説明

半導体用ダイシングダイ接着フィルム

【課題】ダイシングの際にバリ現象とダイピックアップの不良を防止し、ダイボンディングの際にダイと基板間の接着力は十分維持できる半導体用ダイシングダイ接着フィルムを提供する。
【解決手段】ダイシングダイ接着フィルム100は、第1接着層120、第2接着層130、ダイシングフィルム140を含み、第1接着層120の常温貯蔵弾性率が第2接着層130の常温貯蔵弾性率(T2)より小さく、T2が50〜300MPa、第1接着層120の伸張率が第2接着層130の伸張率(E2)より大きく、E2の常温測定値が50〜500%、第1接着層120の粘着力が第2接着層130の粘着力(Ta2)より大きく、Ta2の60℃測定値が30〜350gf、第1接着層120とウエハーとの剥離力(P1)は、第2接着層130とダイシングフィルム140との剥離力より大きく、P1は30〜300gf/cmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングダイ接着フィルムに関するものであって、より詳しくは半導体ウエハーの背面に接着されてダイシング工程に用いられ、またダイ(半導体チップ)と基板とを接着させる半導体用ダイシングダイ接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイ(半導体チップ)を基板に付着させるためには主にペースト型接着剤を用いた。しかし、ペースト型接着剤は接着剤を塗布するとき厚さの調節が困難であり、ブリーディング(bleeding)の問題が発生し、ウエハーレベルの工程が不可能であるという問題点があった。従って、最近はフィルム型ダイ接着剤が用いられている。
【0003】
一般に、フィルム型ダイ接着剤を用いる半導体工程は、半導体ウエハーにダイ接着フィルムを接着させ、さらに別途のダイシング(dicing)テープを付着した後、ダイシング工程を行うことになる。最近は、このように二回に至るフィルム付着工程を単純化させるため、ダイシングとダイ接着機能を同時に有するダイシングダイ接着フィルム(DDAF:Dicing Die Adhesive Film)が提案された。このようなダイシングダイ接着フィルムは、通常ウエハーの背面に付着される接着層と、この接着層に付着されたダイシングフィルムとを含んでなり、ウエハーを固定させることによってダイシング工程中のダイの飛散を防止すると同時に、ダイを基板に固定させる役割を果す。
【0004】
このようなダイシングダイ接着フィルムを用いたウエハーダイシング工程は、ウエハーの背面にダイシングダイフィルムを接着させる段階、ウエハーをダイの大きさに切る段階、洗浄・乾燥の後ダイ/ダイ接着フィルムをピックアップする段階とからなる。
【特許文献1】特開平2−32181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このようなダイシングダイ接着フィルムの接着層は、ダイシングの際にはウエハーをダイシングフィルムに堅固に固定させなければならない反面、ダイピックアップの際にはダイシングフィルムから容易に分離されなければならないという相反した特性が要求される。特に、このような工程においてシリコンダストと摩擦熱により軟質化された接着フィルムとが結合して細長い形態のバリ(burr)を形成させるため、ワイヤボンディングの際に不良を生成させるという問題点がある。
【0006】
従って、本発明は、前記のような問題点を解決するために創案されたものであって、ウエハーの背面に接着する際にウエハーとダイ接着フィルム間に高い接着力を保ちつつ、ダイ接着フィルムとダイシングフィルム間の剥離力は弱くすることによって、ダイシング工程の際にテープバリ現象を防止し、ダイピックアップの不良を防止し、ダイボンディングの際にダイと基板間の接着力は十分維持することができる半導体用ダイシングダイ接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、半導体パッケージング工程に用いられる半導体用ダイシングダイ接着フィルムにおいて、前記ダイシングダイ接着フィルムは、ウエハーの背面に接着される第1接着層と、前記第1接着層の表面に接着された第2接着層と、前記第2接着層の表面に接着されたダイシングフィルムとを含み、前記第1接着層の常温貯蔵弾性率(T1)が前記第2接着層の常温貯蔵弾性率(T2)より小さくされ、前記T2は50MPa〜300MPaであり、前記第1接着層の伸張率(E1)が前記第2接着層の伸張率(E2)より大きくされ、前記E2の常温測定値が50%〜500%であり、前記第1接着層の粘着力(Ta1)が前記第2接着層の粘着力(Ta2)より大きくされ、前記Ta2の60℃での測定値が30gf〜350gfであり、前記第1接着層とウエハーとの剥離力(P1)は、前記第2接着層とダイシングフィルムとの剥離力(P2)より大きくされ、前記P1は30gf/cm〜300gf/cmであることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の半導体用ダイシングダイ接着フィルムは、前記第1接着層及び第2接着層は各々、固状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、ゴム樹脂及びフィラーを含んでなる組成物から製造されたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の半導体用ダイシングダイ接着フィルムは、前記第1接着層は、固状エポキシ樹脂30重量%〜50重量%、液状エポキシ樹脂20重量%〜40重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第1基本樹脂組成物と、前記第1基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第1組成物を用いて製造され、前記第2接着層は、固状エポキシ樹脂35重量%〜55重量%、液状エポキシ樹脂15重量%〜35重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第2基本樹脂組成物と、前記第2基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第2組成物を用いて製造されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ダイシング工程の際のバリ現象とダイピックアップ不良を防止できるだけでなく、ダイボンディングの際にダイと基板間の接着力は十分維持することができる。これによって、半導体パッケージング工程の信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照しながら本発明の望ましい実施の形態を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び請求範囲に用いられた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限られて解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最も最善の方法で説明するため用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されるべきである。従って、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は本発明の最も望ましい一実施の形態に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないので、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。本明細書に添付される下記の図面は本発明の望ましい実施の形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果すものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限られて解釈されてはならない。
【0012】
本発明者らは、バリ発生が少なくピックアップ工程において、ウエハーと接着層間の界面剥離現象のないダイシングダイ接着フィルムを開発するために研究を重ねてきた結果、ウエハーの背面に接着される第1接着層、第1接着層の表面に接着された第2接着層、第2接着層の表面に接着されたダイシングフィルムとを含んでなるダイシングダイフィルムであって、第1接着層及び第2接着層のそれぞれの貯蔵弾性率、粘着力、伸張率、引張強度、界面剥離力などを相互関連付けて調節することによって本発明を完成するに至った。
【0013】
図1は、本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルム100を示す断面図である。図1を参照すると、本実施の形態によるダイシングダイ接着フィルム100は、ベースフィルム110、前記ベースフィルム110の一面に接着された第1接着層120、前記第1接着層120に接着された第2接着層130及び前記第2接着層130に接着されたダイシングフィルム140を含んで積層された構造を有する。
【0014】
前記ベースフィルム110は、ダイシングダイ接着フィルム100の基本的な形態を維持するための目的で用いられたフィルムであって、望ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等の物質を用いて製造されることができるが、必ずこれに限定されるのではない。
【0015】
前記ダイシングダイ接着フィルム100の第1接着層120は、半導体パッケージング工程中においてウエハーの背面に接着され、ウエハーの切断片であるダイとの高い接着力が要求される物質層である。前記ダイシングダイ接着フィルムの第2接着層130は、ダイシングフィルム140と接着され、前記第1接着層120とダイ間に要求される接着力よりは低い接着力が要求される物質層である。なお、前記ダイシングフィルム140は、半導体ウエハーのダイシング工程において一時的に半導体ウエハーに付着されてウエハー切断の際にウエハーを固定・支持するものであって、アクリル系、ゴム系、ポリエステル系、シリコーン系などの粘着物質が塗布されて形成された粘着層を備えたポリ塩化ビニル系またはポリオレフィン系フィルムである。
【0016】
このようなダイシングダイ接着フィルム100のカッティングの際、バリ発生を最小化してカッティング不良を解消するためには、貯蔵弾性率(modulus)、伸張率(elongation)などの物性を調節しなけらばならない。これは、貯蔵弾性率が高いほどカッティング性が向上され、貯蔵弾性率が低いほどブレードまたはナイフによりカッティングの際に接着フィルム100が延伸されるにつれてバリ発生の可能性が高くなるためである。反面、貯蔵弾性率が高すぎると相対的に低い粘着力を現すようになるため、接着界面で剥離が発生しバリ発生の可能性が高くなる。また、伸張率の場合には、その数値が高いほどカッティングによって切断される特性よりはブレードまたはナイフによって延伸される特性が強いためバリ発生の可能性が高くなる。
【0017】
本発明のダイシングダイ接着フィルム100においては、第1接着層120は弾性率と引張強度を低く調節することによってウエハーとの接着力を向上させると同時に、第2接着層130は弾性率と引張強度は高く、伸張率は低く調節することによってフィルムの堅固性(rigidity)を向上させる。
【0018】
具体的に、本発明のダイシングダイ接着フィルム100においての第1接着層120の貯蔵弾性率(T1)は第2接着層130の貯蔵弾性率(T2)より小さくされ、前記T2は50MPa〜300MPaであることが望ましい。前記第2接着層130の貯蔵弾性率(T2)に対する数値限定に関連して、前記下限値に未達する場合にはフィルムの堅固性が減少しカッティングの際にバリが多量発生し、前記上限値を超過する場合には工程上オーバーフロー(overflow)が発生してワイヤボンディングの不良が発生しやすくなるからである。
【0019】
一方、本発明のダイシングダイ接着フィルム100において、前記第1接着層120の伸張率(E1)が前記第2接着層130の伸張率(E2)より大きくされ、前記E2は常温測定値が50%〜500%であることが望ましい。これはフィルムの堅固性を維持するために要求される条件である。
【0020】
また、ピックアップ工程においての工程性向上のためには、第1接着層120及び第2接着層130の粘着力を最適化しなければならない。第1接着層120の場合には粘着力が高いほど接着フィルム100とウエハーとの密着性を向上させダイシング工程の際にダイが飛散し難くなるが、第2接着層130の場合にはダイシングフィルム140との高い粘着力によりむしろピックアップ工程の際に不良が発生し得る。従って、第1接着層120は高い粘着力を有するようにすることによってラミネーションの際の気泡発生の抑制及び低温(60℃)ラミネーション工程の適用ができるようにし、前記第2接着層130は第1接着層120より低い粘着力を有するようにすることによってダイシングフィルム140との分離を円滑にすることが望ましい。このため、本発明では、ダイと第1接着層120との層間粘着力(Ta1)が第2接着層130とダイシングフィルム140との層間粘着力(Ta2)より大きくされ、前記Ta2は60℃での測定値が30gf〜350gfのものを用いる。
【0021】
また、ピックアップ工程において、ダイシングフィルム140と第2接着層130との界面分離の際にウエハー(ダイ)と第1接着層120間の界面での剥離現象がないべきであるが、このために本発明のダイシングダイ接着フィルム100の第1接着層120とウエハーとの剥離力(P1)が前記第2接着層130とダイシングフィルムとの剥離力(P2)より大きくされ、前記P1は30gf/cm〜300gf/cmであることが望ましい。
【0022】
一方、前記第1接着層120と第2接着層130は各々、固状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、ゴム樹脂及びフィラーを含んでなることが望ましい。
【0023】
このとき、第1接着層120と第2接着層130の貯蔵弾性率、粘着力、伸張率、及び界面剥離力を適切に得るために、前記第1接着層120は、固状エポキシ樹脂30重量%〜50重量%、液状エポキシ樹脂20重量%〜40重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第1基本樹脂組成物と、前記第1基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第1組成物を用いて製造される。また、前記第2接着層130は、固状エポキシ樹脂35重量%〜55重量%、液状エポキシ樹脂15重量%〜35重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第2基本樹脂組成物と、前記第2基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第2組成物を用いて製造されることが望ましい。
【0024】
このとき、固状エポキシ樹脂としては、当量が10000〜50000の範囲を有するビスフェノールA型フェノキシ、当量が10000〜50000の範囲を有するビスフェノールF型フェノキシ、当量が400〜6000の範囲を有するビスフェノールA型固体エポキシ、または当量が400〜6000の範囲を有するビスフェノールF型固体エポキシ樹脂などを各々単独でまたはこれらを混合して用いることができるがこれに限定されるのではない。
【0025】
また、液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型液体エポキシ樹脂、ビスフェノールF型の液体エポキシ樹脂、3官能性以上の多官能性液体エポキシ樹脂、ゴム変成液体エポキシ樹脂、ウレタン変成液体エポキシ樹脂、アクリル変成液体エポキシ樹脂、感光性液体エポキシ樹脂などが用いられることができ、これらは各々単独でまたは混合して用いられることができるがこれに限定されるのではない。
【0026】
また、前記ゴム樹脂としては、アクリロニトリル含量が15重量%〜40重量%であり100℃でのムーニー粘度(Mooney viscosity)が20〜80であるNBR(butadiene−acrylonitrile rubber)、アクリロニトリル含量が15重量%〜40重量%であり100℃でのムーニー粘度が20〜80であるHNBR(hydrogenated butadiene−acrylonitrile rubber)、スチレン含量が10重量%〜30重量%であるSBR(styrene−butadiene rubber)、スチレン含量が10重量%〜60重量%であるSBS(polystyrene−co−butadiene−co−styrene)、スチレン含量が10重量%〜60重量%であるSEBS(hydrogenated polystyrene−co−butadiene−co−styrene)などを各々単独でまたはこれらを混合して用いることができるが、これに限定されるのではない。
【0027】
また、前記フィラーは、接着層の内部強度(内部応力)を増加させ、カッティング性を向上させ、粘着力を減少させて工程性を向上させ得る。このようなフィラーとしては、シリカ、グラファイト(graphite)(黒鉛)、アルミニウム(aluminium)、カーボンブラック(Carbon black)などを各々単独でまたはこれらを混合して用いることができるが、これに限定されるのではない。このようなフィラーは、その含量が低すぎると堅固性(rigidity)及び粘着力を調節し難く、高すぎるとストレス(stress)を効果的に吸収することができない。
【0028】
この他にも本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を阻害せずに本発明の目的範囲内で適切な添加剤をさらに含むことができるが、例えば、エポキシ硬化剤、UV硬化剤、カップリング剤、UV硬化助剤などがあるが、これに限定されるのではない。
【0029】
すなわち、前記第1接着層120を製造するための第1組成物または第2接着層を製造するための第2組成物には、前記第1組成物または第2組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部の含量で含まれるアミン、有機酸及び無水物の物質より選択された何れか一つまたは二つ以上の物質であるエポキシ硬化剤がさらに含まれるのが望ましい。
【0030】
前記第1接着層120を製造するための第1組成物または第2接着層を製造するための第2組成物には、前記第1組成物または第2組成物の総重量に対して0.1重量部〜10重量部の含量で含まれる1−ヒドロキシへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン、ホスフェートオキシド、シクロペンタジエニルぺニルアイロンエキサフルオロホスフェート、ジペニルケトン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−t−ブチル−2−メチルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドより選択された何れか一つまたは二つ以上の物質であるUV硬化剤がさらに含まれるのが望ましい。
【0031】
前記第1接着層120を製造するための第1組成物または第2接着層を製造するための第2組成物には、前記第1組成物または第2組成物の総重量に対して0.1重量部〜20重量部の含量で含まれるシランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤などが用いられることができるが、これに限定されるのではない。このようなカップリング剤はフィラーなどからなる分散相と樹脂からなる連続相を結合させ得る補助剤としての役割だけでなく、ダイや基板のような接着基材に対する接着力を増進させる接着増進剤としての役割をも果す。
【0032】
本発明によるダイシングダイ接着フィルム100は、例えば、エアーナイフコーター(air knife coater)、コンマコーター(comma coater)、リップコーター(lip coater)、グラビアコーター(gravure coater)などのロールコーター(roll coater)を用いて、第1接着層120及び第2接着層130をフィルム状に各々キャスティングして製造した後、高温(60〜100℃)ラミネーション工程を通じて二層を合着し、第2接着層130にダイシングフィルム140を積層して製造され得るが、これに限定されるのではない。
【0033】
前記ダイシングダイ接着フィルム100は、図2〜図8に示された半導体パッケージング工程に用いられる。以下、半導体パッケージング工程と共に本発明によるダイシングダイ接着フィルム100に対する詳細な説明をする。
【0034】
まず、図2のように半導体ウエハー1を用意する。その後、図3のように半導体ウエハー1の背面にダイシングダイ接着フィルム100をラミネーションする。ラミネーション工程に先だって、ダイシングダイ接着フィルム100の最上面に付着されたベースフィルム110は除去される。
【0035】
その後、図4のようにブレード2を用いて半導体ウエハー1を所定のダイサイズに切断するダイシング工程を経て、水洗・乾燥工程を経る。なお、ダイシング工程ではウエハー1と接着層120、130とを完全に切断し、ダイシングフィルム140は一定の深さまでにのみ切断されるようにする。
【0036】
そして、図5に示すように、ダイシング工程後切断されたダイ4は、ピックアップツール3を用いてダイピックアップされる。このとき、ダイシングフィルム140を除いた第1接着層120及び第2接着層130のみがダイ4に接着された状態を維持してピックアップ工程が容易に行われるようにする。即ち、本発明によるダイシングダイ接着フィルム100は、ダイ4と第1接着層120との接着力が第2接着層130とダイシングフィルム140との接着力より高いため、ダイピックアップ工程が行われながらダイシングフィルム140が第2接着層130から有効に分離されることができる。
【0037】
その後、図6のようにリードフレームや印刷回路基板またはテープ配線基板のような基板5上にダイ4を付着するダイボンディング工程を経る。その後、ダイ4と基板5との間の接着力をより強くするために熱処理硬化工程を施し得る。
【0038】
その後、図7のようにダイ4と基板5とをワイヤボンディングして連結し(6参照)、最後に図8のようにエポキシモールディング工程を行い(7参照)半導体パッケージングを完了する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は種々の他の実施例に変形されることができ、本発明の範囲が下記実施例に限られるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0040】
下記表1に示した組成と含量に従ってエアーナイフコーターを用いて各々の接着層をキャスティングして製造した後、高温(90℃)ラミネーション工程を通じて二つのフィルムを合着し、これにダイシングフィルムを積層してダイシングダイ接着フィルムを製造した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記表1において、固状エポキシ樹脂としてはBPA型エポキシ樹脂(固状)、液状エポキシ樹脂としてはBPA型エポキシ樹脂(液状)、ゴム樹脂としてはNBR、エポキシ硬化剤としてはアミン硬化剤、UV硬化助剤としてはジアクリレート、フィラーとしてはシリカ、カップリング剤としてはシランカップリング剤を用いた。
【0043】
前記実施例と比較例で製造された各々のダイシングダイ接着フィルムに対して下記のような方法により貯蔵弾性率、粘着力、伸張率及び界面剥離力を各々測定し、その結果を下記表2にまとめた。
【0044】
貯蔵弾性率:
貯蔵弾性率は万能試験機であるUTM(Universal Testing Machine)を用いて分析し、常温(25℃)で測定した。貯蔵弾性率の測定に使用されたサンプルの接着層の厚さは25μmであった。貯蔵弾性率は、第1接着層の方が第2接着層より小さくなければならなく、第2接着層の常温貯蔵弾性率は50MPa〜300MPaであるのが望ましい。
【0045】
粘着力:
粘着力は粘着力測定機(Tackiness tester)を用いて60℃で測定し、粘着力の測定に使用されたサンプルの厚さは25μm、プローブ(probe)の大きさは直径5.1mmであった。粘着力は、第1接着層の方が第2接着層より大きくなければならなく、第2接着層の60℃での粘着力は30gf〜350gfであるのが望ましい。
【0046】
伸張率:
伸張率はUTMを用いて分析し、常温(25℃)で測定した。伸張率の測定に使用されたサンプルの接着層の厚さは25μmであった。伸張率は、第1接着層の方が第2接着層より大きくなければならなく、第2接着層の常温伸張率は50%〜500%であるのが望ましい。
【0047】
界面剥離力:
プッシュプルゲージ(Push pull gauge)を用いて常温で180度剥離強度(peel strength)を測定した。第1接着層での界面剥離力P1は第1接着層とウエハーとの剥離力を意味し、第2接着層での界面剥離力P2は第2接着層とダイシングフィルムとの剥離力を意味する。界面剥離力の測定に使用されたサンプルの接着層の厚さは25μmであった。このとき、前記P1はP2より大きくなければならなく、P1は30gf/cm〜300gf/cmであるのが望ましい。
【0048】
【表2】

【0049】
上記表2を見ると、本発明による実施例1及び実施例2において、貯蔵弾性率は第1接着層が第2接着層より小さく示されており、粘着力、伸張率及び界面剥離力は第2接着層が第1接着層より小さく示されていることがわかる。一方、比較例1においての貯蔵弾性率は、第1接着層が第2接着層より大きく示されており、粘着力と伸張率は第2接着層が第1接着層より大きく示されており、界面剥離力においては、両層間の数値的な差が大きくないためダイピックアップが容易に行われないようになり望ましくない。また、比較例2においては、粘着力が第1接着層の方が第2接着層より大きく示されているが、第2接着層の絶対的な粘着力の数値が大きいためダイピックアップが容易に行われないようになり望ましくない。
【0050】
一方、本発明による各々の実施例と比較例に対して、下記のような方法によりバリ発生有無及びピックアップの容易性を各々測定し、その結果を下記表3にまとめた。
【0051】
バリ発生有無:
WBL(Wafer Backside Lamination)工程を通じて接着フィルムとウエハーとをラミネーションし、その後ダイシング工程を行った後バリの発生有無を顕微鏡で観察した。使用されたサンプルの接着層の厚さは25μmであった。このときバリが発生することは望ましくなく、良好な評価を受けるためにはバリが発生してはいけない。
【0052】
ピックアップの容易性:
ピックアップの際、ダイシングフィルムが第2接着層からよく剥離されるか否かは肉眼で観察できるが、具体的基準による評価のため、第2接着層の剥離程度が30未満である場合を良好とし、剥離程度が30を超過する場合を不良とした。
【0053】
【表3】

【0054】
上記表3を見ると、本発明の条件を満たす実施例の場合、バリ発生がなく、またダイピックアップが容易に行われることがわかる。しかし、比較例によると、バリ現象が発生しカッティング性とピックアップの容易性が不良であり工程性が低下されることがわかる。
【0055】
このように、本発明によると、要求される製品の物性値を十分満足しながらも、バリの発生がなく、ピックアップの容易性も良好であると評価されることによって、本発明の目的を十分に果たしていることが分かる。
【0056】
以上のように、本発明は限られた実施の形態及び実施例と図面とに基づいて説明されたが、本発明はこれに限られず、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によると、ダイシング工程の際のバリ現象とダイピックアップ不良を防止できるだけでなく、ダイボンディングの際にダイと基板間の接着力は十分維持することができる。これによって、半導体パッケージング工程の信頼性を確保することができる。したがって、本発明はダイシングダイ接着フィルムの技術分野で十分利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図3】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図4】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図5】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図6】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図7】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【図8】本発明の望ましい実施の形態によるダイシングダイ接着フィルムを用いた半導体パッケージング工程を示す図面である。
【符号の説明】
【0059】
100 ダイシングダイ接着フィルム
110 ベースフィルム
120 第1接着層
130 第2接着層
140 ダイシングフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージング工程に用いられる半導体用ダイシングダイ接着フィルムにおいて、
前記ダイシングダイ接着フィルムは、ウエハーの背面に接着される第1接着層と、前記第1接着層の表面に接着された第2接着層と、前記第2接着層の表面に接着されたダイシングフィルムとを含み、
前記第1接着層の常温貯蔵弾性率(T1)が前記第2接着層の常温貯蔵弾性率(T2)より小さくされ、前記T2は50MPa〜300MPaであり、
前記第1接着層の伸張率(E1)が前記第2接着層の伸張率(E2)より大きくされ、前記E2の常温測定値が50%〜500%であり、
前記第1接着層の粘着力(Ta1)が前記第2接着層の粘着力(Ta2)より大きくされ、前記Ta2の60℃での測定値が30gf〜350gfであり、
前記第1接着層とウエハーとの剥離力(P1)は、前記第2接着層とダイシングフィルムとの剥離力(P2)より大きくされ、前記P1は30gf/cm〜300gf/cmであることを特徴とする半導体用ダイシングダイ接着フィルム。
【請求項2】
前記第1接着層及び第2接着層は各々、固状エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、ゴム樹脂及びフィラーを含んでなる組成物から製造されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体用ダイシングダイ接着フィルム。
【請求項3】
前記第1接着層は、固状エポキシ樹脂30重量%〜50重量%、液状エポキシ樹脂20重量%〜40重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第1基本樹脂組成物と、前記第1基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第1組成物を用いて製造され、
前記第2接着層は、固状エポキシ樹脂35重量%〜55重量%、液状エポキシ樹脂15重量%〜35重量%、及びゴム樹脂50重量%〜10重量%からなる第2基本樹脂組成物と、前記第2基本樹脂組成物の総重量に対して1重量部〜30重量部のフィラーとを含んでなる第2組成物を用いて製造されることを特徴とする請求項2に記載の半導体用ダイシングダイ接着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−339652(P2006−339652A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153527(P2006−153527)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505297002)エルエス ケーブル リミテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】LS Cable Ltd.
【住所又は居所原語表記】19−20F ASEM Tower 159 Samsung−dong, Gangnam−gu, Seoul 135−090 Republic of Korea
【Fターム(参考)】