説明

半導体装置の製造方法

【課題】 イオン注入領域をパターン形成した感光性樹脂を除去する時に、シリコン基板を酸化させないことで、酸化による基板の削れを抑制する。
【解決手段】 半導体基板103にトランジスタのゲート電極101を形成し、半導体基板の上に絶縁膜104を堆積する工程と、絶縁膜104の上に感光性樹脂105を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、感光性樹脂のパターンに従って絶縁膜を薬液を用いて除去することで絶縁膜のパターンを形成する工程と、絶縁膜のパターン上の感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程と、感光性樹脂を除去した半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む。これにより、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂を除去することができるため、酸素プラズマによる基板酸化、それに伴う基板の削れ量を抑制することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入領域のパターン形成に使用したレジストを除去する時に、シリコン基板を酸素プラズマにより酸化することを抑制し、酸化にともなう基板の削れ量を抑制するための半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、イオン注入工程はトランジスタを形成するために重要な工程である。イオン注入を実施するにあたり、注入が必要な領域、不必要な領域を打ち分けるために、レジストを用いてパターン形成し、注入後、レジストを除去する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、従来技術の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0004】
図5は従来技術の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。図5において、901はゲート電極、902はスペーサ、903はシリコン基板、904は感光性樹脂、905はヒ素注入領域、906は注入硬化層、907はアッシング酸化膜、908は基板削れ、である。
【0005】
ゲート電極901とゲート電極901にサイドウォール状に形成されたスペーサ902が形成されたシリコン基板903において(STEP1)、シリコン基板903上に、感光性樹脂904を用いて、注入する領域をパターン形成する(STEP2)。次に、イオン注入を実施し(STEP3)、シリコン基板903が露出している領域にはヒ素注入層905が、感光性樹脂904の表面には注入硬化層906が形成される。例えば、イクステンション領域の注入では、ヒ素を1×10の15乗atoms毎平方センチメートルの注入量で、3keVの加速電圧で注入する。この時の注入深さは数nm台である。一方、感光性樹脂904の表面には炭素間の重合が促進されてより架橋構造となった注入硬化層906が形成され、この注入硬化層906は硫過水洗浄では十分に溶解せず除去できない。次に、酸素プラズマを用いて、感光性樹脂904を除去する(STEP4)。このとき、シリコン基板903が露出するため、酸素プラズマによりシリコン基板903は酸化され、アッシング酸化膜907が形成される。例えば、上部にマイクロ波電源と下部にRF電源が接続されたドライエッチング装置にて、酸素ガス流量を3000sccm、ガス圧力を10Pa、マイクロ波電力を3000W、RF電力を100Wの条件でアッシングする。前述のアッシング条件の場合、約5nmほどのアッシング酸化膜が形成される。次に、洗浄処理を実施し、アッシング酸化膜が除去され、基板削れ908が形成される(STEP5)。一般的に、シリコンが酸化してシリコン酸化膜を形成すると体積が2.2倍になるので、アッシング酸化膜が5nm形成された時、酸化に使用されたシリコン膜厚は2.3nmとなる。すなわち、シリコン基板903が2.3nm削れたことになる。さらに、STEP2からSTEP4を繰り返すと、さらにシリコン基板903が2.3nm削られることになる。したがって、複数回数の注入工程を行うと、最初に形成されたヒ素注入層906が消失することになる(STEP6)。
【特許文献1】特開昭61−231555号公報
【特許文献2】特開平11−162967号公報
【特許文献3】特開2000−200836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の微細化にともない、エクステンション領域の注入深さはますます浅くなり、数nm程度の注入深さも珍しくはない。一方、レジストを除去する時に使用する酸素プラズマにて、シリコン基板は酸化される。このとき、シリコン基板の一部が酸化で消費されるため、前工程で注入されたシリコン層が酸化に使われると、注入領域にて注入層が消失することになる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記従来の問題点を解決するもので、イオン注入領域をパターン形成した感光性樹脂を除去する時に、シリコン基板を酸化させないことで、酸化による基板の削れを抑制する半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板にトランジスタのゲート電極を形成し、前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程と、前記絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンに従って前記絶縁膜を薬液を用いて除去することで前記絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記絶縁膜のパターン上の前記感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程と、前記感光性樹脂を除去した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む。
【0009】
請求項2記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板にトランジスタのゲート電極を形成し、前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程と、前記絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンを形成した前記半導体基板に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射する工程と、前記プラズマを照射した後、前記感光性樹脂を除去する工程と、前記絶縁膜のうち前記プラズマで照射された領域を、薬液を用いて除去して前記絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記絶縁膜のパターンを形成した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む。
【0010】
請求項3記載の半導体装置の製造方法は、請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程の後に、前記絶縁膜の上に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射する工程を含む。
【0011】
請求項4記載の半導体装置の製造方法は、請求項2または3記載の半導体装置の製造方法において、前記フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスにおいて、酸素とフルオロカーボンガスの流量比が50以上である。
【0012】
請求項5記載の半導体装置の製造方法は、請求項2または3記載の半導体装置の製造方法において、前記フルオロカーボンガスが、CF、CHF、CH、C、C、C、C、Cのいずれか、もしくは2種類以上の組み合わせである。
【0013】
請求項6記載の半導体装置の製造方法は、請求項2または3記載の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜を除去する工程において、前記薬液がフッ酸もしくはアンモニア過水である。
【0014】
請求項7記載の半導体装置の製造方法は、請求項2または3記載の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜が、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、もしくは、他のシリコン化合物である。
【0015】
請求項8記載の半導体装置の製造方法は、半導体基板にトランジスタのゲート電極およびその側壁に第1の絶縁膜を形成し、前記半導体基板の上に前記第1の絶縁膜とは異なる第2の絶縁膜を堆積する工程と、前記第2の絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンに従って前記第2の絶縁膜を薬液を用いて除去することで前記第2の絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記第2の絶縁膜のパターン上の前記感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程と、前記感光性樹脂を除去した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む。
【0016】
請求項9記載の半導体装置の製造方法は、請求項8記載の半導体装置の製造方法において、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との前記薬液での選択比が、0.2以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の半導体装置の製造方法によれば、感光性樹脂のパターンに従って絶縁膜を薬液を用いて除去することで絶縁膜のパターンを形成する工程と、絶縁膜のパターン上の感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程とを行うので、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂を除去することができる。したがって、酸素プラズマによる基板酸化、それに伴う基板の削れ量を抑制することが可能である。
【0018】
本発明の請求項2記載の半導体装置の製造方法によれば、感光性樹脂のパターンを形成した半導体基板に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射する工程と、プラズマを照射した後、感光性樹脂を除去する工程と、絶縁膜のうちプラズマで照射された領域を、薬液を用いて除去して絶縁膜のパターンを形成する工程とを行うので、半導体基板を露出させないで、イオン注入領域をパターン形成した感光性樹脂を、酸素プラズマを用いて除去することができる。したがって、酸素プラズマによる基板酸化、それに伴う基板の削れ量を抑制することが可能である。この場合、感光性樹脂のパターンを形成した半導体基板に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射することで、プラズマに曝された領域と、プラズマに曝されていない領域域との選択比が向上し、プラズマに曝された領域を選択的に除去することが可能となる。
【0019】
請求項3では、請求項1と同様に感光性樹脂のパターンに従って薬液を用いて絶縁膜のパターンを形成する工程と、絶縁膜のパターン上の感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程とを行うので、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂を除去することができる。したがって、酸素プラズマによる基板酸化、それに伴う基板の削れ量を抑制することが可能である。この場合、絶縁膜の上に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射することで、絶縁膜とゲート電極にサイドウォール状に形成された部分との選択比が向上し、絶縁膜を選択的に除去することが可能となる。
【0020】
請求項4では、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスにおいて、酸素とフルオロカーボンガスの流量比が50以上であるので、フルオロカーボンガス流量の割合が大きくなることによって、絶縁膜をエッチングすることを防止する。
【0021】
請求項5では、フルオロカーボンガスが、CF、CHF、CH、C、C、C、C、Cのいずれか、もしくは2種類以上の組み合わせであることが好ましい。
【0022】
請求項6では、絶縁膜を除去する工程において、薬液がフッ酸もしくはアンモニア過水であるので、プラズマに曝されなかった絶縁膜と、プラズマに曝された絶縁膜のエッチ量差を実現できる。
【0023】
請求項7では、絶縁膜が、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、もしくは、他のシリコン化合物であることが好ましい。
【0024】
本発明の請求項8記載の半導体装置の製造方法によれば、感光性樹脂のパターンに従って第2の絶縁膜を薬液を用いて除去することで第2の絶縁膜のパターンを形成する工程と、第2の絶縁膜のパターン上の感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程とを行うので、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂を除去することができる。したがって、酸素プラズマによる基板酸化、それに伴う基板の削れ量を抑制することが可能である。この場合、半導体基板の上に第1の絶縁膜とは異なる第2の絶縁膜を堆積するので、第2の絶縁膜のパターンを形成する際に、第2の絶縁膜と第1の絶縁膜との選択比を向上させることで、第2の絶縁膜を選択的に除去することが可能となる。
【0025】
請求項9では、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との薬液での選択比が、0.2以下であるので、第2の絶縁膜を選択的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1に基づいて説明する。
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。図1において、101はトランジスタのゲート電極、102はスペーサ、103はシリコン基板(半導体基板)、104はプラズマシリコン酸化膜(絶縁膜)、105は感光性樹脂、107はヒ素注入層、108は酸化膜中のヒ素打ち込み層である。
【0028】
ゲート電極101とゲート電極101にサイドウォール状に形成されたスペーサ102が形成されたシリコン基板103において(STEP1)、プラズマCVD法を用いて、プラズマシリコン酸化膜104を堆積する(STEP2)。このとき、プラズマCVD法を用いたが、シリコン基板103を酸化しないのであれば、別の方法でも構わない。例えば、減圧CVD法をもちいて、TEOS膜を堆積しても構わない。次に、感光性樹脂105を用いて、注入する領域をパターン形成し(STEP3)、感光性樹脂105のパターンにしたがって、プラズマシリコン酸化膜104をウェットエッチすることでパターンを形成する(STEP4)。例えば、ウェットエッチ薬液としてはフッ酸を用い、薬液槽で1分間処理して、シリコン酸化膜を除去する。次に、硫過水洗浄で、感光性樹脂105を除去する(STEP5)。この時、感光性樹脂105はイオン注入前であるため、注入による硬化層も形成されておらず、硫過水洗浄でも容易に除去できる。したがって、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂105が除去できるため、アッシングによるシリコン基板103の酸化はおこらない。
【0029】
次に、イオン注入を実施する(STEP6)。例えば、イクステンション領域の注入では、ヒ素を1×10の15乗atoms毎平方センチメートルの注入量で、3keVの加速電圧で注入する。このとき、シリコン基板103が露出されている領域では、シリコン基板103にヒ素が注入され、ヒ素注入層107が形成される。一方、プラズマシリコン酸化膜104が残っている領域では、イオンの加速エネルギーがそれほど大きくないため、プラズマシリコン酸化膜104の途中でヒ素イオンが止まって、ヒ素打ち込み層108を形成し、シリコン基板103まで到達しない。すなわち、残っているプラズマシリコン酸化膜104は、注入領域の打ち分け用のマスクとして作用している。
【0030】
次に、残っているプラズマシリコン酸化膜104を、フッ酸などを用いたウェットエッチプロセスで除去する(STEP7)。ただし、プラズマシリコン酸化膜104は必ず除去する必要があるわけでなく、次工程で問題なければ、除去せずに、そのまま残存させておいても問題はない。
【0031】
以上のように、第1の実施形態によれば、注入前に感光性樹脂105をウェットエッチで除去できるので、酸素プラズマを用いて感光性樹脂105を除去する必要がないため、酸素プラズマでのシリコン基板103の酸化による削れ量を抑制できる半導体装置の製造方法を提供できる。
【0032】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図3に基づいて説明する。
【0033】
図2は本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。図2において、101はトランジスタのゲート電極、102はスペーサ、103はシリコン基板、104はプラズマシリコン酸化膜、105は感光性樹脂、106はCFと酸素の混合ガスのプラズマ、107はヒ素注入層、108は酸化膜中のヒ素打ち込み層である。
【0034】
ゲート電極101とゲート電極101にサイドウォール状に形成されたスペーサ102が形成されたシリコン基板103において(STEP1)、プラズマCVD法を用いて、プラズマシリコン酸化膜104を堆積する(STEP2)。このとき、プラズマCVD法を用いたが、シリコン基板103を酸化しないのであれば、別の方法でも構わない。例えば、減圧CVD法をもちいて、シリコン酸化膜を堆積しても構わない。次に、プラズマシリコン酸化膜104の上に、感光性樹脂105を用いて、注入する領域をパターン形成し(STEP3)、パターン形成されたシリコン基板103の表面を、CFと酸素の混合ガスのプラズマ106に曝す(STEP4)。例えば、上部に誘導コイルと下部にRF電源が接続された電極から構成されるドライエッチング装置にて、酸素ガス流量を500sccm、CFガス流量を5sccm、ガス圧力を10Pa、上部の誘導コイルに印加する電力を1000W、下部の電極に印加する電力を50Wの条件でプラズマを発生させ、2分間プラズマ処理を実施する。このとき、CFガスを用いたが、CHF、CH、C、C、C、C、Cのいずれか、もしくは2種類以上の組み合わせなどの他のフルオロカーボンガスでも構わない。また、フルオロカーボンガス流量の割合が大きくなると、プラズマシリコン酸化膜104をエッチングするので、酸素流量/フルオロカーボンガス流量比は50以上であることが望ましい。上述の条件では、プラズマシリコン酸化膜のエッチ量は0.3nm以下である。この時、プラズマシリコン酸化膜104は、感光性樹脂105の有無により、プラズマに曝された領域104aとプラズマに曝されていない領域104bができる。
【0035】
次に、酸素プラズマを用いて、感光性樹脂105を除去する(STEP5)。例えば、マイクロ波プラズマを用いたアッシング装置にて、酸素流量5000sccm、ガス圧力20Pa、マイクロ波電力3000Wの条件にて、1分間処理を実施する。このとき、シリコン基板103は、プラズマシリコン酸化膜104に覆われているため、アッシング時の酸素プラズマに曝されることはない。したがって、アッシングによるシリコン基板103の酸化はおこらない。次に、ウェットエッチプロセス処理により、プラズマに曝されたプラズマシリコン酸化膜104aを除去する(STEP6)。例えば、ウェットエッチ薬液としては、フッ酸を用い、薬液槽で1分間処理して、シリコン酸化膜を除去する。このとき、STEP4でプラズマ106に曝されたプラズマシリコン酸化膜104aは、プラズマ106によりシリコン酸化膜内の結合の一部が切断された状態になっている。そのため、前述のウェットエッチ条件にて、プラズマに曝されなかったプラズマシリコン酸化膜104bのエッチ量は0.5nmであるに対し、プラズマに曝されたプラズマシリコン酸化膜104aのエッチ量は4.5nmとなる。したがって、プラズマシリコン酸化膜104の堆積膜厚が4.0nmの場合、ウェットエッチ処理により、プラズマに曝されたシリコン酸化膜104aは除去されるが、プラズマに曝されなかったシリコン酸化膜104bは、ほとんどエッチングされず、前述のプラズマ106照射時のエッチ量(0.3nm以下)を考慮にいれても、3.3nm残ることになる。
【0036】
次に、イオン注入を実施する(STEP7)。例えば、イクステンション領域の注入では、ヒ素を1×10の15乗atoms毎平方センチメートルの注入量で、3keVの加速電圧で注入する。このとき、シリコン基板103が露出されている領域では、シリコン基板103にヒ素が注入され、ヒ素注入層107が形成される。一方、プラズマシリコン酸化膜104bが残っている領域では、イオンの加速エネルギーがそれほど大きくないため、プラズマシリコン酸化膜104bの途中でヒ素イオンが止まって、ヒ素打ち込み層108を形成し、シリコン基板103まで到達しない。すなわち、残っているプラズマシリコン酸化膜104bは、注入領域の打ち分け用のマスクとして作用している。
【0037】
次に、残っているプラズマシリコン酸化膜104bを、フッ酸などを用いたウェットエッチプロセスで除去する(STEP8)。ただし、プラズマシリコン酸化膜104は必ず除去する必要があるわけでなく、次工程で問題なければ、除去せずに、そのまま残存させておいても問題はない。
【0038】
なお、上述の実施形態では、STEP6でプラズマに曝されたプラズマシリコン酸化膜104aを除去する薬液としてフッ酸としたが、同じようなエッチ量差を実現できる薬液、例えばアンモニア過水であっても構わない。また、プラズマCVD法で堆積した膜をプラズマシリコン酸化膜としたが、プラズマシリコン窒化膜、プラズマシリコン炭化膜でも構わない。
【0039】
以上のように、第2の実施形態によれば、シリコン基板103の表面を露出させないで、酸素プラズマを用いて感光性樹脂105を除去することができる。したがって、酸素プラズマでのシリコン基板103の酸化を抑制し、シリコン基板103の削れ量を抑制できる半導体装置の製造方法を提供できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図3に基づいて説明する。
【0040】
図3は本発明の第3の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。図3において、101はトランジスタのゲート電極、102はスペーサ、103はシリコン基板、104はプラズマシリコン酸化膜、105は感光性樹脂、106はCFと酸素の混合ガスのプラズマ、107はヒ素注入層、108は酸化膜中のヒ素打ち込み層である。
【0041】
ゲート電極101とゲート電極101にシリコン酸化膜でサイドウォール状に形成されたスペーサ102が形成されたシリコン基板103において(STEP1)、プラズマCVD法を用いて、プラズマシリコン酸化膜104を堆積する(STEP2)。このとき、プラズマCVD法を用いたが、シリコン基板103を酸化しないのであれば、別の方法でも構わない。例えば、減圧CVD法をもちいて、シリコン酸化膜を堆積しても構わない。次に、プラズマシリコン酸化膜104の表面を、CFと酸素の混合ガスのプラズマ106に曝す(STEP3)。例えば、上部に誘導コイルと下部にRF電源が接続された電極から構成されるドライエッチング装置にて、酸素ガス流量を500sccm、CFガス流量を5sccm、ガス圧力を10Pa、上部の誘導コイルに印加する電力を1000W、下部の電極に印加する電力を50Wの条件でプラズマを発生させ、2分間プラズマ処理を実施する。このとき、CFガスを用いたが、CHF、CH、C、C、C、C、Cのいずれか、もしくは2種類以上の組み合わせなどの他のフルオロカーボンガスでも構わない。また、フルオロカーボンガス流量の割合が大きくなると、プラズマシリコン酸化膜104をエッチングするので、酸素流量/フルオロカーボンガス流量比は50以上であることが望ましい。上述の条件では、プラズマシリコン酸化膜のエッチ量は0.3nm以下である。
【0042】
次に、感光性樹脂105を用いて、注入する領域をパターン形成し(STEP4)、感光性樹脂105のパターンにしたがって、CF/Oプラズマに曝されたシリコン酸化膜をウェットエッチすることでパターンを形成する(STEP5)。例えば、ウェットエッチ薬液としてはフッ酸を用い、薬液槽で1分間処理して、シリコン酸化膜を除去する。このとき、STEP3でプラズマ106に曝されたプラズマシリコン酸化膜104aは、プラズマ106によりシリコン酸化膜内の結合の一部が切断された状態になっている。そのため、前述のウェットエッチ条件にて、プラズマに曝されない場合のプラズマシリコン酸化膜のエッチ量が0.5nmであるに対し、プラズマに曝されたプラズマシリコン酸化膜104aのエッチ量は4.5nmと9倍にもなる。スペーサ102を形成しているシリコン酸化膜のエッチ量も0.6nmとほぼ同等であることから、プラズマ106を照射することで、シリコン酸化膜104aとスペーサ102のシリコン酸化膜との選択比が向上し、プラズマシリコン酸化膜104を選択的に除去することが可能となる。次に、硫過水洗浄で、感光性樹脂105を除去する(STEP6)。この時、感光性樹脂105はイオン注入前であるため、注入による硬化層も形成されていないため、硫過水洗浄でも容易に除去できる。したがって、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂105が除去できるため、アッシングによるシリコン基板103の酸化はおこらない。
【0043】
次に、イオン注入を実施する(STEP7)。例えば、イクステンション領域の注入では、ヒ素を1×10の15乗atoms毎平方センチメートルの注入量で、3keVの加速電圧で注入する。このとき、シリコン基板103が露出されている領域では、シリコン基板103にヒ素が注入され、ヒ素注入層107が形成される。一方、プラズマシリコン酸化膜104が残っている領域では、イオンの加速エネルギーがそれほど大きくないため、プラズマシリコン酸化膜104の途中でヒ素イオンが止まって、ヒ素打ち込み層108を形成し、シリコン基板103まで到達しない。すなわち、残っているプラズマシリコン酸化膜104は、注入領域の打ち分け用のマスクとして作用している。
【0044】
次に、残っているプラズマシリコン酸化膜104を、フッ酸などを用いたウェットエッチプロセスで除去する(STEP8)。ただし、プラズマシリコン酸化膜104は必ず除去する必要があるわけでなく、次工程で問題なければ、除去せずに、そのまま残存させておいても問題はない。
【0045】
なお、上述の実施形態では、STEP5でプラズマに曝されたプラズマシリコン酸化膜104aを除去する薬液としてフッ酸としたが、同じようなエッチ量差を実現できる薬液、例えばアンモニア過水であっても構わない。また、スペーサ102およびシリコン基板103に堆積する膜をシリコン酸化膜としたが、シリコン窒化膜やシリコン炭化膜でも構わない。
【0046】
以上のように、第3の実施形態によれば、注入前に感光性樹脂105をウェットエッチで除去できるので、酸素プラズマを用いて感光性樹脂105を除去する必要がないため、酸素プラズマでのシリコン基板103の酸化による削れ量を抑制できる半導体装置の製造方法を提供できる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について、図4に基づいて説明する。
【0047】
図4は本発明の第4の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。図4において、101はトランジスタのゲート電極、102はスペーサ(第1の絶縁膜)、103はシリコン基板、105は感光性樹脂、107はヒ素注入層、108は酸化膜中のヒ素打ち込み層、109はプラズマFSG膜(第2の絶縁膜)である。
【0048】
ゲート電極101とゲート電極101に減圧TEOS膜でサイドウォール状に形成されたスペーサ102が形成されたシリコン基板103において(STEP1)、プラズマCVD法を用いて、プラズマFSG膜109を堆積する(STEP2)。このとき、プラズマCVD法を用いたが、シリコン基板103を酸化しないのであれば、別の方法でも構わない。例えば、SA−CVD法をもちいて、BPSG膜を堆積しても構わない。次に、感光性樹脂105を用いて、注入する領域をパターン形成し(STEP3)、感光性樹脂105のパターンにしたがって、プラズマFSG膜109をウェットエッチすることでパターンを形成する(STEP4)。例えば、ウェットエッチ薬液としてはフッ酸を用い、薬液槽で1分間処理して、シリコン酸化膜を除去する。このとき、フッ酸の濃度を調整することで、プラズマFSG膜109とスペーサ102を形成している減圧TEOS膜との選択比を向上させ、プラズマFSG膜109を選択的に除去することが可能となる。スペーサ102とプラズマFSG膜109との薬液での選択比が、0.2以下であることが望ましい。次に、硫過水洗浄で、感光性樹脂105を除去する(STEP5)。この時、感光性樹脂105はイオン注入前であるため、注入による硬化層も形成されておらず、硫過水洗浄でも容易に除去できる。したがって、酸素プラズマを用いずに感光性樹脂105が除去できるため、アッシングによるシリコン基板103の酸化はおこらない。
【0049】
次に、イオン注入を実施する(STEP6)。例えば、イクステンション領域の注入では、ヒ素を1×10の15乗atoms毎平方センチメートルの注入量で、3keVの加速電圧で注入する。このとき、シリコン基板103が露出されている領域では、シリコン基板103にヒ素が注入され、ヒ素注入層107が形成される。一方、プラズマFSG膜109が残っている領域では、イオンの加速エネルギーがそれほど大きくないため、プラズマFSG膜109の途中でヒ素イオンが止まって、ヒ素打ち込み層108を形成し、シリコン基板103まで到達しない。すなわち、残っているプラズマFSG膜109は、注入領域の打ち分け用のマスクとして作用している。
【0050】
次に、残っているプラズマFSG膜109を、フッ酸などを用いたウェットエッチプロセスで除去する(STEP7)。ただし、プラズマFSG膜109は必ず除去する必要があるわけでなく、次工程で問題なければ、除去せずに、そのまま残存させておいても問題はない。
【0051】
以上のように、第4の実施形態によれば、注入前に感光性樹脂105をウェットエッチで除去できるので、酸素プラズマを用いて感光性樹脂105を除去する必要がないため、酸素プラズマでのシリコン基板103の酸化による削れ量を抑制できる半導体装置の製造方法を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の削れ量の抑制する半導体装置の製造方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。
【図5】従来の実施形態における半導体装置の製造方法についての工程を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
101 ゲート電極
102 スペーサ
103 シリコン基板
104 プラズマシリコン酸化膜
105 感光性樹脂
106 CFと酸素の混合ガスプラズマ
107 ヒ素注入層
108 ヒ素打ち込み層
109 プラズマFSG膜
901 ゲート電極
902 スペーサ
903 シリコン基板
904 感光性樹脂
905 ヒ素注入層
906 注入硬化層
907 アッシング酸化膜
908 基板削れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板にトランジスタのゲート電極を形成し、前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程と、前記絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンに従って前記絶縁膜を薬液を用いて除去することで前記絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記絶縁膜のパターン上の前記感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程と、前記感光性樹脂を除去した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板にトランジスタのゲート電極を形成し、前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程と、前記絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンを形成した前記半導体基板に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射する工程と、前記プラズマを照射した後、前記感光性樹脂を除去する工程と、前記絶縁膜のうち前記プラズマで照射された領域を、薬液を用いて除去して前記絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記絶縁膜のパターンを形成した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板の上に絶縁膜を堆積する工程の後に、前記絶縁膜の上に、フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスのプラズマを照射する工程を含む請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フルオロカーボンガスと酸素の混合ガスにおいて、酸素とフルオロカーボンガスの流量比が50以上であることを特徴とする請求項2または3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記フルオロカーボンガスが、CF、CHF、CH、C、C、C、C、Cのいずれか、もしくは2種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項2または3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜を除去する工程において、前記薬液がフッ酸もしくはアンモニア過水であることを特徴とする請求項2または3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜が、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン炭化膜、もしくは、他のシリコン化合物であることを特徴とする請求項2または3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体基板にトランジスタのゲート電極およびその側壁に第1の絶縁膜を形成し、前記半導体基板の上に前記第1の絶縁膜とは異なる第2の絶縁膜を堆積する工程と、前記第2の絶縁膜の上に感光性樹脂を用いてイオン注入領域をパターン形成する工程と、前記感光性樹脂のパターンに従って前記第2の絶縁膜を薬液を用いて除去することで前記第2の絶縁膜のパターンを形成する工程と、前記第2の絶縁膜のパターン上の前記感光性樹脂を薬液を用いて除去する工程と、前記感光性樹脂を除去した前記半導体基板にイオン注入を実施する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との前記薬液での選択比が、0.2以下であることを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−88003(P2007−88003A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271480(P2005−271480)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】