説明

半導体基板用洗浄液及びそれを用いた洗浄方法

【課題】 酸化ケイ素膜を研磨し、研磨完了時にポリシリコン膜が露出するCMP工程後の基板表面を荒らさずに、コンタミネーションを効率よく除去する半導体基板用洗浄液と、それを用いた半導体基板の洗浄方法を提供する。
【解決手段】 ポリシリコン膜と、該ポリシリコン層の少なくとも一部を被覆する酸化ケイ素膜とを有する基板を調整し、研磨粒子を含むCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコン層の少なくとも一部が露出するまで前記酸化ケイ素膜を研磨し、前記基板の研磨がなされた面を洗浄する洗浄液であって、前記洗浄液が、分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤と、水とを含む、半導体基板用洗浄液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板用洗浄液と、それを用いた半導体基板の洗浄方法に関する。より具体的には、基板を研磨し、研磨後に基板上に付着した異物を洗浄する工程を含む洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野において、配線が多層化されたデバイスを製造するための最も重要な技術の一つに、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。CMP技術は、化学気相蒸着(CVD)等によって基板上に各種の材料の薄膜を形成した後、CMP研磨液を用いて研磨することにより、表面を平坦化する技術である。
【0003】
例えば、リソグラフィの焦点深度を確保するには、CMPによる平坦化の処理が不可欠である。基板表面に凹凸があると、露光工程における焦点合わせが不可能となったり、微細な配線構造を充分に形成できなくなったりするなどの不都合が生じる。また、CMP技術は、デバイスの製造過程において、プラズマ酸化膜(BPSG、HDP−SiO、p−TEOS)の研磨によって素子分離領域を形成する工程、層間絶縁膜を形成する工程、あるいは、酸化珪素を含む膜を金属配線に埋め込んだ後にプラグ(例えば、Al・Cuプラグ)を平坦化する工程などにも適用される。
【0004】
例えば、素子分離領域を形成する工程では、加工寸法が微細化に伴い素子分離幅の狭い技術が要求され、STI(Shallow Trench Isolation;シャロー・トレンチ分離)が用いられつつある。STIでは、シリコン基板上に成膜した余分の酸化ケイ素膜を除くためにCMPが使用される。そして、前記酸化ケイ素膜が過剰に研磨されないことを目的に、予め酸化ケイ素膜の下にストッパ膜を形成させておき、ストッパ膜が露出したところで研磨を終了させるプロセスが主流である。このストッパ膜には一般的に窒化ケイ素が使用される。この場合CMP研磨液は、酸化ケイ素膜とストッパ膜との研磨速度比が充分に大きいことが望ましい。
【0005】
近年では、CMP後の加工精度の向上、平坦性の確保のため、研磨速度をより小さく制御することが可能なポリシリコン膜をストッパ膜として採用することが多くなってきている。実際に、酸化セリウム研磨液の研磨速度をコントロールし、ポリシリコンの研磨速度を抑制し、酸化ケイ素膜の研磨速度に比較して、研磨速度比を充分に確保できる添加剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、CMP後の基板表面において、特にポリシリコン膜上において、コンタミネーションと総称される異物が残存することがある。このようなコンタミネーションとしては、CMP研磨液に含まれる研磨粒子や、研磨により生じた研磨くずが挙げられる。半導体の高集積化に伴い、基板表面に少量の異物であっても製品の性能に不具合が生じる可能性が高い。そのため、より高いコンタミネーション・コントロールが要求されるようになっている。
【0007】
半導体基板へのCMP工程によって生じたコンタミネーションを除去する手法は種々検討されており、例えば、アンモニアを用いたアルカリ系洗浄液や希フッ酸による表面エッチングなどが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第07/055278号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Hydrogen Peroxide Solutions for Silicon Wafer Cleaning”, RCA Engineer, 28(4),p9(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながらアンモニアを用いたアルカリ系洗浄液を用いた場合、コンタミネーションの除去効率は悪いという課題がある。一方、希フッ酸を用いた洗浄方法は、アルカリ系洗浄液を用いた洗浄方法と比較してコンタミネーションの除去効率は高いものの、エッチングによる除去であるため、基板表面状態が荒れる等の悪影響を与える恐れがある。
【0011】
また、本発明者らは、研磨粒子に起因するコンタミネーションは、砥粒として酸化セリウム粒子を使用した場合、特に、研磨後の平坦性を維持するための添加剤を使用したCMP研磨液を用いて研磨した際に、除去がより困難であることを見いだした。
【0012】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、酸化ケイ素膜を研磨し、研磨完了時にポリシリコン膜が露出するCMP工程後の基板表面を荒らさずに、コンタミネーションを効率よく除去する半導体基板用洗浄液と、それを用いた半導体基板の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を持つ化合物を主成分とした洗浄液を用いて基板の洗浄を行うことにより、高いコンタミネーション除去効率を達成できることを見出した。
【0014】
すなわち本発明は、ポリシリコン膜と、該ポリシリコン層の少なくとも一部を被覆する酸化ケイ素膜とを有する基板を調整し、研磨粒子を含むCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコン層の少なくとも一部が露出するまで前記酸化ケイ素膜を研磨し、前記基板の研磨がなされた面を洗浄する洗浄液であって、前記洗浄液が、分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性化合物と、水とを含むことを特徴とする、半導体基板用洗浄液に関する。
【0015】
このような半導体基板用洗浄液を用いて洗浄することにより、特に酸化ケイ素膜を研磨し、研磨完了時にポリシリコン膜が露出するCMP工程後の基板表面を荒らさずに、コンタミネーションをほぼ全て除去することが可能となる。
【0016】
かかる効果が奏される要因は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、コンタミネーションは、ポリシリコン膜に電気的に引き寄せられることで基板表面に付着していると考えられる。ここで、アセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤(ノニオン性化合物)を含む洗浄液で洗浄すると、前記ノニオン性化合物がポリシリコン膜にも研磨粒子にも吸着する特性を有しているため、ポリシリコン膜が電気的に中性になり、かつ研磨粒子表面が電気的に大きくマイナスになると考えられる。このため、容易に研磨粒子をポリシリコン膜上から剥離させることができる上、電気的にマイナスである酸化ケイ素膜への再吸着をも抑制し、高いコンタミネーション除去特性を発現するものと推測される。
【0017】
ここで、前記洗浄液に含まれる前記分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤が、下記一般式(I)
【0018】
【化1】

【0019】
(一般式(I)中、Rは水素原子又は炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、Rは炭素数が4〜10の置換又は無置換アルキル基を表す。)で表される化合物又は、下記一般式(II)
【0020】
【化2】

【0021】
(一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜5の置換又は無置換アルキレン基を表し、m、nはそれぞれ独立に0又は正数を表す。)で示される化合物を含むことが好ましい。これにより、コンタミネーションをより効率的に除去することが可能となる。
【0022】
前記洗浄液は、洗浄液中に分散された研磨粒子のゼータ電位が、−60mV以下であることが好ましい。これにより、コンタミネーションをより効率的に除去でき、基板表面への再付着をより効率的に抑制できる。
【0023】
前記洗浄液のpHが、4.0以上、8.0以下であることが好ましい。これにより、洗浄液自体が基板表面を荒らすことなく、酸化セリウム粒子の表面電位を負に大きく制御することができる。
【0024】
また、本発明の半導体基板用洗浄液では、前記CMP研磨液が、研磨粒子として酸化セリウム粒子を含み、さらに、ポリアクリル酸化合物と、水と、を含むことが好ましい。これにより、酸化ケイ素膜に対する良好な研磨速度を得つつ、ポリシリコン膜で研磨をストップすることが可能となり、さらに研磨後の表面にコンタミネーションが残ることを抑制できる。
【0025】
また、本発明の半導体基板用洗浄液では、前記CMP用研磨液は、第一液と第二液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、前記第一液が酸化セリウム粒子と、分散剤と、水とを含有し、前記第二液がポリアクリル酸化合物と、水とを含有してなることが好ましい。ポリアクリル酸化合物は、ポリシリコン膜での研磨ストップや、平坦性向上への効果があるが、多量に添加すると酸化セリウム粒子の凝集、沈降を引き起こす可能性もある。しかしながら、前記の構成を取ることによって、このような問題を回避することができる。また、研磨速度の調整及び制御が容易になる利点もある。
【0026】
前記ポリアクリル酸化合物は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜の研磨速度が30倍以上速く研磨可能となる量が前記CMP研磨液に添加されてなることが好ましい。
【0027】
前記CMP用研磨液は、前記第二液がさらに界面活性剤を含有してなることが好ましい。これにより、ポリシリコン膜での研磨ストップがより容易になる効果がある。
【0028】
本発明の半導体基板用洗浄液は、前記基板として、凹凸が形成された基体と、前記基体の凸部を被覆するポリシリコン膜と、前記基体の凹部を充填し、かつ基体表面を被覆するように設けられた酸化ケイ素膜と、を有することが好ましい。このような基板を研磨することにより、本発明の洗浄方法の利点であるコンタミネーションの除去効率、酸化ケイ素膜への研磨速度、ポリシリコン膜での研磨ストップ性を活かすことができる。この点で、前記CMP研磨液を用いて、基体の凸部を被覆するポリシリコン膜が露出するまで前記基板の酸化ケイ素膜を研磨することが好ましい。
【0029】
前記洗浄方法は、研磨後の基板を洗浄用の定盤の洗浄布に押し当て、前記半導体基板用洗浄液を前記基板と前記洗浄布との間に供給しながら、前記基板と前記洗浄布とを相対的に動かして前記基板上に付着した研磨粒子を洗浄することが好ましい。また他の方法として、前記洗浄は、研磨後の基板に前記半導体基板用洗浄液を供給しながら、洗浄ブラシを用いて前記基板上に付着した研磨粒子を洗浄することが好ましい。これにより、コンタミネーションをより効率よく除去できる。本発明の洗浄方法において、前記洗浄の後に、さらに基板に付着した液滴を除去する工程を含むことがより好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、CMP工程後のウェハ表面、特にポリシリコン膜上に生じたコンタミネーション(研磨粒子や研磨くず)を除去できる半導体基板用洗浄液及び洗浄方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明で用いる基板断面図の一実施例と、その基板を研磨した状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ポリシリコン膜と、該ポリシリコン層の少なくとも一部を被覆する酸化ケイ素膜とを有する基板を調整し、研磨粒子を含むCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコン層の少なくとも一部が露出するまで前記酸化ケイ素膜を研磨し、分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤(ノニオン性化合物)と、水とを含む洗浄液を用いて、前記基板において研磨がなされた面を洗浄することを特徴とする、半導体基板用洗浄液とそれを用いた洗浄方法に関する。以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<半導体基板用洗浄液>
本実施形態に係る半導体基板用洗浄液は、分子内に少なくとも一つアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤と、水とを含有する。
このようなノニオン性界面活性剤としては、下記一般式(I)
【0034】
【化3】

【0035】
(一般式(I)中、Rは水素原子又は炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、Rは炭素数が4〜10の置換又は無置換アルキル基を表す。)で表される化合物、及び、下記一般式(II)
【0036】
【化4】

【0037】
(一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜5の置換又は無置換アルキレン基を表し、m、nはそれぞれ独立に0又は正数を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。これにより、コンタミネーションをより効率的に除去することが可能となる。上記一般式(I)、(II)中の炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、tert−ペンチル基などが挙げられる。炭素数が4〜10の置換又は無置換アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。また、炭素数が1〜5の置換又は無置換アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
【0038】
前記一般式(I)で表されるノニオン性界面活性剤としては、具体的には例えば、1−デシン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、5−デシン等を挙げることができる。
【0039】
前記一般式(II)で表されるノニオン性界面活性剤としては、具体的には例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのポリエトキシレート、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール−ジポリオキシエチレンエーテル、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール−モノポリオキシエチレンエーテル等を挙げることができる。
【0040】
前記アセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤の添加量としては、コンタミネーションを効率よく除去できる観点から、洗浄液全質量基準で0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がより好ましい。上限は特に制限はないが、一般的に10質量%以下が好ましい。
【0041】
前記洗浄液は、該洗浄液中に分散された研磨粒子が、−60mV以下のゼータ電位を有するものであることが好ましい。これにより、コンタミネーションを効率よく除去でき、また、ポリシリコン膜への研磨粒子の再吸着を抑制できる傾向がある。この観点で、前記ゼータ電位としては、-65mV以下がより好ましく、-70mV以下がさらに好ましい。
【0042】
前記洗浄液のpHの下限は、研磨粒子単体のゼータ電位を負にして、ポリシリコン膜への粒子の吸着を抑制しやすくなる観点から、4.0以上が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましい。また、本発明の洗浄液のpHの上限はコンタミネーション除去性能の観点から9.0以下が好ましく、8.5以下がより好ましい。8.0以下がさらに好ましい。
洗浄液のpHは、ノニオン性界面活性剤として使用する化合物の種類によって変化し得るため、pHを上記の範囲に調整するために、pH調整剤を添加剤に含有させてもよい。pH調整剤としては、特に制限はないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等の酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の塩基等が挙げられる。なお、生産性を向上させる観点から、pH調整剤を使用することなく洗浄液を調製し、こそのまま適用してもよい。
【0043】
<研磨液>
(研磨粒子)
本発明の半導体基板用洗浄液や洗浄方法に使用されるCMP研磨液には、酸化セリウム粒子を含む研磨液であると好ましい。
酸化セリウム粒子は、例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、しゅう酸塩等のセリウム化合物を酸化すること等によって得ることができる。TEOS−CVD法等で形成される酸化ケイ素膜の研磨に使用する酸化セリウム粒子は、粒子の結晶子径が大きく、結晶歪みが少ない程、即ち結晶性が良い程、高速研磨が可能であるが、被研磨膜に研磨傷が入りやすい傾向がある。
【0044】
酸化セリウム粒子は、その製造方法について、特に制限はないが、その結晶子径が、1〜400nmであることが好ましい。結晶子径は、TEM写真画像又はSEM画像により測定できる。
【0045】
酸化セリウム粒子の一例として述べる酸化セリウム粒子を作製する方法としては、例えば、焼成又は過酸化水素等による酸化法等を用いることができる。前記焼成の温度は、350〜900℃が好ましい。
【0046】
酸化セリウム粒子が凝集している場合は、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、例えば、ジェットミル等による乾式粉砕や、遊星ビーズミル等による湿式粉砕方法が好ましい。ジェットミルは、例えば、「化学工学論文集」、第6巻第5号、(1980)、527〜532頁に説明されているものを用いることができる。
【0047】
このような酸化セリウム粒子を、分散媒である水中に分散させて酸化セリウムスラリーを得る。分散する方法としては、後述する分散剤を用いて、例えば、通常の攪拌機による分散処理の他に、ホモジナイザ、超音波分散機、湿式ボールミル等を用いることができる。
【0048】
上記の方法により分散された酸化セリウムを、更に微粒子化する方法としては、例えば、酸化セリウムスラリーを小型遠心分離機で遠心分離後強制沈降させ、上澄み液のみ取り出すことによる、沈降分級法を用いることができる。他に、分散媒中の酸化セリウム粒子同士を高圧で衝突させる高圧ホモジナイザを用いてもよい。
【0049】
このようにして作製された、スラリー中の酸化セリウム粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましく、0.08〜0.5μmがより好ましく、0.08〜0.4μmが更に好ましい。この平均粒径が、0.01μm未満であると、研磨速度が徐々に低下する傾向があり、2.0μmを超えると、徐々に被研磨膜に研磨傷が付き易くなる傾向がある。
【0050】
酸化セリウム粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布計で測定した体積分布のメジアン径を指すものである。具体的には、株式会社堀場製作所製のLA−920(商品名)等を用いて得られる。
【0051】
酸化セリウム粒子の濃度は、CMP研磨液全体を100質量%として、0.2〜3.0質量%で使用することが好ましく、0.3〜2.0質量%がより好ましく、0.5〜1.5質量%が更に好ましい。酸化セリウム粒子の濃度が、3.0質量%を超えると、添加液による研磨速度調整の効果が小さくなる傾向がある。また、酸化セリウム粒子の濃度が、0.2質量%未満であると酸化ケイ素膜の研磨速度が低下し、所望の研磨速度が得られなくなる傾向がある。
【0052】
(水)
洗浄液や研磨液に用いる水は、特に制限されるものではないが、脱イオン水、イオン交換水又は超純水が好ましい。なお、更に必要に応じて、エタノール、酢酸、アセトン等の極性溶媒等を水と併用してもよい。
【0053】
(ポリアクリル酸化合物)
本発明で用いるCMP研磨液にはポリアクリル酸化合物を含むと好ましい。ポリアクリル酸化合物として、アクリル酸系ポリマーが挙げられ、なお、アクリル酸系ポリマーには、例えばアクリル酸重合体及びそのアンモニウム塩、メタクリル酸重合体及びそのアンモニウム塩並びにアクリル酸アンモニウム塩とアクリル酸アルキル(メチル、エチル又はプロピル)との共重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸アンモニウム塩又はアクリル酸アンモニウム塩とアクリル酸メチルとの共重合体が好ましい。後者を用いる場合、アクリル酸アンモニウム塩とアクリル酸メチルとのモル比は、アクリル酸アンモニウム塩/アクリル酸メチルが、10/90〜90/10であることが好ましい。前記アクリル酸アンモニウム塩とアクリル酸メチルとのモル比において、アクリル酸アンモニウム塩が10未満の場合や90を超えると分散性が維持できなくなる傾向にある。
【0054】
また、アクリル酸系ポリマーの重量平均分子量は、1000〜20000であることが好ましい。アクリル酸系ポリマーの重量平均分子量が20000を超えると研磨粒子の再凝集による粒度分布の経時変化が生じやすくなる傾向にあり、1000未満では酸化セリウム粒子の分散性及び沈降防止の効果が充分でない場合がある。
なお、ここで、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値である。
ポリアクリル酸化合物の配合量は、一般的に、研磨液中の研磨粒子の分散性及び沈降防止性などの観点から、研磨粒子100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。前記ポリアクリル酸化合物の配合量が0.01質量部未満では研磨粒子が沈降しやすく、5質量部を超える研磨粒子の再凝集による粒度分布の経時変化が生じやすい。
【0055】
(分散剤)
本発明で用いる分散剤としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属およびハロゲン、イオウの含有率が10ppm以下であることが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性有機高分子類、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等の水溶性陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート等の水溶性非イオン性界面活性剤並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等の水溶性アミン類等、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性有機高分子類等が挙げられる。
【0056】
また、分散剤の配合量は、研磨剤中の研磨粒子の分散性及び沈降防止性などの観点から、研磨粒子100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。前記分散剤の配合量が0.01質量部未満では研磨粒子が沈降しやすく、5質量部を超える研磨粒子の再凝集による粒度分布の経時変化が生じやすい。
【0057】
分散剤の研磨粒子に対する分散効果を高めるためには、分散処理時に分散機の中に研磨粒子と同時に入れることが好ましい。
【0058】
本発明で用いるCMP研磨液は、研磨粒子として酸化セリウム粒子を含み、さらに、ポリアクリル酸化合物と、水と、を含むことが好ましい。これにより、酸化ケイ素膜に対する良好な研磨速度を得つつ、ポリシリコン膜で研磨をストップすることが可能となり、さらに研磨後の表面にコンタミネーションが残ることを抑制できる。
また、本発明で用いるCMP研磨液は、第一液と第二液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、前記第一液が酸化セリウム粒子と、分散剤と、水とを含有し、前記第二液がポリアクリル酸化合物と、水とを含有してなることが好ましい。そして、第二液がさらに界面活性剤を含有すると好ましい。ポリアクリル酸化合物は、ポリシリコン膜での研磨ストップや、平坦性向上への効果があるが、多量に添加すると酸化セリウム粒子の凝集、沈降を引き起こす可能性もある。しかしながら、前記の構成を取ることによって、このような問題を回避することができる。また、研磨速度の調整及び制御が容易になる利点もある。
【0059】
(界面活性剤)
第二液に含有させる界面活性剤は、上記分散剤に例示したものの他、界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤を単独で、又は2種類以上の組み合わせとして含有し、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、特殊ポリカルボン酸型分散剤等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン、β−アラニンベタイン、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0060】
界面活性剤の含有量は、CMP研磨液全体に対して、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.02〜0.7質量%がより好ましく、0.03〜0.5質量%が更に好ましい。界面活性剤の含有量が1.0質量%を超えると、酸化ケイ素膜の研磨速度低下に繋がるため好ましくなく、界面活性剤の含有量が0.01質量%未満であると、ポリシリコン膜の研磨速度増加に繋がるため、好ましくない。
【0061】
CMP研磨液のpHは、4.5〜10であることが好ましい。前記pHが4.5未満であると粒子の凝集などがおこる傾向にあり、10を超えると研磨速度の安定性が悪化する傾向にある。CMP研磨液のpHを調製する方法としては、分散処理時又は処理後に、アンモニア水などの金属イオンを含まないアルカリ性物質を添加する方法などが挙げられる。
【0062】
<研磨方法>
本発明で用いる研磨方法は、ポリシリコン膜と、該ポリシリコン層の少なくとも一部を被覆する酸化ケイ素膜とを有する基板を調整し、研磨粒子を含むCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコン層の少なくとも一部が露出するまで前記酸化ケイ素膜を研磨する。
【0063】
基板の研磨方法は、研磨する膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押し当て加圧し、CMP研磨液を研磨する膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤を相対的に動かして膜を研磨する。
研磨布としては、特に制限はないが、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することが好ましい。また、研磨布には研磨剤が溜まるような溝加工を施すことが好ましい。
研磨条件に制限はないが、定盤の回転速度は、基板が飛び出さないように100min−1以下の低回転が好ましく、基板にかける圧力は、研磨後に研磨傷が発生しないように1kg/cm以下が好ましい。
基板の被研磨膜を研磨布に押圧した状態で研磨布と被研磨膜とを相対的に動かすには、具体的には基板と研磨定盤との少なくとも一方を動かせば良い。研磨定盤を回転させる他に、ホルダーを回転や揺動させて研磨しても良い。また、研磨定盤を遊星回転させる研磨方法、ベルト状の研磨布を長尺方向の一方向に直線状に動かす研磨方法等が挙げられる。なお、ホルダーは固定、回転、揺動のいずれの状態でも良い。これらの研磨方法は、研磨布と被研磨膜とを相対的に動かすのであれば、被研磨面や研磨装置により適宜選択できる。研磨している間、研磨布にはCMP研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。具体的には、研磨布面積1cm当たり、0.02〜0.25ミリリットル供給されることが好ましい。
【0064】
ここで、前記基板としては、図1上図に示すように、凹凸が形成された基体1と、前記基体1の凸部を被覆するポリシリコン膜2と、前記基体1の凹部を充填し、かつ基体表面を被覆するように設けられた酸化ケイ素膜3と、を有する基板が挙げられる。前記CMP研磨液を用いて、基体1の凸部を被覆するポリシリコン膜2が露出するまで前記基板の酸化ケイ素膜3を研磨し、図1下図に示す状態まで研磨する。
【0065】
<半導体基板の洗浄方法>
次に、前記半導体基板用洗浄液を用いて研磨後の基板を洗浄する。洗浄方法としては、研磨後の基板を洗浄用の定盤の洗浄布に押し当て、前記洗浄液を基板と洗浄布との間に供給しながら、基板と洗浄布とを相対的に動かして、前記基板上に付着する研磨粒子を洗浄する方法が挙げられる。その他の洗浄方法として、研磨後の基板に前記洗浄液を供給しながら、洗浄ブラシを用いて前記基板上に付着した研磨粒子を洗浄する方法が挙げられる。これらの方法は、どちらか単独で行なっても、併用しても良い。
【0066】
本発明の洗浄方法において、研磨後のウェハを洗浄用の定盤の洗浄布に押し当て加圧し、前記洗浄液をウェハと洗浄布との間に供給しながら、ウェハと洗浄布とを相対的に動かしてウェハ上に付着する研磨粒子を洗浄するウェハの洗浄方法を行なう場合、一般的な研磨に使用する装置を用いて行うことが出来る。その詳細としては、基板を保持するホルダーと、洗浄布(パッド)を貼り付け可能で、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤とを有する装置である。例えば、株式会社荏原製作所製研磨装置(型番:EPO−111、EPO−222、FREX200、FREX300)、AMAT社(米Applied Materials)製の研磨装置(商品名:Mirra 3400、Reflexion研磨機)等が使用できる。洗浄布としては、一般的なCMP工程でも使用する不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用できるが、研磨傷の観点からハードパッドよりもソフトパッドの方がより好ましい。また、洗浄布には洗浄液がたまるような溝加工を施すことが好ましい。洗浄条件に制限はないが、定盤の回転速度は半導体基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましく、半導体基板にかける圧力(加工荷重)は洗浄後に傷が発生しないように100kPa以下が好ましい。洗浄している間、洗浄布には洗浄液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、洗浄布の表面が常に洗浄液で覆われていることが好ましい。
【0067】
前記洗浄後に、さらに基板に付着した液滴を除去する工程を含むことが好ましい。研磨後の基板に前記洗浄液を供給しながら、洗浄ブラシを用いて前記基板上に付着した研磨粒子を洗浄する方法を用いることで、効率よく、研磨粒子を除去することができる。このような工程の後、例えば、スピンドライ、IPA(イソプロピルアルコール)蒸気等を用いて基板に付着した液滴を払い落としながら乾燥させる方法が挙げられ、より具体的には例えば、上記Reflexion研磨機等に付随している洗浄設備を使用することができる。
【0068】
本発明の洗浄方法における基板として、半導体素子製造に係る基板、例えば回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に無機絶縁膜が形成された基板が挙げられる。そして、被洗浄面は、前記無機絶縁膜、例えば酸化ケイ素膜層及びポリシリコン膜層等が挙げられる。このような半導体基板上に形成された酸化ケイ素膜層及びポリシリコン膜層を上記洗浄液で洗浄することによって、ウェハ表面に付着した研磨液に含まれる研磨粒子、例えば酸化セリウム粒子や研磨くずなどのコンタミネーションを除去し、半導体基板全面にわたってコンタミネーションの無い、平滑な面とすることができる。
【0069】
本実施形態の洗浄方法は、以下のようなデバイスの製造過程において表面に酸化珪素膜とポリシリコン膜を有する基板を洗浄するのに適している。デバイスとしては、例えば、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリ等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(洗浄液の作製)
(実施例1)
分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤として2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのポリエトキシレートを1.0gと水99.0gを混合し、調整した基板用洗浄液を得た。
【0072】
(比較例1)
25質量%アンモニア水を100倍希釈し、0.25質量%アンモニア水を準備した。
【0073】
(比較例2)
水100gを準備した。
【0074】
(洗浄液のpHと洗浄液中の粒子のゼータ電位の測定)
既知の酸化セリウム研磨液(不揮発分NV=4.0質量%)と準備した洗浄液とを1:3(質量比)で混合した後、遠心分離機にて8000rpmの回転数で10分間遠心分離したのち、上澄みの液をゼータ電位測定:ゼータサイザー3000HSA(マルバーン社製)を用いて測定した。pHは、pHメータ計を用いて測定した。それらの測定結果をまとめて表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
(酸化ケイ素膜、ポリシリコン膜への研磨液粒子の付着とその確認方法)
既知の酸化セリウム研磨液(非揮発分NV=4.0質量%)と既知の酸化ケイ素膜/ポリシリコン膜の研磨速度比を大きくする添加剤を1:1の配合(質量比)で混合した液に、下記の(1)酸化ケイ素膜ウェハ片、(2)ポリシリコン膜ウェハ片をそれぞれ、60秒浸漬させたのち、純水を入れた容器に30秒浸漬させ、窒素ブローにてウェハ表面を乾燥させた。こうして得られたウェハ片を、走査型電子顕微鏡を用いて、20000倍の倍率にてそれぞれの任意の場所2箇所を観察した。観察視野は、6μm×4μmであり、その視野範囲に観察された粒子個数をカウントした。この際、粒子としてはっきり認識できる0.1μm以上の粒子個数をカウントした。その個数を洗浄液で洗浄前の各膜への粒子付着個数とした。
(1)の酸化ケイ素膜ウェハ片としては、Si基板上にPE−TEOS(plasma-enhanced tetraethyl-orthosilicate)酸化珪素膜が膜厚1000nm成膜されたウエハを縦横(1cm×1cm)の大きさにカットしたものを使用した。また、(2)のポリシリコン膜ウェハ片としては、Si基板上にPE−TEOS酸化珪素膜が膜厚100nm成膜された上にポリシリコン膜が膜厚100nm成膜されたウエハを縦横(1cm×1cm)の大きさにカットしたものを使用した。
【0077】
(酸化ケイ素膜、ポリシリコン膜への研磨液粒子の付着とその洗浄性評価方法)
前記の方法にて、粒子が酸化ケイ素膜、ポリシリコン膜へ付着することが確認されたので、洗浄液を用いてその洗浄性を確認することとした。既知の酸化セリウム研磨液(非揮発分NV=4.0質量%)と既知の酸化ケイ素膜/ポリシリコン膜の研磨速度比を大きくする添加剤を1:1の配合で混合した液に、(1)酸化ケイ素膜ウェハ片、(2)ポリシリコン膜ウェハ片をそれぞれ、60秒浸漬させたのち、準備した洗浄液に30秒浸漬した後、純水を入れた容器に30秒浸漬させ、窒素ブローにてウェハ表面を乾燥させた。こうして得られたウェハ片を、走査型電子顕微鏡を用いて、20000倍の倍率にてそれぞれの任意の場所2箇所を観察した。観察視野は、6μm×4μmであり、その視野範囲に観察された粒子個数をカウントした。この際、粒子としてはっきり認識できる0.1μm以上の粒子個数をカウントした。その個数を洗浄液で洗浄後の各膜への粒子付着個数とした。その測定結果を、まとめて表2に示した。
【0078】
【表2】

【0079】
(評価結果)
実施例1、比較例1〜2より、酸化ケイ素膜、ポリシリコン膜ともに付着粒子を除去するのに、本発明の洗浄液が有効であることが示された。
【0080】
本発明者は発明を実施する最良の形態を明細書に記述している。上記の説明を同業者が読んだ場合、これらに似た好ましい変形形態が明らかになる場合もある。本発明者等は、本発明の異なる形態の実施、並びに、本発明の根幹を適用した類似形態の発明の実施についても充分意識している。また、本発明にはその原理として、特許範囲の請求中に列挙した内容の全ての変形形態、更に、様々な上記要素の任意の組み合わせが利用できる。その全てのあり得る任意の組み合わせは、本明細書中において特別な限定がない限り、あるいは、文脈によりはっきりと否定されない限り、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1‥基体
2‥ポリシリコン膜(ポリシリコン層)
3‥酸化ケイ素膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシリコン膜と、該ポリシリコン層の少なくとも一部を被覆する酸化ケイ素膜とを有する基板を調整し、
研磨粒子を含むCMP研磨液を用いて、前記ポリシリコン層の少なくとも一部が露出するまで前記酸化ケイ素膜を研磨し、前記基板の研磨がなされた面を洗浄する洗浄液であって、
前記洗浄液が、分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤と、水とを含むことを特徴とする、半導体基板用洗浄液。
【請求項2】
分子内に少なくとも一つのアセチレン結合を有するノニオン性界面活性剤が、下記一般式(I)
【化1】

(一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、Rは炭素数が4〜10の置換または無置換アルキル基を表す。)で示される化合物又は下記一般式(II)
【化2】

(一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数が1〜5の置換もしくは無置換アルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜5の置換または無置換アルキレン基を表し、m、nはそれぞれ独立に0または正数を表す。)で示される化合物である請求項1に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項3】
基板用洗浄液中に分散された研磨粒子のゼータ電位が、−60mV以下である請求項1又は請求項2に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項4】
半導体基板用洗浄液のpHが、4.0以上、8.0以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項5】
CMP研磨液が、研磨粒子として酸化セリウム粒子を含み、さらに、ポリアクリル酸化合物と、水と、を含む研磨液である請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項6】
CMP研磨液が、第一液と第二液とを混合して使用されるCMP研磨液であって、前記第一液が酸化セリウム粒子と、分散剤と、水とを含有し、前記第二液がポリアクリル酸化合物と、水とを含有してなる、請求項5に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項7】
ポリアクリル酸化合物は、ポリシリコン膜の研磨速度に対して酸化ケイ素膜の研磨速度が30倍以上速く研磨可能となる量がCMP研磨液に添加されてなる、請求項5又は請求項6に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項8】
CMP研磨液は、前記第二液がさらに界面活性剤を含有してなる請求項6又は請求項7に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項9】
基板は、凹凸が形成された基体と、前記基体の凸部を被覆するポリシリコン膜と、前記基体の凹部を充填し、かつ基体表面を被覆するように設けられた酸化ケイ素膜と、を有する半導体基板である請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項10】
基板は、CMP研磨液を用いて、基体の凸部を被覆するポリシリコン膜が露出するまで前記基板の酸化ケイ素膜を研磨した半導体基板である請求項9に記載の半導体基板用洗浄液。
【請求項11】
研磨後の基板を洗浄用の定盤の洗浄布に押し当て、前記洗浄液を前記基板と前記洗浄布との間に供給しながら、前記基板と前記洗浄布とを相対的に動かして前記基板上に付着した研磨粒子を請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体基板用洗浄液を用いて洗浄することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【請求項12】
研磨後の基板に請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体基板用洗浄液を供給しながら、洗浄ブラシを用いて前記基板上に付着した研磨粒子を洗浄することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【請求項13】
洗浄の後に、さらに基板に付着した液滴を除去する工程を含む請求項11又は請求項12に記載の半導体基板の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−156181(P2012−156181A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11824(P2011−11824)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】