説明

半導体層間絶縁膜形成用組成物とその製造方法、膜形成方法と半導体装置

【課題】 通常の半導体製造プロセスに用いられる方法によって、容易に、任意に制御された膜厚の薄膜が形成可能であり、機械強度及び誘電特性に優れた新たな多孔質膜形成用塗布液、及びこの多孔質膜を内蔵する高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1) Si(OR14 (1)で表される4官能性アルコキシシラン化合物、及び、下記一般式(2) R2nSi(OR34-n (2)で表されるアルコキシシラン化合物をそれぞれ少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、酸性触媒の存在下、大過剰の水を含む反応液中で加水分解及び縮合を行って得たポリシロキサン化合物と酸化ケイ素系微粒子とを含有する多孔質膜形成用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電特性、機械強度に優れた多孔質膜を形成し得る膜形成用組成物、多孔質膜の形成方法及び形成された多孔質膜、並びに多孔質膜を内蔵する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の形成においては、その高集積化に伴い、金属配線間の寄生容量である配線間容量の増加に起因する配線遅延時間の増大が半導体回路の高性能化の妨げになっている。配線遅延時間は、金属配線の電気抵抗と配線間の静電容量の積に比例する所謂RC遅延と呼ばれるものである。この配線遅延時間を小さくするためには、金属配線の抵抗を小さくするか又は配線間の容量を小さくすることが必要である。
このようにして配線金属の抵抗及び配線間容量を小さくすることによって、半導体装置は高集積化しても配線遅延を低下させることができるため、半導体装置サイズの縮小と高速化が可能になり、さらに消費電力も小さく抑えることが可能になる。
【0003】
金属配線の抵抗を小さくするためには、最近では従来適用されてきたアルミニウムによる配線に対し、金属銅を配線として用いる半導体装置構造が採用されるようになってきた。しかし、これのみでは高性能化に限界があり、配線間容量の低減が半導体のさらなる高性能化にとって急務となってきている。
【0004】
配線間容量を小さくする方法としては、金属配線同士の間に形成される層間絶縁膜の比誘電率を低くすることが考えられる。通常、比誘電率およそ2.5以下の材料を形成するためには内部に空孔を導入し多孔質化するという方法が用いられる。
【0005】
しかしながら、材料の多孔質化は必然的に膜の機械強度低下をもたらし、半導体装置を製造する上で大きな問題となってくる。また、膜機械強度が低下することによって、半導体装置自体の強度が不充分となり、半導体装置の信頼性が低下するという問題が生じる。したがって、低誘電率と高機械強度とを両立する低誘電率材料の開発が必要不可欠になってきている。
【0006】
層間絶縁膜の形成方法としては、大別して化学的気相成長法による方法と、塗布による方法とが知られている。それぞれに長所と短所があるが、機械強度の点で、比誘電率がおよそ2.6以上では化学気相成長法が有利であるのに対して、比誘電率がおよそ2.6以下では塗布法の方が有利である。また塗布材料の中でも、有機材料よりも比較的空孔を形成しやすい酸化ケイ素の主骨格を有するような材料が次世代絶縁材料として期待されている。しかしながら、従来の塗布材料では実際の半導体装置製造に必要な低誘電率と機械強度とを両立することが困難であった。
【0007】
多孔質膜の機械強度を向上させる試みとしては、膜中に微粒子を入れて強度を向上させる試みがあり、例えば、特許文献1ではシリカ微粒子に水素あるいはアルキル基で一部置換された酸化ケイ素系の側鎖を結合させた材料を用いて多孔質膜を成膜する方法が開示されている。また、特許文献2では、ゼオライトやシリカ微粒子にアルキル基で一部置換された酸化ケイ素系の側鎖を結合させ、さらに成膜時に側鎖の架橋活性を高く維持できる処理を行う方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−315812号公報
【特許文献2】特開2004−165402号公報
【特許文献3】特開平9−71654号公報
【特許文献4】特開2004−161535号公報
【特許文献5】特開2005−216895号公報
【特許文献6】特開2001−164186号
【非特許文献1】P. A, Agskar, W. Klemperer. Inorg. Chim. Acta 1995, 299, 355.
【非特許文献2】E. Muller, F. T. Edelmann Main Group Metal Chemistry 22 485 1999
【非特許文献3】M. Moran et al. Organometallics 1993 p4327
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術を始めとして、多くの低い比誘電率と高い機械強度を有する低誘電率絶縁膜用の材料開発の試みが行われてきたが、その2つの課題を両立するものは見出されていない。例えばゼオライト微粒子を用いる試みでは、ゼオライト自体が持つ機械強度から期待された機械強度からは遥かに低いものしか得られず、膜中に微粒子を入れることにより機械強度を確保するためには、新たなブレークスルーが必要であった。
以上の問題に鑑みて、本発明は、通常の半導体製造プロセスに用いられる方法によって、容易に、任意に制御された膜厚の薄膜が形成可能であり、機械強度及び誘電特性に優れた新たな多孔質膜形成用塗布液を提供することを目的とする。また、本発明はこの多孔質膜を内蔵する高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記多孔質膜形成用塗布液の開発を目指し鋭意検討を行った。その一つの試みとして、焼結前のソフトベーク段階で、多孔質膜の骨格を形成する酸化ケイ素系微粒子間の結合を強化することができれば、焼結段階での膜収縮を抑制できることで、粒子が形成する間隙で空孔率を確保することができ、かつ、その骨格が崩れないことで機械強度の向上を図ることができるという作業仮説を持った。そして、粒子間の結合を強化できるような、所謂のりの役目を果たしうる材料の探索を行った。
特許文献3は、プラスチックのハードコートのような用途に対し、それ自体が高い鉛筆硬度等を持つ膜を形成できる材料を開示したものであるが、これの特徴は、酸化ケイ素重合体が多数のシラノール基を持っていることである。本発明者らは、このような材料であれば、シラノールを利用して酸化ケイ素系微粒子表面との間で新たに形成されるSi−O−Si結合により酸化ケイ素系微粒子間の結合を強化できると考え、特許文献3の材料をモディファイした方法で高濃度のシラノール基を含有するポリシロキサン系樹脂を調製し、微粒子と共に組成物中に含有させたところ、狙い通り、低誘電率でありながら極めて高強度を示す塗布膜形成が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、酸化ケイ素系微粒子と、成膜時、縮合することで該微粒子間でケイ素−酸素−ケイ素結合を形成することにより、該微粒子が作る骨格の強度を向上させるポリシロキサン化合物を含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物である。
酸化ケイ素系微粒子を含有する膜では、該微粒子の作る骨格構造により機械強度が得られるが、加熱することで微粒子と微粒子の間で、ケイ素−酸素−ケイ素結合を形成し、微粒子の位置を固定することができる材料を加えてやることにより、微粒子が作る骨格強度を高くすることができ、膜の高い機械強度を実現することができる。
【0011】
上記ポリシロキサン化合物としては、具体的には
下記一般式(1)
Si(OR14 (1)
(上式中、R1は、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物を少なくとも1種以上、及び/又は、下記一般式(2)
2nSi(OR34-n (2)
(上式中、R2は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またR3は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。nは1〜3の整数である。)で表されるアルコキシシラン化合物
を少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、酸性触媒の存在下、生成するシラノール基を水和することにより縮合反応を制御してゲル化を抑制しながら、加水分解及び縮合を行って得たポリシロキサン化合物を用いることができる。
上記方法により得たこのポリシラン化合物は比較的強い骨格と高い濃度のシラノール基を有している。シラノール基は縮合反応性が高く、酸化ケイ素系微粒子とも相互作用/縮合反応を起こしやすく、溶媒が抜けきれていない段階の比較的低温から架橋反応が進行し、膜の構造強化が可能である。一方このシラノール基は水和により安定化されている。水和している水分子は酸化ケイ素系微粒子とも相互作用しやすく、この相互作用は、加熱などにより水分子が抜けた際に縮合/架橋反応を効率的に進行させる。これらの作用により、塗布成膜工程において酸化ケイ素系粒子を強固に架橋して、空孔が保持された高強度の膜を与える。
【0012】
上記酸性触媒の存在下、生成するシラノール基を水和することにより縮合反応を制御してゲル化を抑制しながら、加水分解及び縮合を行うための方法としては、上記加水分解性シラン化合物を、投入済みの上記加水分解性シラン化合物の有する加水分解性基のモル等量数よりも常に過剰のモル等量数の水が存在する加水分解反応液中に添加する方法を挙げることができる。加水分解性シラン側を過剰のモル等量数の水が存在する進行中の加水分解反応液中に滴下していくことで、加水分解により生じたシラノール基が水和され、ゲル化を抑制しつつ、本発明の組成物に有利な高い濃度のシラノール基を持つポリシラン化合物が得られる。
【0013】
上記ポリシロキサン化合物は、加水分解性シラン混合物中の反応性ケイ素−酸素結合のモル数に対して5倍より多いモル数の水を含有する反応液中で加水分解及び縮合することが好ましい。この条件により高い濃度のシラノール基を持つポリシロキサン化合物がゲル化することなく得られる。
【0014】
また、上記ポリシロキサン化合物は下記一般式(Q1〜4、T1〜3)で表されるユニットからなり、前記ポリシロキサン化合物における各ユニットのモル比率をそれぞれq1、q2、q3、q4、t1,t2,t3としたとき、(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≦0.2、かつ(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≧0.4を満足することが好ましい。各ユニット構成比がこの範囲を満たすことにより高い架橋活性が得られる。前記ポリシロキサン化合物における各ユニットのモル比率は、29Si−NMRの測定により得ることができる。

【化2】

【0015】
前記酸化ケイ素系微粒子の一態様として、ゼオライト種結晶を含むゼオライト微粒子を挙げることができる。ゼオライト微粒子は、酸素とケイ素の規則的な繰り返し構造により、結晶性に由来する高い強度を与える。このため、この微粒子間の結合を強くすることにより、高い膜強度を実現することができる。
前記ゼオライト微粒子は、ゼオライトに加水分解性シランを架橋性側鎖として修飾したものを用いることもできる。架橋性側鎖は、前記ポリシロキサン化合物との反応性を向上させることができる。
本発明の組成物に含有される上記酸化ケイ素系微粒子の例としては、シリカ微粒子を挙げることができる。シリカ微粒子は、ゼオライトに比較すると粒子の硬さは低いものであるが、工業的な方法で有利に調製できると共に、有機基の導入設計が容易で、好ましい物性に調整することができる。
【0016】
上記シリカ微粒子は、下記一般式(3)
Si(OR44 (3)
(上式中、R4は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、4個のR4は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物、及び、下記一般式(4)
5mSi(OR64-m (4)
(上式中、R6は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R6が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R5は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R5が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またmは1〜3の整数を示す。)で表されるアルコキシシラン化合物をそれぞれ少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、アルカリ性触媒を用いて加水分解及び縮合することにより得られたものであることが好ましい。上記原料を主なケイ素源とすることで、金属やハロゲンのような不純物の混入を抑制できる。
【0017】
また更に、本発明の組成物に使用される上記加水分解及び縮合により得られるシリカ微粒子の、より好ましい合成方法として、加水分解及び縮合に使用する上記アルカリ性触媒が、アルカリ金属水酸化物及び下記一般式(5)
(R74+OH-(5)
(上式中、R7は炭素、水素、酸素からなる有機基であり、各々独立して互いに同じでも異なっていてもよい。また、カチオン部[(R74+]は下記式(6)
(N+O)/(N+O+C)≧ 1/5 式(6)
を満たす。ただし、N、O、Cはそれぞれカチオン部に含まれる窒素、酸素 、炭素の原子数である。)
で示される第4級アンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる1種以上の親水性塩基触媒、ならびに、上記式(6)を満たさない第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる1種以上の疎水性塩基触媒の混合物を使用する方法が挙げられる。この反応条件で得られたシリカ微粒子は特に高い強度を持つことから、上記ポリシロキサン化合物と組み合わせることにより特に良好な機械強度を与える多孔質膜形成用組成物とすることができる。
【0018】
更にもう一つの本発明の組成物に使用される上記加水分解及び縮合により得られるシリカ微粒子の、より好ましい合成方法として、上記アルカリ性触媒の少なくとも一部として、予め準備した下記一般式(7)
(SiO1.5−O)pp-(X+p (7)
(XはNR4を表し、更にRは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、Rは、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、pは6から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩を用いる方法が挙げられる。この反応条件で得られたシリカ微粒子もまた、特に高い強度を持つことから、上記ポリシロキサン化合物と組み合わせることにより特に良好な機械強度を与える多孔質膜形成用組成物とすることができる。
【0019】
また、本発明は、上述の多孔質膜形成用組成物を用いて基板に塗布し、焼結を経て得た多孔質膜である。また、本多孔質膜は上述の組成物を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする多孔性珪素含有膜の形成方法により成膜される。
【0020】
更に本発明はその利用方法として、上述の組成物を基板上に塗布し、焼成工程を経て得た多孔性珪素含有膜を低誘電率絶縁膜として含むことを特徴とする半導体装置を与える。該半導体装置は、上述の組成物を金属配線層を持つ基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法により製造される。
また、本発明は、下記一般式(1)
Si(OR14 (1)
(上式中、R1は、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表される4官能性アルコキシシラン化合物を少なくとも1種以上、及び/又は、下記一般式(2)
2nSi(OR34-n (2)
(上式中、R2は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またR3は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。nは1〜3の整数である。)で表されるアルコキシシラン化合物を少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、酸性触媒の存在下、生成するシラノール基を水和することにより縮合反応を制御してゲル化を抑制しながら、加水分解及び縮合を行いポリシロキサン化合物を得る工程と、前記ポリシロキサン化合物を有機溶剤で抽出する工程と、抽出された前記ポリシロキサン化合物と酸化ケイ素系微粒子とを配合する工程とを含む多孔質膜形成用組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多孔質膜形成用組成物によれば、好ましい誘電特性と機械強度とを同時に与える多孔質膜が形成可能となる。更に本発明の多孔質膜は、好ましい誘電特性と機械強度とを同時に有することから、信頼性が高い半導体装置を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の多孔質膜形成用組成物は、主材料である酸化ケイ素系微粒子が膜中で組み合わされて構造部分を形成し、その粒子同士をポリシロキサン化合物が結合させることにより骨格の強度を高め、更に微粒子間に形成される間隙により空孔を形成することで低誘電率を達成するモデルに基づき構成される。このモデルにおいて重要な因子は、微粒子自体が外部からの力に対して抵抗することと、組み合わさった微粒子が焼結の早い段階で充分な結合を形成し、粒子の再配置による空孔率の低下を抑制すると共に、強い結合を形成することで、焼結後、外部からの力が加わっても粒子の位置が変動しないようにすることである。
多孔質膜の空孔を微粒子の間隙で形成し、その機械強度を上げるモデルを考えた場合、微粒子としては、そのもの自体の機械強度が高いと考えられる酸化ケイ素系微粒子を使用することが好ましく、それらの例としては、結晶性の原子配列を持つゼオライト微粒子や、Si−O−Si結合密度を容易に上げることができるアルカリ触媒を使用して合成したシリカ微粒子等を挙げられる。特にゼオライト微粒子を使用した場合には膜の機械強度が微粒子の強度のみに基づくものであれば非常に高いものになるはずであるが、実際には期待ほど高くならない。これは、微粒子の強度は充分であるものの、外部より力が加わると、微粒子の位置が変動してしまうことにより、膜自体の強度としては高いものが得られないものと考えられる。本発明では、この微粒子の位置の変動を抑制すべく、塗布成膜後の加熱により、粒子間に早期に、かつ充分な酸素−ケイ素−酸素の結合を形成し、粒子配置を保持することにより、焼結時に空孔率の低下を抑制し、かつ成膜後の機械強度の向上を達成するものである。この早期の強い微粒子配置の固定には、酸化ケイ素系微粒子と結合を形成する材料が、高い反応活性を持つシラノールを多量に含んでいる必要があり、また焼結時の空孔率低下抑制のためには、その材料自体も一定の強度を保持している必要がある。そのような材料の例としては、後述のような酸触媒を用い、特別な条件で合成されたポリシロキサン化合物が好適である。
ところで、アルカリ触媒により加水分解縮合されたシリカ材料を、酸触媒により加水分解縮合したポリシロキサン材料を組み合わせた組成物はすでに特許文献6で提案されている。しかし、特許文献6で開示している技術は、膜の強度が粒子の作る骨格によるものであるという考え方を含んでおらず、粒子間で強固な結合を形成することの重要性が見落とされていた。そこで、酸触媒による方法は開示されているものの、後述の本発明に使用するポリシロキサン化合物とは異なり、加水分解縮合時に従来法によるゲル化を防止する方法を用いて得た材料を開示するものであった。
【0023】
本発明の多孔質膜形成用組成物に含有されるポリシロキサン化合物は、高濃度のシラノール基を含有することを特徴とし、下記のように合成される。出発物質となるケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される4官能性アルコキシシラン化合物の少なくとも1種以上、と及び/又は、一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種類以上を含有する加水分解性シラン化合物、またはその混合物である。
Si(OR14 (1)
2nSi(OR34-n (2)
(上式中、R1、R3は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1、R3がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R2は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またnは1〜3の整数を示す。)
【0024】
なお、一般式(1)の化合物の混合比は、酸性触媒下での加水分解及び縮合に使用する加水分解性シラン全体の合計モル数に対し、ケイ素原子基準で25モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上70モル%以下である。また、一般式(2)の化合物の混合比は上記加水分解性シラン全体の合計のモル数に対し、ケイ素原子基準で0モル%以上70モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以上60モル%以下である。
【0025】
シラン化合物(2)のR2として好ましいものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジエチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニチル基などのアラルキル基、その他の非置換1価炭化水素基が挙げられ、フッ素等の置換基を有していてもよい。このうち特に好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、ビニル基、フェニル基である。
【0026】
1、R3として好ましいものは、加水分解後に副生するアルコールの沸点が水の沸点より低くなるものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロプル基、iso−プロピル基などである。
【0027】
上記加水分解縮合反応に使用する加水分解性シラン化合物として、一般式(1)及び(2)の他に、さらにそれ以外のシランを混合することも可能である。そのようなシランの実例としてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキサメトキシジシロキサン、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリエトキシシラン、1,3−プロピレンビストリメトキシしラン、1,4−ビストリメトキシシラン、1,4−フェニレンビストリメトキシシランなどを補助成分として添加することも可能である。ただし、これらの添加量は20%以下とすることが好ましい。
【0028】
上記加水分解性シラン化合物の酸性触媒存在下での加水分解縮合でシロキサン重合体を得る方法は、反応制御の方式により下記の2つの方法に分類される。なぜなら、酸触媒による加水分解性シラン化合物の加水分解縮合では、縮合速度に比較して加水分解速度が速いため、原料として3価あるいは4価の加水分解性シラン化合物を使用した場合には、何らかの反応制御がない場合、反応液中の活性なシラノール基の濃度が高くなりすぎ、多数の活性な反応活性点を持つ中間体が多量に生成してしまうことによりゲル化を引き起こすからである。そこで、このゲル化を防止する方法として、シラノール基の生成を制御する方法と、生成したシラノール基のゲル化反応を直接抑制する方法のいずれかが用いられ、それぞれの制御方法の特徴は加水分解性シラン化合物の添加方法と加水分解に使用する水の添加量に見られる。
【0029】
上記2つの方法のうち一般的な方法は、特許文献6に記載されたようなシラノール基の生成を制御する方法である。この通常条件の酸触媒による縮合では、一般的に、加水分解性シラン化合物を入れた反応液に水を少量づつ滴下する方法が採られる。これにより、加水分解により生じたシラノール基が縮合に消費される時間を作り、反応液中のシラノール基の濃度の上昇を制御し、ゲル化を防止する。また一般に使用する水の合計量も少量とし、比較的極性の低い有機溶媒を多めに使用して、水と加水分解性シランの接触機会を下げ、反応中一時にシラノール基の濃度が上がらないようにアルコキシ基を保存しつつ、生成したシラノール基を縮合させるという反応を設計することでゲル化を防止する。
特殊なケースとして有機溶媒を使用しない場合は使用する水の量は1倍、あるいはそれ以下とする必要があり、通常の有機溶媒を使用する場合でも使用する水の量は同様に1倍以下にすることが多い。そこで実際の実施とは別に、特許上の記載として大きな幅を取った場合にも使用する水の範囲としては、加水分解に必要な水の量の3倍、又は5倍より少ない上限値が記載される。また、実際にはこの方法で水の量を増やしていった場合、1倍より多くした場合にはゲル化を起こす危険性が高く、例えば後述する比較製造例に示したような条件で水を2倍量加えると反応液はゲル化を起こしてしまい、ポリシロキサン化合物を取り出すことはできない。また、後述する製造例にこの方法によりゲル化を抑制して合成して得たポリシロキサン化合物の29Si−NMRによる構造解析結果を示したが、この方法で得られたポリシロキサン化合物の特徴の一つはアルコキシ基が明確に残っていることである。更に、このもの自体の機械強度向上に係わる、3つあるいは4つのケイ素と酸素を介した結合を形成しているケイ素の単位(4価の加水分解性シラン由来の単位をQ、3価の加水分解性シラン由来の単位をTとし、他のケイ素と酸素を介して結合している結合数を数字で表すものとした場合、Q4、Q3、T3と表される単位)の存在比が比較的低く、特にQ4はリジッドな構造を与えることで機械強度を向上させる能力が高いと考えられるが、その単位は特に少ないことが分かる。同様に機械強度低下の因子となる1つ又は2つのケイ素と酸素を介して結合しているケイ素原子の存在比が高いことが特徴である。これはこの方法でSi−O−Si結合形成を強く促した場合、シラノールの活性抑制ができなくなり、ゲル化を起こしてしまうからである。
【0030】
これに対し、ゲル化反応を直接抑制する方法は特許文献3で開示されている。ここでは上述の方法と異なり、大過剰の水を使用することが特徴であり、これにより活性なシラノール基を水和することで反応を制御する。そこで、水和を妨害する多量の有機溶媒の使用はなく、より好ましくは有機溶剤は使用せずに大過剰の水を使用して加水分解を行う。また、この方法の一般的な反応操作では、加水分解性シラン化合物を、投入済みの加水分解性基のモル等量数よりも過剰のモル等量数の水が常に存在する加水分解反応液に添加する方法が採られ、より一般的には予め大過剰の水と酸性触媒を反応槽に入れておき、そこに加水分解性シランを滴下していく方法が採られる。これにより、加水分解により生じたシラノール基がすぐに水和されるように反応が設計される。
このようにして、反応液中ではシラノールが多量に生成するが、常に多量の水が存在することにより充分な水和が起こり、水和によるシラノールの活性制御によりゲル化が防止される。この方法を用いて合成したポリシロキサン誘導体の構造解析例を製造例に示したが、この方法により得られるものの特徴としては、そのもの自体の機械強度の向上に効果がある上記Q4、Q3、T3単位の比率が高く、かつ強度低下の要因となるQ2、T2の比率が低いことである。更に、上記縮合度が高いにもかかわらず、シラノール基を持つ単位は確保され、更に焼結時に結合形成活性が低いアルコキシ基は殆ど消失していることも、この方法により合成されたポリシロキサン誘導体の特徴である。更にこの方法によれば、3価及び4価の加水分解性シラン化合物の混合比が90%を超えるような非常にゲル化を起こし易い出発物質に適用した場合にも、ゲル化を起こすことなく分子量を2000以上とすることができ、この特性も、酸化ケイ素系微粒子を固定する際に有利な物性である。
一方、構造の相違から与えられる物性として、それぞれから単独で膜を形成した場合には、後述の水和によるシラノールの活性抑制によりゲル化を防止する方法で合成されたポリシロキサン誘導体は、硬度の高い膜を形成できることが特許文献3に開示されているが、本発明の多孔質膜形成用組成物に適用した場合、前述の一般法によるポリシロキサン誘導体では基準の誘電率に対する機械強度を殆ど向上できないのに対し、後述のポリシロキサン誘導体は、基準の誘電率に対して機械強度を明らかに向上させる機能が確認された。
【0031】
そこで、ここで使用されるモノマーを加水分解させるための水は反応系で生成するシラノール基を水和するに充分な量存在する必要があり、反応中に加水分解性シランが化合物を滴下して行く際、反応液中に加えられた加水分解性シランに基づく加水分解性基のモル等量に対して水が常に過剰量存在している必要がある。一般的には加水分解に使用する水は予め反応槽中に加えておく操作が簡便であるが、水の添加量の目安としては、最終的に滴下する全加水分解性シラン化合物に置換されている加水分解性基1モルに対し3倍モル以上であり、好ましくは5倍モルより多く添加することが好ましい。通常の場合、5倍モルより多い水の添加でゲル化をほぼ防止することができる。具体的には、上述のように好ましい水の量の下限を5倍量、上限を後述のように100倍量とした場合、例えば4価である一般式(1)の加水分解性シラン化合物と一般式(2)で表されるもののうち、3価である化合物のみから調製する場合、一般式(1)の化合物のモル量をQ、一般式(2)の化合物のモル量をT、水のモル量をXとすると、100×(4×Q+3×T)≧X≧5×(4×Q+3×T)となる。このように多量の水を使用して酸性触媒により加水分解及び縮合することで、シラノール基含有比が高いポリシロキサン化合物をゲル化させることなく得られる。ただし、100倍モルを超える添加は、スケールによっては反応に使用する装置が過大になり、排水の処理コストも高くなるだけで不経済になる可能性がある。
【0032】
酸性触媒は、基本的には反応条件を調整することで公知のものを何れも使用することができるが、加水分解縮合を充分に行わせるため、有機酸の中でも特に酸性が強いといわれている有機スルホン酸、そして、これよりも更に強いといわれている無機酸から選ばれる触媒を用いるのが好ましい。このような触媒としては、無機酸として塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等、有機スルホン酸としてメタンスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸を挙げることができる。上記強酸を使用した場合の触媒の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して10-6モル〜1モル、好ましくは10-5モル〜0.5モル、より好ましくは10-4モル〜0.3モルである。
【0033】
更に、このとき反応中のポリシロキサン化合物の安定性を高めるため、2価有機酸を添加してもよい。このような有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などを挙げることができる。特に好ましいのはシュウ酸、マレイン酸である。有機スルホン酸を除く有機酸の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して10-6モル〜10モル、好ましくは10-5モル〜5モル、より好ましくは10-4モル〜1モルである。
【0034】
操作方法として、水及び触媒を溶解させ、そこにモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。モノマーの滴下時に10〜50℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0035】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチルラクトン及びこれらの混合物などが好ましい。
【0036】
これらの溶媒の中で好ましいものは水可溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプルピルエーテルなどの多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0037】
なお、有機溶媒の使用量は、50質量%以上あると加水分解縮合反応が充分に進まないため、50質量%未満とする必要がある。また、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。有機溶媒の使用量が多いと反応容器が過大となり不経済である。好ましいのは、水に対して10質量%以下であり、有機溶剤を使わないのが最も好ましい。
【0038】
反応後、必要であれば触媒の中和反応を行い、更に下記の抽出操作をスムーズに行うために、好ましくは加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に必要なアルカリ性物質の量は、無機酸及び有機スルホン酸に対して1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。また、反応混合物を加熱する温度は、除去すべきアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべきアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0039】
この水溶液から加水分解縮合に使用した触媒を除去するため、ポリシロキサン化合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、ポリシロキサン化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチルラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルな及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0040】
特に好ましいものとして、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合物が好ましく、例えば、メタノール+酢酸エチル、エタノール+酢酸エチル、1−プロパノール+酢酸エチル、2−プロパノール+酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、メタノール+メチルイソブチルケトン、エタノール+メチルイソブチルケトン、1−プロパノール+メチルイソブチルケトン、2−プロパノール+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、メタノール+シクロペンチルメチルエーテル、エタノール+シクロペンチルメチルエーテル、1−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、2−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、メタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなど組み合わせが好ましいが組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0041】
なお、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤を好ましくは、0.1〜1,000質量部、より好ましくは、1〜500質量部、更に好ましくは、2〜100質量部である。
【0042】
加水分解縮合に使用した触媒を除去して得られた有機層は必要に応じて溶媒の減圧による一部留去と再希釈による溶媒置換等を経て、最終的な多孔質膜形成用組成物に混合される。
このとき、加水分解反応時や濃縮時の条件バラツキによって、好ましくない微小ゲルと考えられる不純物が混入することがある。この微小ゲルは、このポリシロキサン化合物を組成物として混合する前に水で洗浄することにより除去可能である。また、微小ゲルの残存が上記水洗浄によっても効果が低い場合には、ポリシロキサン化合物を酸性水で洗浄後に水で洗浄することでこの問題が解決される場合もある。
【0043】
このとき使用される酸性水としては、二価の有機酸を含有するものが好ましく、具体的には、シュウ酸、マレイン酸が好ましい。酸性水中に含有される酸の濃度は、好ましくは、100ppm〜25質量%、より好ましくは、200ppm〜15質量%、更に好ましくは、500ppm〜5質量%である。酸性水の量は、上記工程で得たポリシロキサン化合物溶液1Lに対して、好ましくは、0.01〜100L、より好ましくは0.05〜50L、更に好ましくは、0.1〜5Lである。有機層の洗浄の方法は通常行われている方法でよく、両方を同一の容器に入れ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないので、好ましくは1〜5回程度である。
【0044】
続いて、上記洗浄に使用した酸を除去するため中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、酸性水で洗浄されたポリシロキサン化合物溶液1Lに対して、好ましくは、0.01〜100L、より好ましくは、0.05〜50L、更に好ましくは、0.1〜5Lである。この洗浄の方法は上記方法と同じでよく、両方を同一の容器に入れ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないので、好ましくは1〜5回程度である。
【0045】
洗浄済みのポリシロキサン化合物溶液に、後述の塗布組成物とするための溶媒を加え、減圧で溶媒交換することで多孔質膜形成用組成物への添加用母液とすることができるが、この溶媒交換は、後述の酸化ケイ素系微粒子を添加した後でもよい。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0046】
このとき、溶媒が変わることによりポリシロキサン化合物が不安定になり、ナノゲルが発生する場合がある。これは最終的な溶剤とポリシロキサン化合物との相性により発生するが、これを防止するため、有機酸を加えてもよい。有機酸としてはシュウ酸、マレイン酸などの2価のものや、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの1価のカルボン酸が好ましい。加える量としては溶媒交換前に溶液中のポリマーに対して好ましくは0〜25質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜5質量%であるが、添加する場合は0.5質量%以上が好ましい。溶媒交換前の溶液に必要であれば、酸を添加して溶媒交換操作を行えばよい。
上述の方法で得たポリシロキサン化合物は、上述の通り、通常の加水分解縮合で得たものに対し、分子内に遥かに多量のシラノール基を持たせることができる。即ち、上記ポリシロキサン化合物は下記一般式で表されるユニット(Q1〜Q4、T1〜T3):
【化3】


(上式中、式Qは、4価の加水分解性シラン由来のユニットを意味し、式Tは3価の加水分解性シラン由来のユニットを意味する。T1〜T3におけるRは、Si−Rで示される結合がケイ素と炭素置換基の結合であることを示す。)からなるが、29Si−NMRで構成比を測定した場合、前記ポリシロキサン化合物における各ユニットのモル比率をそれぞれq1、q2、q3、q4、t1,t2,t3としたとき、(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≦0.2であり、かつ(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≧0.4を満足するものが上記方法で得られ、この範囲のものを使用することにより本発明の多孔質膜形成用組成物の機能をより向上することができる。
【0047】
次に本発明の多孔質膜形成用組成物のもう一つの主要成分である酸化ケイ素系微粒子について説明する。
本発明の多孔質膜形成用組成物は、塗布された薄膜中の機械強度を確保するための重要因子である酸化ケイ素系微粒子を上述のシラノール存在比が高いポリシロキサン化合物により、成膜時に強く結合させることによって膜全体の機械強度を向上させるというものであり、すでに公知の多孔質膜形成用組成物に利用されてきた酸化ケイ素系微粒子を何れも利用できる。従来使用されてきた酸化ケイ素系微粒子としては、高い機械強度が期待されるが調製が非常に煩雑なゼオライト系のものと、容易に調製できるシリカ系のものが例示される。
【0048】
本発明の多孔性膜形成用組成物において、酸化ケイ素系微粒子として使用することができるゼオライト系微粒子についてはすでにゼオライト微粒子の多孔性膜形成用組成物への適用方法として多数公知(例えば特許文献4や5)であるが、これらは何れも適用可能である。ただし、所謂ゼオライトと言った場合、ケイ素と酸素の原子配列が遠距離の規則性を持つ材料を指すことが多いが、ここではケイ素と酸素とがゼオライト様の結晶構造規則性を持ち、粒子径が数nm程度のゼオライト種結晶を含むものを指すものとする。
【0049】
ゼオライトの結晶構造には口径が0.4〜0.8nm程度の穴が多数開いていることから、これにより微細空孔が確保されるだけでなく、結晶構造であるため極めて大きな機械強度を有し、機械強度が高い多孔質膜を形成するための材料として有利である。
【0050】
ゼオライト微粒子の好ましい合成法としては、テトラアルコキシシランと特定の塩基性物質との組み合わせ、特に水酸化第四級アンモニウムによる加水分解縮合で得る方法が好ましく、例えばテトラエチルオルソシリケート中に水酸化テトラプロピルアンモニウム(20〜25質量%)を加えた後30℃で3日間熟成、続いて80℃で25時間熟成することでゼオライト結晶の微粒子懸濁液が製造できる。
【0051】
このようなゼオライト微粒子製造の原料として、一般式(8)
Si(OR84 (8)
(上式中、R8は置換基を有してよい炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝状のアルキル基を表し、R8が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表すことができるシランを一種類以上用いて製造することができる。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランを例示することができる。
【0052】
加水分解触媒としては、一般式(9)
(R94+OH- (9)
(上式中、R9は炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、各々独立して互いに同じでも異なっていてもよい。)
で表される第四級アンモニウム水酸化物を例示できる。また、一般式(9)の第四級アンモニウム水酸化物の例として、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン等が好ましく、特に、水酸化テトラプロピルアンモニウムが好ましい。
【0053】
第四級水酸化アンモニウム触媒の添加量は、シラン化合物に対してモル比で好ましくは0.001〜50倍量、より好ましくは0.01〜5.0倍量が用いられる。また、加水分解のための水は、シラン化合物を完全に加水分解するために必要なモル数の好ましくは0.5〜100倍量、より好ましくは1〜10倍量が用いられる。
【0054】
シラン化合物を加水分解してゼオライト微粒子を製造する場合、水以外にもシラン化合物のアルコキシ基に対応するアルコール等の溶媒を含むことができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。
【0055】
水以外の溶媒の添加量は、シラン化合物の質量に対して、好ましくは0.1〜10倍量、より好ましくは0.5〜2倍質量である。
【0056】
一般式(8)のシラン化合物の加水分解時間は、好ましくは1から100時間、より好ましくは10〜70時間であり、温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは15℃〜30℃である。
加水分解後の加熱処理は、温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、加水分解に使用した溶媒の大気圧での沸点を超える場合には、密閉容器中で処理してもよい。ただし、温度が85℃を超えると多量の100nmを超える粒径のものが混入してくるため、85℃以下とすることが好ましい。
加熱処理時間は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは10〜70時間である。
【0057】
上記のようにして得たゼオライト微粒子は、そのまま組成物に添加する酸化ケイ素系微粒子として使用できるが、焼結時の架橋形成活性を上げるためには、次のような加水分解性シランによる架橋性側鎖修飾処理を行ったゼオライト微粒子が応用できる。
【0058】
即ち、上記加水分解性シランによる架橋性側鎖修飾処理は、ゼオライト微粒子に一般式(10)および(11)
Si(OR104 (10)
11qSi(OR124-q (11)
(上式中、R10、R12は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R10、R12がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R11は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R11が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またqは1〜3の整数を示す。)
からなる群より選ばれる1以上の加水分解性シランを、アルカリ触媒条件下、15〜80℃で滴下することで変性を行うことができ、この際数時間を越えるような長い熟成時間は特に必要ではない。
【0059】
また、変性後、架橋形成活性を残すため、反応終了後のなるべく早い時間に2価以上のカルボン酸化合物を添加して、活性なシラノールを保護しておくことが好ましい。時間経過と共にこの効果は低くなるので、好ましくは2時間以内、特に、反応終了時に行うことが望ましい。
【0060】
上記2価以上のカルボン酸化合物とは、分子中にカルボキシル基またはその誘導体を2つ以上有するまたは生成しうる化合物であり、例えば、シュウ酸、マロン酸、マロン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物又はアジピン酸などが例示される。
【0061】
これらの添加量は、変性に使用した加水分解性シラン化合物が持つアルコキシ基及び/又はシラノール基に対して、好ましくは、0.005モルから0.5モルの範囲であることが好ましい。
【0062】
このようにして製造されたゼオライト微粒子あるいはゼオライトを含む酸化ケイ素系微粒子は、溶液中に含まれる不要な塩類や、微量に混入されている可能性のある金属等を除去することを目的として、水と混合しない溶媒を添加した後、水洗する操作を行うことができる。このような目的に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどが挙げられる。
【0063】
また、このようにして製造されたゼオライト微粒子あるいはゼオライトを含む酸化ケイ素系微粒子は、上述の大量の水と酸性触媒とにより製せられたポリシロキサン化合物と同様、最終的に塗布に好適な溶媒中の溶液の形で塗布組成物調製用の母液とすることが好ましい。このような目的に用いられる溶媒としてはn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、2,2,2−トリメチルペンタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、n−アミルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチオンなどのケトン系溶媒、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒などを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0064】
一方、本発明に使用されるもう一つの好ましい酸化ケイ素系微粒子の選択肢であるシリカ系の微粒子は、特に工業的入手容易性に優れ、特許文献1や特許文献2等により多数公知であり、それらはいずれも使用可能であるが、シリカ微粒子自体の強度が高い場合に、本発明の方法は特に有効に作用する。そのような、より好ましいものについて以下に説明する。
【0065】
本発明の多孔質膜形成用組成物に使用することができる好ましいシリカ微粒子の代表例としては、少なくとも1種の下記一般式(3)で表される4官能性アルコキシシラン化合物と、少なくとも1種類以上の一般式(4)
Si(OR44 (3)
5mSi(OR64-m (4)
(上式中、R4、R6は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R4、R6がそれぞれ複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R5は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R5が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またmは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシラン化合物とを含有する加水分解性シラン化合物をアルカリ性触媒により加水分解および縮合したシリカゾルである。
なお、一般式(3)の化合物の混合比は、アルカリ性触媒下での加水分解及び縮合に使用する加水分解性シラン全体、すなわち(3)および(4)の化合物の合計モル数に対し、ケイ素原子基準で10モル%以上90モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上70モル%以下である。
【0066】
アルコキシシラン化合物(4)のR5として好ましいものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジエチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニチル基などのアラルキル基、その他の非置換1価炭化水素基が挙げられ、フッ素等の置換基を有していてもよい。
【0067】
加水分解性シランの実例としては、
(3)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなど、
(4)としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上のシラン類が主成分としての好適な例であるが、さらにこれら以外のシランを混合することも可能である。そのようなシランの実例としてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリエトキシシラン、1,3−プロピレンビストリメトキシしラン、1,4−ビストリメトキシシラン、1,4−フェニレンビストリメトキシシランなどを補助成分として添加することも可能である。ただし、これら一般式(3)及び一般式(4)以外の加水分解性シランの添加量は反応に使用される全加水分解性シランに対し、ケイ素基準で30モル%以下であることが好ましい。
【0068】
上記の加水分解性シラン化合物は特許文献6には塩基性触媒を使用しても、条件によっては微粒子とならない場合が書かれているが、下記のような条件を使用することにより微粒子として得ることができる。
【0069】
塩基性触媒は、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンなどのアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリン等の第4級アンモニウム水酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物等が使用できるが、これらのうち、第4級アンモニウム水酸化物やアルカリ金属水酸化物のような強塩基性触媒を使用することにより、より粒子性が高いシリカゾルを得ることができる。
更に上記強塩基性触媒のうち、アルカリ金属水酸化物とテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等下記一般式(5)
(R74+OH- (5)
(上式中、カチオン部[(R74+]は下記式(6)
(N+O)/(N+O+C)≧ 1/5 式(6)
を満たす。ただし、N、O、Cはそれぞれカチオン部に含まれる窒素、酸素 、炭素の原子数である。)
を満たすような親水性の第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる塩基は、より架橋密度が高いと推定される硬いシリカ微粒子を与えるために、本発明の組成物に使用するシリカ微粒子を得るための触媒としてより好ましい触媒となる。
7は、炭素、水素および酸素からなる有機基であり、このような基としては、水酸基を有してもよく、また、内部に−O−、−(C=O)−、−(C=O)O−構造を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。
【0070】
また、更に上記親水性第4級アンモニウム水酸化物及び金属水酸化物から選ばれる1種以上と、上記式(6)を満たさない疎水性の第4級アンモニウム水酸化物をアルカリ性触媒として併用して得たシリカ微粒子を多孔質膜形成用組成物に使用してやると、より得られる多孔質膜の機械強度をより高くすることができる。この理由については、本発明者らは次のように考えている。即ち、疎水性の塩基触媒と親水性の塩基触媒とを併用すると、疎水性塩基触媒とアルコキシシランとの間で疎水性相互作用による会合状態を形成し、一部加水分解が進行した後も、シラノール(シリケート)とアンモニウムカチオンの静電的相互作用により会合状態を保たれる。そこに親水性塩基触媒が作用すると、シラノールの縮合反応が促進され,高い反応率で強固なシロキサン結合が形成される。さらに次の疎水性塩基触媒アルコキシシランの会合体が作用し、シリカ表面との会合状態を形成、そこに親水性の塩基触媒が縮合を促進することを繰り返してシリカゾルが成長していくものと考えられる。この方法で得られたシリカゾルを用いて得た膜は、ミクロ孔が全くあるいは殆ど観測されないことから、ゼオライト様の結晶構造を部分的に持つタイプのシリカゾルではない。このことは、疎水性の塩基触媒がシリカゾルの内部に多量に留まらない、上記のメカニズムを推定させる。そして、このようなメカニズムにより、ゼオライト構造のような結晶の成長には向かわず、アモルファスながら内部ひずみの少なく、高い架橋率のシリカを形成したものと考えられる。さらに、このように縮合時に充分に内部ひずみが緩和されながら縮合反応の進行したシリカゲルは、内部の残存シラノールが少なく、その分、強固で疎水性が高いシリカゲルとなると考えられ、後述のような低い比誘電率を持つ膜を形成させた際も、高強度と安定した比誘電率を与える膜が形成されたものと考えている。
【0071】
また、本発明の多孔性膜形成用組成物において、酸化ケイ素系微粒子として添加することができるシリカ微粒子を合成するために好ましいアルカリ性触媒の選択方法として、アルカリ性触媒の少なくとも一部として、予め準備した下記一般式(7)
(SiO1.5−O)pp-(X+p (7)
(XはNR134を表し、更にR13は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R13は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、pは6から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩を使用する方法を挙げることができる。
シルセスキオキサンのケージ化合物とは、下記の様に熱力学的に比較的安定な構造として下記6〜12量体が知られ、また18量体までが確認されており(非特許文献1)、典型的には8量体である。
【化4】


(ここで、各頂点はケイ素原子であり、各辺はSi−O−Si結合を示す。)
【0072】
上記で示した構造の各頂点のケイ素原子はもうひとつの結合手を持つが、その置換基として水酸基を有した場合、シラノールとして酸性を示す。この酸性水酸基が第4級アンモニウムと塩を形成したものが上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩である。また、典型的な例である8量体は、下記のような化合物である。
【化5】


(XはNR134を表し、更にR13は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、Rは、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
【0073】
この塩の合成としては、例えばテトラアルコキシシランまたはエロジルなどのシリカ粉末を、水酸化テトラアルキルアンモニウムと含水溶媒中で反応させることで上記シルセスキオキサンのケージ化合物(8量体)のテトラアルキルアンモニウム塩が合成できることが知られており、例えば非特許文献3及び4にその方法が記載されている。また8量体のテトラメチルアンモニウム塩(60水和物)はハイブリッドプラスチックス社等から市販もされている。
【0074】
この方法を使用する場合、典型的には該ケージ化合物塩を予め用意した中に、上記加水分解性シラン化合物(3)及び/または(4)を添加して該ケージ化合物塩と反応させる方法を用いる。該ケージ化合物塩は、ケイ素原子に結合する原子の相互作用と配位した4級アンモニウムカチオンの作用により、加水分解されたシランモノマーと縮合速度が他のモノマー間の縮合速度より高く、また、縮合により生じた縮合体も同様に、他のモノマー間より高い速度で加水分解されたシランモノマーと縮合する。すなわち、上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩は、単なるアルカリ触媒ではなく、シリカ微粒子成長の核としても作用し、これにより、より高強度のシリカ微粒子が得られる。
【0075】
また、加水分解性シランの加水分解を促進してシリカ微粒子の成長を促進するために、上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩以外に、塩基性触媒を併用することができる。上述の一般的な塩基性触媒は何れもこの目的に使用可能であるが、縮合活性が高い強塩基性金属水酸化物や4級アンモニウム水酸化物を使用する場合には、使用量が多すぎるとモノマー間で縮合した化合物が多量に生成して上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩を使用する効果が失われる危険がある。そこで上記高い強塩基性金属水酸化物や4級アンモニウム水酸化物を併用する場合には、使用量は上記シルセスキオキサンのケージ化合物塩の100倍モル以下、より好ましくは30倍モル以下に抑えることが好ましい。
【0076】
上述の特異なケースを含め、塩基性触媒の使用量は、シラン化合物に対してモル比で0.001〜10倍量の範囲にあるが、好ましくは0.01〜1.0倍量が用いられる。加水分解のための水は、シラン化合物を完全に加水分解するために必要なモル数の好ましくは、0.5〜100倍量、より好ましくは、1〜10倍量が用いられる。
【0077】
シラン化合物を加水分解して微粒子を製造する加水分解縮合反応は、水存在下おこなわれるが、水以外にも溶媒を含むことができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。その他にアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。水以外の溶媒の添加量は、シラン化合物の質量に対して、好ましくは1〜1000倍質量、より好ましくは2〜100倍質量である。
【0078】
シラン化合物の加水分解縮合時間は、好ましくは0.01〜100時間、より好ましくは0.1〜50時間であり、加水分解縮合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜80℃である。上述のような条件を用いた場合には、加えられた加水分解性シラン化合物は、酸素を介して炭素と結合する結合数が多いケイ素原子よりも、酸素を介してケイ素原子と結合した結合数が多いケイ素とより速く結合を形成するため、得られるシリカは通常粒子状として得られる。しかし、より確実に粒子性を高めるためには、反応手順として、反応液に反応条件下、上述の加水分解性シリカ化合物を滴下していくという方法を採ることが好ましい。
【0079】
反応の停止及び後処理に関しては、基本的には公知のいずれの方法も採ることができるが、本発明者らにより開示された、シリカ微粒子の架橋形成活性を保存することにより焼結後に得られる膜の機械強度を向上させる方法(特許文献5)は、本発明との組み合わせにおいても有効に作用する。即ち、塩基触媒の中和反応後、架橋活性が失われる以前に、より好ましくは直後に2価以上のカルボン酸化合物を添加することにより活性シラノールの保護を行う、あるいは中和反応そのものを2価以上のカルボン酸で行うことにより中和とシラノール保護を同時に行うことによりシラノールの保護を行い、成膜時、上記カルボン酸化合物を分解させるまで架橋活性を凍結する処理を行っておくことがより好ましい。
【0080】
好ましく使用できる、少なくとも二つのカルボキシル基を分子中に有するカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マロン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物又はアジピン酸などを挙げることができ、これらの添加量はケイ素ユニットに対して0.05mol%から10mol%、好ましくは0.5mol%から5mol%の範囲で有効に作用する。
【0081】
このようにして製造されたポリシロキサン微粒子溶液は、溶液中に含まれる不要な塩類や、微量に混入されている可能性のある金属等を除去することを目的として、水と混合しない溶媒を添加した後、水洗する操作を行うことができる。このような目的に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1−ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどが挙げられる。
【0082】
また、このようにして製造されたポリシロキサン化合物は、上述の大量の水と酸性触媒により製造されたポリシロキサン化合物と同様、最終的に塗布に好適な溶媒中の溶液の形で塗布組成物調製用の母液とすることが好ましい。このような目的に用いられる溶媒としてはn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、2,2,2−トリメチルペンタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、n−アミルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチオンなどのケトン系溶媒、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトンなどの含硫黄系溶媒などを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0083】
上述のように、大量の水と酸性触媒とにより調製されたポリシロキサン化合物溶液と、酸化ケイ素系微粒子、即ちゼオライト誘導体あるいは上述のアルカリ触媒により得られたポリシロキサン微粒子のような微粒子の溶液とが混合され、更に必要に応じ、界面活性剤等の補助成分を加えた後に、最終的に濃度調整等をへて、多孔質膜形成用組成物とされる。この時の上記大量の水と酸性触媒とにより調製されたポリシロキサン化合物の添加量は、低すぎる場合には機械強度の向上効果が得られず、また、多く入れすぎた場合には誘電率を低く抑えることができなくなることから、上記酸化ケイ素系微粒子の添加量に対し1〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%とすることがより好ましい。
【0084】
また、最終的な濃度調整による希釈の程度としては、粘度や目的とする膜厚等により異なるが、通常、溶媒が50〜99質量%、より好ましくは75〜95質量%となる量である。
【0085】
このようにして多孔質膜形成用組成物を調製した後、多孔質膜形成用組成物の溶質濃度を制御しかつ適当な回転数を用いて、被成膜基板にスピン塗布することで、任意の膜厚の薄膜を形成することが可能になる。
実際の膜厚としては、通常0.1〜1.0μm程度の膜厚の薄膜が形成されるがこれに限定されるものではなく、例えば複数回塗布することで更に大きな膜厚の薄膜形成も可能である。
塗布方法としては、スピンコーティングに限らず、スキャン塗布等の他の方法も可能である。
【0086】
このようにして形成された薄膜は、公知の方法により多孔質膜とすることができ、即ち乾燥工程(通常、半導体製造プロセスでプリベークと呼ばれる工程)でオーブン等を用いることにより、好ましくは、50〜150℃に数分加熱することで溶媒を除去し、更に350℃〜450℃、5分から2時間程度での焼結工程を経て、最終的に多孔質膜が得られる。また、更に紫外線や電子線等のキュア工程のような追加工程を加えてもよい。
【0087】
本発明は、上記大量の水と酸性触媒により調製されたポリシロキサン化合物と酸化ケイ素系微粒子、特にゼオライト誘導体あるいは上述のアルカリ触媒により得られたポリシロキサン微粒子を同時に有する多孔質膜形成用組成物を用いて成膜した多孔質膜が、通常の組成物を用いた場合に比較して高い機械強度を有するというものであるが、本発明者らはその理由について次のように考えている。
【0088】
即ち、もし膜の形成材料が全く均一な粒子であり、粒子間に働く力が一定である場合、機械強度は粒子が形成しているネットワーク骨格に依存することになり、比誘電率を低くした、即ち空孔率を上げるような設計とした場合、一定空間中のネットワーク骨格の存在比が下がり、機械強度は低下することになる。つまり誘電率を下げることと機械強度を上げることとはトレードオフの関係にあり、事実、ポリシロキサン微粒子の反応条件を変えたものを組成物に使用すると、得られる膜の誘電率と機械強度とは同時に変化し、特に誘電率2.0から3.0の間ではほぼ直線的な相関直線が得られる。ところが、本発明では、上記大量の水と酸性触媒とにより調製されたポリシロキサン化合物を加えてやると、特定のゼオライト誘導体又はポリシロキサン微粒子のみであった場合の上記直線関係に対して、同一の誘電率に対し、高い機械強度を与える。これは、上記大量の水と酸性触媒とにより調製されたポリシロキサン化合物が、架橋形成能が高いシラノール基を豊富に持つので、微粒子との間で容易に架橋を形成し、微粒子同士の結合を強化するためと考えている。即ち、上述のモデルでは、従来法に対し微粒子が作る骨格そのものは大きく変化しないことで、空孔率に基づく誘電率には変化がない場合にも、微粒子間に働く力が大きくなることで、高い機械強度が得られるというものである。
【0089】
半導体装置に使用される低誘電率多孔質膜は、従来は低誘電率化するために膜に空孔を導入し多孔質とした場合、膜を構成する材料の密度が低下するため、膜の機械的な強度が低下してしまうという問題があり、機械的な強度の低下は、半導体装置の強度自体に影響を及ぼすのみならず、製造プロセスにおいて通常用いられる化学的機械研磨のプロセスにおいて充分な強度を有しないために剥離を引き起こすという問題があった。
これに対し、本発明の多孔質膜形成用組成物を基板に塗布し、焼結を経て得られた多孔質膜は、上述のように低い比誘電率と強い機械強度を同時に実現することから、特に半導体の層間絶縁膜として用いる場合には、多孔質膜でありながら大きな機械強度及び低い比誘電率を有するためにこのような剥離を引き起こさず、高信頼性で高速、しかもサイズの小さな半導体装置を製造することが可能になる。
上記多孔質膜を含む半導体装置もまた、本発明の一つである。本明細書において、「層間絶縁膜」とは、1つの層上に積層された導電部位間を電気的に絶縁する膜であってもよいし、別々の層に存在する導電部位間を電気的に絶縁する膜であってもよい。導電部位としては例えば、金属配線等が挙げられる。
【0090】
本発明の半導体装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の半導体装置の一例の概念断面図を示す。
図1において、基板1は、Si基板、SOI(Si・オン・インシュレータ)基板等のSi半導体基板を採用することができるが、SiGeやGaAs等々の化合物半導体基板であってもよい。
図1には層間絶縁膜として、コンタクト層の層間絶縁膜2と、配線層の層間絶縁膜3、5、7、9、11、13、15、17と、ビア層の層間絶縁膜4、6、8、10、12、14、16が示されている。
最下層の配線層の層間絶縁膜3から最上層の配線層の層間絶縁膜17までの配線層を順に略称でM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8と呼ぶ。
最下層のビア層の層間絶縁膜4から最上層の配線層の層間絶縁膜16までのビア層を順に略称でV1、V2、V3、V4、V5、V6、V7と呼ぶ。
いくつかの金属配線には18と21〜24の番号を付したが、番号が省略されていてもこれらと同じ模様の部分は金属配線を示す。
ビアプラグ19は、金属により構成され、通常、銅配線の場合には銅が用いられる。図中、番号が省略されていても、これと同じ模様の部分はビアプラグを示している。
コンタクトプラグ20は、基板1の最上面に形成されたトランジスタ(図示外)のゲートあるいは基板へ接続される。
このように、配線層とビア層とは交互に積み重なった構成となっており、一般に、多層配線とはM1から上層部分のことを指す。通常、M1〜M3をローカル配線、M4とM5を中間配線あるいはセミグローバル配線、M6〜M8をグローバル配線と呼ぶことが多い。
図1にかかる半導体装置は、配線層の層間絶縁膜3、5、7、9、11、13、15、17、及びビア層の層間絶縁膜4、6、8、10、12、14、16の少なくとも1以上の絶縁膜に、本発明の多孔質膜を用いたものである。例えば、配線層(M1)の層間絶縁膜3に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線21と金属配線22の間の配線間容量が大きく低減できる。
また、ビア層(V1)の層間絶縁膜4に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線23と金属配線24の間の配線間容量を大きく低減することができる。
このように、配線層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、同一層の金属配線間容量を大きく低減できる。また、ビア層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、上下金属配線の層間容量を大きく低減できる。
したがって、すべての配線層及びビア層に本発明の多孔質膜を用いることにより、配線の寄生容量を大きく低減できる。
本発明の多孔質膜を配線の絶縁膜として使用することにより、従来問題となっていた多孔質膜を積層形成して多層配線を形成する際の多孔質膜の吸湿による誘電率の増大も発生しない。その結果、半導体装置の高速動作及び低消費電力動作が実現される。
また、本発明の多孔質膜は、機械強度が強いので、半導体装置の機械強度が向上し、その結果半導体装置の製造上の歩留まりや半導体装置の信頼性を大きく向上させることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
(大過剰の水と酸性触媒による加水分解縮合により得られるポリシロキサン化合物の製造例)
製造例1
濃硝酸0.18gを280gの超純水中に溶解した溶液を室温で撹拌しながら、メチルトリメトキシシラン45gとテトラエトキシシラン101gの混合物を添加した。反応液は徐々に発熱し50℃に達したが30分後には室温に戻った。12時間この状態で撹拌を続けた。この反応液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEA)300gを加え、低沸点溶媒を減圧で留去した。この間エバポレータのバス温度は30℃以下に保った。得られた残留溶液にトルエン500ml、超純水500mlを加え、分液ロートに移して水層を除去した。有機層は超純水200mlでさらに2回洗浄した。得られた有機層をエバポレータで溶媒留去した結果210gの溶液が得られ、これをポリシロキサン化合物母液とした。なお、この溶液の不揮発残分は20.3質量%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフ[GPC]によりその重量平均分子量を測定したところ3,062であった。
このサンプルの29Si−NMRの測定を行った。その結果ポリシロキサン化合物における上記一般式(Q1〜Q4,T1〜T3)で表されるユニットのモル比率t1、t2、t3、q1、q2、q3、q4はそれぞれ1%、10%、26%、0%、7%、36%、19%であることがわかった。この結果より(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.08、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.46であることがわかった。
製造例2
硝酸のかわりに濃硫酸0.11gを用いたほかは製造例1と同様な合成を行い濃縮液205gが得られた。この溶液の不揮発残分は22.4質量%であり、GPCによる重量平均分子量は3,522であった。このサンプルの29Si−NMRの測定を行い、得られたt1、t2、t3、q1、q2、q3、q4はそれぞれ1%、14%、23%、1%、12%、36%、13%であった。またこの割合から計算したところ(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.16、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.50であることがわかった。
製造例3
硝酸のかわりに濃塩酸0.31gを用いたほかは製造例1と同様な合成を行い濃縮液213gが得られた。この溶液の不揮発残分は20.6質量%であり、GPCによる重量平均分子量は1,988であった。このサンプルの29Si−NMRの測定を行い、得られたt1、t2、t3、q1、q2、q3、q4の割合から計算したところ(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.12、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.46であることがわかった。
製造例4
硝酸のかわりにメタンスルホン酸0.33gを用いたほかは製造例1と同様な合成を行い濃縮液201gが得られた。この溶液の不揮発残分は20.7質量%であり、GPCによる重量平均分子量は2,578であった。このサンプルの29Si−NMRの測定を行い、得られたt1、t2、t3、q1、q2、q3、q4の割合から計算したところ(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.08、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.50であることがわかった。
製造例5
硝酸のかわりに過塩素酸0.15gを用いたほかは製造例1と同様な合成を行い濃縮液227.15gが得られた。この溶液の不揮発残分は21.8質量%であり、GPCによる重量平均分子量は3,570であった。このサンプルの29Si−NMRの測定を行い、得られたt1、t2、t3、q1、q2、q3、q4の割合から計算したところ(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.08、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.47であることがわかった。
製造例6
硝酸のかわりにトリフルオロメタン0.20gを用いたほかは製造例1と同様な合成を行い濃縮液227.50gが得られた。この溶液の不揮発残分は18.4質量%であり、GPCによる重量平均分子量は2,869であった。このサンプルの29Si−NMRの測定を行い、得られたt1、t2、t3、q1、q2、q3、q4の割合から計算したところ、(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.07、(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)=0.51であることがわかった。
上述の通り酸性触媒種の変更を行った場合にも、シラノール等に関する要求特性を満たすポリシロキサン化合物が得られた。
【0092】
比較製造例1(従来法の酸触媒による加水分解・縮合反応例)
5Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン68g(0.5モル)、テトラメトキシシラン152g(1.0モル)及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル230g、メチルイソブチルケトン120gを仕込んだ後、マレイン酸0.5gを触媒とし、室温で水180.02g(11.0モル)を1時間で滴下し、上記アルコキシシランを加水分解した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌して反応を完結させた。その後酸性成分を中和し、生成したメタノールを減圧留去し、固形分が約20質量%となるまで濃縮した。得られたポリシロキサン化合物のGPCによる重量平均分子量は940であった。
図2に上記で得られたポリシロキサン化合物の29Si−NMRスペクトルを示すが、スペクトルより、得られたシロキサン樹脂の全T単位に対するT−1存在比は8モル%、T−2単位の存在比は62モル%、T−3単位は30モル%、全Q単位に対するQ−1単位は4%、Q−2単位は42モル%、Q−3単位は44モル%、Q−4単位は10モル%であった。また、Q−2単位の35%はメトキシ基として残存していることが確認された。
比較製造例2(従来法の酸触媒による加水分解・縮合反応例)
5Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン136.3g(1.0モル)、テトラメトキシシラン304.4g(2.0モル)及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル550g、メチルイソブチルケトン240gを仕込んだ後、マレイン酸1gを触媒とし、内温を30℃以下に保ちながら水360.04g(22.0モル)を滴下し、上記アルコキシシランを加水分解した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌したところ、粘度が増加してきたため反応を中止した。
【0093】
29Si−NMRの測定)
29Si−NMRの測定の測定は、日本電子製JNM−EPP−300(300MHz)を用いて行い、上記製造例で得られたサンプル溶液にアセトン−d6を加えて測定を行った。測定結果の代表例として、製造例1〜3及び比較製造例1の結果を図2に示す。スペクトル中、δ値で、−47、−56、−64、−83、−91、−100、−109付近に現れるシグナルは、それぞれT1、T2、T3、Q1、Q2、Q3、Q4の各構造を有するSiに帰属される。このことから、製造例の方法により得たポリシロキサン化合物は、比較製造例の方法で得たものに比較して、T3、Q3、Q4の構造をリジッドにする成分が明らかに多いことが分かった。更に、それぞれのブロードなピークの中で、ヒドロキシル基が結合したSi(シラノール基)由来のピークに対してアルコキシ基が結合したSi由来のピークは高磁場側に現れる。例えば比較製造例のスペクトルでδ−89〜−95のピークは上述のようにQ2に由来するピークであるが、そのうち、−93付近を頂点とするピークはアルコキシ基が置換したケイ素によるものであり、ピーク面積比からQ2単位のおよそ35%は反応性の低いアルコキシ基置換されたものであることが分かった。これに対し、製造例のものではアルコキシ基置換されたものは殆ど消失していることが分かった。
【0094】
(ゼオライト含有微粒子添加用母液の調製)
製造例7
テトラエトキシシラン14.6gと1mol/L水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液25.4gの混合物を室温で3日間攪拌した。続いて、反応混合物を75℃で12時間攪拌して、無色のゼオライトゾルを得た。このものの粒径をサブミクロン粒度分布測定装置(測定限界3nm)で測定しようとしたが、粒度分布の裾が5nmであり、粒度分布全体を測定することは出来なかった。
次に、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液8g、超純水512g、エタノール960g、上記ゼオライトゾルを室温で混合した後、テトラエトキシシラン32g及びメチルトリメトキシシラン24gを60℃で8時間で滴下した。滴下終了後、直ちに20質量%マレイン酸水溶液を加えた。この溶液にプロピレングリコールモノプロピルエーテル320g加え、溶液の質量が320gになるまで濃縮した。続いて、酢酸エチルを加えて、2回超純水で洗浄、分液し、更に、酢酸エチルを減圧で留去してゼオライト含有微粒子母液とした。なお、この溶液の不揮発残分は20.5質量%であった。
製造例8
テトラエトキシシラン14.6gと1mol/L水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液25.4gの混合物を室温で3日間攪拌した。続いて、反応混合物を75℃で12時間攪拌して、無色のゼオライトゾルを得た。このものの粒径をサブミクロン粒度分布測定装置(測定限界3nm)で測定しようとしたが、粒度分布の裾が5nmであり、粒度分布全体を測定することは出来なかった。
次に、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液8g、超純水512g、エタノール960g、上記ゼオライトゾルを室温で混合した後、テトラエトキシシラン32g及びメチルトリメトキシシラン24gを60℃で12時間で滴下した。滴下終了後、直ちに20質量%マレイン酸水溶液を加えた。この溶液にプロピレングリコールモノプロピルエーテル320g加え、溶液の質量が320gになるまで濃縮した。続いて、酢酸エチルを加えて、2回超純水で洗浄、分液し、更に、酢酸エチルを減圧で留去してゼオライト含有微粒子母液とした。なお、この溶液の不揮発残分は21.8質量%であった。
製造例9
テトラエトキシシラン14.6gと1mol/L水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液25.4gの混合物を室温で3日間攪拌した。続いて、反応混合物を75℃で12時間攪拌して、無色のゼオライトゾルを得た。このものの粒径をサブミクロン粒度分布測定装置(測定限界3nm)で測定しようとしたが、粒度分布の裾が5nmであり、粒度分布全体を測定することは出来なかった。
次に、25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液8g、超純水512g、エタノール960g、上記ゼオライトゾルを室温で混合した後、テトラエトキシシラン32g及びメチルトリメトキシシラン24gを60℃で22時間で滴下した。滴下終了後、直ちに20質量%マレイン酸水溶液を加えた。この溶液にプロピレングリコールモノプロピルエーテル320g加え、溶液の質量が320gになるまで濃縮した。続いて、酢酸エチルを加えて、2回超純水で洗浄、分液し、更に、酢酸エチルを減圧で留去してゼオライト含有微粒子母液とした。なお、この溶液の不揮発残分は19.9質量%であった。
【0095】
(ポリシロキサン微粒子添加用母液の調製)
製造例10
エタノール188.4g、超純水93.44g、25%水酸化テトラメチルアンモニウム8.26gを混合した溶液を撹拌しながら60℃に加温した。この溶液中にメチルトリメトキシシラン19.5gとテトラエトキシシラン36.43gの混合液を6時間かけて滴下した。得られた反応液を氷水で冷却して室温にした後、シュウ酸2gとPGMEA200mlを添加し、得られた溶液をエバポレータにより溶媒留去し、残留液が161gになるまで溶媒を留去した。このようにして得られた溶液に酢酸エチル200g、超純水120gを加え、分液ロートで洗浄、静置した。分離した水層を除いてから有機層をさらに二回、超純水120mlを用い水洗した。この様にして得られた有機層にPGMEA120mlを加えた後エバポレータにより溶媒を留去して208gまで濃縮してポリシロキサン微粒子添加用母液とした。なお、この溶液の不揮発残分は21.3質量%であった。
製造例11
シラン原料を滴下する時間を6時間から4時間に変えたほかは製造例10と同様に合成を行い濃縮液204gが得られた。なお、この溶液の不揮発残分は22.9質量%であった。
製造例12
シラン原料を滴下する時間を6時間から1時間に変えたほかは製造例10と同様に合成を行い濃縮液214gが得られた。なお、この溶液の不揮発残分は18.9質量%であった。
製造例13
シラン原料を滴下する時間を6時間から1時間に変え、用いる水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を16.5gとした他は製造例10と同様に合成を行い濃縮液188gが得られた。なお、この溶液の不揮発残分は21.00質量%であった。
【0096】
(多孔質膜形成用組成物の調製)
実施例1
製造例9により合成されたゼオライト含有微粒子添加用母液92gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液4.6gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例2
製造例9により合成されたゼオライト含有微粒子添加用母液92gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液9.2gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例3
製造例9により合成されたゼオライト含有微粒子添加用母液92gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液13gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例4
製造例9により合成されたゼオライト含有微粒子添加用母液92gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液18gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例5
製造例10により合成されたポリシロキサン微粒子添加用母液92gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液8gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例6
製造例11により合成されたポリシロキサン微粒子添加用母液89gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液11gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
実施例7
製造例12により合成されたポリシロキサン微粒子添加用母液85gに対して、製造例1のポリシロキサン化合物母液15gを加えて多孔質膜形成用組成物とした。
比較例1
製造例10により合成されたポリシロキサン微粒子添加用母液92gに対して、比較製造例1のポリシロキサン化合物母液8gを加えて比較用組成物とした。
【0097】
(成膜)
(ゼオライトを含有する組成物)
[実施例8〜11及び比較例2〜4]
実施例8〜11では、実施例1〜4の多孔質膜形成用組成物をそのまま使用した。また比較例2〜4では、ポリシロキサン化合物を加えないで、製造例7〜9のゼオライト含有微粒子添加用母液をそのまま膜形成用組成物として使用した。塗布及び120℃、230℃の加熱は大日本スクリーン社製回転塗布装置DSPN−60を使用して、それぞれの組成物をシリコンウエハー上に4000r.p.mの回転速度で塗布した後、120℃2分、230℃2分のベークを行い、大日本スクリーン社製焼結炉AVF−601を用いて425℃1時間加熱して約30nmの厚さの多孔質膜を得た。
(シリカ微粒子を含有する組成物)
[実施例12〜14及び比較例5〜9]
実施例12〜14では、実施例5〜7の多孔質膜形成用組成物をそのまま使用した。また比較例5〜8では、ポリシロキサン化合物を加えないで、製造例10〜13の母液をそのまま膜形成用組成物として使用した。また比較例9では、更にポリシロキサン化合物として、従来法の酸触媒による加水分解縮合を行った比較例1の比較用組成物を使用した。それぞれの組成物をシリコンウエハー上に塗布後、120℃2分、230℃2分、425℃1時間加熱して多孔質膜を得た。
【0098】
(物性測定)
得られた膜の比誘電率は495−CVシステム(日本SSM社製)を使って、自動水銀プローブを用いたCV法で測定した。また、弾性率(機械強度)はナノインデンター(ナノインスツルメンツ社製)を使って測定した。
各膜から得られた比誘電率及び機械強度のデータを表1に示した。
【0099】
【表1】


【0100】
図3にゼオライトを含有する微粒子を用いた組成物について、1種類のゼオライト微粒子に対して大過剰の水を使用し、酸性触媒で加水分解縮合を行って得たポリシロキサン化合物を添加していった場合の、最終的に得られた多孔質膜の比誘電率と機械強度の関係を、ポリシロキサン化合物を添加しないものが示すトレードオフ直線(後述)に対してプロットしたものを示した。
また、図4にシリカ微粒子を用いた組成物について、それぞれのシリカ微粒子に対して大過剰の水を使用し、酸性触媒で加水分解縮合を行って得たポリシロキサン化合物を添加した場合の、最終的に得られた多孔質膜の比誘電率と機械強度との関係を、ポリシロキサン化合物を添加しないものが示すトレードオフ直線に対してプロットしたものを示した。
図3および図4における近似直線は最小二乗法によった。
【0101】
それぞれの図には、ベースとなる酸化ケイ素系微粒子のみにより成膜した多孔質膜の比誘電率と機械強度とのトレードオフ直線を示したが、これは次のような理由からである。
即ち、低比誘電率絶縁膜の設計方法として、単に比誘電率のみを下げる方法としては、空孔率が高くなるようにしてやればよいことになり、例えば組成物成分として含有される粒子の粒子径を調整して空隙率を高くしたり、ポロジェン等を用いて空孔を形成する材料を使用すればよいわけである。しかし、全く均質で同じ材料による膜を仮想した場合、機械強度は、骨格材料がある部分のみにより得られることから、空孔率が高くなるに従い機械強度が下がる、即ち比誘電率と機械強度はトレードオフの関係にある。事実、図3及び図4では、材料的には大きな変化がなく、空孔率のみが変化するような調整条件で粒子を調整して多孔質膜とした場合、比誘電率と機械強度とはトレードオフを示し、短い区間(ここでは誘電率が2.1〜2.7の範囲)では直線関係になっている。そこで、ここではこの関係をトレードオフ直線と呼ぶものとする。
【0102】
そこで、新しい材料が高い機械強度を持つ低誘電率絶縁膜であるかどうかを検証するためには、従来の材料が持つある比誘電率における機械強度に対し、その比誘電率で高い機械強度を示すかを検証する必要があり、図3や図4に示した通り、上記トレードオフ直線に対して比誘電率と機械強度との関係がどの位置にあるかを図の上で確認すればよいことになる。
【0103】
図3では、上記の通り、公知のゼオライトを含有する酸化ケイ素系微粒子のみで、材料系を変化させずにゼオライトの表面修飾の時間条件を変化させることで誘電率と機械強度を調整した結果をプロットし、公知の材料によるトレードオフ直線(誘電率に対する機械強度の期待値)を示した。これに対し、1種類のゼオライトを含有する酸化ケイ素系微粒子に、酸触媒を用いて過剰量の水によりシラノールを水和することでゲル化を防止する方法により調製したポリシロキサン化合物の量を変化させながら添加していった組成物より得た膜のデータを上記トレードオフ直線に対してプロットした。その結果、各データは図上でいずれもトレードオフ直線よりも上方に位置し、上記ゼオライトを含有する酸化ケイ素系微粒子のみにより成膜した膜で得られる比誘電率と機械強度との関係よりも、相当する比誘電率に対し、機械強度の値が勝った物性の膜が得られていることが分かった。
【0104】
また図4では、まず従来法によるアルカリ触媒により合成されたポリシロキサン微粒子のみを含有する組成物が、上述の通り、同一系材料を用いた場合には微粒子を調製する条件の変更で誘電率や機械強度を調整することができ、誘電率と機械強度との関係は直線的なトレードオフの関係になることがわかった。それに対し、各ポリシロキサン微粒子に、大量の水と酸性触媒とから調製したポリシロキサン化合物を添加してやると、得られたデータは何れも図3と同様、トレードオフ直線の上方にプロットされる。この場合にも、トレードオフ直線より特定の誘電率から期待される機械強度に対し、何れのポイントでも高い機械強度を示していることが分かった。
更に、従来法による酸触媒を用いて調製したポリシロキサン化合物を添加した場合(比較例9)には、機械強度の絶対値は上がるものの、比誘電率の値もそれに増して大きくなることから、得られた比誘電率から期待される機械強度は向上していないことが分かり、本発明の組成物でみられたような誘電率に対する機械強度の向上効果は見られないことが分かった。
【0105】
実施例15〜19
更に触媒に使用した酸が異なる製造例2〜6で調整したポリシロキサン化合物を用いた組成物から得られる膜が、製造例1のポリシロキサン化合物を用いた組成物から得られる膜と同様な性能が出るかを下記のように検証した。
組成物の調整は実施例12においてポリシロキサン化合物の種類のみを変更して行い、それぞれのポリシロキサン化合物母液量は、実施例12に使用した製造例1のポリシロキサン化合物の乾燥重量と等しくなるように調整した。更に、実施例12と同様に成膜した後、膜の物性測定を行った。
得られた結果を表2に示す。
【0106】
【表2】


【0107】
得られた多孔質膜の物性は、実施例12のものと大きな差は見られず、酸の種類を変更した場合にも、ほぼ同様の性能を持つ膜形成用組成物が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例の概念断面図を示す。
【図2】図2は、異なる方法によりゲル化を抑制して得たポリシロキサン化合物のそれぞれの29Si−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、ゼオライト微粒子の表面修飾の時間条件を変化させることで誘電率と機械強度とを調整した結果をプロットしたグラフである。
【図4】図4は、シリカ微粒子の表面修飾の時間条件を変化させることで誘電率と機械強度とを調整した結果をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0109】
1 基板 2 コンタクト層の層間絶縁膜 3 配線層(M1)の層間絶縁膜 4 ビア層(V1)の層間絶縁膜 5 配線層(M2)の層間絶縁膜 6 ビア層(V2)の層間絶縁膜 7 配線層(M3)の層間絶縁膜 8 ビア層(V3)の層間絶縁膜 9 配線層(M4)の層間絶縁膜 10 ビア層(V4)の層間絶縁膜 11 配線層(M5)の層間絶縁膜 12 ビア層(V5)の層間絶縁膜 13 配線層(M6)の層間絶縁膜 14 ビア層(V6)の層間絶縁膜 15 配線層(M7)の層間絶縁膜 16 ビア層(V7)の層間絶縁膜 17 配線層(M8)の層間絶縁膜 18 金属配線 19 ビアプラグ 20 コンタクトプラグ 21 金属配線 22 金属配線 23 金属配線 24 金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素系微粒子と、
成膜時、縮合することで前記酸化ケイ素系微粒子間にケイ素−酸素−ケイ素結合を形成し、前記酸化ケイ素系微粒子が作る骨格の強度を向上させるポリシロキサン化合物と
を含有する多孔質膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサン化合物が、
下記一般式(1)
Si(OR14 (1)
(上式中、R1は、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表される4官能性アルコキシシラン化合物を少なくとも1種以上、及び/又は、下記一般式(2)
2nSi(OR34-n (2)
(上式中、R2は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またR3は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。nは1〜3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物
を少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、
酸性触媒の存在下、生成するシラノール基を水和することにより縮合反応を制御してゲル化を抑制しながら、加水分解及び縮合を行って得たポリシロキサン化合物であることを特徴とする請求項1記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項3】
前記加水分解及び縮合が、加水分解反応液中に、投入済みの前記加水分解性シラン化合物が有する加水分解性基のモル等量数よりも常に過剰のモル等量数の水が存在する状態で行われることを特徴とする請求項2記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項4】
前記ゲル化を抑制しながら、加水分解及び縮合するために要する水が、前記加水分解性シラン化合物中の加水分解性基のモル数に対して5倍より多いことを特徴とする請求項2または3に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(Q1〜4、T1〜3):
【化1】


(上記式Qは、4価の加水分解性シラン由来のユニットを意味し、Tは3価の加水分解性シラン由来のユニットを意味する。T1〜T3におけるRは、Si−Rで示される結合がケイ素と炭素置換基の結合であることを示す。)
で表されるユニットからなり、前記ポリシロキサン化合物における各ユニットのモル比率をそれぞれq1、q2、q3、q4、t1,t2,t3としたとき、下記関係式(1)および(2)
(q1+q2+t1)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≦0.2 (1)
(q3+t2)/(q1+q2+q3+q4+t1+t2+t3)≧0.4 (2)
を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項6】
前記酸化ケイ素系微粒子が、ゼオライト種結晶を含むゼオライト微粒子であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項7】
前記ゼオライト微粒子が、ゼオライトに加水分解性シランを架橋性側鎖として修飾したものであることを特徴とする請求項6に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項8】
前記酸化ケイ素系微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項9】
前記シリカ微粒子が、下記一般式(3)
Si(OR44 (3)
(上式中、R4は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、4個のR4は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表される4官能性アルコキシシラン化合物、及び、下記一般式(4)
5mSi(OR64-m (4)
(上式中、R6は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R6が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。R5は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R5が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またmは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシシラン化合物を
それぞれ少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、アルカリ性触媒を用いて加水分解及び縮合することにより得られたものであることを特徴とする請求項8記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項10】
前記アルカリ性触媒が、アルカリ金属水酸化物及び下記一般式(5)
(R74+OH- (5)
(上式中、R7は炭素、水素、酸素からなる有機基であり、各々独立して互いに同じでも異なっていてもよい。また、カチオン部[(R74+]は下記式(6)
(N+O)/(N+O+C)≧ 1/5 (6)
を満たす。ただし、N、O、Cはそれぞれカチオン部に含まれる窒素、酸素 、炭素の原子数である。)
で示される第4級アンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる1種以上の親水性塩基触媒、ならびに、
前記式(6)を満たさない第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる1種以上の疎水性塩基触媒の混合物であることを特徴とする請求項9に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項11】
前記アルカリ性触媒の少なくとも一部として、予め準備した下記一般式(7)
(SiO1.5−O)pp-(X+p (7)
(XはNR134を表し、更にR13は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R13は、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。また、pは6から24の整数を表す。)
で表されるシルセスキオキサンのケージ化合物塩が用いられることを特徴とする請求項9に記載の多孔質膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物を基板に塗布し、焼結を経て得られた多孔質膜。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物を基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成する工程とを含むことを特徴とする多孔性珪素含有膜の形成方法。
【請求項14】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物を基板上に塗布し、焼成工程を経て得た多孔性珪素含有膜を低誘電率絶縁膜として含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の多孔質膜形成用組成物を、金属配線層を持つ基板上に塗布して薄膜を形成する工程と、前記薄膜を焼成して多孔質膜を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
下記一般式(1)
Si(OR14 (1)
(上式中、R1は、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R1が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。)
で表される4官能性アルコキシシラン化合物を少なくとも1種以上、及び/又は、下記一般式(2)
2nSi(OR34-n (2)
(上式中、R2は置換基を含んでもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R2が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。またR3は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、R3が複数含まれる場合には、各々独立して互いに同じでも異なってもよい。nは1〜3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物
を少なくとも1種以上含む加水分解性シラン化合物を、酸性触媒の存在下、生成するシラノール基を水和することにより縮合反応を制御してゲル化を防止するのに充分な水を含む反応液中で加水分解及び縮合を行いポリシロキサン化合物を得る工程と、
前記ポリシロキサン化合物を有機溶剤で抽出する工程と、
抽出された前記ポリシロキサン化合物と酸化ケイ素系微粒子とを配合する工程と
を含む多孔質膜形成用組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−205008(P2008−205008A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36343(P2007−36343)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】