説明

半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物、それを用いた層間絶縁膜及び層間絶縁膜の製造方法

【課題】 ポリイミド樹脂前駆体を用いつつ、十分な現像性を得ることができ、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能であり、且つ、可とう性に優れた層間絶縁膜を形成することが可能な半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)下記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性のポリアミック酸と、(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含む、半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物。
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物、それを用いた層間絶縁膜及び層間絶縁膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は、高集積化、小型化が進むことで、急速な大容量化、低コスト化が実現されつつある。このような半導体素子の微細化に伴い、素子間や配線間の寄生容量が増大し、これが原因で生じる信号遅延や消費電力の上昇が問題となっている。このため、素子間、配線間には層間絶縁膜を配置する必要がある。
【0003】
これまでは層間絶縁材料として無機材料が多く用いられていたが、近年、ポリイミド樹脂のような耐熱性、柔軟性、絶縁性に優れた有機物が使用されてきている。しかし、ポリイミド樹脂は、像形成後の加熱硬化温度が300℃程度以上と高く、半導体素子内の材料等の耐熱性の点から、より低い温度で加熱硬化可能な感光性樹脂が求められている。
【0004】
かかる要求に応えるため、近年、低温硬化可能な感光性樹脂組成物として、ポリイミド前駆体に付加重合性化合物を加えた感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−332178号公報
【特許文献2】特開2004−317725号公報
【特許文献3】特開2004−191404号公報
【特許文献4】特開2005−49504号公報
【特許文献5】特開2003−316002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載された感光性樹脂組成物であっても、現像性が未だ不十分であったり、厚膜で像形成を行う場合に必ずしも十分な解像度が得られないといった問題がある。また、従来のポリイミド樹脂では、加熱硬化温度を下げると、得られる硬化体(層間絶縁膜)の可とう性が低下するという問題があり、改善の余地があった。
【0007】
また、近年開発されている新規パッケージ用途では、配線遅延の解決のために層間絶縁膜の低誘電率化かつ厚膜化が必要とされており、従来の薄膜用ポリイミド樹脂では十分な絶縁性が得られないため、厚膜形成可能な耐熱性の感光性樹脂組成物の開発が望まれている。更に、かかる新規パッケージ用途では、熱や衝撃などによって生じた応力により層間絶縁膜にクラックや剥がれが生じることがあり、応力を緩和するための十分な可とう性も要求されている。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリイミド樹脂前駆体を用いつつ、十分な現像性を得ることができ、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能であり、且つ、可とう性に優れた層間絶縁膜を形成することが可能な半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物、それを用いた層間絶縁膜及び層間絶縁膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)下記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性のポリアミック酸と、(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含む、半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を提供する。
【化1】



[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(6)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(3)、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化2】



[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】



[式(6)中、R10は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜3の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化5】



[式(3)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、p及びqは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化7】



[式(4)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化8】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、r、s、t及びuは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化9】



[式(5)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、vは1〜3の整数を示す。なお、vが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化10】



[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
かかる感光性樹脂組成物によれば、ポリイミド樹脂前駆体である(A)ポリアミック酸を含有しつつ、上記各成分を含有することにより、露光時の感度に優れ、十分な現像性を得ることができるとともに、厚膜で解像度よく像形成を行うことができ、シリコン基板等の基板上に厚膜の層間絶縁膜を形成することが可能となる。また、かかる感光性樹脂組成物によれば、ポリイミド樹脂前駆体を用いることで、得られる層間絶縁膜に優れた耐熱性及び絶縁性を付与することができ、且つ、ウレタン結合を有する(B)光重合性化合物を用いることで、(A)ポリアミック酸と(B)光重合性化合物との相溶性を向上させることができ、層間絶縁膜に優れた可とう性(伸び及び弾性率)を付与することができる。
【0011】
ここで、上記感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ水溶液に可溶なポリアミック酸を用いることで、アルカリ水溶液での現像が可能なネガ型感光性樹脂組成物となっている。上記(A)ポリアミック酸は、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差(溶解コントラスト)には悪影響を及ぼさず、現像性及び現像後のレジスト形状に優れている。
【0012】
また、上記感光性樹脂組成物においては、(A)ポリアミック酸を(B)光重合性化合物と組み合わせて用いているが、露光時に(B)光重合性化合物はバインダーとして機能することとなる。このため、上記感光性樹脂組成物によれば、露光後、比較的低い温度、例えば250℃以下の温度での硬化で、可とう性に優れた厚膜の層間絶縁膜を形成することが可能となる。また、低温での硬化を行うことで、膜減りを低減して十分な残膜率を達成することができ、厚膜の層間絶縁膜を効率的に形成することが可能となる。
【0013】
更に、(A)上記一般式(1)で表される構造を有する、側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸は、露光波長380〜420nmでの透過度が良く、さらに(A)ポリアミック酸と(B)光重合性化合物とを併用することで透過度が向上するために、露光の際に深部まで光が届き、深部硬化性を向上させることが可能となる。
【0014】
厚膜での像形成を可能とするためには、露光波長に対するポリアミック酸の透過率が大きく影響する。厚膜用途のポリアミック酸は、芳香族系の骨格をベースとすると短波長領域の透過率に限界があり、特にネガ型では露光時に膜の底部まで光を透過させる必要があるため、厚膜で高感度を得ることは難しい。厚膜で高感度を得るためには、ポリアミック酸の骨格の設計が重要である。そして、上記一般式(1)で表される構造を有する(A)ポリアミック酸によれば、h線(405nm)やi線(365nm)等の露光光に対して十分な透過率を得ることができる。そのため、かかる(A)ポリアミック酸を用いた感光性樹脂組成物によれば、厚膜でも十分な解像度で像形成を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記(B)光重合性化合物として、分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を含むことが好ましい。これにより、(A)ポリアミック酸と(B)光重合性化合物との相溶性をより向上させることができ、熱硬化後の層間絶縁膜の伸び及び弾性率をさらに向上させることができる。また、かかる(B)光重合性化合物は、分子内にイソシアヌル環構造を有することにより、優れた耐熱性を得ることができ、上記層間絶縁膜を得る際に例えば300℃以上で加熱した場合であっても、(B)光重合性化合物が壊れて残膜率が低下することを十分に抑制することができる。
【0016】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(D)架橋剤を更に含有することが好ましい。感光性樹脂組成物に(D)架橋剤を含有することにより、熱硬化後の層間絶縁膜の伸びを向上させることができる。
【0017】
本発明はまた、上記本発明の感光性樹脂組成物を、光照射及び加熱の両方の手段により硬化させて得られる層間絶縁膜を提供する。かかる層間絶縁膜は、上記本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなるものであるため、優れた耐熱性、絶縁性及び可とう性を得ることができる。
【0018】
本発明は更に、上記本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して50〜300μmの膜厚の感光性樹脂組成物層を形成し、該感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、現像により未露光部を除去した後、露光部を加熱硬化させる、層間絶縁膜の製造方法を提供する。かかる層間絶縁膜の製造方法によれば、上記本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、優れた耐熱性、絶縁性及び可とう性を有する厚膜の層間絶縁膜を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
ポリイミド樹脂前駆体を用いつつ、十分な現像性を得ることができ、厚膜で解像度よく像形成を行うことが可能であり、且つ、可とう性に優れた層間絶縁膜を形成することが可能な半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物、それを用いた層間絶縁膜及び層間絶縁膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物は、(A)上記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性のポリアミック酸(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0022】
本発明の(A)成分は、分子内に少なくとも上記一般式(1)で表される構造を有するものであって側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸であれば特に制限されるものではないが、立体的にねじれが生じるような柔軟な骨格を有するものであることが好ましい。また、上記ポリアミック酸は、実質的に上記一般式(1)で表される構造のみからなるものであってもよく、上記一般式(1)以外の構造を更に有していてもよい。なお、本発明の効果をより十分に得る観点から、上記ポリアミック酸は、実質的に上記一般式(1)で表される構造のみからなるものであることが好ましい。
【0023】
上記(A)ポリアミック酸は、例えば、ジアミン成分と、それに対して1倍モル当量以上のテトラカルボン酸二無水物成分とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0024】
ジアミン成分としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,6−ジアミノピリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4,4’−(4−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4’−(3−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン等が挙げられる。また、上記ジアミン成分の一部に、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルシロキサン系ジアミン(信越化学(株)製、商品名:LP−7100等)などの芳香環を含まない脂肪族系のジアミンを使用してもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0025】
これらのジアミン成分の中でも、現像性及び透過性の観点から、ジアミノジフェニルスルホンが好ましい。
【0026】
また、テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、デカメチレンビストリメリテート二無水物等が挙げられる。
【0027】
また、上記テトラカルボン酸二無水物成分の一部として、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を使用することもできる。更に、上記テトラカルボン酸二無水物成分の一部に、例えば、シクロブテンテトラカルボン酸二無水物等の芳香環を含まない脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物を使用してもよい。
【0028】
これらのテトラカルボン酸二無水物成分の中でも、現像性及び透過性の観点から、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0029】
(A)ポリアミック酸は、上記ジアミン成分と上記テトラカルボン酸二無水物成分とから公知の方法によって合成される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを選択的に組み合わせ、有機極性溶媒中で重合反応させることにより合成される。
【0030】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させる際の溶媒としては、(A)ポリアミック酸に対して不活性である必要があり、例えば、含窒素系溶剤類(N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等)、脂環式ケトン類(シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等)などが挙げられる。これらの中でも、溶解性及び吸水性の観点から、ラクトン類、脂環式ケトン類、エーテル類が好ましく、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0031】
また、(A)上記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸の接着性、現像性を向上させるために、(A)ポリアミック酸にアミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入することが好ましい。アミノベンズイミダゾール及びその誘導体としては、例えば、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノ−6−メチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−エチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ブチル−ベンズイミダゾール、2−アミノ−6−ニトロ−ベンズイミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、2−アミノ−ベンズイミダゾールが好ましい。
【0032】
アミノベンズイミダゾール又はその誘導体を導入する際の導入量は、(A)ポリアミック酸100モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましく、2〜3モルであることが特に好ましい。アミノベンズイミダゾール又はその誘導体の導入量が0.1モル未満では接着性の向上効果が不十分となる傾向があり、10モルを超えると現像性及び保存安定性が低下する傾向がある。
【0033】
(A)成分であるポリアミック酸の重量平均分子量は、10000〜50000であることが好ましく、20000〜40000であることがより好ましい。重量平均分子量が10000未満では硬化膜が脆くなる傾向があり、50000を超えると現像性が低下する傾向がある。
【0034】
感光性樹脂組成物において、(A)成分である上記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が低下する傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、解像度が低下する傾向にある。
【0035】
(B)光重合性化合物は、分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物であれば特に制限されない。かかる(B)光重合性化合物は、例えば、ジヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させることで得ることができる。
【0036】
入手可能な分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、TMCH−5(商品名、日立化成工業株式会社製)、ヒタロイド9082(商品名、日立化成工業株式会社製)、UA−11(商品名、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミック酸との相溶性及び誘電率の観点から、分子内にウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とエチレン性不飽和基とを有する光重合性化合物であるTMCH−5(商品名、日立化成工業株式会社製)が好ましい。
【0037】
また、感光性樹脂組成物を熱硬化させてなる層間絶縁膜の伸びをさらに向上できる観点から、分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を用いることが好ましい。分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化11】



[式中、R21、R22及びR23は各々独立に、下記一般式(9)〜(12)で表される基を示す。但し、R21、R22及びR23のうちの少なくとも1つは、下記一般式(11)で表される基を示す。]
【0039】
【化12】



[式中、R24は、水素原子又はメチル基を示し、aは1〜14の整数を示す。]
【0040】
【化13】



[式中、bは1〜14の整数を示す。]
【0041】
【化14】



[式中、R25は水素原子又はメチル基を示し、cは1〜9の整数を示し、dは1〜14の整数を示す。]
【0042】
【化15】



[式中、R26は水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、e、f及びgは各々独立に1〜10の整数を示し、hは0〜10の整数を示す。]
【0043】
上記一般式(8)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21(商品名、新中村化学工業(株)社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
(B)成分である分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物の重量平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、600〜3000であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、硬化膜の良好な膜物性及び低誘電率を高水準で両立させることができる傾向がある。
【0045】
感光性樹脂組成物において、(B)成分である分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜70質量部であることが好ましく、30〜65質量部であることがより好ましく、35〜55質量部であることが特に好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、硬化後の膜の伸びが低下する傾向にあり、含有量が70質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が低下する傾向にある。
【0046】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲であれば、(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する重合性化合物以外の光重合性化合物を含有していてもよい。
【0047】
(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する重合性化合物以外の他の光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0048】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。
【0049】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0050】
このうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0051】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンの1分子内のエチレンオキサイド基の数は4〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用される。
【0052】
本発明の(C)成分である光重合開始剤は、活性光により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、芳香族ケトン、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
【0053】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0054】
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等が挙げられる。
【0055】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0057】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0058】
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等が挙げられる。
【0059】
(C)光重合開始剤は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(C)光重合開始剤としては、例えば、イルガキュア−369(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、イルガキュア−907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、イルガキュア−651(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0060】
上述した(C)光重合開始剤の中でも、特にイルガキュア−651が、感度及び溶剤との相溶性を良好にできる観点から好ましい。上記(C)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
感光性樹脂組成物において、(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、4〜10質量%であることが特に好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、残膜率が低下する傾向にある。
【0062】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(D)架橋剤を加えてもよい。(D)架橋剤としては、特に制限されないが、ブロック化イソシアネート化合物などが挙げられる。ブロック化イソシアネート化合物として具体的には、BL−3175(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製、ブロック化イソシアネート)が好ましい。これらの(D)架橋剤を添加することにより、感光性樹脂組成物を熱硬化させてなる層間絶縁膜の伸びをさらに向上させることができる。
【0063】
感光性樹脂組成物に(D)架橋剤を含有させる場合、その含有量は、(A)ポリアミック酸100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、30〜40質量部であることがより好ましい。(D)架橋剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物からなる層間絶縁膜が脆くなったり、(A)ポリアミック酸と(D)架橋剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0064】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(E)増感剤を加えることができる。(E)増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などが挙げられる。(E)増感剤としては、感光性樹脂組成物の感度、及び、溶剤との相溶性等の観点から、クマリン類が好ましく、クマリン102(商品名、アクロス社製)が特に好ましい。(E)増感剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0065】
感光性樹脂組成物における(E)増感色素の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.1〜1質量%であることが好ましい。(E)増感色素の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、溶剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)上記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸、(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、必要に応じて用いられる(D)架橋剤、並びに、必要に応じて用いられる(E)増感剤を、溶媒とともに混合することにより得ることができる。
【0067】
このときに用いられる溶媒としては特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトンなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0068】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、感光性樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0069】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁膜を製造する方法について説明する。
【0070】
まず、上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としては、シリコン、アルミナセラミック、ガラスセラミック、窒化アルミ、半導体を形成した基板などが用いられる。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬、ロールコーティングなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
また、塗布膜厚は、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度等によって異なるが、通常、乾燥後の被膜(感光性樹脂組成物層)の膜厚が50〜300μmになるように塗布される。乾燥後の被膜の膜厚が50〜300μmになるようにするためには、本発明の感光性樹脂組成物を溶剤で溶解させ、粘度を10〜50Pa・sに調節することが好ましく、20〜40Pa・sに調節することがより好ましい。また、感光性樹脂組成物の固形分濃度は、20〜70質量%にすることが好ましく、30〜60質量%にすることがより好ましい。得られる被膜の膜厚が50μm未満である場合、十分な絶縁性が保てなかったり、中空構造として十分な空間を形成できなくなる傾向があり、300μmを超えると、解像度が低下する傾向がある。
【0072】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を得る。乾燥は、オーブン、ホットプレートなどを使用し、50〜100℃の範囲で1分〜1時間行うことが好ましい。
【0073】
次に、この感光性樹脂組成物層上に所望のパターンを有するマスクを置き、それを介して活性光線を照射して露光する。露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
【0074】
露光後に、現像液を用いて未露光部を除去することにより、パターンを形成することができる。ここで、現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアルカリ水溶液などを使用することができる。これらの中でも、金属性イオン化合物が少ないことから、感光性樹脂組成物の現像には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。
【0075】
また、現像後、必要に応じて、水、又は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールでリンスする。
【0076】
更に、現像後、キュアすることにより、感光性樹脂組成物からなる層間絶縁膜を得ることができる。現像後のキュアでは、加熱温度を適宜調節することが好ましく、例えば、段階的に昇温しながら1〜2時間実施することが好ましい。加熱温度は、120〜225℃の間で調節することが好ましい。具体的には、現像後、例えば、120℃、150℃、180℃で各20分間熱処理した後、225℃で40分間熱処理を行うことで光硬化後のパターンを更に熱硬化させ、目的とする層間絶縁膜を得ることができる。
【0077】
こうして得られる層間絶縁膜は、優れた耐熱性、絶縁性及び可とう性を有しており、半導体素子の層間絶縁膜として非常に有用である。
【0078】
図1は本発明の層間絶縁膜を用いた半導体パッケージの一例を示す模式断面図である。図1に示す半導体パッケージ10では、シリコンウェハ(基板)1上にアルミニウム等の金属からなる電極2が設けられている。シリコンウェハ1及び電極2は層間絶縁膜3により覆われているが、電極2上の層間絶縁膜3の一部は除去されており、その部分から電極2に接続された銅等の金属からなる再配線4が引き出されている。また、再配線4には銅等の金属からなるポスト部5が接続されている。そして、層間絶縁膜3、再配線4及びポスト部5は、ポスト部5の一端のみが露出するように封止樹脂6により封止されている。
【0079】
この半導体パッケージ10において、層間絶縁膜3は上述した本発明の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を用いて形成されている。そのため、層間絶縁膜3は解像度よく厚膜化が達成されており、且つ、優れた耐熱性、絶縁性及び可とう性を有している。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の合成例において、ポリアミック酸の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。
【0081】
(合成例1)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)9.36g(0.038mol)、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)4.89g(0.012mol)、及び、γ−ブチロラクトン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)16.44g(0.053mol)、及び、γ−ブチロラクトン29.66gを15分かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、3時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は44質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は38000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.9であった。
【0082】
(合成例2)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDS)12.32g(0.050mol)、及び、γ−ブチロラクトン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)17.07g(0.053mol)、及び、γ−ブチロラクトン29.66gを15分かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、5時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は40000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.0であった。
【0083】
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
上記各合成例で合成したポリアミック酸の溶液、光重合性化合物、光重合開始剤、及び、架橋剤を、それぞれ下記表1に示した配合割合(質量部)で混合し、粘度20Pa・sとなるように溶媒(γ−ブチロラクトン)を加えて、実施例1〜6及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物の溶液を得た。ここで、感光性樹脂組成物の溶液の粘度は、東機産業株式会社製のTOKI RE−80U(商品名)を用いて測定した。なお、表1中の数字は固形分の質量部を示している。また、表1中の各成分は、以下に示すものである。
【0084】
TMCH−5(商品名、ウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とを有する2官能アクリレート、重量平均分子量950、日立化成工業株式会社製)、
ヒタロイド9082(商品名、ウレタン結合とカーボネート骨格とを有する2官能アクリレート、重量平均分子量4400、日立化成工業株式会社製)、
UA−11(商品名、ウレタン結合とエチレンオキシド骨格とを有する2官能メタクリレート、重量平均分子量1100、新中村化学工業株式会社製)、
UA−21(商品名、ウレタン結合とイソシアヌル環骨格とを有する3官能メタクリレート、重量平均分子量3000、新中村化学工業株式会社製)、
FA−321A(商品名、ビスフェノールAジアクリレート、日立化成工業株式会社製)、
FA−129A(商品名、ノナンジオールジアクリレート、日立化成工業株式会社製)、
M−402(商品名、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、東亞合成株式会社製)、
KAYARAD DPCA 20(商品名、6官能アクリレート、日本化薬株式会社製)、
BL−3175(商品名、ブロック化イソシアネート、住化バイエルウレタン株式会社製)、
イルガキュア−651(商品名、ベンジルジメチルケタール、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)。
【0085】
なお、合成例1及び合成例2で調製したポリアミック酸、並びに、光重合性化合物として用いたTMCH−5、ヒタロイド9082、UA−11、及びUA−21の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した(標準ポリスチレンによる換算)。GPCの条件は以下の通りである。
【0086】
〔GPC条件〕
ポンプ:L6000 Pump(株式会社日立製作所製)、
検出器:L3300 RI Monitor(株式会社日立製作所製)、
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(商品名、日立化成工業株式会社製)、
溶離液:DMF/THF(質量比1/1)、
流量:1ml/min。
【0087】
【表1】



【0088】
[相溶性の評価]
ポリアミック酸と光重合性化合物との相溶性を、以下の手順で評価した。すなわち、上記実施例及び比較例に対応するポリアミック酸と光重合性化合物とを、表1に示す固形分の配合割合で混合し、固形分50質量%となるようにγ−ブチロラクトンを加えて25℃で5分間攪拌したときの状態を以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
A:得られた溶液に濁りがない、
B:得られた溶液に若干濁りがある、又は、凝集物がある、
C:得られた溶液に濁りがある、又は、相分離する。
【0089】
[タック性の評価]
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、100℃のホットプレートで10分間乾燥することで、厚さ50μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層にポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)(商品名:ピューレックス、帝人デュポンフィルム(株)製)を23℃、0.4MPaの条件で圧着したときのPETフィルムの付着状態を以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
A:感光性樹脂組成物層にPETフィルムが張り付かない、
B:感光性樹脂組成物層にPETフィルムが張り付くが、容易に剥離できる、
C:感光性樹脂組成物層にPETフィルムが張り付き、剥離が困難である。
【0090】
[現像性の評価]
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、100℃のホットプレートで3分間乾燥することで、厚さ50μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ライン幅/スペース幅が200/200(単位:μm)の配線パターンを有するネガマスクを介して、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、プロキシミティー露光装置UX−1000SM)を用いて露光量800mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行った。その後、試験基板を2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に浸漬し、感光性樹脂組成物層の未露光部が完全に溶解するまで現像を行った。この現像後の感光性樹脂組成物層の露光部の膜減りを測定し、以下の評価基準に基づいて現像性を評価した。その結果を表2に示す。
A:露光部の膜減りが20%未満である、
B:露光部の膜減りが20%以上80%未満である、
C:露光部の膜減りが80%以上である。
【0091】
[レジスト形状の評価]
上記現像性の評価で得られた現像後の感光性樹脂組成物層の形状(レジスト形状)を、日立走査型電子顕微鏡S−500A(商品名、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の評価基準に基づいてレジスト形状を評価した。レジスト形状は矩形又は台形であることが望ましく、矩形又は台形に近いほど解像度が良好であると言える。結果を表2に示す。
A:レジスト形状が矩形又は台形である、
B:レジスト形状が逆台形である。
【0092】
[残膜率の評価]
上記現像性の評価で得られた現像後の感光性樹脂組成物層について、120℃で40分間乾燥した後、120℃から225℃まで15分間かけて昇温し、最後に225℃で60分間乾燥して熱硬化させ、層間絶縁膜を形成した。こうして得られた層間絶縁膜の残膜率を下記式;
残膜率(%)=(熱硬化後の膜厚/露光後の膜厚)×100
により算出した。その結果を表2に示す。
【0093】
[5%重量減少温度の測定]
上記残膜率の評価で得られた熱硬化後の層間絶縁膜をシリコン基板から剥離し、5×5mmの試験片を作製した。この試験片について、示差走査熱量計(商品名:TG/DTA6300、セイコーインスツルメンツ社製)を用いてTG−DTA法により5%重量減少温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0094】
[引張り伸び率及び引張り弾性率の測定]
上記残膜率の評価で得られた熱硬化後の層間絶縁膜をシリコン基板から剥離し、縦6cm×横1cmの試験片を作製した。この試験片について、引張り試験機(万能引っ張り試験機ASGH−100N、株式会社島津製作所製)を用いて引張り伸び率及び引張り弾性率の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0095】
[比誘電率の測定]
上記残膜率の評価で得られた熱硬化後の層間絶縁膜の比誘電率を以下の手順で測定した。まず、シリコン基板(厚さ625μm)上に形成された層間絶縁膜(厚さ100μm)上に、真空蒸着装置でAl金属を直径12mmの円形になるように真空蒸着した。これにより、層間絶縁膜がAl金属とシリコン基板との間に配置された構造体を形成した。そして、この構造体の電荷容量を、アジレントテクノロジー社製のE4980A LCRメータを用いて以下の条件にて測定し、その測定値から層間絶縁膜の比誘電率を算出した。その結果を表2に示す。
測定周波数:1MHz、
測定温度:室温(25℃)、
主電極:12mmφ
【0096】
【表2】



【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の層間絶縁膜を用いた半導体パッケージの一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…シリコンウェハ(基板)、2…電極、3…層間絶縁膜、4…再配線、5…ポスト部、6…封止樹脂、10…半導体パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される構造を有するアルカリ可溶性のポリアミック酸と、
(B)分子内にウレタン結合及びエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含む、半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(1)中、Arは下記一般式(2)又は下記一般式(6)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(3)、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(7)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化2】



[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数を示す。なお、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】



[式(6)中、R10は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、wは1〜3の整数を示す。なお、wが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。]
【化5】



[式(3)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、p及びqは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化7】



[式(4)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化8】



(R11は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)を示し、R、R、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、r、s、t及びuは各々独立に1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化9】



[式(5)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、vは1〜3の整数を示す。なお、vが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【化10】



[式(7)中、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R13及びR14は各々独立に単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、xは1〜4の整数を示す。なお、xが2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(B)光重合性化合物として、分子内にウレタン結合、イソシアヌル環構造及びエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を含む、請求項1に記載の半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)架橋剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を、光照射及び加熱の両方の手段により硬化させて得られる、層間絶縁膜。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の半導体素子の層間絶縁膜用感光性樹脂組成物を基板上に塗布して50〜300μmの膜厚の感光性樹脂組成物層を形成し、該感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、現像により未露光部を除去した後、露光部を加熱硬化させる、層間絶縁膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−197160(P2008−197160A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29450(P2007−29450)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】