説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】信頼性の良好な半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】一方の主面に於ける半導体素子領域2内に複数の機能素子が配設された半導体基板1と、半導体基板1の一方の主面上に配設され、複数の配線層3と複数の絶縁層4とを含む多層配線層2と、多層配線層2上に形成された第1の有機絶縁物層6と、第1の有機絶縁物層上に形成され、配線層に電気的に接続された他の配線層と、第1の有機絶縁物層6上に、他の配線層を覆うように形成された第2の有機絶縁物層10とを具備し、半導体素子領域を囲む半導体基板領域に、多層配線層を貫く溝が半導体素子領域を囲繞して配設されており、溝内には、前記有機絶縁物層6、有機絶縁物層10のいずれからも分離された有機絶縁物が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子等、半導体装置の製造工程に於いては、シリコン(Si)などの半導体基板の一方の主面に、所謂ウエハープロセスが適用されて、複数個の半導体素子(半導体チップ)が形成される。
【0003】
個々の半導体素子は、トランジスタなどの能動素子、ならびに容量素子などの受動素子などの機能素子、及び複数の配線導体を具備し、当該配線導体により機能素子間が相互に接続されて、所望の電子回路が形成されている。
【0004】
かかる半導体素子の形成後、当該半導体基板に於けるスクライブ領域に対してダイシング処理が施され、前記半導体素子は分割(個片化)される。
【0005】
近時、電子機器の高機能化、高速動作化の要求に伴い、当該電子機器に搭載される半導体装置に於いては、より高集積化、高速動作化が図られている。
【0006】
即ち、当該半導体装置を構成する半導体素子にあっては、高集積化を図る為に、前記能動素子ならびに受動素子などの機能素子は、より微細化が図られている。
【0007】
一方、高速動作を得る為に、前記機能素子を相互に接続する配線層材料として銅(Cu)を主体とする材料が適用され、更に当該配線層の間を相互に絶縁する誘電体層(層間絶縁層)材料として、低誘電率を有する絶縁材料(所謂Low−k材)が適用されている。
【0008】
しかしながら、配線層間の絶縁材料即ち層間絶縁材料として低誘電率を有する絶縁材料を用いて構成された多層配線構造は、前記ダイシング処理の際に機械的ダメージを受け、割れ及び/或いは剥離を生じ易い。
【0009】
即ち、所謂ダイシングブレードを用いてのダイシング処理にあっては、当該ダイシングブレードの回転により、低誘電率を有する絶縁材料層は機械的ダメージを受けて、割れ及び/或いは剥離を生じ易い。
【0010】
かかる絶縁材料層の割れ及び/或いは剥離は、水分の浸入を容易なものとし、半導体素子の信頼性を低下させる一因となってしまう。
【0011】
この為、例えば特許文献1にあっては、電子回路が形成された領域とスクライブ領域との間に於いて、当該電子回路が形成された領域を囲繞し且つ層間絶縁材料として低誘電率を有する絶縁材料を用いて構成された多層配線構造を貫通する溝を形成し、当該溝内に電子回路が形成された領域から延在して配設された有機絶縁材が充填される構成が提案されている。
【0012】
かかる溝の配設によって、前記電子回路が形成された領域に対する水分の浸入経路を実質的に長くしている。
【0013】
当該特許文献1に示される構成と同様の構成について、特許文献2ならびに特許文献3などに於いても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−329396号公報
【特許文献2】特開2008−130880号公報
【特許文献3】特開2008−166352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述の如き、配線層間の絶縁材料即ち層間絶縁材料として低誘電率を有する絶縁材料を用いて構成された多層配線構造に於ける溝は、例えばレーザービームの照射により形成される。
【0016】
そして、当該溝の外側、即ち電子回路が形成された領域とは反対側に於いて、スクライブ領域に対しダイシングブレードを用いてのダイシング処理が行われる。
【0017】
即ち、スクライブ領域に於いては、前記多層配線構造に於ける低誘電率絶縁材料層及びその下に位置する半導体基板に対して、機械的なダイシング処理が施される。
【0018】
この為、前記先行技術に開示される構成にあっても、ダイシング部と溝部との間に於ける比較的細幅の低誘電率絶縁材料層の剥離、或いは当該低誘電率絶縁材料層下に在る半導体基板の欠けなどを生じ易い。
【0019】
また、当該先行技術に開示される構成にあっては、溝内に充填される有機絶縁材は、半導体素子形成領域から延在して配設されている。
【0020】
この為、当該有機絶縁材と低誘電率絶縁材料層との界面に沿って、水分が半導体素子形成領域に浸入する可能性がある。
【0021】
この様に、層間絶縁材料として低誘電率を有する絶縁材料を用いて構成された多層配線構造を有し、また電子回路が形成された領域とスクライブ領域との間に溝を配設し、当該溝内に有機絶縁材料が充填された半導体装置に於いて、前記低誘電率絶縁材料層の剥離、ならびに半導体基板の欠けなどを防止すると共に、電子回路が形成された領域への水分の浸透を防止することができる構造、ならびにその製造方法を得ることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
実施形態の一観点によれば、複数の機能素子が配設された半導体素子領域が主面に形成された半導体基板と、前記半導体基板の前記主面上に配設された多層配線層と、前記多層配線層上に配設された第1の有機絶縁物層と、前記半導体素子領域を囲繞するスクライブ領域上の前記多層配線層を貫通した溝と、前記第1の有機絶縁物層とは離間して、前記溝内に配設された有機絶縁物とを有する半導体装置が提供される。
【0023】
実施形態の他の観点によれば、半導体基板の主面上の複数の半導体素子領域のそれぞれに機能素子を形成する工程と、前記半導体基板の前記主面上に多層配線層を形成する工程と、前記半導体素子領域の周囲のスクライブ領域上の前記多層配線層に、前記半導体素子領域を囲繞し且つ前記多層配線層を貫く溝を形成する工程と、前記多層配線層上及び前記溝の中に有機絶縁物層を形成する工程と、前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う有機絶縁物層と前記溝内に形成された有機絶縁物を分離する工程と、前記スクライブ領域に於いて前記半導体基板を切断する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明による半導体装置にあっては、半導体素子領域から離間し、且つ当該半導体素子領域を囲繞して、多層配線層を貫通する溝が配設され、当該溝内に前記半導体素子領域に配設された有機絶縁材とは離間して有機絶縁材が充填・配設されている。
【0025】
また、前記多層配線層の側端部は、前記有機絶縁材により被覆されている。
【0026】
これにより、半導体装置の周囲側面から半導体素子領域に至る沿面距離が増加し、当該半導体素子領域への水分の浸透が効果的に防止される。
【0027】
また本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記溝内に充填された有機絶縁材部とその下方に在る半導体基板に対してダイシング処理を施すことから、前記多層配線層を構成する絶縁層の剥離・脱落などを生じない。
【0028】
また、前記溝の存在により、スクライブ領域に対する視認性が高まり、ダイシング処理の際ダンシングブレードの位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す平面図である。
【図2】第1の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図4】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図5】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図6】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図7】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【図8】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その6)である。
【図9】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その7)である。
【図10】第1の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その8)である。
【図11】本発明の第2の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す断面図である。
【図12】第2の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】第2の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図14】第2の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図15】第2の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図16】本発明の第3の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す断面図である。
【図17】第3の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図18】第3の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図19】第3の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図20】第3の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図21】本発明の第4の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す断面図である。
【図22】第4の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図23】第4の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図24】第4の実施形態に於ける半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図25】本発明の第5の実施形態に於ける半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施形態]
本発明による半導体装置の第1の実施形態について、その製造方法と共に説明する。
【0031】
<半導体装置>
本発明の第1の実施の形態に於ける半導体装置100を、図1及び図2に示す。
【0032】
図1は、当該半導体装置100の外部接続用端子が配設された面を示し、図2は、図1に於けるX−X断面を示している。
【0033】
当該半導体装置100に於いて、半導体基板1の一方の主面(上面)に於ける半導体素子領域(電子回路形成領域)Iには、トランジスタなどの能動素子、ならびに抵抗素子、容量素子などの受動素子が複数形成されている(図示せず)。
【0034】
これらの能動素子ならびに受動素子などの機能素子は、当該半導体基板1上に形成された多層配線層2により相互に接続され、論理回路、増幅回路或いは記憶回路などの電子回路(図示せず)を形成している。
【0035】
前記半導体基板1として、シリコン(Si)或いはガリウム砒素(GaAs)が適用される。そして、前記機能素子は、所謂ウエハープロセスにより、当該半導体基板1の一方の主面(上面)近傍に形成されている。
【0036】
そして、かかる機能素子は、当該半導体基板1の一方の主面上に形成された多層配線層2によって相互に接続されている。
【0037】
当該多層配線層2は、銅(Cu)或いはアルミニウム(Al)を主体とする導体からなる配線層3と、当該配線層3の間に配設される有機絶縁物或いは無機絶縁物からなる層間絶縁層4をもって形成されている。配線層の層数により異なるが、当該多層配線層2の厚さは、10μm程度に及ぶ。
【0038】
尚、図2に於いては、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、絶縁層上に於いて、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設されている(図示せず)。
【0039】
ここで、多層配線層2は、配線層を流れる電気信号の高速化のため、銅(Cu)を主体とする導電層からなる配線層3と、有機絶縁物層からなる低誘電率(low−k)層間絶縁層4を主体として形成されている。
【0040】
当該低誘電率層間絶縁層4を構成する絶縁物としては、比誘電率が2.0〜4.0程の誘電体が用いられ、SiOC或いはSiOCHなどが適用される。
【0041】
尚、当該低誘電率層間絶縁層4を構成する絶縁物として、多孔質絶縁物或いは低誘電率無機絶縁物を適用することもできる。
【0042】
積層配置された配線層3は、当該配線層材料と同様の材料から形成された導電性プラグにより相互に且つ選択的に接続されており、また前記機能素子と配線層との間も同様に導電性プラグにより接続されている(図示せず)。
【0043】
そして、当該多層配線層2上には、例えば窒化シリコン(SiN)膜からなる表面保護層(パッシベーション層)5ならびに有機絶縁物層6上に、所謂再配線層7が配設されている。
【0044】
再配線層7は、当該有機絶縁物層6に設けられた開口8を介して、前記多層配線層2の表面部に配設された電極パッド9に接続されている。
【0045】
更に、当該再配線層7上を覆って有機絶縁物層10が配設され、当該有機絶縁物層10上には当該有機絶縁物層10に設けられた開口11を介して、前記再配線層7に接続された外部接続用端子12が配設されている。
【0046】
前記有機絶縁物層6ならびに有機絶縁物層10は、それぞれ厚さ4〜8μm程の感光性ポリイミドから形成され、有機絶縁物層10は、半導体素子領域Iの周縁部に於いて、有機絶縁物層6の端部を被覆している。
【0047】
また外部接続用端子12はハンダ(半田)ボールからなり、高さ50〜150μm程のバンプ形態を呈する。
【0048】
そして、本第1の実施形態にあっては、有機絶縁物層6及び有機絶縁物層10は、前記表面保護層5上にあって、当該半導体装置100の周囲端部、即ちスクライブ領域II迄は延在して配設されていない。
【0049】
即ち、前記有機絶縁物層に被覆された半導体素子領域Iの周囲に於けるスクライブ領域IIにあっては、当該有機絶縁物層6及び有機絶縁物層10が被覆されず、前記低誘電率(low−k)層間絶縁層4を含む多層配線層2の延在部を覆う表面保護層5が表出されている。
【0050】
そして、当該スクライブ領域IIにあっては、表面保護層5及び低誘電率(low−k)層間絶縁層4を貫通し、前記半導体基板1に至る深さを有する溝13が二列に配設されている。
【0051】
それぞれの溝13内には、有機絶縁物が充填されている。
【0052】
内側に、即ち半導体素子領域I側に位置する第1の溝13aは、当該半導体素子領域Iから離間し、且つ当該半導体素子領域Iの周囲を囲繞して配設されている。
【0053】
当該第1の溝13aは、5〜15μm程の幅、ならびに20〜30μm程の深さを有し、多層配線層2を貫通して半導体基板1に達している。
【0054】
そして、当該第1の溝13a内には、感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6aが充填されている。
【0055】
一方、第2の溝13bは、前記第1の溝13aの外側に、即ち前記半導体素子領域Iからはより離間し、且つ当該半導体素子領域Iの周囲を囲繞して配設されており、その一部が半導体基板1の側面と一致している。
【0056】
そして、当該第2の溝13bに充填された、感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6bは、半導体基板1の側面に表出している。
【0057】
即ち、当該半導体装置100の側面に於いて、第2の溝13b及び当該第2の溝13bに充填された有機絶縁物6bが表出している。
【0058】
当該第2の溝13bも、前記第1の溝13aと同様、20〜30μm程の深さを有し、多層配線層3を貫通して半導体基板1に達しているが、その一部が半導体素子100の側面と一致することから、その幅(半導体装置100の周縁に垂直な方向の幅)は、第1の溝11bの幅よりも狭い。
【0059】
そして、当該有機絶縁物6aならびに有機絶縁物6bの上面は、前記表面保護層5の上面とほぼ同じ平面に位置している。
【0060】
即ち、本第1の実施形態に於ける半導体装置100にあっては、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2に於ける層間絶縁層4を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が二重に配設され、更にそれぞれの溝13内に有機絶縁物6が充填されている。
【0061】
しかも、溝13内に充填された有機絶縁物6は、前記半導体素子領域Iに於ける有機絶縁物層10からは分離されている。
【0062】
これにより、当該半導体装置100の側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの、半導体基板表面の沿面距離が大きく形成され、また溝13内に充填された有機絶縁物6と層間絶縁層10との界面が連続していないことから、当該半導体装置100の側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの水分の浸透が有効に防止・抑制される。
【0063】
尚、第1の溝13aと第2の溝13bは、その形成方法に起因して、半導体装置100の四隅部では連続している。
【0064】
しかしながら、その連続する部位は、溝13の幅に対応する幅に限られ、当該連続する部位からの水分の浸透の可能性は極めて低い。
【0065】
また、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が、二重に配設され、且つそれぞれの溝13内に有機絶縁物6が充填されていることにより、ダイシング処理の際、機械的ストレスが半導体素子領域Iに加わることが防止・緩和される。
【0066】
これにより、当該半導体素子領域Iに於いて多層配線構造を形成している低誘電率層間絶縁層4の剥離などを防止することができる。
【0067】
更に、この様に、半導体素子領域Iの周囲を囲繞する溝13が二重に配設されることによって、ダイシング処理の対象となるスクライブ領域IIの確認が容易となる。
【0068】
尚、かかる半導体素子領域Iの周囲を囲繞する溝13は、本第1の実施形態に於ける如く、二重に配設されることに限られるものではない。
【0069】
当該半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2を貫通して半導体基板1に至る深さを有する一つの溝を設けることによっても、半導体素子領域Iと半導体装置100の側面或いは縁部との間に於いて層間絶縁層4が分離される。
【0070】
そして、当該溝13内に、半導体素子領域Iに於ける有機絶縁物層10からは分離して有機絶縁物6を充填して配置する。
【0071】
これにより、ダイシング処理の際、機械的ストレスが半導体素子領域Iへ加わることを緩和・抑制することができ、また半導体素子領域Iへの水分の浸透を防止・抑制することができる。
【0072】
勿論、本発明思想にあっては、前記溝13が三重以上に配設されることを制限するものではない。
【0073】
<半導体装置の製造方法>
前記本第1の実施形態に於ける半導体装置100の製造方法について、図3乃至図10を用いて説明する。
【0074】
当該図3乃至図10にあっては、一つの半導体基板1に於いて、当該半導体基板1に形成された二つの半導体素子領域Iと、当該二つの半導体素子領域Iの間に設けられるスクライブ領域IIの断面を示している。
【0075】
即ち、此処では、スクライブ領域IIと、その両側に位置する二つの半導体素子領域I−A,I−Bそれぞれの一部を示している。
【0076】
尚、図3乃至図10に於いても、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、各半導体素子領域Iの絶縁層上にあって、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設される。
【0077】
また、各配線層間は、図示されていない層間接続部を介して相互に接続される。
【0078】
前述の如く、当該半導体基板1にあっては、所謂ウエハープロセス工程が適用されて、当該半導体基板1の一方の主面(上面)に於ける複数個の半導体素子領域(電子回路形成領域)Iに、それぞれ、トランジスタなどの能動素子ならびに抵抗素子、容量素子などの受動素子が複数形成される(図示せず)。
【0079】
そして、当該能動素子ならびに受動素子などの機能素子は、半導体基板1上に形成された多層配線層2により相互に接続され、論理回路、増幅回路、或いは記憶回路などの電子回路(図示せず)が形成される。
【0080】
当該多層配線層2は、導電層を流れる電気信号の高速化のため、銅(Cu)を主体とする導電層からなる配線層3と、有機絶縁層からなる低誘電率(low−k)層間絶縁層4を主体として形成されている。
【0081】
当該低誘電率層間絶縁層4を構成する絶縁層としては、比誘電率が2.0〜4.0程の誘電体である、SiOC或いはSiOCHなどが適用される。
【0082】
尚、当該低誘電率層間絶縁層4を構成する絶縁物として、多孔質絶縁物或いは低誘電率無機絶縁物を適用することもできる。
【0083】
積層された配線層3の間は、当該配線層材料と同様の材料から形成された導電性プラグにより相互に且つ選択的に接続されており、また前記機能素子と配線層との間も同様に導電性プラグにより接続されている(図示せず)。
【0084】
そして、前記多層配線層2上に、例えばCVD法(化学的気相成長法)により、無機絶縁材料からなる表面保護層5が形成される。
【0085】
当該表面保護層5としては、厚さ1μm程の、窒化シリコン膜(SiN)膜を適用する。
【0086】
しかる後、所謂フォトリソグラフィ技術を適用して、前記表面保護層5に、多層配線層2に於いて最上層に配置された電極パッド9を表出する開口21が形成される(図3(a)参照)。
【0087】
かかる工程は、通常、前記ウエハープロセス工程に於いて実施される。
【0088】
本第1の実施形態にあっては、次いで、前記開口21を含む表面保護層5上に、フォトレジスト層31を形成する(図3(b)参照)。
【0089】
当該フォトレジスト層31は、回転塗布法により被着される。
【0090】
当該フォトレジスト層31は、後述する如く、レーザービームの照射により溝を形成する際に、半導体素子領域Iなどへの異物の付着を防止する。
【0091】
本第1の実施形態にあっては、次いで、選択的にレーザービーム(図示せず)を照射することにより、前記スクライブ領域IIに於ける多層配線層2に、溝13を複数本形成する。
【0092】
当該レーザービームは、スクライブ領域IIの幅方向の両端側近傍に於いて、各半導体素子領域Iの周縁に沿って、直線状に2条(2行)照射される。
【0093】
即ち、当該レーザービームは、半導体基板1の一方の主面に於いて、横方向(X方向)ならび縦方向(Y方向)に直線状に並ぶ複数の半導体素子領域Iに沿って、スクライブ領域IIの幅方向の両端側近傍に直線状に照射される。
【0094】
当該レーザービームにより形成される溝13は、前記表面保護層5、多層配線層2を貫き、半導体基板1に迄至る深さに形成される。
【0095】
当該多層配線層2の有する厚さにより異なるが、その深さは20μを越えるものとなる。
【0096】
また当該溝13それぞれの幅は、15μm以下、例えば7μm程とされる。
【0097】
かかるレーザービームの照射の際、前記表面保護層5を構成する部材或いは多層配線層2を構成する部材などが溶融し、飛散するが、これらは前記フォトレジスト層31の表面に飛着し固定される。
【0098】
しかる後、当該フォトレジスト層31を除去することにより、前記スクライブ領域Bに於ける多層配線層2に複数の溝13(13a、13b)が配設された状態が得られる(図4(a)参照)。
【0099】
即ち、個々の半導体素子領域Iは、それぞれ、その周囲が二重の溝13a、13bにより囲繞される。
【0100】
尚、当該溝13の形成の際、フォトレジスト層31の表面に飛着した飛散物は、当該フォトレジスト層31と共に除去される。
【0101】
本第1の実施形態にあっては、次いで、前記溝13(13a、13b)内、及び開口21内を含む表面保護層5上に、有機絶縁物層6を形成する。
【0102】
即ち、当該有機絶縁物層6は、半導体素子領域Iならびにスクライブ領域II上を被覆して、配設される。
【0103】
当該有機絶縁物層6は、回転塗布法により被着される。
【0104】
当該有機絶縁物層6は、ポジ型の感光性を有するポリイミドから形成され、前記表面保護層5上に於いて、4μm〜8μmの厚さをもって形成されると共に、前記二つの溝13a、13b内に充填される(図4(b)参照)。
【0105】
次いで、前記有機絶縁物層6上に、露光用マスク41を配置する。
【0106】
当該露光用マスク41に於けるマスク層には、前記スクライブ領域Bに対応する開口部41aと、半導体素子領域Aに於ける電極パッド9に対応する開口部41bが配設されている。
【0107】
尚、ここでは当該露光用マスク41に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0108】
そして、当該露光用マスク41を通して前記有機絶縁物層6に露光処理を行う(図5(a)参照)。
【0109】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層6が選択的に除去されると共に、半導体素子領域Iに於ける電極パッド9に対応する開口8が形成される。
【0110】
スクライブ領域II上の有機絶縁物層6が除去されるが、当該スクライブ領域II内に配設されているところの溝13a、13b内に充填された有機絶縁物6a,6bは、当該溝13a、13bを埋めた状態をもって残存する(図5(b)参照)。
【0111】
当該溝13a、13b内に充填された有機絶縁物6a,6bは、当該溝13a、13b内へ照射される光の強度が低下して、十分な露光がなされないことにより残される。
【0112】
即ち、溝13a、13b内への有機絶縁物6a,6bの残存を可能とする為に、表面保護層5上に於ける有機絶縁物層6の厚さ、露出している多層配線構造部の厚さ、ならびに露光量などが選択される。
【0113】
しかる後、前記表面保護層5、露出している多層配線層2、ならびに露出している有機絶縁物層6を覆って、チタン(Ti)層を形成する。
【0114】
当該チタン(Ti)層は、スパッタリッグ法により、厚さ50nm〜100nm程に被着される。
【0115】
そして、当該チタン(Ti)層上に、銅(Cu)層を形成する。
【0116】
当該銅(Cu)層は、スパッタリッグ法により、厚さ400nm〜700nm程に被着される。
【0117】
これにより、銅(Cu)層/チタン(Ti)層からなる金属層14が形成される。(図6(a)参照)
しかる後、前記金属層14に於ける銅(Cu)層上に、フォトレジスト層32を形成する。
【0118】
当該フォトレジスト層32は、回転塗布法により被着される。
【0119】
そして、当該フォトレジスト層32に対し、前記半導体素子領域Iに於ける電極パッド9に対応して有機絶縁物層6に形成された開口8に対応する領域を含む開口33を形成する。
【0120】
当該フォトレジスト層32に対する開口33の形成は、所謂フォトリソグラフィ技術をもって実施される。
【0121】
尚、此処では、当該開口33を形成するための露光用マスクを示すことを省略する。
【0122】
そして、当該フォトレジスト層32をマスクとし、前記銅(Cu)層/チタン(Ti)層からなる金属層14を負電極とする電気めっき(電解めっき)法によって、当該フォトレジスト層32に被覆されていない銅(Cu)層上に、銅(Cu)配線層7を形成する(図6(b)参照)。
【0123】
当該銅(Cu)配線層7は、再配線層とも称せられ、厚さ3〜5μm程に形成される。
【0124】
しかる後、前記フォトレジスト層32を除去する。
【0125】
次いで、前記銅(Cu)配線層(再配線層)7をマスクとして、前記銅(Cu)層/チタン(Ti)層からなる金属層14をエッチング除去し、各銅(Cu)配線層(再配線層)7を独立せしめる(図7(a)参照)。
【0126】
かかるエッチング処理の際、銅(Cu)配線層(再配線層)7も若干エッチングされるが、その厚さは当該銅(Cu)層/チタン(Ti)層からなる金属層14の厚さに比べ十分厚く、特段の問題は生じない。
【0127】
しかる後、前記表面保護層5上、露出している多層配線層2上、露出している有機絶縁物層6ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、第2の有機絶縁物層10を形成する。
【0128】
当該第2の有機絶縁物層10も、ポジ型の感光性を有するポリイミドから形成され、その厚さは4μm〜8μmとされる(図7(b)参照)。
【0129】
当該有第2の有機絶縁物層10も、回転塗布法によって被着される。
【0130】
当該第2の有機絶縁物層10は、半導体装置100に於いて、半導体素子形成領域Iを封止する部材となる。
【0131】
次いで、前記第2の有機絶縁物層10上に、露光用マスク42を配置する。
【0132】
当該露光用マスク42に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部42aと、銅(Cu)配線層(再配線層)に於ける電極パッドに対応する開口部42bが設けられている。
【0133】
尚、ここでは当該露光用マスク42に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0134】
そして、当該露光用マスク42を介して、第2の有機絶縁物層10に対し露光処理を行う(図8(a)参照)。
【0135】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記第2の有機絶縁物層10は選択的に除去され、前記銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッド上に開口11が形成される。
【0136】
また、前記スクライブ領域II上の第2の有機絶縁物層10も除去される。
【0137】
この時、当該スクライブ領域II内に配設されている溝13a、13b内に充填されている有機絶縁物6a,6bは、当該溝13内を埋めた状態をもって残存する。
【0138】
また、当該有機絶縁層10は、半導体素子領域Iの周縁部に於いて、有機絶縁物層6の端部を被覆した状態に残される(図8(b)参照)。
【0139】
次いで、前記表面保護層5上、露出している多層配線層2上、露出している有機絶縁物層6、第2の有機絶縁物層10、ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、チタン(Ti)層を形成する。
【0140】
当該チタン(Ti)層は、スパッタリッグ法により、厚さ50nm〜100nm程に被着される。
【0141】
そして、当該チタン(Ti)層上に、銅(Cu)層を形成する。
【0142】
当該銅(Cu)層は、スパッタリッグ法により、厚さ150nm〜350nm程に被着される。
【0143】
更に、当該銅(Cu)層上に、ニッケル(Ni)層を形成する。
【0144】
当該ニッケル(Ni)層は、スパッタリッグ法により、厚さ5μm程に被着される。
【0145】
即ち、ニッケル(Ni)層/銅(Cu)層/チタン(Ti)層の積層体からなる金属層15が形成される(図9(a)参照)。
【0146】
次いで、当該金属層15上にフォトレジスト層34を形成する。
【0147】
そして、フォトリソグラフィ技術により、前記銅(Cu)配線層(再配線層)に於ける電極パッドに対応する開口部11に対応して、開口35を形成する(図9(b)参照)。
【0148】
当該フォトレジスト層34に対する開口35の形成は、所謂フォトリソグラフィ技術をもって実施される。
【0149】
尚、此処では、当該開口35を形成するための露光用マスクを示すことを省略する。
【0150】
次いで、前記金属層15を負電極とする電気めっき(電解めっき)法によって、当該フォトレジスト層34に被覆されていない金属層15上に、はんだ層12sを比較的厚く被着する(図9(b)参照)。
【0151】
図示される様に、当該はんだ層12sは、その一部がフォトレジスト層34上にまで延在して被着される。
【0152】
当該はんだ層12sを構成するはんだ材としては、所謂無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)を適用する。
【0153】
当該めっき処理後、前記フォトレジスト層34を除去する。
【0154】
しかる後、前記はんだ層12sをマスクとして、表出している前記金属層(ニッケル(Ni)層/銅(Cu)層/チタン(Ti)層の積層体)15を選択的に除去する。
【0155】
次いで、当該はんだ層12sに対し再溶融(リフロー)処理を施して、当該はんだ層12sをほぼ球状を呈するものに変換し、外部接続用端子12を形成する(図10(a)参照)。
【0156】
当該リフロー処理は、半導体基板1をリフロー炉と称される加熱炉(図示せず)に収容して、実施される。
【0157】
次いで、当該半導体基板1をダイシング装置のテーブル上に載置・固定し、回転するダイシングブレード51を適用したダイシング処理(個片化処理)を実施する。
【0158】
尚、かかるダイシング処理に先立って、半導体基板1の裏面(電子回路非形成面)には、所謂ダイシングテープが貼り付けられる(図示せず)。
【0159】
かかるダイシング処理に於いて、ダイシングブレード51の板厚(刃厚)tは、スクライブ領域IIに於ける外側の溝、即ち二つの半導体素子領域間に於けるスクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bに対し、それぞれの溝13bの略中央部の間に跨がる厚さが選択される(図10(b)参照)。
【0160】
尚、当該図10(b)に於いては、ダイシングブレード51の要部断面形状を、破線をもって示している。
【0161】
従って、当該ダイシングブレード51は、スクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bの内部に配設された有機絶縁物層6bと、当該溝13bの下部に在る半導体基板1とを切断する。
【0162】
かかるダイシング処理の結果、個片化された半導体装置100に於ける半導体基板1の周囲側面には、第2の溝13bに充填された感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6bが表出される。
【0163】
即ち、当該半導体装置100の側面に於いて、第2の溝13b及び当該第2の溝13bに充填された有機絶縁物6bが表出する。
【0164】
そして、かかるダイシング処理にあっては、スクライブ領域IIに於ける低誘電率絶縁体を含む多層配線構造部が、当該ダイシングブレード51によって切断されることが生ぜず、従って、当該多層配線層2に於ける層間絶縁層4の剥離などが生じない。
【0165】
かかるダイシング処理の際、スクライブ領域IIには平行する4本の溝13があり、それぞれの溝13内には有機絶縁物6が充填されていることから、当該スクライブ領域IIの視認性は高く、ダイシングブレード51の位置合わせを容易に、且つ高い精度をもって行うことができる。
【0166】
また、当該ダイシング処理の際、ダイシングブレード51により大きな圧力が加わるが、当該圧力は、二つの溝13a,13b内に充填されている有機絶縁物6a,6bによって吸収・緩和され、半導体素子領域Iに対して大きな圧力が加えられることがない。
【0167】
かかるダイシング処理によって個片化された半導体装置100は、前記図2に示す断面構造を有する。
【0168】
当該半導体装置100に於いて、その周囲側面には、半導体素子領域Iからみて外側に配設されている溝13bの内部に配設された有機絶縁物層6bと、当該有機絶縁物層6bの下部に在る半導体基板1が表出されている。
【0169】
即ち、かかる構造にあっては、半導体装置100の周囲側面には低誘電率絶縁体を含む多層配線構造部は表出されておらず、もって当該多層配線構造部に於ける層間絶縁層4の剥離などを招来しない。
【0170】
また、これにより、半導体装置の周囲側面から半導体素子領域に至る沿面距離が増加し、当該半導体素子領域への水分の浸透が効果的に防止される。
[第2実施形態]
本発明による半導体装置の第2の実施形態について、その製造方法と共に説明する。
【0171】
<半導体装置>
本発明の第2の実施の形態に於ける半導体装置200を、図11に示す。尚、図11は、前記図2に示す部位に対応する箇所の断面を示している。
【0172】
図示される如く、半導体装置200に於いても、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、半導体素子領域Iの絶縁層上に於いて、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設されている。
【0173】
また、各配線層間は、図示されていない層間接続部を介して相互に接続されている。
【0174】
当該第2の実施の形態に於ける半導体装置200は、半導体素子領域Iを囲繞する溝部に配設される有機絶縁物層の配設形態が、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100と異なっている。
【0175】
従って、第2の実施の形態に於ける半導体装置200に於いて、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100に対応する部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0176】
本第2の実施の形態に於ける半導体装置200にあっては、半導体素子領域Iの周囲に配設された第1の溝13a内に充填された有機絶縁物6aならびに第2の溝13b内に充填された有機絶縁物6b上に、積層された有機絶縁物からなる有機絶縁物層26が配設されている。
【0177】
そして、両溝上に於ける有機絶縁物層26は、当該第1の溝13aと第2の溝13bとの間に位置する多層配線層2上を被覆して、即ち所定の幅をもって帯状に一体化されて、半導体素子領域Iを囲繞している。
【0178】
当該有機絶縁物層26は、前記半導体素子領域I上に配設された有機絶縁物層10からは離間し、且つ当該半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0179】
そして、半導体基板1の側面と連続する側面を有している。
【0180】
即ち、本第2の実施形態に於ける半導体装置200にあっても、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が、二重に配設され、更に当該溝13内に有機絶縁物が充填されている。
【0181】
当該二重の溝13a,溝13bは、それぞれ多層配線層2を貫通して半導体基板1に達している。
【0182】
これにより、当該半導体装置200の側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの、半導体基板表面の沿面距離が大きく形成され、また有機絶縁物6と層間絶縁層2との界面が連続しておらず、当該側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの水分の浸透を有効に抑制・防止することができる。
【0183】
また、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が二重に配設され、当該溝13a内に有機絶縁物6aが、溝13b内に有機絶縁物6bが充填されていることにより、ダイシング処理の際、機械的ストレスが半導体素子領域Iへ加わることが緩和・防止される。
【0184】
これにより、当該半導体素子領域Iに於いて多層配線構造を形成している低誘電率層間絶縁層4の剥離などを防止することができる。
【0185】
更に、半導体素子領域上に配設された有機絶縁物層からは離間して配設され、帯状に一体化された有機絶縁物層26の存在により、スクライブ領域IIを容易に確認することができる。
【0186】
<半導体装置の製造方法>
次に、本第2の実施形態に於ける半導体装置200の製造方法について、図12乃至図15を用いて説明する。
【0187】
此処では、スクライブ領域IIと、その両側に位置する二つの半導体素子領域I−A,I−Bそれぞれの一部を示している。
【0188】
本第2の実施形態に於ける半導体装置200の製造方法に於いては、二つの溝13a、13bの間を含む幅をもってマスクを配置し、有機絶縁物層6に対して露光処理を行う。
【0189】
半導体基板1の一方の主面に、複数個の半導体素子領域Iを形成し、当該半導体素子領域I間に在るスクライブ領域IIに於ける多層配線構造部に対し複数の溝を形成する工程は、前記第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0190】
当該溝は、スクライブ領域の幅方向の両端側近傍に於いて、各半導体素子領域の周縁に沿って、線状に2条(2行)形成される。
【0191】
次いで、前記溝13、開口8を含む表面保護層5上に、有機絶縁物層6を形成する。
【0192】
当該有機絶縁物層6は、回転塗布法により被着される。
【0193】
当該有機絶縁物層6は、ポジ型の感光性を有するポリイミドから形成され、前記溝13内に充填されると共に、表面保護層5上に於いて、4μm〜8μmの厚さをもって形成される。
【0194】
しかる後、前記有機絶縁物層6上に露光用マスク43を配置する。
【0195】
当該露光用マスク43に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部43aと、二つの溝と半導体素子領域Iとの間に跨がる開口部43b、ならびに当該半導体素子領域Iに於ける電極パッド9に対応する開口部43cが設けられている。
【0196】
尚、ここでは当該露光用マスク43に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0197】
そして、当該露光用マスク43を通して、前記有機絶縁物層6に露光処理を行う(図12(a)参照)。
【0198】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記有機絶縁物層6は選択的に除去され、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層6も除去される。
【0199】
この時、当該スクライブ領域II内に配設されているところの二つの溝13a,13b内に充填された有機絶縁物層6は、当該溝を埋めた状態をもって残されると共に、当該二つの溝の間に在る多層配線構造部上にも残され、帯状に一体化されて、半導体素子領域Iを囲繞する。
【0200】
当該帯状に一体化された有機絶縁物層6sは、半導体素子領域Iに於ける有機絶縁物層6から離間して配設される。
【0201】
また、半導体素子領域Iに於いて、電極パッド9を覆う有機絶縁物層6には、開口8が形成される(図12(b)参照)。
【0202】
しかる後、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様の方法により、当該有機絶縁物層6上に、銅(Cu)配線層(再配線層)7を形成する(図13(a)参照)。
【0203】
次いで、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様の方法により、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部上、露出している有機絶縁物層6上ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7上を覆って、第2の有機絶縁物層10を形成する(図13(b)参照)。
【0204】
当該第2の有機絶縁物層10も、ポジ型の感光性を有するポリイミド層から構成される。
【0205】

しかる後、前記有機絶縁物層10上に、露光用マスク44を配置する。
【0206】
当該露光用マスク44に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部44a、当該スクライブ領域と半導体素子領域Iの間に於ける開口部44b、ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッドに対応する開口部44cが設けられている。
【0207】
尚、ここでは当該露光用マスク44に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0208】
そして、当該露光用マスク44を通して、第2の有機絶縁物層10に露光処理を行う(図14(a)参照)。
【0209】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記第2の有機絶縁物層10は選択的に除去され、前記銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッド上に開口11が形成される。
【0210】
前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層も除去されるが、当該スクライブ領域IIに内に配設されているところの溝13内に充填され、二つの溝の間に在る多層配線構造部上にも残されて帯状に一体化された有機絶縁物層6s、ならびに当該有機絶縁物層6s上に配設された第2の有機絶縁物層10sは積層状態をもって残存する。
【0211】
一方、半導体素子領域Iにあっては、有機絶縁物層6の端部を覆って、第2の有機絶縁物層10が配設される。
【0212】
当該半導体素子領域Iに於ける第2の有機絶縁物層10と、スクライブ領域IIに於いて溝13を充填して配設された有機絶縁物層6sと有機絶縁物層10sの積層構造部26とは離間している(図14(b)参照)。
【0213】
しかる後、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部上、露出している有機絶縁物層6、第2の有機絶縁物層10ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、ニッケル(Ni)層/銅(Cu)層/チタン(Ti)層の積層体からなる金属層15を形成する。
【0214】
そして、電気めっき(電解めっき)法を適用して、当該金属層15上にはんだ層12sを比較的厚く被着する。当該はんだ層12sは、所謂無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)をもって形成する。
【0215】
当該はんだ層12sをリフローすることにより、その形状をほぼ球状を呈するものに変換して、外部接続用端子12を形成する(図15(a)参照)。
【0216】
しかる後、当該半導体基板1に対し、ダイシングブレード51を適用したダイシング処理(個片化処理)を実施する。
【0217】
かかるダイシング処理に於いても、ダイシングブレード51の板厚(刃厚)tは、前記半導体素子200に於ける外側の溝13b、即ち二つの半導体素子領域Iの間に於けるスクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bに対し、それぞれの溝13bの略中央部の間に跨がる厚さが選択される(図15(b)参照)。
【0218】
尚、当該図15(b)に於いては、ダイシングブレード51の要部断面形状を、破線をもって示している。
【0219】
従って、当該ダイシングブレード51は、有機絶縁物6sと無機絶縁層10sとの積層部26、スクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bの内部に配設された有機絶縁物層6b、及び当該溝13bの下部に在る半導体基板1とを切断することとなる。
【0220】
かかるダイシング処理の結果、個片化された半導体装置200に於ける半導体基板1の周囲側面には、第2の溝13bに充填された感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6b,有機絶縁物10sの積層部が表出される。
【0221】
即ち、当該半導体装置200の側面に於いて、第2の溝13b及び当該第2の溝13bに充填された有機絶縁物6bと有機絶縁物10sとの積層部26が表出する。
【0222】
この時、当該スクライブ領域IIに於ける低誘電率絶縁体を含む多層配線構造部が、当該ダイシングブレード51によって切断されることが生ぜず、従って、当該多層配線構造部に於ける層間絶縁層4の剥離などは生じない。
【0223】
かかるダイシング処理の際、スクライブ領域IIには、半導体基板1に於いて帯状に一体化された有機絶縁物層26が存在することから、当該スクライブ領域IIの視認性は高く、ダイシングブレード51の位置合わせを容易に、高い精度をもって行うことができる。
【0224】
また、当該ダイシング処理の際、ダイシングブレード51により大きな圧力が加わるが、当該圧力は、二つの溝13a,13bのそれぞれに充填された有機絶縁物6b、ならびに積層された有機絶縁物層26によって吸収・緩和され、半導体素子領域Iに対して大きな圧力が加えられることはない。
【0225】
かかるダイシング処理によって個片化された半導体装置200は、前記図11に示す断面構造を有する。
【0226】
この様な製造方法に於いては、スクライブ領域II内に配設されているところの二つの溝内に充填された有機絶縁物層6a,6bは、当該溝を埋めた状態をもって残される。
【0227】
また当該溝を埋めた有機絶縁物層6上には、当該二つの溝間の多層配線構造部上に延在する有機絶縁物層26が一体に残され、帯状に半導体素子領域を囲繞する。
【0228】
かかる構造に於いても、ダイシングブレードを適用したダイシング処理の際、半導体装置の周囲側面には低誘電率絶縁体を含む多層配線構造体は表出されず、当該多層配線構造体に於ける層間絶縁層の剥離などを招来しない。
[第3実施形態]
本発明による半導体装置の第3の実施形態について、その製造方法と共に説明する。
【0229】
<半導体装置>
本発明の第3の実施の形態に於ける半導体装置300を、図16に示す。尚、図16は、前記図2に対応する箇所の断面を示している。
【0230】
図示される如く、半導体装置300に於いても、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、半導体素子領域Iの絶縁層上に於いて、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設されている。
【0231】
また、各配線層間は、図示されていない層間接続部を介して相互に接続されている。
【0232】
当該第3の実施の形態に於ける半導体装置300も、半導体素子領域Iを囲繞する溝部に配設される有機絶縁物層の配設形態が、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100と異なっている。
【0233】
従って、第3の実施の形態に於ける半導体装置300に於いて、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100に対応する部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0234】
本第3の実施の形態に於ける半導体装置300にあっては、前記第1の溝13a内ならびに第2の溝13b内に充填された有機絶縁物6a,6b上に、有機絶縁物層6s,有機絶縁物層10sが積層状態をもって配設されている。
【0235】
そして、溝13aならびに溝13b上に於ける有機絶縁物層6sと有機絶縁物層10sの積層体は、当該溝13の有する幅に対応する幅をもって帯状に配設され、半導体素子領域Iを二重に囲繞している。
【0236】
即ち、半導体素子領域I側の溝13a上に配設された積層有機絶縁物層26aは、当該半導体素子領域I上に配設された有機絶縁物層からは離間し、且つ当該半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0237】
一方、他方の溝13b上に配設された積層有機絶縁物層26bは、半導体素子領域側Iに配設された積層有機絶縁物層26aからは離間し、且つ半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0238】
そして、当該半導体基板1の側面と連続する側面を有している。
【0239】
即ち、本第3の実施形態に於ける半導体装置300にあっても、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2に於ける層間絶縁層4を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が、二重に配設され、更に当該溝13内に有機絶縁物6が充填されている。
【0240】
当該二重の溝13a,溝13bは、それぞれ多層配線層2を貫通して半導体基板1に達している。
【0241】
そして、当該溝13a,13b内には、感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6aが充填されている。
【0242】
溝13a内に充填された有機絶縁物6aは、所定の高さをもって多層配線層2から突出して有機絶縁物層6sを構成し、その上面に有機絶縁物層10sが積層配置され、積層有機絶縁物層26aが形成されている。
【0243】
当該積層有機絶縁物層26aは、前記半導体素子領域Iに於ける有機絶縁物層10からは離間している。
【0244】
一方、溝13b内に充填された有機絶縁物6bも所定の高さをもって多層配線層2から突出して有機絶縁物層6sを構成し、当該有機絶縁物層6sと有機絶縁物層10sとの積層有機絶縁物層26bは、前記積層有機絶縁物層26aからは離間している。
【0245】
これにより、当該半導体基板1の側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの、半導体基板表面の沿面距離が大きく形成され、また有機絶縁物と層間絶縁層との界面が連続しておらず、当該側面或いは縁部から半導体素子領域Iへの水分の浸透を有効に抑制・防止することができる。
【0246】
また、半導体素子領域Iの周囲を囲繞し、且つ多層配線層2を貫通して半導体基板1に至る深さを有する溝13が二重に配設され、当該溝13内に有機絶縁物6が充填されていることにより、ダイシング処理の際、機械的ストレスが半導体素子領域Iへ加わることが緩和・防止される。
【0247】
これにより、当該半導体素子領域Iに於いて多層配線構造を形成している低誘電率層間絶縁層4の剥離などを防止することができる。
【0248】
更に、半導体素子領域I上に配設された有機絶縁物層10からは離間して、二条の帯状に配設された有機絶縁物層の存在により、スクライブ領域IIを容易に確認することができる。
【0249】
<半導体装置の製造方法>
次に、本第3の実施形態に於ける半導体装置300の製造方法について、図17乃至図20を用いて説明する。
【0250】
此処では、スクライブ領域IIと、その両側に位置する二つの半導体素子領域I−A,I−Bそれぞれの一部を示している。
【0251】
本第3の実施形態に於ける半導体装置300の製造方法に於いては、二つの溝13a、13bの間を表出するマスクを配置し、有機絶縁物層6に対して露光処理を行う。
【0252】
半導体基板1の一方の主面に、複数個の半導体素子領域Iを形成し、当該半導体素子領域I間に在るスクライブ領域IIに於ける多層配線構造部に対し複数の溝を形成する工程は、前記第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0253】
当該溝13は、スクライブ領域IIの幅方向の両端側近傍に於いて、各半導体素子領域Iの周縁に沿って、線状に2条(2行)形成される。
【0254】
次いで、前記溝13、開口8を含む表面保護層5上に、有機絶縁物層6を形成する。
【0255】
当該有機絶縁物層6は、回転塗布法により被着される。
【0256】
当該有機絶縁物層6は、ポジ型の感光性を有するポリイミドから形成され、前記溝13内に充填されると共に、表面保護層5上に於いて、4μm〜8μmの厚さをもって形成される。
【0257】
次いで、前記有機絶縁物層6上に露光用マスク45を配置する。
【0258】
当該露光用マスク45に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部45a、前記二つの溝間に対応する開口45b、当該溝部と半導体素子領域Iとの間に於ける開口部45c、ならびに半導体素子領域に於ける電極パッド9に対応する開口部45dが設けられている。
【0259】
尚、ここでは当該露光用マスク45に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0260】
そして、当該露光用マスク45を通して前記有機絶縁物層6に露光処理を行う(図17(a)参照)。
【0261】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記有機絶縁物層6は選択的に除去され、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層6も選択的に除去される。
【0262】
この時、スクライブ領域II内に配設されているところの溝13a及び溝13b内に充填された有機絶縁物層6は、当該溝13を埋めた状態をもって残されると共に、当該溝13a,溝13bそれぞれの上に、多層配線層上面からある高さ(厚さ)をもって帯状に残され、半導体素子領域Iを囲繞する。
【0263】
当該帯状に残された有機絶縁物層6は、半導体素子領域Iを覆う有機絶縁物層6から離間して配設される。
【0264】
また、半導体素子領域Iに於いて電極パッド9を覆う有機絶縁物層6には、開口8が形成される(図17(b)参照)。
【0265】
しかる後、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様な方法により、当該有機絶縁物層6上に、銅(Cu)配線層(再配線層)7を選択的に形成する(図18(a)参照)。
【0266】
次いで、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様な方法により、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部、露出している有機絶縁物層6ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、第2の有機絶縁物層10を形成する(図18(b)参照)。
【0267】
当該第2の有機絶縁物層10も、ポジ型の感光性を有するポリイミド層から構成される。
【0268】
しかる後、前記有機絶縁物層10上に、露光用マスク46配置する。
【0269】
当該露光用マスク46に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部46a、前記二つの溝間に対応する開口46b、当該溝部と半導体素子領域Iとの間に於ける開口部46c、ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッドに対応する開口部46dが設けられている。
【0270】
尚、ここでは当該露光用マスク46に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0271】
そして、当該露光用マスク46を通して、第2の有機絶縁物層10に露光処理を行う(図19(a)参照)。
【0272】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記第2の有機絶縁物層10は選択的に除去され、前記銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッド上に開口11が形成される。
【0273】
また、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層も除去されるが、当該スクライブ領域II内に配設されているところの溝13内に充填された有機絶縁物の上部6s、ならびにその上に形成された第2の有機絶縁物層10sは積層状態をもって残存する。
【0274】
一方、半導体素子領域Iにあっては、有機絶縁物層6の端部を覆って、第2の有機絶縁物層10が配設される。
【0275】
当該半導体素子領域Iに於ける第2の有機絶縁物層10は、前記スクライブ領域IIに於いて溝13aを覆って配設された無機絶縁物層6sと無機絶縁物層10sとの積層有機絶縁物層26aから離間している(図19(b)参照)。
【0276】
次いで、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部上、露出している有機絶縁物層6、第2の有機絶縁物層10ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、ニッケル(Ni)層/銅(Cu)層/チタン(Ti)層の積層体からなる金属層15を形成する。
【0277】
そして、電気めっき(電解めっき)法を適用して、当該金属層15上にはんだ層12sを比較的厚く被着する。当該はんだ層12sは、所謂無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)をもって形成する。
【0278】
当該はんだ層12sをリフローすることにより、その形状をほぼ球状を呈するものに変換して、外部接続用端子12を形成する(図20(a)参照)。
【0279】
しかる後、当該半導体基板1に対しダイシングブレード51を適用したダイシング処理(個片化処理)を実施する。
【0280】
かかるダイシング処理に於いても、ダイシングブレード51の板厚(刃厚)tは、前記半導体素子に於ける外側の溝、即ち二つの半導体素子領域I間に於けるスクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bに対し、それぞれの溝13bの略中央部の間に跨がる厚さが選択される(図20(b)参照)。
【0281】
尚、当該図20(b)に於いては、ダイシングブレード51の要部断面形状を、破線をもって示している。
【0282】
従って、当該ダイシングブレード51は、スクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bの内部に配設された有機絶縁物層6bと、有機絶縁物層6sと第2の有機絶縁物層10sとの積層有機絶縁物層26b、ならびに当該溝13bの下部に在る半導体基板1とを切断することとなる。
【0283】
かかるダイシング処理の結果、個片化された半導体装置300に於ける半導体基板1の周囲側面には、第2の溝13bに充填された感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6b,有機絶縁物10bの積層構造体26bが表出される。
【0284】
即ち、当該半導体装置300の側面に於いて、第2の溝13b及び当該第2の溝13bに充填された有機絶縁物6bと有機絶縁物10bとの積層構造部26bが表出する。
【0285】
即ち、かかる製造方法によれば、スクライブ領域IIに於ける低誘電率絶縁体を含む多層配線構造部が、ダイシングブレード51によって切断されることが生ぜず、従って、当該多層配線構造部に於ける層間絶縁層4の剥離などは生じない。
【0286】
また、かかるダイシング処理の際、スクライブ領域IIには、帯状に平行する4本(4条)の有機絶縁物層があることから、当該スクライブ領域IIの視認性は高く、ダイシングブレード51の位置合わせを容易に、且つ高い精度をもって行うことができる。
【0287】
そして、当該ダイシング処理の際、ダイシングブレード51により大きな圧力が加わるが、当該圧力は、二つの溝13b内に充填されている有機絶縁物6、ならびに有機絶縁物層6s,有機絶縁物層10からなる積層有機絶縁物層26によって吸収・緩和され、半導体素子領域Iに対して大きな圧力が加えられることはない。
【0288】
かかるダイシング処理によって個片化された半導体装置300は、前記図16に示す断面構造を有する。
【0289】
この様な製造方法に於いては、スクライブ領域II内に配設されているところの二つの溝内に充填された有機絶縁物層は、当該溝を埋め且つ多層配線層2上に、相当の高さ(厚さ)をもって残される。
【0290】
かかる構造に於いても、ダイシングブレード51を適用したダイシング処理の際、半導体装置300の周囲側面には、低誘電率絶縁体を含む多層配線構造体は表出されず、当該多層配線構造体に於ける層間絶縁層4の剥離などを招来しない。
[第4実施形態]
本発明による半導体装置の第4の実施形態について、その製造方法と共に説明する。
【0291】
<半導体装置>
本発明の第4の実施の形態に於ける半導体装置400を、図21に示す。尚、図21は、前記図2に示す部位に対応する箇所の断面を示している。
【0292】
図示される如く、半導体装置400に於いても、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、半導体素子領域Iの絶縁層上に於いて、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設されている。
【0293】
また、各配線層間は、図示されていない層間接続部を介して相互に接続されている。
【0294】
当該第4の実施の形態に於ける半導体装置400も、半導体素子領域Iを囲繞する溝部に配設される有機絶縁物層の配設形態が、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100と異なっている。
【0295】
従って、第4の実施の形態に於ける半導体装置400に於いて、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100に対応する部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0296】
即ち、本第4の実施の形態に於ける半導体装置400にあっては、前記第1の溝13a内、ならびに第2の溝13b内に、有機絶縁物が二重に積層された状態をもって充填されている。
【0297】
そして、両溝内に於いて二重に積層された有機絶縁物層は、半導体素子領域Iを囲繞している。
【0298】
即ち、半導体素子領域I側の溝13a内に於いて二重に充填された有機絶縁物層は、当該半導体素子領域I上に配設された有機絶縁物層からは離間し、且つ当該半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0299】
他方の溝13b内に二重に充填された有機絶縁物層は、前記溝13aから離間し、且つ前記半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0300】
そして、当該半導体基板1の側面と連続する側面を有している。
【0301】
本第4の実施の形態による半導体装置400にあっては、溝13a、溝13bの下部に有機絶縁物層6nが埋め込まれ、当該溝13a、溝13bの上部に第2の有機絶縁物層10pが埋め込まれている。
【0302】
即ち、溝13a、溝13bに於いて、その下部には、それぞれ有機絶縁物6a,6bが充填さている。
【0303】
当該有機絶縁物6a,6bは、半導体素子領域I上の有機絶縁物層6と同様の有機絶縁物により形成されている。
【0304】
当該二重の溝13a,溝13bは、それぞれ多層配線層2を貫通して半導体基板1に達している。
【0305】
そして、当該有機絶縁物6a,有機絶縁物6bそれぞれの上部に形成された凹部16には、当該凹部16内を埋めて有機絶縁物10a,有機絶縁物10bが充填されている。
【0306】
当該有機絶縁物10a,10bは、半導体素子領域I上の有機絶縁物層10と同様の有機絶縁物により形成されている。
【0307】
本第4の実施形態において、溝13の下部に配置された有機絶縁6の上部に凹部16が形成され、当該凹部16内を埋めて有機絶縁物10が充填されるのは、以下の様な理由による。
【0308】
即ち、有機絶縁層6に対する選択的露光処理工程に於いて、その露光条件及び/或いは溝の形状、寸法などによりにより、溝13a、溝13b内に充填された有機絶縁物層6の上部が感光してしまう場合、現像処理により、当該溝内に充填された有機絶縁物6の上部が除去されて、凹部16が生じる。
【0309】
かかる場合、後工程において形成される有機絶縁物層10が、当該凹部16内を埋めて溝内に充填される。
【0310】
この様な理由により、本第4の実施形態に於いては、溝13a、溝13bそれぞれの下部には有機絶縁物6が充填され、当該溝13a、溝13bの上部には有機絶縁物6に形成された凹部16を埋めて有機絶縁物10が充填されている。
【0311】
<半導体装置の製造方法>
次に、本第4の実施形態に於ける半導体装置の製造方法について、図22乃至図25を用いて説明する。
【0312】
此処では、スクライブ領域IIと、その両側に位置する二つの半導体素子領域I−A,I−Bそれぞれの一部を示している。
【0313】
本第4の実施形態による半導体装置400の製造方法に於いては、溝13a、13b内に充填されて形成された有機絶縁物層6に対して過剰な露光処理を行う。
【0314】
半導体基板1の一方の主面に、複数個の半導体素子領域Iを形成し、当該半導体素子領域I間に在るスクライブ領域IIに於ける多層配線構造部に対し複数の溝を形成する工程は、前記第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0315】
当該溝13は、スクライブ領域IIの幅方向の両端側近傍に於いて、各半導体素子領域Iの周縁に沿って、線状に2条(2行)形成される。
【0316】
次いで、前記溝、開口20を含む表面保護層5上に、有機絶縁物層6を形成する。
【0317】
当該有機絶縁物層6は、回転塗布法により被着される。
【0318】
当該有機絶縁物層6は、ポジ型の感光性を有するポリイミドから形成され、前記溝内に充填されると共に表面保護層5上に於いて、4μm〜8μmの厚さをもって形成される。
【0319】
次いで、前記有機絶縁物層6上に露光用マスク47を配置する。
【0320】
当該露光用マスク47に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部47a、ならびに半導体素子領域Iに於ける電極パッド9に対応する開口部47dが設けられている。
【0321】
尚、ここでは当該露光用マスク47に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0322】
そして、当該露光用マスク47を通して前記有機絶縁物層6に露光処理を行う(図22(a)参照)。
【0323】
この時、少なくともスクライブ領域II内に配設されているところの二つの溝内に充填された有機絶縁物層6に対して、過剰な露光量を与える。
【0324】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記有機絶縁物層6は選択的に除去され、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層6も除去される。
【0325】
この時、当該有機絶縁物層6は、溝13a,溝13bの底部に残された状態をもって溝内に帯状に残され、前記半導体素子領域Iを囲繞する。
【0326】
また、半導体素子領域Iに於いて電極パッド9を覆う有機絶縁物層6には、開口8が形成される(図22(b)参照)。
【0327】
溝13aの底部に帯状に残された有機絶縁物層6aは、半導体素子領域Iを覆う有機絶縁物層6から離間して配設される。
【0328】
当該溝13a、ならびに溝13b内に帯状に残された有機絶縁物層6bの上面には、それぞれ凹部16が形成されている。
【0329】
尚、二つの溝13a,13bの形状或いは寸法によっても、有機絶縁物層6は、当該溝の底部を埋めた状態をもって帯状に残される。
【0330】
しかる後、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様な方法により、当該有機絶縁物層6上に、銅(Cu)配線層(再配線層)7を形成する。
【0331】
そして、前記第1の実施の形態に於ける製造方法と同様な方法により、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部上、露出している有機絶縁物層6ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、第2の有機絶縁物層10を形成する。
【0332】
当該第2の有機絶縁物層10も、ポジ型の感光性を有するポリイミド層から構成される。
【0333】
しかる後、前記有機絶縁物層10上に、露光用マスク48配置する。
【0334】
当該露光用マスク48に於けるマスク層には、前記スクライブ領域IIに対応する開口部48a、ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッドに対応する開口部48bが設けられている。
【0335】
尚、ここでは当該露光用マスク48に於けるマスク層のみを示しているが、当該マスク層は図示されない透明基板の表面に配設され、支持されている。
【0336】
そして、当該露光用マスク48を通して、第2の有機絶縁物層10に露光処理を行う(図23(a)参照)。
【0337】
当該露光処理の後、現像処理を行うことにより、前記第2の有機絶縁物層10は選択的に除去され、前記銅(Cu)配線層(再配線層)7に於ける電極パッド上に開口11が形成される。
【0338】
また、前記スクライブ領域II上の有機絶縁物層10も除去されるが、当該スクライブ領域II内に配設されているところの溝13の底部に充填された有機絶縁物層6a,6b、ならびにその上に充填された第2の有機絶縁物層10a,10bは、それぞれ積層状態をもって残存する。
【0339】
一方、半導体素子領域Iにあっては、有機絶縁物層6の端部を覆って、第2の有機絶縁物層10が配設される。
【0340】
当該半導体素子領域Iに於ける第2の有機絶縁物層10は、スクライブ領域IIに於いて溝13a内に配設された有機絶縁物層10aから離間している(図23(b)参照)。
【0341】
しかる後、前記表面保護層5上、露出している多層配線構造部上、露出している有機絶縁物層6、第2の有機絶縁物層10ならびに銅(Cu)配線層(再配線層)7を覆って、ニッケル(Ni)層/銅(Cu)層/チタン(Ti)層の積層体からなる金属層15を形成する。
【0342】
そして、電気めっき(電解めっき)法を適用して、当該金属層15上にはんだ層12sを比較的厚く被着する。当該はんだ層12sは、所謂無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)をもって形成する。
【0343】
当該はんだ層12sをリフローすることにより、その形状をほぼ球状を呈するものに変換して、外部接続用端子12を形成する(図24(a)参照)。
【0344】
しかる後、当該半導体基板1に対しダイシングブレード51を適用したダイシング処理(個片化処理)を実施する。
【0345】
かかるダイシング処理に於いても、ダイシングブレード51の板厚(刃厚)tは、前記半導体素子に於ける外側の溝、即ち二つの半導体素子領域間に於けるスクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bに対し、それぞれの溝の略中央部の間に跨がる厚さが選択される(図24(b)参照)。
【0346】
尚、当該図24(b)に於いては、ダイシングブレード51の要部断面形状を、破線をもって示している。
【0347】
従って、当該ダイシングブレード51は、スクライブ領域IIの中央からみて内側に配設されている二つの溝13bの内部に配設された有機絶縁物(有機絶縁物6bと有機絶縁物10bとの積層構造体)と、当該溝13bの下部に在る半導体基板1とを切断する。
【0348】
かかるダイシング処理の結果、個片化された半導体装置400に於ける半導体基板1の周囲側面には、第2の溝13bに充填された感光性ポリイミドからなる有機絶縁物6b,有機絶縁物10bの積層構造が表出される。
【0349】
即ち、当該半導体装置400の側面に於いて、第2の溝13b及び当該第2の溝13bに充填された有機絶縁物6bと有機絶縁物10bとの積層構造部が表出する。
【0350】
即ち、かかる製造方法によれば、スクライブ領域IIに於ける低誘電率絶縁体を含む多層配線構造部が、ダイシングブレード51によって切断されることが生ぜず、従って、当該多層配線構造部に於ける層間絶縁層4の剥離などは生じない。
【0351】
かかるダイシング処理によって個片化された半導体装置400は、前記図21に示す断面構造を有する。
【0352】
かかるダイシング処理の際、スクライブ領域IIには、帯状に平行する4本(4条)の有機絶縁物層があることから、当該スクライブ領域IIの視認性は高く、ダイシングブレード51の位置合わせを容易に、高い精度をもって行うことができる。
【0353】
また、当該ダイシング処理の際、ダイシングブレード51により大きな圧力が加わるが、当該圧力は、二つの溝13a,溝13b内に積層されて充填されている有機絶縁物層によって吸収・緩和され、半導体素子領域Iに対して大きな圧力が加えられることはない。
[第5実施形態]
本発明による半導体装置の第5の実施形態について説明する。
【0354】
<半導体装置>
本発明の第5の実施の形態に於ける半導体装置500を、図25に示す。尚、図25は、前記図2に示す部位に対応する箇所の断面を示している。
【0355】
図示される如く、半導体装置500に於いても、複数の配線層3が、それぞれ一本の実線をもって描かれているが、個々の配線層3は、半導体素子領域Iの絶縁層上に於いて、それぞれ電源線、接地線、ならびに信号線などに分割され、前記機能素子の部位に対応して、延在・配設されている。
【0356】
また、各配線層間は、図示されていない層間接続部を介して相互に接続されている。
【0357】
当該第5の実施の形態に於ける半導体装置500も、半導体素子領域Iを囲繞する溝部に配設される有機絶縁物層の配設形態が、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100と異なっている。
【0358】
従って、第5の実施の形態に於ける半導体装置500に於いて、前記第1の実施の形態に於ける半導体装置100に対応する部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0359】
本第5の実施の形態に於ける半導体装置500にあっては、半導体素子領域Iを囲繞する第1の溝13a内ならびに第2の溝13b内に於いて、有機絶縁物が二重に積層された状態をもって充填され、且つ当該有機絶縁層は所定の高さをもって多層配線層2から突出している。
【0360】
そして、両溝内に於いて積層された有機絶縁物層は、半導体素子領域Iを囲繞している。
【0361】
即ち、半導体素子領域I側の溝13a内に二重に充填された有機絶縁物は、当該半導体素子領域I上に配設された有機絶縁物層からは離間し、且つ当該半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0362】
他方の溝13b内に二重に充填された有機絶縁物は、半導体素子領域I側に配設された溝13aに充填された有機絶縁物層からは離間し、且つ前記半導体素子領域Iを囲繞して配設されている。
【0363】
そして、半導体基板1の側面と連続する側面を有している。
【0364】
本第5の実施の形態による半導体装置500にあっては、溝13a、13bの下部に有機絶縁物6a,6bが埋め込まれ、当該溝13a、溝13bの上部に有機絶縁物10a,10bが埋め込まれて、更に当該有機絶縁物10a,10bは所定の高さをもって多層配線層2から突出している。
【0365】
かかる有機絶縁層を、多層配線層2から突出する厚さとすることは、前記第3の実施の形態に於ける構造と対応するものである。
【0366】
即ち、溝13a、溝13bの下部には、有機絶縁物6a,6bが充填さている。有機絶縁物層6nは、半導体素子領域Iに於ける有機絶縁物層6と同様の有機絶縁物により形成されている。
【0367】
そして、当該有機絶縁物6a,6bの上面に形成された凹部16内を埋めて、有機絶縁物層10a,10bが配設されている。
【0368】
当該有機絶縁物10a,10bは、半導体素子領域I上の有機絶縁物層(封止有機絶縁物層)10と同様の有機絶縁物から形成されている。
【0369】
本第5の実施形態において、有機絶縁層6nの上面に凹部16が形成され、当該凹部16内を埋めて有機絶縁物10a,10bが配設されるのは、前記第4の実施形態に於いて示したと同様の理由による。
【0370】
即ち、有機絶縁層6に対する選択的露光工程に於いて、露光条件及び/或いは溝の形状、寸法などを選択することにより、溝13a、溝13b内に充填された有機絶縁物6a,6bの上部の感光量を増大させて、現像処理によって当該有機絶縁物6a,6bの上部が除去されて凹部16が形成される。
【0371】
そして、後工程において被着される有機絶縁物層10が、当該凹部16を埋めて溝13内に充填され、有機絶縁物10a,10bを形成する。
【0372】
本第5の実施形態に於ける半導体装置500の製造は、前述の実施態様1乃至実施の態様4に於ける製造方法を適宜組み合わせて適用することにより、実施することが可能である。
【0373】
<変形実施形態>
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0374】
上記の実施形態にあっては、有機絶縁物材料として感光性ポリイミドを掲げたが、有機絶縁物は当該ポリイミドに限定されるものではない。
【0375】
当該有機絶縁物材料として、ベンゾシクロブテン(BCB)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ビスマレイミド樹脂等を用いることができる。
【0376】
また、上記の実施形態にあっては、ポリイミドとして、所謂ポジ型感光性を有するポリイミドを適用したが、当該ポリイミドとして、ネガ型感光性を有するポリイミドを適用することもできる。
【0377】
そして、半導体基板上に配設される二重のポリイミド層の一方をポジ型感光性を有するポリイミドから形成し、他方をネガ型感光性を有するポリイミドをもって形成することもできる。
【0378】
更に、上記の実施形態にあっては、多層配線層2の層間絶縁膜4として低誘電率膜を用いることを掲げたが、層間絶縁膜は低誘電率膜に限定されるものではない。
【0379】
層間絶縁膜として、シリコン酸化膜を用いてもよい。層間絶縁膜としてシリコン酸化膜が用いられる場合にも、ダイシングの際に脱落片が生じるのを防止し得る。
【0380】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0381】
(付記1)
複数の機能素子が配設された半導体素子領域が主面に形成された半導体基板と、
前記半導体基板の前記主面上に配設された多層配線層と、
前記多層配線層上に配設された第1の有機絶縁物層と、
前記半導体素子領域を囲繞するスクライブ領域上の前記多層配線層を貫通した溝と、
前記第1の有機絶縁物層とは離間して、前記溝内に配設された有機絶縁物と
を有することを特徴とする半導体装置。
【0382】
(付記2)
さらに、前記第1の有機絶縁物層上に配設された配線層と、
前記配線層を覆って配設された第2の有機絶縁物層と
を有することを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0383】
(付記3)
前記溝内に配設された有機絶縁物は、前記第1の有機絶縁物層を形成する有機絶縁物と同一の材料からなる
ことを特徴とする付記1の半導体装置。
【0384】
(付記4)
前記溝は、前記スクライブ領域上の前記多層配線層に並行して複数本設けられている
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0385】
(付記5)
前記溝は、第1の溝と、
前記第1の溝から離間して、且つ前記半導体素子領域を囲繞する第2の溝と
からなり、
前記第2の溝内に配設された有機絶縁物は、前記半導体基板の側面に表出されている
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0386】
(付記6)
前記多層配線層に含まれる層間絶縁層は、低誘電率絶縁物からなる
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0387】
(付記7)
付記1乃至7のいずれかに記載の半導体装置において、
前記有機絶縁物層、前記溝内の有機絶縁物は、
ポリイミド、ベンゾシクロブテン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、又は、ビスマレイミド樹脂を含む
ことを特徴とする半導体装置。
【0388】
(付記8)
半導体基板の主面上の複数の半導体素子領域のそれぞれに機能素子を形成する工程と、
前記半導体基板の前記主面上に多層配線層を形成する工程と、
前記半導体素子領域の周囲のスクライブ領域上の前記多層配線層に、前記半導体素子領域を囲繞し且つ前記多層配線層を貫く溝を形成する工程と、
前記多層配線層上及び前記溝の中に有機絶縁物層を形成する工程と、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う有機絶縁物層と前記溝内に形成された有機絶縁物を分離する工程と、
前記スクライブ領域に於いて前記半導体基板を切断する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0389】
(付記9)
前記半導体素子領域の周囲のスクライブ領域上の前記多層配線層に、前記半導体素子領域を囲繞し且つ前記多層配線層を貫く溝を形成する工程において、
複数の溝を形成する
ことを特徴とする付記8記載の半導体装置の製造方法。
【0390】
(付記10)
付記8記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機絶縁物層は、ポジ型の感光性の有機絶縁物層であり、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程は、前記スクライブ領域内の前記第1の有機絶縁物層のうちの前記溝内を除く部分の前記有機絶縁物層を感光させる工程と、感光した部分の前記有機絶縁物層を現像により除去する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0391】
(付記11)
付記8記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機絶縁物層は、ポジ型の感光性の有機絶縁物層であり、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程は、前記スクライブ領域のうちの前記溝が形成された領域を除く領域を感光させる工程と、感光した部分の前記有機絶縁物層を現像により除去する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0392】
(付記12)
付記8記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機絶縁物層は、ネガ型の感光性の有機絶縁物層であり、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程は、前記スクライブ領域のうちの前記溝が形成された領域を感光させる工程と、未感光の部分の前記有機絶縁物層を現像により除去する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0393】
(付記13)
付記8記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程の後、前記半導体基板を切断する工程の前に、
前記半導体素子領域内の前記有機絶縁物層上に、前記多層配線層に電気的に接続された配線層を形成する工程と、
前記半導体基板上に、前記配線層を覆うように他の有機絶縁物層を形成する工程と、
前記スクライブ領域内の少なくとも一部の前記他の有機絶縁物層を除去する工程とを更に有し、
前記溝を形成する工程では、各々の前記スクライブ領域内に複数の前記溝を並行するように形成し、
前記スクライブ領域内の少なくとも一部の前記他の有機絶縁物層を除去する工程では、前記他の有機絶縁物層の周縁部が、前記複数の溝のうちの最も前記半導体素子領域に近接している溝よりも前記半導体素子領域側に位置するように、前記スクライブ領域内の前記他の有機絶縁物層を除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0394】
(付記14)
付記8記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程の後、前記半導体基板を切断する工程の前に、
前記半導体素子領域内の前記有機絶縁物層上に、前記多層配線層に電気的に接続された配線層を形成する工程と、
前記半導体基板上に、前記配線層を覆うように他の有機絶縁物層を形成する工程と、
前記スクライブ領域内の少なくとも一部の前記他の有機絶縁物層を除去する工程とを更に有し、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う前記有機絶縁物層と前記溝内に形成された前記有機絶縁物を分離する工程では、前記溝内の前記有機絶縁物層のうちの上部が除去され、
前記スクライブ領域内の少なくとも一部の前記他の有機絶縁物層を除去する工程では、前記溝内のうちの前記有機絶縁物層上の部分に前記他の有機絶縁物層が残存する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0395】
100,200,300,400,500…半導体装置
I…半導体素子領域
II…スクライブ領域
1…半導体基板
2…多層配線層
3…配線層
4…層間絶縁膜
5…表面保護層
6…有機絶縁物層
7…再配線層
10…有機絶縁物層
12…外部接続用端子
13…溝
31,32,34…フォトレジスト層
41,42,43,44,45,46,47…露光用マスク
51…ダイシングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能素子が配設された半導体素子領域が主面に形成された半導体基板と、
前記半導体基板の前記主面上に配設された多層配線層と、
前記多層配線層上に配設された第1の有機絶縁物層と、
前記半導体素子領域を囲繞するスクライブ領域上の前記多層配線層を貫通した溝と、
前記第1の有機絶縁物層とは離間して、前記溝内に配設された有機絶縁物と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
さらに、前記第1の有機絶縁物層上に配設された配線層と、
前記配線層を覆って配設された第2の有機絶縁物層と
を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記溝内に配設された有機絶縁物は、前記第1の有機絶縁物層を形成する有機絶縁物と同一の材料からなる
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記溝は、前記スクライブ領域上の前記多層配線層に並行して複数本設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記溝は、第1の溝と、
前記第1の溝から離間して、且つ前記半導体素子領域を囲繞する第2の溝と
からなり、
前記第2の溝内に配設された有機絶縁物は、前記半導体基板の側面に表出されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記多層配線層に含まれる層間絶縁層は、低誘電率絶縁物からなる
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板の主面上の複数の半導体素子領域のそれぞれに機能素子を形成する工程と、
前記半導体基板の前記主面上に多層配線層を形成する工程と、
前記半導体素子領域の周囲のスクライブ領域上の前記多層配線層に、前記半導体素子領域を囲繞し且つ前記多層配線層を貫く溝を形成する工程と、
前記多層配線層上及び前記溝の中に有機絶縁物層を形成する工程と、
前記半導体素子領域上の前記多層配線層を覆う有機絶縁物層と前記溝内に形成された有機絶縁物を分離する工程と、
前記スクライブ領域に於いて前記半導体基板を切断する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体素子領域の周囲のスクライブ領域上の前記多層配線層に、前記半導体素子領域を囲繞し且つ前記多層配線層を貫く溝を形成する工程において、
複数の溝を形成する
ことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−119324(P2011−119324A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273148(P2009−273148)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】