説明

半導体装置の製造方法

【課題】EUV光によるリソグラフィ工程において、アウトガスの発生を抑制し、かつ製造コストの低減を図る。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板10上に減圧又は真空雰囲気下においてアウトガスを発生する膜11及び12を形成する工程と、前記膜上に前記膜が露出しないように、減圧又は真空雰囲気下において前記膜よりも単位面積あたりのアウトガスの発生量が少ないレジスト膜13を形成する工程と、前記レジスト膜に対してEUV(Extreme Ultra Violet)光によるパターン光を照射し、前記レジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜を現像する工程と、前記レジスト膜及び前記膜、又は前記膜をマスクとして前記基板を加工する工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV(Extreme Ultra Violet)光によるリソグラフィを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EUVリソグラフィにおいては、主に光学系の汚染の観点から、露光装置内部でのアウトガスの削減が課題である。レジストプロセスにおいては、EUV光の照射によってレジスト膜等から発生するアウトガスが主に注目されている。EUV光の照射によるレジスト膜からのアウトガス発生のメカニズムとしては、レジスト組成物の光酸発生剤や溶解抑止基にEUV光を照射することで発生する分解生成物やレジスト膜中の残留溶剤等が原因となる。また、光酸発生剤や溶解抑止基に限らないレジスト組成物にEUV光を照射することで生じるレジスト組生物の分解等も原因となる。
【0003】
一般に、露光部のレジスト膜によるアウトガスに対しては、レジスト組成物の材料の改良により対策が進められている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、レジスト組成物の材料以外による上記露光部のアウトガスの対策として、レジスト膜上層にアウトガスを防止する上層膜を設けている。しかし、上層膜の形成には、膜形成材料及び製膜設備のコストが必要となる。具体的には、回転塗布法で形成する場合、回転塗布ユニットに加えて、通常は上層膜の塗布膜が形成された基板を加熱するベーカーユニットが設備として必要である。また、少なくとも上層膜の薬液、上層膜のバックリンス薬液が必要となる。さらに、パターン露光工程後に上層膜の除去が必要である。このように、上層膜をレジスト膜上に形成、除去することで、レジストパターンのパターン欠陥が発生する可能性が高まり、かつレジスト材料及びプロセス開発への制約が高まる。
【0005】
一方、未露光部であってもアウトガスが発生する。未露光部のアウトガス発生は、基板上の膜中、及び基板表面の揮発物質が減圧又は真空雰囲気に晒されたことによる揮発に由来すると考えられる。具体的には、塗布膜中の残留溶剤、溶剤の共沸現象による塗布膜中の他の物質の揮発、低誘電率膜(low−k膜)等の低密度物質中に吸収された有機アミンの揮発等が考えられる。例えば塗布型ハードマスクの下層膜として使用される高炭素濃度の有機膜では、塗布膜の加熱温度によって残留溶剤が大きく変化する。また、残留溶剤の共沸現象では、残留溶剤との親和性が良く、相互作用が大きいが、塗布膜との相互作用が小さい物質が揮発しやすいと考えられる。従って、塗布膜を形成する樹脂と類似組成の低分子成分や、塗布膜を形成している場合には、塗布膜形成過程及びその後の加熱工程で未反応である架橋剤や熱酸発生剤、又はそれらの反応性生物等が、減圧又は真空雰囲気下で揮発し、アウトガス発生源となる可能性がある。
【0006】
また、所謂ポイゾニング基板として知られている基板もアウトガス発生源になると考えられる。配線基板上にlow−k膜で構成される層間絶縁膜が形成され、さらに上層に配線層やエッチングストッパー膜が形成された後に、層間絶縁膜に開口部が形成された基板においては、層間絶縁膜が有機アミンを吸収し、開口部上に形成されるレジストパターンに対して形状変化をもたらすことが知られている。
【0007】
特許文献1及び特許文献2の上層膜の種類によっては、上層膜をアウトガス発生源となる膜上に形成することで、未露光部のアウトガスに対する低減効果を期待できる。しかし、上述したように、前記薬液及び設備コストの増加が生じることは不可避である。
【0008】
また、従来のリソグラフィ工程においては、主に、形成されたレジストパターンを加工マスクとする加工マスク上の制約に基づいて、パターン露光工程中のウェハ周辺部及びベベル部におけるレジスト膜等の積層状態を規定していた。
【0009】
特許文献3及び非特許文献1では、リソグラフィ工程で近年採用が始まった液浸リソグラフィ露光装置において、液浸液と基板との摩擦による基板ベベル部の膜剥がれによるパターン欠陥、装置汚染を防止する観点から、ベベル部における膜の積層構造が規定されている。しかしながら、EUVリソグラフィにおける減圧下のアウトガス発生に対する対策はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−117619号公報
【特許文献2】特開2004−348133号公報
【特許文献3】特開2007−142181号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K. Nakano et al, “Analysys and improvement of immersion defectivity using volume production immersion lithography tool”, 4th International Immersion Symposium, (2007), p.p.20-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、EUV光によるリソグラフィ工程において、アウトガスの発生を抑制し、かつ製造コストの低減を図る半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の視点による半導体装置の製造方法は、基板上に減圧又は真空雰囲気下においてアウトガスを発生する膜を形成する工程と、前記膜上に前記膜が露出しないように、減圧又は真空雰囲気下において前記膜よりも単位面積あたりのアウトガスの発生量が少ないレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に対してEUV(Extreme Ultra Violet)光によるパターン光を照射し、前記レジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜を現像する工程と、前記レジスト膜及び前記膜、又は前記膜をマスクとして前記基板を加工する工程と、を具備する。
【0014】
本発明の第2の視点による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に減圧又は真空雰囲気下においてアウトガスを発生する開口部を有する層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜を備えた基板を形成する工程と、前記基板上に前記開口部が露出しないように、減圧又は真空雰囲気下において前記開口部よりも単位面積あたりのアウトガスの発生量が少ないレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に対してEUV光によるパターン光を照射し、前記レジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜を現像する工程と、前記レジスト膜をマスクとして前記基板を加工する工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EUV光によるリソグラフィ工程において、アウトガスの発生を抑制し、かつ製造コストの低減を図る半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の変形例を示す断面図。
【図3】図4に続く、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】図1又は図2に続く、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】図7に続く、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】図5に続く、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図9】図10に続く、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図10】図8に続く、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、アウトガス発生源となる高炭素濃度有機膜とシリコン含有中間膜とで二層構造のハードマスクが構成され、このハードマスクがレジスト膜で覆われる例である。
【0019】
ここでは、本実施形態における半導体装置の製造工程で、半導体基板上に形成される積層膜構造について、主にベベル部分に着目して詳説する。
【0020】
[構成/プロセス]
図1乃至図4は、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の断面図を示す。以下に本実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。
【0021】
まず、図1に示すように、加工対象膜(図示せず)が形成された半導体基板10(以下、基板10と称す。)上に高炭素濃度有機膜11が形成される。この高炭素濃度有機膜11の形成方法は、例えば、薬液による回転塗布法により塗布膜が基板10上に形成され、その後ベーカーによる加熱が行われる。ここで、回転塗布法において、基板10がリソグラフィ装置、搬送装置及び後続の加工装置の内部に接触しないように、予め基板10のエッジリンス及びバックリンス(以下、総称としてEBR:Edge Back Rinseと称す。)が行われる。これにより、基板10と各装置との接触部位が除去される。従って、基板10が各装置の内部におけるダスト源となり、各装置の故障の原因となることを防ぐことができる。また、高炭素濃度有機膜11のエッジリンスによるベベル部分のエッジカット位置は、後続の加工工程から許容範囲が規定される。尚、高炭素濃度有機膜11は、例えば炭素濃度が60重量パーセント以上の塗布膜であることが望ましい。この炭素濃度が60重量パーセント以上の塗布膜としては、例えば多重芳香環等があげられる。
【0022】
次に、高炭素濃度有機膜11上にシリコン含有中間膜12が形成される。このシリコン含有中間膜12は、例えば回転塗布法により形成される。ここで、シリコン含有中間膜12のエッジリンスによるベベル部分のエッジカット位置は、後に中間膜パターンで高炭素濃度有機膜11が加工されることから、高炭素濃度有機膜11のベベル部分のエッジカット位置よりも内側に形成されることが望ましい。尚、シリコン含有中間膜12は、シリコン及び酸素を含む塗布膜であることが望ましい。このシリコン及び酸素を含む塗布膜としては、例えばシロキサン構造及びポリシラン等があげられる。
【0023】
このようにして、高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12で構成される二層構造のハードマスクが形成される。この二層ハードマスクは、減圧下又は真空雰囲気に晒されることによってアウトガスを発生する。
【0024】
次に、シリコン含有中間膜12上にレジスト膜13が形成される。このレジスト膜13は、例えば回転塗布法により形成される。また、レジスト膜13は、アウトガスの発生を抑制するために、レジスト膜13の組成物中の光酸発生剤、保護基、溶剤等が改良されている。具体的には、レジスト膜13の組成物中の光酸発生剤にバルキーな材料が用いられ、また、レジスト膜13の組成物中の保護基がバルキー化される(文献1「Proc. SPIE 5753, pp.765-770, (2005)」、文献2「J. Photopolym. Sci. Technol., vol.19 pp.533-538, (2006)」、文献3「Proc. SPIE 6923-41 (2008)」参照。)。ここで、レジスト膜13の単位面積あたりのアウトガス発生量に対して、高炭素濃度有機膜11の単位面積あたりのアウトガス発生量が多い場合、レジスト膜13のベベル部分のエッジカット位置は高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12のベベル部分のエッジカット位置よりも外側に形成される。従って、レジスト膜13のエッジカット位置は最も外側に形成され、高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12は中央部分及びベベル部分においてレジスト膜13で完全に覆われ、露出しない。また、レジスト膜13のエッジカット位置は、レジスト膜形成工程から後続の現像工程までの間において、リソグラフィ装置内の搬送装置等と接触しないように、許容範囲が規定される。
【0025】
尚、図2に示すように、レジスト膜13の単位面積あたりのアウトガス発生量に対して、高炭素濃度有機膜11の単位面積あたりのアウトガス発生量が少なく、シリコン含有中間膜12の単位面積あたりのアウトガス発生量が多い場合、レジスト膜13のエッジカット位置は少なくともシリコン含有中間膜12のエッジカット位置よりも外側に形成されればよい。従って、レジスト膜13のエッジカット位置は、高炭素濃度有機膜11のエッジカット位置とシリコン含有中間膜12のエッジカット位置との間に形成されてもよい。
【0026】
また、シリコン含有中間膜12のエッジカット位置は、高炭素濃度有機膜11のエッジカット位置よりも外側に形成されることも可能である。この場合、レジスト膜13の単位面積あたりのアウトガス発生量に対して、シリコン含有中間膜12の単位面積あたりのアウトガス発生量が同等以上の場合、レジスト膜13のエッジカット位置はシリコン含有中間膜12のエッジカット位置よりも外側に形成されるとよい。
【0027】
次に、レジスト膜13に対して、EUV光によるパターン露光工程が行われる。これにより、レジスト膜13に潜像が形成される。このEUV光によるパターン露光工程は真空中で行われるため、EUV光が大気に吸収されることを回避できる。このように、パターン露光工程における真空中での搬送、計測及び露光中にアウトガスが発生する。
【0028】
次に、EUV光によるパターン露光工程が行われたレジスト膜13に対して、必要に応じて熱処理(Post Exposure Bake:PEB)工程が行われる。一般的に、化学増幅型レジストにおいては、PEB工程が行われる。
【0029】
次に、潜像が形成されたレジスト膜13に対して、現像工程が行われる。これにより、レジスト膜13にレジストパターンが形成される。この現像工程において、現在のレジストプロセスで通常使用される現像液は、例えば濃度が2.38%のTMAH水溶液であるが、これより希薄なTMAH水溶液であってもよい。また、レジスト膜13の材料等に合わせて、現像液に界面活性剤が添加されることもある。さらに、現像液はレジスト膜13の材料の種類によってはTMAH水溶液に限らず、他の薬液であってもよい。他の薬液としては、例えばKOH等のアルカリ水溶液等があげられる。この場合でもレジスト膜13にレジストパターンが形成されることが可能である。レジスト膜13がPMMAレジスト等である場合は、現像液は有機溶媒であってもよい。
【0030】
次に、現像工程が行われたレジスト膜13に対して、リンス工程が行われる。これにより、露光部分における溶解したレジスト膜13が除去される。このリンス工程は、現像液としてTMAH水溶液が用いられる場合、純水又は界面活性剤水溶液により行われる。また、リンス工程は、現像液として有機溶媒が用いられる場合、純水ではなく、イソプロピルアルコール等の有機溶媒により行われる。
【0031】
本実施形態における半導体装置の製造工程においては、基板10上に高濃度炭素有機膜11、シリコン含有中間膜12及びレジスト膜13が順に積層されている。図3に示すように、このような積層構造の場合、後続のエッチング工程による要請から、上記リンス工程後のレジスト膜13のエッジカット位置はシリコン含有中間膜12のエッジカット位置より内側であることが望ましい。
【0032】
このため、図4に示すように、レジスト膜13のベベル部分に対して、ウェハエッジ露光工程が行われる。これにより、レジスト膜13のベベル部分が露光される(以下、ウェハエッジ露光レジスト膜13’と称す。)。このウェハエッジ露光工程においては、上記プロセスにおけるPEB工程及び現像工程によってウェハエッジ露光レジスト膜13’が溶解除去され得るように、レジスト膜13が感光する波長で露光が行われる。従って、レジスト膜13によっては、水銀ランプにより発せられる波長の光、又は必要に応じて適切な波長フィルタを介した光が用いられる。
【0033】
上述したように、ウェハエッジ露光レジスト膜13’は、現像工程において除去されるため、所望のレジスト膜13のエッジカット位置を得ることが可能である。また、レジスト膜形成工程から現像工程までの間にウェハ側面がリソグラフィ装置内に接触しなければ、ウェハベベル部分のレジスト膜13の終端は、基板10の側面まで位置してもよい。この場合には、ウェハエッジ露光工程において基板10の側面のレジスト膜13への露光が行われ、現像工程において基板10の側面のウェハエッジ露光レジスト膜13’が除去されることが必須である。
【0034】
このウェハエッジ露光工程は、上述したレジスト膜形成工程から現像工程までの間に行われる。または、PEB工程が必要である場合にはウェハエッジ露光工程は、レジスト膜形成工程からPEB工程までの間に行われる。すなわち、ウェハエッジ露光工程は、パターン露光工程の前後いずれかに行われる。このように、ウェハエッジ露光工程がパターン露光工程の前後のいずれに行われるかについては、以下の二点の考え方がある。一方は、パターン露光工程からPEB工程又はパターン露光工程から現像工程までの処理時間を短縮、制御することによる寸法制御が重視されるものである。この場合、ウェハエッジ露光工程は、パターン露光工程の前に行われる。他方は、ウェハエッジ露光レジスト膜13’からのアウトガスが懸念されるものである。この場合、ウェハエッジ露光工程は、パターン露光工程の後に行われる。従って、ウェハエッジ露光工程及びパターン露光工程の順序は、アウトガス量、寸法制御の観点から適宜決定される。
【0035】
次に、現像工程及びリンス工程により形成されたレジストパターンを加工マスクとして、シリコン含有中間膜12が加工され、中間膜パターンが形成される。その後、必要に応じて残留しているレジストパターンの除去が行われる。
【0036】
次に、中間膜パターンを加工マスクとして、高炭素濃度有機膜11が加工され、有機膜パターンが形成される。その後、必要に応じて残留しているレジストパターン及び中間膜パターンの除去が行われる。
【0037】
次に、有機膜パターンを加工マスクとして、基板10上のリソグラフィ工程における加工対象膜が加工され、所望の加工対象膜パターンが形成される。その後、残留しているレジストパターン、中間膜パターン及び有機膜パターンの加工マスクが除去され、半導体装置の次の製造工程が行われる。
【0038】
尚、本実施形態における半導体装置の製造工程において、アウトガス発生源が高炭素濃度有機膜11である場合、及びアウトガス発生源が高炭素濃度有機膜11とシリコン含有中間膜12である場合について記載したが、アウトガス発生源が高炭素濃度有機膜11とシリコン含有中間膜12で構成される二層ハードマスクである場合に限定されない。すなわち、アウトガス発生源が他のハードマスクである場合であっても、ハードマスクとレジスト膜13とのベベル部分のエッジカット位置において同様の積層構造が適用できる。また、アウトガス発生源がハードマスクである場合に限定されず、アウトガス発生源がハードマスク以外の用途に用いられるレジスト膜13下の膜である場合でもよい。
【0039】
さらに、アウトガス発生源から発生するアウトガス種がレジスト膜13から発生するアウトガス種よりもEUV露光システムへの影響度が異常に大きい場合には、単位面積あたりのアウトガス発生量がレジスト膜13よりもアウトガス発生源の方が少ない場合であっても、上述したように、EUVリソグラフィの減圧又は真空雰囲気下において、アウトガス発生源が露出しないようにレジスト膜13が形成されることが望ましい。
【0040】
[効果]
上記第1の実施形態によれば、EUVリソグラフィのプロセスにおいて、アウトガス発生源となる高炭素濃度有機膜11とシリコン含有中間膜12とで構成された二層ハードマスク上にアウトガス対策が施されたレジスト膜13が形成される。すなわち、EUVリソグラフィの減圧又は真空雰囲気下において、レジスト膜13よりも高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12の単位面積当たりのアウトガス発生量が多い場合、高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12は、中央部分及びベベル部分においてレジスト膜13で完全に覆われ、露出しない。これにより、アウトガス発生源となる高炭素濃度有機膜11及びシリコン含有中間膜12が真空雰囲気に晒されることがなくなり、未露光部におけるアウトガスの発生を抑制することができる。従って、アウトガス発生量が低下し、EUV露光システムにおけるアウトガスによる汚染が低減される。そして、光学系のクリーニング等の装置メンテナンスの間隔を減らし、装置稼働率向上による製造コストの低減が可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、アウトガス対策が施されたレジスト膜13が最上部に形成されている。これにより、特許文献1及び特許文献2のようにアウトガスを抑制するために保護膜等を形成する工程が不要となるため、保護膜等の形成材料及び製膜設備のコスト低減が可能となる。
【0042】
ここで、未露光部におけるアウトガス発生のメカニズムは、少なからず膜中の揮発物質の拡散現象に基づくものである。従って、アウトガス発生源となる膜及び基板10に対して、高温加熱又は真空処理、加熱工程の時間増加等により、残留溶剤の減少が可能である場合がある。しかし、高炭素濃度有機膜11では、高温加熱による酸化等により、膜組成の変質がおこる。このため、高炭素濃度有機膜11は、エッチングハードマスクとしての機能が劣化する場合がある。一方、処理時間の増加は、処理効率低下に伴う生産性の低下をもたらす。このため、生産性を維持するには処理装置及びユニットを増加する必要があり、コストが増加する。このように、処理条件を変更することでアウトガスの発生を抑制することができるが、アウトガス発生源となる膜の本来の性能の維持と生産性の維持との両立が困難である場合が多い。
【0043】
しかしながら、本実施形態においては、アウトガス発生源となる膜上にこの膜を覆うようにレジスト膜13が形成されている。これにより、製造工程における処理条件を変えることなく、アウトガスの発生を抑制することができる。従って、アウトガス発生源となる膜の性能の維持及び生産性の維持の両立が可能となる。
【0044】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、アウトガス発生源となる高炭素濃度有機膜とシリコン含有中間膜とで二層ハードマスクが構成され、このハードマスクがレジスト膜で覆われた。これに対し、第2の実施形態では、アウトガス発生源となる有機導電膜が形成され、この有機導電膜がレジスト膜で覆われる例である。尚、ここでは、上記第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、異なる点について詳説する。
【0045】
[構成/プロセス]
図5乃至図7は、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の断面図を示す。以下に本実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。
【0046】
まず、図5に示すように、加工対象膜(図示せず)が形成された半導体基板10(以下、基板10と称す。)上に導電性を有する有機膜(以下、有機導電膜14と称す。)が形成される。この有機導電膜14は、例えば、薬液による回転塗布法により塗布膜が基板10上に形成され、その後ベーカーによる加熱が行われる。ここで、回転塗布法において、基板10がリソグラフィ装置、搬送装置及び後続の加工装置の内部に接触しないように、予め基板10のEBRが行われる。このため、有機導電膜14のベベル部分のエッジカット位置は、基板10の側面よりも内側に形成される。この有機導電膜14が基板10と後に形成されるレジスト膜13との間に形成されることで、基板10とレジスト膜13との物質種の違いによる影響を低減することができる。尚、有機導電膜14としては、例えばポリアセチレン誘導体等があげられる。この有機導電膜14は、減圧下又は真空雰囲気に晒されることによってアウトガスを発生する。
【0047】
次に、有機導電膜14上にレジスト膜13が形成される。このレジスト膜13は、例えば回転塗布法により形成される。ここで、レジスト膜13の単位面積あたりのアウトガス発生量に対して、有機導電膜14の単位面積あたりのアウトガス量が多い場合、レジスト膜13のベベル部分のエッジカット位置は有機導電膜14のベベル部分のエッジカット位置よりも外側に形成される。従って、有機導電膜14は中央部分及びベベル部分においてレジスト膜13に完全に覆われ、露出しない。
【0048】
次に、レジスト膜13に対して、EUV光によるパターン露光工程が行われ、潜像が形成される。このEUV光によるパターン露光工程は、真空中で行われる。
【0049】
次に、EUV光によるパターン露光工程が行われたレジスト膜13に対して、必要に応じてPEB工程が行われる。
【0050】
次に、潜像が形成されたレジスト膜13に対して、現像工程が行われ、レジストパターンが形成される。
【0051】
次に、現像工程が行われたレジスト膜13に対して、リンス工程が行われ、露光部分における溶解したレジスト膜13が除去される。
【0052】
本実施形態における半導体装置の製造工程においては、基板10上に有機導電膜14及びレジスト膜13が順に積層されている。図6に示すように、このような積層構造の場合、後続のエッチング工程による要請から、上記リンス工程後のレジスト膜13のエッジカット位置は有機導電膜14のエッジカット位置より内側であることが望ましい。
【0053】
このため、図7に示すように、レジスト膜13のベベル部分に対して、ウェハエッジ露光工程が行われ、レジスト膜13のベベル部分が露光される(以下、ウェハエッジ露光レジスト膜13’と称す。)。このウェハエッジ露光工程においては、上記プロセスにおけるPEB工程及び現像工程によってウェハエッジ露光レジスト膜13’が溶解除去され得るように、レジスト膜13が感光する波長で露光が行われる。
【0054】
このウェハエッジ露光工程は、パターン露光工程の前後いずれかに行われる。ウェハエッジ露光工程がパターン露光工程の前後のいずれに行われるかについては、アウトガス量、寸法制御の観点から適宜決定される。
【0055】
次に、現像工程及びリンス工程により形成されたレジストパターンを加工マスクとして、有機導電膜14が加工される。これにより、下層より有機導電膜14とレジスト膜13とで構成されるパターンが形成される。
【0056】
一般的に、レジスト膜13と有機導電膜14との加工選択比は1に近い。このため、有機導電膜14が加工されると、加工された有機導電膜14の膜厚と同程度の膜厚のレジスト膜13が減少する。さらに、レジスト膜13において、加工の異方性の程度によって側面方向(寸法方向)への加工が進行するため、元のレジストパターンから形状の変化するサイドエッチングが発生する。このサイドエッチングにはパターン密度、種類依存性があることから、形状忠実性が劣化する場合がある。このため、有機導電膜14は、基板10とレジスト膜13との物質種の違いによる影響を低減するという目的を満たす範囲で、できる限り薄く形成されることが望ましい。例えば、有機導電膜14の膜厚は、レジスト膜13の膜厚の3分の1以下であることが望ましい。
【0057】
次に、有機導電膜14とレジスト膜13とで構成されるパターンを加工マスクとして、基板10上のリソグラフィ工程における加工対象膜が加工され、所望の加工対象膜パターンが形成される。その後、残留している有機導電膜14とレジスト膜13とで構成されるパターンの加工マスクが除去され、半導体装置の次の製造工程が行われる。
【0058】
尚、本実施形態における半導体装置の製造工程において、アウトガス発生源が基板10上の加工対象膜に対する加工マスク性がレジスト膜13と同等である有機導電膜14である場合について記載したが、これに限定されない。すなわち、アウトガス発生源が有機導電膜14ではなく、一層の塗布型ハードマスクである場合でも、ハードマスクとレジスト膜13とのベベル部分のエッジカット位置において同様の積層構造が適用できる。このとき、レジスト膜13と一層の塗布型ハードマスクとの加工選択比が1よりも大きくなる場合、又は一層のハードマスクの特性によってはハードマスクパターン形成後にレジスト膜13を一旦除去する場合が有り得ることが本実施形態と異なる。また、本実施形態において、有機導電膜14下に上記一層ハードマスク又は二層ハードマスクが形成されてもよく、この場合、ハードマスクとレジスト膜13との物質種の違いによる影響を低減することができる。
【0059】
[効果]
上記第2の実施形態によれば、EUVリソグラフィの減圧又は真空雰囲気下おいて、アウトガス発生源となる有機導電膜14上にアウトガス対策が施されたレジスト膜13が形成され、このレジスト膜13で中央部分及びベベル部分において有機導電膜14が完全に覆われる。これにより、第1の実施形態と同様に、アウトガスの発生量を低減し、かつアウトガスを抑制するための保護膜等の形成材料及び製膜設備のコストの低減が可能となる。
【0060】
[第3の実施形態]
第1及び第2の実施形態では、アウトガス発生源が基板上に形成された塗布膜であった。これに対し、第3の実施形態では、アウトガス発生源が開口部を有する層間絶縁膜を備えた基板であり、この基板がレジスト膜で覆われる例である。尚、ここでは、上記第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、異なる点について詳説する。
【0061】
[構成/プロセス]
図8乃至図10は、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の断面図を示す。以下に本実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。
【0062】
まず、図8に示すように、半導体基板10上の配線パターン(図示せず)上に低誘電率膜(low−k膜)を含む層間絶縁膜15が形成される。このlow−k膜は、例えばSiOC膜、SiOF膜、SiO−B膜、ポーラスシリカ膜及び有機シロキサン膜等である。
【0063】
次に、low−k膜上にエッチングストッパー膜(図示せず)又は上層配線形成膜(図示せず)、加工膜(図示せず)等が形成される。その後、エッチングにより、層間絶縁膜15に開口部(図示せず)が形成される。ここで、開口部を有する層間絶縁膜15は、開口部形成のエッチング工程、又は開口部形成のための加工マスクの除去工程等の工程中に、開口部に有機アミンを吸蔵する。このため、開口部を有する層間絶縁膜15が形成された半導体基板10が真空処理された場合、有機アミンが揮発する。すなわち、開口部を有する層間絶縁膜15がアウトガス発生源となる。これら半導体基板10及びアウトガス発生源となる開口部を有する層間絶縁膜15を、以下で基板20と称する。
【0064】
次に、開口部を有する層間絶縁膜15を備えた基板20上に、レジスト膜13が形成される。ここで、レジスト膜13の単位面積あたりのアウトガス発生量に対して、層間絶縁膜15の開口部の単位面積あたりのアウトガス量が多い場合、層間絶縁膜15の開口部が露出しないように、レジスト膜13のベベル部分のエッジカット位置は層間絶縁膜15のベベル部分のエッジカット位置よりも外側に形成される。従って、層間絶縁膜15の開口部は中央部分及びベベル部分において、レジスト膜13に完全に覆われ、露出しない
次に、レジスト膜13に対して、EUV光によるパターン露光工程、現像工程及びリンス工程が順に行われる。また、必要に応じて、EUV光によるパターン露光工程後にPEB工程が行われる。
【0065】
本実施形態における半導体装置の製造工程においては、開口部を有する層間絶縁膜15を備えた基板20上にレジスト膜13が積層されている。図9に示すように、このような積層構造の場合、後続のエッチング工程による要請から、上記リンス工程後のレジスト膜13のエッジカット位置は層間絶縁膜15のエッジカット位置より内側であることが望ましい。
【0066】
このため、図10に示すように、レジスト膜13のベベル部分に対して、ウェハエッジ露光工程が行われ、レジスト膜13のベベル部分が露光される(以下、ウェハエッジ露光レジスト膜13’と称す。)。このウェハエッジ露光工程は、パターン露光工程の前後いずれかに行われる。
【0067】
次に、現像工程及びリンス工程により形成されたレジストパターンを加工マスクとして、開口部を有する層間絶縁膜15を備えた基板20が加工される。これにより、所望の基板パターンが形成される。その後、残留しているレジストパターンの加工マスクが除去され、半導体装置の次の製造工程が行われる。
【0068】
尚、基板20上に、例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜等の加工対象膜が形成されていてもよく、この場合、レジストパターンを加工マスクとして、加工対象膜及び基板20が加工される。
【0069】
[効果]
上記第3の実施形態によれば、EUVリソグラフィの減圧又は真空雰囲気下において、アウトガス発生源となる開口部を有する層間絶縁膜15を備えた基板20上にアウトガス対策が施されたレジスト膜13が形成され、このレジスト膜13で中央部部分及びベベル部分において層間絶縁膜15の開口部が完全に覆われる。これにより、アウトガス発生源が塗布膜以外の膜であっても、第1の実施形態と同様に、アウトガスの発生量を低減し、かつアウトガスを抑制するための保護膜等の形成材料及び製膜設備のコスト低減が可能となる。
【0070】
ここで、アウトガス発生源となる膜及び基板20に対して、処理条件を変更することで、吸収した有機アミン等の低減が可能である場合がある。しかし、low−k膜を含む層間絶縁膜15は、処理条件を変更することで膜密度の変化が生じ、本来の膜としての機能が劣化する場合がある。また、処理時間の増加は、処理効率低下に伴う生産性の低下をもたらす。
【0071】
しかしながら、本実施形態においては、アウトガス発生源となる膜上にレジスト膜13が形成されていることにより、アウトガス発生源となる膜の性能の維持及び生産性の維持の両立が可能となる。
【0072】
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0073】
10…半導体基板(基板)、11…高炭素濃度有機膜、12…シリコン含有中間膜、13…レジスト膜、13’…ウェハエッジ露光レジスト膜、14…有機導電膜、15…層間絶縁膜、20…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に減圧又は真空雰囲気下においてアウトガスを発生する膜を形成する工程と、
前記膜上に前記膜が露出しないように、減圧又は真空雰囲気下において前記膜よりも単位面積あたりのアウトガスの発生量が少ないレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に対してEUV(Extreme Ultra Violet)光によるパターン光を照射し、前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜を現像する工程と、
前記レジスト膜及び前記膜、又は前記膜をマスクとして前記基板を加工する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記膜は、前記基板上に形成された有機膜である第1塗布膜と、前記第1塗布膜上に形成されたシリコン及び酸素を含む第2塗布膜と、で構成される
積層膜を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記膜は、導電性を有する有機膜で構成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に減圧又は真空雰囲気下においてアウトガスを発生する開口部を有する層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜を備えた基板を形成する工程と、
前記基板上に前記開口部が露出しないように、減圧又は真空雰囲気下において前記開口部よりも単位面積あたりのアウトガスの発生量が少ないレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に対してEUV光によるパターン光を照射し、前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜を現像する工程と、
前記レジスト膜をマスクとして前記基板を加工する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1塗布膜は、多重芳香環であり、
前記第2塗布膜は、シロキサン構造又はポリシランであることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−182732(P2010−182732A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22661(P2009−22661)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】