半導体レーザ素子103においては、第1および第2導電性膜21,22が上部クラッド層として機能して、発光層10への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜21,22で構成された透明電極5は、p型半導体層12に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0107】
さらに、この実施形態の半導体レーザ素子103では、p型半導体層12には、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層16が備えられている。これにより、電子を発光層10へと反射でき、発光層10への電子注入効率を高めることができる。さらに、p型半導体層12には、共振器方向に延びたストライプ状のリッジ部40が形成されており、そのリッジ部40に第1導電性膜21が接している。そして、そのリッジ部40の両側に絶縁膜4が配置されて、p型半導体層12に接している。これにより、電流狭窄構造を形成でき、かつp型半導体層12よりも屈折率の低い絶縁膜4を発光層10に近づけて配置できることから、共振器直交方向(図5の左右方向)に関する発光層10への光閉じ込めが強くなる。すなわち、リッジ部40においてp型半導体層12の層厚を50nm以上として縦方向(窒化物半導体積層構造2の積層方向)に関する光閉じ込めを強化しながらも、絶縁膜4を発光層に近づけて横方向の光閉じ込めを強めることができるので、発振閾値の低減に寄与できる。
【0108】
また、電子ブロック層16は、リッジ部40の両側におけるp型半導体層12の表面よりも深い位置において当該p型半導体層12内に配置されているから、電子ブロック層16は、発光層10の全領域に対向している。これにより、発光層10への電子注入効率を高めることができる。
さらに、この実施形態の半導体レーザ素子103においては、p型半導体層12が、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、この第1p型ガイド層171上に形成された第2p型ガイド層172とを有している。第1p型ガイド層171および第2p型ガイド層172は、発光層10へのキャリヤ閉じ込めおよび光閉じ込めに寄与する。第2p型ガイド層172は、さらに、第1導電性膜21と接するコンタクト層としての役割をも担う。第2p型ガイド層172は、リッジ部40において厚さが10nm以上50nm以下とされることにより、キャリヤ閉じ込め効果および光閉じ込め効果を発揮できる。さらに、第2p型ガイド層172は、p型不純物(たとえばMg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされていることによって、第1導電性膜21との接触抵抗が低減されている。ただし、p型不純物を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングしたp型窒化物半導体層の電気抵抗は高くなるので、その層厚を50nm以下とすることによって、直列抵抗の低減が図られている。これにより、半導体レーザ素子102の直列抵抗を低減して、その発熱を抑制できるので、発振閾値の低減に寄与することができる。10nmは、p型不純物(たとえばMg)を1×1020cm−3以上の濃度でドーピングできる窒化物半導体層の厚さの下限である。
【0109】
リッジ部40における第2p型ガイド層172が、厚さ50nm、幅2μm、長さ30μm(共振器長)に形成されている場合に、第2p型ガイド層172へのp型不純物(たとえばMg)のドーピング濃度が1×1020cm−3以上であれば、第2p型ガイド層172での電気抵抗を8Ω以下にできる。
また、この実施形態の半導体レーザ素子103においては、p側電極パッド6の幅が、第2導電性膜22の幅よりも小さいので、p側電極パッド6をパターニングするときのエッチングを第2導電性膜22で停止させることができる。すなわち、第2導電性膜22をエッチングストッパとして利用して、p側電極パッド6をパターニングできる。たとえば、p側電極パッド6がAu膜を含む場合、p側電極パッド6を形成する工程は、Au膜(電極パッド膜)を形成する工程と、そのAu膜をドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)でパターニングする工程とを含む。この場合に、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなる第2導電性膜22は、Auのための反応性イオンエッチングに対して耐性を有するので、Au膜のエッチングは第2導電性膜22で停止する。もしも、電極パッド膜の下地膜が絶縁膜4(たとえば酸化シリコン膜)である場合には、この絶縁膜4は、電極パッド膜のためのエッチングに対して耐性を有しない場合がある。この場合、電極パッド膜のエッチングの際に、絶縁膜4までエッチングされてp型半導体層12が露出するおそれがある。p型半導体層12が露出していると、いわゆるJunction Downによって基板上に半導体レーザ素子103を実装しようとすると、半田等のロウ材がp型半導体層12に接し、意図しない電流経路が形成されてしまうおそれがある。これに対して、この実施形態の構成であれば、電極パッド膜のエッチングを第2導電性膜22で確実に停止させることができるので、p型半導体層12が露出したりする不具合を回避できるから、意図しない電流経路が形成されることを抑制または防止できる。
【0110】
図6は、この発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。この図6において、第3の実施形態の半導体レーザ素子(図5)の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
この半導体レーザ素子104は、p型半導体層12にリッジ部40が形成されていない点を除いて、第3の実施形態の半導体レーザ素子103と同様の構成を有している。すなわち、第2p型ガイド層172は一様な厚さに形成されており、10nm以上50nm以下の厚さに形成されている。ただし、絶縁膜4を発光層10に十分に近づけて共振器直交方向(横方向)の光閉じ込めを十分に行うためには、p型半導体層12の全体の層厚を50nm未満とすることが好ましい。このような構成によっても、第3の実施形態の構成と同様の技術的効果が得られる。
【0111】
図7は、上部クラッド層としての透明電極5の層厚と、閾値電流密度との関係を調べた結果を示す。透明電極5を厚く形成するほど光閉じ込めが強くなり、閾値電流密度が低くなっているのがわかる。ただし、透明電極5の厚さが400nm以上の範囲では、閾値電流が飽和していることから、透明電極5を400nm以上の厚さ(すなわち、厚さの下限が400nm)で形成しておけばよい。このように、第1導電性膜21および第2導電性膜22の合計膜厚(透明電極5の厚さ)を400nm以上とすることにより、第1および第2導電性膜21,22(透明電極5)は、十分な光閉じ込め機能を有することができる。
【0112】
図8は、サブマウントにJunction Downで半導体レーザ素子103,104を接合した構造を示す図解的な断面図である。サブマウント基板60の素子マウント面61には、互いに絶縁された配線パターン63A,63Bが形成されている。一つの配線パターン63Aに、半田等のロウ材64によって、p側電極パッド6が接合されている。すなわち、半導体レーザ素子103,104は、p側電極パッド6をサブマウント基板60の素子マウント面61に対向させたJunction Down接合でサブマウント基板60に接合されている。n側電極パッド3は、ボンディングワイヤ65によって、配線パターン63Bに接続されている。
【0113】
この構成により、いわゆるJunction Downでサブマウント基板60に搭載された半導体レーザ素子103,104を提供できる。これにより、サブマウント基板60を介する効率的な放熱が可能であるので、半導体レーザ素子103,104の発振効率を高めることができる。また、p側電極パッド6が第2導電性膜22よりも幅狭であるので、半田等のロウ材64が窒化物半導体積層構造2の領域外に流れ出ることを抑制できる。これにより、ショート等の接続不具合を抑制できる。
【0114】
図9は、この発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。この図9において、前述の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子101の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
この半導体レーザ素子105は、基板1と、窒化物半導体積層構造2と、n側電極パッド3と、絶縁膜4と、上部クラッド層としての透明電極5とを備えている。窒化物半導体積層構造2は、基板1上に順に積層された、n型半導体層11、発光層10およびp型半導体層12を備えている。基板1は、c面を主面とするGaN基板であってもよい。絶縁膜4は、たとえばSiOからなる。
【0115】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14およびn型ガイド層15を積層して構成されている。発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。たとえば、n型クラッド層14はn型AlGaN層であってもよく、n型ガイド層15はn型InGaN層であってもよい。
p型半導体層12は、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、第1p型ガイド層171上に形成されたp型電子ブロック層16と、p型電子ブロック層16上に形成された第2p型ガイド層172と、第2p型ガイド層172上に形成されたp型コンタクト層173とを含む。p型コンタクト層173は、共振器方向に沿うストライプ状のリッジ部を形成している。すなわち、p型コンタクト層173は、ストライプ状に成形されていて、共振器直交方向の両側が第2p型ガイド層172まで掘り切られている。
【0116】
第1p型ガイド層171には、p型不純物としてのMgが、たとえば5×1018cm−3以上5×1019cm−3以下の濃度でドーピングされており、その厚さは、40nm程度である。第1p型ガイド層171はp型GaN層であってもよい。p型電子ブロック層16は、Al組成が18%〜22%のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなり、その厚さは20nm程度である。第2p型ガイド層172は、5×1018cm−3以上5×1019cm−3以下の濃度で、かつ第1p型ガイド層171よりも高濃度でp型不純物を含む。第2p型ガイド層172はp型GaN層であってもよい。第2p型ガイド層172は、p型電子ブロック層16の全域を覆うように形成されており、たとえば50nm以下の厚さに形成されている。p型コンタクト層173は、たとえばp型GaN層からなり、p型不純物としてのMgが、第2p型ガイド層172よりも高濃度にドーピングされている。たとえば、p型コンタクト層173のp型不純物濃度(Mg濃度)は、1×1020cm−3以上であることが好ましい。p型コンタクト層173の層厚は30nm程度であってもよい。素子の薄型化のためには、p型半導体層12は、リッジ部を構成するp型コンタクト層173の部分において、全体で1500Å以下の厚さに形成されることが好ましい。
【0117】
絶縁膜4は、リッジ部をなすp型コンタクト層173の両側に配置されていて、開口部20からp型コンタクト層173の頂面を露出させている。すなわち、絶縁膜4は、リッジ形状のp型コンタクト層173の両側において、第2p型ガイド層172に接している。
透明電極5は、p型半導体層12側から順に、第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。第1導電性膜21は、酸化インジウム系の材料(たとえばITO)からなる。第1導電性膜21は、開口部20に入り込んで、p型コンタクト層173に接しており、さらに、開口部20外の絶縁膜4の表面にまで延びて形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなり、第1導電性膜21の表面全域を覆うように形成されている。
【0118】
このような構成の半導体レーザ素子104においては、第1および第2導電性膜21,22が上部クラッド層として機能して、発光層10への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜21,22で構成された透明電極5は、p型半導体層12に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0119】
さらに、この実施形態の半導体レーザ素子105においては、p型半導体層12には、第1および第2p型ガイド層171,172の間に、p型電子ブロック層16が備えられている。これにより、電子を発光層10へと反射でき、発光層10への電子注入効率を高めることができる。p型電子ブロック層16を挟んで配置された第1および第2p型ガイド層171,172は、発光層10へのキャリヤ閉じ込めおよび光閉じ込めに寄与する。p型コンタクト層173は、そのp型不純物濃度が高くされているので、第2導電性膜22との接触抵抗が低くなっている。第2p型ガイド層172はp型コンタクト層173よりもp型不純物濃度が低く、さらに第1p型ガイド層171は第2p型ガイド層172よりもp型不純物濃度が低い。すなわち、発光層10に近づくほど、p型不純物濃度が低くなっており、不純物による光の吸収を抑制する構造となっている。
【0120】
また、p型コンタクト層173がストライプ状のリッジ部を形成しているので、当該リッジ部に電流を集中させる電流狭窄構造が形成されている。そして、リッジ部の両側に絶縁膜4が配置されているので、p型コンタクト層173を含むp型半導体層12の層厚を或る程度確保して縦方向の光閉じ込めを図りつつ、絶縁膜4を発光層10に近づけて配置することにより横方向の光閉じ込めを強化できる。これにより、発振閾値を低減できる。とくに、第2p型ガイド層172の層厚を50nm以下とすることにより、リッジ部の両側の絶縁膜4を発光層10に一層近づけることができる。これにより、横方向の光閉じ込めを一層強化できるので、発振閾値の低減に寄与できる。
【0121】
図10は、p型GaNコンタクト層および第2p型GaNガイド層の各層厚と閾値電流との関係を計算した結果を示す。p型GaNコンタクト層173の層厚を30nmを基準として減らしていき、半導体レーザ素子105の閾値電流を計算すると、層厚の減少に伴って閾値電流が増加することが分かる。すなわち、光閉じ込めのためには、p型GaNコンタクト層173は、或る程度の層厚を有している必要がある。一方、第2p型GaNガイド層172の層厚を0nmから増やしていき、半導体レーザ素子105の閾値電流を計算すると、層厚の増加に伴って閾値電流が増加することが分かる。したがって、第2p型GaNガイド層172の層厚をできる限り小さくして、絶縁膜4を発光層10に近づけ、横方向の光閉じ込めを強化することで、閾値電流を低減できる。具体的には、第2p型ガイド層172の層厚は50nm以下が好ましく、これにより、閾値電流を十分に低くできる。
【0122】
図11は、この発明の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。また、図11には、p側電極パッドおよびn側電極パッドの構造の拡大図が併せて示されている。この図11において、前述の第4の実施形態に係る半導体レーザ素子104(図6)の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
【0123】
この半導体レーザ素子106は、基板1と、窒化物半導体積層構造2と、n側電極パッド3と、絶縁膜4と、上部クラッド層としての透明電極5と、p側電極パッド6とを備えている。窒化物半導体積層構造2は、基板1上に順に積層された、n型半導体層11、発光層10およびp型半導体層12を備えている。基板1は、m面を主面とするGaN基板であってもよい。絶縁膜4は、たとえばSiOからなる。
【0124】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14およびn型ガイド層15を積層して構成されている。発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。
p型半導体層12は、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、第1p型ガイド層171上に形成されたp型電子ブロック層16と、p型電子ブロック層16上に形成された第2p型ガイド層172とを含む。第2p型ガイド層172は、透明電極5との電気的接続のためのコンタクト層を兼ねる。
【0125】
絶縁膜4には、共振器方向に沿ってストライプ状に延びる開口部20が形成されている。この開口部20から第2p型ガイド層172の表面がストライプ状に露出している。すなわち、絶縁膜4は、開口部20の両側において、第2p型ガイド層172に接している。
透明電極5は、p型半導体層12側から順に、第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。第1導電性膜21は、酸化インジウム系の材料(たとえばITO)からなる。第1導電性膜21は、開口部20に入り込んで、第2p型ガイド層172に接しており、さらに、開口部20外の絶縁膜4の表面にまで延びて形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなり、第1導電性膜21の表面全域を覆うように形成されている。透明電極5は、当該半導体レーザ素子106の発振波長の光の透過率が80%以上であり、窒化物半導体以外の物質で構成されており、その抵抗率が1×10−3Ω・cm以下である。
【0126】
p側電極パッド6は、透明電極5にオーミック接触する金属電極であり、たとえば透明電極5の表面にTi層71、TiN層72およびAu層73を順に積層した積層電極膜からなっている。Ti層71およびTiN層72は、同一チャンバ内で連続して行われるスパッタ法で形成されてもよい。また、Au層73の形成は蒸着法で行われてもよい。
n側電極パッド3は、基板1にオーミック接触する金属電極であり、たとえば、基板1側から順にAl層81、TiN層82およびAu層83を順に積層した積層電極膜からなっている。
【0127】
このような構成の半導体レーザ素子106においては、第1および第2導電性膜21,22が上部クラッド層として機能して、発光層10への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜21,22で構成された透明電極5は、p型半導体層12に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0128】
さらに、この実施形態では、第2導電性膜22に接して形成されたp側電極パッド6が、TiN(窒化チタン)を含む。より具体的には、p側電極パッド6は、第2導電性膜22側から順に積層されたTi層71、TiN層72およびAu層73を有する積層電極膜からなっている。この積層電極膜中のTiN層72は、製造工程中の素子半製品に対して熱処理が施されたとき、第2導電性膜22からの酸素原子の拡散を抑制する。これにより、p側電極パッド6が高抵抗化したり、p側電極パッド6が剥がれたりすることを抑制または防止できる。たとえば、n側電極パッド3を基板1にオーミック接触させるために、素子半製品に対して、たとえば400℃〜900℃の熱処理(シンター)が必要な場合がある。このような熱処理を経た後であっても、TiN層72を含むp側電極パッド6を低抵抗に保つことができ、窒化物半導体積層構造2に対するp側電極パッド6の強固な密着性を保持できる。
【0129】
図12A、図12Bおよび図12Cは、ZnO膜上に積層電極膜からなる電極パッドを形成して抵抗特性を測定した結果を示す。測定は、図13Aの断面図および図13Bの平面図に示すように、ITO膜(10nm厚)上にZnO膜(60nm厚)を形成し、さらにその表面に接触するように一対の電極パッドを形成した測定用試料を用いて行った。一対の電極パッドは、40μm(短辺)×100μm(長辺)の矩形に形成し、それらの各一つの長辺が平行な状態で40μmの間隔を開けて対向するように形成した。一対の電極パッド間に電圧を印加したときに、それら一対の電極パッド間に流れる電流を測定した結果が、図12A、図12Bおよび図12Cに示されている。測定は、熱処理前(シンター前)と熱処理後(シンター後)とに行った。熱処理温度は、約600℃とした。図12Aは、ZnO膜の表面から順にTi膜(50nm厚)、TiN膜(50nm厚)およびAu膜(500nm厚)を順に積層した積層電極膜で一対の電極パッドを形成したときの測定結果である(実施例)。図12Bは、ZnO膜の表面から順にTi膜(50nm厚)、Ni膜(50nm厚)およびAu膜(500nm厚)を順に積層した積層電極膜で一対の電極パッドを形成したときの測定結果である(比較例)。図12Cは、ZnO膜の表面から順にTi膜(50nm厚)およびAu膜(500nm厚)を順に積層した積層電極膜で一対の電極パッドを形成したときの測定結果である(比較例)。
【0130】
図12Bおよび図12Cに示す比較例では、熱処理前よりも熱処理後の方が電気抵抗が高くなってしまっている。これは、ZnO膜中の酸素原子の拡散によって、電極パッドの電気抵抗が高くなってしまったためと考えられる。これに対して、図12Aに示す実施例では、熱処理前よりも熱処理後の方が電気抵抗が低くなっており、良好な抵抗特性を有している。これは、電極パッド中のTiN膜によって酸素原子の拡散が抑制された結果であると考えられる。
【0131】
このように、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22に接するp側電極パッド6を、TiNを含む構成、とくにTiN層を含む構成とすることによって、抵抗特性を向上できる。
p側電極パッド6には、Ti/TiN/Au積層電極膜の他にも、TiN単膜、第2導電性膜22の表面からTiN層およびAu層を順に積層した積層電極膜、第2導電性膜22の表面からTiN層およびAl層を順に積層した積層電極膜などを適用できる。
【0132】
n側電極パッド3についても、TiN単膜、前記窒化物半導体積層構造側からAl層およびTiN層を順に積層した積層電極膜、前記窒化物半導体積層構造側からTiN層およびAu層を順に積層した積層電極膜などが適用されてもよい。その他、基板1の表面からTi層およびAl層を積層した積層電極膜や、Al単膜などもn側電極パッド3として使用できる。さらに、n側電極パッド3としては、前述の構成のほか、窒化物半導体積層構造2側から順に積層されたAlコンタクトメタル層、Ni層およびAu層を有する積層電極膜を例示できる。この他にも、Alコンタクトメタル層、Pt層およびAu層を有する積層電極膜をn側電極パッドに適用してもよい。Alを用いる場合には、シンターが必要となる。
【0133】
図14は、サブマウントにJunction Downで半導体レーザ素子106を接合した構造を示す図解的な断面図である。サブマウント基板90の素子マウント面91には、互いに絶縁された配線パターン93A,93Bが形成されている。一つの配線パターン93Aに、Au−Sn合金等のロウ材94によって、p側電極パッド6が接合されている。すなわち、半導体レーザ素子105は、p側電極パッド6をサブマウント基板90の素子マウント面91に対向させたJunction Down接合でサブマウント基板90に接合されている。n側電極パッド3は、Auワイヤ等のボンディングワイヤ95によって、別の配線パターン93Bに接続されている。サブマウント基板90は、たとえばAlNからなる。また、配線パターン93A,93Bは、たとえば素子マウント面91側から順にTi層、Pt層およびAu層を積層した積層金属膜からなる。
【0134】
この構成により、いわゆるJunction Downでサブマウント基板90に搭載された半導体レーザ素子105を提供できる。これにより、サブマウント基板90を介する効率的な放熱が可能であるので、半導体レーザ素子105の発振効率を高めることができる。また、p側電極パッド6がTiNを含むので、動作時に発生した熱の影響によって、第2導電性膜2中の酸素原子がp側電極パッド6中に拡散して抵抗値が増加したり、p側電極パッド6が剥がれたりすることを回避できる。
【0135】
図15は、この発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。この図15において、前述の第6の実施形態に係る半導体レーザ素子106(図11)の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
この半導体レーザ素子107は、基板1と、窒化物半導体積層構造2と、n側電極パッド3と、絶縁膜4と、上部クラッド層としての透明電極5と、p側電極パッド6とを備えている。窒化物半導体積層構造2は、基板1上に順に積層された、n型半導体層11、発光層10およびp型半導体層12を備えている。基板1は、m面を主面とするGaN基板であってもよい。絶縁膜4は、たとえばSiOからなる。
【0136】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14およびn型ガイド層15を積層して構成されている。発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。
p型半導体層12は、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、第1p型ガイド層171上に形成されたp型電子ブロック層16と、p型電子ブロック層16上に形成された第2p型ガイド層172とを含む。第2p型ガイド層172は、透明電極5との電気的接続のためのp型コンタクト層を兼ねる。このp型コンタクト層を兼ねる第2p型ガイド層172は、1×1020cm−3以上の濃度でp型不純物(たとえばMg)がドープされていることが好ましい。これにより、第1導電性膜21とp型半導体層12との接触抵抗を低くすることができるので、直列抵抗が低い半導体レーザ素子を提供できる。
【0137】
絶縁膜4には、共振器方向に沿ってストライプ状に延びる開口部20が形成されている。この開口部20から第2p型ガイド層172の表面がストライプ状に露出している。すなわち、絶縁膜4は、開口部20の両側において、第2p型ガイド層172に接している。
透明電極5は、p型半導体層12側から順に、第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。第1導電性膜21は、酸化インジウム系の材料(たとえばITO)からなる。第1導電性膜21は、開口部20に入り込んで、第2p型ガイド層172に接しており、さらに、開口部20外の絶縁膜4の表面にまで延びて形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなり、第1導電性膜21の表面全域を覆うように形成されている。第2導電性膜22の表面には、開口部20に対応したストライプ状の凹部が形成されている。透明電極5は、当該半導体レーザ素子107の発振波長の光の透過率が80%以上であり、窒化物半導体以外の物質で構成されており、その抵抗率が1×10−3Ω・cm以下である。
【0138】
p側電極パッド6は、透明電極5にオーミック接触する金属電極であり、たとえば透明電極5の表面にTi層、TiN層およびAu層を順に積層した積層電極膜からなっている。p側電極パッド6の表面には、開口部20に対応したストライプ状の凹部が形成されている。
図16Aは、この実施形態に係る半導体レーザ素子107の図解的な平面図である。また、図16Bは、半導体レーザ素子107の一部の模式的な断面図であり、ストライプ状の開口部20に平行な共振器方向に直交する切断面を示す。絶縁膜4は、ほぼ矩形に形成されており、共振器方向に直交する共振器直交方向(窒化物半導体積層構造2の積層方向とも直交する方向)の幅が、窒化物半導体積層構造2の共振器直交方向の幅よりも小さい。すなわち、絶縁膜4の共振器方向に平行な両側縁は、窒化物半導体積層構造2の両側縁からそれぞれ内方に後退して配置されている。また、絶縁膜4は、共振器方向の端縁が、窒化物半導体積層構造2の同方向の端縁と整合している。
【0139】
透明電極5の共振器直交方向の幅は、絶縁膜4の同方向の幅よりも小さい。すなわち、透明電極5は、共振器方向に平行な両側縁が、絶縁膜4の両側縁から後退して配置されている。さらに具体的には、透明電極5は、共振器方向両端部の幅が、共振器方向中央部の幅よりも狭くなっている。すなわち、透明電極5は、共振器方向両端部に一対の幅狭部5nを有し、この一対の幅狭部5nの間の中央部に幅広部5wを有している。幅狭部5nおよび幅広部5wはそれぞれ矩形状に形成されている。幅狭部5nの端縁は、窒化物半導体積層構造2の端縁と整合している。幅広部5wの共振器方向に関する両端縁は、窒化物半導体積層構造2の同方向に関する両端縁からそれぞれ後退して配置されている。
【0140】
p側電極パッド6は、ほぼ矩形状に形成されており、共振器直交方向に関する幅が透明電極5の幅広部5wの同方向に関する幅よりも小さく、共振器方向に関する長さが透明電極5の幅広部5wの同方向に関する長さよりも短い。すなわち、p側電極パッド6は、透明電極5の幅広部5wよりも一回り小さな矩形状に形成されていて、その両側縁および両端縁は、透明電極5の幅広部5wの両側縁および両端縁からそれぞれ後退して配置されている。
【0141】
このような構成の半導体レーザ素子107においては、第1および第2導電性膜21,22が上部クラッド層として機能して、発光層10への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜21,22で構成された透明電極5は、p型半導体層12に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0142】
また、この半導体レーザ素子107では、p型半導体層12上に開口部20を有する絶縁膜4が形成されていて、その開口部20を介して第1導電性膜21がp型半導体層12に接している。これにより、電流狭窄構造が形成されているので、効率的にレーザ発振を生じさせることができる。そして、その開口部20に対応する領域では、第2導電性膜22に接して形成されたp側電極パッド6に凹部が形成されている。したがって、p側電極パッド6を実装基板に対向させてJunction Downで接合したときに、開口部20に対応する領域(レーザ発振が生じる部分)に大きな応力がかかることがない。これにより、接合時等に発光層10にダメージが生じることを回避できるから、半導体レーザ素子を実装基板にJunction Downで接合して構成される製品の歩留まりおよび信頼性を向上できる。また、Junction Down接合を容易に採用できるので、放熱性に優れた製品を提供できる。
【0143】
また、この実施形態では、第1導電性膜21および第2導電性膜22は、共振器直交方向の幅が、絶縁膜4の当該方向の幅以下の透明電極5を形成している。したがって、開口部20以外で第1導電性膜21または第2導電性膜22が窒化物半導体積層構造2に接することはない。透明電極5の幅を絶縁膜4の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことにより、透明電極5上に形成されたp側電極パッド6の幅も広くできる。また、絶縁膜4の幅は、窒化物半導体積層構造2の幅以下となるので、結局、透明電極5の幅は、窒化物半導体積層構造2の幅以下となる。透明電極5は、窒化物半導体積層構造2の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことが好ましい。これにより、透明電極5上に形成されるp側電極パッド6の幅を広くできるから、Junction Down接合を採用したときに、p側電極パッド6を介する放熱がより効率的になる。
【0144】
このような観点からは、図17A(平面図)および図17B(共振器方向に垂直な断面図)に示す第1変形例のように、p型半導体層12の表面の全域に絶縁膜4を形成し、この絶縁膜4の表面全域に透明電極5を形成するとよい。これにより、p側電極パッド6の面積を最大化できる。p側電極パッド6の幅は、透明電極5の幅を超えない範囲で可能な限り大きくしておくことが好ましい。これにより、p側電極パッド6の幅を広くできるから、Junction Down接合を採用したときに、p側電極パッド6を介する放熱がより効率的になる。
【0145】
図18Aおよび図18Bは、第2変形例を説明するための平面図および断面図である。この例では、絶縁膜4がp型半導体層12の表面全域を覆うように形成されている点が、図16Aおよび図16Bに示した例と異なる。
図19Aおよび図19Bは、第3変形例を説明するための平面図および断面図である。この例では、透明電極5の幅広部5wの幅が絶縁膜4の幅と等しく、幅広部5wの両側縁が絶縁膜4の両側縁にそれぞれ整合している点が、図16Aおよび図16Bに示した例と異なる。
【0146】
図20は、第4変形例を説明するための平面図である。この例では、p側電極パッド6が透明電極5の幅広部5wの表面全域を覆うように形成されている点が、図16Aおよび図16Bに示した例と異なる。
図21は、第5変形例を示す平面図である。この例では、絶縁膜4の共振器方向両端縁がp型半導体層12の同方向の両端縁から後退している点が、図20に示した例と異なる。
【0147】
図22は、第6変形例を示す平面図である。この例では、絶縁膜4がp型半導体層12の表面全域を覆うように形成されており、透明電極5の幅広部5wの両側縁が絶縁膜4の両側縁と整合(したがって、窒化物半導体積層構造2の両側縁と整合)している点が、図16Aおよび図16Bに示した例と異なる。
図23は、第7変形例を示す平面図である。この例では、第1導電性膜21および第2導電性膜22によって形成される透明電極5は、共振器方向に平行な方向の両端縁が、同方向に関する窒化物半導体積層構造2の両端面からそれぞれ後退した位置に配置されている。換言すれば、この例の透明電極5は、図16Aに示した透明電極5における幅広部5wのみを有している。また、この例では、絶縁膜4は、p型半導体層12の表面全域を覆うように形成されている。したがって、共振器方向両端部では、透明電極5がp型半導体層12に接しておらず、非注入構造となっている。
【0148】
このように、絶縁膜4、透明電極5およびp側電極パッド6の形状および配置に関して、様々な変形が可能である。
図24は、この発明の第8の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な部分断面図であり、共振器方向に直交する切断面が示されている。図24において、前述の図16Bに示した各部に対応する部分は同一参照符号で示す。
【0149】
この第8の実施形態に係る半導体レーザ素子108においては、p型半導体層12が、高さ0.5μm以下に形成されたストライプ状のリッジ部40を含む。そして、絶縁膜4の開口部20がリッジ部40の頂面を露出させるように形成されている。より具体的には、p型コンタクト層を兼ねる第2p型ガイド層172が掘り込まれて、この第2p型ガイド層172に、高さ0.5μm以下のリッジ部40が形成されている。リッジ部40の両側の堀込み部には絶縁膜4が配置されている。これにより、絶縁膜4を発光層10に近づけることができるので、共振器直交方向に関する光閉じ込めを強化して、閾値を低減することができる。
【0150】
一方、高さ0.5μm以下のリッジ部40は、絶縁膜4の表面よりも低い頂面を有している。そのため、p型半導体層12にリッジ部40を形成しても、p側電極パッド6は絶縁膜4の開口部20に対応する領域に凹部を有する。よって、p型半導体層12にリッジ部40を形成して縦方向の光閉じ込めを強化しながら、Junction Down接合に有利な構造の半導体レーザ素子108を提供できる。
【0151】
図25は、この発明の第9の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。図25において、前述の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子107(図15)の各部に対応する部分は、同一参照符号で示す。
この半導体レーザ素子109は、基板1と、窒化物半導体積層構造2と、n側電極パッド3と、絶縁膜4と、上部クラッド層としての透明電極5と、p側電極パッド6とを備えている。窒化物半導体積層構造2は、基板1上に順に積層された、n型半導体層11、発光層10およびp型半導体層12を備えている。基板1は、m面を主面とするGaN基板であってもよい。絶縁膜4は、たとえばSiOからなる。
【0152】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型クラッド層14およびn型ガイド層15を積層して構成されている。発光層10は、n型ガイド層15上に形成されている。
p型半導体層12は、発光層10上に形成された第1p型ガイド層171と、第1p型ガイド層171上に形成されたp型電子ブロック層16と、p型電子ブロック層16上に形成された第2p型ガイド層172とを含む。第2p型ガイド層172は、透明電極5との電気的接続のためのp型コンタクト層を兼ねる。このp型コンタクト層を兼ねる第2p型ガイド層172は、1×1020cm−3以上の濃度でp型不純物(たとえばMg)がドープされていることが好ましい。これにより、第1導電性膜21とp型半導体層12との接触抵抗を低くすることができるので、直列抵抗が低い半導体レーザ素子を提供できる。
【0153】
絶縁膜4には、共振器方向に沿ってストライプ状に延びる開口部20が形成されている。この開口部20から第2p型ガイド層172の表面がストライプ状に露出している。すなわち、絶縁膜4は、開口部20の両側において、第2p型ガイド層172に接している。
透明電極5は、p型半導体層12側から順に、第1導電性膜21および第2導電性膜22を積層して構成されている。第1導電性膜21は、酸化インジウム系の材料(たとえばITO)からなる。第1導電性膜21は、開口部20に入り込んで、第2p型ガイド層172に接しており、さらに、開口部20外の絶縁膜4の表面にまで延びて形成されている。第2導電性膜22は、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料(たとえばZnO)からなり、第1導電性膜21の表面全域を覆うように形成されている。第2導電性膜22の表面には、開口部20に対応したストライプ状の凹部が形成されている。透明電極5は、当該半導体レーザ素子109の発振波長の光の透過率が80%以上であり、窒化物半導体以外の物質で構成されており、その抵抗率が1×10−3Ω・cm以下である。
【0154】
p側電極パッド6は、透明電極5にオーミック接触する金属電極であり、たとえば透明電極5の表面にTi層121(第1金属膜)およびAu層122(第2金属膜)を順に積層した積層金属膜からなっている。たとえば、Ti層121の層厚は50nm程度、Au層122の層厚は500nm程度であってもよい。Ti層121は、スパッタ法で形成されてもよい。また、Au層122の形成は蒸着法で行われてもよい。p側電極パッド6の表面には、開口部20に対応したストライプ状の凹部が形成されている。
【0155】
図26は、この実施形態に係る半導体レーザ素子109の図解的な平面図である。また、図27は、半導体レーザ素子109の模式的な断面図であり、ストライプ状の開口部20に平行な共振器方向に沿った縦断面を示す。
絶縁膜4は、窒化物半導体積層構造2の全面を覆うように形成されている。すなわち、絶縁膜4は、ほぼ矩形に形成されており、共振器方向に関する両端縁が窒化物半導体積層構造2の両端縁(すなわち、一対の共振器端面)にそれぞれ整合しており、共振器方向に直交する共振器直交方向(窒化物半導体積層構造2の積層方向とも直交する方向)の幅が、窒化物半導体積層構造2の共振器直交方向の幅に等しい。
【0156】
透明電極5の共振器直交方向の幅は、絶縁膜4の同方向の幅よりも小さい。すなわち、透明電極5は、共振器方向に平行な両側縁が、絶縁膜4の両側縁から後退して配置されている。さらに具体的には、透明電極5は、共振器方向両端部の幅が、共振器方向中央部の幅よりも狭くなっている。すなわち、透明電極5は、共振器方向両端部に一対の幅狭部5nを有し、この一対の幅狭部5nの間の中央部に幅広部5wを有している。幅狭部5nおよび幅広部5wはそれぞれ矩形状に形成されている。幅狭部5nの端縁は、窒化物半導体積層構造2の端縁(すなわち、共振器端面24,25)と整合している。したがって、透明電極5は、共振器方向の全長に渡っており、その両端縁が一対の共振器端面24,25とそれぞれ整合している。幅広部5wの共振器方向に関する両端縁は、窒化物半導体積層構造2の同方向に関する両端縁からそれぞれ後退して配置されている。
【0157】
p側電極パッド6は、透明電極5と同様な形状を有している。すなわち、p側電極パッド6は、共振器方向両端部に一対の幅狭部6nを有し、この一対の幅狭部5nの間の中央部に幅広部6wを有している。幅狭部6nおよび幅広部6wはそれぞれ矩形状に形成されている。幅狭部6nの端縁は、窒化物半導体積層構造2の端縁(すなわち共振器端面23,24)と整合している。したがって、p型電極パッド6は、共振器方向の全長に渡っており、その両端縁が一対の共振器端面24,25とそれぞれ整合している。幅狭部6nの共振器方向に沿う両側縁は、透明電極5の幅狭部5nにおける対応する両側縁からそれぞれ内方に所定距離だけ後退して配置されている。幅広部6wの共振器方向に関する両端縁は、透明電極5の幅広部5wにおける対応する両端縁からそれぞれ所定距離だけ後退して配置されている。この実施形態では、p側電極パッド6を構成するTi層121およびAu層122が同一パターンに形成されている。
【0158】
このような構成の半導体レーザ素子109においては、第1および第2導電性膜21,22が上部クラッド層として機能して、発光層10への光閉じ込めに寄与する。また、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜21はp型窒化物半導体に対する接触抵抗が低く、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜22は成長速度が速い。そのため、第1および第2導電性膜21,22で構成された透明電極5は、p型半導体層12に対する接触抵抗が低く、かつ短時間で光閉じ込めに必要な厚さに形成できる。
【0159】
また、この半導体レーザ素子109では、p型半導体層12上に開口部20を有する絶縁膜4が形成されていて、その開口部20を介して第1導電性膜21がp型半導体層12に接している。これにより、電流狭窄構造が形成されているので、効率的にレーザ発振を生じさせることができる。そして、その開口部20に対応する領域では、第2導電性膜22に接して形成されたp側電極パッド6に凹部が形成されている。したがって、p側電極パッド6を実装基板に対向させてJunction Downで接合したときに、開口部20に対応する領域(レーザ発振が生じる部分)に大きな応力がかかることがない。これにより、接合時等に発光層10にダメージが生じることを回避できるから、半導体レーザ素子を実装基板にJunction Downで接合して構成される製品の歩留まりおよび信頼性を向上できる。また、Junction Down接合を容易に採用できるので、放熱性に優れた製品を提供できる。
【0160】
また、この実施形態では、図27に最も良く表れているとおり、共振器方向の全長に渡って、すなわち、一方の共振器端面24から他方の共振器端面25に至る範囲に亘って、積層金属膜からなるp側電極パッド6が延びている。これにより、共振器方向の全長に渡るいたる箇所で電流密度を一様にすることでき、それによって、優れた特性の半導体レーザ素子109を実現することができる。
【0161】
図28は、共振器方向の各部における電流密度(p型半導体層12と透明電極5との界面における電流密度)を計算したシミュレーション結果を示す。曲線L1は、図25等に示す本実施形態の構成の場合を示す。また、曲線L2は図15等に示す第7の実施形態の構成の場合、すなわち、p側電極パッド6の両端縁を共振器端面から後退して配置した構成の場合の電流密度を示す。p側電極パッド6の両端縁を共振器端面から後退して配置した構成(曲線L2)では、共振器端面付近において電流密度が大きく落ち込んでいる。これは、透明電極膜5の比抵抗がp側電極パッド6の比抵抗に比較して高く、そのため、共振器端面付近の領域への電流供給が不足しているからである。とくに、第2導電性膜22を構成する材料の比抵抗が高く、たとえばZnOの比抵抗は5×10−4Ω・cmであり、金属に比較して二桁程度高い。加えて、p側電極パッド6の端縁付近には電界集中に起因するピークが表れている。このように、共振器方向に関して電流密度が一様になっていない。これに対して、本実施形態の構成(曲線L1)では、共振器方向に関して、共振器方向の全長(たとえば300μm)に渡って、電流密度を一様にすることができる。
【0162】
図29は、本実施形態による光出力特性の改善を説明するための光出力特性図であり、電流Iに対する光強度Pの関係が示されている。本実施形態の構成によれば、しきい値電流Ith以上の範囲において、電流Iに対して光強度がリニアに変化する。これに対して、p側電極パッドの両端縁を共振器端面から後退して配置した場合には、しきい値電流Ithの付近の低出力領域Rにおいて、点線で示すように、L字状のキンク(曲がり)が生じる。そのため、低出力領域Rでのレーザ発振が不可能になる。したがって、本実施形態の構成により、光出力特性が改善され、低出力から高出力までの広い範囲で、光出力のリニアリティを確保できる。
【0163】
なお、この実施形態において、p側電極パッド6を構成する積層金属膜は、Ti/Au膜である必要はなく、この他にも、Ti/Ni/Au膜、Ti/TiN/Au膜、TiN/Au膜、TiN/Al膜、Ti/Pt/Au膜、Ti/Pd/Au膜、Pt/Au膜、Pd/Au膜等を例示できる。
図30は、この発明の第10の実施形態に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図であり、図31は、その模式的な平面図であり、図32は、その共振器方向に沿う縦断面図である。図30〜図32において、前述の図25〜図27に示された各部に対応する部分には、同一の参照符号を付して示す。
【0164】
この半導体レーザ素子110においては、p側電極パッド6は、共振器方向両端部に一対の幅狭部6nを有し、この一対の幅狭部5nの間の中央部に幅広部6wを有している。幅狭部6nおよび幅広部6wはそれぞれ矩形状に形成されている。幅狭部6nの端縁は、窒化物半導体積層構造2の端縁(すなわち共振器端面24,25)と整合している。したがって、p型電極パッド6は、共振器方向の全長に渡っており、その両端縁が一対の共振器端面24,25とそれぞれ整合している。幅狭部6nの共振器方向に沿う両側縁は、透明電極5の幅狭部5nにおける対応する両側縁からそれぞれ内方に所定距離だけ後退して配置されている。幅広部6wの共振器方向に関する両端縁は、透明電極5の幅広部5wにおける対応する両端縁からそれぞれ所定距離だけ後退して配置されている。
【0165】
この実施形態では、p側電極パッド6は、透明電極5の表面にTi層121(第1金属膜)、Ni層123(第3金属膜)およびAu層122(第2金属膜)を順に積層した積層金属膜からなっている。たとえば、Ti層121の層厚は50nm程度、Ni層123の層厚は50nm程度、Au層122の層厚は500nm程度であってもよい。Ti層121およびNi層123は、同一チャンバ内で連続して行われるスパッタ法で形成されてもよい。また、Au層122の形成は蒸着法で行われてもよい。そして、この実施形態では、Ti層121およびNi層123は同一形状に形成されており、Au層122はそれらとは異なる形状に形成されている。より具体的には、電極パッド6の幅広部6wは、Ti層121、Ni層123およびAu層123の積層金属膜で構成されている一方、幅狭部6nはTi層121およびNi層123の積層金属膜で構成されていてAu層が形成されていない。換言すれば、Au層122の共振器方向に関する両端縁は一対の共振器端面24,25からそれぞれ内方に所定距離(たとえば25μm)だけ後退して配置されている。Au層122の端縁が共振器端面24,25から後退して配置されている限りにおいて、幅狭部6nの一部がTi層121、Ni層123およびAu層122を積層した積層金属膜で構成されていても差し支えない。
【0166】
Ni層123は、Au層122をドライエッチング(たとえば反応性イオンエッチング)によってパターニングするときに、エッチングストップ層として機能することができる。すなわち、Ni層123は、Au層122のエッチングに対して耐性を有する金属膜である。
このような構成により、第9の実施形態の場合と同じく、透明電極5に対して、共振器方向の全長に渡って、金属からなるp側電極パッド6が接している。それにより、共振器方向の至るところで電流密度を一様にできるので、光出力特性を向上できる。さらに、この実施形態では、Au層122の共振器方向に関する端縁が共振器端面24,25から後退している。そのため、半導体レーザ素子110の製造工程において、基板1を劈開して共振器端面24,25を形成するときに、Au層122がその延性によって延びて共振器端面24,25を覆うような事態を回避できる。すなわち、p側電極パッド6を構成する積層金属膜を形成した後に、Au層122の一部(共振器端面付近)が選択的にエッチング除去される。その後に、基板1の劈開による共振器端面24,25の形成が行われる。こうして、Au層122の影響を受けることなく良好な共振器端面24,25を形成できるので、より一層優れた特性の半導体レーザ素子を実現できる。
【0167】
なお、この実施形態において、p側電極パッド6を構成する積層金属膜は、Ti/Ni/Au膜である必要はなく、この他にも、Ni/Au膜、Ti/Pt/Au膜、Ti/Pd/Au膜、Pt/Au膜、Pd/Au膜、Ti/Cr/Au膜、Cr/Au膜等を例示できる。また、透明電極5に接する第1金属膜をAu層122のエッチングに対する耐性を有する材料(たとえばNi、Pt、Pd、Cr等)で構成する場合には、p側電極パッド6を3層構造とする必要はなく、第1金属膜に接するようにAu層を形成して、2層構造の積層金属膜でp側電極パッド6を形成してもよい。
【0168】
以上、この発明の10個の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、窒化物半導体積層構造2および透明電極5を構成する各層や膜についての厚さや不純物濃度等は一例であり、適宜適切な値を選択して用いることができる。また、n型クラッド層14は、必ずしもAlGaNの単層である必要はなく、AlGaN層とGaN層とで構成された超格子層としてもよい。
【0169】
また、前述の実施形態では、窒化物半導体としてAlGaNやGaN等を例示したが、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)などの他の窒化物半導体が用いられてもよい。窒化物半導体は、一般には、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。
また、前述の第1実施形態等では、窒化物半導体積層構造2がm面を成長主面としており、共振器方向がc軸方向とされているが、共振器方向をa軸方向にとってもよい。また、a面またはc面を成長主面とした窒化物半導体積層構造2で同様なレーザ構造を形成する場合にも、この発明を適用することができる。前述した実施形態のようにm面を成長主面とした場合には、絶縁膜4の開口部20は、c面に垂直な方向に長手となる。c面を成長主面とした場合には、絶縁膜4の開口部20は、m面に垂直な方向に長手となる。また、(20−12)面を成長主面とした場合には、絶縁膜4の開口部20は、(10−14)面に垂直な方向に長手となる。それらの長手方向が共振器方向となる。
【0170】
また、第1導電性膜21は、絶縁膜4の表面と、絶縁膜4において開口部20を縁取る傾斜面4Aと、開口部20に露出されたp型ガイド・コンタクト層17の表面との全域を覆っている。これに限らず、第1導電性膜21は、図1の一点鎖線で示すように、開口部20に露出されたp型ガイド・コンタクト層17の表面と、開口部20の周囲から50μm程度の範囲内における絶縁膜4の表面とを少なくとも覆っていればよい。
【0171】
さらに、窒化物半導体積層構造2を形成した後にレーザリフトオフなどで基板1を除去することで、基板1のない半導体レーザ素子を構成することもできる。
また、図25等に示した第9の実施形態の構成を変形して、図33に示すように、透明電極5を共振器方向の全長に渡って等幅の矩形形状に形成してもよい。この場合、p側電極パッド6は、透明電極5の幅以下の幅を有し、共振器方向の全長に渡って等幅の矩形形状を有していてもよい。そして、その共振器方向に関する両端縁を一対の共振器端面24,25にそれぞれ整合させればよい。
【0172】
図30等に示した第10の実施形態の構成に関しても同様の変形が可能である。すなわち、図34に示すように、透明電極5を共振器方向の全長に渡って等幅の矩形形状に形成し、p側電極パッド6は、透明電極5の幅以下の幅を有し、共振器方向の全長に渡って等幅の矩形形状に形成する。そして、p側電極パッド6を構成する積層金属膜のうち、Au層122に関しては、共振器方向に関する両端縁を一対の共振器端面24,25からそれぞれ内方に後退させて配置する。その一方で、p側電極パッド6を構成する積層金属膜のうち、Ti層121およびNi層123に関しては、それら共振器方向に関する両端縁を一対の共振器端面24,25にそれぞれ整合させればよい。
【0173】
また、第7の実施形態、第9の実施形態および第10の実施形態ならびにそれらの変形例に関して説明した電極の構造は、その他の実施形態の構造に対しても同様に適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 基板
2 窒化物半導体積層構造
3 n側電極パッド
4 絶縁膜
5 透明電極
6 p側電極パッド
10 発光層
11 n型半導体層
12 p型半導体層
14 n型クラッド層
15 n型ガイド層
17 p型ガイド・コンタクト層
171 第1p型ガイド層
172 第2p型ガイド層
173 p型コンタクト層
20 絶縁膜の開口部
21 第1導電性膜
22 第2導電性膜
24,25 共振器端面
60 サブマウント基板
61 素子マウント面
63A,63B 配線パターン
64 ロウ材
65 ボンディングワイヤ
71 Ti層
72 TiN層
73 Au層
81 Al層
82 TiN層
83 Au層
90 サブマウント基板
91 素子マウント面
93A,93B 配線パターン
94 ロウ材
95 ボンディングワイヤ
101〜110 半導体レーザ素子
121 Ti層
122 Au層
123 Ni層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備え、p型半導体クラッド層を有しない窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、
前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含む、半導体レーザ素子。
【請求項2】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、
前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
p型窒化物半導体からなるクラッド層を含まない、半導体レーザ素子。
【請求項3】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成された上部クラッド層とを含み、
前記上部クラッド層が、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
前記p型半導体層は、前記上部クラッド層側の表層部にp型ガイド層を備え、
前記p型ガイド層と前記第1導電性膜とが接触している、半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記p型ガイド層は、InGaNからなる、請求項3に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、開口部を有する絶縁膜と、
前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された上部クラッド層とを含み、
前記上部クラッド層が、前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含む、半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記絶縁膜の厚さ方向から見た平面視において、前記開口部の幅は、1μm以上100μm以下である、請求項5に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記絶縁膜の厚さは、200nm以上400nm以下である、請求項5または6に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記第1導電性膜の電子濃度は、1×1019cm-3以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記第1導電性膜は、前記発光層の発光波長に対して70%以上の透過率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記第2導電性膜は、前記発光層の発光波長に対して70%以上の透過率を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記第1導電性膜は、Snを3%以上の組成で含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記p型半導体層と前記第1導電性膜との接触抵抗は、1×10-3Ω・cm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記第1導電性膜は、ITOからなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記第1導電性膜の厚さは、2nm以上30nm以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項15】
前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含むZnOからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項16】
前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含むMgZnOからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項17】
前記第2導電性膜は、III族原子を1×1019cm-3以上の濃度で含み、Mg組成が50%以下のMgZnOからなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項18】
前記III族原子は、GaまたはAlである、請求項15〜17のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項19】
前記第2導電性膜の厚さは、400nm以上600nm以下である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項20】
前記第1導電性膜および第2導電性膜の屈折率は、前記発光層の屈折率より小さい、請求項1〜19のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項21】
前記p型半導体層は、Mgを1×1019cm-3以上の濃度で含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項22】
前記発光層は、InGaNからなる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項23】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
前記p型半導体層が、Al組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層を含み、共振器方向に延びたストライプ状のリッジ部を有し、当該リッジ部において50nm以上の層厚を有しており、
前記リッジ部の両側において前記p型半導体層に接する絶縁膜をさらに含み、
前記第1導電性膜が、前記リッジ部において前記p型半導体層に接し、前記絶縁膜上にまで延びている、半導体レーザ素子。
【請求項24】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
前記p型半導体層が、前記発光層上に形成された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に形成され、厚さが10nm以上50nm以下であって、p型不純物(Mg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされている第2p型ガイド層とを含む、半導体レーザ素子。
【請求項25】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
前記p型半導体層が、前記発光層上に形成された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に形成されAl組成が18%以上のp型AlGaNまたはp型AlInGaNからなる電子ブロック層と、前記電子ブロック層上に形成され、厚さが10nm以上50nm以下であって、p型不純物(Mg)が1×1020cm−3以上の濃度でドーピングされている第2p型ガイド層とを含む、半導体レーザ素子。
【請求項26】
前記第1導電性膜が、インジウム組成が90%以上のITOからなる、請求項23〜25のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項27】
前記第1導電性膜および前記第2導電性膜の合計膜厚が400nm以上である、請求項23〜26のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項28】
前記第2導電性膜上に形成されたp側電極パッドをさらに含み、
前記第2導電性膜の共振器方向に直交する方向の幅が、前記p側電極パッドの前記共振器方向に直交する方向の幅よりも大きい、請求項23〜27のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項29】
素子マウント面を有するマウント部材をさらに含み、
前記p側電極パッドが、前記素子マウント面に対向し、当該素子マウント面に接合されている、請求項28に記載の半導体レーザ素子。
【請求項30】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜とを含み、
前記p型半導体層が、前記発光層上に積層された第1p型ガイド層と、前記第1p型ガイド層上に積層されたp型電子ブロック層と、前記p型電子ブロック層上に積層され前記第1p型ガイド層よりもp型不純物濃度が高い第2p型ガイド層と、前記第2p型ガイド層上に積層され前記第2p型ガイド層よりもp型不純物濃度が高いp型コンタクト層とを含む、半導体レーザ素子。
【請求項31】
少なくとも前記p型コンタクト層の一部が掘り込まれてリッジ部が形成されている、請求項30に記載の半導体レーザ素子。
【請求項32】
前記第2p型ガイド層の層厚が50nm以下である、請求項30または31に記載の半導体レーザ素子。
【請求項33】
前記p型コンタクト層のp型不純物濃度が1×1020cm−3以上であり、前記第1p型ガイド層および前記第2p型ガイド層のp型不純物濃度が5×1018cm−3以上5×1019cm−3以下である、請求項30〜32のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項34】
前記p型半導体層の総膜厚が1500Å以下である、請求項30〜33のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項35】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、
前記第2導電性膜に接するように形成され、TiNを含むp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子。
【請求項36】
前記p側電極パッドが、前記第2導電性膜側から順に積層されたTi層、TiN層およびAu層を有する積層電極膜を含む、請求項35に記載の半導体レーザ素子。
【請求項37】
素子マウント面を有するマウント部材をさらに含み、
前記p側電極パッドが、前記素子マウント面に対向し、当該素子マウント面に接合されている、請求項35または36に記載の半導体レーザ素子。
【請求項38】
前記発光層に対して前記p側電極パッドとは反対側において前記窒化物半導体積層構造に接合されたn側電極パッドをさらに含み、
前記n側電極パッドが、TiNを含む、請求項35〜37のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項39】
前記n側電極パッドが、前記窒化物半導体積層構造側から順に積層されたAl層、TiN層およびAu層を有する積層電極膜を含む、請求項38に記載の半導体レーザ素子。
【請求項40】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備える窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、開口部を有する絶縁膜と、
前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、
前記第2導電性膜に接するように形成され、前記開口部に対応する領域に凹部を有するp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子。
【請求項41】
前記開口部がストライプ状に形成されており、
前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに垂直な方向の幅が前記絶縁膜の当該方向の幅以下の透明電極を形成している、請求項40に記載の半導体レーザ素子。
【請求項42】
前記開口部がストライプ状に形成されており、
前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに垂直な方向の幅が前記窒化物半導体積層構造の当該方向の幅以下の透明電極を形成している、請求項40に記載の半導体レーザ素子。
【請求項43】
前記p側電極パッドの前記ストライプに直交する方向の幅が、前記透明電極の当該方向の幅以下である、請求項41または42に記載の半導体レーザ素子。
【請求項44】
前記開口部がストライプ状に形成されており、
前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに平行な方向の両端縁が、前記ストライプに平行な方向に関する前記窒化物半導体積層構造の両端面からそれぞれ後退した位置に形成された透明電極を形成している、請求項40に記載の半導体レーザ素子。
【請求項45】
前記開口部がストライプ状に形成されており、
前記第1導電性膜および前記第2導電性膜は、前記ストライプに平行な方向の端縁付近における幅と当該方向の中央部における幅とが異なる透明電極を形成している、請求項40に記載の半導体レーザ素子。
【請求項46】
前記p型半導体層が、高さ0.5μm以下に形成されたストライプ状のリッジ部を含み、
前記開口部が前記リッジ部の頂面を露出させるように形成されている、請求項40〜45のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項47】
前記p型半導体層は、前記開口部において露出する表面を有するp型コンタクト層を含み、
前記p型コンタクト層のp型不純物濃度が1×1020cm−3以上である、請求項40〜46のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項48】
n型クラッド層、このn型クラッド層上に形成されたn型ガイド層、このn型ガイド層上に形成された発光層、およびこの発光層上に形成されたp型半導体層を備え、共振器方向両端に一対の共振器端面を有する窒化物半導体積層構造と、
前記p型半導体層上に形成され、前記共振器方向に沿うストライプ状の開口部を有する絶縁膜と、
前記開口部を介して前記p型半導体層に接するように前記絶縁膜上に形成された、酸化インジウム系の材料からなる第1導電性膜と、
前記第1導電性膜上に形成され、酸化亜鉛系、酸化ガリウム系または酸化錫系の材料からなる第2導電性膜と、
前記第2導電性膜に接するように形成され、前記一対の共振器端面とそれぞれ整合する一対の端縁を有するp側電極パッドとを含む、半導体レーザ素子。
【請求項49】
前記p側電極パッドが、前記第2導電性膜に接する第1金属膜と、前記第1金属膜に積層された第2金属膜とを含む積層金属膜からなり、前記第1金属膜の前記共振器方向に関する両端縁は、前記一対の共振器端面とそれぞれ整合しており、前記第2金属膜の前記共振器方向に関する両端縁は、前記一対の共振器端面からそれぞれ所定距離だけ後退した位置に配置されている、請求項48に記載の半導体レーザ素子。
【請求項50】
前記p側電極パッドを構成する積層金属膜が、前記第1および第2金属膜の間に配置され、前記第2金属膜のエッチングに対する耐性を有する第3金属膜をさらに含む、請求項49に記載の半導体レーザ素子。
【請求項51】
前記第1金属膜が、前記第2金属膜のエッチングに対する耐性を有している、請求項49に記載の半導体レーザ素子。
【請求項52】
前記第2金属膜が、金からなる、請求項49〜51のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2013−42107(P2013−42107A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24959(P2012−24959)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】