説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明の目的は、層間絶縁膜に密着用の膜を追加することなく、簡易に有機絶縁膜と無機絶縁膜との密着性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板1上に、有機絶縁膜12と無機絶縁膜11,13の積層膜を含む層間絶縁膜10を形成する工程と、層間絶縁膜10に対して電子線EBあるいは紫外線UVを照射して、有機絶縁膜12と無機絶縁膜11,13とを密着させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、層間絶縁膜として有機絶縁膜を採用する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高速動作に対する要求に伴い、層間絶縁膜を従来の酸化シリコン膜(誘電率k=4.3程度)から低誘電率化した材料に変更し、配線間容量を低減する検討が行われている。低誘電率絶縁材料として、誘電率が3程度のSiOC膜やSiO膜などの無機絶縁膜材料、並びにポリアリレン等の有機絶縁膜材料がある。
【0003】
さらなる低誘電率化のために、これらの膜中に微細な空孔(ポア)を導入したり、モノマーの分子構造を空隙のある構造とすることで膜の密度を下げた、いわゆるポーラス材料が開発されている。ポーラス材料の中には、誘電率を2.2程度まで下げたものも報告されている。このような材料を層間絶縁膜に用いることで、配線間のクロストークを低減でき、半導体素子の高速動作を実現することが可能となる。
【0004】
しかしながら、低誘電率絶縁材料からなる膜は、その膜の上部または下部に形成される膜と密着不良を起こす場合がある。特に、有機絶縁膜と無機絶縁膜との密着性は著しく低下する。さらにこれらの絶縁膜材料をポーラス化した場合、膜密度が低下し、密着性の低下が顕著となる。
【0005】
低誘電率膜の密着不良を解決する技術が、特許文献1および2に開示されている。
特許文献1では、密着性の低い絶縁膜間に、MHSQ(メチル化ハイドロジェンシルセスオキサン)膜を設けることで密着性の向上を図る技術が開示されている。特許文献2では、密着性の低い絶縁膜間にBCB(ベンゾシクロブテン)膜を設けることで密着性の向上を図る技術が開示されている。
【0006】
上記した従来技術では、層間絶縁膜にMHSQ膜やBCB膜などの密着用の膜を追加するものであるが、この場合にはこれらの膜により誘電率が上昇し、層間絶縁膜の低誘電率化の効果が低減するという問題があった。また、層間絶縁膜の層構造を増やすということは、製造プロセスの工程数の増加、層間絶縁膜の加工プロセスの変更や、加工プロセスの複雑化に繋がるという問題もある。
【0007】
層間絶縁膜に密着用の膜を追加せずに、密着性の低い絶縁膜同士の密着力を向上させる技術が特許文献3および4に開示されている。特許文献3では、下地の絶縁膜を形成した後に、紫外線を照射し、その後、上層の絶縁膜を形成することで、下地の絶縁膜と上層の絶縁膜の密着性を向上する技術が開示されている。特許文献4では、下地の絶縁膜を形成した後に、電子線を照射し、その後、上層の絶縁膜を形成することで、下地の絶縁膜と上層の絶縁膜の密着性を向上する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−326222号公報
【特許文献2】特開2004−95863号公報
【特許文献3】特開平10−209275号公報
【特許文献4】特開2004−186512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献3,4では、いずれも下地の絶縁膜の表面に、紫外線あるいは電子線を照射した後に、上層の絶縁膜を形成するものである。これらの方法では、下地の絶縁膜の表面に紫外線あるいは電子線を照射することで、ダングリングボンド(未結合手)を形成するものと考えられる。しかしながら、この方法では、紫外線等を照射した後に、上層の絶縁膜を形成するための成膜装置への搬送中に基板が大気に晒されるため、上層の絶縁膜との密着性の向上効果が低減するという問題があった。この原因としては、紫外線等の照射により形成したダングリングボンドが、大気中の粒子を捕捉してしまっていると考えられる。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、層間絶縁膜に密着用の膜を追加することなく、簡易に有機絶縁膜と無機絶縁膜との密着性を向上させることができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、有機絶縁膜と無機絶縁膜の積層膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜に対して電子線あるいは紫外線を照射して、前記有機絶縁膜と前記無機絶縁膜とを密着させる工程とを有する。
【0011】
上記の本発明の半導体装置の製造方法では、半導体基板上に有機絶縁膜と無機絶縁膜の積層膜を含む層間絶縁膜を形成した後に、層間絶縁膜に電子線あるいは紫外線を照射する。層間絶縁膜に電子線あるいは紫外線を照射すると、層間絶縁膜中を電子線あるいは紫外線が通過して、層間絶縁膜中の無機絶縁膜および有機絶縁膜の各結合手にエネルギーが与えられて結合が切断されて、未結合手(ダングリングボンド)が発生する。未結合手は、エネルギー的に安定する方向へ進むように、近傍の未結合手と結合する。上記の再結合の過程において、無機絶縁膜と有機絶縁膜の界面において、無機絶縁膜の未結合手と有機絶縁膜の未結合手が結合することにより、無機絶縁膜と有機絶縁膜の密着性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、層間絶縁膜に密着用の膜を追加することなく、簡易に有機絶縁膜と無機絶縁膜との密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、半導体基板1の上層に、無機絶縁膜11と、有機絶縁膜12と、無機絶縁膜13の積層膜からなる層間絶縁膜10を形成する場合について説明する。
【0015】
無機絶縁膜11としては、炭素含有シリコン系膜、あるいはシリコン系膜を用いる。ここで、無機絶縁膜11として、二酸化シリコンの誘電率(誘電率k=4.3)よりも低い誘電率をもつ無機絶縁膜11を使用することが好ましい。このような低誘電率材料のうち、炭素含有シリコン系膜としてはSiOC膜があり、シリコン系膜としてはSiO膜がある。SiOC膜や、SiO膜の誘電率は、3程度である。
【0016】
SiOC膜は、例えば回転塗布法あるいはCVD法により形成される。例えば、半導体基板1上にMSQ(Methyl Silsesquioxane:メチルシルセスキオキサン)溶液を回転塗布した後に、加熱処理を行い溶媒を乾燥させるとともにメチルシルセスオキサンを固化させることによりSiOC膜を形成する。あるいは、原料ガスとしてトリメチルシランおよびNO、トリメチルシランおよびNO、O、CO、またはOMCTSおよびNO、O、COの混合ガスを用いたプラズマCVD法によりSiOC膜を形成する。
【0017】
SiO膜は、例えば回転塗布法あるいはCVD法により形成される。例えば、半導体基板1上にHSQ(Hydrogen Silsesquioxane:ハイドロジェンシルセスキオキサン)溶液を回転塗布した後に、加熱処理を行い溶媒を乾燥させるとともにハイドロジェンシルセスキオキサンを固化させることによりSiO膜を形成する。
【0018】
無機絶縁膜11を形成した後に、有機絶縁膜12を形成する。有機絶縁膜12としては、二酸化シリコンの誘電率(誘電率k=4.3)よりも低い誘電率をもつ有機絶縁膜材料を用いる。例えば、有機絶縁膜12として芳香環を含む有機化合物材料であるポリアリレンを用いる。有機絶縁膜12は、例えば回転塗布法により形成される。
【0019】
有機絶縁膜12を形成した後に、無機絶縁膜13を形成する。無機絶縁膜13を形成するのは、有機絶縁膜12は機械的強度に劣るため、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程等で有機絶縁膜12に応力がかかり、有機絶縁膜12が損傷することがあるからである。そこで有機絶縁膜12の上に機械的強度のある無機絶縁膜13を保護膜として積層し、低誘電率を保つとともに機械的強度を確保している。
【0020】
無機絶縁膜13としては、無機絶縁膜11と同様に、炭素含有シリコン系膜、あるいはシリコン系膜を用いる。低誘電率化の観点からは、無機絶縁膜11として、二酸化シリコンの誘電率(誘電率k=4.3)よりも低い誘電率をもつ無機絶縁膜11を使用することが好ましい。このような低誘電率材料のうち、炭素含有シリコン系膜としてはSiOC膜があり、シリコン系膜としてはSiO膜がある。
【0021】
上記の無機絶縁膜11と有機絶縁膜12、並びに有機絶縁膜12と無機絶縁膜13は、密着性が低い。例えば、無機絶縁膜11を成膜した時点で、無機絶縁膜11中の原子は化学的に安定な状態を取っている。このため、上層の有機絶縁膜12を形成した場合には、下地の無機絶縁膜11は既に化学的に安定な状態にあるため、有機絶縁膜12と無機絶縁膜11との間での化学結合の促進は期待できない。有機絶縁膜12と無機絶縁膜13との間でも同様である。各膜の密着性が低いと、層間絶縁膜10に配線溝等を形成し、配線溝内に導電層を埋め込み、層間絶縁膜上の余剰の導電層をCMPで除去する際に、絶縁膜11〜13が剥がれる可能性がある。
【0022】
本実施形態では無機絶縁膜11と有機絶縁膜12、並びに有機絶縁膜12と無機絶縁膜13との間での再結合を促して密着性を改善するため、図1(b)に示すように、積層膜からなる層間絶縁膜10を形成した後に、電子線(EB)照射あるいは紫外線(UV)照射処理を行う。電子線照射あるいは紫外線処理において、同時に加熱処理を行うことが好ましい。
【0023】
層間絶縁膜10に電子線あるいは紫外線を照射すると、層間絶縁膜10中を電子が通過して、層間絶縁膜10中の無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13の各結合手にエネルギーが与えられて結合が切断されて、ダングリングボンド(未結合手)が発生する。ダングリングボンドは、エネルギー的に安定する方向へ進むように、近傍のダングリングボンドと再結合する。
【0024】
上記の再結合の過程において、無機絶縁膜11と有機絶縁膜12の界面において、無機絶縁膜11のダングリングボンドと有機絶縁膜12のダングリングボンドが結合することにより、無機絶縁膜11と有機絶縁膜12の密着性が向上する。また、有機絶縁膜12と無機絶縁膜13の界面において、有機絶縁膜12のダングリングボンドと無機絶縁膜13のダングリングボンドが結合することにより、有機絶縁膜12と無機絶縁膜13の密着性が向上する。
【0025】
本実施形態では、無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13を積層した後に、電子線あるいは紫外線を照射するため、発生したダングリングボンドは近傍のダングリングボンドと効果的に再結合する。このため、無機絶縁膜11を形成し、電子線あるいは紫外線を照射した後に、有機絶縁膜12を形成する従来方法に比べて、大気中の粒子を捕捉することが防止されるため、本実施形態に係る方法は従来よりも密着性の向上効果が大きい。
【0026】
電子線あるいは紫外線を照射しながら、同時に加熱処理を施すことにより、ダングリングボンドの再結合を促進することができる。このため、無機絶縁膜11と有機絶縁膜12間、および有機絶縁膜12と無機絶縁膜13間の密着力をさらに向上させることができる。
【0027】
密着性の向上効果の観点からは、電子線および紫外線の双方ともに効果的であるが、電子線よりも紫外線を用いる方が好ましい。電子線の場合には、電子線が到達する深さを加速電圧により調整可能であるが、半導体基板1にまで到達してしまう場合もあるからである。半導体基板1には、トランジスタ等が形成されているため、電子線が半導体基板1にまで到達してトランジスタのゲート絶縁膜に電子が捕獲されると、トランジスタのしきい値が変わってしまい、誤作動の原因となるからである。
【0028】
これに対して、紫外線の場合には、半導体基板1には到達せずに層間絶縁膜10中にのみ紫外線を照射することが可能となる。また、紫外線の場合には、高エネルギーの電子線の場合と異なり、波長の設定により切断対象となる結合を選択できる。結合によって吸収する波長帯が異なるからである。このため、無機絶縁膜11,13と有機絶縁膜12の材料に応じて適切な波長を選択することにより、膜中の全ての結合を切断せずに、再結合による密着力の向上に必要な結合のみを切断することができる。
【0029】
膜中の結合を切断する他の方法としては、熱処理およびプラズマ処理が考えられる。しかしながら、無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13を成膜した後に、熱処理あるいはプラズマ処理を行ったが、密着性の向上効果が小さかった。これは、熱処理ではエネルギーが低く、結合を効果的に切断することができなかったためである。また、プラズマ処理では層間絶縁膜10の最表面の結合は切断できるが、層間絶縁膜10中の各膜の界面での結合を切断することができなかったためである。
【0030】
以上のように、層間絶縁膜10を形成した後に、電子線および紫外線処理を行うことにより、層間絶縁膜10中の無機絶縁膜11と有機絶縁膜12、および有機絶縁膜12と無機絶縁膜13の密着性を向上させることができる。
【0031】
次に、より詳細な半導体装置の製造工程について説明する。本実施形態では、例えば図2に示す配線構造をもつ半導体装置を形成する例について説明する。
【0032】
シリコン等の半導体基板1の上層には、層間絶縁膜3が形成されている。層間絶縁膜3は、例えば有機絶縁膜4と、無機絶縁膜5の積層膜からなる。有機絶縁膜4は、例えばポリアリレンからなる。無機絶縁膜5は、例えばSiOC膜からなる。無機絶縁膜5は、機械的強度の弱い有機絶縁膜4の保護層としての役割と、ハードマスクとしての役割をもつ。
【0033】
層間絶縁膜3には、配線溝3aが形成されており、配線溝3a内にはバリアメタル層6を介して例えば銅からなる導電層7が埋め込まれている。配線溝3aに埋め込まれた導電層7により、第1金属配線M1が形成される。導電層7として銅を用いる場合には、銅は周囲の絶縁性材料に拡散しやすい。この銅の拡散を防止するため、導電層7と層間絶縁膜3との間に、バリアメタル層6が設けられている。バリアメタル層6は、例えばタンタル、あるいは窒化タンタルとタンタルの積層膜からなる。
【0034】
導電層7および層間絶縁膜3の下層には、例えばSiCNからなるエッチングストッパ膜2が形成されている。エッチングストッパ膜2は、第1金属配線M1を構成する金属の拡散を防止する拡散防止膜としても機能する。図示はしないが、エッチングストッパ膜2と半導体基板1との間にはさらに層間絶縁膜が形成されており、当該層間絶縁膜にはコンタクトが形成されている。半導体基板1には、トランジスタやその他の半導体素子が形成されており、当該コンタクトを通じて半導体素子と第1金属配線M1が接続されている。
【0035】
導電層7および層間絶縁膜3の上層には、例えばSiCNからなるエッチングストッパ膜8が形成されている。エッチングストッパ膜8は、第1金属配線M1を構成する金属の拡散を防止する拡散防止膜としても機能する。
【0036】
エッチングストッパ膜8上には、層間絶縁膜10が形成されている。層間絶縁膜10は、無機絶縁膜11と、有機絶縁膜12と、無機絶縁膜13の積層膜により形成されている。無機絶縁膜13は、機械的強度の弱い有機絶縁膜12の保護層としての役割と、ハードマスクとしての役割をもつ。無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13については、図1を参照して説明した通りである。
【0037】
層間絶縁膜10中の無機絶縁膜13および有機絶縁膜12には、配線溝10bが形成されており、無機絶縁膜11には接続孔10aが形成されている。接続孔10aは、エッチングストッパ膜8にも形成されている。
【0038】
接続孔10aおよび配線溝10bには、バリアメタル層16を介して、例えば銅からなる導電層17が埋め込まれている。配線溝10bに埋め込まれた導電層17により、第2金属配線M2が形成される。接続孔10aに埋め込まれた導電層17により、第2金属配線M2と第1金属配線M1とを接続するコンタクトCが形成される。バリアメタル層16は、銅の拡散を防止するものであり、タンタル、あるいは窒化タンタルとタンタルの積層膜により形成されている。
【0039】
第2金属配線M2および層間絶縁膜10上には、例えばSiCNからなるエッチングストッパ膜18が形成されており、図示はしないが、エッチングストッパ膜18上には、層間絶縁膜および第3金属配線が形成される。
【0040】
上記の半導体装置の製造方法について、図3〜図7を参照して説明する。
【0041】
まず、図3(a)に示すように、半導体基板1にトランジスタやその他の半導体素子を形成した後に、図示しない層間絶縁膜およびエッチングストッパ膜2を形成し、当該層間絶縁膜およびエッチングストッパ膜2にコンタクトを形成する。その後、エッチングストッパ膜2上に、有機絶縁膜4と無機絶縁膜5の積層膜からなる層間絶縁膜3を形成する。続いて、層間絶縁膜3に配線溝3aを形成し、配線溝3aを埋め込むようにバリアメタル層6および導電層7を堆積させた後、層間絶縁膜3上の余剰のバリアメタル層6および導電層7をCMP法により除去する。その後、第1金属配線M1および層間絶縁膜3上に、SiCNからなるエッチングストッパ膜8を形成する。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、層間絶縁膜10を形成する。層間絶縁膜10の形成では、例えば、エッチングストッパ膜8上にSiOCからなる無機絶縁膜11を形成し、無機絶縁膜11上にポリアリレンからなる有機絶縁膜12を形成し、有機絶縁膜12上にSiOCからなる無機絶縁膜13を形成する。
【0043】
無機絶縁膜11、有機絶縁膜12および無機絶縁膜13の形成方法については、上記で説明した通りである。すなわち、無機絶縁膜11および無機絶縁膜13となるSiOC膜は、回転塗布法あるいはプラズマCVD法により形成され、有機絶縁膜12は回転塗布法により形成される。
【0044】
層間絶縁膜10を形成した後、電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行う。電子線照射処理あるいは紫外線照射処理においては、電子線あるいは紫外線を照射しながら、同時に加熱処理を行う。これにより、積層膜からなる層間絶縁膜10中の原子の結合が切断されて、再結合が起こり、異なる種類の絶縁膜間における密着性が向上する。
【0045】
次に、図4(a)に示すように、無機絶縁膜13上に接続孔10aのパターンをもつ第1ハードマスク14と、配線溝10bのパターンをもつ第2ハードマスク15を形成する。第1ハードマスク14は、例えば窒化シリコン膜からなる。第2ハードマスク15は、例えば酸化シリコン膜からなる。上記のハードマスクの形成では、無機絶縁膜13上に窒化シリコン膜と酸化シリコン膜を積層させた後、レジストマスクを用いたエッチングにより酸化シリコン膜に配線溝10bのパターンを形成して第2ハードマスク15を形成する。レジストマスクを除去した後、再びレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いたエッチングにより、窒化シリコン膜に接続孔10aのパターンを形成する。図示はしないが、窒化シリコン膜のパターニングに用いたレジストマスクは残しておいてよい。ここで、上記した電子線照射処理あるいは紫外線照射処理は、第1および第2ハードマスクとなる窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を形成した後、パターニング前に、行ってもよい。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、第1ハードマスク14をエッチングマスクとして、無機絶縁膜13をドライエッチングし、さらに有機絶縁膜12をドライエッチングする。これにより、無機絶縁膜13および有機絶縁膜12に接続孔10aが形成される。第1ハードマスク14を加工する際に用いたレジストマスクは、有機絶縁膜12のドライエッチングにおいて、除去される。
【0047】
次に、図5(a)に示すように、第2ハードマスク15をエッチングマスクとして、第1ハードマスク14をドライエッチングして、第1ハードマスク14に配線溝10bのパターンを形成する。このとき、SiOCからなる無機絶縁膜11の一部がエッチングされて、無機絶縁膜11の途中の深さまで接続孔10aが形成される。
【0048】
次に、図5(b)に示すように、第1ハードマスク14をエッチングマスクとして、無機絶縁膜13をドライエッチングすることにより、無機絶縁膜13に配線溝10bを形成する。このとき、無機絶縁膜11もエッチングされて、エッチングストッパ膜8に達する接続孔10aが形成される。また、このときのドライエッチングにより、酸化シリコンからなる第2ハードマスク15が除去される。
【0049】
次に、図6(a)に示すように、第1金属配線M1上のエッチングストッパ膜8をドライエッチングして、エッチングストッパ膜8に接続孔10aを形成する。このエッチングにより、SiNからなる第1ハードマスク14は除去される。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、無機絶縁膜13をエッチングマスクとして、有機絶縁膜12をエッチングすることにより、有機絶縁膜12に配線溝10bを形成する。
【0051】
次に、図7(a)に示すように、接続孔10aおよび配線溝10bの内壁を被覆するように、層間絶縁膜10上にバリアメタル層16を形成する。バリアメタル層16として、例えば窒化タンタルとタンタルの積層膜を形成する。続いて、接続孔10aおよび配線溝10bを埋め込むように層間絶縁膜10上に例えば銅からなる導電層17を形成する。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、層間絶縁膜10上の余剰の導電層17およびバリアメタル層16をCMP法により除去する。層間絶縁膜10中の無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13の密着性を向上させていることから、このCMP処理において絶縁膜の剥離を防止することができる。配線溝10bに埋め込まれた導電層17により第2金属配線M2が形成され、接続孔10aに埋め込まれた導電層17によりコンタクトCが形成される。
【0053】
次に、第2金属配線M2および層間絶縁膜10上に例えばSiCNからなるエッチングストッパ膜18を形成することにより、図2に示す構造に至る。以降の工程としては、同様にして、層間絶縁膜の形成工程、層間絶縁膜への配線溝および接続孔の形成工程、導電層の埋め込み工程を再度行うことにより多層配線構造の半導体装置が製造される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、互いに密着性の低い膜、例えば、無機絶縁膜11と、有機絶縁膜12と、無機絶縁膜13を積層させた後に、電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行うことにより、膜中の結合を切断して未結合手を生成して、上下層間における当該未結合手の再結合を促すことにより、上下層間における密着力を向上させることができる。
【0055】
1つの膜を成膜した後に電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行った場合には、その後の搬送工程において大気に晒されることにより未結合手が大気中の粒子を捕捉して少なくなり、上層の絶縁膜との密着性の向上効果が低くなる。これに対して、本実施形態では、互いに密着性の低い膜を積層させた後に電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行うことにより、発生した未結合手を周囲の未結合手に効果的に結合させることができる。ここで、紫外線照射処理あるいは電子線照射処理において、紫外線あるいは電子線を照射しながら加熱を行うことにより、発生した未結合手の再結合を促進させることができる。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、有機絶縁膜12と、有機絶縁膜12の上下の無機絶縁膜11,13との密着性の問題を解決できることから、半導体装置の信頼性や歩留まりを維持しつつ、層間絶縁膜の低誘電率化を図ることができる。層間絶縁膜10の低誘電率化を図ることができることから、配線間のクロストークを低減でき、半導体素子の高速動作を実現することが可能となる。
【0057】
また、有機絶縁膜12の上下の無機絶縁膜11,13として、二酸化シリコンの誘電率よりも低い低誘電率材料を用いることにより、層間絶縁膜10全体の誘電率をさらに下げることができる。
【0058】
本発明は、上記の実施形態の説明に限定されない。
無機絶縁膜11,13および有機絶縁膜12としては、これらの膜をポーラス化させた材料を用いても良い。また、無機絶縁膜11,13として低誘電率膜材料を採用した例について説明したが、無機絶縁膜11,13としては、二酸化シリコン膜、SiCN膜、SiC膜、SiN膜を採用してもよい。これらの膜と有機絶縁膜12との密着性も低いため、本発明は有効である。また、有機絶縁膜12の材料には特に限定はない。
【0059】
また、本実施形態では、無機絶縁膜11、有機絶縁膜12、無機絶縁膜13を積層させた後に電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行う例について説明したが、少なくとも膜種の異なる2層、例えば無機絶縁膜11および有機絶縁膜12を積層させた後に、電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行っても良い。
【0060】
また、本実施形態では、層間絶縁膜10への接続孔10aおよび配線溝10bの形成方法の一例について説明したが、これに限定されるものではない。また、例えば層間絶縁膜3である有機絶縁膜4および無機絶縁膜5を形成した後、層間絶縁膜3への配線溝3aの加工前にも、電子線照射処理あるいは紫外線照射処理を行って、有機絶縁膜4と無機絶縁膜5の密着性を向上させてもよい。また、本実施形態では、層間絶縁膜10に接続孔10aおよび配線溝10bを同時に形成するデュアルダマシンプロセスについて説明したが、層間絶縁膜10に接続孔10aあるいは配線溝10bを形成するシングルダマシンプロセスに本発明を適用することも可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の製造における電子線あるいは紫外線照射処理を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法により形成される半導体装置の一例を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図4】本実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図5】本実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図6】本実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図7】本実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体基板、2…エッチングストッパ膜、3…層間絶縁膜、3a…配線溝、4…有機絶縁膜、5…無機絶縁膜、6…バリアメタル層、7…導電層、8…エッチングストッパ膜、10…層間絶縁膜、10a…接続孔、10b…配線溝、11…無機絶縁膜、12…有機絶縁膜、13…無機絶縁膜、14…第1ハードマスク、15…第2ハードマスク、16…バリアメタル層、17…導電層、18…エッチングストッパ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、有機絶縁膜と無機絶縁膜の積層膜を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に対して電子線あるいは紫外線を照射して、前記有機絶縁膜と前記無機絶縁膜とを密着させる工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記層間絶縁膜を形成する工程において、無機絶縁膜、有機絶縁膜および無機絶縁膜を順に形成する
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記電子線あるいは紫外線を照射しながら、同時に加熱を行う
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記有機絶縁膜は、芳香環を含む化合物材料からなる
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記無機絶縁膜は、シリコン系膜、あるいは炭素含有シリコン系膜からなる
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
電子線あるいは紫外線を照射する工程の後に、
前記層間絶縁膜に配線溝あるいは接続孔を形成する工程と、
前記配線溝あるいは接続孔を埋め込むように前記層間絶縁膜上に導電層を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上の導電層を研磨して、前記配線溝あるいは接続孔にのみ前記導電層を残す工程と
を有する請求項1記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−36067(P2007−36067A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219661(P2005−219661)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】