説明

半導体装置の検査方法、及び半導体装置の検査装置

【課題】半導体装置の電極を形成していない非電極面に電圧を印加する場合であっても、非電極面へ照射される赤外線、又は非電極面から放射される赤外線を用いて、半導体装置の欠陥部位を容易に判別できる半導体装置の検査方法、及び半導体装置の検査装置を提供すること。
【解決手段】赤外線を用いて半導体装置10の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法において、半導体装置10の電極を形成していない非電極面10aに透明電極21bを当接する工程と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加すると共に、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに赤外線のスポット光31を照射する工程と、赤外線のスポット光31で半導体装置10の非電極面10aを走査して、半導体装置10の電流変化ΔIを測定し、半導体装置10の欠陥部位を判別する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を用いて半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法、及び半導体装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置に電圧を印加した状態で、半導体装置から放出される赤外線の放射量を測定することにより、半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来の半導体装置の検査方法の一例を示した模式図である。検査の対象となる半導体装置は、光センサや太陽電池等に利用される光起電力素子であり、図7に示したように、ITO等で形成された第1電極701と、CuやAl等で形成された第2電極702と、光起電力層703と、保護層704とを備える。また、図7において、712は短絡欠陥、713はバイアス電流、714は欠陥部より放射された赤外線、715は熱画像分析装置である。
【0004】
上記従来の半導体装置の検査方法では、第1電極701と第2電極702との間に適当な電圧を印加する。短絡欠陥712に電流が集中してジュール熱が発生し、赤外線が放射される。この赤外線のうち、図7の上方に放射された赤外線の一部は保護層704を透過し、一部は保護層704に吸収され保護層704の温度を上昇させる。また、保護層704の温度は熱伝導によって第1電極701から直接伝わる熱によっても上昇する。このようにして温度が上昇した欠陥712近傍の保護層704からも赤外線が放射される。保護層704を透過した赤外線や保護層704自体から放射された赤外線を赤外線分析装置715によって検出することによって欠陥712の位置を検出する。
【特許文献1】特開2002−203978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の半導体装置の検査方法では、検査の対象となる半導体装置が、光センサや太陽電池等に利用される光起電力素子である。このため、半導体装置は、太陽光等の光を受光する構造を有する。つまり、第1電極には、可視光線、赤外線等の光を透過するITO等の透明電極が用いられる。
【0006】
これに対し、IGBT、パワーMOSFET、ダイオード等の縦型構造の半導体装置は、太陽光等の外部光による誤作動を防止するため、外部光を遮光する封止樹脂により封止される。このため、電極には、赤外線を透過しない安価なCuやAl等の金属材料が用いられる。したがって、赤外線を用いてIGBT等の縦型構造の半導体装置を検査するためには、少なくとも1つの金属電極を除去し、金属電極の代わりにプローブを介して、電圧を印加する必要がある。
【0007】
しかしながら、半導体装置の電極を形成していない非電極面に電圧を印加する場合、従来のプローブを用いた電圧印加方法では、非電極面の全面に等電圧を印加できない。このため、非電極面の領域毎に半導体装置のアノードとカソードとの間に印加される電圧が異なり、非電極面へ照射される赤外線、又は非電極面から放射される赤外線を用いて欠陥部位を判別し難い。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、半導体装置の電極を形成していない非電極面に電圧を印加する場合であっても、非電極面へ照射される赤外線、又は非電極面から放射される赤外線を用いて、半導体装置の欠陥部位を容易に判別できる半導体装置の検査方法、及び半導体装置の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、第1の発明は、赤外線を用いて半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法において、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に透明電極を当接する工程と、
前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に電圧を印加すると共に、前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に赤外線のスポット光を照射する工程と、
前記赤外線の前記スポット光で前記半導体装置の前記非電極面を走査して、前記半導体装置の電流変化を測定し、前記半導体装置の欠陥部位を判別する工程と、
を有する。
【0010】
また、第2の発明は、赤外線を用いて半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法において、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に透明電極を当接する工程と、
前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に電圧を印加する工程と、
前記非電極面に電圧を印加した状態で、前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面の所定領域から放射される赤外線の光量を測定しつつ、前記所定領域を移動して、前記半導体装置の欠陥部位を判別する工程と、
を有する。
【0011】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明に係る半導体装置の検査方法に用いる半導体装置の検査装置であって、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に当接するための透明電極を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体装置の電極を形成していない非電極面に透明電極を当接するので、透明電極を介して非電極面の全面に等電圧を印加でき、半導体装置のアノードとカソードとの間に等電圧を印加でき、透明電極を介して非電極面へ照射される赤外線、又は透明電極を介して非電極面から放射される赤外線を用いて、半導体装置の欠陥部位を容易に判別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明の半導体装置の検査装置の構成の一例を示した模式図である。本実施例の半導体装置10の検査装置20は、透明電極21bを有するガラスステージ21と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加するための電圧供給部23と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに赤外線のスポット光を照射し、赤外線のスポット光で半導体装置10の非電極面10aを走査するための光学部25と、半導体装置10の電流変化ΔIを検出するための電流変化検出部27と、後述の電気信号を処理して、画像データを作製、表示する画像作製表示部29とを備える。尚、半導体装置10は、半導体装置10の検査装置20の構成要素ではない。
【0015】
半導体装置10は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET、ダイオード等の縦型構造の半導体装置である。IGBT10は、Si基板の裏面の全面にAl等の金属を積層して形成されたコレクタ電極(図示せず)と、Si基板の表面の互いに隔離された領域にAl等の金属を積層して形成されたエミッタ電極(図示せず)、及びゲート電極(図示せず)とを備える。IGBT10は、ゲート電極の電圧を制御することで、コレクタ電極からエミッタ電極へ流れる電流のオン、オフを制御する。
【0016】
このように、縦型構造の半導体装置10は、表面及び裏面に赤外線を透過しない金属電極を備える。このため、赤外線による欠陥部位の検査前に、Si基板の表面及び裏面に積層された複数の金属電極のうち、少なくとも1つの金属電極を除去する必要がある。除去される金属電極は、IGBTの場合、コレクタ電極が好ましい。これは、IGBTの構造上、欠陥部位がエミッタ電極側に形成され易いためである。金属電極の除去には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いることができる。
【0017】
ガラスステージ21は、ガラス基板21a上に、透明電極21bを成膜して形成され、透明電極21bは、半導体装置10の非電極面10aの全面に当接する構成を有する。ガラスステージ21は、半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加すると共に、半導体装置10の非電極面10aへ赤外線を透過するものである。
【0018】
ガラス基板21aは、例えば、石英ガラスや、赤外線透過率の高い非酸化物ガラスで形成される。ガラス基板21aは、半導体装置10が透明電極21bに圧着された際、破損しない程度の強度を有する限り、薄く形成されて良い。ガラス基板21aが薄くなるほど、ガラス基板21aの赤外線透過率が高くなる。このガラス基板21aの厚さは、例えば、1〜10mmである。ガラス基板21a上には、透明電極21bが成膜されている。
【0019】
透明電極21bは、半導体装置10の非電極面10aの全面に当接され、除去された金属電極に代わって、半導体装置10の非電極面10aの全面に電圧を供給する。透明電極21bは、酸化錫、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の酸化物、導電性フィラーを含有する樹脂等の導電性樹脂で形成される。透明電極21bの形成には、真空蒸着、スパッタリング等により真空成膜する方法、又は金属アルコキシドの分散溶液をスピンコートにより塗布、焼成する方法を用いる。透明電極21bの成膜後、CMP法等により平面研磨して良い。
【0020】
また、透明電極21bは、半導体装置10の非電極面10aの全面に等電圧を印加できる限り、薄く形成されて良い。図2は、ITO膜の膜厚と赤外線の透過率との関係の一例を示した図であり、(a)は膜厚340nmの場合における、赤外線の波長と透過率との関係を示した図、(b)は膜厚120nmの場合における、赤外線の波長と透過率との関係を示した図である。膜厚340nmのITO膜は、図2(a)に示したように、波長1300nmの赤外線レーザを約12%透過する。これに対して、膜厚120nmのITO膜は、図2(b)に示したように、波長1300nmの赤外線レーザを約51%透過する。また、同じ膜厚のITO膜は、図2に示したように、赤外線の波長が長いほど、赤外線を透過し易い。したがって、ITO膜の膜厚は、波長1300nm以上の長波長の赤外線を十分に透過するため、120nm以下が好ましい。
【0021】
また、透明電極21bは、ガラス基板21aの上方、及び下方のいずれに形成されても良いが、上方に形成されることが好ましい。ガラス基板21aの上方に透明電極21bを形成すると、半導体装置10を透明電極21b上に載置した状態で、半導体装置10を透明電極21bへ圧着でき、圧着の際のハンドリングが容易になる。この場合、後述の光学部25は、ガラス基板21aの下方に配置され、下方から半導体装置10の非電極面10aへ赤外線を照射する。
【0022】
電圧供給部23は、透明電極21bを介して、半導体装置10の非電極面10aに定電圧を印加する。また、電圧供給部23は、半導体装置10がIGBTの場合、検査の対象となる欠陥部位の種類に応じて、ゲート電極にも電圧を印加する。この電圧供給部23には、DC電源が用いられる。印加電圧は、検査の対象となる欠陥部位の種類に応じて、0.1〜500Vに設定される。
【0023】
光学部25は、例えば、走査型レーザ顕微鏡の光学系である。光学部25は、赤外線レーザを発振する赤外線レーザ発振部25aと、赤外線レーザ発振部25aから発振された赤外線レーザを半導体装置10の非電極面10a上に集光し、赤外線レーザのスポット光で半導体装置10の非電極面10a上を走査する光軸制御部25bとを備える。
【0024】
赤外線レーザ発振部25aは、例えば、半導体レーザである。赤外線レーザには、赤外線がSi基板を通過して表面電極10bへ到達できるよう、Si基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長が用いられる。つまり、赤外線レーザには、1100nmより長い波長が用いられる。
【0025】
光軸制御部25bは、ガルバノミラー、及び共振型ミラー等の赤外線レーザの伝播方向を変更する光学ミラー(図示せず)と、これらの光学ミラーの回転角等を電子制御するマイクロコンピュータ(図示せず)と、赤外線レーザを集光する対物レンズ(図示せず)とを有する。また、光軸制御部25bは、赤外線レーザによる半導体装置10の非電極面10aの照射領域の位置を示す電気信号を出力する。
【0026】
電流変化検出部27は、縦型構造の半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間を流れる電流の変化ΔIを検出し、電流変化ΔIに応じた電気信号を出力する。例えば、半導体装置10がIGBTである場合、電流変化検出部27は、コレクタ電極とエミッタ電極との代わりに、透明電極21bとエミッタ電極10bとの間を流れる電流変化ΔIを検出する。
【0027】
画像作製表示部29は、後述の電気信号を処理し画像データを作製する画像作製部29aと、画像作製部29aにより作製された画像データを表示する画像表示部29bとを備える。また、画像作製表示部29には、電圧供給部23、光軸制御部25b、及び電流変化検出部27が接続されている。
【0028】
画像作製部29aには、マイクロコンピュータが用いられる。この画像作製部29aは、電圧供給部23のオン状態を示す電気信号を電圧供給部23から取得すると、画像データの作製を開始する。画像作製部29aは、光軸制御部25bから取得する、赤外線レーザによる半導体装置10の非電極面10aの照射領域の位置を示す電気信号と、電流変化検出部27から取得する、半導体装置10の電流変化ΔIに応じた電気信号とを同期して処理し、画像データを作製する。具体的には、赤外線レーザによる半導体装置10の非電極面10aの照射領域の位置を示す電気信号は、画像のピクセル座標データに変換され、半導体装置10の電流変化ΔIを示す電気信号は、画像の疑似カラー・データに変換される。疑似カラーは、例えば、電流変化ΔIが正から負になるほど、赤色から青色に波長変移するよう設定される。
【0029】
また、画像作製部29aは、作製した画像データを、半導体装置10を撮像した画像データと合成して、合成画像データを作製してよい。半導体装置10を撮像した画像データの作製には、後述の赤外線センサ部45a、画像作製部49aが用いられる。
【0030】
画像表示部29bには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置が用いられ、画像作製部29aで作製された画像データ又は合成画像データを表示する。これにより、半導体装置10の各領域における電流変化ΔIを視認でき、電流変化ΔIの異常部位を判別でき、半導体装置10の欠陥部位を判別できる。尚、電流変化ΔIの異常部位と、欠陥部位との因果関係については、後述する。
【0031】
図3は、図1の半導体装置10の検査装置20を用いた、半導体装置10の検査方法の一例を示した模式図である。本実施例の半導体装置10の検査方法は、半導体装置10の電極を形成していない非電極面10aに透明電極21bを当接する第1工程と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加すると共に、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに赤外線のスポット光31を照射する第2工程と、赤外線のスポット光31で半導体装置10の非電極面10aを走査して、半導体装置10の電流変化ΔIを測定し、半導体装置10の欠陥部位を判別する第3工程とを有する。
【0032】
第1工程では、半導体装置10の非電極面10aに透明電極21bを当接し、圧着する。これにより、透明電極21bを介して非電極面10aの全面に等電圧を印加でき、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間に等電圧を印加できる。この結果、透明電極21bを介して非電極面10aへ照射される赤外線のスポット光31を用いて欠陥部位を容易に判別できる。
【0033】
また、ガラスステージ21上に透明電極21bを備えるため、半導体装置10の非電極面10a上に透明電極21bを成膜する必要が無く、検査工程を短縮できる。
【0034】
第2工程では、電圧供給部23を用いて、透明電極21bを介して、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間に順バイアス又は逆バイアスの定電圧を印加する。また、定電圧を印加した状態で、光学部25を用いて、透明電極21bを介して、半導体装置10の非電極面10a上に赤外線のスポット光31を照射する。照射される赤外線には、Si基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長(例えば、1300nm)のものが用いられる。
【0035】
赤外線のスポット光31は、半導体装置10を通過する際、通過領域を加熱する。このときの温度上昇は、半導体装置10の欠陥部位を加熱する場合と、半導体装置10の正常部位を加熱する場合とで異なる。導電率は、温度に依存するため、赤外線レーザの通過領域が正常部位から欠陥部位に移動すると、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間を流れる電流が変化する。このため、電流変化ΔIを測定することにより、半導体装置10の欠陥部位を判別することができる。
【0036】
第3工程では、光学部25を用いて、赤外線のスポット光31で範囲R1を走査して、半導体装置10の非電極面10aを走査すると共に、電流変化検出部27を用いて、半導体装置10の電流変化ΔIを測定し、半導体装置10における欠陥部位を判別する。欠陥部位の判別には、画像作製表示部29で作製、表示される合成画像データが用いられる。これにより、半導体装置10の各領域における電流変化ΔIの異常部位を判別でき、半導体装置10における欠陥部位を判別できる。
【0037】
図4は、画像作製表示部29により作製された画像データの一例を示した写真であり、(a)は半導体装置10を撮像した画像データを合成する前の画像データ、(b)は半導体装置10を撮像した画像データを合成した後の合成画像データである。尚、図4において、電流変化ΔIを示す疑似カラーは、電流変化ΔIに応じて白色から黒色に波長変移する設定とした。
【0038】
合成前の画像データにおいて、電流変化ΔIの異常部位、つまり欠陥部位は、図4(a)に示すように、白色表示されている。また、合成後の合成画像データにおいて、欠陥部位は、図4(b)に示すように、白色から黒色へ表示変換されている。このように作製された合成画像データを用いて、半導体装置10における電流変化ΔIの異常部位を判別でき、半導体装置10における欠陥部位を判別できる。
【0039】
欠陥部位の判別結果は、半導体装置10の設計、及び製造工程に反映され、半導体装置10の歩留まり向上に用いられる。
【0040】
図5は、本発明の半導体装置の検査装置の構成の別の例を示した模式図である。本実施例の半導体装置10の検査装置40は、透明電極21bを有するガラスステージ21と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加するための電圧供給部23と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aの所定領域から放射される赤外線の光量を検知すると共に、半導体装置10の非電極面10aの所定領域を移動する光学部45と、後述の電気信号を処理して、画像データを作製、表示する画像作製表示部49とを備える。尚、半導体装置10は、半導体装置10の検査装置40の構成要素ではない。以下、半導体装置10の検査装置40の各構成について説明するが、図1の半導体装置10の検査装置20と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
光学部45は、例えば、走査型レーザ顕微鏡の光学系である。光学部45は、受光する赤外線の光量に応じた電気信号を出力する赤外線センサ部45aと、半導体装置10の非電極面10a上の所定領域と赤外線センサ部45aとを結ぶ光軸(光路)を形成すると共に、半導体装置10の非電極面10a上の所定領域を移動する光軸制御部45bとを備える。
【0042】
赤外線センサ部45aは、例えば、光電変換素子であり、受光する赤外線の光量に応じた電気信号を出力する。この赤外線センサ部45aで受光される赤外線は、後述するように、Si基板を通過した後、半導体装置10の非電極面10aから放射されるものである。このため、赤外線センサ部45aには、Si基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長、つまり、1100nm以上の波長の赤外線に対して感度の高い光電変換素子が用いられる。
【0043】
光軸制御部45bは、光軸制御部25bと同様に、ガルバノミラー、及び共振型ミラー等の赤外線の伝播方向を変更する光学ミラー(図示せず)と、これらの光学ミラーの回転角等を電子制御するマイクロコンピュータ(図示せず)と、赤外線を集光する対物レンズ(図示せず)とを有してよい。この光軸制御部45bは、赤外線センサ部45aで受光される赤外線を放射する非電極面10a上の所定領域の位置を示す電気信号を出力する。
【0044】
画像作製表示部49は、後述の電気信号を処理し画像データを作製する画像作製部49aと、画像作製部49aにより作製された画像データを表示する画像表示部49bとを備える。また、画像作製表示部49には、電圧供給部23、光軸制御部45b、及び赤外線センサ部45aが接続されている。
【0045】
画像作製部49aには、マイクロコンピュータが用いられる。この画像作製部49aは、電圧供給部23のオン状態を示す電気信号を電圧供給部23から取得すると、画像データの作製を開始する。画像作製部49aは、赤外線センサ部45aで受光される赤外線を放射する非電極面10a上の所定領域の位置を示す電気信号と、赤外線センサ部45aで受光される赤外線の光量を示す電気信号とを同期して処理し、画像データを作製する。具体的には、非電極面10a上の所定領域の位置を示す電気信号は、画像のピクセル座標データに変換され、赤外線の光量を示す電気信号は、画像の疑似カラー・データに変換され、画像データが作成される。疑似カラーは、例えば、赤外線の光量が大きくなるにつれて、赤色から青色に波長変移するよう設定される。
【0046】
画像表示部49bには、画像表示部29bと同様に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置が用いられ、画像作製部49aで作製された画像データを表示する。これにより、半導体装置10の非電極面10aから放射された赤外線の光量を視認でき、赤外線の光量の異常部位を判別でき、半導体装置10の欠陥部位を判別できる。尚、赤外線の光量の異常部位と、欠陥部位との因果関係については、後述する。
【0047】
図6は、図5の半導体装置10の検査装置40を用いた、半導体装置10の検査方法の一例を示した模式図である。本実施例の半導体装置10の検査方法は、半導体装置10の電極を形成していない非電極面10aに透明電極21bを当接する第1工程と、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aに電圧を印加する第2工程と、電圧を印加した状態で、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aの所定領域から放射される赤外線32の光量を、半導体装置10の非電極面10aの所定領域毎に測定し、半導体装置10の欠陥部位を判別する第3工程とを有する。
【0048】
第1工程では、半導体装置10の非電極面10aに透明電極21bを当接し、圧着する。これにより、透明電極21bを介して非電極面10aの全面に等電圧を印加でき、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間に等電圧を印加できる。この結果、透明電極21bを介して非電極面10aから放射される赤外線のスポット光32を用いて欠陥部位を容易に判別できる。
【0049】
また、ガラスステージ21上に透明電極21bを備えるため、半導体装置10の非電極面10a上に透明電極21bを成膜する必要が無く、検査工程を短縮できる。
【0050】
第2工程では、電圧供給部23を用いて、透明電極21bを介して、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間に順バイアス又は逆バイアスの定電圧を印加する。
【0051】
電圧が印加された状態で、例えば、半導体装置10に短絡欠陥部位が存在すると、短絡欠陥部位で電流が集中的に流れ、ジュール熱により温度が上昇し、短絡欠陥部位から赤外線が放射される。短絡欠陥部位から放射された赤外線のうち、Si基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長(1100nmより長い波長)の赤外線は、Si基板を通過し、その一部が非電極面10aから透明電極21bへ放射される。このため、非電極面10a上の所定領域毎に、赤外線32の放射光量を測定することにより、半導体装置10の欠陥部位を判別することができる。
【0052】
また、電圧が印加された状態で、例えば、IGBT10のゲート絶縁膜に欠陥部位が存在すると、欠陥部位でゲートの電界効果が高くなり、電子と正孔とが再結合し、光が放射される。ゲート絶縁膜の欠陥部位から放射された赤外線のうち、Si基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長(1100nmより長い波長)の赤外線は、Si基板を通過し、その一部が非電極面10aから透明電極21bへ放射される。このため、非電極面10a上の所定領域毎に、赤外線32の放射光量を測定することにより、IGBT10のゲート絶縁膜の欠陥部位を判別することができる。
【0053】
第3工程では、電圧を印加した状態で、光学部45を用いて、透明電極21bを介して半導体装置10の非電極面10aの所定領域から放射される赤外線32の光量を測定しつつ、所定領域を範囲R2に渡り移動し、半導体装置10における欠陥部位を判別する。欠陥部位の判別には、画像作製表示部49で作製、表示される画像データを用いる。これにより、赤外線の光量の異常部位を判別でき、半導体装置10における欠陥部位を判別できる。尚、赤外線センサ部45aを用いた赤外線の光量の測定は、太陽光によるノイズを低減するため、暗室で行われてよい。
【0054】
欠陥部位の判別結果は、半導体装置10の設計、及び製造工程に反映され、半導体装置10の歩留まり向上に用いられる。
【0055】
以上説明したように、本発明の半導体装置10の検査方法は、ガラスステージ21の透明電極21bに、半導体装置10の非電極面10aを当接する。これにより、半導体装置10の非電極面10aの全面に等電圧を印加でき、半導体装置10のアノード10aとカソード10bとの間に等電圧を印加できる。この結果、半導体装置10の電極を形成していない非電極面10aに電圧を印加する場合であっても、非電極面10aへ照射される赤外線31、又は非電極面10aから放射される赤外線32を用いて、半導体装置10の欠陥部位を容易に判別できる。また、ガラスステージ21上に透明電極21bを備えるため、半導体装置10の非電極面10a上に透明電極21bを成膜する必要がなく、検査工程を短縮できる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、本実施例の半導体装置10には、Si基板を用いたが、Si基板の代わりに、SiC基板、又はGaN基板を用いても良い。この場合、赤外線レーザ発振部25a、及び赤外線センサ部45aでは、SiC基板、又はGaN基板のバンドギャップよりエネルギーの小さい波長の赤外線が用いられる。
【0058】
また、本実施例の光学部25、光学部45は、ガルバノミラーや共振型ミラー等の光学ミラーを用いて、非電極面10aに照射される赤外線の照射領域、非電極面10aから放射される赤外線の放射領域を移動するとしたが、ガラスステージ21をX−Y駆動して、非電極面10aに照射される赤外線の照射領域、非電極面10aから放射される赤外線の放射領域を移動してよい。
【0059】
また、本実施例の半導体装置10の検査装置20、40は、光学部25及び光学部45のいずれか1つの光学系を有するとしたが、光学部25及び光学部45の両方の光学系を有してよい。この場合、半導体装置10の検査装置20、40は、光学部25と光学部45との光軸(光路)を分離するためのハーフミラーを備える。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の半導体装置の検査装置の構成の一例を示した模式図である。
【図2】ITO膜の膜厚と赤外線の透過率との関係の一例を示した図である。
【図3】図1の半導体装置10の検査装置20を用いた、半導体装置10の検査方法の一例を示した模式図である。
【図4】画像作製表示部29により作製された画像データの一例を示した写真である。
【図5】本発明の半導体装置の検査装置の構成の別の例を示した模式図である。
【図6】図5の半導体装置10の検査装置40を用いた、半導体装置10の検査方法の一例を示した模式図である。
【図7】従来の半導体装置の検査方法の一例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体装置
10a 非電極面
20、40 半導体装置の検査装置
21 ガラスステージ
21a ガラス基板
21b 透明電極
23 電圧供給部
25、45 光学部
25a 赤外線レーザ発振部
27 電流変化検出部
29、49 画像作製表示部
29a、49a 画像作製部
29b、49b 画像表示部
45a 赤外線センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を用いて半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法において、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に透明電極を当接する工程と、
前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に電圧を印加すると共に、前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に赤外線のスポット光を照射する工程と、
前記赤外線の前記スポット光で前記半導体装置の前記非電極面を走査して、前記半導体装置の電流変化を測定し、前記半導体装置の欠陥部位を判別する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項2】
赤外線を用いて半導体装置の欠陥部位を判別する半導体装置の検査方法において、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に透明電極を当接する工程と、
前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面に電圧を印加する工程と、
前記非電極面に電圧を印加した状態で、前記透明電極を介して前記半導体装置の前記非電極面の所定領域から放射される赤外線の光量を測定しつつ、前記所定領域を移動して、前記半導体装置の欠陥部位を判別する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の半導体装置の検査方法に用いる半導体装置の検査装置であって、
前記半導体装置の電極を形成していない非電極面に当接するための透明電極を有する半導体装置の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−109432(P2009−109432A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284296(P2007−284296)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】