説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ソース、ドレインおよびチャネルが同導電型で構成されたトランジスタにおいて、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基板102上にBOX層110およびSOI層106がこの順で形成されたSOI基板と、SOI層106に形成された第1導電型のドレイン領域106aおよび106bと、これらの間に設けられた第1導電型のチャネル領域106cと、チャネル領域106c上に形成されたゲート絶縁膜112およびその上に形成された第1のゲート電極114とを含む。チャネル領域106cの下方にドープトシリコンまたは金属からなる導電層108がSOI層106の膜厚よりも狭い間隔で設けられる。また、チャネル領域106cと導電層108との間にBOX層110が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、とくにトランジスタを含む半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS集積回路の集積密度は急速に増加し続けているが、集積回路を構成する微細MOSトランジスタを安定に動作させるためには、様々な構造パラメータを最適化しなければならない。たとえば、ソース・ドレイン間のパンチスルー現象によるオフ状態のリーク電流(オフリーク)の急増を抑制するためには、チャネル領域の不純物濃度を増加しなければならない。その結果、チャネル領域の不純物濃度は素子の微細化と共に増加し、サブ0.1ミクロン世代の素子では、概ね1×1018cm−3以上の濃度が必要になる。チャネル領域の不純物濃度がこのように増加すると、チャネル移動度の低下やpn接合逆方向リーク電流の増加などの問題が生じる。素子の微細化に伴う上記二つの課題のうち、特に、pn接合逆方向リーク電流の増加は極めて深刻である。これは、チャネル領域の不純物濃度が概ね1018cm−3以上になると、pn接合のゼロバイアス状態における空乏層幅が急激に減少し、1V程度の低電源電圧動作においても逆方向リーク電流が著しく増加して、集積回路システム全体の待機時消費電力が急増してしまうためである。
【0003】
特許文献1には、SOI基板のSi層にpn接合が存在せず、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域のいずれもが同導電型のシングルゲート型CMOSが開示されている。ここで、ゲート絶縁膜として高誘電率ゲート絶縁膜が用いられている。該CMOSは、蓄積状態において動作させることを特徴としており、反転状態で動作する通常の素子と比べて、チャネルが基板表面から数nm離れたところに形成されるため、ゲート絶縁膜中に存在する固定電荷による移動度の低下が少なくできるとされている。
【0004】
また、特許文献2や非特許文献1には、p型のチャネル領域の両側に隣接するそれぞれ高不純物密度のn型ドレイン領域とn型ソース領域と、チャネル領域を挟んで互いに対向する第1のゲート電極と第2のゲート電極とを有するダブルゲート型MOSFETが開示されている。ダブルゲート構造とすることにより、従来のチャネル領域をソース領域およびドレイン領域と反対導電型としたトランジスタにおける短チャネル効果が抑制できることが期待されている。また、チャネルが2つ形成されるため、ドレイン電流を大きくすることも期待されている。
【特許文献1】特開2004−247641号公報
【特許文献2】特開平9−167839号公報
【非特許文献1】Y. Hayashi et al., Solid-State Electronics, 27, 8/9, p.827 (1985)
【非特許文献2】F. Balestra et al. IEEE Electron Device Letters, vol. EDL-8, No.9, p. 410 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域をすべて同導電型のたとえばn型としたトランジスタは、「n型抵抗」の上面にゲート酸化膜を介してゲート電極を設けただけの構造になる。そのため、図29(a)に示すように、ソース・ドレイン間、およびドレイン(D)−基板(substrate)間が常に導通状態になってしまう。ドレイン(D)−基板(substrate)間の電流経路は、図29(b)に示すように、埋め込み酸化膜(BOX:buried oxide)層を有するSOI (silicon-on-insulator)基板を用いることにより遮断できる。しかし、SOI基板を用いただけでは、ソース−ドレイン間の横方向電流経路を遮断することはできない。ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域を同導電型としたトランジスタを機能させるためには、この電流経路を遮断しなければならない。このようなソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域を同導電型としたトランジスタは、チャネル領域をソース領域およびドレイン領域と反対導電型とした従来のトランジスタとは全く違う原理で動作しており、良好なスイッチング動作を実現するためには、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断する仕組みを新たに導入することが求められる。
【0006】
特許文献1に記載のトランジスタにおいて、チャネル部を完全に空乏化することにより素子をオフ状態にすると記載されている。しかし、本発明者の検討により、特許文献1に記載の構成では、1V程度の低電源電圧動作を想定した場合、オフ時のリーク電流が大きく、実用的な観点から問題があることが明らかになった。
【0007】
また、特許文献2に記載のダブルゲート型NMOSは、通常のNMOSトランジスタと同様に、p型のチャネル領域を有し、かつ、パンチスルーを抑制するために、ソース・ドレインのpn接合位置近傍に選択的にp型不純物元素を付加する構造になっている。その結果、このダブルゲート型MOSFETでは、チャネル領域不純物濃度の増加に起因するpn接合リーク電流の急増という深刻な問題を解決することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、図29(b)に示したように、SOI基板を用いるとともにドレイン領域、ソース領域およびチャネル領域を同導電型としたシングルゲート型SOIトランジスタにおいて、オフ時のリーク電流が大きくなってしまう原因をデバイスシミュレータを用いて種々検討した。その結果、SOI層とBOX層との界面にリークパスが形成されていることを見出した。これは、ドレイン電圧の影響によってSOI層(BOX層上のSi層)と BOX層との界面の電位が上昇してしまうためである。つまり、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断するためには、チャネル領域の裏面界面(back interface(基板側のBOX/SOI層界面))の表面電位を、表面界面(front interface(表面側のゲート絶縁膜/SOI層界面))と同程度のレベルまで低下させる必要がある。
【0009】
ドレイン領域、ソース領域およびチャネル領域を同導電型としたSOI型トランジスタにおいて、ソース、ゲート電極および基板の電位を0Vに固定した状態で、ドレインにたとえば1Vの電圧を印加すると、表面界面と裏面界面の電位が充分低下していない場合には、ドレインからソースに向かって電流が流れる。従って、この電流を遮断するためには、表面界面、裏面界面、及びSOI層の電位を低下させることによって、SOI層内のキャリアー密度を充分低下させなければならない。チャネル領域の表面界面の表面電位は、SOI層とゲート電極間の仕事関数差の増加とともに低下する。また、チャネル領域の裏面界面の表面電位は、SOI層と基板間の仕事関数差の増加とともに低下する。また、各表面電位は、それぞれ、ゲート絶縁膜膜厚とBOX膜厚の減少とともに低下する。したがって、SOI層のn型不純物濃度が一定の場合、SOI層の両界面電位を低下させるためには、ゲート電極および基板の仕事関数を高めるとともに、ゲート絶縁膜膜厚とBOX膜厚を薄くする方法が効果的である。
【0010】
本発明によれば、
シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、
前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を含み、
前記チャネル領域の下方にドープトシリコンまたは金属からなる導電層が前記シリコン層の膜厚よりも狭い間隔で設けられ、前記チャネル領域と前記導電層との間に前記絶縁層が設けられた半導体装置が提供される。
【0011】
このような構成により、導電層の仕事関数により、シリコン層のチャネル領域の裏面側の表面電位も低下することができ、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断することができる。
【0012】
ここで、シリコン層は、単結晶または多結晶からなる。また、絶縁膜の膜厚は、シリコン酸化膜換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)とすることができる。
【0013】
なお、導電層は、SOI基板において、シリコン基板上に設けられた構成とすることができる。また、導電層としてシリコン基板を用いることもできる。ソース・ドレインおよびチャネル領域を第1導電型で構成した場合、導電層は、シリコン材料により構成され、前記第1導電型と反対の第2導電型の不純物を含むドープトシリコン、Si−Ge、ポリサイド、またはMo、W等の高融点金属等により構成することができる。また、導電層は、ゲート電極と同じ材料により構成することもできる。
【0014】
本発明の半導体装置において、前記導電層は、電圧印加可能に構成することができる。導電層は、ゲート電極と電気的に接続されてゲート電極と同電圧が印加される構成とすることもでき、ゲート電極と電気的に接続されず、独立に制御される構成とすることもできる。
【0015】
シリコン層の裏面側に設けられた導電層にも電圧印加可能な構成とすることにより、トランジスタのオン時にシリコン層の表面側と裏面側から電圧を印加することができ、シリコン層の両表面の電位を上昇させることができ、オン電流を増大させることができる。
【0016】
本発明によれば、
シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成された第1のゲート絶縁膜および前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極と、
前記SOI基板内に、前記チャネル領域を挟んで前記第1のゲート電極と対向して設けられた第2のゲート電極および前記チャネル領域と前記第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
を含む半導体装置が提供される。
【0017】
ここで、第1のゲート絶縁膜および第2のゲート絶縁膜は、それぞれ、シリコン層に接して設けた構成とすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、トランジスタのオフ時には第1のゲート電極および第2のゲート電極の仕事関数の影響によりリーク電流を低減することができるとともに、オン時にシリコン層の表面側と裏面側から電圧を印加することができ、オン状態における電流駆動能力を飛躍的に向上することができる。
【0019】
本発明のMOSトランジスタは、チャネル領域の不純物濃度の増加に起因するpn接合逆方向リーク電流の急増という問題を解決するために、通常のMOSトランジスタからソース・ドレインpn接合を排除した第1導電型半導体薄膜だけで構成されており、また、パンチスルーによるオフリークの急増を抑制するために、前記半導体薄膜のチャネル領域の上下と側面を覆うゲート絶縁膜とゲート電極で構成される。
【0020】
本発明によれば、
シリコン基板上に第1の絶縁層、第1の導電層、第2の絶縁層、当該第2の絶縁層よりも膜厚が厚い第1導電型のシリコン層および当該シリコン層よりも膜厚が薄い第3の絶縁層がこの順で形成された積層構造上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記シリコン層の前記ゲート電極が形成された領域下以外の領域に、前記第1導電型の不純物を導入して、前記第1導電型のソース領域およびドレイン領域を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ソース、ドレインおよびチャネルが同導電型で構成されたトランジスタにおいて、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
半導体装置100は、半導体基板102と、半導体基板102上に形成された絶縁層105と、絶縁層105上に形成されたSOI層(シリコン層)106と、SOI層106上に形成された第1のゲート電極114と、絶縁層105中に形成された導電層108とを含む。ここで、導電層108は、第2のゲート電極108aとして機能するように構成することができる。絶縁層105とSOI層106とによりSOI基板が構成される。
【0024】
SOI層106は、ドレイン領域106aと、ソース領域106bと、ドレイン領域106aとソース領域106bとの間に設けられたチャネル領域106cとを含む。本実施の形態において、ドレイン領域106a、ソース領域106bおよびチャネル領域106cはいずれも同じ第1導電型を有する。ここで、第1導電型はn型である。チャネル領域106cはドレイン領域106aおよびソース領域106bに接して設けられた構成とすることができる。
【0025】
半導体装置100は、SOI層106のチャネル領域106cと導電層108との間に設けられたBOX層110、チャネル領域106cと第1のゲート電極114との間に設けられたゲート絶縁膜112、第1のゲート電極114の側壁に設けられた絶縁層116、ならびにドレイン領域106aおよびソース領域106b上に設けられた第1導電型のエピタキシャル層166をさらに含む。エピタキシャル層166を設けることにより、ソース・ドレインの寄生抵抗を低減することができる。
【0026】
本実施の形態におけるトランジスタのスイッチング動作を良好にするためには、トランジスタのオフ時に、チャネル領域106cの表面界面と裏面界面の表面電位を低下させるとともに、SOI層106中央部の電位も低下させる必要がある。SOI層106の膜厚、ゲート絶縁膜112の膜厚、BOX層110の膜厚、チャネル領域106cの不純物濃度、第一のゲート電極114および第二のゲート電極108aの仕事関数等を適切に設定することにより、ドレイン領域106aおよびソース領域106b間の導通を良好に遮断することができる。
【0027】
本実施の形態において、BOX層110およびゲート絶縁膜112の膜厚は、SOI層106の膜厚よりも薄くなるように構成することができる。BOX層110の膜厚は、たとえば10nm以下とすることができる。また、ゲート絶縁膜112の膜厚は、たとえば10nm以下とすることができる。
【0028】
本実施の形態において、半導体基板102は、第1導電型とは反対の第2導電型とすることができる。ここで、第2導電型はp型である。
【0029】
第1のゲート電極114および導電層108は、それぞれ、少なくともゲート絶縁膜112およびBOX層110との界面近傍における仕事関数が概ね4.5eV以上となるように構成することができる。本実施の形態において、導電層108および第1のゲート電極114は、SiやSi−Ge等のシリコン系材料、またはWやMo等の高融点金属により構成することができる。シリコン系材料の場合、導電層108および第1のゲート電極114は、第1導電型とは反対の第2導電型不純物を含むドープトシリコンとすることができる。
【0030】
第1のゲート電極114および導電層108をドープトシリコンにより構成した場合、ドープトシリコン中の不純物濃度を調整することにより、第1のゲート電極114および導電層108の仕事関数を調整することができる。第1のゲート電極114および導電層108のp型不純物濃度は、たとえば1×1020cm−3以上とすることができる。これにより、第1のゲート電極114および導電層108の仕事関数を増加させることができ、SOI層106との仕事関数差を増加させて各表面電位を低下させることができる。そのため、ソース−ドレイン間の導通を良好に遮断することができる。
【0031】
また、チャネル領域106cの不純物濃度を低減すれば、第1のゲート電極114および導電層108のp型不純物濃度は、たとえば1×1020cm−3より低くとすることもできる。
【0032】
また、GIDL(Gate Induced Drain Leakage)を低減するという観点からは、第1のゲート電極114および導電層108のp型不純物濃度は、たとえば3×1019cm−3以下とすることもできる。第1のゲート電極114および導電層108のp型不純物濃度を5×1017cm−3〜5×1018cm−3程度に抑えた場合でも、SOI層106の不純物濃度を調整することにより、SOI層106と第1のゲート電極114および導電層108との仕事関数差を制御することができる。
【0033】
なお、第1のゲート電極114と導電層108の仕事関数は、実質的に同じになるように構成することができる。また、BOX層110の膜厚およびゲート絶縁膜112の膜厚(EOT)は、実質的に同じ値に設定することができる。これにより、SOI層106の表面界面と裏面界面の表面電位を同じ値にすることができる。
【0034】
本実施の形態において、ドレイン領域106aおよびソース領域106bの不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。エピタキシャル層166は、ドレイン領域106aおよびソース領域106bと実質的に同じ不純物濃度を有するようにすることができる。チャネル領域106cの不純物濃度は、ドレイン領域106aやソース領域106bの不純物濃度よりも低くすることができる。チャネル領域106cの不純物濃度は、たとえば5×1018cm−3とすることができる。ただし、これらの最適値は、ゲート絶縁膜の膜厚など、他のパラメータにも依存する。
【0035】
次に、以上のように構成された半導体装置100の動作を説明する。
トランジスタをオフとする際には、第1のゲート電極114および導電層108には電圧を印加しない。この状態において、第1のゲート電極114および導電層108の仕事関数により、チャネル領域106cの表面界面および裏面界面の表面電位を低下させる。これにより、ドレイン領域106aとソース領域106bとの間の導通を良好に遮断することができる。
【0036】
トランジスタをオンとする際には、第1のゲート電極114および導電層108にそれぞれ所定の電圧を印加する。これにより、チャネル領域106cの電位が上昇し、表面界面と裏面界面に蓄積層が形成され、ドレイン領域106aおよびソース領域106b間が導通して電流が流れる。
【0037】
次に、半導体装置100の製造手順を説明する。図2から図4は、本実施の形態における半導体装置100の製造手順の一例を示す工程断面図である。
本実施の形態において、半導体装置100は、半導体基板102上に絶縁層105(第1の絶縁層)、導電層108(第1の導電層)、BOX層110(第2の絶縁層、絶縁層105の一部)、BOX層110よりも膜厚が厚いn型(第1導電型)のSOI層106(シリコン層)およびSOI層106よりも膜厚が薄いゲート絶縁膜112(第3の絶縁層)がこの順で形成された積層構造上に、第1のゲート電極114を形成する工程と、SOI層106の第1のゲート電極114が形成された領域下以外の領域に、n型の不純物を導入して、第1導電型のドレイン領域106aおよびソース106bを形成する工程と、を含む。以下、詳述する。
【0038】
まず、p型半導体基板102上に絶縁層104(たとえば膜厚約50〜300nm)およびポリシリコン層150(たとえば膜厚約100nm)を順次形成する(図2(a))。本実施の形態において、絶縁層104は、シリコン酸化(SiO)膜とすることができる。また、ポリシリコン層150は、p型(p)とすることができる。ポリシリコン層150の不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。
【0039】
つづいて、RIE(Reactive Ion Etching)により、ポリシリコン層150を所定形状にエッチングして第2のゲート電極108aを形成する(図2(b))。ここで、第2のゲート電極108aの横幅は、後に形成する第1のゲート電極114の横幅より広く形成することができる。このように第2のゲート電極108aの横幅を広く形成することにより、第1のゲート電極114と第2のゲート電極108aとの位置あわせを容易に行うことができる。他の例において、図1に示したように、第1のゲート電極114と第2のゲート電極108aとの幅は略等しい構成とすることもできる。
【0040】
次いで、絶縁層104および第2のゲート電極108a上に絶縁層152を形成する。絶縁層152は、HTO(High Temperature Oxide)膜により構成することができる。所望の厚さのHTO膜を堆積した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により、絶縁層152を平坦化して第2のゲート電極108aの上面を露出させる(図2(c))。絶縁層105は、絶縁層104および絶縁層152により構成される。
【0041】
つづいて、第2のゲート電極108aおよび絶縁層152上に絶縁層154(たとえば膜厚約1.5〜3nm)、シリコン層156(たとえば膜厚約5〜10nm)、絶縁層158(たとえば膜厚約1.5〜3nm)、ポリシリコン層160(たとえば膜厚約100nm)および絶縁層162(たとえば膜厚約10〜30nm)を順次形成する(図3(a))。絶縁層154、絶縁層158および絶縁層162は、HTO膜により構成することができる。シリコン層156は、n型とすることができる。シリコン層156の不純物濃度は、たとえば5×1018cm−3とすることができる。シリコン層156は、ポリシリコン(多結晶シリコン)とすることができる。また、ポリシリコン層160は、p型(p)とすることができる。ポリシリコン層160の不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。
【0042】
次いで、RIEにより、絶縁層162およびポリシリコン層160を所定形状にエッチングして第1のゲート電極114を形成する(図3(b))。
【0043】
その後、全面に絶縁層164を形成する。絶縁層164は、HTO膜により構成することができる。つづいて、絶縁層164をエッチングして第1のゲート電極114の側壁に設けられたサイドウォール(たとえば幅約10〜100nm)とする。このとき、第1のゲート電極114をマスクとして絶縁層158もエッチングされ、ゲート絶縁膜112が形成される。これにより、シリコン層156が露出される(図3(c))。
【0044】
次いで、シリコン層156の露出した部分上にエピタキシャル層166(たとえば膜厚約50nm)を形成する(図4(a))。エピタキシャル層166は、n型(n)とすることができる。エピタキシャル層166は、シリコン層156よりもn型不純物濃度が高いように構成される。エピタキシャル層166の不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。エピタキシャル層166は、シリコン層156よりも高濃度のn型エピタキシャル層を成膜して形成してもよく、また、不純物を含有しないエピタキシャル層を形成した後、当該エピタキシャル層にn型不純物のイオンを注入して高濃度のn型エピタキシャル層としてもよい。
【0045】
シリコン層156上にエピタキシャル層166を形成した後に熱処理を行うことにより、エピタキシャル層166中のn型不純物がシリコン層156中に拡散する。これにより、シリコン層156において、エピタキシャル層166と接している領域のn型不純物濃度が高くなる。これにより、シリコン層156にドレイン領域106aおよびソース領域106b、ならびにドレイン領域106aとソース領域106bとの間にチャネル領域106cが形成される。
【0046】
その後、全面に絶縁層を形成する。ここで、絶縁層はHTO膜により構成することができる。つづいて、絶縁層をエッチングしてサイドウォール168(たとえば幅約10nm)を形成する(図4(b))。このとき、第1のゲート電極114上に形成された絶縁層もエッチングして第1のゲート電極114上面とエピタキシャル層166の上面を露出させる。
【0047】
この後、サイドウォール168をマスクとして、エピタキシャル層166の露出した表面および第1のゲート電極114上面をシリサイド化してシリサイド層170およびシリサイド層171をそれぞれ形成する。つづいて、全面に絶縁層169を形成して第1のゲート電極114を埋め込む。絶縁層169はHTO膜により構成することができる。次いで、絶縁層169にシリサイド層170に達するビアホールを形成し、ビアホールを導電性材料で埋め込みコンタクト172を形成する(図4(c))。
【0048】
以上の処理により、半導体装置100が製造される。
【0049】
また、以上の工程において、高濃度イオン注入を行うことなくドレイン領域106aおよびソース領域106bを形成することができる。
【0050】
図5は、図2から図4を参照して説明した半導体装置100の製造手順の他の例を示す工程断面図である。ここでは、第2のゲート電極108a底面にもシリサイド層174が形成される点で、上述した構成と異なる。
【0051】
まず、半導体基板102上に、絶縁層104を形成する。その後、絶縁層104上に金属層180を形成する。金属層180は、たとえばCo、Ni等により構成することができる。つづいて、金属層180上にポリシリコン層150を形成する。次いで、熱処理により、金属層180をシリサイド化する(図5(a))。シリサイド化された金属層180はCoSixやNiSixとすることができる。
【0052】
つづいて、RIEによりポリシリコン層150および金属層180を所定形状にエッチングして第2のゲート電極108aおよびシリサイド層174を形成する(図5(b))。
【0053】
この後、図2(c)〜図4(c)を参照して説明したのと同様の手順で半導体装置100を製造する。これにより、図5(c)に示した構成の半導体装置100が得られる。このように、第2のゲート電極108aの下面にもシリサイド層174を設けることにより、第2のゲート電極108aを低抵抗化することができる。
【0054】
図6から図8は、本実施の形態における半導体装置100の製造手順の他の例を示す工程断面図である。
【0055】
まず、p型半導体基板102上に絶縁層104(たとえば膜厚約100nm)、第1のSOI層200(たとえば膜厚約100nm)、絶縁層202(たとえば膜厚約10nm)、第2のSOI層204(たとえば膜厚約20nm)および絶縁層206(たとえば膜厚約2nm)が形成された基板を準備する。p型半導体基板102上の絶縁層104、第1のSOI層200、絶縁層202、および第2のSOI層204は、2層SIMOX(Separation by Implanted Oxygen)技術を用いて形成することができる(非特許文献2)。第1のSOI層200は、p型とすることができる。第1のSOI層200の不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。第2のSOI層204は、n型とすることができる。第1のSOI層200および第2のSOI層204は、単結晶層とすることができる。第2のSOI層204の不純物濃度は、イオン注入を用いて、たとえば5×1018cm−3とすることができる。絶縁層202および絶縁層206は、シリコン酸化膜とすることができる。つづいて、絶縁層206上にポリシリコン層208(たとえば膜厚約30nm)を形成する。ポリシリコン層208は、p型(p)とすることができる。ポリシリコン層208の不純物濃度は、イオン注入を用いて、たとえば5×1020cm−3とすることができる。
【0056】
つづいて、RIEにより、第1のSOI層200、絶縁層202、第2のSOI層204、絶縁層206およびポリシリコン層208を所定形状にエッチングする。これにより、第2のゲート電極108aが形成される(図6(b))。
【0057】
次いで、絶縁層104およびポリシリコン層208上に絶縁層210を形成する。絶縁層210は、HTO膜により構成することができる。その後、CMPにより、 絶縁層210を平坦化してポリシリコン層208の上面を露出させる(図6(c))。絶縁層105は、絶縁層104および絶縁層210により構成される。
【0058】
その後、絶縁層210およびポリシリコン層208上の全面にポリシリコン層212を形成する。ポリシリコン層212は、p型(p)とすることができる。絶縁層206上において、ポリシリコン層212(ポリシリコン層208も含む)の膜厚は、たとえば約80〜100nmとすることができる。つづいて、ポリシリコン層212上に絶縁層214(たとえば膜厚約30nm)を形成する(図7(a))。絶縁層214は、HTO膜により構成することができる。
【0059】
次いで、RIEにより、絶縁層214およびポリシリコン層212を所定形状にエッチングして第1のゲート電極114を形成する(図7(b))。
【0060】
その後、全面に絶縁層216を形成する。絶縁層216は、HTO膜により構成することができる。つづいて、絶縁層216をエッチングして第1のゲート電極114の側壁に設けられたサイドウォール(たとえば幅約10〜100nm)とする。このとき、第1のゲート電極114をマスクとして絶縁層206もエッチングされ、ゲート絶縁膜112が形成される。これにより、第2のSOI層204の上面が露出する(図7(c))。
【0061】
次いで、第2のSOI層204の露出した部分上にエピタキシャル層166(たとえば膜厚約50〜70nm)を形成する(図8(a))。エピタキシャル層166は、n型(n)とすることができる。エピタキシャル層166は、第2のSOI層204よりもn型不純物濃度が高いように構成される。エピタキシャル層166の不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。
【0062】
第2のSOI層204上にエピタキシャル層166を形成した後に熱処理を行うことにより、エピタキシャル層166中のn型不純物が第2のSOI層204中に拡散する。これにより、第2のSOI層204において、エピタキシャル層166と接している領域のn型不純物濃度が高くなる。これにより、第2のSOI層204にドレイン領域106aおよびソース領域106b、ならびにチャネル領域106cが形成される。
【0063】
その後、全面に絶縁層を形成する。ここで、絶縁層はHTO膜により構成することができる。つづいて、絶縁層をエッチングしてサイドウォール220(たとえば幅約20〜30nm)を形成する(図8(b))。このとき、第1のゲート電極114上に形成された絶縁層もエッチングして第1のゲート電極114上面とエピタキシャル層166上面とを露出させる。
【0064】
この後、サイドウォール220をマスクとして、エピタキシャル層166の露出した表面および第1のゲート電極114上面をシリサイド化してそれぞれにシリサイド層(不図示)をそれぞれ形成する。つづいて、全面に絶縁層222を形成して第1のゲート電極114を埋め込む。絶縁層222はHTO膜により構成することができる。次いで、絶縁層222にエピタキシャル層166上のシリサイド層に達するビアホールを形成し、ビアホールを導電性材料で埋め込みコンタクト224を形成する(図8(c))。
【0065】
なお、以上の説明において、図3(c)で絶縁層158をエッチング除去して、その後にシリコン層156の露出した面上にエピタキシャル層166を形成することにより、シリコン層156に不純物を導入する例を示した。同様に、図7(c)で絶縁層206をエッチング除去して、その後に第2のSOI層204の露出した面上にエピタキシャル層166を形成することにより、第2のSOI層204に不純物を導入する例を示した。しかし、不純物はたとえばイオン注入等により行うこともできる。この場合、絶縁層158や絶縁層206を選択的にエッチング除去する工程は省略することができる。
また、他の例において、半導体装置100は、エピタキシャル層166を有しない構成とすることもできる。この場合、SOI層106をたとえば厚く(たとえば60〜100nm程度)形成しておき、チャネル領域106cのSOI層106をたとえば選択的に酸化、除去することにより、薄くした構成とすることもできる。
【0066】
図9は、半導体装置100の構成の一例を示す模式図である。
図9(a)は、SOI層106、第1のゲート電極114および導電層108の構成を示す模式図である。図9(b)は、SOI層106の構成を示す模式図である。ここで、導電層108および第1のゲート電極114は、ゲート電極120により構成することができる。ゲート電極120は、SOI層106のチャネル領域106cの上面、下面および側面全面を覆った構成とすることができる。なお、ゲート電極120は、同じ材料により一体に構成されてもよく、複数の層の積層構造により構成することもできる。たとえば、ゲート電極120は、単結晶シリコン層および多結晶シリコン層の積層構造により構成することもできる。なお、SOI層106は、ゲート絶縁膜(110、112)を介してゲート電極120に覆われる。
【0067】
図10は、本発明の実施の形態における半導体装置100の他の例を示す図である。
この例では、トランジスタのオン時にも、導電層108には電圧が印加されない。また、導電層108は、SOI層106の下方全面に形成されている。BOX層110の膜厚をSOI層106の膜厚よりも薄く形成することによって、このような構成においても、トランジスタのオフ時には第1のゲート電極114および導電層108の仕事関数の影響によりオフ時のリーク電流を低減することができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態における半導体装置100によれば、第1のゲート電極114および導電層108の仕事関数の影響によりオフ時のリーク電流を低減することができる。また、オン時に第1のゲート電極114および導電層108(第2のゲート電極108a)に適宜電圧を印加することにより、SOI層106のチャネル領域106cの両表面の電位を上昇させることができ、オン電流を増大させることができる。また、本実施の形態における半導体装置100によれば、通常のMOSトランジスタにおける接合リークを完全に抑制することができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
図11は、本実施の形態における半導体装置100の製造手順の一例を示す工程断面図である。本実施の形態において、チャネル領域106cとドレイン領域106aおよびソース領域106bとの間に、チャネル領域106cよりもn型不純物濃度が低い緩衝領域が形成された点で、第1の実施の形態で説明した半導体装置100の構成と異なる。
【0070】
本発明者の検討により、ドレイン領域、ソース領域およびチャネル領域を同導電型としたトランジスタにおいて、条件によっては、BTBT(Band To Band Tunneling)現象で発生したホールがSOI層106内部に蓄積して、SOI層106の電位が上昇し、オフリーク電流が急増してしまう場合があることが見出された。
【0071】
チャネル領域106cとドレイン領域106aおよびソース領域106bとの間に、チャネル領域106cよりもn型不純物濃度が低い緩衝領域を形成することにより、BTBT現象によるホール生成量を減少させ、オフリーク電流をさらに減少することができる。
【0072】
次に、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を説明する。
まず、第1の実施の形態において図2から図4(a)を参照して説明したのと同様にして、図4(a)に示した構造を得る。つづいて、絶縁層164を選択的にエッチング除去する。これにより、図11(a)に示すように、チャネル領域106cの一部が露出される。この状態で、p型不純物(たとえばボロン)をイオン注入する。これにより、チャネル領域106cとドレイン領域106aおよびソース領域106bとの間にそれぞれ緩衝領域106dおよび緩衝領域106eが形成される。
【0073】
ここで、ドレイン領域106aおよびソース領域106bのn型不純物濃度は、たとえば5×1020cm−3とすることができる。また、チャネル領域106cのn型不純物濃度の最適値はSOI層106の厚さ、チャネル領域106cのチャネル長、またはゲート酸化膜の厚さ等に依存するが、たとえば概ね5×1018〜5×1019cm−3の範囲に設定することができる。緩衝領域106dおよび緩衝領域106eのn型不純物濃度は、たとえば1×1018cm−3またはこれより低い濃度とすることができる。
【0074】
また、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの幅は、たとえば100Å以下とすることができる。これにより、ソース・ドレイン間の抵抗を低く保ってオン電流を低減させることなく、BTBT現象を効果的に抑制してオフリーク電流を減少させることができる。
【0075】
以上の構成の半導体装置100は、第1のゲート電極114形成後、選択エピタキシャル成長工程の前に、第1のゲート電極114をマスクとして、半導体基板102全面にボロンを注入することにより形成することもできる。
【0076】
図12は、本実施の形態における半導体装置100を示す断面図である。
ここで、半導体装置100は、チャネル領域106cとドレイン領域106aおよびソース領域106bとの間にそれぞれ低濃度n型不純物領域である緩衝領域106dおよび緩衝領域106eが設けられている。
【0077】
図12(a)に示した構成において、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの幅は、それぞれ、たとえば10〜100nm程度とすることができる。図12(b)に示した構成において、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの幅は、それぞれ、たとえば10nmより狭くすることができる。図12(a)に示したように、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの幅を比較的広く形成した場合、一回の絶縁膜堆積と一回のエッチバックで側壁を形成することができる。また、図12(b)に示したように、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの幅を狭くした場合、これらの横幅を必要最小限に設定できるため、寄生抵を小さくすることができる。
【0078】
緩衝領域106dおよび緩衝領域106eは、半導体基板102上全面に緩衝領域106dおよび緩衝領域106e形成領域に開口部を有するレジストを形成し、p型不純物(ボロン等)を注入することにより形成することができる。
【0079】
図13は、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eに注入するボロンの濃度を変化させた際の、ゲート電圧Vgとドレイン領域106aとソース領域106bとの間に流れる電流Iとの関係の一例を示す図である。ここで、ゲート電圧Vgは、図11に示した第一ゲート電極114と第二ゲート電極108aに同時に印加した電圧値である。
【0080】
図11に示したように、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eにボロンを注入して、ゲート電極端部近傍にn型不純物濃度の低い領域を形成することにより、オフリークを低減することができる。BOX層110およびゲート絶縁膜112の膜厚、ドレイン電圧およびゲート電圧が一定の場合、ドレイン側のゲート電極端部近傍で生じるBTBT現象によって生成されるホールの数は、ゲート酸化膜厚、およびSOI層106のゲート電極端部近傍のn型不純物濃度と電位に依存する。そのため、チャネル領域106cとソース領域106bとの間のSOI層106のn型不純物濃度は、上記構造パラメータと動作電源電圧を考慮して適切に設定しなければならない。
【0081】
一方、オン時のオン電流を高くするためには、SOI層106中の不純物濃度を高くしてSOI層106を低抵抗化することが好ましい。緩衝領域106dおよび緩衝領域106eの不純物濃度および幅は、BTBT現象によるホール生成量の減少の効果およびSOI層106の抵抗を考慮して適宜決定することができる。
【0082】
図14は、本実施の形態における半導体装置100の構成の他の例を示す断面図である。
ここで、p型不純物領域(緩衝領域)190は、SOI層106とBOX層110との界面近傍、およびSOI層106とゲート絶縁膜112との界面近傍だけに選択的に形成される。また、チャネル領域106cは、中央部において、ドレイン領域106aおよびソース領域106bと接して設けられる。このような構成とすることにより、BTBT現象によるホール生成とソース・ドレイン間寄生抵抗の増加を、図11から図13に示した例よりも、さらに効果的に抑制することができる。p型不純物領域190は、上述したn型不純物とp型不純物のイオン注入条件、および熱処理条件を適切に設定することによって形成することができる。
【0083】
以上のように、本実施の形態における半導体装置100によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加えて、BTBT現象によって生成されるホールの数を低減させてオフリーク電流をさらに効果的に低減することができる。
【0084】
なお、図11を参照して説明したチャネル領域106cと同導電型の緩衝領域106dおよび緩衝領域106eを含む構成の半導体装置100においても、緩衝領域106dおよび緩衝領域106eを図14に示したp型不純物領域190のようなパターンに形成することもできる。
【0085】
(第3の実施の形態)
本実施の形態において、BOX層110およびゲート絶縁膜112の、第1のゲート電極114端部近傍と第2のゲート電極108a端部近傍の膜厚がチャネル領域106cの他の領域の膜厚よりも厚い点で、第1および第2の実施の形態で説明した半導体装置100と異なる。
【0086】
図15(a)に示すように、チャネル領域106cとドレイン領域106aとの界面近傍、およびチャネル領域106cとソース領域106bとの界面近傍でBTBT現象によるホールが生成しやすい。ゲート電極とドレイン近傍の電位差が同じ場合、ゲート絶縁膜の厚さが薄いほどn型SOI層内での電位変化大きくなってSOI層内でのエネルギーバンドの曲がりが急激になるため、ゲート絶縁膜の膜厚が薄い方が、このようなホールが発生しやすくなる。
【0087】
図15(b)は、本実施の形態における半導体装置100の構成を示す断面図である。このように、チャネル領域106cとドレイン領域106aとの界面近傍、およびチャネル領域106cとソース領域106bとの界面近傍のBOX層110aおよびゲート絶縁膜112aの膜厚を他の領域(チャネル領域106cの中央部)よりも厚くすることにより、BTBT現象によるホールの生成を低減することができる。また、チャネル領域106cの中央部の絶縁膜の膜厚を薄くすることにより、オフ時にチャネル領域106cの両表面の電位を低下することができ、オフリーク電流を低減することができる。
【0088】
なお、本実施の形態における半導体装置100の構成と、第2の実施の形態で説明した緩衝領域を有する構成とを組み合わせた構成とすることもできる。
【実施例1】
【0089】
以下、本発明の実施の形態における半導体装置100のシミュレーション結果の例を説明する。
【0090】
(例1)
図16から図18は、図1に示した構成の半導体装置100のシミュレーション結果の例を示す図である。第1のゲート電極114のゲート長LGF=50nm、第2のゲート電極108aのゲート長LGB=50nm、ゲート幅W=300nm、SOI層106の膜厚TSOI=10nm、BOX層110の膜厚tOX=1.6nm、ゲート絶縁膜112の膜厚1.6nm、第1のゲート電極114および第2のゲート電極108aのp型不純物(B)濃度=5×1019cm−3、ドレイン領域106aおよびソース領域106bの濃度のn型不純物(As)濃度=5×1020cm−3とした。
【0091】
図16(a)は、半導体装置100のチャネル領域106cを含む領域における深さ(Depth)と不純物の濃度との関係を示す図である。図中に示したfront gateとback gateは、それぞれ第一ゲート電極114、および第2ゲート電極108aに対応する。ここで、第2のゲート電極108a、チャネル領域106c、および第1のゲート電極114におけるAs濃度およびB濃度を示す。チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度は、2.5×1019cm−3、3.0×1019cm−3、3.5×1019cm−3、4.0×1019cm−3、4.5×1019cm−3、5.0×1019cm−3とした。
【0092】
図16(b)は、第1のゲート電極114および第2のゲート電極108aに印加する電圧(VGF=VGB)とドレイン領域106aとソース領域106bとの間に流れる電流IDSとの関係を示す図である。ここで、ドレイン領域106aとソース領域106bとの間には電圧VDS=1.0Vを印加した。
【0093】
図16(b)に示すように、チャネル領域106c中のn型不純物濃度が低くなるほど、オフ電流(VGF=VGB=0のときの電流IDS)が低下した。チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度が3.0×1019cm−3以下の場合、VGF=VGB=0Vにおけるオフ電流がIDS(A)=1×10−11以下になっている。SOI層のn型不純物濃度をさらに低減するとオフリークは急激に減少するが、同時に、閾値電圧が上昇して、VGF=VGB=1.0Vにおけるオン電流が低下してしまう。そこで、以下では、チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=3.0×1019cm−3の場合についてシミュレーションを行った。
【0094】
図17は、SOI層106のチャネル方向(またはソース・ドレイン方向)の電位分布と電子濃度分布を示す図である。ここで、図16を参照して説明したのと同様の条件で、チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=3.0×1019cm−3とした。第1のゲート電極114に印加する電圧VGFおよび第2のゲート電極108aに印加する電圧VGB(VGF=VGB)を変化させてトランジスタの内部状態の変化を調べた。VDS=1.0Vとした。VGF=VGBを0V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0V、2.5Vとした。
【0095】
図17(a)は、半導体装置100を部分的に示す断面図である。図17(b)は、図17(a)に示した半導体装置100のSOI層106の横方向xの位置とSOI層106の中央部のポテンシャル(Potential)(V)との関係を示す図である。電圧VGB(VGF=VGB)が0Vのときは、チャネル領域106cの電位が井戸状に落ち込んで電子に対する電位障壁を形成している。一方、電圧VGB(VGF=VGB)が高くなるにつれて、チャネル領域106cの電位が上昇する。
【0096】
図17(c)は、図17(a)に示した半導体装置100のSOI層106の横方向xの位置とSOI層106の中央部の電子密度(Electron Density)(cm−3)との関係を示す図である。電圧VGB(VGF=VGB)が0Vのときは、チャネル領域106cの電子密度が井戸状に落ち込んで充分に空乏化している。一方、電圧VGB(VGF=VGB)が高くなるにつれて、チャネル領域106cの電子密度が指数関数的に上昇している。
【0097】
図18は、SOI層106の深さ方向の電位分布と電子濃度分布を示す図である。動作バイアス条件は、図17と同じである。
【0098】
図18(a)は、半導体装置100を部分的に示す断面図である。図18(b)は、図18(a)に示した半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部のポテンシャル(Potential)(V)との関係を示す図である。電圧VGB(VGF=VGB)が0Vのときは、チャネル領域106cの電位が第2のゲート電極108aや第1のゲート電極114よりも高くなっている。デバイスシミュレータの電位は、真性フェルミポテンシャルを基準にして定義されているため、Siのバンドギャップを1.1eVとすると、接地しているn領域とp領域の電位はそれぞれ+0.55Vおよび−0.55Vとなる。つまり、接地しているnソース領域の電位は、シミュレーション結果を示す図中では0Vではなく、+0.55Vとなる。従って、VGF=VGB=0Vの場合、SOI層106中央部の電位は表面界面や裏面界面の電位より高くなっているが、ソース領域106bの電位よりは約0.4V(≒0.55V−0.15V)も低い値になっており、ソースからドレインに向かって走行しようとする電子に対しては充分高い電位障壁を形成していることがわかる。一方、同じくVGF=VGB=0Vの場合、表面界面と裏面界面の電位は、pポリSi電極(接地しているので、その電位は−0.55V)とn型SOI層106との仕事関数差によって引き下げられており、SOI層106中央部の電位は、その影響を受けて低下している。一方、電圧VGB(VGF=VGB)が高くなるにつれて、チャネル領域106cの電位は、第2のゲート電極108aおよび第1のゲート電極114の電位変化の影響を受けて上昇している。
【0099】
図18(c)は、図18(a)に示した半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部の電子密度(Electron Density)(cm−3)との関係を示す図である。電圧VGB(VGF=VGB)が0Vのときは、チャネル領域106cの第1のゲート電極114および第2のゲート電極108aとの界面付近の電子密度が深さ方向中央部の電子密度よりも低くなっているが、上で説明したように、pポリSiゲート電極の影響によって、ソース領域106bからチャネル領域106cへの電子の流入が効果的に抑制された結果を示している。一方、電圧VGB(VGF=VGB)が高くなるにつれて、SOI層106の電子濃度は指数間的に増加している。SOI層106全体の電位が+0.55Vに到達すると、ソース領域106bとチャネル領域106cとの間の電子に対する電位障壁が無くなるため、大量の電子がソース領域106bからチャネル領域106cへ流入する。電子濃度がSOI層106に与えたn型不純物元素の濃度=3×1019cm−3に達すると、印加したゲート電圧によって、表面界面と裏面界面に電子の蓄積層が形成される。
【0100】
以上のように、図1に示した構成の半導体装置100において、電圧VGB(VGF=VGB)を切り替えることにより、チャネル領域106cの電位および電子密度を制御することができ、良好なスイッチング動作が実現できることが示された。
【0101】
(例2)
図19および図20は、図10に示した構成の半導体装置100のシミュレーション結果を示す図である。
図19は、第1のゲート電極114に印加する電圧VGSとドレイン領域106aとソース領域106bとの間に流れる電流IDSとの関係を示す図である。
【0102】
第1のゲート電極114のゲート長LGF=50nm、ゲート幅W=300nm、SOI層106の膜厚TSOI=10nm、BOX層110の膜厚tOX=2.0nmとした。第1のゲート電極114のp型不純物(B)濃度=5×1020cm−3、ドレイン領域106aおよびソース領域106bの濃度のn型不純物(As)濃度=5×1020cm−3、チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=1×1019cm−3とした。この条件で、導電層108のp型不純物(B)濃度=5×1016cm−3、5×1017cm−3、5×1018cm−3、5×1019cm−3とした。電圧VDS=1.0V、半導体基板102に印加する電圧VSUB=0Vとした。
【0103】
図19に示すように、導電層108のp型不純物濃度が高くなるほど、オフ電流(VGS=0のときの電流IDS)が低下することが示された。導電層108のp型不純物(B)濃度=5.0×1018cm−3以上の場合、logIDS(A)=1e−11以下である。以下では、導電層108のp型不純物(B)濃度=5.0×1019cm−3の場合についてシミュレーションを行った。
【0104】
図20は、図10に示した半導体装置100のSOI層106の深さ方向の電位分布と電子濃度分布を示す図である。チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=2×1019cm−3とした以外は図19を参照して説明したのと同様の条件とした。VGSを0V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0V、2.5Vとした。
【0105】
図20(a)は、図10に示した半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部の電位(Potential)(V)との関係を示す図である。電圧VGSが0Vのときは、チャネル領域106cの第1のゲート電極114との界面付近の電位は、チャネル領域106cの深さ方向中央部の電位よりも低くなっている。(これは上述したp+ポリSiゲート電極による効果である。)一方、第1のゲート電極114に印加する電圧VGSが高くなるにつれて、チャネル領域106cの第1のゲート電極114との界面付近の電位は、チャネル領域106cの深さ方向中央部の電位よりも高くなっている。しかし、チャネル領域106cの導電層108との界面付近の電位は、チャネル領域106cの中央部の電位よりも低いままである。これは、接地されている導電層108による電位引き下げ効果による。
【0106】
図20(b)は、図10に示した半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部の電子密度(Electron Density)(cm−3)との関係を示す図である。電圧VGSが0Vのときは、チャネル領域106cの第1のゲート電極114との界面付近の電子密度がチャネル領域106cの深さ方向中央部の電子密度よりも低くなっている。一方、第1のゲート電極114に印加する電圧VGSが高くなるにつれて、チャネル領域106cの第1のゲート電極114との界面付近の電子密度は、深さ方向中央部の電子密度よりも高くなっている。しかし、チャネル領域106cの導電層108との界面付近の電子密度は、中央部の電子密度よりも低いままである。
【0107】
図21は、図16〜図18を参照して説明した例1と、図19および図20を参照して説明した例2の構成における閾値電圧Vth(V)とオン電流ION(V=1V)の関係を示す図である。上述したように、例2の図10に示した構成においても、導電層108のp型不純物(B)濃度を所定値以上とすることにより、トランジスタオフ時のドレイン領域106aおよびソース領域106b間の導通を遮断してオフリークを低減することができることが示された。しかし、トランジスタオン状態(V=1Vにおける)の電流が、例1の構成に比べて低くなっている。この原因は、V=1Vを印加しても、接地されたp型導電層108の影響を受けて低下した結果、電子密度が増加しなかったためである。
【0108】
(例3)
図22は、図10に示した構成の半導体装置100の他の例のシミュレーション結果を示す図である。ここで、SOI層106の膜厚TSOIが例2と異なる。第1のゲート電極114のゲート長LGF=50nm、ゲート幅W=300nm、SOI層106の膜厚TSOI=30nm、BOX層110の膜厚tOX=2.0nm、ゲート絶縁膜112の膜厚2.0nmとした。また、第1のゲート電極114のp型不純物(B)濃度=5×1019cm−3、ドレイン領域106aおよびソース領域106bのn型不純物(As)濃度=5×1020cm−3とした。
【0109】
図22(a)は、導電層108中のp型不純物濃度を変化させた際の半導体装置100のSOI層106の深さとSOI層106の中央部の電位(Potential)(V)との関係を示す図である。ここで、第1のゲート電極114に印加電圧VGS=0Vである。チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=1.0×1016cm−3、導電層108のp型不純物(B)濃度=5×1019cm−3、5×1018cm−3、5×1017cm−3、1×1017cm−3、5×1016cm−3とした。導電層108中のp型不純物濃度が高くなるにつれて、チャネル領域106cの導電層108との界面付近の電位が下がっている。
【0110】
図22(b)は、第1のゲート電極114に印加する電圧VGS(V)とオフ電流logIDS(A)との関係を示す図である。導電層108中のp型不純物濃度が高くなるにつれて、オフ電流が低下している。
【0111】
次に、導電層108中のp型不純物濃度=5×1019cm−3として、閾値を所望の値まで低下させることを目的としてチャネル領域106c中のn型不純物濃度を変化させた場合のシミュレーションを行った。図23は、チャネル領域106c中のn型不純物濃度を変化させた際の半導体装置100のSOI層106の深さとSOI層106の中央部の電位(Potential)(V)との関係を示す図である。ここで、第1のゲート電極114と導電層108は接地している。チャネル領域106cのn型不純物(As)濃度=1.0×1016cm−3、1.0×1017cm−3、1.0×1018cm−3、1.5×1018cm−3、2.0×1018cm−3とした。その他の条件は図22で説明したのと同様とした。チャネル領域106c中のn型不純物濃度が高くなるにつれて、チャネル領域106cの中央部の電位が上がっている。
【0112】
図23(b)は、第1のゲート電極114に印加する電圧VGS(V)と電流logIDS(A)との関係を示す図である。チャネル領域106c中のn型不純物濃度が高くなるにつれて、閾値が低下している。
【0113】
次に、導電層108中のp型不純物濃度=5×1019cm−3、チャネル領域106c中のn型不純物濃度=1.5×1018cm−3として第1のゲート電極114に印加する電圧VGSを変化させたシミュレーションを行った。図24に結果を示す。導電層108は接地している。第1のゲート電極114に印加する電圧VGSを高くすると、チャネル領域106cの第1のゲート電極114との界面付近の電位は上昇するが、導電層108との界面付近の電位は低下したままである。
【0114】
(例4)
図25は、図1に示した構成の半導体装置100の他の例のシミュレーション結果を示す図である。ここで、SOI層106の膜厚TSOIが例1と異なる。第1のゲート電極114のゲート長LGF=50nm、ゲート幅W=300nm、SOI層106の膜厚TSOI=30nm、BOX層110の膜厚tOX=2.0nm、ゲート絶縁膜112の膜厚2.0nmとした。また、第1のゲート電極114のp型不純物(B)濃度=5×1019cm−3、第2のゲート電極108a中のp型不純物濃度=1×1018cm−3、チャネル領域106c中のn型不純物濃度=1.0×1018cm−3、ドレイン領域106aおよびソース領域106bの濃度のn型不純物濃度=5×1020cm−3とした。第1のゲート電極114および第2のゲート電極108aに印加する電圧VGSを変化させて電位状態を調べた。VDS=1.0Vとした。VGSを0V、0.5V、1.0V、1.5V、2.0Vとした。
【0115】
図25(a)は、半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部のポテンシャル(V)との関係を示す図である。図25(b)は、半導体装置100のチャネル領域106cの深さとチャネル領域106cの中央部の電子密度(cm−3)との関係を示す図である。電圧VGSが高くなるにつれて、チャネル領域106cの第1のゲート電極114および第2のゲート電極108aとの界面付近の電位がチャネル領域106cの深さ方向中央部の電位よりも高くなっている。
【0116】
(例5)
図26は、本発明の実施の形態における半導体装置100の比較例の半導体装置1の構成を示す断面図である。半導体装置1は、p型半導体基板2と、半導体基板2上に形成された絶縁層5と、絶縁層5上に形成されたSOI層6と、SOI層6上に形成されたゲート電極14とを含む。SOI層6は、ドレイン領域6aと、ソース領域6bと、ドレイン領域6aとソース領域6bとの間に設けられたチャネル領域6cとを含む。ドレイン領域6a、ソース領域6bおよびチャネル領域6cはいずれも同じ第1導電型を有する。ここで、第1導電型はn型である。SOI層6は、半導体装置100のSOI層106と同様の構成を有する。
【0117】
半導体装置1は、SOI層6のチャネル領域6cとゲート電極14との間に設けられたゲート絶縁膜12、ゲート電極14の側壁に設けられた絶縁層16、ならびにドレイン領域6aおよびソース領域6b上に設けられた第1導電型のエピタキシャル層66をさらに含む。
【0118】
図27および図28は、図26に示した構成の半導体装置1のシミュレーション結果を示す図である。ゲート電極14のゲート長LGF=50nm、ゲート幅W=300nm、SOI層6の膜厚TSOI=30nm、ゲート絶縁膜12の膜厚2.0nm、BOX層(絶縁層5)の膜厚tOX=100nmとした。
【0119】
図27(a)は、半導体基板2中のp型不純物濃度を5×1016cm−3としてチャネル領域6c中のn型不純物濃度を変化させた際のドレイン領域6aとソース領域6bとの間に流れる電流(A)とゲート電極14に印加する電圧VGS(V)との関係を示す図である。p型半導体基板2は接地している。チャネル領域6cのn型不純物濃度=1×1018cm−3、1×1016cm−3、1×1014cm−3、1×1012cm−3、1.5×1010cm−3とした。
【0120】
チャネル領域6cのn型不純物濃度を1×1018cm−3から1×1016cm−3に低下させると、オフ電流(電圧VGS=0のときの電流)がIDS(A)=10−10程度まで低下したが、チャネル領域6cのn型不純物濃度を1×1016cm−3より低くしても、オフ電流はこれ以上低下しなかった。
【0121】
図27(b)は、チャネル領域6c中のn型不純物濃度を1×1016cm−3としてp型半導体基板2中のボロン濃度を変化させた際のドレイン領域6aとソース領域6bとの間に流れる電流IDS(A)とゲート電極14に印加する電圧VGS(V)との関係を示す図である。p型半導体基板2中のボロン濃度=5×1019cm−3、5×1016cm−3とした。半導体基板2中のボロン濃度を変化させても、オフ電流は10−10(A)程度以下には低下しなかった。
【0122】
図28は、図26に示した半導体装置1のSOI層6の深さ(μm)と電位(Potential)(V)との関係を示す図である。図28(a)は、図27(a)を参照して説明したのと同様の条件、図28(b)は、図27(b)を参照して説明したのと同様の条件である。
【0123】
例5に示したように、図26に示した半導体装置1においては、チャネル領域6c中の不純物濃度や半導体基板2中の不純物濃度を変化させても、オフリーク電流を所望値まで低減することができなかった。一方、例3に示したように、チャネル領域106cの裏面側に膜厚の薄いBOX層110を介して導電層108を設け、導電層108中の不純物濃度やチャネル領域106c中の不純物濃度を適宜設定することにより、オフリーク電流を低減することができた。両者の最も大きな違いは、SOI層下部の導電層との間の距離、および絶縁層の膜厚である。SOI層下部の導電層との間の距離が長く、絶縁層の厚さが100nm程度であると、ドレイン電圧による電気力線が絶縁層の中に浸透する。そのため、図28に示したように、チャネル領域中央部付近の裏面界面の表面電位が上昇してしまう。その結果、VGS=0Vにおける裏面界面の電位が0.2V程度まで上昇し、ソース領域の電子に対する電位障壁が低下し、オフリークが増加する。tOX=100nmの場合に、p型Si基板のボロン濃度を高くしても、SOI層との仕事関数差の効果が顕著に現れなかったのも、SOI層下部の導電層との間の距離、および絶縁層の膜厚絶縁層の厚さが原因である。
【0124】
一方、ゲート電極14に印加する電圧VGSを高くすると、チャネル領域6cのゲート電極14との界面付近の電位は上昇するが、半導体基板2との界面付近の電位は低下したままである。
【0125】
なお、図24に示したように、例3の構成においては、第1のゲート電極114に印加する電圧を高くしても、チャネル領域106cの裏面側の電位が低下したままだった。これによって、オン電流が低減してしまうと考えられる。一方、例4に示したように、チャネル領域106cの裏面側に、電圧印加可能な第2のゲート電極108aを設けることにより、リーク電流を低減することができるとともに、オン時にシリコン層の表面側と裏面側から電圧を印加することができ、オン電流を増大させることができる。
【0126】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0127】
以上の実施の形態において、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたトランジスタを例として説明したが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としたトランジスタとすることもできる。
【0128】
また、以上の実施の形態において、第1のゲート電極114および導電層108がドープトシリコンの場合を例として説明したが、これらは、Mo、W等の高融点金属、Si−Ge、またはポリサイド等により構成することもできる。
【0129】
また、本発明は、以下の形態も含むことができる。
(1)シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記チャネル領域と前記ソース領域との間、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間にそれぞれ設けられ、前記チャネル領域よりも低濃度の前記第1導電型の緩衝領域と、
を含む半導体装置。
【0130】
(2)シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記チャネル領域と前記ソース領域との間、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間において、それぞれ、前記シリコン層と絶縁層との界面に選択的に形成された第2導電型の緩衝領域と、
を含む半導体装置。
【0131】
(3)シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を含み、
前記ゲート絶縁膜は、前記チャネル領域と前記ソース領域との界面近傍、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との界面近傍と接する領域の膜厚が前記チャネル領域と接する他の領域の膜厚よりも厚い半導体装置。
【0132】
以上の構成によっても、BTBT現象によるホールの発生を低減することができ、オフリーク電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の一例を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の一例を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の一例を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の他の例を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の他の例を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の他の例を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の他の例を示す工程断面図である。
【図9】SOI層の構成を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の他の例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順の一例を示す工程断面図である。
【図12】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の他の例を示す断面図である。
【図13】緩衝領域に注入するボロンの濃度を変化させた際の、ゲート電圧Vgと電流IDSとの関係を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の他の例を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態における半導体装置の構成の他の例を示す断面図である。
【図16】図1に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図17】図1に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図18】図1に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図10に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図20】図10に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図21】実施例におけるトランジスタオン時の閾値電圧Vth(V)と電流IONとの関係を示す図である。
【図22】図10に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図23】図10に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】図10に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図25】図1に示した構成の半導体装置100のシミュレーション結果を示す図である。
【図26】本実施の形態における半導体装置の比較例である半導体装置の構成を示す図である。
【図27】図26に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図28】図26に示した構成の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
【図29】ドレイン領域およびチャネル領域をすべて同導電型のトランジスタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0134】
100 半導体装置
102 半導体基板
104 絶縁層
105 絶縁層
106 SOI層
106a ドレイン領域
106b ソース領域
106c チャネル領域
106d 緩衝領域
106e 緩衝領域
108 導電層
108a 第2のゲート電極
109 絶縁層
110 BOX層
112 ゲート絶縁膜
114 第1のゲート電極
116 絶縁層
120 ゲート電極
150 ポリシリコン層
152 絶縁層
154 絶縁層
156 シリコン層
158 絶縁層
160 ポリシリコン層
162 絶縁層
164 絶縁層
166 エピタキシャル層
168 サイドウォール
169 絶縁層
170 シリサイド層
171 シリサイド層
172 コンタクト
174 シリサイド層
180 金属層
190 p型不純物領域
190a p型不純物領域
190b p型不純物領域
200 第1のSOI層
202 絶縁層
204 第2のSOI層
206 絶縁層
208 ポリシリコン層
210 絶縁層
212 ポリシリコン層
214 絶縁層
216 絶縁層
218 エピタキシャル層
220 サイドウォール
222 絶縁層
224 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜および前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を含み、
前記チャネル領域の下方にドープトシリコンまたは金属からなる導電層が前記シリコン層の膜厚よりも狭い間隔で設けられ、前記チャネル領域と前記導電層との間に前記絶縁層が設けられた半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記チャネル領域の上面、下面および側面全面が前記導電層および前記ゲート電極を構成する材料により覆われた半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記導電層は、シリコン材料により構成され、前記第1導電型と反対の第2導電型の不純物を含むドープトシリコンである半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の半導体装置において、
前記導電層は、電圧印加可能に構成された半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の半導体装置において、
前記導電層は、前記ゲート電極と電気的に接続された半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜は、前記チャネル領域と前記ソース領域との界面近傍、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との界面近傍と接する領域の膜厚が前記チャネル領域と接する他の領域の膜厚よりも厚い半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の半導体装置において、
前記チャネル領域と前記導電層との間において、前記絶縁層は、前記チャネル領域と前記ソース領域との界面近傍、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との界面近傍と接する領域の膜厚が前記チャネル領域と接する他の領域の膜厚よりも厚い半導体装置。
【請求項8】
シリコン基板上に絶縁層およびシリコン層がこの順で形成されたSOI基板と、
前記シリコン層に形成された第1導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記シリコン層において、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に設けられ、前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも低濃度の前記第1導電型のチャネル領域と、
前記SOI基板上において、前記チャネル領域上に形成された第1のゲート絶縁膜および前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極と、
前記SOI基板内に、前記チャネル領域を挟んで前記第1のゲート電極と対向して設けられた第2のゲート電極および前記チャネル領域と前記第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
を含む半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜および前記第2のゲート絶縁膜は、前記チャネル領域と前記ソース領域との界面近傍、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との界面近傍と接する領域の膜厚が前記チャネル領域と接する他の領域の膜厚よりも厚い半導体装置。
【請求項10】
請求項1から9いずれかに記載の半導体装置において、
前記チャネル領域と前記ソース領域との間、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間にそれぞれ、前記チャネル領域よりも低濃度の前記第1導電型の緩衝領域が設けられた半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記緩衝領域は、前記シリコン層と絶縁層との界面に選択的に形成された半導体装置。
【請求項12】
請求項1から9いずれかに記載の半導体装置において、
前記チャネル領域と前記ソース領域との間、および前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間において、それぞれ、前記シリコン層と絶縁層との界面に選択的に形成された第2導電型の緩衝領域を含む半導体装置。
【請求項13】
シリコン基板上に第1の絶縁層、第1の導電層、第2の絶縁層、当該第2の絶縁層よりも膜厚が厚い第1導電型のシリコン層および当該シリコン層よりも膜厚が薄い第3の絶縁層がこの順で形成された積層構造上に、ゲート電極を形成する工程と、
前記シリコン層の前記ゲート電極が形成された領域下以外の領域に、前記第1導電型の不純物を導入して、前記第1導電型のソース領域およびドレイン領域を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ソース領域およびドレイン領域を形成する工程の前に、前記ゲート電極をマスクとして、前記第3の絶縁層を選択的に除去して前記シリコン層を露出させる工程をさらに含み、
前記ソース領域およびドレイン領域を形成する工程において、前記シリコン層の露出した領域に、前記第1導電型の不純物を導入して、前記第1導電型のソース領域およびドレイン領域を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ソース領域およびドレイン領域を形成する工程は、
前記第1導電型のシリコン層よりも高濃度の前記第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
前記半導体基板全面に熱処理を施し、前記エピタキシャル層中の前記第1導電型の不純物を前記シリコン層中に拡散させる工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記エピタキシャル層を形成する工程は、
不純物を含有しないエピタキシャル層を形成する工程と、
当該エピタキシャル層に第1導電型不純物のイオンを注入する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−149853(P2007−149853A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340591(P2005−340591)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】