説明

半導体装置の製造方法

【課題】 多孔質絶縁膜を含む層間絶縁膜の誘電率を実効的に低減させ、微細で高信頼性のダマシン配線を有する半導体装置の実用化を容易にする。
【解決手段】 下層配線1上に多孔質の第1低誘電率膜2bを含む第1層間絶縁膜2が形成され、第1低誘電率膜2bに設けられたビアホール3の側壁に第1サイドウォールメタル4が形成され、その後に第1エッチングストッパー層2aがエッチングされて下層配線1が露出される。そして、ビアホール3内にビアプラグ5が埋め込まれる。同様に、多孔質の第2低誘電率膜6bを含む第2層間絶縁膜6のトレンチ7内の側壁に第2サイドウォールメタル8設けられた後に第2エッチングストッパー層6aがエッチングされ上記ビアプラグ5に接続する上層配線9が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、詳しくは、多孔質の低誘電率膜を層間絶縁膜に用いた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成する素子の微細化は、半導体装置の高性能化にとって最も有効であり、現在、その寸法の設計基準は65nmから45nmに向けて技術開発が精力的に進められている。また、上記微細な構造を有する半導体装置の高性能化において、素子間を接続する配線の低抵抗化および配線の寄生容量の低減化のために、微細加工で溝が形成された層間絶縁膜上に銅(Cu)膜等の配線材料膜を堆積し、溝内に埋め込まれた部分以外にある上記配線材料膜を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により除去する、いわゆるダマシン法で形成する溝配線、すなわちダマシン配線が必須になっている。
【0003】
上記ダマシン配線の形成では、層間絶縁膜の材料としてシリコン酸化膜に代わり、それより比誘電率が低くなる、いわゆる低誘電率膜の絶縁膜材料が必須である。そして、層間絶縁膜の低誘電率化を推し進めるためには、低誘電率膜の多孔質化が最も有効な手段になってくる。ここで、低誘電率膜とは二酸化シリコン膜の比誘電率3.9以下の絶縁膜のことをいう。
【0004】
しかし、多孔質化した低誘電率膜が半導体装置のダマシン配線の製造プロセスに具体的に適用される場合には、以下のような問題の生じることが懸念され、それに対する解決手法が提案されている。その第1の問題は、低誘電率膜中の空孔の含有比率が高くなりその比誘電率が小さくなると共に層間絶縁膜の機械的強度が不可避的に低減することから生じるものであり、この層間絶縁膜の機械的強度の低下により熱応力起因のクラックが生じ易くなり、結果としてダマシン配線間のショート不良が生じ易くなることである。そこで、層間絶縁膜に形成する接続孔(ビアホール)あるいは配線溝(トレンチ)の側壁に側壁保護膜として高ヤング率絶縁膜を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、その第2の問題は、上記ビアホールおよびトレンチの側壁に多数の空孔(ポア)が製造プロセス中に露出し、このポアを通って層間絶縁膜内に水分、配線材料膜のCuあるいはそのバリア層になるたとえば窒化タンタル(TaN)等が浸入し、比誘電率の上昇および層間絶縁膜の信頼性の低下、配線間のリーク電流の増加、ビア部での接続不良等が引き起こされることである。そこで、上記ビアホールあるいはトレンチの側壁に側壁保護膜として緻密な膜質の無機絶縁膜(ポアシール)を設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
以下、低誘電率膜を含む層間絶縁膜のビアホールあるいはトレンチ側壁に側壁保護膜を形成してダマシン配線を製造する技術について図10,11を参照して説明する。図10,11は特許文献2に開示されているポアシールを使用してデュアルダマシン配線を形成する場合の工程別素子断面図である。
【0006】
図10(a)に示すように、Cu膜で成る下層配線101上に、プラズマシリコン窒化膜であるP−SiN膜102、第1低誘電率膜103、プラズマシリコン酸化膜である第1のP−SiO膜104、第2低誘電率膜105および第2のP−SiO膜106を積層して形成した後、周知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで、上記第2のP−SiO膜106と第2低誘電率膜105にビア用開口107を形成し第1のP−SiO膜104を露出させる。
【0007】
次に、図10(b)に示すように、トレンチパターンを有するレジストマスク108を形成する。そして、これをエッチングマスクにした反応性イオンエッチング(RIE)で、はじめにハイドロフロロカーボン系ガスを用いて第2のP−SiO膜106と第1のP−SiO膜104の上記露出部とをエッチング除去する。
【0008】
次に、図10(c)に示すように、第2のP−SiO膜106をエッチングマスクにし第1のP−SiO膜104をエッチングストッパーとし、たとえばフロロカーボン系のエッチングガスを用いたRIEにより、露出した第2低誘電率膜105をエッチングすると共に、第1低誘電率膜103にビアホールを形成する。このRIEにおいては、レジストマスク108は前もって除去されエッチングマスクにはならない。引続いて、第1のP−SiO膜104および第2のP−SiO膜106をエッチングマスクにして上記ビアホールで露出したP−SiN膜102をエッチング除去し上記ビアホールを下層配線101表面まで貫通させ、デュアルダマシン構造のビアホールおよびトレンチを形成する。
【0009】
次に、図10(d)に示すように、膜厚が50nm程度の第3のP−SiO膜(無機絶縁膜)109を化学気相成長(CVD)で全面に被覆させる。その後エッチバックを施して下層配線101表面の第3のP−SiO膜109を除去する。この工程で、図11(a)に示すように、第3のP−SiO膜109は絶縁膜のサイドウォールとして残り、側壁保護膜110として第1低誘電率膜103および第2低誘電率膜105の側壁を被覆する。ここで、側壁保護膜110は第1のP−SiO膜104および第2のP−SiO膜106の側壁も被覆する。
【0010】
次に、下層配線101表面の酸化層を還元除去し、図11(b)に示すように、バリアメタル膜111をスパッタ(PVD)法で全面に成膜しその上からCu膜112をメッキ法等で堆積させる。そして、CMP法で第2のP−SiO膜106表面の不要の上記バリアメタル膜111およびCu膜112を研磨除去し、図11(c)に示すように、下層配線101に電気接続するデュアルダマシン配線構造の上層配線113を形成する。このようにして、第1低誘電率膜103および第2低誘電率膜105に設けたデュアルダマシン構造のビアホールおよびトレンチの側壁に側壁保護膜110を有するダマシン配線が完成する。
【特許文献1】特開2003−197742号公報
【特許文献2】特開2000−294634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように半導体装置の素子は、その設計基準が65nmから45nmへとその微細化が進んでいる。そして、ダマシン配線に用いる低誘電率膜の比誘電率は2.0程度あるいはそれ以下の値が強く求められてきている。このように比誘電率が2以下になってくると、通常の低誘電率膜においては多孔質化は更に進んで膜中の空孔の含有比率が40%近くまで増加する。ここで、後で詳述するが、空孔の含有比率は、多孔質膜の密度をMpとし多孔質膜のバルク(空孔を有しない材料膜)の密度をMbとして、(Mb−Mp)/Mbなる比率のことである。
【0012】
しかしながら、上述した従来の側壁保護膜あるいはポアシールは、比誘電率が約4近くのSiO膜あるいはそれ以上の金属酸化物層のような絶縁膜で構成されており、比誘電率が2.0程度あるいはそれ以下となる低誘電率膜に比べて極めて高くなる。このために、上述した従来の側壁保護膜あるいはポアシールは、それを多孔質の低誘電率膜を層間絶縁膜とするダマシン配線にそのまま適用するも、層間絶縁膜全体の誘電率が上昇しダマシン配線間の寄生容量が増加して、半導体装置の高性能化を阻害するようになるという問題があった。
【0013】
また、上記図10,11を参照して説明した従来例の場合では、下層配線101上のCuに対して絶縁性バリアの機能を有するP−SiN膜102をRIEでエッチング除去してから、ポアシールになる第3のP−SiO膜109を形成する。しかし、下層配線101上の絶縁性バリア層あるいはエッチングストッパー層のエッチング除去において、第1低誘電率膜103あるいは第2低誘電率膜105を多孔質の低誘電率膜とすると、その低誘電率膜のデュアルダマシン構造のビアホールおよびトレンチの側壁形状が大きく劣化するようになる。たとえば、この側壁形状は樽(ボーイング)形状になってしまう。そして、このデュアルダマシン構造のビアホールおよびトレンチにCu膜あるいはそのバリア層になるTaN膜の埋め込みが困難になるという問題が生じる。これは、ビアホールあるいはトレンチの寸法が小さくなる程に顕著になってくる。
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、多孔質構造の低誘電率膜を含んで成る配線用層間絶縁膜の実効的な誘電率が増大することのないようにし、(デュアル)ダマシン配線に用いられるビアホールあるいはトレンチの側壁形状を高精度に制御し、これらのビアホールあるいはトレンチ内への配線材料の埋め込みを容易にして、微細化した高い信頼性を有するダマシン配線構造体の実用化を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、多孔質化した低誘電率膜を層間絶縁膜に用いたダマシン配線構造体を形成する場合に、下層配線上の絶縁性バリア層あるいはエッチングストッパー層をエッチング除去する工程において生じるところの、ダマシン配線のビアホールあるいはトレンチの側壁形状の変化は、多孔質化した低誘電率膜のビアホールあるいはトレンチ側壁において空孔の寸法が上記エッチング除去工程において増大し、低誘電率膜の局部的な収縮が生じるためであることを見出した。本発明は、この新知見に基づいてなされている。
【0016】
すなわち、上記課題を解決するために、半導体装置の製造方法にかかる第1の発明は、素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、前記第3の絶縁膜上に所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、前記レジストマスクをエッチングマスクにした第1のドライエッチングを施し前記第1の絶縁膜に達する開口を前記第3の絶縁膜および第2の絶縁膜に形成する工程と、前記レジストマスクを除去する工程と、前記レジストマスクを除去した後、前記開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、第2のドライエッチングを施し前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をエッチング除去する工程と、前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにした第3のドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するビアプラグあるいは上層配線層を形成する工程と、を有する構成となっている。
【0017】
そして、半導体装置の製造方法にかかる第2の発明は、素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、前記第3の絶縁膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、前記第4の絶縁膜上に所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、前記レジストマスクをエッチングマスクにした第1のドライエッチングを施し前記第4の絶縁膜に前記開口パターンを転写する工程と、前記レジストマスクを除去する工程と、前記開口パターンを有する前記第4の絶縁膜をエッチングマスクにした第2のドライエッチングを施し前記第1の絶縁膜に達する開口を前記第3の絶縁膜および第2の絶縁膜に形成する工程と、前記開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、第3のドライエッチングを施し前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をエッチング除去する工程と、前記第4の絶縁膜あるいは前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにした第4のドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するビアプラグあるいは上層配線を形成する工程と、を有する構成になっている。
【0018】
そして、半導体装置の製造方法にかかる第3の発明は、素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、前記第3の絶縁膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、レジストマスクを用いたドライエッチングにより前記第4の絶縁膜に第1の開口パターンを形成し前記第3の絶縁膜に第2の開口パターンを形成する工程と、前記レジストマスクを除去する工程と、前記第1の開口パターンを有する前記第4の絶縁膜および前記第2の開口パターンを有する前記第3の絶縁膜をエッチングマスクに用いたドライエッチングにより前記第1の絶縁膜に達するデュアルダマシン構造の開口を前記第2の絶縁膜に形成する工程と、前記デュアルダマシン構造の開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をドライエッチングで除去する工程と、前記第4の絶縁膜あるいは前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにしたドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するデュアルダマシン配線から成る上層配線を形成する工程と、を有する構成になっている。
【0019】
上記発明において、前記バリアメタル膜は、Ta膜、TaN膜、TaSiN膜、WN膜、WSiN膜、TiN膜あるいはTiSiN膜を含む導電体材料で構成されることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、多孔質の低誘電率膜が配線間の層間絶縁膜として実用レベルで適用できるようになり、高い信頼性を有し高速動作が可能な半導体装置が具現化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態の幾つかについて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるダマシン配線構造体の断面図であり、図2〜4は、上記ダマシン配線構造体の製造工程別素子断面図である。
【0022】
図1に示すように、ダマシン配線構造の下層配線1が形成される。そして、下層配線1と上層配線とを接続するためのビアプラグの形成領域において、絶縁性バリアの機能を有する第1の絶縁膜である第1エッチングストッパー層2a、第2の絶縁膜である第1低誘電率膜2b、第3の絶縁膜である第1キャップ層2cの積層膜で成る第1層間絶縁膜2を貫通するビアホール3が設けられ、このビアホール3の第1低誘電率膜2b、第1キャップ層2c側壁にバリアメタルで成る第1サイドウォールメタル4が形成される。そして、ビアプラグ5がビアホール3内に埋め込まれるように設けられる。ここで、ビアプラグ5はCu、Cu合金あるいはW等の金属で形成される。
【0023】
ここで、第1サイドウォールメタル4は、たとえばタンタル(Ta)膜、高融点金属の窒化膜たとえば窒化タンタル(TaN)膜等で形成される。そして、その膜厚は、好ましくは2nm〜10nmにされる。
【0024】
また、第1低誘電率膜2bは、たとえば比誘電率が2.5程度の多孔質のメチルシルセスキオキサン(p−MSQ:Porous Methyl Silsesquioxane)膜で形成される。そして、第1低誘電率膜2bの空孔の含有比率は40%以下にすることが好適である。この含有比率が40%を超えてくると、一部の空孔が相互に連結するようになり、後で詳述するが、上記第1サイドウォールメタル4の形成においてこの連結した孔を通りTaNなどの導電体が第1低誘電率膜2b中に浸入し易くなるからである。ここで、空孔の含有比率とは、上述したように、(多孔質でない緻密なMSQ膜バルクの密度)−(多孔質のMSQ膜の密度)の(多孔質でない緻密なMSQ膜バルクの密度)に対する比率である。そして、第1エッチングストッパー層2aは、炭化珪素(SiC)膜、窒素含有炭化珪素(SiCN)膜あるいはSiN膜で成り、第1キャップ層2cは、炭素含有酸化ケイ素(SiOC)膜、SiCN膜、SiN膜あるいはSiO膜で形成される。但し、第1エッチングストッパー層2aと第1キャップ層2cとは互いに異なる絶縁膜が用いられる。なお、上記の積層した第1層間絶縁膜2の実効的な比誘電率は2.5〜3.0程度になる。
【0025】
上層配線の形成領域では、第1の絶縁膜である第2エッチングストッパー層6a、第2の絶縁膜である第2低誘電率膜6b、第3の絶縁膜である第2キャップ層6cが積層して形成され、この積層した第2層間絶縁膜6の所定の領域に設けられたトレンチ7の内壁にバリアメタルから成る第2サイドウォールメタル8が設けられる。そして、上記トレンチ7内にCu膜あるいはCu合金膜から成る上層配線9が埋め込まれ、上記ビアプラグ5に接続して形成される。ここで、第2エッチングストッパー層6a、第2低誘電率膜6b、第2キャップ層6cは、それぞれ、第1エッチングストッパー層2a、第1低誘電率膜2bおよび第1キャップ層2cと同様な絶縁膜で形成される。
【0026】
ここで、第2サイドウォールメタル8は、第1サイドウォールメタル4と同じようにTa膜あるいは高融点金属の窒化膜で形成される。そして、第2低誘電率膜6bは、比誘電率が2.0程度のp−MSQ膜で形成され、第2層間絶縁膜6の実効の比誘電率は2〜2.5程度である。このようにして、ダマシン配線構造体の2層配線が形成される。このダマシン配線構造体では、第1キャップ層2cはCuに対して絶縁性バリア層として機能する。
【0027】
次に、本発明にかかる上記ダマシン配線構造体の製造方法について、図2〜4を参照して詳細に説明する。ここで、図1と同じものは同一符号で示している。
【0028】
シリコン基板上にCVD法でシリコン酸化膜を堆積させ、下地絶縁膜(不図示)を形成する。そして、周知のダマシン配線の形成方法によりCu膜で成る下層配線1を形成する。続いて、第1の絶縁膜である第1エッチングストッパー層2aとして膜厚が25nm程度であり、比誘電率が3.5程度のSiC膜を成膜し、スピンオン塗布法を用いたp−MSQ膜の成膜により比誘電率が2.5程度、膜厚が200nm〜300nm程度になる第2の絶縁膜である第1低誘電率膜2bを形成する。ここで、第1低誘電率膜2bの空孔の含有比率は30%程度である。そして、上記第1低誘電率膜2b表面に、CVD法で成膜した膜厚および比誘電率がそれぞれ100nm程度、2〜3程度のSiOC膜から成る第3の絶縁膜である第1キャップ層2cを形成する。そして、開口径が100nm程度のビアホールの開口パターンを有するレジストマスク10をエッチングマスクにして、上記第1キャップ層2c、第1低誘電率膜2bを順次にRIEでドライエッチングし口径が100nm程度のビアホール3を形成する。ここで、第1エッチングストッパー層2aはエッチングしないままにする(図2(a))。上記の少なくとも第1低誘電率膜2bのエッチングでは、エッチングガスとしてたとえばCのような炭素を多く含有するフロロカーボン系のフッ素化合物ガスを用い、反応生成物として多く生成する有機ポリマーをビアホール側壁の保護膜とする。このために、このエッチング工程では、形成されるビアホール側壁の損傷は生じない。
【0029】
次に、上記レジストマスクをHガス、Heガス等のプラズマで除去した後、PVD法、ALD(原子層気相成長)法あるいはCVD法等により第1保護メタル膜11を全面に堆積させる。ここで、第1保護メタル膜11は、たとえばTaN膜である。第1保護メタル膜11の成膜で、ビアホール3の側壁には膜厚が3nm程度のTaN膜が形成される。通常では、成膜時のステップカバレッジの関係から、第1エッチングストッパー層2a表面にはそれ以下の膜厚が、第1キャップ層2c表面にはそれ以上の膜厚のTaN膜が形成される(図2(b))。
【0030】
この第1保護メタル膜11の成膜において、ビアホール3の側壁に露出する第1低誘電率膜2bの空孔を通して、第1保護メタル膜11を構成する金属が第1低誘電率膜2bの内部に侵入することはない。これは、上述したように第1保護メタル膜11のビアホール3側壁での空孔の含有比率は、40%程度以下のままに保たれており、一部の空孔が相互に連結するが防止されているからである。
【0031】
次に、第1保護メタル膜11に対してRIEにより異方性のエッチバックを施す。このエッチバックに使用するエッチング原料ガスは、塩素(Cl)、臭化水素(HBr)の混合ガスであり、第1保護メタル膜11を選択的にエッチングするガスである。このエッチバックにより、第1キャップ層2c上の第1保護メタル膜11、第1エッチングストッパー層2a上の第1保護メタル膜11をドライエッチングし、少なくとも第1エッチングストッパー層2a上の第1保護メタル膜11をエッチング除去する。そして、ビアホール3内の露出する第1低誘電率膜2bおよび第1キャップ層2cの側壁に第1サイドウォールメタル4を形成する(図2(c))。
【0032】
そして、フッ素化合物ガスにNガスを含むエッチングガスを用いたRIEにより、第1キャップ層2cおよび第1サイドウォールメタル4をエッチングマスクにして第1エッチングストッパー層2aをドライエッチングし、ビアホール3を下層配線1表面に達するように貫通させる。引続いて、周知のメッキ法等を用いて膜厚が200nm程度のCu膜あるいはCu合金膜を配線材料として成膜し、CMP法を用いて第1キャップ層2c上の不要な部分のCu膜等を研磨除去し、ビアホール3内にビアプラグ5を充填して形成する(図2(d))。
【0033】
ここで、絶縁性バリア層である上記第1エッチングストッパー層2aのドライエッチングにおいて、第1サイドウォールメタル4が第1低誘電率膜2bのビアホール3側壁を被覆しているために、フッ素化合物ガスにNガスを含むエッチングガスによる損傷、たとえば従来の技術で生じていた空孔の寸法の増大とそれに伴う第1低誘電率膜2bのビアホール3内での収縮は完全に防止され、ビアホール3におけるボーイングのような断面形状変形は生じなくなる。また、空孔の寸法の増大に伴う空孔の連結もなくなり、上述したように、第1保護メタル膜11を構成する金属が第1低誘電率膜2bの内部に侵入し、配線間でリーク電流が増加することも皆無になる。
【0034】
このようにした後、第1キャップ層2c、第1サイドウォールメタル4の上部およびビアプラグ5を被覆するように、全面に膜厚が25nm程度のSiC膜から成る第1の絶縁膜である第2エッチングストッパー層6a、p−MSQ膜から成る比誘電率が2.0程度、膜厚が200nm〜300nm程度になる第2の絶縁膜である第2低誘電率膜6bを形成する。そして、上記第2低誘電率膜6b表面に、たとえば膜厚が100nmのSiOC膜から成る第3の絶縁膜である第2キャップ層6cを形成する(図3(a))。
【0035】
そして、トレンチ7の開口パターンを有するレジストマスク12をエッチングマスクにして、上記第2キャップ層6c、第2低誘電率膜6bを順次にRIEでドライエッチングし幅寸法が150nm程度のトレンチ7を形成する。ここで、第2エッチングストッパー層6aはエッチングしない(図3(b))。上記の少なくとも第2低誘電率膜6bのエッチングにおいても、エッチングガスとしてたとえばCのような炭素を多く含有するフロロカーボン系のフッ素化合物ガスを用い、有機ポリマーを反応生成物として多く生成しトレンチ7の側壁保護を行う。このようにして、このエッチング工程では、形成されるビアホール側壁の損傷は生じない。
【0036】
次に、図2(a)で説明したのと同様にして上記レジストマスク12をプラズマで除去した後、残渣物を除去する洗浄処理を施して、第2キャップ層6c、第2低誘電率膜6bにトレンチ7を形成する(図3(c))。
【0037】
次に、PVD法等により第2保護メタル膜13を全面に堆積させる。ここで、第2保護メタル膜13はたとえばTaN膜である。第2保護メタル膜13の成膜で、トレンチ7の第2低誘電率膜6bの側壁には膜厚が5nm程度のTaN膜が形成される。また、第2エッチングストッパー層6a表面にはそれ以下の膜厚が、第2キャップ層6c表面にはそれ以上の膜厚のTaN膜が形成されるようになる(図4(a))。
【0038】
次に、第2保護メタル膜13に対して高異方性のRIEによるエッチバックを施す。このエッチバックに使用するエッチング原料ガスは、上述したのと同じであるCl、HBrの混合ガスであり、第2保護メタル膜13を選択的にエッチングする。このエッチバックにより、第2キャップ層6c上の第2保護メタル膜13、第2エッチングストッパー層6a上の第2保護メタル膜13をドライエッチングし、少なくとも第2エッチングストッパー層6a上の第2保護メタル膜13をエッチング除去する。そして、トレンチ7内の露出する第2低誘電率膜6bおよび第2キャップ層6cの側壁に膜厚が5nm程度の第2サイドウォールメタル8を形成する(図4(b))。
【0039】
そして、フッ素化合物ガスにNガスを含むエッチングガスを用いたRIEにより、第2キャップ層6cおよび第2サイドウォールメタル8をエッチングマスクにして第2エッチングストッパー層6aをドライエッチングし、トレンチ7をビアプラグ5に達するように貫通させる。引続いて、周知のメッキ法等を用いて膜厚が500nm〜1μnmのCu膜あるいはCu合金膜から成る配線材料膜14を成膜する(図4(c))。ここで、配線材料膜14はビアプラグ5に接続する。そして、CMP法を用いて、第2キャップ層6c上の不要な部分のCu膜等を研磨除去する。このようにして、図1で説明した上層配線9が形成され、ダマシン配線構造体の2層配線が完成する。
【0040】
上記絶縁性バリア層である第2エッチングストッパー層6aのドライエッチングにおいて、第2サイドウォールメタル8が第2低誘電率膜6bのトレンチ7側壁を被覆しているために、フッ素化合物ガスにNガスを含むエッチングガスによる損傷、たとえば従来の技術で生じていた空孔の寸法の増大とそれに伴う第2低誘電率膜6bのトレンチ7内での収縮は完全に防止され、トレンチ7におけるボーイングのような断面形状変形は生じなくなる。また、空孔の寸法の増大に伴う空孔の連結もなくなり、上述したように、第2保護メタル膜13を構成する金属が第2低誘電率膜6bの内部に侵入し、配線間でリーク電流が増加することも皆無になる。
【0041】
Cuを含有するダマシン配線の形成において、Cuの拡散を防止するために配線上に形成する絶縁性バリア層(エッチングストッパー層)のドライエッチングでは、フッ素化合物ガスとしてCFのように炭素の含有量の少ないエッチングガスが用いられる。これは、上述したような炭素含有量の多いフロロカーボン系ガスを用いると、反応性生物である有機ポリマーが配線表面に多量に付着し、上記絶縁性バリア層のドライエッチングが困難になるからである。しかし、上記絶縁性バリア層の上記エッチングガスは、上述した炭素含有量の多いフロロカーボン系ガスに比べて、多孔質の低誘電率膜に対してエッチング損傷を生じさせることになる。そこで、上記実施の形態では、第1サイドウォールメタル4あるいは第2サイドウォールメタル8がこのエッチング損傷を防止する機能を有することになる。
【0042】
そして、上記の実施の形態において、層間絶縁膜を構成する多孔質構造の第1低誘電率膜2bあるいは第2低誘電率膜7bの空孔の含有比率は30〜40%が好適である。空孔の含有比率が40%を超えると、上述したように第1低誘電率膜2b、第2低誘電率膜6b中の空孔が相互に連結し、第1サイドウォールメタル4あるいは第2サイドウォールメタル9を構成する金属の浸入が生じ易くなり、配線間のリーク電流が増加するからである。また、空孔の含有比率が30%より小さくなると、その比誘電率を2程度あるいはそれ以下にすることが非常に困難になるからである。
【0043】
実施の形態1では、多孔質の第1低誘電率膜2bを含んで成る第1層間絶縁膜2に設けられるビアホール3の側壁を第1サイドウォールメタル4によりエッチング損傷から保護しながら、絶縁性バリア層である第1エッチングストッパー層2aをエッチング除去する。あるいは、多孔質の第2低誘電率膜7bを含んで成る第2層間絶縁膜7に設けられるトレンチ8の側壁を第2サイドウォールメタル9によりエッチングから保護しながら、第2エッチングストッパー層7aをエッチング除去する。このため、従来の技術で生じていたところの、ダマシン構造のビアホールおよびトレンチ側壁の形状変形は皆無になり、微細なダマシン配線構造体が半導体装置に形成できるようになる。
【0044】
また、第1サイドウォールメタル4および第2サイドウォールメタル9は導電体であり、それぞれビアプラグ5、上層配線9に電気接続するため、従来の技術の場合の絶縁体で成るサイドウォールのように第1層間絶縁膜2あるいは第2層間絶縁膜7の誘電率を増大させることは全くなくなる。
【0045】
そして、上述したようなバリアメタルから成る第1サイドウォールメタル4および第2サイドウォールメタル9で、ダマシン構造のビアホールおよびトレンチの側壁を保護することで、多孔質の低誘電率膜を含む層間絶縁膜の機械的強度の低減に起因するクラックの発生およびダマシン配線間のショート不良は大幅に低減する。また、上記第1サイドウォールメタル4および第2サイドウォールメタル9は、層間絶縁膜内への水分あるいは配線材料膜のCuの浸入を完全に防止することができる。このために、ダマシン配線構造体の層間絶縁膜は高い信頼性を有し、層間絶縁膜の実効的な誘電率の上昇はなくなり、しかも配線層間のリーク電流の増加および上記Cuの多孔質の低誘電率膜中への浸入によるビア部での切断/接続不良等の問題は皆無になる。
【0046】
また、半導体装置においてダマシン配線の多層化も容易になる。そして、実用レベルにおいて、高い信頼性を有し微細なダマシン配線構造体が半導体装置に形成できるようになる。このようにして、信頼性が高く高速動作が可能な半導体装置が具現化される。
【0047】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図5〜8を参照して以下に説明する。この場合の特徴は、本発明がデュアルダマシン配線の形成に適用されているところにある。ここで、図5は、上層配線をビアプラグとダマシン配線とを一体に形成したデュアルダマシン配線構造体の断面図であり、図6〜8は、上記デュアルダマシン配線構造体の製造工程別素子断面図である。
【0048】
図5に示すように、たとえばアルミニウム銅合金から成る下層配線21が形成される。そして、下層配線21に接続するデュアルダマシン配線の形成領域において、エッチングストッパー層22a、第1低誘電率膜22b、ミッドストッパー層22c、第2低誘電率膜22dおよびキャップ層22eの積層膜で成る層間絶縁膜22にデュアルダマシン構造のビアホール23およびトレンチ24が設けられ、このビアホール23の第1低誘電率膜22bおよびミッドストッパー層22cの側壁にビア部サイドウォールメタル25が形成される。そして、同様にトレンチ24の第2低誘電率膜22dおよびキャップ層22eの側壁にトレンチ部サイドウォールメタル26が設けられる。そして、デュアルダマシン配線構造の上層配線27が、上記デュアルダマシン構造のビアホール23およびトレンチ24内に埋め込まれ、下層配線21に直接に電気接続するように設けられる。
【0049】
ここで、ビア部サイドウォールメタル25およびトレンチ部サイドウォールメタル26は、たとえばALD法あるいはCVD法等で成膜するTa膜あるいは高融点金属の窒化膜で形成され、その膜厚は2nm〜10nmである。
【0050】
そして、第1低誘電率膜22bおよび第2低誘電率膜22dは、たとえば比誘電率が1.8程度の多孔質のp−MSQ膜であり、エッチングストッパー層22aは、たとえばSiC膜であり、ミッドストッパー層22cおよびキャップ層22eは、たとえばSiOC膜で形成される。なお、上記の積層した層間絶縁膜22の実効的な比誘電率は2〜2.5程度となっている。このデュアルダマシン配線構造体では、ミッドストッパー層22cはCuに対して絶縁性バリア層として機能することが好ましい。
【0051】
次に、本発明にかかる上記デュアルダマシン配線構造体の製造方法について、図6〜8を参照して更に詳細に説明する。ここで、図5と同じものは同一符号で示している。
【0052】
シリコン基板上にCVD法でシリコン酸化膜を堆積させ、下地絶縁膜(不図示)を形成する。そして、周知のアルミニウム銅合金膜の成膜とその加工とにより下層配線21を形成する。続いて、第1の絶縁膜であるエッチングストッパー層22aとして膜厚が25nm程度であり、比誘電率が3.5程度のSiC膜を成膜し、スピンオン塗布法を用いたp−MSQ膜の成膜により比誘電率が1.8程度、膜厚が200nm〜300nm程度になる第2の絶縁膜である第1低誘電率膜22bを形成する。ここで、第1低誘電率膜2bの空孔の含有比率は40%程度である。そして、上記第1低誘電率膜22b上に積層して、CVD法で成膜した膜厚、比誘電率がそれぞれ100nm程度、2〜3程度のSiOC膜から成るミッドストッパー層22cを形成する。更に、ミッドストッパー層22c上に第2の絶縁膜である第2低誘電率膜22dを形成する。この第2低誘電率膜22dは第1低誘電率膜22bと同様にして形成する。但し、その膜厚は第1低誘電率膜22bより厚くなるようにする。そして、第2低誘電率膜22d上に第3の絶縁膜であるキャップ層22eを形成する。これらの多層に積層した絶縁膜で層間絶縁膜22が構成される。ここで、キャップ層22eは後述するように第1ハードマスク層になる。そして、このキャップ層22e上に、第4の絶縁膜として膜厚がたとえば50nm程度のシリコン酸化膜から成る第2ハードマスク層28を形成する(図6(a))。
【0053】
次に、公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術により、それぞれレジストマスクを用いて上記第2ハードマスク層28およびキャップ層22eをドライエッチング加工しそれぞれに開口パターン転写する。たとえば口径が80nmの開口を有する第1ハードマスク層22e、そして、たとえば幅寸法が100nmの開口を有する第2ハードマスク28を形成する。そして、実施の形態1で説明した方法により上記レジストマスクを除去する(図6(b))。
【0054】
次に、第1ハードマスク層22eをエッチングマスクに用いたRIEにより、第2低誘電率膜22dをドライエッチングし、ミッドストッパー層22c表面に達するビアパターンを転写する。ここで、使用するエッチングガスは、たとえば上述したフロロカーボン系のフッ素化合物ガスを含む(図6(c))。
【0055】
次に、第2ハードマスク層28をエッチングマスクに用いたRIEにより、第1ハードマスク層22eをドライエッチングし、第2ハードマスク層28のトレンチパターンを第1ハードマスク層22eに転写する。同時に、ミッドストッパー層22cをエッチングしビアパターン転写を行う。ここで、使用するエッチングガスは、たとえばCHのようなハイドロフロロカーボン系のフッ素化合物のガスを含む(図7(a))。
【0056】
このようにした後、第1ハードマスク層28をエッチングマスクにして、第2低誘電率膜22dをエッチング加工し、トレンチパターンを第2低誘電率膜22dに加工転写する。同時に、ミッドストッパー層22cをエッチングマスクにして、第1低誘電率膜22bをエッチング加工し、ビアパターンを第1低誘電率膜22bに加工転写する。ここで使用するエッチングガスは、実施の形態1の場合と同様な理由から炭素を多量に含有するフロロカーボン系のフッ化化合物ガスを含む。このようにして、デュアルダマシン構造になるビアホール23が第1低誘電率膜22bとミッドストッパー層22cに形成され、同じくデュアルダマシン構造になるトレンチ24が第2低誘電率膜22dとキャップ層22eに形成される。ここで、エッチングストッパー層22aはエッチングしないままである(図7(b))。
【0057】
次に、ALD法、CVD法等により保護メタル膜29を全面に成膜し、露出するエッチングストッパー層22a、ビアホール23側壁、トレンチ24側壁および第2ハードマスク28表面に保護メタル膜29を堆積させる。ここで、保護メタル膜29はCuに対する導電性バリア膜であり、膜厚が2nm〜10nmのたとえばTa膜、あるいはTaN膜のような高融点金属の窒化膜である(図7(c))。
【0058】
次に、実施の形態1で説明したのと同様に高い異方性のRIEによるエッチバックを施す。このエッチバックにより、第2ハードマスク28上およびエッチングストッパー層22a上の保護メタル膜29をエッチング除去し、ビアホール23内の露出する第1低誘電率膜22bの側壁にビア部サイドウォールメタル25を形成し、トレンチ24内の露出する第2低誘電率膜22dの側壁にトレンチ部サイドウォールメタル26を形成する(図8(a))。
【0059】
次に、フッ素化合物ガスにNガスを含むエッチングガスを用いたRIEにより、第2ハードマスク28、ミッドストッパー層22c、ビア部サイドウォールメタル25およびトレンチ部サイドウォールメタル26をエッチングマスクにしてエッチングストッパー層22aをドライエッチングし、ビアホール23を下層配線21表面に達するように貫通させる(図8(b))。
【0060】
この絶縁性バリア層である上記エッチングストッパー層22aのドライエッチングにおいて、ビア部サイドウォールメタル25およびトレンチ部サイドウォールメタル26が、それぞれ第1低誘電率膜22b側壁、第2低誘電率膜22d側壁を被覆しているために、実施の形態1で述べたようなエッチングガスによる損傷は防止され、デュアルダマシン構造のビアホール23およびトレンチ24におけるボーイングのような断面形状変形は生じなくなる。また、空孔の寸法の増大に伴う空孔の連結もなくなり、上述したように、保護メタル膜29を構成する金属が第1低誘電率膜22bあるいは第2低誘電率膜22dの内部に侵入し、配線間でリーク電流が増加することも皆無になる。
【0061】
次に、メッキ法等を用いて膜厚が500nm〜1μmのCu膜を堆積させ配線材料膜30を成膜する(図8(c))。ここで、配線材料膜30は下層配線21に直接接続している。そして、CMP法を用いて、第2ハードマスク層28上の不要な部分のCu膜と上記第2ハードマスク層28を研磨除去する。このようにして、図5で説明したデュアルダマシン配線構造の上層配線27が形成され、デュアルダマシン配線構造体を有する2層配線が完成する。
【0062】
上記実施の形態2においては、実施の形態1で説明したのと全く同様の効果が生じる。また、この場合には、実施の形態1よりもダマシン配線構造体の製法が簡便になる。そして、層間絶縁膜に挿入する多孔質の低誘電率膜以外の絶縁層(エッチングストッパー層あるいはキャップ層)の一部を省くことができるようになり、層間絶縁膜の実効的な誘電率をさらに低減することが可能になる。このために、半導体装置の動作の高速化がさらに進む。
【0063】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、図9を参照して以下に説明する。この場合の特徴は、実施の形態1,2において、ダマシン構造のビアホールあるいはトレンチ内に更に導電性バリア層を形成するところにある。ここで、図9(a)は実施の形態1に上記導電性バリア層を形成したダマシン配線構造体の断面図であり、図9(b)は実施の形態2に上記導電性バリア層を形成したデュアルダマシン配線構造体の断面図である。ここで、図1又は5と同じものはそれぞれ同一符号で示し、その一部の説明は省略する。
【0064】
図9(a)に示すように、第1層間絶縁膜2に設けられたビアホール3の側壁に第1サイドウォールメタル4が形成され、更に第1サイドウォールメタル4を被覆し下層配線1に接続する第1バリア層15が形成され、この第1バリア層15を介しビアホール3を埋め込むようにビアプラグ5が設けられる。ここで、第1バリア層15は、その膜厚が1nm〜5nmの窒化タングステン(WN)膜のような導電性バリア膜で形成され、Cuの拡散を防止する。そして、第2層間絶縁膜6に設けられたトレンチ7の側壁に第2サイドウォールメタル8が形成され、更に第2サイドウォールメタル8を被覆し上記ビアプラグ5に接続する第2バリア層16が形成され、この第2バリア層16を介しトレンチ7を埋め込むように上層配線9が設けられる。ここで、第2バリア層16は、その膜厚が5nm程度のWN膜のような導電性バリア膜で形成される。
【0065】
また、デュアルダマシン配線構造体においても、図9(b)に示すように、層間絶縁膜22に形成されたデュアルダマシン構造のビアホール23およびトレンチ24の側壁にそれぞれビア部サイドウォールメタル25、トレンチ部サイドウォールメタル26が形成され、更にビア部サイドウォールメタル25およびトレンチ部サイドウォールメタル26を被覆し下層配線21に接続するバリア層31が形成される。そして、このバリア層31を介しビアホール23およびトレンチ24内を埋め込むようにCu膜から成るデュアルダマシン構造の上層配線27が設けられる。ここで、バリア層31は、その膜厚が1nm〜10nmのWN膜のような導電性バリア膜で形成され、Cuの拡散を防止する。
【0066】
このようにすることで、Cuで成るビアプラグ5、上層配線9,27は導電性バリアである第1バリア層4、第2バリア層8あるいはバリア層31で完全に包まれる構造になるため、例えば第1キャップ層2cあるいはミッドストッパー層22cがCuに対してバリア性を持たない絶縁膜であってもよく、第1キャップ2c、ミッドストッパー層22cのような層間絶縁膜を構成する絶縁材料の選択範囲が大幅に増大し、層間絶縁膜の実効的な誘電率を低減させることが容易になってくる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0068】
例えば、上記の実施の形態において、ビアホールあるいはトレンチの側壁に形成するサイドウォールメタルと層間絶縁膜を構成する低誘電率膜との間に、それぞれ以下のような多孔質保護絶縁膜を介在させてもよい。すなわち、この多孔質保護絶縁膜は上記第1、第2低誘電率膜と同種あるいは異種の多孔質絶縁膜である。ここで、多孔質絶縁膜中にある空孔の含有比率が30%以下であり、その空孔の寸法が2nm以下であることが好ましい。このようにすることで、第1低誘電率膜2bあるいは第2低誘電率膜6bの多孔質の度合いが高くなっても、たとえば膜中の空孔の含有比率が40%を超えても、ダマシン構造のビアホールあるいはトレンチ側壁部に形成される上記多孔質保護絶縁膜の空孔は、相互に連結するようなことはなくそれぞれが孤立して存在しているために、上述した第1、第2保護メタル膜11,13、保護メタル膜29の成膜時にその構成金属が、第1低誘電率膜2bあるいは第2低誘電率膜6bに浸入することは防止される。そして、多孔質の度合いが高くなり、その比誘電率がたとえば1.6程度と更に小さくなる第1低誘電率膜2bあるいは第2低誘電率膜6bの使用も可能になる。
【0069】
また、サイドウォールメタルとしては、上記実施の形態では1層構造であるが2層構造あるいはそれ以上の多層構造にしてもよい。
【0070】
また、本発明の多孔質構造の低誘電率膜としては、p−MSQ膜と同様に、シロキサン骨格を有する他の絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格とした絶縁膜を多孔質化した絶縁膜を用いることができる。なお、上記シロキサン骨格を有する絶縁膜には、シルセスキオキサン類の絶縁膜であるSi−CH3結合、Si−H結合、Si−F結合のうち少なくとも1つの結合を含むシリカ膜があり、有機高分子を主骨格とした絶縁膜には、有機ポリマーで成るSiLK(登録商標)がある。そして、シルセスキオキサン類の絶縁膜としてよく知られた絶縁材料には、上記MSQの他、ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ:Hydrogen Silsesquioxane)、メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン(MHSQ:Methylated Hydrogen Silsesquioxane)等がある。さらに、多孔質構造の低誘電率膜としては、CVD法により成膜する多孔質のSiOCH膜、SiOC膜も同様に使用することができる。
【0071】
また、上記実施の形態において各エッチングストッパー層には、SiC膜、SiCN膜、SiOC膜、SiN膜あるいはこれらの積層膜を用いてもよい。そして、各キャップ層には、SiOC膜、SiCN膜、SiN膜、SiO膜あるいはこれらの積層膜を用いてもよい。但し、上記エッチングストッパー層、キャップ層には、互いに異なる絶縁膜が用いられることが好ましい。
【0072】
また、上述したバリアメタルのサイドウォールの導電材料膜としては、その他に高融点金属の窒化膜を含むものとしてTaSiN膜、WN膜、WSiN膜、TiN膜、TiSiN膜を用いてよい。あるいは、Ta、W、Tiのような高融点金属膜との積層膜または上記高融点金属の窒化膜の積層膜から成る導電複合体膜であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置のダマシン配線構造体の断面図である。
【図2】同ダマシン配線構造体の製造方法を示す工程別素子断面図である。
【図3】図2に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図4】図3に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置のデュアルダマシン配線構造体の断面図である。
【図6】同デュアルダマシン配線構造体の製造方法を示す工程別素子断面図である。
【図7】図6に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図8】図7に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3にかかる半導体装置のダマシン配線構造体の断面図である。
【図10】従来のデュアルダマシン配線構造体の製造方法を示す工程別素子断面図である。
【図11】図10に示す工程の続きの工程別素子断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,21 下層配線
2 第1層間絶縁膜
2a 第1エッチングストッパー層
2b、22b 第1低誘電率膜
2c 第1キャップ層
3,23 ビアホール
4 第1サイドウォールメタル
5 ビアプラグ
6 第2層間絶縁膜
6a 第2エッチングストッパー層
6b、22d 第2低誘電率膜
6c 第2キャップ層
7,24 トレンチ
8 第2サイドウォールメタル
9,27 上層配線
10,12 レジストマスク
11 第1保護メタル膜
13 第2保護メタル膜
14,30 配線材料膜
15 第1バリア層
16 第2バリア層
22 層間絶縁膜
22a エッチングストッパー層
22c ミッドストッパー層
22e キャップ層(第1ハードマスク層)
25 ビア部サイドウォールメタル
26 トレンチ部サイドウォールメタル
28 第2ハードマスク層
29 保護メタル膜
31 バリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、
前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜上に所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクにした第1のドライエッチングを施し前記第1の絶縁膜に達する開口を前記第3の絶縁膜および第2の絶縁膜に形成する工程と、
前記レジストマスクを除去する工程と、
前記レジストマスクを除去した後、前記開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、
第2のドライエッチングを施し前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をエッチング除去する工程と、
前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにした第3のドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、
前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するビアプラグあるいは上層配線層を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、
前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜上に所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成する工程と、
前記レジストマスクをエッチングマスクにした第1のドライエッチングを施し前記第4の絶縁膜に前記開口パターンを転写する工程と、
前記レジストマスクを除去する工程と、
前記開口パターンを有する前記第4の絶縁膜をエッチングマスクにした第2のドライエッチングを施し前記第1の絶縁膜に達する開口を前記第3の絶縁膜および第2の絶縁膜に形成する工程と、
前記開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、
第3のドライエッチングを施し前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をエッチング除去する工程と、
前記第4の絶縁膜あるいは前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにした第4のドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、
前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するビアプラグあるいは上層配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
素子が形成された半導体基板上に、絶縁膜を介して下層配線層を形成する工程と、
前記下層配線層上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に多孔質絶縁体材料から成る第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜上に第4の絶縁膜を形成する工程と、
レジストマスクを用いたドライエッチングにより前記第4の絶縁膜に第1の開口パターンを形成し前記第3の絶縁膜に第2の開口パターンを形成する工程と、
前記レジストマスクを除去する工程と、
前記第1の開口パターンを有する前記第4の絶縁膜および前記第2の開口パターンを有する前記第3の絶縁膜をエッチングマスクに用いたドライエッチングにより前記第1の絶縁膜に達するデュアルダマシン構造の開口を前記第2の絶縁膜に形成する工程と、
前記デュアルダマシン構造の開口の側壁を被覆するようにバリアメタル膜を全面に堆積させる工程と、
前記開口の底部の前記第1の絶縁膜上に堆積した前記バリアメタル膜をドライエッチングで除去する工程と、
前記第4の絶縁膜あるいは前記第3の絶縁膜および前記開口の側壁を被覆する前記バリアメタル膜をエッチングマスクにしたドライエッチングを前記開口の低部の前記第1の絶縁膜に施し前記開口を前記下層配線層まで貫通させる工程と、
前記下層配線層まで貫通した前記開口内に導電体材料を埋め込み前記下層配線層に接続するデュアルダマシン配線から成る上層配線を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記バリアメタル膜は、Ta膜、TaN膜、TaSiN膜、WN膜、WSiN膜、TiN膜あるいはTiSiN膜を含む導電体材料で構成されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−19480(P2006−19480A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195381(P2004−195381)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】