説明

半導体装置の製造方法及び処理装置

【課題】貴金属粒子の残留を抑えながら、基板上に貴金属含有シリサイド膜を生産性良く形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板1上、又は基板1上の導電膜50上に、貴金属を含む金属膜を形成する工程(a)と、基板1に熱処理を加えて金属膜とシリコンとを反応させ、基板1上又は導電膜50上に貴金属を含む金属シリサイド膜11a、11bを形成する工程(b)と、工程(b)の後、金属膜のうち未反応の金属を第1の薬液を用いて溶解するとともに、金属シリサイド膜11a、11bの上面上に酸化膜12を形成する工程(c)と、工程(c)の後、第1の薬液と異なる第2の薬液を用いて基板1上及び導電膜上に残留する貴金属の表面に形成された第2の酸化膜14を除去する工程(d)と、工程(d)の後、第1及び第2の薬液と異なる第3の薬液を用いて残留する貴金属を溶解する工程(e)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、半導体装置の製造方法、特に、貴金属を除去する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)微細プロセスではデバイスの更なる高性能化、及び低消費電力化が求められている。そのような状況において、従来のCMOSプロセスではゲート電極上やソース/ドレイン領域上に形成されるシリサイド層の抵抗をさらに低くするために、シリサイド材料としてニッケル(Ni)やコバルト(Co)を用いたNiSiやCoSiが用いられている。しかしながら、一方で、微細プロセスでは接合リーク電流の低減のためにNiSiやCoSiのシリサイド反応を制御する必要がある。そのため、シリサイド材料としてNiまたはCoに白金(Pt)またはパラジウム(Pd)を5〜10%程度混入した合金が用いられている。中でもシリサイド材料としてNiとPtの合金(NiPt)を用いた場合には、耐熱性の向上および接合リーク電流の抑制の効果が期待される。
【0003】
シリサイド化の工程では、合金をSi基板上に成膜後、熱酸化処理を施すことで合金とSiが反応してシリサイドが形成されるが、残留する未反応の合金を除去する必要がある。ここで、例えばシリサイド材料としてNiとPtの合金(NiPt)を用いた場合、シリサイド形成後に未反応のNiPtを除去するために、第1の薬液として硝酸などの酸化力の強い酸を用いて未反応のNiを溶解してシリサイド表面上に酸化膜を形成する。その後、第2の薬液として希釈王水などを用いて未反応のPt粒子を溶解除去する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図8(a)〜(c)は、従来のシリサイド形成工程を示す断面図である。図8(a)に示す工程では、シリコンからなる半導体基板171上に素子分離用絶縁膜172を形成した後、公知の方法でゲート電極182、サイドウォールスペーサ184、及びソース/ドレイン領域180を形成する。次に、シリサイド材料としてNiPt膜173を半導体基板171上の全体に成膜する。その後、熱酸化処理を施すことでソース/ドレイン領域180上及びゲート電極182上にNiSiとNiPtSiとの混晶で構成されたシリサイド層174を形成する。なお、以降の記載においては、NiSiとNiPtSiとの混晶をまとめてNiPtSiと称する。
【0005】
次に、図8(b)に示す工程では、未反応のNiPt膜173を除去し、NiPtSiのみを残す目的で、酸化剤を含有する第1の薬液として硝酸を用いて未反応のNiを溶解し、シリサイド層174の表面上にSi酸化膜175を形成する。酸化剤を含有する第1の薬液を用いると、NiPt膜173中のNiは溶解できるが、Ptを溶解することができない。そのため、半導体基板171上にPt粒子176が残留する。Pt粒子176を除去する目的で、図8(c)に示す工程では、第2の薬液として希釈王水を用いて未反応のPt粒子176を溶解し、除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−186984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、従来技術では、硝酸などの酸化剤を含む第1の薬液を用いた場合、第1の薬液中の酸化剤によって、Pt粒子が酸化されPt粒子表面にPtO膜が形成される。PtO膜は不安定であり、大気中の酸素で酸化されやすいので、大気中に長時間放置しておくとPtO膜が形成される。一旦、PtO膜が形成されると、希釈王水などの強酸を用いてもPtO膜を溶解することが出来なくなるので、Pt粒子を溶解、除去することが困難になる。
【0008】
そこで、本願発明者らは、硝酸などの酸化剤を含む第1の薬液による処理後に残留するPt粒子について、大気中にどれだけ長時間放置すると、王水などの強酸を用いてPt粒子を溶解及び除去出来なくなるのかを独自に調査した。その結果、第1の薬液で処理した後に2.5時間以上、基板を大気中に放置すると、希釈王水を用いてPt粒子を溶解除去することが出来なくなることが判明した。そのため、従来の方法においてPtO膜の形成を防ぐためには、酸化剤を含む第1の薬液で基板を処理した後、希釈王水などの第2の薬液により処理を開始するまでの時間を2.5時間以下にする必要があると考えられた。この場合、第2の薬液で処理するウェハの枚数が制限され、半導体装置の生産性が低下する。なお、このような不具合はPtだけでなく他のPdなど他の貴金属を含有するシリサイド層を形成する際にも生じる。
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、貴金属粒子の残留を抑えながら、基板上に貴金属含有シリサイド膜を生産性良く形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一例に係る半導体装置の製造方法は、シリコンを含む基板上、及び前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上の少なくとも一方に、貴金属を含み、前記貴金属以外の金属で構成された金属膜を形成する工程(a)と、前記基板に熱処理を加えて前記金属膜と前記基板及び前記導電膜の少なくとも一方に含まれるシリコンとを反応させ、前記基板上及び前記導電膜上の少なくとも一方に前記貴金属を含む金属シリサイド膜を形成する工程(b)と、前記工程(b)の後、前記金属膜のうち未反応の前記金属を第1の薬液を用いて溶解するとともに、前記金属シリサイド膜の上面上に第1の酸化膜を形成する工程(c)とを備えている。さらに、前記工程(c)の後、前記第1の薬液と異なる第2の薬液を用いて前記基板上及び前記導電膜上に残留する貴金属の表面に形成された前記貴金属の第2の酸化膜を除去する工程(d)と、前記工程(d)の後、前記第1及び第2の薬液と異なる第3の薬液を用いて残留する前記貴金属を溶解する工程(e)とをさらに備えている。
【0011】
この方法によれば、第1の薬液を用いて未反応の金属膜を溶解し、シリサイド膜の表面上に第1の酸化膜を形成した後、第2の薬液を用いて基板上及び導電膜上に残留する貴金属の表面に形成された第2の酸化膜を除去するので、工程(c)の後に貴金属の表面に酸化膜が形成された場合でも、工程(e)において貴金属の溶解及び除去を容易に行うことが可能となる。このため、この方法を用いれば、信頼性の高いシリサイド膜を備えた半導体装置を作製することが可能となる。
【0012】
さらに、前記工程(c)で処理された複数枚の前記基板のうち、一部の基板が前記工程(d)及び(e)において処理されている間、残りの基板は不活性ガス雰囲気下で保持される場合、工程(d)、(e)を待つ間に貴金属の表面に酸化膜が形成されるのを防ぐことができるので、工程(e)においてより確実に残留する貴金属を除去することが可能となる。また、この場合には第1の薬液による処理後第3の薬液による処理を開始するまでの時間を制限する必要がなくなるので、第1の薬液による処理枚数を増やすことができ、半導体装置の生産性を向上させることが可能となる。さらに、工程(d)において、第2の薬液で短時間処理するだけで貴金属の表面に形成された酸化膜を除去することができるので、処理時間を短縮することができる。
【0013】
なお、前記貴金属が白金であり、前記金属がニッケルであれば特に好ましい。
【0014】
本発明の他の一例に係る半導体装置の製造方法は、シリコンを含む基板上、及び前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上の少なくとも一方に、貴金属を含み、前記貴金属以外の金属で構成された金属膜を形成する工程(a)と、前記基板に熱処理を加えて前記金属膜とシリコンとを反応させ、前記基板上及び前記導電膜上の少なくとも一方に前記貴金属を含む金属シリサイド膜を形成する工程(b)と、前記工程(b)の後、複数枚の前記基板に対し、前記金属膜のうち未反応の前記金属を第1の薬液を用いて溶解するとともに、前記金属シリサイド膜の上面上に酸化膜を形成する工程(c)と、前記工程(c)の後、前記第1と異なる第2の薬液を用いて前記基板上及び前記導電膜上に残留する貴金属を溶解する工程(d)と、前記工程(c)で処理された複数枚の前記基板のうち、一部の基板が前記工程(d)において処理されている間、残りの基板を不活性ガス雰囲気下で保持する工程(e)とを備えている。
【0015】
この方法によれば、工程(c)で処理された複数枚の前記基板のうち、一部の基板が前記工程(d)において処理されている間、残りの基板を不活性ガス雰囲気下で保持する工程(e)によって工程(d)を待つ間に貴金属の表面が酸化されるのを抑えることができる。そのため、工程(d)で貴金属を容易に除去できるようになる。また、第1の薬液による処理後第2の薬液による処理を開始するまでの時間を制限する必要がなくなるので、第1の薬液による処理枚数を増やすことができ、半導体装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明の実施形態に係る処理装置は、複数枚の基板を収納可能なロードポート部と、互いに独立開閉する扉と、不活性ガス供給源と、真空排気ラインとをそれぞれ有する複数の不活性ガスパージ室を有する不活性ガスパージユニットと、前記基板を保持するためのチャックと、互いに異なる種類の薬液を保持できる薬液供給源に接続され、互いに異なる薬液を吐出する複数の薬液ノズルとを有する処理チャンバーと、前記ロードポート部、前記不活性ガスパージユニット、及び前記処理チャンバーの間に設置された搬送室と、前記搬送室内に設置され、前記ロードポート部と前記不活性ガスパージユニットとの間、前記不活性ガスパージユニットと前記処理チャンバーとの間、及び前記処理チャンバーと前記ロードポート部との間で前記基板を搬送する搬送アームとを備えている。
【0017】
この構成によれば、処理チャンバーに複数種類の薬液供給源に接続された複数の薬液ノズルが設けられているので、例えば薬液を用いて貴金属の表面に形成された酸化膜を除去した後、連続的に別の薬液を用いて貴金属を除去することができる。このため、この処理装置を用いれば、酸化膜が形成されない状態で貴金属を確実に除去することができる。
【0018】
また、不活性ガスパージユニットを備えていることにより、薬液による処理を待つ間に基板上に残留する貴金属の表面に酸化膜が形成されるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、貴金属の残留を抑えながら、基板上に貴金属含有シリサイド膜を生産性良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、NiPtシリサイドを形成する工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、NiPtシリサイドを形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る処理装置の概略を示す平面図である。
【図4】図3に示す処理装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る処理装置を用いて図2(a)、(c)、(d)に示す処理を行う際のフローを示す図である。
【図6】(a)は、従来の方法で処理した半導体基板の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、(b)は、本発明の実施形態に係る方法で処理した半導体基板のSEM画像である。
【図7】従来の方法を用いた枚葉式の処理装置による半導体装置の生産能力と、本実施形態の方法を用いた枚葉式の処理装置による半導体装置の生産能力とを示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、従来のシリサイド形成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1(a)〜(d)、図2(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、NiPtシリサイドを形成するまでの工程を示す断面図である。
【0023】
まず、図1(a)に示す工程で、シリコンからなる半導体基板1に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等により素子分離領域2を形成する。次に、半導体基板1のうち素子分離領域2に囲まれた領域上に、熱酸化法を用いて膜厚が例えば2nmのシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜3を形成する。次に、半導体基板1上の全面に、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、膜厚が例えば20nmの窒化チタン膜を形成する。
【0024】
次に、半導体基板1上の全面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、膜厚が例えば100nmのポリシリコン膜を形成した後、イオン注入法により、不純物をポリシリコン膜に導入する。ここで、NMISトランジスタを形成する場合、n型の不純物としてリンを用い、例えば加速電圧を15keV、ドーズ量を1×1016cm-2とする条件でイオン注入を行う。また、PMISトランジスタを形成する場合、p型のドーパント不純物としてボロンを用い、例えば加速電圧を5keV、ドーズ量を5×1015cm-2とする条件でイオン注入を行う。
【0025】
次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いて、ポリシリコン膜及び窒化チタン膜をパターニングし、窒化チタン膜4と、窒化チタン膜4上に形成されたポリシリコン膜5とからなるゲート電極(導電膜)50を形成する。
【0026】
次に、ゲート電極50をマスクとして、イオン注入法により半導体基板1のうちゲート電極50の両側に位置する領域に不純物を導入する。ここで、NMISトランジスタを形成する場合、n型の不純物として砒素を用い、例えば加速電圧を2keV、ドーズ量を1×1015cm-2とする条件でイオン注入を行う。PMISトランジスタを形成する場合、p型の不純物としてボロンを用い、例えば加速電圧を0.5keV、ドーズ量を3×1015cm-2とする条件でイオン注入を行う。これにより、ソース/ドレイン拡散層のエクステンション領域(浅い不純物拡散領域)6が形成される。
【0027】
次に、半導体基板1上の全面に、CVD法により、膜厚が例えば10nmのSi酸化膜と膜厚50nmのSi窒化膜を順次形成する。次に、RIE(Reactive Ion Etching)法等の異方性エッチングにより、Si酸化膜とSi窒化膜とを除去することで、ゲート電極50の側壁部分にSi酸化膜からなるサイドウォール絶縁膜7と、Si窒化膜からなるサイドウォール絶縁膜8とを形成する。
【0028】
次に、ゲート電極50及びサイドウォール絶縁膜7、8をマスクとして、イオン注入法により、半導体基板1のうちゲート電極50及びサイドウォール絶縁膜7、8の両側に位置する領域に不純物を導入する。ここで、NMISトランジスタを形成する場合、n型の不純物として砒素を用い、例えば加速電圧を20keV、ドーズ量を5×1015cm-2とする条件でイオン注入を行う。PMISトランジスタを形成する場合、p型の不純物としてボロンを用い、例えば加速電圧を5keV、ドーズ量を5×1015cm-2とする条件でイオン注入を行う。これにより、深い不純物拡散領域が形成される。次いで、所定の熱処理を行うことにより、深い不純物拡散層領域中の不純物を活性化してソース/ドレイン拡散層9を形成する。
【0029】
次に、図1(b)に示す工程で、半導体基板1上の全面に、例えばPtが添加されたNiターゲットを用いたスパッタ法により、金属膜として例えば膜厚が7〜15nmのNiPt膜10を形成する。ターゲットにおけるPtの組成比は、例えば2〜10原子%(atom%)とする。
【0030】
次に、図1(c)に示す工程で、シリサイド化のための熱処理として、例えばRTA(Rapid Thermal Anneling)法による熱処理を行う。熱処理条件は、例えば200〜400℃、30秒間とする。これにより、NiPt膜10を構成するNiPtとゲート電極50上部のSiとを反応させて、ゲート電極50上に例えば膜厚が8.5nm〜24.5nmのNiPtSi膜11aを形成するとともに、NiPt膜10のNiPtとソース/ドレイン拡散層9上部のSiとを反応させて、ソース/ドレイン拡散層9上にNiPtSi膜11bを形成する。
【0031】
次に、図1(d)に示す工程で、第1の薬液として酸化剤を含む比較的高温の薬液を用いたウェットエッチングにより、NiPt膜10のうちの未反応のNi膜を選択的に除去する。ここで、酸化剤を含む薬液として、例えば硝酸を用いる。硝酸を用いた場合の基板の浸漬処理は、例えば硝酸濃度1wt%以上30wt%以下、処理温度40〜80℃で15〜150分間行う。この工程は、複数枚のウェハを同時に処理するバッチ式で行われることが好ましい。この処理によれば、NiPt膜10のうちの未反応のNiを選択的に除去すると同時に、NiPtSi膜11a、11bの上面を意図的に酸化してNiPtSi膜11a、11bの表面に厚さ1〜2nm程度の均一なSi酸化膜12を形成する。
【0032】
しかし、硝酸を用いた場合、NiPt膜10中のNiは溶解できるが、Ptを溶解することができない。そのため、半導体基板1上や素子分離領域2上およびゲート電極50上にPt粒子13が残留する。ここで、図1(d)では理解を容易にするためにPt粒子13を実際よりも大きく表している。
【0033】
また、硝酸などの酸化剤を含む薬液を用いると、Pt粒子13表面が酸化されてPtOが形成される。PtOは不安定であり、大気中の酸素で酸化されやすい。そのため、大気中に基板を長時間(例えば2.5時間以上)放置すると、PtO膜が形成される。一旦、PtO膜が形成されると、王水などの強酸を用いてもPtO膜を溶解及び除去することが出来ない。そのため、酸化剤を含む第1の薬液での処理直後に、図2(a)に示す工程で、半導体基板1を例えば窒素ガスでパージされた不活性ガスパージ室内に収納することで大気酸化を防止し、Pt粒子13表面にPtO膜が形成するのを抑制する。
【0034】
なお、図2(b)に示すように、図1(d)に示した工程で硝酸処理後のリンス処理をする際、または乾燥処理時、または、図2(a)に示す工程で半導体基板1が不活性ガスパージ室内に搬送されるまでの間に、Pt粒子13が酸化されてPt粒子13表面にPtO膜14が形成される可能性がある。
【0035】
しかし、この場合でも、図2(c)に示す工程で、第2の薬液として硫黄またはセレンを分子中に含む物質の水溶液を用いてPt粒子13表面のPtO膜14を除去する。ここで、硫黄またはセレンを分子中に含む物質の水溶液として、例えば硫酸の処理を行う。硫酸の処理条件は、98wt%、50〜90℃で30秒〜2分間の枚葉式処理を行う。
最後に、図2(d)に示す工程で、第3の薬液として例えば酸化剤である硝酸と塩酸との混合薬液である希釈王水を用いてPt粒子13を溶解除去する。希釈王水としては、濃度が70wt%の硝酸と、濃度が36wt%の塩酸と水とを、体積比にして硝酸:塩酸:水=1:2〜7:0〜7で混合したものを、35〜70℃で用い、30秒〜8分間の枚葉式処理を行う。なお、この工程の終了後、Si酸化膜12を除去する。
【0036】
ここで、図2(a)に示す、不活性ガスでパージされた室内に半導体基板1を収納してPt粒子13表面にPtO膜の形成を抑制する工程と、図2(c)に示す、硫酸を用いてPt粒子13表面に形成されたPtO膜を除去する工程と、図2(d)に示す、希釈王水を用いてPt粒子13を溶解及び除去する工程は、同一の装置で処理が施される。
【0037】
以下に、図2(a)、(c)、(d)に示す工程で用いられる処理装置と、これを用いた基板の処理方法について説明する。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る処理装置の概略を示す平面図である。同図に示す処理装置20は、複数枚の基板(ウェハ)を収納した基板搬送ボックスを着脱するロードポート部21と、複数枚の基板を収納し、例えば窒素ガスなどの不活性ガスでパージされる不活性ガスパージユニット30と、第2の薬液または第3の薬液を用いて基板の浸漬処理を行う処理チャンバー40と、ロードポート部21、不活性ガスパージユニット30、及び処理チャンバー40の間に設置された搬送室22と、搬送室22内に設置され、ロードポート部21と不活性ガスパージユニット30間、不活性ガスパージユニット30と処理チャンバー40間、処理チャンバー40とロードポート部21間で移動可能であり、複数枚の基板を保持可能な搬送アーム23とを備えている。第2の薬液としては、例えば硫酸が用いられ、第3の薬液としては、例えば希釈王水が用いられる。搬送アーム23は、ロードポート部21、不活性ガスパージユニット30、処理チャンバー40のそれぞれの間で基板を搬送する。
【0039】
次に、図4は、図3に示す処理装置の構成を模式的に示す側面図である。同図に示すように、不活性ガスパージユニット30は、例えば4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4で構成されており、4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4は、それぞれ独立開閉する扉32−1、32−2、32−3、32−4と、不活性ガス供給源33−1、33−2、33−3、33−4及びこれらに接続された配管と、真空排気装置34−1、34−2、34−3、34−4及びこれらに接続された排気用配管とを備えている。なお、不活性ガスパージユニット30が有する不活性ガスパージ室は4つに限らず、複数であればよい。
【0040】
処理チャンバー40は、例えば硫酸などの第2の薬液を吐出する第2薬液ノズル41と、例えば希釈王水などの第3の薬液を吐出する第3薬液ノズル42と、例えばリンス用のCO水を吐出するリンスノズル43と、第2の薬液供給源44及び第2の薬液を供給する配管と、第3の薬液供給源45及び第3の薬液を供給する配管と、リンス供給源46及びリンス用液を供給する配管と、基板を保持するチャック47と、基板を回転させる回転機構に接続されたスピンベース48と、第2薬液と第3薬液をそれぞれ循環回収または廃棄する多段カップ49とを備える。第2薬液ノズル41、第3薬液ノズル42、及びリンスノズル43は、それぞれスピンベース48の上方で開口しており、スピンベース48上に固定された基板上面に薬液またはリンス用液を供給できるようになっている。
【0041】
また、図5は、本発明の実施形態に係る処理装置を用いて図2(a)、(c)、(d)に示す処理を行う際のフローを示す図である。図中の「A」はロードポート部21の動作シーケンス、「B」は不活性ガスパージユニット30の動作シーケンス、「C」は処理チャンバー40の動作シーケンスを示す(各部材の符号は図4参照)。
【0042】
まず、複数枚の基板を収納した基板搬送ボックスがロードポート部21に装着される(A1)。次に、基板は搬送アームに23よって基板搬送ボックスから搬出され(A2)、4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4に順次搬入される(B1)。全ての基板が4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4に搬入された後、不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4は排気されて窒素ガスでパージされる(B2)。
【0043】
パージ完了後、4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4のうち3つの不活性ガスパージ室の扉を閉じた状態で1つの目の不活性ガスパージ室の扉を開ける(B3)。この状態で、1枚目の基板が搬送アーム23によって不活性ガスパージ室から搬出され(B4)、処理チャンバー40に搬入される(C1)。
【0044】
そして、処理チャンバー40内で、第2の薬液(硫酸)を用いたPtO膜の除去、CO水によるリンス、及び基板の乾燥処理が施される(C2)。その直後、第3の薬液(希釈王水)を用いたPt粒子13の除去、CO水によるリンス、及び基板の乾燥処理が行われる(C3)。
【0045】
次に、基板が搬送アーム23によって処理チャンバー40から搬出され(C4)、ロードポート部21に装着された基板搬送ボックス内に収納される(A3)。1枚目の基板の希釈王水処理が完了すると、2枚目の基板が不活性ガスパージ室から搬出され、処理チャンバー40に搬入される。処理チャンバー40内では1枚目の基板と同様に、硫酸によるPtO膜の除去、希釈王水を用いたPt粒子13の除去が行われる。以降の基板処理の動作シーケンスについては上記と同様である。
【0046】
次に、4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4のうち1つ目の不活性ガスパージ室にある複数枚の基板全てが王水処理まで終了した場合、2つ目の不活性ガスパージ室の扉が開き(B5)、上記と同様の手順で硫酸による処理、王水による処理が行われる。このようにして、4つの不活性ガスパージ室31−1、31−2、31−3、31−4のうち1つの不活性ガスパージ室内にある複数枚の基板全てが王水処理まで終了した場合、未処理の基板が収納されている不活性ガスパージ室の扉が順次に開き、基板に薬液処理が施される。1つ目の不活性ガスパージ室にある基板が薬液処理されている間は、残り3つの不活性ガスパージ室は窒素ガスでパージされており、2つ目の不活性ガスパージ室にある基板が薬液処理されている間は、残り2つの不活性ガスパージ室は窒素ガスでパージされており、3つ目の不活性ガスパージ室にある基板が薬液処理されている間は、残り1つの不活性ガスパージ室は窒素ガスでパージされている。
【0047】
このように不活性ガスパージユニット30内の空間を複数の不活性ガスパージ室に分割することで、処理装置内で処理待ち状態にある基板が大気にさらされず不活性ガスパージ室内でパージ保管できるので、Pt粒子13(図1(d)参照)の酸化を抑制することができる。なお、基板の処理順番は基板搬送ボックスの下の基板が先でもよいし、ボックスの上の基板が先でもよい。
【0048】
本実施形態の基板処理方法は、図1(d)に示す工程で酸化剤を含む薬液を用いて未反応Ni膜の除去とNiPtSi膜11a、11bの表面にSi酸化膜12を形成した直後、図2(a)に示すように、不活性ガスパージユニット30内に基板を収納することでPt粒子13の表面にPtO膜14が形成されるのを抑制する工程と、図2(d)に示す工程で希釈王水を用いてPt粒子を溶解除去する直前に、図2(c)に示すように、硫酸を用いてPt粒子13の表面に形成されたPtO膜14を除去する工程とを備えている点で、従来の方法と異なっている。
【0049】
この方法によれば、第1の薬液である硝酸を用いて未反応のNiを溶解し、シリサイド膜の表面上にSi酸化膜を形成した後、基板がNガスでパージされた不活性ガスパージユニット30に保管されるので、Pt粒子13は大気により酸化されず、Pt粒子13表面でのPtO膜14の形成が抑制される。さらに、硝酸処理後のリンス中、乾燥処理中または、基板搬送ボックス内での搬送途中にPt粒子13の表面にPtO膜14が形成されたとしても、第2の薬液である硫酸を用いることでPt粒子13の表面に形成されたPtO膜14を除去することができる。さらに、硫酸を用いた処理と第3の薬液である希釈王水を用いた処理とを同一の処理装置内で行うことができるので、硫酸処理の直後に、希釈王水を用いたPt粒子13の溶解及び除去を行うことができる。このため、PtO膜14が除去された状態のままでPt粒子13の除去を行うことができるので、Pt粒子13を確実かつ容易に溶解及び除去することができる。
【0050】
従来の方法では、Pt粒子の表面にPtO膜を形成させないよう、硝酸処理後から希釈王水処理開始までの時間を2.5h以下に制限する必要があった。このため、従来の方法では枚葉式洗浄装置において、希釈王水を用いた基板の処理枚数が制限され生産性を向上させることが困難であった。これに対し、本実施形態の方法を用いれば、硝酸処理終了後から希釈王水処理開始までの時間を制限する必要がなくなるので、希釈王水による基板の処理枚数が制限されず、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0051】
本実施形態に係る基板の処理装置20は、枚葉式の希釈王水処理装置である処理チャンバー40に硫酸供給ラインが付加されていること、及び不活性ガスの供給ラインを有する不活性ガスパージユニット30を備えていることが、従来の処理装置と異なっている。
【0052】
このため、硫酸処理を行う間、処理されていない基板を不活性ガスの雰囲気内で保持することが可能となるので、Pt粒子13の表面にPtO膜14が形成されるのを効果的に抑えることができる。また、処理チャンバー40が硫酸供給ラインを有しているので、硫酸処理を行った直後に希釈王水による処理を行うことができ、PtO膜14が存在しない状態でPt粒子13を確実かつ容易に除去することが可能となる。
【0053】
なお、不活性ガスパージユニット30が設けられていない場合でも、硫酸処理によってPt粒子13表面のPtO膜14は除去できるので、Pt粒子13を除去することは可能であるが、不活性ガスパージユニット30が設けられていることによってPt粒子13表面に形成されるPtO膜14膜を最小限に抑えることができる。そのため、短時間の硫酸処理でPtO膜を除去することが可能となってスループットを向上させることができるとともに、硫酸の使用量を減らして環境への負荷を小さくすることが可能となる。また、基板が多数存在する場合でも、希釈王水処理において、最初に処理する基板と最後に処理する基板とでPt粒子13表面に形成されるPtOの形成量のばらつきを抑えることができるので、より短時間の硫酸処理でPtO膜14を除去することが可能となる。
【0054】
図6(a)は、従来の方法で処理した半導体基板の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、(b)は、本実施形態の方法で処理した半導体基板のSEM画像である。ここで、硝酸を用いた浸漬処理の条件(硝酸濃度1wt%、処理温度65℃、120分)と、希釈王水の枚葉式処理の条件(硝酸(70wt%):塩酸(36wt%):水=1:5:4、処理温度45℃、5分)は両方法で同じとする。また、硝酸処理後から希釈王水処理開始までの経過時間(6時間)も両方法で同じとした。
【0055】
本実施形態の方法(図6(b))では、硝酸処理後、不活性ガスパージ室に保管されるまでに15分、不活性ガスパージユニットに5時間44分保管された後、硫酸処理(濃度98wt%、処理温度70℃、1分)が施され、その直後に希釈王水処理が施されている。
【0056】
図6(a)に示すように、従来の方法では硝酸処理後から希釈王水処理開始までの時間が長時間化するとPt粒子表面にPtO膜が形成され、希釈王水を用いてもPt粒子を溶解できずPt粒子が残留する。一方、図6(b)に示すように、本実施形態の方法では、基板が不活性ガスパージユニット30で保管されるため、Pt粒子13の表面は大気酸化されず、PtO膜14の形成が抑制される。また、硝酸処理後のリンス中、乾燥処理中または、基板搬送ボックスの搬送途中にPt粒子13が酸化されて表面にPtO膜14が形成されても、第2の薬液である硫酸を用いてPt粒子13の表面に形成されたPtO膜14を除去するため、希釈王水を用いてPt粒子13を容易に溶解及び除去できる。
【0057】
図7は、従来の方法を用いた枚葉式の処理装置による半導体装置の生産能力と、本実施形態の方法を用いた枚葉式の処理装置による半導体装置の生産能力とを示す図である。ここで、硝酸を用いた浸漬処理の条件(硝酸濃度1wt%、処理温度65℃、120分)と、希釈王水を用いた枚葉式処理の条件(硝酸(70wt%):塩酸(36wt%):水=1:5:4、処理温度45℃、5分)は両方法で同じとした。
【0058】
従来の方法では、硝酸による処理の後に発生するPt粒子は処理後2.5時間以上経過すると大気酸化され、Pt粒子の表面にPtO膜が形成される。このため、PtO膜を形成させないよう硝酸による処理後から希釈王水による処理を開始するまでの時間を2.5時間以下に制限する必要がある。また、王水は薬液調合後、硝酸と塩酸が反応してPtのエッチャントである塩化ニトロシルが充分に生成されるまでに約1.5時間必要であることから、希釈王水の薬液調合時間(約30分)を含めると、希釈王水が処理可能な状態になるまでに約2時間必要である。また、Ptのエッチャントである塩化ニトロシルは王水調合後、24時間経過するとその濃度が低下するため、1日1回は液交換を行なう必要があり、王水の調製に要する2時間を加味する必要がある。よって、従来の方法では希釈王水を用いた処理を行なうことができる時間は実質的には約30分となるため、希釈王水を用いた処理枚数は、薬液調製後、最初の30分間で例えば6枚以下に制限される。そのため、従来の方法では半導体基板の生産能力を高めることが困難である。例えば、硝酸処理時間2.5時間と王水処理時間2.5時間(薬液調合0.5時間+エージング1.5時間+処理0.5時間)を合わせた硝酸王水のトータル処理時間5時間あたりの処理枚数を6枚として、稼働率を考慮すると約750枚/月程度の処理能力である。
【0059】
一方、本実施形態の方法では、基板を不活性ガスパージ室で保管しているためPt粒子表面にPtO膜が形成されず、PtO膜が形成されたとしても、硫酸などの第2の薬液を用いることでPtO膜が除去され、直後に希釈王水を施すことでPt粒子を溶解及び除去できる。よって、硝酸処理後から希釈王水開始までの時間に制限を加える必要がなく、希釈王水の処理枚数を制限する必要がない。そのため、本実施形態の方法によれば、半導体基板の生産能力を大幅に向上させることができる。例えば、硝酸処理時間2.5時間と王水処理時間6時間(薬液調合0.5時間+エージング+1.5時間+処理4時間)を合わせた硝酸王水のトータル処理時間8.5時間あたりの処理枚数を24枚として、さらに稼働率を考慮して約1750枚/月程度の処理能力となる。また、従来の方法では、希釈王水による処理枚数が制限されるため、硝酸など第1の薬液の浸漬処理についても処理枚数が制限される。そのため、第1の薬液を用いた浸漬処理において、24枚の基板を一括して処理することは出来ず、例えば6枚ずつ4回に分けて浸漬処理を行なう必要がある。 これに対し、本実施形態の方法では、希釈王水を用いた処理における基板の枚数が制限されないため、第1の薬液を用いた浸漬処理を複数回に分けず一括で処理することができ、第1の薬液の使用量を低減することができる。
【0060】
なお、本実施形態の方法では、第1の薬液として硝酸を用いることで未反応のNi膜を選択的に溶解除去すると同時に、NiPtSi膜11a、11bの上面を酸化してNiPtSi膜11a、11bの表面にSi酸化膜12を形成したが、酸化剤を含む水溶液であれば硝酸の代わりに用いることができる。例えば、硫酸と過酸化水素との混合薬液である硫酸過水(SPM:Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture;硫酸(濃度98%):過酸化水素(濃度30wt%)=5〜9:1〜5、処理温度90〜155℃、処理時間1分〜20分)、オゾン水(0.01ppm以上10ppm以下、処理温度20℃〜40℃、処理時間10分〜90分)、過酸化水素水(1wt%以上30wt%以下、処理温度20℃〜80℃、処理時間15分〜150分)、過マンガン酸カリウム水溶液(0.5wt%以上20wt%以下、処理温度40℃〜80℃、処理時間15分〜150分)、三酸化クロム水溶液(0.5wt%以上20wt%以下、処理温度40℃〜80℃、処理時間15分〜150分)、四酸化オスミウム水溶液(0.5wt%以上20wt%以下、処理温度40℃〜80℃、処理時間15分〜150分)などの酸化剤水溶液であっても硝酸を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、不活性ガスパージユニット30内を窒素ガスでパージしてPt粒子13の表面にPtO膜14が形成されるのを抑制したが、これに限定されるものではなく、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガス、炭酸ガス、フルオロカーボンなどの不活性ガスでパージしても窒素ガスを用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、本実施形態では不活性ガスパージユニット30は4つの不活性ガスパージ室を有しているが、任意の複数の不活性ガスパージ室で構成されていても上述と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、第2の薬液として硫酸を用いてPt粒子13の表面に形成されたPtO膜14を除去したが、第2の薬液は硫酸に限定されるものではなく、硫酸塩、セレン酸、セレン酸塩などの水溶液であってもよい。例えば、硫酸カリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸マンガン水溶液、硫酸カリウム水溶液、硫酸リチウム水溶液、硫酸カドミウム水溶液、硫酸ベリリウム水溶液、硫酸ニッケル水溶液、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液、硫酸ヒドラジニウム水溶液、硫酸鉄アンモニウム水溶液、硫酸水素カリウム水溶液、硫酸水素ナトリウム水溶液、硫酸水素アンモニウム水溶液、セレン酸、セレン酸カリウム水溶液、セレン酸ナトリウム水溶液、セレン酸アンモニウム水溶液、セレン酸マグネシウム水溶液、セレン酸マンガン水溶液、セレン酸カリウム水溶液、セレン酸リチウム水溶液、セレン酸カドミウム水溶液、セレン酸ベリリウム水溶液、セレン酸ニッケル水溶液、セレン酸ニッケルアンモニウム水溶液、セレン酸ヒドラジニウム水溶液、セレン酸鉄アンモニウム水溶液、セレン酸水素カリウム水溶液、セレン酸水素ナトリウム水溶液、セレン酸水素アンモニウム水溶液などの水溶液を第2の溶液として用いても、硫酸を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、酸化剤である硝酸と、錯化剤としても働く塩酸との混合薬液である希釈王水を第3の薬液として用いてPt粒子を溶解及び除去したが、第3の薬液はこれに限定されるものではなく、酸化剤である過酸化水素水、オゾン水、電解硫酸水、過マンガン酸カリウム溶液、三酸化クロム溶液、四酸化オスミウム溶液から選択された少なくとも1つの薬液と、錯化剤である塩化カルシウム溶液、塩化カリウム溶液、次亜塩素酸溶液、次亜塩素酸ナトリウム溶液、次亜塩素酸カリウム溶液、次亜塩素酸カルシウム溶液、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム溶液、ヨウ化カリウム溶液、ヨウ化カルシウム溶液、臭化水素酸、臭化ナトリウム溶液、臭化カリウム溶液、臭化カルシウム溶液から選択された少なくとも1つを含む薬液と、純水とから構成される混合薬液であっても希釈王水と同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、第2の薬液を用いてPt粒子13の表面に形成されたPtO膜14を選択的に除去する工程と、第3の薬液を用いてPt粒子13を溶解及び除去する工程とを同一の処理チャンバー40内で行っているが、処理チャンバーを2つ設けて、第2の薬液処理を施す処理チャンバーと、第3の薬液処理を施す処理チャンバーとに分けても同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、窒化チタンなどの金属膜をゲート構造の材料として使用している場合に未反応NiPtを選択除去する際、例えば硫酸と過酸化水素との混合薬液である硫酸過水を用いて未反応のNiPtを選択除去すると、ゲート構造の一部を形成する窒化チタンが溶解し消失する可能性がある。しかしながら、本実施形態のように第1の薬液として硝酸などの過酸化水素水を含有しない酸化剤を用いることで、ゲート構造を構成する窒化チタンを消失させることなく未反応のNiPtを選択除去することができる。
【0067】
なお、本実施形態では半導体基板上に形成されたPt粒子を除去する方法について説明したが、Pd粒子やルテニウム(Ru)などの粒子であっても同様の方法により除去することができ、上述したのと同様の効果を得ることができる。また、金(Au)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)を含むシリサイドを形成する場合、これらの金属酸化物は王水に可溶であるので金属酸化物の除去工程は必須ではないが、当該工程を行うことによって、プロセス安定性の向上を図ることができ、王水処理の時間を短縮することもできる。
【0068】
また、本実施形態ではニッケルシリサイドを形成する方法について説明したが、Ni以外の金属にPtを添加した金属膜を用いてシリサイドを形成する際にも、Pt粒子の表面が酸化されて王水で除去できなくなるという不具合が生じるので、本実施形態の方法を用いることができる。
【0069】
また、半導体基板1はシリコン基板に限られず、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板など、シリコンを含む基板であればよい。
【0070】
また、硝酸による処理を行った後、不活性ガスの雰囲気下で保存することのみでPtO膜の形成を十分に抑えることができる場合、図2(c)に示す硫酸による処理を行わずに希釈王水による処理を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、Ptなどの貴金属を含有するシリサイドを有する半導体装置の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 ゲート絶縁膜
4 窒化チタン膜
5 ポリシリコン膜
7、8 サイドウォール絶縁膜
9 ソース/ドレイン拡散層
10 NiPt膜
11a、11b NiPtSi膜
12 Si酸化膜
13 Pt粒子
14 PtO
20 処理装置
21 ロードポート部
22 搬送室
23 搬送アーム
30 不活性ガスパージユニット
31−1、31−2、31−3、31−4 不活性ガスパージ室
32−1、32−2、32−3、32−4 扉
33−1、33−2、33−3、33−4 不活性ガス供給源
34−1、34−2、34−3、34−4 真空排気装置
40 処理チャンバー
41 第2薬液ノズル
42 第3薬液ノズル
43 リンスノズル
44 第2の薬液供給源
45 第3の薬液供給源
46 リンス供給源
47 チャック
48 スピンベース
49 多段カップ
50 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む基板上、及び前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上の少なくとも一方に、貴金属を含み、前記貴金属以外の金属で構成された金属膜を形成する工程(a)と、
前記基板に熱処理を加えて前記金属膜と前記基板及び前記導電膜の少なくとも一方に含まれるシリコンとを反応させ、前記基板上及び前記導電膜上の少なくとも一方に前記貴金属を含む金属シリサイド膜を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後、前記金属膜のうち未反応の前記金属を第1の薬液を用いて溶解するとともに、前記金属シリサイド膜の上面上に第1の酸化膜を形成する工程(c)とを備え、
前記工程(c)の後、前記第1の薬液と異なる第2の薬液を用いて前記基板上及び前記導電膜上に残留する貴金属の表面に形成された前記貴金属の第2の酸化膜を除去する工程(d)と、
前記工程(d)の後、前記第1及び第2の薬液と異なる第3の薬液を用いて残留する前記貴金属を溶解する工程(e)とをさらに備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)及び前記工程(e)で、前記基板は、前記第2の薬液の供給ラインと前記第3の薬液の供給ラインとが接続された同一の処理チャンバー内で枚葉処理されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、複数枚の前記基板を同時に処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)で処理された複数枚の前記基板のうち、一部の基板が前記工程(d)及び(e)において処理されている間、残りの基板は不活性ガス雰囲気下で保持されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記残りの基板は不活性ガスパージユニット内で不活性ガス雰囲気下で保持されており、
前記不活性ガスパージユニットは、前記処理チャンバーと同一の処理装置内に設けられていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガス、炭酸ガス、フルオロカーボンから選択された少なくとも1つを含むガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の薬液は酸化剤を含む水溶液であり、前記第2の薬液は硫黄またはセレンを分子中に含む物質の水溶液であり、前記第3の薬液は酸化剤と錯化剤を含む水溶液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の薬液は、硝酸、硫酸と過酸化水素水との混合液、オゾン水、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム水溶液、三酸化クロム水溶液、四酸化オスミウム水溶液から選ばれた1つの溶液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の薬液として硝酸が用いられる場合、前記硝酸の濃度は1wt%以上30wt%以下とし、前記第1の薬液としてオゾン水が用いられる場合、前記オゾン水のオゾン濃度は0.01ppm以上10ppm以下とし、前記第1の薬液として過酸化水素水が用いられる場合、前記過酸化水素水の濃度は1wt%以上30wt%以下とし、前記第1の薬液として過マンガン酸カリウム水溶液が用いられる場合、前記過マンガン酸カリウム水溶液の濃度は0.5wt%以上20wt%以下とし、前記第1の薬液として三酸化クロム水溶液が用いられる場合、前記三酸化クロム水溶液の濃度は0.5wt%以上20wt%以下とし、前記第1の薬液として四酸化オスミウム水溶液が用いられる場合、前記四酸化オスミウム水溶液の濃度は0.5wt%以上20wt%以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の薬液は、硫酸、硫酸カリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸マンガン水溶液、硫酸カリウム水溶液、硫酸リチウム水溶液、硫酸カドミウム水溶液、硫酸ベリリウム水溶液、硫酸ニッケル水溶液、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液、硫酸ヒドラジニウム水溶液、硫酸鉄アンモニウム水溶液、硫酸水素カリウム水溶液、硫酸水素ナトリウム水溶液、硫酸水素アンモニウム水溶液、セレン酸、セレン酸カリウム水溶液、セレン酸ナトリウム水溶液、セレン酸アンモニウム水溶液、セレン酸マグネシウム水溶液、セレン酸マンガン水溶液、セレン酸カリウム水溶液、セレン酸リチウム水溶液、セレン酸カドミウム水溶液、セレン酸ベリリウム水溶液、セレン酸ニッケル水溶液、セレン酸ニッケルアンモニウム水溶液、セレン酸ヒドラジニウム水溶液、セレン酸鉄アンモニウム水溶液、セレン酸水素カリウム水溶液、セレン酸水素ナトリウム水溶液、セレン酸水素アンモニウム水溶液から選ばれた1つの溶液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3の薬液は、酸化剤として硝酸、過酸化水素、オゾン水、電解硫酸水、過マンガン酸カリウム、三酸化クロム、四酸化オスミウムから選択された少なくとも1つを含む薬液と、錯化剤として塩酸、塩化カルシウム、塩化カリウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウムから選択された少なくとも1つを含む薬液と、純水とから構成される混合薬液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記貴金属は白金であり、前記金属はニッケルであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
シリコンを含む基板上、及び前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上の少なくとも一方に、貴金属を含み、前記貴金属以外の金属で構成された金属膜を形成する工程(a)と、
前記基板に熱処理を加えて前記金属膜とシリコンとを反応させ、前記基板上及び前記導電膜上の少なくとも一方に前記貴金属を含む金属シリサイド膜を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後、複数枚の前記基板に対し、前記金属膜のうち未反応の前記金属を第1の薬液を用いて溶解するとともに、前記金属シリサイド膜の上面上に酸化膜を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後、前記第1と異なる第2の薬液を用いて前記基板上及び前記導電膜上に残留する貴金属を溶解する工程(d)と、
前記工程(c)で処理された複数枚の前記基板のうち、一部の基板が前記工程(d)において処理されている間、残りの基板を不活性ガス雰囲気下で保持する工程(e)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記貴金属は白金であり、前記金属はニッケルであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
複数枚の基板を収納可能なロードポート部と、
互いに独立開閉する扉と、不活性ガス供給源と、真空排気ラインとをそれぞれ有する複数の不活性ガスパージ室を有する不活性ガスパージユニットと、
前記基板を保持するためのチャックと、互いに異なる種類の薬液を保持できる薬液供給源に接続され、互いに異なる薬液を吐出する複数の薬液ノズルとを有する処理チャンバーと、
前記ロードポート部、前記不活性ガスパージユニット、及び前記処理チャンバーの間に設置された搬送室と、
前記搬送室内に設置され、前記ロードポート部と前記不活性ガスパージユニットとの間、前記不活性ガスパージユニットと前記処理チャンバーとの間、及び前記処理チャンバーと前記ロードポート部との間で前記基板を搬送する搬送アームとを備えている処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−222066(P2012−222066A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84347(P2011−84347)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】