説明

半導体装置の作製方法及びプラズマ酸化処理方法

【課題】窒素を含むゲート絶縁膜にプラズマ酸化処理を行うことで、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制できる半導体装置の作製方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、ゲート電極103、窒素を含むゲート絶縁膜105、微結晶半導体膜107,109によって形成されたチャネル領域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、前記ゲート絶縁膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、前記ゲート絶縁膜上に前記微結晶半導体膜を形成し、前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をaとし、前記酸化ガスの量をbとした場合に下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。
a/b≧2 ・・・(1)
b>0 ・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法及びプラズマ酸化処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタの一種として、絶縁表面を有する基板上に形成されたシリコン膜を用いてチャネル領域が形成される薄膜トランジスタが知られている。薄膜トランジスタのチャネル領域に用いられるシリコン膜に、非晶質シリコン、微結晶シリコン及び多結晶シリコンを用いる技術が開示されている(特許文献1乃至5参照)。薄膜トランジスタの代表的な応用例は、液晶テレビジョン装置であり、表示画面を構成する各画素のスイッチングトランジスタとして実用化されている。
【0003】
図13は、逆スタガー型ボトムゲート構造の薄膜トランジスタを示す断面図である。
この薄膜トランジスタは、ガラス基板10上に形成された積層構造を有するゲート電極4と、ゲート電極4を覆うように形成されたSiN膜からなるゲート絶縁膜2と、ゲート絶縁膜2上に形成された微結晶シリコン膜1とシリコン膜3と一対の不純物シリコン膜5a,5bを積層した積層膜と、不純物シリコン膜5a,5b上に形成された積層構造を有し且つソース電極及びドレイン電極として機能する配線6a,6bと、配線6a,6bを覆うように形成された絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成されたゲート電極(以下、「バックゲート電極」と呼ぶ。)8とを有している。
【0004】
ゲート絶縁膜2にSiN膜などの窒素を含む絶縁膜を用いると、ゲート絶縁膜2中の窒素がその直上部分2aに成膜される微結晶シリコン膜1の成膜時における結晶化を阻害し、ゲート絶縁膜2の直上にアモルファスなシリコン領域(所謂インキュベーション層)ができてしまう。このシリコン領域は薄膜トランジスタの特性を阻害する要因となることがある。
【0005】
また、微結晶シリコン膜1上のシリコン膜3をドライエッチングにより除去してシリコン膜3のバックチャネル側の部分3aを露出させた直後は、バックチャネルが形成される部分3aの表面のシリコン領域にエッチングでのダメージが入っており、薄膜トランジスタの特性が低下することがある。なお、バックチャネルとは、微結晶シリコン膜1またはシリコン膜3においてバックゲート電極と対向する領域をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−053283号公報
【特許文献2】特開平5−129608号公報
【特許文献3】特開2005−049832号公報
【特許文献4】特開平7−131030号公報
【特許文献5】特開2005−191546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、窒素を含むゲート絶縁膜にプラズマ酸化処理を行うことで、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制できる半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。
また、本発明の一態様は、半導体膜のバックチャネル側にプラズマ酸化処理を行うことで、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制できる半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。
また、本発明の一態様は、酸化力を向上させたプラズマ酸化処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、前記ゲート絶縁膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、前記ゲート絶縁膜上に前記微結晶半導体膜を形成し、前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をaとし、前記酸化ガスの量をbとした場合に下記式(1)、(2)、好ましくは下記式(2)、(3)、さらに好ましくは(2)、(4)、さらに好ましくは(2)、(5)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法である。
a/b≧2 ・・・(1)
b>0 ・・・(2)
a/b>2 ・・・(3)
a/b≧3 ・・・(4)
a/b≧4 ・・・(5)
【0009】
本発明の一態様は、ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、前記微結晶半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、前記微結晶半導体膜上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上にバックゲート電極を形成し、前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をcとし、前記酸化ガスの量をdとした場合に下記式(6)、(7)、好ましくは下記式(7)、(8)、さらに好ましくは(7)、(9)、さらに好ましくは(7)、(10)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法である。
c/d≧2 ・・・(6)
d>0 ・・・(7)
c/d>2 ・・・(8)
c/d≧3 ・・・(9)
c/d≧4 ・・・(10)
【0010】
本発明の一態様は、ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、前記ゲート絶縁膜上に前記微結晶半導体膜を形成した後に、前記微結晶半導体膜上に非晶質半導体膜を形成し、前記非晶質半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、前記非晶質半導体膜上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上にバックゲート電極を形成し、前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をcとし、前記酸化ガスの量をdとした場合に下記式(6)、(7)、好ましくは下記式(7)、(8)、さらに好ましくは(7)、(9)、さらに好ましくは(7)、(10)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法である。
c/d≧2 ・・・(6)
d>0 ・・・(7)
c/d>2 ・・・(8)
c/d≧3 ・・・(9)
c/d≧4 ・・・(10)
【0011】
また、本発明の一態様において、前記酸化ガスは、酸素、NO及びNOの一以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様は、絶縁膜または半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ酸化処理方法であって、前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をeとし、前記酸化ガスの量をfとした場合に下記式(11)、(12)、好ましくは下記式(12)、(13)、さらに好ましくは(12)、(14)、さらに好ましくは(12)、(15)を満たすことを特徴とするプラズマ酸化処理方法である。
e/f≧2 ・・・(11)
f>0 ・・・(12)
e/f>2 ・・・(13)
e/f≧3 ・・・(14)
e/f≧4 ・・・(15)
【0013】
また、本発明の一態様において、前記酸化ガスは、酸素、NO及びNOの一以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、窒素を含むゲート絶縁膜にプラズマ酸化処理を行うことで、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制することができる。
また、本発明の一態様によれば、半導体膜のバックチャネル側にプラズマ酸化処理を行うことで、薄膜トランジスタの特性の低下を抑制することができる。
また、本発明の一態様によれば、酸化力を向上させたプラズマ酸化処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)〜(D)は本発明の一態様の半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図2】(A),(B)は本発明の一態様の半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図3】(A)〜(C)は本発明の一態様の半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図4】本発明の一態様である半導体装置に形成される薄膜トランジスタの作製方法を説明する断面図。
【図5】実施例1の実験結果を示すものであってH/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図。
【図6】実施例2の実験結果を示すものであってH/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図。
【図7】実施例3の実験結果を示すものであってH/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図。
【図8】実施例4のゲートBT試験を行った結果を示す図。
【図9】実施例5のゲートBT試験を行った結果を示す図。
【図10】実施例6の実験結果を示すものであってH/NOの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図。
【図11】H、O、およびこれらの混合ガスでのプラズマ放電時の分光スペクトルを観察した結果を示す図。
【図12】H、NOおよびこれらの混合ガスでのプラズマ放電時の分光スペクトルを観察した結果を示す図。
【図13】逆スタガー型ボトムゲート構造の薄膜トランジスタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置に形成される薄膜トランジスタの作製方法について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、薄膜トランジスタは、p型よりもn型の方が、キャリアの移動度が高い。本実施の形態では、n型の薄膜トランジスタの作製方法について説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、基板101上にゲート電極103を形成する。次に、ゲート電極103(以下、「第1のゲート電極」ともいう。)を覆い且つ窒素を含むゲート絶縁膜105を形成する。次いで、ゲート絶縁膜105の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、その後、ゲート絶縁膜105上に第1の微結晶シリコン膜107を形成する。これらのプラズマ酸化処理、第1の微結晶シリコン膜107の形成をプラズマCVD装置により連続して行うことが好ましい。これにより、ゲート絶縁膜105の表面が汚染されることを防止できる。
【0019】
ゲート絶縁膜105にプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をaとし、酸素量をbとした場合に下記式(1)、(2)、好ましくは下記式(2)、(3)、さらに好ましくは(2)、(4)、さらに好ましくは(2)、(5)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
a/b≧2 ・・・(1)
b>0 ・・・(2)
a/b>2 ・・・(3)
a/b≧3 ・・・(4)
a/b≧4 ・・・(5)
【0020】
このようにゲート絶縁膜105の表面を酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ酸化処理を行うことにより、薄膜トランジスタのしきい値電圧がマイナスシフトするのを抑制することができる。なお、当該プラズマ酸化処理により、ノーマリーオフの薄膜トランジスタを作製することができる。
【0021】
本明細書では、nチャネル型薄膜トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が正であるトランジスタをノーマリーオフの薄膜トランジスタと定義する。pチャネル型薄膜トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が負である薄膜トランジスタをノーマリーオフの薄膜トランジスタと定義する。また、nチャネル型薄膜トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が負である薄膜トランジスタをノーマリーオンの薄膜トランジスタと定義する。pチャネル型薄膜トランジスタにおいて、しきい値電圧の値が正である薄膜トランジスタをノーマリーオンの薄膜トランジスタと定義する。
【0022】
基板101としては、ガラス基板、セラミック基板等を用いることができる。なお、基板101のサイズに限定はなく、例えば上述のフラットパネルディスプレイの分野でよく使われる第3世代乃至第10世代のガラス基板を用いることができる。
【0023】
ゲート電極103は、基板101上に、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて、Mo、Ti、Cr、Ta、W、Al、Cu、Nd、Sc及びNiのいずれかの金属材料により導電膜を形成し、該導電膜上にフォトリソグラフィ法によりマスクを形成し、該マスクを用いて導電膜をエッチングして形成することができる。なお、ゲート電極103と、基板101との密着性向上を目的として、上記の金属材料の窒化物膜を、基板101と、ゲート電極103との間に設けてもよい。ここでは、基板101上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程により形成したレジストで形成されるマスクを用いて、当該導電膜をエッチングする。
【0024】
なお、ゲート電極103の側面は、テーパー形状とすることが好ましい。これは、後の工程で、ゲート電極103上に形成される絶縁膜、シリコン膜及び配線が、ゲート電極103の段差箇所において切断されないようにするためである。ゲート電極103の側面をテーパー形状にするためには、レジストで形成されるマスクを後退させつつエッチングを行えばよい。
【0025】
ゲート絶縁膜105は、CVD法を用いて、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜を、単層でまたは積層して形成することができる。
【0026】
第1の微結晶シリコン膜107は、混相粒を有し、混相粒の粒密度(面内における混相粒の存在割合)が低く、混相粒の粒径の均一性が高く、且つ混相粒の結晶性が高いことが好ましい。このため、第1の微結晶シリコン膜107は、混相粒が隣接せず、隣り合う混相粒の間に隙間を有するものも含まれる。第1の微結晶シリコン膜107の厚さは、1nm以上10nm以下であることが好ましく、混相粒が隣接せず、隣り合う混相粒の間に隙間を有する部分は、隣接しない混相粒の最も低い高さが1nm以上であり且つ最も高い高さが10nm以下であることが好ましい。なお、混相粒は、アモルファスシリコン領域と、シリコン単結晶とみなせる微小結晶であるシリコン結晶子を複数有する。また、混相粒は双晶を有する場合もある。
【0027】
第1の微結晶シリコン膜107は、プラズマCVD装置の処理室内において、核となる混相粒を形成し、且つ混相粒の粒密度が低く、且つ混相粒の結晶性が高くなるような第1の条件を用いて、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性気体と、水素とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。または、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、ヘリウム、ネオン、クリプトン等の希ガスとを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。ここでは、処理室内の圧力を67Pa以上50000Pa以下(0.5Torr以上375Torr以下)とする第1の条件により、微結晶シリコンを形成する。
【0028】
第1の条件における原料ガスの供給方法は、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量を50倍以上1000倍以下にして堆積性気体を希釈したガスを供給する方法である。
なお、堆積温度は、室温〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは150〜280℃とする。なお、プラズマCVD装置の上部電極及び下部電極の間隔は、プラズマが発生しうる間隔とすればよい。
【0029】
シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、SiH、Si等がある。
【0030】
第1の微結晶シリコン膜107の原料ガスに、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスを混合することで、第1の微結晶シリコン膜107の成膜速度が高まる。また、成膜速度が高まることで、第1の微結晶シリコン膜107に混入される不純物量が低減するため、第1の微結晶シリコン膜107の結晶性を高めることができる。このため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めると共に、スループットを高めることができる。
【0031】
第1の微結晶シリコン膜107を形成する際のグロー放電プラズマの生成は、3MHzから30MHz、代表的には13.56MHz、27.12MHzのHF帯の高周波電力、または30MHzより大きく300MHz程度までのVHF帯の高周波電力、代表的には、60MHzを印加することで行われる。なお、プラズマを生成させるパワーは、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量の比に合わせて適宜選択することが好ましい。
【0032】
次に、図1(B)に示すように、第1の微結晶シリコン膜107上に第2の微結晶シリコン膜109を形成する。第2の微結晶シリコン膜109は、シリコン結晶子及びアモルファスシリコンを含む混相粒を有し、第1の微結晶シリコン膜107の混相粒の隙間を埋めつつ、且つ結晶成長を促す条件で形成することが好ましい。なお、第2の微結晶シリコン膜109の厚さは、30nm以上100nm以下が好ましい。
【0033】
第2の微結晶シリコン膜109は、プラズマCVD装置の処理室内において、第2の条件により、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性気体と、水素とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。または、第2の条件により、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、ヘリウム、ネオン、クリプトン等の希ガスとを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。ここでは、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量を100倍以上3000倍以下にして堆積性気体を希釈し、且つ処理室内の圧力を1333Pa以上50000Pa以下(10Torr以上375Torr以下)とする第2の条件により、微結晶シリコンを形成する。この結果、第2の微結晶シリコン膜109は、非晶質半導体に対する結晶領域の割合が増加し、結晶性が高まる。このときの堆積温度は、室温〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは150〜280℃とする。なお、プラズマCVD装置の上部電極及び下部電極の間隔は、プラズマが発生しうる間隔とすればよい。また、第1の微結晶シリコン膜の混相粒の隙間に、新たに第2の微結晶シリコン膜の混相粒が発生することで、混相粒の大きさが小さくなってしまうため、第1の微結晶シリコン膜の混相粒の発生頻度に対して、第2の微結晶シリコン膜の混相粒の発生頻度は少ない方が好ましい。
【0034】
第2の微結晶シリコン膜109の原料ガスに、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスを混合することで、第1の微結晶シリコン膜107と同様に、第2の微結晶シリコン膜109の結晶性を高めることができる。このため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度が高まると共に、スループットを高めることができる。
【0035】
第2の微結晶シリコン膜109を形成する際の、グロー放電プラズマの生成は、第1の微結晶シリコン膜107の条件を適宜用いることができる。なお、第1の微結晶シリコン膜107及び第2の微結晶シリコン膜109のグロー放電プラズマの生成は、同じ条件であることでスループットを向上させることができるが、異なっていてもよい。
【0036】
微結晶シリコンとは、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造の半導体である。微結晶シリコンは、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、混相粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは20nm以上50nm以下、さらに好ましくは25nm以上33nm以下の柱状結晶または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。このため、柱状結晶または針状結晶の界面には、粒界が形成される場合もある。なお、ここでの混相粒径は、基板表面に対して平行な面における混相粒の最大直径をいう。
【0037】
微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%含んでいる。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶シリコンが得られる。このような微結晶シリコンに関する記述は、例えば、米国特許4,409,134号で開示されている。
【0038】
本実施の形態により、混相粒の隙間を低減することで結晶性を高めた微結晶シリコン膜を作製することができる。
【0039】
また、第1の微結晶シリコン膜107上に第2の微結晶シリコン膜109を積層する2ステップの成膜法を用いることで、混相粒と混相粒の隙間を効果的に埋めることが可能であり、この結果高い膜密度を保ちつつ、粒径が大きく結晶性の高い微結晶シリコン膜を作製することができる。その結果、電界効果移動度を向上させることができ、より良いデバイスを実現することが可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態では、第1の微結晶シリコン膜107上に第2の微結晶シリコン膜109を積層する2ステップの成膜法により微結晶シリコン膜を形成しているが、この2ステップの成膜法は必須ではなく、1ステップまたは複数のステップの成膜法により微結晶シリコン膜を形成しても良い。
【0041】
また、本実施の形態による第1の条件および第2の条件の少なくとも一方における原料ガスの供給方法を以下のようなサイクルフローに変更して実施することも可能である。なお、以下には第1の条件における原料ガスの供給方法をサイクルフローにする場合について説明するが、第2の条件における原料ガスの供給方法をサイクルフローにする場合も以下の説明と同様である。
【0042】
第1の条件における原料ガスの供給方法は、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量を50倍以上1000倍以下にして堆積性気体を希釈したガスを供給と、当該ガスの堆積性気体の流量より低く、且つゲート絶縁膜105上へのシリコンの堆積よりゲート絶縁膜105上に堆積したシリコンのエッチングが優位となる堆積性気体の流量にしたガスの供給を交互に行うものである。なお、エッチングが優位となる堆積性気体の流量は0sccmを含む。
このときの堆積温度は、室温〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは150〜280℃とする。なお、プラズマCVD装置の上部電極及び下部電極の間隔は、プラズマが発生しうる間隔とすればよい。
【0043】
第1の条件における原料ガスの供給方法は、グロー放電プラズマの生成中、シリコンを含む堆積性気体を高流量と低流量に交互に変化させる方法である。堆積性気体が低流量で供給される期間は、ゲート絶縁膜105上へのシリコンの堆積よりゲート絶縁膜105上に堆積したシリコンのエッチングが優位となるのに対し、堆積性気体が高流量で供給される期間は、ゲート絶縁膜105上に堆積したシリコンのエッチングよりゲート絶縁膜105上へのシリコンの堆積が優位となる。従って、堆積性気体が低流量で供給される期間に、水素ガスによってアモルファスシリコン成分を選択的にエッチングしつつ、堆積性気体が高流量で供給される期間に混相粒を成長させる。この繰り返しにより、アモルファスシリコン成分が少なく、結晶性の高い第1の微結晶シリコン膜を得ることができる。
【0044】
また、堆積性気体を高流量で供給することで、新たな混相粒がゲート絶縁膜105上に発生し、既にゲート絶縁膜105上に堆積している混相粒はより大きくなる。堆積性気体を低流量で供給することで、発生したばかりの小さな混相粒がエッチングされて除去されるが、既にゲート絶縁膜105上に堆積していてやや大きな混相粒は残される。この繰り返しにより、粒径の小さい混相粒が少なくなり、粒径が大きくて粒径が揃い、粒径の均一性が高い混相粒を多く有する第1の微結晶シリコン膜を得ることができる。
【0045】
このように第1の条件を用いて形成することで、結晶成長が促進され、混相粒の結晶性が高まる。即ち、混相粒に含まれる結晶子の大きさが増大する。また、隣り合う混相粒の間に隙間ができ、混相粒の粒密度が低下する。
【0046】
また、上記の堆積性気体を高流量と低流量に交互に変化させる原料ガスの供給方法を用いることにより、堆積性気体の流量を変化させずに一定流量で供給する場合に比べて、ゲート絶縁膜105上に堆積される混相粒の粒径が大きくなり、混相粒の均一性が高く、混相粒の結晶性がより高くなる。
【0047】
また、前述したように、第1の微結晶シリコン膜107を形成する際に、堆積性気体を高流量と低流量に交互に変化させる原料ガスの供給方法を用いることで、堆積性気体の流量を変化させずに一定流量で供給する場合に比べて、ゲート絶縁膜105上に堆積される混相粒の粒径が大きくなり、混相粒の結晶性がより高くなる。そして、第1の微結晶シリコン膜107上に第2の微結晶シリコン膜109を積層する2ステップの成膜法を用いることで、混相粒と混相粒の隙間を効果的に埋めて高い膜密度を保ちつつ、粒径が大きく結晶性の高い微結晶シリコン膜を作製することができる。その結果、電界効果移動度を向上させることができ、より良いデバイスを実現することが可能となる。
【0048】
次に、図1(C)に示すように、第2の微結晶シリコン膜109上にシリコン膜111を形成する。シリコン膜111は、微結晶シリコン領域111a及びアモルファスシリコン領域111bで構成される。次に、シリコン膜111上に、不純物シリコン膜113を形成する。次に、不純物シリコン膜113上にレジストで形成されるマスク115を形成する。
【0049】
第2の微結晶シリコン膜109を種結晶として、部分的に結晶成長させる条件(結晶成長を低減させる条件)で、微結晶シリコン領域111a及びアモルファスシリコン領域111bを有するシリコン膜111を形成することができる。
【0050】
シリコン膜111は、プラズマCVD装置の処理室内において、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、窒素を含む気体とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。窒素を含む気体としては、アンモニア、窒素、フッ化窒素、塩化窒素等がある。グロー放電プラズマの生成は、第1の微結晶シリコン膜107と同様にすることができる。
【0051】
このとき、シリコンを含む堆積性気体と、水素との流量比は、第1の微結晶シリコン膜107または第2の微結晶シリコン膜109と同様に微結晶シリコン膜を形成する流量比を用い、さらに原料ガスに窒素を含む気体を用いる条件とすることで、第1の微結晶シリコン膜107及び第2の微結晶シリコン膜109の堆積条件よりも、結晶成長を低減することができる。具体的には、シリコン膜111の堆積初期においては、原料ガスに窒素を含む気体が含まれるため、部分的に結晶成長が抑制され、錐形状の微結晶シリコン領域が成長すると共に、アモルファスシリコン領域が形成される。さらに、堆積中期または後期では、錐形状の微結晶シリコン領域の結晶成長が停止し、アモルファスシリコン領域のみが堆積される。この結果、シリコン膜111において、微結晶シリコン領域111a、及び欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高いシリコン膜で形成されるアモルファスシリコン領域111bを形成することができる。
【0052】
ここでは、シリコン膜111を形成する条件の代表例は、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量が10〜2000倍、好ましくは10〜200倍である。なお、通常のアモルファスシリコン膜を形成する条件の代表例は、シリコンを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量は0〜5倍である。
【0053】
また、シリコン膜111の原料ガスに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、またはクリプトン等の希ガスを導入することで、成膜速度を高めることができる。
【0054】
シリコン膜111の厚さは、50〜350nmとすることが好ましく、さらに好ましくは120〜250nmとする。
【0055】
ここで、図1(C)に示すゲート絶縁膜105と、不純物シリコン膜113との間の拡大図を、図2に示す。
【0056】
図2(A)に示すように、シリコン膜111の微結晶シリコン領域111aは凹凸状であり、凸部は第2の微結晶シリコン膜109からアモルファスシリコン領域111bに向かって、先端が狭まる(凸部の先端が鋭角である)凸状(錐形状)である。なお、微結晶シリコン領域111aの形状は、第2の微結晶シリコン膜109からアモルファスシリコン領域111bに向かって幅が広がる凸状(逆錐形状)であってもよい。
【0057】
第1の微結晶シリコン膜107、第2の微結晶シリコン膜109、及び微結晶シリコン領域111aの厚さ、即ち、第1の微結晶シリコン膜107とゲート絶縁膜105との界面から微結晶シリコン領域111aの突起(凸部)の先端までの距離を、5nm以上150nm以下とすることで、薄膜トランジスタのオン電流を増加することができる。
【0058】
また、シリコン膜111に含まれる酸素の二次イオン質量分析法によって計測される濃度を、1×1018atoms/cm未満とすることで、微結晶シリコン領域111aの結晶性を高めることができるため好ましい。
【0059】
アモルファスシリコン領域111bは、窒素を有する非晶質半導体で形成されることが好ましい。窒素を有する非晶質半導体に含まれる窒素は、例えばNH基またはNH基として存在していてもよい。非晶質半導体としては、アモルファスシリコンを用いることができる。
【0060】
窒素を含むアモルファスシリコンは、従来の非晶質半導体と比較して、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体である。即ち、窒素を含むアモルファスシリコンは、従来の非晶質半導体と比較して、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体である。窒素を含むアモルファスシリコンは、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻であるため、バンドギャップが広くなり、トンネル電流が流れにくい。このため、窒素を含むアモルファスシリコンを微結晶シリコン領域111a及び不純物シリコン膜113の間に設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、窒素を含むアモルファスシリコンを設けることで、オン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0061】
さらに、窒素を含むアモルファスシリコンは、低温フォトルミネッセンス分光によるスペクトルのピークが、1.31eV以上1.39eV以下である。なお、微結晶シリコンを低温フォトルミネッセンス分光により測定したスペクトルのピークは、0.98eV以上1.02eV以下であり、窒素を含むアモルファスシリコンは、微結晶シリコンとは異なるものである。
【0062】
また、アモルファスシリコン領域111bの他に、微結晶シリコン領域111aにも、NH基またはNH基を有してもよい。
【0063】
また、図2(B)に示すように、アモルファスシリコン領域111bに、粒径が1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下のシリコン結晶粒111cを含ませることで、更にオン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0064】
第2の微結晶シリコン膜109からアモルファスシリコン領域111bに向かって、先端が狭まる凸状(錐形状)の微結晶シリコンは、微結晶シリコンが堆積する条件で第2の微結晶シリコン膜を形成した後、結晶成長を低減する条件で結晶成長させると共に、アモルファスシリコンを堆積することで、このような構造となる。
【0065】
シリコン膜111の微結晶シリコン領域111aは、錐形状または逆錐形状であるため、オン状態でソース電極及びドレイン電極の間に電圧が印加されたときの縦方向(膜厚方向)における抵抗、即ち、シリコン膜111の抵抗を下げることが可能である。また、微結晶シリコン領域111aと不純物シリコン膜113との間に、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い、窒素を含むアモルファスシリコンを有するため、トンネル電流が流れにくくなる。以上のことから、本実施の形態に示す薄膜トランジスタは、オン電流及び電界効果移動度を高めるとともに、オフ電流を低減することができる。
【0066】
不純物シリコン膜113は、リンが添加されたアモルファスシリコン、リンが添加された微結晶シリコン等で形成する。また、リンが添加されたアモルファスシリコン及びリンが添加された微結晶シリコンの積層構造とすることもできる。なお、薄膜トランジスタとして、pチャネル型薄膜トランジスタを形成する場合は、不純物シリコン膜113は、ボロンが添加された微結晶シリコン、ボロンが添加されたアモルファスシリコン等で形成する。
【0067】
不純物シリコン膜113は、プラズマCVD装置の処理室内において、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性気体と、水素と、ホスフィン(水素希釈またはシラン希釈)とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。なお、p型の薄膜トランジスタを作製する場合は、不純物シリコン膜113として、ホスフィンの代わりに、ジボランを用いて、グロー放電プラズマにより形成すればよい。
【0068】
レジストで形成されるマスク115はフォトリソグラフィ工程により形成することができる。
【0069】
次に、図1(D)に示すように、レジストで形成されるマスク115を用いて、第1の微結晶シリコン膜107、第2の微結晶シリコン膜109、シリコン膜111、及び不純物シリコン膜113をエッチングする。この工程により、第1の微結晶シリコン膜107、第2の微結晶シリコン膜109、シリコン膜111、及び不純物シリコン膜113を素子毎に分離し、シリコン積層体117、及び不純物シリコン膜121を形成する。なお、シリコン積層体117は、第1の微結晶シリコン膜107、第2の微結晶シリコン膜109、及びシリコン膜111それぞれの一部であり、第1の微結晶シリコン膜107、第2の微結晶シリコン膜109、及びシリコン膜111の微結晶シリコン領域それぞれ一部を含む微結晶シリコン領域117aと、シリコン膜111のアモルファスシリコン領域の一部を含むアモルファスシリコン領域117bとを有する。この後、レジストで形成されるマスク115を除去する。
【0070】
次に、図3(A)に示すように、不純物シリコン膜121上に導電膜127を形成する。導電膜127は、CVD法、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて形成する。
【0071】
次に、図3(B)に示すように、フォトリソグラフィ工程によりレジストで形成されるマスク(図示せず)を形成し、当該レジストで形成されるマスクを用いて導電膜127をエッチングして、ソース電極及びドレイン電極として機能する配線129a、129bを形成する。導電膜127のエッチングはドライエッチングまたはウェットエッチングを用いることができる。なお、配線129a、129bの一方は、ソース電極またはドレイン電極のみならず信号線としても機能する。ただし、これに限定されず、信号線とソース電極及びドレイン電極とは別に設けてもよい。
【0072】
次に、不純物シリコン膜121及びシリコン積層体117の一部をエッチングして、ソース領域及びドレイン領域として機能する一対の不純物シリコン膜131a、131bを形成する。また、微結晶シリコン領域133a及び一対のアモルファスシリコン領域133bを有するシリコン積層体133を形成する。このとき、微結晶シリコン領域133aが露出されるようにシリコン積層体117をエッチングすることで、配線129a、129bで覆われる領域では微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bが積層され、配線129a、129bで覆われず、かつゲート電極と重なる領域においては、微結晶シリコン領域133aが露出するシリコン積層体133となる。
【0073】
次に、シリコン積層体133にドライエッチングを行ってもよい。ドライエッチングの条件は、露出している微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bにダメージが入らず、且つ微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bに対するエッチングレートが低い条件を用いる。エッチングガスとしては、代表的にはCl、CF、またはN等を用いる。
【0074】
以上の工程によりシングルゲート型の薄膜トランジスタを作製することができる。また、オフ電流が低く、オン電流及び電界効果移動度が高いシングルゲート型の薄膜トランジスタを生産性高く作製することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置としてゲート電極がチャネル領域の下方に位置する薄膜トランジスタについて説明しているが、本発明の他の一態様に係る半導体装置としてチャネル領域の上方に後述するバックゲート電極が位置するデュアルゲート型の薄膜トランジスタに適用しても良い。この場合は、上記の工程に続けて、以下の工程を実施することによりデュアルゲート型の薄膜トランジスタを作製することができる。
【0076】
図3(B)に示す微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bの表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行い、その後、図3(C)に示すように、シリコン積層体133及び配線129a,129bの上に絶縁膜137を形成する。絶縁膜137は、ゲート絶縁膜105と同様に形成することができる。これらのプラズマ酸化処理、絶縁膜137の形成をプラズマCVD装置により連続して行うことが好ましい。これにより、微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bそれぞれの表面、例えばバックチャネル表面が汚染されることを低減できる。
【0077】
微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bにプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をcとし、酸素量をdとした場合に下記式(6)、(7)、好ましくは下記式(7)、(8)、さらに好ましくは(7)、(9)、さらに好ましくは(7)、(10)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
c/d≧2 ・・・(6)
d>0 ・・・(7)
c/d>2 ・・・(8)
c/d≧3 ・・・(9)
c/d≧4 ・・・(10)
【0078】
次に、フォトリソグラフィ工程により形成したレジストで形成されるマスクを用いて絶縁膜137に開口部(図示せず)を形成する。次に、絶縁膜137上にバックゲート電極139を形成する(図3(C)参照)。以上の工程により、デュアルゲート型の薄膜トランジスタを作製することができる。
【0079】
バックゲート電極139は、配線129a、129bと同様に形成することができる。また、バックゲート電極139は、透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。
【0080】
バックゲート電極139は、ゲート電極103と平行に形成することができる。この場合、バックゲート電極139に印加する電位と、ゲート電極103に印加する電位とを、それぞれ任意に制御することが可能である。このため、薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。また、キャリアが流れる領域、即ちチャネル領域が、微結晶シリコン領域のゲート絶縁膜105側、及び絶縁膜137側に形成されるため、薄膜トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0081】
また、バックゲート電極139は、ゲート電極103に接続させることができる。即ち、ゲート絶縁膜105及び絶縁膜137に形成した開口部(図示せず)において、ゲート電極103及びバックゲート電極139が接続する構造とすることができる。この場合、バックゲート電極139に印加する電位と、ゲート電極103に印加する電位とは、等しい。この結果、キャリアが流れる領域、即ちチャネル領域が、微結晶シリコン領域のゲート絶縁膜105側、及び絶縁膜137側に形成されるため、薄膜トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0082】
また、バックゲート電極139は、ゲート電極103と接続せず、フローティングでもよい。バックゲート電極139に電位を印加せずとも、チャネル領域が、微結晶シリコン領域のゲート絶縁膜105側、及び絶縁膜137側に形成されるため、薄膜トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0083】
さらには、バックゲート電極139は、絶縁膜137を介して配線129a、129bと重畳してもよい。
【0084】
以上の工程により、オン電流及び電界効果移動度が高く、オフ電流を低減し、バラツキの少ないシングルゲート型の薄膜トランジスタ及びデュアルゲート型の薄膜トランジスタを作製することができる。また、ゲート絶縁膜を酸素プラズマに曝した後、実施の形態1に示すような微結晶シリコン膜をチャネル領域に形成することで、上記効果を有し、更にノーマリーオフの薄膜トランジスタを作製することができる。
【0085】
本実施の形態によれば、ゲート絶縁膜105に窒素を含む絶縁膜を用いても、ゲート絶縁膜105の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行うことで、ゲート絶縁膜105の表面を酸化することができる。このため、ゲート絶縁膜105上に微結晶シリコン膜を成膜する時に、ゲート絶縁膜105中の窒素によって微結晶シリコン膜の結晶化が阻害されることを抑制でき、ゲート絶縁膜105の直上にアモルファスなシリコン領域(所謂インキュベーション層)ができるのを抑制することができる。従って、薄膜トランジスタの特性が低下するのを抑制することができる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、不純物シリコン膜121及びシリコン積層体117の一部をエッチングした際に微結晶シリコン膜のバックチャネル側の部分にエッチングによるダメージが入っても、微結晶シリコン膜の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行うことで、微結晶シリコン膜のダメージが入った部分を酸化することができる。このようにバックチャネル表面に酸化膜を形成することで、薄膜トランジスタの特性が低下するのを抑制することができる。
【0087】
(実施の形態2)
本実施の形態は、以下の点を除いて、実施の形態1と同様である。
【0088】
実施の形態1では、図1(A)に示すゲート絶縁膜105の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行っているが、本実施の形態では、水素とNOを含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う。
【0089】
ゲート絶縁膜105にプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をeとし、NO量をfとした場合に下記式(11)、(12)、好ましくは下記式(12)、(13)、さらに好ましくは(12)、(14)、さらに好ましくは(12)、(15)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
e/f≧2 ・・・(11)
f>0 ・・・(12)
e/f>2 ・・・(13)
e/f≧3 ・・・(14)
e/f≧4 ・・・(15)
【0090】
また、実施の形態1では、図3(B)に示す微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bの表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行っているが、本実施の形態では、水素とNOを含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う。
【0091】
微結晶シリコン領域133a及びアモルファスシリコン領域133bにプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をgとし、NO量をhとした場合に下記式(16)、(17))、好ましくは下記式(17)、(18)、さらに好ましくは(17)、(19)、さらに好ましくは(17)、(20)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
g/h≧2 ・・・(16)
h>0 ・・・(17)
g/h>2 ・・・(18)
g/h≧3 ・・・(19)
g/h≧4 ・・・(20)
【0092】
本実施の形態においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0093】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置に形成される薄膜トランジスタの作製方法について、図4を参照して説明する。図4は、図3(B)に示す工程に対応する工程である。
【0094】
実施の形態1と同様に、図1(A)〜(D)及び図3(A)の工程を経て、導電膜127を形成する。
【0095】
次に、図4に示すように、実施の形態1と同様に、配線129a、129bを形成し、不純物シリコン膜121及びシリコン積層体117の一部をエッチングして、ソース領域及びドレイン領域として機能する一対の不純物シリコン膜131a、131bを形成する。また、微結晶シリコン領域143a及びアモルファスシリコン領域143bを有するシリコン積層体143を形成する。このとき、アモルファスシリコン領域143bが露出されるようにシリコン積層体117をエッチングすることで、配線129a、129bで覆われる領域では微結晶シリコン領域143a及びアモルファスシリコン領域143bが積層され、配線129a、129bで覆われず、かつゲート電極と重なる領域においては、微結晶シリコン領域143aが露出せず、アモルファスシリコン領域143bが露出するシリコン積層体143となる。なお、ここでのシリコン積層体117のエッチング量は図3(B)より少ないものとする。
【0096】
この後の工程は、実施の形態1と同様である。
ただし、実施の形態1では、図3(B)に示す微結晶シリコン領域133aの表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行っているが、本実施の形態では、図4に示すアモルファスシリコン領域143bの表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う点が異なる。
【0097】
以上の工程によりシングルゲート型の薄膜トランジスタを作製することができる。この薄膜トランジスタは、バックチャネル側が非晶質であるため、図3(B)に示す薄膜トランジスタに比べてオフ電流を低減することができる。
【0098】
また、本実施の形態では、図4に示す工程の後に、図3(C)に示す工程と同様に、絶縁膜137を介してバックゲート電極139を形成しても良いし、バックゲート電極139を形成しなくても良い。
【0099】
本実施の形態においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(実施の形態4)
本実施の形態は、以下の点を除いて、実施の形態3と同様である。
【0101】
実施の形態3では、図1(A)に示すゲート絶縁膜105の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行っているが、本実施の形態では、水素とNOを含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う。
【0102】
ゲート絶縁膜105にプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をeとし、NO量をfとした場合に下記式(11)、(12)、好ましくは下記式(12)、(13)、さらに好ましくは(12)、(14)、さらに好ましくは(12)、(15)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
e/f≧2 ・・・(11)
f>0 ・・・(12)
e/f>2 ・・・(13)
e/f≧3 ・・・(14)
e/f≧4 ・・・(15)
【0103】
また、実施の形態3では、図4に示すアモルファスシリコン領域143bの表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行っているが、本実施の形態では、水素とNOを含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う。
【0104】
アモルファスシリコン領域143bにプラズマ処理を行う際は、酸化ガス雰囲気における水素量をgとし、NO量をhとした場合に下記式(16)、(17)、好ましくは下記式(17)、(18)、さらに好ましくは(17)、(19)、さらに好ましくは(17)、(20)を満たす。これにより、プラズマ処理の酸化力を飛躍的の向上させることができ、その結果、このプラズマ酸化処理をより短時間で行うことができる。
g/h≧2 ・・・(16)
h>0 ・・・(17)
g/h>2 ・・・(18)
g/h≧3 ・・・(19)
g/h≧4 ・・・(20)
【0105】
本実施の形態においても実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
本実施例では、実施の形態1における図3(B)に示す微結晶シリコン膜の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う工程を確認する実験を行ったので、その実験方法及び実験結果を説明する。
【0107】
実験方法は次のとおりである。
まず、SiウェハーをHFで90秒間処理することによりSiウェハー表面の酸化膜を除去した。次に、プラズマCVD装置内にSiウェハーを導入し、このプラズマCVD装置によってSiウェハーの表面を、水素と酸素の酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行うことにより、Siウェハー上に酸化シリコン膜を形成した。この際のプラズマ処理条件は、プラズマを発生させるための電極に平行平板型を用い、電極間のギャップを15mmとし、電極に供給する高周波電力を300Wまたは600Wとし、処理圧力を1250Paとし、処理温度については上部電極を250℃、下部電極を290℃とし、処理時間を180秒とし、水素と酸素のガスの総流量を1000sccmとし、水素と酸素のガスの比率を種々変更させた。
【0108】
次いで、Siウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚を分光エリプソメータにて測定する。測定点は、Siウェハーの面内の9点である。
【0109】
図5は、実施例1の実験結果を示すグラフであり、H/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図である。破線は高周波電力が300Wの場合、実線は高周波電力が600Wの場合、それぞれの測定結果を示す。
図5によれば、高周波電力が300Wの場合と600Wの場合のいずれにおいても、H/O=2/1(667sccm/333sccm)より大の割合で水素が増えると(即ちH/Oの流量比が2以上であると)、好ましくは、H/Oが3以上では、酸化膜の膜厚が急激に厚くなることがわかり、Siウェハー上の酸化が促進されることが確認できた。
【0110】
(実施例2)
本実施例では、実施の形態1における図3(B)に示す微結晶シリコン膜の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う工程を確認する実験を行ったので、その実験方法及び実験結果を説明する。
【0111】
実験方法は、プラズマCVD装置の電極に供給する高周波電力を600Wとしたこと、水素と酸素のガスの総流量を1000sccmまたは2000sccmとし、水素と酸素のガスの比率は実施例1よりも水素で高希釈に種々変更させたこと以外については、実施例1と同様である。破線はガスの総流量を1000sccmとした場合、実線はガスの総流量を2000sccmとした場合、それぞれの測定結果を示す。
【0112】
図6は、実施例2の実験結果を示すグラフであり、H/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図である。
図6によれば、図5に示す実験結果よりも水素の濃度を更に増やしても、Siウェハー上の酸化が促進されることが確認できた。
【0113】
(実施例3)
本実施例では、実施の形態1における図3(B)に示す微結晶シリコン膜の表面を、水素と酸素を含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う工程を確認する実験を行ったので、その実験方法及び実験結果を説明する。
【0114】
実験方法は、処理ガスを酸化ガスの全く入っていない水素のみの場合と水素希釈を全く行ってない酸素のみの場合についても行ったこと、処理ガスが水素のみの場合と酸素のみの場合についてはプラズマCVD装置の電極に供給する高周波電力を650Wとし、その他の場合についてはプラズマCVD装置の電極に供給する高周波電力を600Wとしたこと以外については、実施例1と同様である。
【0115】
図7は、実施例3の実験結果を示すグラフであり、H/Oの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図である。
【0116】
図7によれば、処理ガスを酸素のみとしたOプラズマに関しては、Hでの希釈が少ない処理ガスを用いた場合と酸化膜がほぼ同じ膜厚を示した。処理ガスを酸素のみとした場合の方が、酸化膜の膜厚が若干厚くなっているのは高周波電力が50Wほど高いためであると考えられる。
【0117】
また、図7によれば、処理ガスを酸素のみとしたOプラズマに関しては、Hで希釈した処理ガスを用いた場合に比べて酸化膜の膜厚にばらつきが生じた。従って、Hで希釈することによりSiウェハーの表面に形成される酸化膜の膜厚ばらつきを低減できることが確認された。
【0118】
また、図7によれば、処理ガスを水素のみとしたHプラズマに関しては、面内で大きなばらつきが見られ、Siウェハー端の方が厚く、Siウェハー中央の方が薄い分布が見られた。また、図7には示していないが、分光エリプソメータでのフィッティング値もSiONのnk値で概算した波形と重なっておらず、別の組成の膜が形成されていると考えられる。
【0119】
(実施例4)
本実施例では、実施の形態1のデュアルゲート型の薄膜トランジスタを下記の成膜条件で作製し、その際に図3(B)に示す微結晶シリコン膜の表面にプラズマ処理を行う工程を、実施例1と同様の方法を用いたものと、HOの酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行った比較例とを準備した。
【0120】
<成膜条件>
(1)ゲート絶縁膜105の成膜
ゲート絶縁膜:SiN
成膜装置:プラズマCVD装置
原料ガス及びガス流量:SiH/NH/N/H=15/500/180/200sccm
成膜圧力:100Pa
高周波電力:200W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:30mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:300nm
(2)ゲート絶縁膜105の表面のプラズマ処理
処理装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜の成膜から連続処理)
原料ガス及びガス流量:NO=400sccm
処理圧力:60Pa
高周波電力:300W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:30mm
処理温度:上部電極250℃/下部電極290℃
処理時間:180sec
(3)第1の微結晶シリコン膜107の成膜
成膜装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜のプラズマ処理から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/H/Ar=4/750/750sccm
成膜圧力:532Pa
高周波電力:150W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
成膜時間:27sec
(4)第2の微結晶シリコン膜109の成膜
成膜装置:プラズマCVD装置(第1の微結晶シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/H/Ar=1.8/750/750sccm
成膜圧力:5000Pa
高周波電力:125W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:7mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:65nm
(5)シリコン膜111の成膜
成膜装置:プラズマCVD装置(第2の微結晶シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/(1000ppmNH/H)/H/Ar=20/50/700/750sccm
成膜圧力:350Pa
高周波電力:60W(13.56MHz)
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:25mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:80nm
(6)不純物シリコン膜113の成膜
成膜装置:プラズマCVD装置(シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/(0.5%PH/H)/H=80/150/750sccm
成膜圧力:350Pa
高周波電力:30W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:50nm
(7)絶縁膜137の成膜
絶縁膜:SiN
成膜装置:プラズマCVD装置
原料ガス及びガス流量:SiH/NH/N/H=15/500/180/200sccm
成膜圧力:100Pa
高周波電力:200W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:30mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:300nm
(8)微結晶シリコン領域133aの表面のプラズマ処理
(8−1)実施例
処理装置:プラズマCVD装置
処理ガス及びガス流量:H/O=500sccm/500sccm、667sccm/333sccm、800sccm/200sccm、925sccm/75sccm、970sccm/30sccm
処理圧力:1250Pa
高周波電力:600W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
処理温度:上部電極250℃/下部電極290℃
処理時間:180sec
(8−2)比較例
処理装置:プラズマ処理装置
処理ガス及びガス流量:HO=300sccm
処理圧力:67Pa
高周波電力:1800W
処理時間:180sec
【0121】
次に、上記の実施例の薄膜トランジスタ及び比較例の薄膜トランジスタそれぞれについて、初期特性の測定及び加熱状態でのゲートBT試験を行った。その結果、初期特性はあまり差がみられなかったが、加熱条件でのゲートBT試験での信頼性においては図8に示すような差がみられた。
【0122】
<ゲートBT試験>
ゲートBT試験とは、トランジスタの信頼性を調べるための手法の一つであり、バイアス−熱ストレス試験である。ゲートBT試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化を、短時間で評価することができる。特に、ゲートBT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧(Vthとも示す)の変化量は、信頼性を調べるための重要な指標となる。ゲートBT試験前後において、しきい値電圧の変化量が少ないほど信頼性が高い。
【0123】
具体的には、トランジスタが形成されている基板温度を一定(85℃)に維持し、トランジスタのソースおよびドレインをほぼ同電位とし、ゲートにソースおよびドレインとは異なる電位を一定時間与える。なお、ゲートに与える電位がソースおよびドレインの電位よりも高い場合を+ゲートBT試験といい、ゲートに与える電位がソースおよびドレインの電位よりも低い場合を−ゲートBT試験という。
【0124】
図8によれば、H/O=2/1(667sccm/333sccm)より大、好ましくはH/Oが4以上の割合で水素が増えると、+ゲートBT試験時の劣化量である薄膜トランジスタのΔShift及びΔVthがともに低減する。これは、バックチャネル表面のダメージがプラズマ酸化処理によって回復しているためであると考えられる。なお、ΔShiftは、シフト値の変化量を示す。また、ΔVthは、しきい値電圧の変化量を示す。また、ここでは、シフト値を、ゲート電圧を横軸、ドレイン電流の対数を縦軸にプロットした曲線において、該曲線の最大傾きの直線と、ドレイン電流が1×10−12Aの直線との交点におけるゲート電圧と定義する。
【0125】
(実施例5)
本実施例では、実施の形態1のシングルゲート型の薄膜トランジスタを下記の成膜条件で作製し、その際に図1(A)に示すゲート絶縁膜105の表面にプラズマ処理を行う工程を、実施例1と同様の方法を用いたものと、NOまたはOの酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行った比較例1,2とを準備した。
【0126】
<成膜条件>
(1)ゲート絶縁膜105の成膜(実施例と比較例共通)
ゲート絶縁膜:SiN
成膜装置:プラズマCVD装置
原料ガス及びガス流量:SiH/NH/N/H=15/500/180/200sccm
成膜圧力:100Pa
高周波電力:200W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:30mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:300nm
(2)ゲート絶縁膜105の表面のプラズマ処理
(2−1)実施例
処理装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜の成膜から連続処理)
処理ガス及びガス流量:H/O=800sccm/200sccm、
処理圧力:1250Pa
高周波電力:900W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
処理温度:上部電極250℃/下部電極290℃
処理時間:180sec
(2−2)比較例1
処理装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜の成膜から連続処理)
処理ガス及びガス流量:NO=400sccm
処理圧力:60Pa
高周波電力:300W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:30mm
処理温度:上部電極250℃/下部電極290℃
処理時間:180sec
(2−3)比較例2
処理装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜の成膜から連続処理)
処理ガス及びガス流量:O=1000sccm
処理圧力:1250Pa
高周波電力:900W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
処理温度:上部電極250℃/下部電極290℃
処理時間:180sec
(3)第1の微結晶シリコン膜の成膜(実施例と比較例共通)
成膜装置:プラズマCVD装置(ゲート絶縁膜のプラズマ処理から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/H/Ar=3/750/750sccm
成膜圧力:1250Pa
高周波電力:100W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
成膜時間:40sec
(4)第2の微結晶シリコン膜の成膜(実施例と比較例共通)
成膜装置:プラズマCVD装置(第1の微結晶シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/H/Ar=2.0/1500/1500sccm
成膜圧力:10000Pa
高周波電力:350W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:7mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:65nm
(5)第3の微結晶シリコン膜の成膜(SiHの流量を増減させるサイクロフロー処理を行う。)
成膜装置:プラズマCVD装置(第2の微結晶シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガスのガス流量及び時間:SiH(High/Low=1/0.1sccm、High/Low=10/5sec)
/Ar=1500sccm/1500sccm
成膜圧力:10000Pa
高周波電力:350W
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:25mm
成膜温度:上部基板250℃/下部電極290℃
膜厚:25nm
(6)シリコン膜111の成膜(実施例と比較例共通)
成膜装置:プラズマCVD装置(第2の微結晶シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/(1000ppmNH/H)/H/Ar=20/50/700/750sccm
成膜圧力:350Pa
高周波電力:60W(13.56MHz)
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:25mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:80nm
(7)不純物シリコン膜113の成膜(実施例と比較例共通)
成膜装置:プラズマCVD装置(シリコン膜の成膜から連続成膜)
原料ガス及びガス流量:SiH/(0.5%PH/H)/H=99/180/1221sccm
成膜圧力:1050Pa
高周波電力:60W(パルス放電,10kHz,ON30%,OFF70%)
平行平板型の上部電極と下部電極のギャップ:15mm
成膜温度:上部電極250℃/下部電極290℃
膜厚:50nm
【0127】
次に、上記の実施例の薄膜トランジスタ及び比較例1,2の薄膜トランジスタそれぞれについて、実施例4と同様に初期特性の測定及び加熱状態でのゲートBT試験を行った。その結果、図9に示すように、ゲート絶縁膜105の表面のプラズマ処理にNOまたはOの酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を用いた比較例1,2に比べて、酸化の促進されるプラズマ処理を用いた実施例の方が、初期特性及び信頼性ともに向上することが確認された。つまり、酸素を水素で希釈した混合ガスをプラズマ処理に用いることにより、水素によって酸化が促進され、薄膜トランジスタの特性を改善させることができる。
【0128】
(実施例6)
本実施例では、実施の形態2における図1(A)に示すゲート絶縁膜105の表面を、水素とNOを含む酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行う工程を確認する実験を行ったので、その実験方法及び実験結果を説明する。
【0129】
実験方法は次のとおりである。
まず、SiウェハーをHFで90秒間処理することによりSiウェハー表面の酸化膜を除去した。次に、プラズマCVD装置内にSiウェハーを導入し、このプラズマCVD装置によってSiウェハーの表面を、水素とNOの酸化ガス雰囲気のプラズマに曝すプラズマ処理を行うことにより、Siウェハー上に酸化シリコン膜を形成した。この際のプラズマ処理条件は、プラズマを発生させるための電極に平行平板型を用い、電極間のギャップを15mmとし、電極に供給する高周波電力を300Wまたは600Wまたは900Wとし、処理圧力を1250Paとし、処理温度については上部電極を250℃、下部電極を290℃とし、処理時間を180秒とし、水素とNOのガスの総流量を1000sccmとし、水素と酸素のガスの比率を種々変更させた。
【0130】
次いで、Siウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚を分光エリプソメータにて測定する。測定点は、Siウェハーの面内の9点である。
【0131】
図10は、実施例6の実験結果を示すグラフであり、H/NOの流量比とSiウェハー上の酸化シリコン膜の膜厚の関係を示す図である。
図10によれば、高周波電力が300Wの場合と600Wと900Wの場合のいずれにおいても、H/NO=2/1(667sccm/333sccm)より大の割合で水素が増えると(即ちH/NOの流量比が2以上であると)、酸化膜の膜厚が急激に厚くなることがわかり、Siウェハー上の酸化が促進されることが確認できた。
【0132】
実施例1,6によれば、水素ガス/酸化ガスの流量比が2以上であると、Siウェハー上の酸化が促進されることが分かる。つまり、酸化ガスに水素ガスを添加することにより、プラズマ処理での酸化が促進されることが確認できた。
【0133】
(実施例1〜6の考察)
を酸化ガスに多量に添加することで、なぜ酸化が促進されるのかについて考察する。実施例1〜6でプラズマ処理を行ったH+OやH+NOの混合系では、プラズマ放電中にOHラジカルが発生し、その作用によって酸化が行われていると考えられる。
【0134】
実際に、H、O、NOおよびこれらの混合ガスでのプラズマ放電時の分光スペクトルを観察したものを図11及び図12に示す。図11において、破線は、流量1000sccmのHを流したとき、太実線は流量800sccmのH及び流量200sccmのOの混合ガスを流したとき、細実線は流量1000sccmのOを流したとき、それぞれにおいて発生するプラズマ放電時の分光スペクトルである。図12において、破線は、流量1000sccmのHを流したとき、太実線は流量800sccmのH及び流量200sccmのNOの混合ガスを流したとき、細実線は流量1000sccmのNOを流したとき、それぞれにおいて発生するプラズマ放電時の分光スペクトルである。このスペクトルを見ると、分光スペクトルで言うところの309〜310nm付近にピーク(O−H結合由来の発光)が、H+OやH+NOの混合ガスでは見られているが、H、O、またはNOの単ガスの時には見られていない。これはHガスと酸化ガスを混合してプラズマ放電をすることで、OHラジカルが発生している事を示していると考えられる。
【0135】
上記の系においてHの量を増やしていくと、ある割合を超したところでHガスに対してOやNOが少なくなるために、OHラジカルを形成しようとした場合にO原子に対してH原子が余剰することになる。この余剰したH原子は、プラズマ放電中にはHラジカルとなって基板表面の結合、単結晶シリコン表面やシリコン膜表面ではSi−Si結合、SiN表面ではSi−N結合を切断することで、OHラジカルが結合へ作用しやすくなり、結果として膜表面の酸化を促進させる作用をしているのではないかと考えられる。
【符号の説明】
【0136】
101 基板
103 ゲート電極
105 ゲート絶縁膜
107 第1の微結晶シリコン膜
109 第2の微結晶シリコン膜
111 シリコン膜
111a 微結晶シリコン領域
111b アモルファスシリコン領域
111c シリコン結晶粒
113 不純物シリコン膜
115 マスク
117 シリコン積層体
117a 微結晶シリコン領域
117b アモルファスシリコン領域
121 不純物シリコン膜
127 導電膜
129a 配線
129b 配線
131a 不純物シリコン膜
131b 不純物シリコン膜
133 シリコン積層体
133a 微結晶シリコン領域
133b アモルファスシリコン領域
137 絶縁膜
139 バックゲート電極
143 シリコン積層体
143a 微結晶シリコン領域
143b アモルファスシリコン領域
1 微結晶シリコン膜
2 ゲート絶縁膜
2a 直上部分
3 シリコン膜
3a 部分
4 ゲート電極
5a 不純物シリコン膜
6a 配線
7 絶縁膜
55 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領
域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、
前記ゲート絶縁膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプラ
ズマに曝すプラズマ処理を行い、
前記ゲート絶縁膜上に前記微結晶半導体膜を形成し、
前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をaとし、前記酸化ガスの量をbとした場合
に下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。
a/b≧2 ・・・(1)
b>0 ・・・(2)
【請求項2】
ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領
域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、
前記微結晶半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプ
ラズマに曝すプラズマ処理を行い、
前記微結晶半導体膜上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にバックゲート電極を形成し、
前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をcとし、前記酸化ガスの量をdとした場合
に下記式(6)、(7)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。
c/d≧2 ・・・(6)
d>0 ・・・(7)
【請求項3】
ゲート電極、窒素を含むゲート絶縁膜、微結晶半導体膜によって形成されたチャネル領
域を有する薄膜トランジスタを備えた半導体装置の作製方法であって、
前記ゲート絶縁膜上に前記微結晶半導体膜を形成した後に、前記微結晶半導体膜上に非
晶質半導体膜を形成し、
前記非晶質半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気のプ
ラズマに曝すプラズマ処理を行い、
前記非晶質半導体膜上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にバックゲート電極を形成し、
前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をcとし、前記酸化ガスの量をdとした場合
に下記式(6)、(7)を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。
c/d≧2 ・・・(6)
d>0 ・・・(7)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記酸化ガスは、酸素、NO及びNOの一以上であることを特徴とする半導体装置
の作製方法。
【請求項5】
絶縁膜または半導体膜を、酸素原子を含む酸化ガスと水素とを有する酸化ガス雰囲気の
プラズマに曝すプラズマ酸化処理方法であって、
前記酸化ガス雰囲気における前記水素の量をeとし、前記酸化ガスの量をfとした場合
に下記式(11)、(12)を満たすことを特徴とするプラズマ酸化処理方法。
e/f≧2 ・・・(11)
f>0 ・・・(12)
【請求項6】
請求項5において、
前記酸化ガスは、酸素、NO及びNOの一以上であることを特徴とするプラズマ酸
化処理方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記絶縁膜は窒素を含むことを特徴とするプラズマ酸化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−235097(P2012−235097A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93301(P2012−93301)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】