説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】配線として用いられる金属シリサイド層の断線の発生を抑えつつ、微細化を可能にする半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、半導体基板のタップ領域40、トランジスタ領域36、及びシリサイド配線領域38に形成された活性領域と、シリサイド配線領域38上からトランジスタ領域36上に亘って形成されたゲート電極21と、活性領域上に設けられた金属シリサイド層44aとを備えている。シリサイド配線領域38の少なくとも一部上におけるゲート電極21と金属シリサイド層44aとの距離は、トランジスタ領域36上におけるゲート電極と金属シリサイド層44aとの距離よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の技術は、活性領域上のシリサイド配線と、MISトランジスタとを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化の要求に対し、スタンダードセルの活性領域上に設けられたシリサイド配線を使用し、スタンダードセル内の集積度を向上させる技術が提案されている。具体的には、スタンダードセルのトランジスタ領域とタップ領域のうち、同電位となる活性領域をシリサイド配線で結線する。このようなシリサイド配線を用いることにより、トランジスタ領域内のコンタクト数を減らすことができるため、スタンダードセルにおける配線数を削減し、チップ面積を縮小することができる。
【0003】
半導体集積回路装置の微細化が進んでシリサイド配線幅が狭くなると、シリサイドの凝集によりシリサイドが断線する確率が増加する。また、トランジスタ領域内の拡散層がn型、タップ領域内の拡散層がp型であった場合、トランジスタ領域とタップ領域を結ぶ活性領域にはPN接合が形成される。PN接合部にはシリサイド配線を通して電流が流れるため、シリサイド配線が断線すると、拡散層に電位が供給されず、チップの故障に至る。特許文献1には、PN接合部においてシリサイド配線の断線の影響を回避しつつ、スタンダードセルの集積度を向上させる技術が示されている。
【0004】
図9は、シリサイド配線が形成された従来の半導体装置を示す平面図であり、図10は、従来の半導体装置において、図9に示すX-X線に沿った断面を示す図である。
【0005】
図9及び図10に示すように、従来の半導体装置は、基板100を有する半導体基板110と、第1導電型のウェル141と、素子分離領域112と、第1導電型の第1の拡散層142と、第2導電型の第2の拡散層143と、第1の拡散層142上及び第2の拡散層143上に形成された金属シリサイド層144と、ゲート電極121と、ゲート電極121の側面上に形成されたサイドウォール絶縁膜124とを備えている。第1の拡散層142と第2の拡散層143との界面はPN接合となっている。
【0006】
半導体基板110には、トランジスタ領域136、シリサイド配線領域138、及びタップ領域140が形成されている。
【0007】
トランジスタ領域136上には、第1の拡散層142のうちゲート電極121の両側方に位置する部分に形成されたソース領域及びドレイン領域と、ゲート電極121とを有するMISトランジスタが形成されている。
【0008】
金属シリサイド層144は、半導体基板110のタップ領域140上からシリサイド配線領域138上及びトランジスタ領域136上に亘って形成されている。なお、金属シリサイド層144のうちシリサイド配線領域138上に形成された部分をシリサイド配線125と呼ぶものとする。
【0009】
トランジスタ領域136内の第1の拡散層142上には第1のコンタクト151が形成され、シリサイド配線125のうち第1の拡散層142と第2の拡散層143との接合部分から両拡散層上に跨る部分上には第2のコンタクト152が形成されている。タップ領域140内の金属シリサイド層144上には第3のコンタクト153が形成されている。第1のコンタクト151と第2のコンタクト152とは間にゲート電極121を挟む位置に設けられる。なお、PN接合部ではシリサイドの反応速度が遅いため、PN接合部上では金属シリサイド層144の膜厚が薄く、金属シリサイド層144の他の部分に比べて断線しやすくなっている。
【0010】
従来の半導体装置では、金属シリサイド層144を介してMISトランジスタのソース領域の電位が固定される。また、第2のコンタクト152が設けられているため、シリサイド配線領域138内でシリサイド配線125がPN接合部付近で断線した場合でも第2のコンタクト152を介してMISトランジスタのソース領域の電位を固定でき、MISトランジスタの特性安定化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−32788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の半導体装置では、互いに隣接するゲート電極121間に第2のコンタクト152を設けているため、半導体集積回路の微細化が進んだ場合、スタンダードセルの面積を縮小することが難しい。
【0013】
そこで、本発明は、配線として用いられる金属シリサイド層の断線の発生を抑えつつ、微細化を可能にする半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、本発明の一例に係る半導体装置は、タップ領域と、トランジスタ領域と、前記タップ領域と前記トランジスタ領域の間に形成されたシリサイド配線領域とを有する半導体基板と、前記半導体基板の前記タップ領域、前記トランジスタ領域、及び前記シリサイド配線領域に形成された活性領域と、前記シリサイド配線領域上から前記トランジスタ領域上に亘って形成されたゲート電極と、前記活性領域上に設けられ、前記タップ領域上から前記シリサイド配線領域上を介して前記トランジスタ領域上にまで設けられた金属シリサイド層とを備えている。これに加え、前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上における前記ゲート電極と前記金属シリサイド層との距離は、前記トランジスタ領域上における前記ゲート電極と前記金属シリサイド層との距離よりも小さくなっている。
【0015】
このように、シリサイド配線領域の少なくとも一部上でゲート電極と金属シリサイド層の距離を近づけることにより、この部分の金属シリサイド層の幅をトランジスタ領域上における金属シリサイド層の幅よりも広くすることができる。この結果、金属シリサイド層の断線の発生確率を大幅に下げるとともに、シリサイド配線領域上にコンタクトを設ける必要がなくなるため、微細化と金属シリサイド配線の断線発生の抑制とを両立することができる。
【0016】
また、前記ゲート電極の側面上に形成されたサイドウォール絶縁膜をさらに備え、前記金属シリサイド層は前記サイドウォール絶縁膜を挟んで前記ゲート電極に隣接しており、前記サイドウォール絶縁膜のうち少なくとも前記シリサイド配線領域の一部上に設けられた第1の部分の膜厚は、前記サイドウォール絶縁膜のうち前記トランジスタ領域上に形成された第2の部分の膜厚よりも小さくなっていてもよい。
【0017】
本発明の一例に係る半導体装置の製造方法は、タップ領域と、トランジスタ領域と、前記タップ領域と前記トランジスタ領域との間に位置するシリサイド配線領域とが形成された半導体基板に素子分離領域を形成し、前記タップ領域、前記シリサイド配線領域及び前記トランジスタ領域内において前記素子分離領域に囲まれた活性領域を形成する工程と、前記活性領域を形成後に、前記シリサイド配線領域上から前記トランジスタ領域上に延伸するゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上及び前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上に開口が形成されたマスクを前記絶縁膜上に形成する工程と、前記マスクを用いた等方性エッチングによって前記絶縁膜のうち前記開口が設けられた部分を薄膜化する工程と、前記マスクを除去した後、前記絶縁膜を異方性エッチングすることにより、ゲート電極の側面上に、前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上では前記トランジスタ領域上よりも膜厚が薄いサイドウォール絶縁膜を形成する工程と、前記サイドウォール絶縁膜の形成後、前記活性領域上に金属シリサイド層を形成する工程とを備えている。さらに、前記シリサイド配線領域上及び前記トランジスタ領域上では、前記金属シリサイド層は前記サイドウォール絶縁膜を挟んで前記ゲート電極に隣接するように形成される。
【0018】
この方法によれば、選択的な等方性エッチングと異方性エッチングとを組み合わせることで、シリサイド配線領域の少なくとも一部上の膜厚がトランジスタ領域上の膜厚よりも小さいサイドウォール絶縁膜を形成することができる。このため、サイドウォール絶縁膜が薄くなるシリサイド配線領域上では、ゲート電極に隣接する金属シリサイド層の幅をトランジスタ領域上での金属シリサイド層の幅よりも大きくすることができる。その結果、金属シリサイド層の断線の発生を抑えつつ、チップ面積の縮小を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一例に係る半導体装置では、シリサイド配線領域上での金属シリサイド層とゲート電極との距離をトランジスタ領域上での金属シリサイド層とゲート電極との距離よりも小さくすることにより、シリサイド配線領域上で金属シリサイド層の幅を広くすることができる。これにより、金属シリサイド層の断線の発生を抑えつつ、チップ面積の縮小化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の例示的実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【図2】例示的実施形態に係る半導体装置において、図1に示すII-II線に沿った断面を示す図である。
【図3】例示的半導体装置において、図1に示すIII-III線に沿った断面を示す図である。
【図4】例示的実施形態に係る半導体装置において、図1に示すIV-IV線に沿った断面を示す図である。
【図5】(a)、(b)は、例示的実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】(a)、(b)は、例示的実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】例示的実施形態に係る半導体装置において、各部材を示す平面図である。
【図8】従来の半導体装置において、各部材を示す平面図である。
【図9】シリサイド配線が形成された従来の半導体装置を示す平面図である。
【図10】従来の半導体装置において、図9に示すX-X線に沿った断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
図1は、本発明の例示的実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。また、図2は、本実施形態に係る半導体装置において、図1に示すII-II線に沿った断面を示す図であり、図3は、当該半導体装置において、図1に示すIII-III線に沿った断面を示す図である。図4は、本実施形態に係る半導体装置において、図1に示すIV-IV線に沿った断面を示す図である。これらの図には、例示的な実施形態として、金属シリサイド層で構成されたシリサイド配線とMISトランジスタとを有するスタンダードセルの一部が示されている。
【0022】
図1〜図4に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体層1を有する半導体基板10と、半導体基板10内であって半導体層1上に形成された第1導電型のウェル11と、ウェル11上に形成され、STI(Shallow Trench Isolation)構造等を有する素子分離領域12と、半導体基板10内であってウェル11上に形成された第1導電型の第1の拡散層42と、半導体基板10内であってウェル11上に形成された第2導電型の第2の拡散層32と、第1の拡散層42上及び第2の拡散層32上に形成された金属シリサイド層44aと、半導体基板10上にゲート絶縁膜50を間に挟んで形成されたゲート電極21と、ゲート電極21上に形成された金属シリサイド層44bと、ゲート電極21の側面上に形成されたサイドウォール絶縁膜65とを備えている。以下では、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型とする例を挙げて説明を進める。
【0023】
半導体基板10には、トランジスタ領域36、シリサイド配線領域38、及びタップ領域40が形成されている。
【0024】
タップ領域40は、スタンダードセル内の各MISトランジスタに固定電圧を供給するための配線が形成された領域である。トランジスタ領域36には、第1の拡散層42のうちゲート電極21の両側方に位置する部分に形成されたソース領域及びドレイン領域と、ゲート電極21とを有し、スタンダードセルを構成するMISトランジスタが形成されている。シリサイド配線領域38は、タップ領域40とトランジスタ領域36との間に位置している。
【0025】
なお、図1に示す例では、2本のゲート電極21が並列に配置されており、ゲート電極21の各々は半導体基板10のシリサイド配線領域38上からトランジスタ領域36上に向かって延びている。ゲート電極21の幅(ゲート長)は例えば40nmであり、ゲート電極21同士の間隔は例えば120nm程度である。
【0026】
第1の拡散層42はシリサイド配線領域38からトランジスタ領域36に亘って形成されており、第2の拡散層32は、タップ領域40からシリサイド配線領域38に亘って形成されている。n型の第1の拡散層42とp型の第2の拡散層32とは半導体基板10のシリサイド配線領域38内でPN接合を形成する。なお、半導体基板10のトランジスタ領域36、シリサイド配線領域38、及びタップ領域40内に形成され、第1の拡散層42及び第2の拡散層32を含み、素子分離領域12に囲まれた部分を活性領域61と呼ぶものとする(図4参照)。
【0027】
金属シリサイド層44aは、半導体基板10のタップ領域40上からシリサイド配線領域38上及びトランジスタ領域36上に亘って形成されている。すなわち、金属シリサイド層44aは、活性領域61上に設けられている。なお、金属シリサイド層44aのうちシリサイド配線領域38上に形成された部分をシリサイド配線25と呼ぶものとする。
【0028】
トランジスタ領域36内の第1の拡散層42上には第1のコンタクト51が形成され、タップ領域40内の第2の拡散層32上には第2のコンタクト53が形成されている。トランジスタ領域内のMISトランジスタがnチャネル型である場合、第2のコンタクト53及び金属シリサイド層44aを介して固定電圧(例えば接地電圧)が当該MISトランジスタのソース領域に供給される。なお、このとき、第1の拡散層42のうちゲート電極21から見てソース領域側に位置する部分と、第2の拡散層32とが金属シリサイド層44aを介して同電位となる。
【0029】
本実施形態の半導体装置では、図1に示すように、サイドウォール絶縁膜65のうち、シリサイド配線領域38上に設けられた部分(第1のサイドウォール絶縁膜23)の膜厚が、サイドウォール絶縁膜65のうちトランジスタ領域36上に設けられた部分(第2のサイドウォール絶縁膜24)の膜厚よりも小さくなっている点が図9に示す従来の半導体装置と異なっている。このため、シリサイド配線領域38(の少なくとも一部)上におけるゲート電極21と金属シリサイド層44aとの距離は、トランジスタ領域36上におけるゲート電極21と金属シリサイド層44aとの距離よりも小さくなっている。これに伴って、金属シリサイド層44a(シリサイド配線25)のうち、2つのゲート電極21の側面上に設けられた第1のサイドウォール絶縁膜23同士に挟まれた部分の幅(ゲート長方向の幅)は、金属シリサイド層44aのうちトランジスタ領域36上に形成された部分の幅よりも大きくなっている。第1のサイドウォール絶縁膜23の幅は例えば20nm程度であり、第2のサイドウォール絶縁膜24の幅は例えば40nm程度である。
【0030】
この構成により、本実施形態の半導体装置では、MISトランジスタのソース領域又はドレイン領域に接続されたシリサイド配線25の幅を、従来の半導体装置よりも広げることができる。そのため、シリサイド配線25における電気抵抗を小さくし、PN接合部上などでシリサイド配線25が断線するのを防ぐことができる。また、所定電圧(例えば接地電圧)を供給するためのコンタクト(図9に示す第2のコンタクト152)を設けなくてもシリサイド配線25を介してMISトランジスタのソース領域又はドレイン領域に確実に所定の電圧を供給することができる。そのため、シリサイド配線領域38上に形成される複数のゲート電極21同士の間隔を狭めても従来の半導体装置に比べてシリサイド配線25の断線を効果的に抑えることができる。その上、MISトランジスタの特性を安定化しつつ、スタンダードセルの面積を縮小することができる。さらに、後述するように、所定電圧を供給するための上層メタル配線を第2のコンタクト152に接続させる必要がないので、メタル配線の面積を小さくすることができる。この結果として、微細化され、動作不良の発生が抑えられた半導体集積回路を作製することが可能となる。
【0031】
なお、シリサイド配線領域38上に設けられたシリサイド配線25(金属シリサイド層44a)全体の幅をトランジスタ領域36上の金属シリサイド層44aの幅より大きくしてもよいが、図1に示すように、必ずしもシリサイド配線25全体を太くしなくてもよい。この場合、少なくとも第1の拡散層42と第2の拡散層32との接合部分(PN接合部)上に位置するシリサイド配線25の幅が太くなっていれば好ましい。金属シリサイド層44a(シリサイド配線25)の幅は特に限定されないが、例えばシリサイド配線領域38上の幅が広い部分で80nm程度、トランジスタ領域36上の部分では40nm程度である。
【0032】
なお、トランジスタ領域36上においてはサイドウォール絶縁膜65のゲート長方向の幅は大きくなっているので、これをマスクとして所望の位置にソース領域及びドレイン領域を設けることができる。従って、本実施形態の半導体装置によれば、MISトランジスタの短チャネル特性の劣化を来すことなく上記の効果を発揮させることができる。
【0033】
なお、シリサイド層を形成するために、半導体基板はシリコン基板であることが好ましいが、シリコン混晶で構成されていてもよい。
【0034】
−半導体装置の製造方法−
以下、図面を用いて半導体装置の製造方法を説明する。図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)は、例示的実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。各図では、左側にシリサイド配線領域38(図1に示すII-II線)における断面を示し、右側にトランジスタ領域36(図1に示すIII-III線)における断面を示している。
【0035】
まず、図5(a)に示すように、タップ領域と、トランジスタ領域36と、前記タップ領域と前記トランジスタ領域36との間に位置するシリサイド配線領域38とが形成され、シリコン等からなる半導体基板10に、周知の方法を用いてシリコン酸化膜等からなる素子分離領域12を形成した後、イオン注入法等によりp型のウェル11を半導体基板10内に形成する。ここで、半導体基板10のうちウェル11の下に位置する部分を便宜的に「半導体層1」と表記する。また、半導体基板10のうち素子分離領域12によって囲まれた領域は活性領域61となる(図4参照)。
【0036】
その後、例えば厚さ3nmのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜50を間に挟んで半導体基板10上にゲート電極21を形成する。ゲート電極21はシリサイド配線領域38上からトランジスタ領域36上に延伸している。なお、「半導体基板10上」とは、半導体基板10とゲート電極21との間に素子分離領域12が介在する場合も含むものとする。ここで形成されるゲート電極21の幅は例えば40nmとし、ゲート電極21の間隔は120nmとする。続いて、例えば厚さ40nmの第1の絶縁膜22を半導体基板10上の全体に形成する。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、フォトレジスト31を半導体基板10上の全面に塗布してから露光することにより、フォトレジスト31のうちシリサイド配線領域38上に形成された部分を除去する。これにより、シリサイド配線領域38の少なくとも一部上に開口が形成されたフォトレジスト31を形成する。その後、フォトレジスト31をマスクとして用いた等方性エッチングにより、第1の絶縁膜22を厚さにして例えば20nm程度除去する。なお、フォトレジストに代えてハードマスクを用いてエッチングを行ってもよい。
【0038】
次に、図6(a)に示すように、フォトレジスト31を除去した後、第1の絶縁膜22を異方性エッチングにより一部を残して除去することで、シリサイド配線領域38上ではゲート電極21の側面上に第1のサイドウォール絶縁膜23を形成し、トランジスタ領域36上ではゲート電極21の側面上に第2のサイドウォール絶縁膜24を形成する。ここで、第1のサイドウォール絶縁膜23のゲート長方向の幅は例えば20nmとし、第2のサイドウォール絶縁膜24のゲート長方向の幅は例えば40nmとする。本工程において、第2のサイドウォール絶縁膜24の幅は、MISトランジスタの短チャネル効果を抑える目的で、ゲート長と同程度に設定されることが多い。
【0039】
次に、図6(b)に示すように、イオン注入法など公知の方法を用いて半導体基板10(活性領域)のシリサイド配線領域38にp型不純物を導入し、第2の拡散層32を形成する。また、半導体基板10(活性領域)のトランジスタ領域36にn型不純物を導入してn型の第1の拡散層42を形成する。その後、金属シリサイド層44aを第1の拡散層42上及び第2の拡散層32上に自己整合的に形成するとともに、ゲート電極21上に金属シリサイド層44bを自己整合的に形成する。以上のようにして本実施形態の半導体装置は作製できる。
【0040】
金属シリサイド層44a、44bの材質は例えばニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)又はモリブデン(Mo)等である。このときゲート電極21の間に形成される金属シリサイド層44aの幅は、シリサイド配線領域38上で例えば80nm程度であり、トランジスタ領域36上で40nm程度とする。
【0041】
これに対し、図9に示す従来の半導体装置では、シリサイド配線領域138上での金属シリサイド層144の幅が、トランジスタ領域136上での金属シリサイド層144の幅と等しくなる。本実施形態の半導体装置と同じくゲート電極121間の間隔を120nmおよびサイドウォール絶縁膜124の膜厚を40nmを仮定すると、シリサイド配線領域138上でのシリサイド配線125の幅は40nmとなる。
【0042】
本願発明者は、シリサイド配線の幅が60nm以下になると急激にシリサイドの断線確率が高くなることを確認している。従って、従来の半導体装置ではシリサイド配線領域138上のシリサイド配線125が断線する確率は高く、チップの故障が生じる可能性が高いと考えられる。
【0043】
本実施形態の半導体装置では、断線が発生しやすいPN接合部の上でシリサイド配線25の幅を例えば60nm以上に広げることができるので、断線の可能性を低減することができ、チップの故障の発生確率を大きく低減することができる。また、上述の方法によれば、図5(b)に示す等方性エッチング工程で、除去する第1の絶縁膜22の量を適切に設定することができるので、シリサイド配線25の幅を十分に広くし、断線の発生を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、トランジスタ領域36上では金属シリサイド層44aが断線してもシリサイドとシリコン間の界面抵抗分程度しか抵抗が上昇しない。そのため、断線による抵抗上昇のチップ動作への影響はMISトランジスタのランダムばらつき等の影響に比べて小さい。トランジスタ領域36上では金属シリサイド層44aの幅が60nm以下となっているが、半導体装置の動作への影響はほとんどない。
【0045】
なお、以上の説明ではp型のウェル11上にnチャネル型MISトランジスタを設ける例を挙げたが、ウェル11をn型とし、第1の拡散層42をp型とし、第2の拡散層32をn型としてpチャネル型のMISトランジスタを設ける場合にも上述のサイドウォール絶縁膜65の構造、金属シリサイド層44aの構造を適用できる。
【0046】
図7は、例示的実施形態に係る半導体装置において、半導体基板10内に形成された活性領域61、ゲート電極21、コンタクト、及びメタル配線60を示す平面図である。図8は、従来の半導体装置において、活性領域161、ゲート電極121、コンタクト、及びメタル配線160を示す平面図である。ここで、活性領域61は、第1の拡散層42及び第2の拡散層32のうち素子分離領域12(図2〜図4参照)に囲まれた部分を表す。
【0047】
本実施形態の半導体装置では、nチャネル型MISトランジスタのソース領域が第2のコンタクト53を介してメタル配線60に接続されている。従来の半導体装置では、nチャネル型MISトランジスタのソース領域が第2のコンタクト152と第3のコンタクト153を介してメタル配線160に接続されている。
【0048】
本実施形態の半導体装置では、従来の半導体装置と同様に、金属シリサイド層44aを介して第1の拡散層及び第2の拡散層に所定の電圧を安定に供給できるが、2つのゲート電極121間に位置する第2のコンタクト152を設ける必要がないため、コンタクトに接続されるメタル配線60の面積をメタル配線160よりも小さくすることができる。スタンダードセルなどの素子が密集した半導体装置ではメタル配線の面積が小さいほど他の配線自由度が高くなり微細化に有利である。よって、本実施形態の半導体装置によれば、シリサイド配線の断線の抑制とチップの微細化とを両立することができる。なお、スタンダードセル以外に上述の構成を適用してもよい。
【0049】
以上で説明した各部のサイズや形状、構成材料等は実施形態の一例であって、本発明の範囲を逸脱しない限り変更可能である。例えば、図1〜図4では第1のサイドウォール絶縁膜23及び第2のサイドウォール絶縁膜24をそれぞれ一層の絶縁膜としているが、ウェル11内にMISトランジスタのエクステンション領域を設ける場合などでは、第1のサイドウォール絶縁膜23及び第2のサイドウォール絶縁膜24はそれぞれ複数の絶縁膜で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上で説明したように、本発明は、例えば活性領域上にシリサイド配線を備えた半導体装置の微細化に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 半導体層
10 半導体基板
11 ウェル
12 素子分離領域
21 ゲート電極
22 第1の絶縁膜
23 第1のサイドウォール絶縁膜
24 第2のサイドウォール絶縁膜
25 シリサイド配線
31 フォトレジスト
32 第2の拡散層
36 トランジスタ領域
38 シリサイド配線領域
40 タップ領域
42 第1の拡散層
44a、44b 金属シリサイド層
50 ゲート絶縁膜
51 第1のコンタクト
53 第2のコンタクト
60 メタル配線
61 活性領域
65 サイドウォール絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ領域と、トランジスタ領域と、前記タップ領域と前記トランジスタ領域の間に形成されたシリサイド配線領域とを有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記タップ領域、前記トランジスタ領域、及び前記シリサイド配線領域に形成された活性領域と、
前記シリサイド配線領域上から前記トランジスタ領域上に亘って形成されたゲート電極と、
前記活性領域上に設けられ、前記タップ領域上から前記シリサイド配線領域上を介して前記トランジスタ領域上にまで設けられた金属シリサイド層とを備え、
前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上における前記ゲート電極と前記金属シリサイド層との距離は、前記トランジスタ領域上における前記ゲート電極と前記金属シリサイド層との距離よりも小さい半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極の側面上に形成されたサイドウォール絶縁膜をさらに備え、
前記金属シリサイド層は前記サイドウォール絶縁膜を挟んで前記ゲート電極に隣接しており、
前記サイドウォール絶縁膜のうち少なくとも前記シリサイド配線領域の一部上に設けられた第1の部分の膜厚は、前記サイドウォール絶縁膜のうち前記トランジスタ領域上に形成された第2の部分の膜厚よりも小さくなっている半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層のうち、前記サイドウォールの前記第1の部分を挟んで前記ゲート電極に隣接する部分の幅は、前記サイドウォールの前記第2の部分を挟んで前記ゲート電極に隣接する部分の幅よりも大きい半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記半導体基板内には第1導電型のウェルが形成されており、
前記活性領域内の前記ウェル上には、前記シリサイド配線領域及び前記トランジスタ領域に形成された第2導電型の第1の拡散層が形成されており、
前記活性領域内の前記ウェル上には、前記シリサイド配線領域及び前記タップ領域に形成された第1導電型の第2の拡散層が形成されており、
前記第1の拡散層と前記第2の拡散層とは前記シリサイド配線領域内で接している半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記トランジスタ領域上には、前記ゲート電極の一部と、前記第1の拡散層の一部であって前記ゲート電極を間に挟むように設けられたソース領域及びドレイン領域とで構成されたMISトランジスタが設けられており、
前記ソース領域またはドレイン領域は前記金属シリサイド層に電気的に接続されている半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記ソース領域を含む前記第1の拡散層の電位と、前記第2の拡散層の電位とは、前記金属シリサイド層を介して同電位となっている半導体装置。
【請求項7】
タップ領域と、トランジスタ領域と、前記タップ領域と前記トランジスタ領域との間に位置するシリサイド配線領域とが形成された半導体基板に素子分離領域を形成し、前記タップ領域、前記シリサイド配線領域及び前記トランジスタ領域内において前記素子分離領域に囲まれた活性領域を形成する工程と、
前記活性領域を形成後に、前記シリサイド配線領域上から前記トランジスタ領域上に延伸するゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極上及び前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上に開口が形成されたマスクを前記絶縁膜上に形成する工程と、
前記マスクを用いた等方性エッチングによって前記絶縁膜のうち前記開口が形成された部分を薄膜化する工程と、
前記マスクを除去した後、前記絶縁膜を異方性エッチングすることにより、ゲート電極の側面上に、前記シリサイド配線領域の少なくとも一部上では前記トランジスタ領域上よりも膜厚が小さいサイドウォール絶縁膜を形成する工程と、
前記サイドウォール絶縁膜の形成後、前記活性領域上に金属シリサイド層を形成する工程とを備え、
前記シリサイド配線領域上及び前記トランジスタ領域上では、前記金属シリサイド層は前記サイドウォール絶縁膜を挟んで前記ゲート電極に隣接するように形成される半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記素子分離領域を形成後、前記ゲート電極の形成前に前記半導体基板の前記活性領域を含む領域に第1導電型のウェルを形成する工程と、
前記サイドウォール絶縁膜の形成後、前記金属シリサイド層の形成前に、前記活性領域のうち前記トランジスタ領域及び前記シリサイド配線領域に位置する部分に第2導電型の第1の拡散層を形成するとともに、前記活性領域のうち前記シリサイド配線領域及び前記タップ領域に位置する部分に第1導電型の第2の拡散層を形成する工程とをさらに備え、
前記第1の拡散層と前記第2の拡散層とは前記シリサイド配線領域において接しており、
前記第1の拡散層と前記第2の拡散層との接合部上での前記金属シリサイド層の幅は、前記トランジスタ領域上での前記金属シリサイド層の幅よりも大きい半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−124355(P2011−124355A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280118(P2009−280118)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】