説明

半導体素子の保護回路

【課題】横方向二重拡散MOSトランジスタ(LDMOS)の特性を悪化させることがなく、回路素子サイズの増大や各素子の製造時のばらつきの影響を抑えることができる、半導体素子の保護回路を提供する。
【解決手段】LDMOS110のバックゲートの出力をトリガーとして用い、LDMOSのドレインに接続される出力端子120に印加されるESDサージを、直列に接続された高耐圧MOS140及び低耐圧MOS142を経て接地端子122に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子の保護回路、特に、出力トランジスタとして用いられる横方向二重拡散MOSトランジスタ(LDMOS:Lateral Diffused Metal Oxide Semiconductor)を保護する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図7を参照して、電源電圧が10V以上であるような回路でも使用可能な高耐圧MOS(HVMOS)について説明する。図7は、HVMOSを説明するための概略図であって、主要部の切断端面を示している。
【0003】
P型のシリコン基板20上にN型埋込層25が形成され、N型埋込層25が形成されたシリコン基板20上に、N型エピタキシャル層30が形成されている。N型エピタキシャル層30には、P型ウェル32が形成されている。P型ウェル32上には、フィールド酸化膜40が形成されていて、ゲート領域42、ドレイン領域44及びソース領域46を規定している。
【0004】
ゲート領域42では、N型エピタキシャル層30上に、ゲート酸化膜52及びゲート電極54が順次に形成されている。
【0005】
ドレイン領域44及びソース領域46では、N型の拡散層34及び36が形成されている。また、ゲート領域42とドレイン領域44の間、及び、ゲート領域42とソース領域46の間の、フィールド酸化膜40の下には、ドレイン領域44の拡散層(ドレイン)34の電界緩和のために、N型の低濃度拡散層35及び37が形成されている。
【0006】
HVMOS10では、ゲート長を長くすることにより、空乏層がドレイン34からソース領域46の拡散層(ソース)36に到達するのを防ぎ、これによりドレイン耐圧を確保する。HVMOS10では、ドレイン耐圧の確保のため、ゲート長が長く、また、低濃度拡散層35及び37が設けられているために、オン抵抗が高くなる。
【0007】
これに対し、LDMOSは、HVMOSと同様の高耐圧でありながら、低オン抵抗化が容易である。このため、LDMOSは、DC/DCコンバータや、スイッチング素子などのPower MOSデバイスに用いられる。図8を参照して、LDMOSについて説明する。図8は、LDMOSを説明するための概略図であって、主要部の切断端面を示している。
【0008】
P型のシリコン基板20上にN型埋込層25が形成され、N型埋込層25が形成されたシリコン基板20上に、N型エピタキシャル層30が形成されている。N型エピタキシャル層30上には、フィールド酸化膜60が形成されていて、ドレイン領域62及びソース領域64を規定している。
【0009】
ソース領域64のドレイン領域62側には、N型エピタキシャル層30上に、ゲート酸化膜52及びゲート電極54が順次に形成されている。また、ソース領域64では、ゲート電極54が形成されていない領域66と、この領域66に隣接する、ゲート電極54及びフィールド酸化膜60の下部の一部領域とに、P型ボディ33が形成されている。P型ボディ33には、N型の拡散層であるソース38と、P型ボディ33の電位取り出しのためのP型コンタクト39とが形成されている。また、ドレイン領域62には、N型の拡散層であるドレイン34が形成されている。
【0010】
このLDMOS11では、P型ボディ33とソース38の拡散による広がりの差を利用してチャネルを形成する。このため、短いチャネルの形成が可能になるので、低オン抵抗化が容易である。
【0011】
また、LDMOS11では、N型エピタキシャル層30の部分が、HVMOS10の低濃度拡散層35及び37と同様にドレインの電界を緩和する。このN型エピタキシャル層30の不純物濃度は、HVMOS10の低濃度拡散層35及び37と同程度であるが、N型エピタキシャル層30の厚みが数μmから数十μm程度あるので、HVMOS10の低濃度拡散層35及び37に比べて抵抗値が低く抑えられる。
【0012】
LDMOSでは、大電流駆動と低オン抵抗のために、5000μm〜30000μmの大ゲート幅を用いることが多い。また、アクティブ余裕を設計基準の最小値とするなどして、寄生抵抗となる部分を低減し、低オン抵抗にしている。
【0013】
しかしながら、LDMOSは5000μm〜30000μmとゲート幅を大きくしても、静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)耐量が低いという短所を有している。図9(A)及び(B)を参照して、ESD耐量の例として人体帯電モデル(HBM:Human Being Model)耐量とゲート幅の関係について説明する。図9(B)は、図9(A)のゲート幅Wが2000μm以下の部分を拡大して示したものである。
【0014】
図9(A)及び(B)では、横軸にゲート幅W[μm]を取って示し、縦軸にHBM耐量[V]を取って示している。ここで、HBM耐量は、HBM試験において、ドレインとソース間にリークが発生した時若しくは、ドレインとソース間が短絡した時の電圧としている。図9(A)及び(B)では、LDMOSのHBM耐量(図9中、■で示す。)と、印加電圧が6V以下であるような低耐圧MOS(LVMOS)のHBM耐量(図9中、●で示す。)を示している。
【0015】
LVMOS(●)は、HBM耐量のゲート幅Wに対する依存度が大きく、470V/100μm程度である。このため、ゲート幅Wを大きくすれば、HBM耐量が向上する。
【0016】
これに対し、LDMOS(■)では、HBM耐量のゲート幅Wに対する依存度が小さく、4V/100μm程度である。このため、ゲート幅Wを増加させることによる、ESD耐量の向上は困難である。そこで、LDMOSを用いる場合は、ESD耐量の向上のため、保護素子を付加するのが一般的である(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0017】
図10を参照して、保護素子を付加する構成として、特許文献1に開示されている、LDMOSにサイリスタを組み込むことによりESD耐量を向上させる構造について説明する。図10は、LDMOSにサイリスタを組み込む構成を説明するための概略図であって、主要部の切断端面を示している。
【0018】
図8を参照して説明した従来のLDMOSでは、ESDサージが印加されると、ドレイン34−P型ボディ33−ソース38で構成される寄生NPNがオン状態になる。寄生NPNがオン状態になった後は、ドレイン34の端部で局所的電界集中が発生し、その部分への電流集中が起こる。このため、ESD耐量のゲート幅に対する依存度が小さくなり、所望のESD耐量を得るのが困難である。
【0019】
これに対し、図10に示す構造では、ドレイン領域62にサイリスタのアノード31となるP型の領域を設けていて、いわゆるサイリスタを組み込んだ構造となっている。このサイリスタが組み込まれたLDMOS12では、寄生NPNがオン状態になると、サイリスタがオン状態となる。この結果、大電流を流すことができるので、ESD耐量が向上する。
【0020】
図11を参照して、保護素子としてNMOS(保護NMOS)を付加する構造について説明する。図11は、LDMOSに保護NMOSを付加した構成を説明するための回路図である。
【0021】
保護NMOS107は、出力トランジスタであるLDMOS110のドレインに接続されている出力端子120と、LDMOS110のソースに接続されている接地端子122との間にLDMOS110と並列に設けられている。この構造では、LDMOS110と保護NMOS107とは、互いに分離して構成されていて、メタル配線で接続される。
【0022】
図12を参照して、図11を参照して説明したLDMOSに保護NMOSを付加した構成での動作を説明する。図12は、LDMOSに保護NMOSを付加した構成での動作を説明するための電流−電圧(IV)特性図である。図12では、横軸に出力端子に印加される電圧[V]を取って示し、縦軸にLDMOS(図12中、■で示す。)あるいは保護NMOS(図12中、◆で示す。)を流れる電流[A]を取って示している。
【0023】
この場合、保護NMOSの寄生バイポーラ動作点電圧Vt1を、電源電圧の最大値VDDMAXよりも高く、かつ、LDMOSのバイポーラ動作点電圧Vt3よりも低く設定しておけば、電源電圧の最大値VDDMAXよりも高いESD電圧が出力端子120に印加された場合に、LDMOS110がバイポーラ動作を開始する前に、保護NMOS107がバイポーラ動作を開始するので、LDMOS110の破壊を防ぐことができる。
【0024】
図13を参照して、特許文献2に開示されている、サイリスタとトリガー素子を用いる構造について説明する。図13は、サイリスタとトリガー素子を用いる構造を説明するための回路図である。
【0025】
この構造では、出力トランジスタ111のソースと接地端子(GND)122の間に抵抗素子106を備えている。ドレインとソースの間に電流が流れると、ソースの電位が、抵抗素子106での電圧降下の分だけ高くなる。このソースの電位上昇により、トリガー素子108がオン状態となり、これによりサイリスタ109にトリガーがかかる。この結果、出力トランジスタ111が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2001−320047号公報
【特許文献2】特開2009−123751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、図10、11及び13を参照して説明した従来技術の構成は、それぞれ解決すべき課題を有している。
【0028】
図14(A)及び(B)を参照して、LDMOSの素子面積について説明する。図14(A)及び(B)は、LDMOSの素子面積について説明するための上面図である。図14(A)は、図8を参照して説明したLDMOSに対応し、図14(B)は、図10を参照して説明したLDMOSに対応する。
【0029】
図14(B)に示す構成は、ドレイン領域にサイリスタ動作用のアノード31を付け加えたことにより、図14(A)に示す構成に比べて、LDMOSの素子面積が増大する。なお、このアノード31は、ドレイン34と同サイズである。従って、ゲート幅が大きいLDMOSでは、このアノード31を付加したことによる、素子面積の増大の影響も大きくなる。
【0030】
また、図11を参照して説明した構成では、保護NMOS107のバイポーラ動作点電圧Vt1が、ESDデザインウインドウ(EDW:ESD Design Window)内に収める必要がある。ここで、EDWは保護NMOSのバイポーラ動作点電圧Vt1のとりうる範囲を示すものであり、電源電圧の最大値VDDMAX以上、LDMOSのバイポーラ動作点電圧Vt3以下の範囲である。
【0031】
バイポーラ動作点電圧Vt1が、電源電圧の最大値VDDMAXよりも小さいと、電源電圧の最大値VDDMAX近傍まで電圧を上昇させると、保護NMOSがバイポーラ動作を起こし、他の素子に適切な電圧を印加することができない場合がある。一方、バイポーラ動作点電圧Vt1が、LDMOS110のバイポーラ動作点電圧Vt3よりも大きいと、保護NMOS107がバイポーラ動作を開始する前に、LDMOS110がESDサージに応答してバイポーラ動作を開始してしまい、LDMOS110の破壊を招くことになる。このため、保護NMOS107のバイポーラ動作点電圧Vt1をEDW内に収める必要がある。
【0032】
ここで、例えばN型エピタキシャル層30の不純物濃度を高めることで、LDMOSのオン抵抗を低くすることができるが、この場合、ドレイン耐圧Vt2も低くなる。従って、LDMOSを出力トランジスタとして用いる場合など、低オン抵抗化が必要なときは、ドレイン耐圧Vt2は可能な限り小さくするのが良い。このため、EDWの幅は3〜4V程度になることもある。
【0033】
しかしながら、保護NMOS107のバイポーラ動作点電圧Vt1や、LDMOS110のバイポーラ動作点電圧Vt3の、製造の際に生じるばらつきを吸収するためには、EDWは10V程度必要となる。
【0034】
従って、図11を参照して説明した構成を採用するには困難が伴う。
【0035】
また、図13を参照して説明した構成では、サイリスタ109にトリガーをかけるために、出力トランジスタ111のソースと接地端子122の間に抵抗素子106を挿入している。
【0036】
しかしながら、低オン抵抗を特徴とするLDMOSを出力トランジスタとして用いる場合、LDMOSのソースと接地端子の間に設けられた抵抗素子によりオン抵抗が増大することになるので、現実的ではない。
【0037】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、出力トランジスタとして用いられるLDMOSの保護回路であって、LDMOSの特性を悪化させることがなく、かつ、回路素子サイズの増大や各素子の製造時のばらつきの影響を抑えることができる、半導体素子の保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上述した目的を達成するために、この発明の保護回路は、LDMOSの基板電流(バックゲートの出力)をトリガーとして用い、LDMOSの第1主電極領域(ドレイン)に接続される出力端子に印加されるESDサージを、直列に接続された高耐圧MOS及び低耐圧MOSを経て接地端子に流す。
【0039】
このために、第1の発明に係る保護回路は、LDMOSのドレインに接続される出力端子と、LDMOSの第2主電極領域(ソース)に接続される接地端子の間に、LDMOSと並列に設けられ、高耐圧MOS、低耐圧MOS及び抵抗素子を備えて構成される。
【0040】
高耐圧MOSのドレインは、出力端子に接続され、ソース及びバックゲートが低耐圧MOSのドレインに接続され、制御電極(ゲート)が、抵抗素子を経て接地端子に接続される。また、低耐圧MOSのソース、ゲート及びバックゲートが接地端子に接続され、LDMOSのバックゲートが高耐圧MOSのゲートに接続されている。
【0041】
上述した保護回路の好適実施形態によれば、高耐圧MOSのドレインが、出力端子にダイオードを経て接続される仮想出力端子に接続されるのが良い。
【0042】
また、第2の発明に係る保護回路は、LDMOSのドレインに接続される出力端子と、前記LDMOSのソースに接続される接地端子の間に、当該LDMOSと並列に設けられ、トリガー用LDMOS、高耐圧MOS、低耐圧MOS及び抵抗素子を備えて構成される。
【0043】
高耐圧MOSのドレインが出力端子に接続され、ソース及びバックゲートが低耐圧MOSのドレインに接続され、ゲートが、抵抗素子を経て接地端子に接続される。また、低耐圧MOSのソース、ゲート及びバックゲートが接地端子に接続され、トリガー用LDMOSのドレインが出力端子に接続され、トリガー用LDMOSのバックゲートが高耐圧MOSのゲートに接続されている。
【0044】
上述した保護回路の好適実施形態によれば、高耐圧MOSのドレイン及びトリガー用LDMOSのドレインが、出力端子にダイオードを経て接続される仮想出力端子に接続されるのが良い。
【発明の効果】
【0045】
この発明のLDMOSを保護する保護回路によれば、LDMOSの特性を悪化させることがなく、回路素子サイズの増大や各素子の製造時のばらつきの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態の保護回路の回路図である。
【図2】第2実施形態の保護回路の回路図である。
【図3】第3実施形態の保護回路の回路図である。
【図4】第4実施形態の保護回路の回路図である。
【図5】第5実施形態の保護回路の回路図である。
【図6】第6実施形態の保護回路の回路図である。
【図7】HVMOSを説明するための概略図である。
【図8】LDMOSを説明するための概略図である。
【図9】ESD耐量の例としてHBM耐量とゲート幅の関係について説明するための概略図である。
【図10】LDMOSにサイリスタを組み込む構成について説明するための概略図である。
【図11】LDMOSに保護NMOSを付加する構成を説明するための概略図である。
【図12】LDMOSに保護NMOSを付加した構成での動作を説明するための特性図である。
【図13】サイリスタとトリガー素子を用いる構造を説明するための特性図である。
【図14】LDMOSの素子面積について説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0048】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態の保護回路として、出力トランジスタとして用いられるLDMOSを保護する回路について説明する。図1は、第1実施形態の保護回路の回路図である。
【0049】
第1実施形態の保護回路130は、LDMOS110のドレインに接続される出力端子120と、LDMOS110のソースに接続される接地端子122との間に、LDMOS110と並列に設けられる。
【0050】
保護回路130は、高耐圧MOS(HVMOS)140、低耐圧MOS(LVMOS)142及び抵抗素子144を備えて構成される。HVMOS140とLVMOS142は、出力端子120と接地端子122の間に直列に設けられている。すなわち、HVMOS140の第1主電極領域であるドレインが出力端子120に接続され、HVMOS140の第2主電極領域であるソースがLVMOS142のドレインに接続され、LVMOS142のソースが接地端子122に接続されている。
【0051】
HVMOS140の制御電極であるゲートは、抵抗素子144を経て接地端子122に接続されている。また、HVMOS140のバックゲートは、HVMOS140のソースに接続されている。すなわち、HVMOS140のソース及びバックゲートが、LVMOS142のドレインに接続されている。ここで、バックゲートは、基板電流を取り出す電極(基板電極)である。
【0052】
LVMOS142のゲート及びバックゲートは、LVMOS142のソースに接続されている。すなわち、LVMOS142のソース、ゲート及びバックゲートが接地端子122に接続されている。
【0053】
LDMOS110に印加される最大電圧を、VDDMAXとする。また、LDMOS110のドレイン耐圧をVt2とし、バイポーラ動作点電圧をVt3とする。VDDMAXが、24V程度であるとき、Vt2及びVt3は、それぞれ32V及び40Vに設定される。
【0054】
ここで、LDMOS110に保護回路130が設けられていない場合における、出力端子120にVDDMAXを超えるESD電圧が印加されたときの動作を説明する。印加電圧がLDMOS110のドレイン耐圧Vt2を超えると、ドレインから、バックゲート等に向けて電流が流れる。さらに、出力端子120に印加される電圧が、バイポーラ動作点電圧Vt3に達するとLDMOS110の寄生バイポーラがオン状態になる。ここで、LDMOSの寄生バイポーラがオン状態になり、それによりESDサージが流れると、ドレイン端部で局所的な電流集中が起こり、LDMOS110の破壊に繋がる。
【0055】
これに対し、この実施形態では、出力端子120に所定の電圧以上の電圧が印加された場合に、ESDサージを、保護回路130を経て接地端子122に流すことにより、LDMOS110を保護する。
【0056】
ここで、HVMOS140及びLVMOS142の耐圧の和をVDDMAXよりも高く設定する。このように設定しておけば、通常の動作時には、保護回路130に電流が流れない。
【0057】
この構成で、出力端子120にLDMOS110のドレイン耐圧Vt2を超える電圧が印加されると、LDMOS110のドレインから、バックゲートに向けて電流が流れる。この電流は、抵抗素子144を経て接地端子122に送られる。LDMOS110のバックゲートがHVMOS140のゲートに接続されているので、バックゲートに電流が流れると、抵抗素子144における電圧降下の分だけ、HVMOS140のゲートの電位が上昇する。
【0058】
例えば、抵抗素子144の抵抗値を10kΩとした場合、バックゲートに流れる電流が100μAのとき、HVMOS140のゲートの電位が1Vになる。従って、HVMOS140の閾値電圧が1Vであれば、HVMOS140がオン状態になる。
【0059】
このゲート電位の上昇によりHVMOS140がオン状態になると、出力端子120と接地端子122の間の電位がLVMOS142のドレイン−ソース間に印加されることになる。この結果、LVMOS142の寄生NPNがオン状態になり、ESD電流がLVMOS142を経て接地端子122に流れる。
【0060】
この第1実施形態の保護回路によれば、LDMOSの特性を悪化させることがなく、回路素子サイズの増大や各素子の製造時のばらつきの影響を抑えて、出力トランジスタであるLDMOSを保護することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図2を参照して、第2実施形態の保護回路として、出力トランジスタとして用いられるLDMOSを保護する回路について説明する。図2は、第2実施形態の保護回路の回路図である。
【0062】
第2実施形態の保護回路131は、トリガー用LDMOS146をさらに備える点が第1実施形態の保護回路と異なっている。HVMOS140、LVMOS142及び抵抗素子144の接続関係と、それぞれの構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0063】
トリガー用LDMOS146のドレインは、出力端子120に接続され、トリガー用LDMOS146のバックゲートが、HVMOS140のゲートに接続されている。また、トリガー用LDMOS146のソース及びゲートがHVMOS140のゲートに接続される。
【0064】
出力トランジスタであるLDMOS(出力用LDMOS)110とトリガー用LDMOS146とは、同様に構成することができるが、トリガー用LDMOS146のドレイン耐圧が、VDDMAXより高く、かつ、出力用LDMOS110のドレイン耐圧Vt2よりも低く設定されている。
【0065】
このように構成すると、出力端子にESDサージが印加されると、出力用LDMOS110が印加されたESDサージに対して動作する前に、トリガー用LDMOS146のバックゲートに電流が流れ、その結果、第1実施形態と同様に、HVMOS140のゲートの電位が上昇する。このゲート電位の上昇により、HVMOS140がオン状態になり、その後、LVMOS142の寄生NPNがオン状態になるので、ESD電流が保護回路131を経て接地端子122に流れる。
【0066】
なお、この構成では、トリガー用LDMOS146のドレイン耐圧がEDW内に入っている必要がある。しかし、トリガー用LDMOS146と出力用LDMOS110とは、同様の構成であるので、製造時のばらつきを同様に受ける。すなわち、トリガー用LDMOSの耐圧が設定値よりも低くなる場合は、出力用LDMOSの耐圧も同程度低くなるのが一般的である。従って、トリガー用LDMOSの製造時のばらつきを考慮して、ドレイン耐圧を設計しておけばよい。
【0067】
この第2実施形態の保護回路によれば、第1実施形態の保護回路と同様の効果が得られる。さらに、出力用LDMOSのドレイン耐圧Vt2よりも低い電圧で動作するので、出力用LDMOSの破壊を防ぐことができる。
【0068】
(第3実施形態)
図3を参照して、第3実施形態の保護回路として、出力トランジスタとして用いられるLDMOSを保護する回路について説明する。図3は、第3実施形態の保護回路の回路図である。
【0069】
第3実施形態の保護回路132は、トリガー用LDMOS146のソース及びゲートがそれぞれ、異なる抵抗素子148及び150を経て接地端子122に接続される点が第2実施形態と異なっている。すなわち、第3実施形態では、トリガー用LDMOS146のゲート、ソース及びバックゲートには、それぞれ別の抵抗素子144、148及び150が、独立して設けられている。この構成では、トリガー用LDMOSのゲート、ソース及びバックゲートに対して、それぞれに適した抵抗値の抵抗素子を設けることができる。
【0070】
例えば、トリガー用LDMOS146のバックゲートは、100Ωの抵抗素子144を介して接地端子122に接続されている。トリガー用LDMOS146のソースは、1kΩの抵抗素子148を介して接地端子122に接続されている。また、トリガー用LDMOS146のゲートは、1kΩの抵抗素子150を介して接地端子122に接続されている。
【0071】
このように、ソース及びゲートに接続される抵抗素子148及び150の抵抗値を、バックゲートに接続される抵抗素子144の抵抗値よりも大きくすると、トリガー用LDMOS146がESDサージに対して動作した場合に、ESDサージ電流の多くが、バックゲートに流れるようになり、ソースやゲートに流れる電流が小さくなる。この結果、トリガー用LDMOS146のESDサージによる破壊を防ぐことができる。
【0072】
また、一般に、LDMOSのドレイン耐圧は、ゲート膜耐圧よりも大きい。このため、ESDサージによる電界がドレイン耐圧を超えた場合に、ゲート酸化膜を破壊する恐れがある。しかし、バックゲートに接続される抵抗素子の抵抗値よりもソースに接続される抵抗素子の抵抗値を大きくし、ゲートに接続される抵抗素子の抵抗値をさらに大きくすることにより、ゲート酸化膜の破壊を防ぐことができる。
【0073】
(第4実施形態)
図4を参照して、第4実施形態の保護回路として、出力トランジスタとして用いられるLDMOSを保護する回路について説明する。図4は、第4実施形態の保護回路の回路図である。
【0074】
第4実施形態の保護回路133は、トリガー用LDMOSのソース及びゲートを互いに接続している点が第2実施形態や第3実施形態の保護回路と異なっている。HVMOS140、LVMOS142及び抵抗素子144の接続関係と、それぞれの構成は、第1〜3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0075】
この構成では、トリガー用LDMOS146にESDサージが印加された際に、ドレインとバックゲート間のダイオード逆方向耐圧により動作する。この場合、ダイオードの逆方向電流が、HVMOS140をオン状態にするので、ゲート酸化膜の破壊など、ESDサージによるトリガー用LDMOSの破壊を防ぐことができる。また、第3実施形態の保護回路に比べて、ソース及びゲートに設ける抵抗素子が不要となるので、保護回路の面積を縮小することができる。
【0076】
(第5実施形態)
図5を参照して、第5実施形態の保護回路として、出力トランジスタとして用いられるLDMOSを保護する回路について説明する。図5は、第5実施形態の保護回路を説明するための回路図である。
【0077】
第5実施形態の保護回路130は、第1実施形態の保護回路と同様に構成されるが、HVMOS140のドレインが、抵抗素子128を介して仮想出力端子124に接続されている点が異なっている。この仮想出力端子124は、出力端子120にダイオード126を経て接続される。このダイオード126では、出力端子120から仮想出力端子124に向かう方向が、順方向となっている。
【0078】
出力端子120にESD電圧が印加されると、ダイオード126の順方向に電流が流れ、仮想出力端子124がESD電圧と同電位になる。この後の動作は、第1実施形態と同様である。
【0079】
このように構成すると、複数のLDMOSを備える回路に対して、1つの保護回路を設けて、各LDMOSのドレインを仮想出力端子にダイオードを経て接続する構成にすることができる。
【0080】
図6を参照して、第5実施形態の保護回路の変形例について説明する。図6は、第5実施形態の変形例を説明するための回路図である。
【0081】
この構成では、複数のLDMOS110a及び110bのドレインが、それぞれ出力端子120a及び120bに接続されている。また、各出力端子120a及び120bは、それぞれダイオード126a及び126bを経て、1つの仮想出力端子124に接続されている。2つのLDMOS110a及び110bに対して、1つの保護回路130が設けられている。この構成によれば、出力端子120a及び120bのいずれかにESD電圧が印加された場合であっても、保護回路130が動作する。
【0082】
従って、第5実施形態の構成によれば、複数のLDMOSに対して1つの保護回路を用意すれば良く、チップサイズの縮小化を図ることができる。なお、ここでは、保護回路として図1を参照して説明した第1実施形態の保護回路を備える構成例について説明したが、これに限定されるものではない。保護回路として、第2〜4の実施形態の保護回路を用いても良い。
【符号の説明】
【0083】
10 HVMOS
11、12、110 LDMOS
20 シリコン基板
25 N型埋込層
30 N型エピタキシャル層
31 アノード
32 P型ウェル
33 P型ボディ
34 拡散層(ドレイン)
35、37 低濃度拡散層
36、38 拡散層(ソース)
39 P型コンタクト
40、60 フィールド酸化膜
42 ゲート領域
44、62 ドレイン領域
46、64 ソース領域
52 ゲート酸化膜
54 ゲート電極
66 領域
106、128、144、148、150 抵抗素子
107 保護NMOS
108 トリガー素子
109 サイリスタ
111 出力トランジスタ
120 出力端子
122 接地端子
124 仮想出力端子
126 ダイオード
130、131、132、133 保護回路
140 HVMOS
142 LVMOS
146 トリガー用LDMOS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域に接続される出力端子と、前記横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域に接続される接地端子との間に、前記横方向二重拡散MOSトランジスタと並列に設けられる保護回路であって、
高耐圧MOSトランジスタ、低耐圧MOSトランジスタ及び抵抗素子を備え、
前記高耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域が前記出力端子に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域及び基板電極が、前記低耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極が、前記抵抗素子を経て接地端子に接続され、
前記低耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域、制御電極及び基板電極が、接地端子に接続され、
前記横方向二重拡散MOSトランジスタの基板電極が、前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする保護回路。
【請求項2】
横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域に接続される出力端子と、前記横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域に接続される接地端子との間に、当該横方向二重拡散MOSトランジスタと並列に設けられる保護回路であって、
トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタ、低耐圧MOSトランジスタ及び抵抗素子を備え、
前記高耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域が前記出力端子に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域及び基板電極が、前記低耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極が、前記抵抗素子を経て接地端子に接続され、
前記低耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域、制御電極及び基板電極が、接地端子に接続され、
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域が前記出力端子に接続され、
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの基板電極が前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする保護回路。
【請求項3】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極が前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の保護回路。
【請求項4】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極がそれぞれ異なる抵抗素子を経て接地端子に接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の保護回路。
【請求項5】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極が互いに接続される
ことを特徴とする請求項2に記載の保護回路。
【請求項6】
横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域に接続される出力端子と、前記横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域に接続される接地端子との間に、前記横方向二重拡散MOSトランジスタと並列に設けられる保護回路であって、
高耐圧MOSトランジスタ、低耐圧MOSトランジスタ及び抵抗素子を備え、
前記高耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域が、仮想出力端子であって、前記出力端子にダイオードを経て接続されている当該仮想出力端子に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域及び基板電極が、前記低耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極が、前記抵抗素子を経て接地端子に接続され、
前記低耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域、制御電極及び基板電極が、接地端子に接続され、
前記横方向二重拡散MOSトランジスタの基板電極が、前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする保護回路。
【請求項7】
横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域に接続される出力端子と、前記横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域に接続される接地端子との間に、前記横方向二重拡散MOSトランジスタと並列に設けられる保護回路であって、
トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタ、低耐圧MOSトランジスタ及び抵抗素子を備え、
前記高耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域が、仮想出力端子であって、前記出力端子にダイオードを経て接続される当該仮想出力端子に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域及び基板電極が前記低耐圧MOSトランジスタの第1主電極領域に接続され、
前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極が、前記抵抗素子を経て接地端子に接続され、
前記低耐圧MOSトランジスタの第2主電極領域、制御電極及び基板電極が、接地端子に接続され、
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域が、前記仮想出力端子に接続され、
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの基板電極が前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする保護回路。
【請求項8】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極が前記高耐圧MOSトランジスタの制御電極に接続される
ことを特徴とする請求項7に記載の保護回路。
【請求項9】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極がそれぞれ異なる抵抗素子を経て接地端子に接続される
ことを特徴とする請求項7に記載の保護回路。
【請求項10】
前記トリガー用横方向二重拡散MOSトランジスタの第2主電極領域及び制御電極が互いに接続される
ことを特徴とする請求項7に記載の保護回路。
【請求項11】
前記横方向二重拡散MOSトランジスタと、該横方向二重拡散MOSトランジスタの第1主電極領域にそれぞれ接続される前記出力端子が複数設けられていて、
前記複数の前記出力端子が、それぞれダイオードを経て1つの前記仮想出力端子に接続される
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の保護回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−176091(P2011−176091A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38514(P2010−38514)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(591089305)沖エンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】