説明

半導体素子製造用の圧力制御弁およびこれを備える半導体素子製造装置

【課題】 半導体素子の製造において反応容器内の圧力を、1つで調整することができ、圧力の調整範囲が広く、かつ反応容器内における異物の舞い上がりを防止することのできる半導体素子製造用の圧力調整弁およびこれを備える半導体素子製造装置を提供することである。
【解決手段】 半導体素子製造用の圧力制御弁21は、筒体33と、弁体34と、弁体駆動部37とを含んで構成される。筒体33は、内部に筒体33内空間が形成され、開口部36と弁座35とを有する。開口部36は、外部空間に開口する。弁体34の変位方向Zに垂直な断面の形状は、円形に形成され、弁体34は、筒体33内空間から弁座35に向かって先細状に形成される。弁体34の弁座35側の先端における直径は、弁座35に形成される弁口の内径よりも小さく設定される。弁体駆動部37は、弁体34を変位方向Zに変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器と真空ポンプとに接続され、半導体素子の製造において反応容器内の圧力を調整する半導体素子製造用の圧力制御弁、およびこれを備える半導体素子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、第1の従来技術に係る半導体製造用真空処理装置1の構成を表す図である。第1の従来技術に係る半導体素子製造装置である半導体製造用真空処理装置1は、真空配管系として、真空ポンプ2、圧力制御弁3、仕切弁4、および真空配管5を有している。このうち仕切弁4は、反応室6を真空ポンプ2で真空排気するときに、開放される(たとえば特許文献1参照)。第1の従来技術の圧力制御弁3としては、たとえばバタフライバルブなどが用いられる。
【0003】
図5は、図4と同様に表される第2の従来技術に係る半導体製造用真空装置1の、真空配管5の構成の一部を表す図である。図5に表される半導体製造用真空装置1には、反応容器8と、メカニカルブースターポンプ9と、スロットルバルブ10と、遮断バルブ11とが設けられる。反応容器8は予め真空に排気され、原料ガス供給装置内の原料ガスが適切な流量に調節された後、遮断バルブ11、ガス配管、ガス導入間を介して真空に排気されている反応容器8内に原料ガスが送込まれる。スロットルバルブ10は、反応容器8とメカニカルブースターポンプ9との間に設けられる(たとえば特許文献2参照)。遮断バルブ11が管路を遮断するときには、遮断バルブ11に設けられるOリング12によって気密が実現され、管路が遮断される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−325704号公報
【特許文献2】特開平11−350147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術における圧力制御弁3、および第2の従来技術におけるスロットルバルブ10では、原料ガスの移動を完全に遮断することができない。また第1の従来技術における仕切弁4および第2の従来技術における遮断バルブ11では、反応容器内の圧力を調整することができない。したがって、反応容器を開放するときに原料ガスの移動の遮断を防止し、かつ反応容器内の圧力調整を行うためには、流体の移動を遮断するための遮断用バルブ(4,11)と反応容器内の圧力を調整するための圧力調整用バルブ(3,10)の両方を設ける必要がある、という問題点である。
【0006】
さらに半導体素子の製造においては、大流量の原料ガスが必要な工程、および極めて大気圧に近い条件下で行う工程などもあり、第1および第2の従来技術におけるバタフライバルブ3およびスロットルバルブ10では圧力調整の範囲が狭く、対応できないという問題点がある。
【0007】
また半導体素子の製造において反応容器内の異物除去は重要な課題である。第1の従来技術において仕切弁4のみを用いた場合、および第2の従来技術において遮断バルブ11のみを用いた場合では、反応容器内が急激に減圧されることによって、反応容器内に異物が舞い上がり、製造される半導体素子の品質が低下するという問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、半導体素子の製造において反応容器内の圧力を、1つで調整することができ、圧力の調整範囲が広く、かつ反応容器内における異物の舞い上がりを防止することのできる半導体素子製造用の圧力調整弁およびこれを備える半導体素子製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従えば、半導体素子製造用の圧力制御弁は、筒体と、弁体と、弁体駆動部とを含んで構成される。筒体は、反応容器と真空ポンプとの間に介在し、反応容器と真空ポンプとに接続される。また筒体は、内部に筒体内空間が形成され、開口部と弁座とを有する。開口部は、外部空間に開口する。弁体は、筒体内空間に設けられ、変位方向に変位することによって弁座に着座可能である。弁体の変位方向に垂直な断面の形状は、円形に形成され、弁体は、筒体内空間から弁座に向かって先細状に形成される。弁体の弁座側の先端における直径は、弁座に形成される弁口の内径よりも小さく設定される。弁体駆動部は、弁体を変位方向に変位させる。
【0010】
また本発明に従えば、半導体素子製造装置は、前記半導体素子製造用の圧力制御弁と、反応容器と、真空ポンプとを備える。反応容器は、内部空間に半導体素子前駆体を内方可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応容器内の圧力を1つで調整することができる圧力制御弁を実現することができる。弁座に形成される弁口を通過する流体から弁体が受ける抗力は、抗力を受ける表面に垂直な向きに、弁体に付与される。弁体は変位方向に垂直な断面形状が円形に形成され、弁体が先細状に形成されるので、弁座側に臨む弁体の表面に流体から付与される抗力は、弁体の中心を通り変位方向に延びる中央線を中心に、対称となる。したがって、弁座に臨む弁体の表面に流体から付与される抗力のうち、弁体の中心線に垂直な力の成分は、中心線を挟んで互いに相殺される。これによって、弁座側から弁体側に、流体が弁体を変位方向に押圧する力を、弁体のうち弁座に近接する表面が変位方向に垂直に形成される場合に比べて、小さくすることができる。したがって、流体に対して弁体が流路抵抗を示すときに、弁体駆動部にかかる負荷を、流体から弁体に付与される負荷よりも小さくすることができる。
【0012】
これによって、弁体の変位方向の位置調整を容易にすることができる。弁体が弁座に対して近接すれば近接し、流体から弁体に付与される押圧力が大きくなった場合にも、流体から弁体駆動部に付与される負荷を、流体から弁体に付与される負荷よりも小さくできるので、流路を弁体の位置調整を確実に行うことができる。したがって、流量が小さいときにも、安定した流量を維持することができる。これによって、反応容器内における異物の舞い上がりを防止することができる。
【0013】
また弁体が弁座に着座した状態において、弁体から弁座に作用する力は、変位方向に垂直な成分を含み、その変位方向に垂直な力の成分は、弁体の中心線を挟んで互いに相殺される。したがって、弁体駆動部が弁体を弁座側に向けて変位方向に押圧し、弁体を弁座に密着させたときに、弁体内から弁座に作用する押圧力の大きさを、弁体駆動部が弁体を変位方向に押圧する力の大きさよりも大きくすることができる。これによって、流路を遮断可能であり、かつ圧力調整を行うことのできる圧力制御弁を実現することができる。変位方向への変位による圧力調整の範囲と、流路の完全な遮断とを弁体駆動部による弁体の変位駆動によって行うことができるので、圧力調整範囲の広い圧力制御弁を実現することができる。
【0014】
また本発明によれば、半導体素子製造装置は、前記半導体素子製造用の圧力制御弁と、反応容器と、真空ポンプとを備え、反応容器は、内部空間に半導体素子前駆体を内方可能であるので、これによって、品質の高い半導体素子を製造することができ、構造の簡単な半導体素子製造装置を実現することができる。半導体素子製造用の圧力制御弁は、弁体の変位方向の位置を調整することが容易であるので、弁体を弁座に近接させた場合にも、安定した流量を実現することができる。これによって、反応容器内における異物の舞い上がりを防止することができる。したがって、品質の高い半導体素子を製造することができる。また半導体素子製造用の圧力制御弁は、流路を遮断可能であり、かつ圧力調整を行うことができるので、反応容器に接続される圧力制御弁を1つで実現することができる。換言すれば、流路を遮断するための流路遮断弁と圧力制御弁とを別体に形成する必要がない。したがって、半導体素子製造装置の構造を簡単化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。以下の説明は、半導体素子製造用の圧力制御弁21、および半導体素子製造装置22についての説明をも含む。
【0016】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体素子製造装置22の側面図である。本実施形態において、半導体素子製造装置22は、半導体素子を製造する装置である。半導体素子は、半導体からなる部分を有し、電力の供給によって稼動する素子である。半導体素子は、たとえば半導体レーザ素子、バイポーラトランジスタ、集積回路などであり、液晶表示装置、中央演算処理装置(central processing unit, 略称「CPU」)を含む電子機器の部品として使用される。半導体素子製造装置22は、たとえば化学気相成長(chemical vapor deposition, 略称「CVD」)法、プラズマエッチングなどを行うための装置である。
【0017】
半導体素子製造装置22は、半導体素子製造用の圧力制御弁21を備える。以下、半導体素子製造用の圧力制御弁21を、単に「圧力制御弁」21と称する。圧力制御弁21は、反応容器24と真空ポンプ26とに接続され、半導体素子の製造において反応容器24内の圧力を調整する。半導体素子製造装置22は、圧力制御弁21と、反応容器24と、真空ポンプ26とを備える。反応容器24は、内部空間に半導体素子前駆体を内包可能である。
【0018】
反応容器24は、たとえばアルミ合金、ステンレススチールなどで形成され、内部空間の圧力が真空となっても大気圧に対して機械的耐久性を有する。反応容器24の内部空間には、複数の基板を載置する載置台が設けられ、載置台は、基板として載置された、たとえばケイ素から成るウエハを支持する。
【0019】
半導体素子製造装置22は、反応容器24に予め定める種類の気体を供給する気体供給部27と、反応容器24内の気体を反応容器24から排出する管路を規定する排気配管28とをさらに含む。気体供給部27は、予め定める種類の気体を貯蔵する単数または複数のボンベと、ボンベから反応容器24に供給する気体の流量を制御するレギュレータ(いずれも図示外)と、レギュレータと反応容器24とに接続され、レギュレータから反応容器24までの気体の通路を規定する気体供給配管32とを含む。排気配管28は、反応容器24と圧力調整弁とに接続される。
【0020】
図2および図3は、本発明の一実施形態に係る半導体素子製造用の圧力制御装置の側面図である。図1〜図3において、筒体33は一部を切欠き、筒体33の内部空間に設けられる弁体34を示している。図2は、弁体34が弁座35に着座した状態を表しており、図3は、弁体34が弁座35から最も離れた状態を表している。
【0021】
本実施形態において、圧力制御弁21は、筒体33と、弁体34と、弁体駆動部37とを含んで構成される。筒体33は、反応容器24と真空ポンプ26との間に介在し、反応容器24と真空ポンプ26とに接続される。また筒体33は、内部に筒体33内空間が形成され、開口部36と弁座35とを有する。開口部36は、外部空間に開口する。弁体34は、筒体33内空間に設けられ、変位方向Zに変位することによって弁座35に着座可能である。弁体34の変位方向Zに垂直な断面の形状は、円形に形成され、弁体34は、筒体33内空間から弁座35に向かって先細状に形成される。弁体34の弁座35側の先端における直径は、弁座35に形成される弁口の内径よりも小さく設定される。弁体駆動部37は、弁体34を変位方向Zに変位させる。
【0022】
半導体素子製造装置22は、制御部38をさらに含んで構成される。制御部38は、弁体駆動部37に接続され、弁体駆動部37を制御することによって弁体34の変位方向Zの位置を調整する。弁体駆動部37は、ピストン棒39を変位方向Zに駆動することによって、弁体34を変位方向Zに移動させる。弁体駆動部37は、たとえばボールねじと、エンコーダと、モータ(いずれも図示外)とを含んで構成され、弁体34の変位方向Zの位置を設定する。弁体34の変位方向Zの位置は、エンコーダによって検知され、検知結果は弁体駆動部37から制御部38に対して出力される。制御部38は、たとえばコンピュータを含んで構成され、予め定めるプログラムまたは入力された情報に従って弁体駆動部37を制御し、弁体34の変位方向Zの位置を調整することによって、圧力制御弁21の機能を決定する。モータをステップモータによって実現する場合には、エンコーダを省略することも可能である。
【0023】
弁体34は、本実施形態において円錐の形状に形成される。したがって、変位方向Zに見て弁体34は円形に形成され、変位方向Zに垂直な方向に見て、弁体34は三角形に形成される。変位方向Zのうち、弁体34が弁座35から離れた状態から、弁座35に近づくときに弁体34が移動する向きを「変位方向一方」Z1と称し、弁体34が弁座35に着座した状態から、弁口を開放するときに移動する向きを「変位方向他方」Z2と称する。弁体34の円錐の底面46の中心と、弁体34の円錐の頂点42とを結ぶ直線は、変位方向Zに延び、この直線を「中心線」44と称する。弁体34の円錐の頂点42は、底面46よりも変位方向一方Z1に配置される。弁体34には、弁体34から変位方向他方Z2に延びるピストン棒39が接続される。
【0024】
弁座35が規定する弁口から開口部36が規定する開口に向かって、筒体33内空間を流通する流体に対し、弁体34が示す流路抵抗は、弁体34が弁座35から変位方向Zに最も離れた状態において、弁座35による流路抵抗と開口部36による流路抵抗との合計に対して無視できる。弁体34のうち弁座35に接触可能な部分の表面、および弁座35のうち弁口を規定する部分の表面は、平滑に形成される。また弁体34のうち弁座35に接触可能な部分の表面と、弁座35のうち弁口を規定する部分との少なくともいずれか一方は、樹脂によって形成される。具体的には、弁体34のうち弁座35に接触可能な部分と、弁座35のうち弁口を規定する部分とのうち、少なくともいずれか一方は、ゴム弾性を有する材料によって形成される。本実施形態において、筒体33および弁座35は金属から形成される。
【0025】
弁体34が予め定める範囲内で最も変位方向一方Z1に変位し、弁座35に着座した状態において、弁体34の側面の一部が弁座35のうち弁口を規定する部分に接触する。弁体34のうち、弁座35に着座した状態において弁座35に接触する部分を、「着座接触部」48と称すると、少なくとも着座接触部48を含む弁体34の表面部が、樹脂によって形成されることが好ましい。本実施形態においては、弁体34の側面を成す側面部全体が、ゴム弾性を有する樹脂によって形成される。弁体34が弁座35に着座した状態において、弁体34のうち、着座接触部48を除く残余の部分は、弁座35、反応容器24、および気体供給配管32から離れて位置し、半導体素子製造装置22のどの部分にも接触していない。
【0026】
他の実施形態においては、弁体34の変位方向一方Z1の端部は、円錐の頂点42として尖って形成されず、面取り状に変位方向一方Z1を臨む表面が形成されていてもよい。また弁体34は、弁座35のうち開口部36を規定する部分よりも広い範囲で弁座35に対して面接触していてもよい。弁体34は、たとえばフランジ状に形成されたフランジ部を有し、弁体34が最も変位方向一方Z1に変位した状態において、弁座35に対してフランジ部でも接触する構成とすることも可能である。また弁体34の表面部と、弁座35のうち弁口を規定する部分との両方を樹脂によって形成してもよい。樹脂は、ゴム弾性を有する樹脂とすることによって密着性を向上することができるけれども、ゴム弾性を有する樹脂でなくてもよい。
【0027】
本発明に係る一実施形態および他の実施形態において、金属、セラミック、ガラスなどに比べて樹脂の弾性率は大きく、また弁体34は弁口に挿入され、いわゆるテーパ状に形成されるので、駆動部が弁体34を変位方向一方Z1に変位させて弁座35に着座させることによって、弁体34を弁座35に容易に密着させることができる。したがって、弁体34の着座接触部48および弁座35の少なくとも一方を樹脂製とすることによって、弁体34と弁座35との密着を容易に維持することができる。
【0028】
弁体34の、少なくとも着座接触部48を含む部分を形成する材料としては、たとえばパーフルオロプラスチック、シリコン系ゴムおよびフッ素系ゴムのいずれかを用いることができる。パーフルオロプラスチック、およびフッ素系ゴムを用いた場合には、形成される表面部を、耐薬品性を有する表面部として形成することが可能であり、シリコン系ゴムを用いる場合には、形成される表面部を、耐熱性を有する表面部として形成することができる。
【0029】
開口部36は、筒体33のうち、弁座35とは流体の流れる方向に関して反対側に形成され、筒体33の筒体内空間と外部空間とを連通する。開口部36は、真空ポンプと配管によって接続され、開口部36が規定する開口は、筒体内空間から真空ポンプに向かう気体の出口となる。開口部36は、弁体駆動部36の駆動、弁体34およびピストン棒39の変位に関して障害とならない筒体33の一部に形成され、本実施形態において開口は、弁体34およびピストン棒39から中心線44に関する半径方向外方に離れて形成される。
【0030】
真空ポンプ26としては、単数または複数の、たとえばロータリポンプ、ディフュージョンポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンポンプなどによって実現される。真空ポンプ26が複数配置される場合、互いに異なる複数種類のポンプを用いてもよい。これによって、常圧から低真空までの真空排気と、低真空から高真空までの真空排気とを、異なる種類の真空ポンプ26によって行うことができる。ロータリーポンプは常圧から低真空までの真空排気に適し、ディフュージョンポンプはさらに高真空までの真空排気に適し、ターボ分子ポンプ、イオンポンプなどは、さらに高真空までの真空排気に適する。半導体素子を製造する場合には、ロータリーポンプおよびディフュージョンポンプで充分な場合もある。
【0031】
半導体素子を製造するときには、まず反応容器24の内部空間に位置する載置面上に複数のウエハを載置する。次に、真空ポンプ26を稼動させて反応容器24内の気体を排気し、反応容器24の内部空間を真空にする。反応容器24内の気圧は、たとえば50Torr、すなわち6666Pa程度の気圧に設定される。次に、気体供給部27によって、たとえばシランなどの気体を気体供給配管32を介して反応容器24内に供給する。反応容器24内をパージし、内部空間の気体を入換えるために、排気と気体供給とを複数回繰返してもよい。
【0032】
反応容器24内の気圧は、半導体素子の製造において、重要な条件の一つであるので、圧力は常時制御され続けることが好ましい。反応容器24内を常圧に戻すときには、必ずしも真空ポンプ26の稼動を停止する必要はない。圧力制御弁21を閉じて行う。これによって、真空ポンプ26と圧力制御弁21とに接続される管路内を真空に維持した状態で反応容器24内を常圧に戻すことができ、真空排気を再開したときに、真空ポンプ26の稼動開始から始めるよりも、短時間に反応容器24内の気圧を所定の圧力にすることができる。
【0033】
基板に予め定める材質の層が形成された状態においては、基板以外の、たとえば反応容器24の内壁などに、基板に形成した固体と同じ成分の固体が付着している。反応容器24内を常圧に戻した状態から、たとえば気体供給部27から供給される気体を異なる種類に交換し、再び反応容器24の真空排気を行うときには、排気における気体の流れによって、反応容器24内において、基板以外の部分に形成された固体が、舞い上がる可能性がある。
【0034】
このような場合には、排気配管28を介して単位時間当たりに排気される気体の流量は、少なければ少ないほど、反応容器24内に生じる気体の流れを緩やかにすることができる。これによって、反応容器24内で異物が舞い上がる可能性を低減し、基板に異物が付着することを防止することができる。このような場合には、弁体34は、弁座35からわずかに離れた状態に維持される。
【0035】
反応容器24内において異物が舞い上がる可能性がない場合には、反応容器24の真空排気は、速ければ速いほど、半導体の製造にかかる時間を短縮することができる。このような場合には、圧力制御弁21の弁体34の位置は、弁座35から最も変位方向他方Z2に変位した状態に設定される。これによって、弁体34による流路抵抗を可及的に小さくし、圧力制御弁21内における流量を可及的に大きくする。
【0036】
半導体素子製造装置22は、さらに加熱部を含んで構成されていてもよい。加熱部は、基板に形成する層の材料の少なくとも一部を成す原材料の加熱を行う。この原材料は、反応容器24内が真空に維持される条件下で加熱部によって加熱されることによって気化し、反応容器24内に拡散することによって、基板上に層として蒸着され、半導体素子の一部を成す。
【0037】
本実施形態によれば、弁体34の変位方向Zに垂直な断面の形状は、円形に形成され、弁体34は、筒体33内空間から弁座35に向かって先細状に形成される。弁体34の弁座35側の先端における直径は、弁座35に形成される弁口の内径よりも小さく設定される。弁体駆動部37は、弁体34を変位方向Zに変位させる。
【0038】
これによって、反応容器24内の圧力を1つで調整することができる圧力制御弁21を実現することができる。弁座35に形成される弁国を通過する流体から弁体34が受ける抗力は、抗力を受ける表面に垂直な向きに、弁体34に付与される。弁体34は変位方向Zに垂直な断面形状が円形に形成され、弁体34が先細状に形成されるので、弁座35側に臨む弁体34の表面に流体から付与される抗力は、弁体34の中心を通り変位方向Zに延びる中央線を中心に、対称となる。したがって、弁座35に臨む弁体34の表面に流体から付与される抗力のうち、弁体34の中心線44に垂直な力の成分は、中心線44を挟んで互いに相殺される。これによって、弁座35側から弁体34側に、流体が弁体34を変位方向Zに押圧する力を、弁体34のうち弁座35に近接する表面が変位方向Zに垂直に形成される場合に比べて、小さくすることができる。したがって、流体に対して弁体34が流路抵抗を示すときに、弁体駆動部37にかかる負荷を、流体から弁体34に付与される負荷よりも小さくすることができる。
【0039】
これによって、弁体34の変位方向Zの位置調整を容易にすることができる。弁体34が弁座35に対して近接すれば近接し、流体から弁体34に付与される押圧力が大きくなった場合にも、流体から弁体駆動部37に付与される負荷を、流体から弁体34に付与される負荷よりも小さくできるので、流路を弁体34の位置調整を確実に行うことができる。したがって、流量が小さいときにも、安定した流量を維持することができる。これによって、反応容器24内における異物の舞い上がりを防止することができる。
【0040】
また弁体34が弁座35に着座した状態において、弁体34から弁座35に作用する力は、変位方向Zに垂直な成分を含み、その変位方向Zに垂直な力の成分は、弁体34の中心線44を挟んで互いに相殺される。したがって、弁体駆動部37が弁体34を弁座35側に向けて変位方向Zに押圧し、弁体34を弁座35に密着させたときに、弁t内から弁財に作用する押圧力の大きさを、弁体駆動部37が弁体34を変位方向Zに押圧する力の大きさよりも大きくすることができる。これによって、流路を遮断可能であり、かつ圧力調整を行うことのできる圧力制御弁21を実現することができる。変位方向Zへの変位による圧力調整の範囲と、流路の完全な遮断とを弁体駆動部37による弁体34の変位駆動によって行うことができるので、圧力調整範囲の広い圧力制御弁21を実現することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、弁座35が規定する弁口から開口部36が規定する開口に向かって、筒体33内空間を流通する流体に対し、弁体34が示す流露抵抗は、弁体34が弁座35から変位方向Zに最も離れた状態において、弁座35による流路抵抗と開口部36による流路抵抗との合計に対して無視できる。これによって、弁体34の変位によって実現できる圧力調整範囲を、可及的に大きくすることができる。
【0042】
また本実施形態によれば、弁体34のうち弁座35に接触可能な部分の表面、および弁座35のうち弁口を規定する部分の表面は、平滑に形成される。また弁体34のうち弁座35に接触可能な部分の表面と、弁座35のうち弁口を規定する部分との少なくともいずれか一方は、樹脂によって形成される。
【0043】
これによって、弁体34と弁座35との密着によって流路を遮断することが可能となる。弁体34のうち弁座35に接触可能な部分の表面、および弁座35のうち弁口を規定する部分の表面が、平滑に形成されるので、粗く形成される場合に比べて、弁体34と弁座35とを密着させることが容易になる。また弁体34のうち弁座35に接触可能な部分と弁座35のうち弁口を規定する部分との、少なくともいずれか一方は、樹脂によって形成されるので、たとえば金属、セラミック、ガラスなど弾性率の小さい材料によって形成される場合に比べて、押圧による変形が容易である。したがって、弁体34および弁座35の形状が誤差を含んで形成される場合にも、変形によって誤差を吸収し、弁体34と弁座35とを密着させることができる。これによって、流路を完全に遮断することが可能となる。
【0044】
また本実施形態によれば、弁体34のうち弁座35に接触可能な部分と、弁座35のうち弁口を規定する部分とのうち、少なくともいずれか一方は、ゴム弾性を有する材料によって形成される。これによって、弁体34が弁座35に接触したときに、ゴム弾性を有する材料によって形成される部分の変形を許容することができる。したがって、弁体34および弁座35の変形が許容されない場合に比べて、弁体34と弁座35との密着を容易にすることができる。
【0045】
また本実施形態によれば、半導体素子製造装置22は、前記半導体素子製造用の圧力制御弁21と、反応容器24と、真空ポンプ26とを備える。反応容器24は、内部空間に半導体素子前駆体を内包可能である。これによって、品質の高い半導体素子を製造することができ、構造の簡単な半導体素子製造装置22を実現することができる。半導体素子製造用の圧力制御弁21は、弁体34の変位方向Zの位置を調整することが容易であるので、弁体34を弁座35に近接させた場合にも、安定した流量を実現することができる。これによって、反応容器24内における異物の舞い上がりを防止することができる。したがって、品質の高い半導体素子を製造することができる。
【0046】
また半導体素子製造用の圧力制御弁21は、流路を遮断可能であり、かつ圧力調整を行うことができるので、反応容器24に接続される圧力制御弁21を1つで実現することができる。換言すれば、流路を遮断するための流路遮断弁と圧力制御弁21とを別体に形成する必要がない。したがって、半導体素子製造装置22の構造を簡単化することができる。流路遮断と圧力制御とを1つの圧力制御弁21で行うことができるので、半導体素子製造装置22を小形化することができる。さらに半導体素子製造装置22の設置および調整保守管理を容易にすることができるので、これらにかかる費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体素子製造装置22の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体素子製造用の圧力制御装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体素子製造用の圧力制御装置の側面図である。
【図4】第1の従来技術に係る半導体製造用真空処理装置の構成を表す図である。
【図5】第2の従来技術に係る堆積膜形成装置の構成の一部を表す図である。
【符号の説明】
【0048】
21 圧力制御弁
22 半導体素子製造装置
24 反応容器
26 真空ポンプ
27 気体供給部
28 排気配管
32 気体供給配管
33 筒体
34 弁体
35 弁座
36 開口部
37 弁体駆動部
38 制御部
39 ピストン棒
42 頂点
44 中心線
46 底面
48 着座接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と真空ポンプとの間に介在し、前記反応容器と前記真空ポンプとに接続される筒体であって、
内部に筒体内空間が形成され、外部空間に開口する開口部および弁座を有する筒体と、
前記筒体内空間に設けられ、予め定める変位方向に変位することによって前記弁座に着座可能な弁体であって、
前記変位方向に垂直な断面の形状が円形に、かつ前記筒体内空間から前記弁座に向かって先細状に形成され、
前記弁座側の先端における直径は、前記弁座に形成される弁口の内径よりも小さく設定される弁体と、
前記弁体を前記変位方向に変位させる弁体駆動部とを含むことを特徴とする半導体素子製造用の圧力制御弁。
【請求項2】
前記弁座が規定する弁口から前記開口部が規定する開口に向かって、前記筒体内空間を流通する流体に対し、前記弁体が示す流路抵抗は、前記弁体が前記弁座から前記変位方向に最も離れた状態において、前記弁座による流路抵抗と前記開口部による流路抵抗との合計に対して無視できることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子製造用の圧力制御弁。
【請求項3】
前記弁体のうち前記弁座に接触可能な部分の表面、および前記弁座のうち前記弁口を規定する部分の表面は、平滑に形成され、
前記弁体のうち前記弁座に接触可能な部分と、前記弁座のうち前記弁口を規定する部分との少なくともいずれか一方は、樹脂によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子製造用の圧力制御弁。
【請求項4】
前記弁体のうち前記弁座に接触可能な部分と、前記弁座のうち前記弁口を規定する部分との少なくともいずれか一方は、ゴム弾性を有する材料によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体素子製造用の圧力制御弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体素子製造用の圧力制御弁と、
内部空間に半導体素子前駆体を内包可能な反応容器と、
真空ポンプとを備えることを特徴とする半導体素子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−43655(P2010−43655A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206275(P2008−206275)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】