説明

半導体装置

【課題】 信頼性および耐熱性に優れ、高出力発光可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、絶縁性基板が導電性部材により接合されてなる支持体と、該支持体に搭載される半導体素子とを有する半導体装置であって、支持体は、半導体素子102が配される凹部109と、該凹部109の側壁に配され半導体素子102を覆う透光性部材101とを備え、導電性部材は、半導体素子と電気的に接続されており、凹部109の底面に延出される第一の導電性部材110と、絶縁性基板により該第一の導電性部材110から絶縁され凹部109の側壁に配される第二の導電性部材111とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子や受光素子のような半導体素子が搭載された半導体装置、特に、高出力および高輝度の半導体発光素子が搭載され、耐熱性、放熱性および信頼性に優れる半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力の発光ダイオードやレーザーダイオードのような半導体発光素子が開発されてきている。このような半導体発光素子は、半導体素子に電力を供給するための電極を備えたパッケージ等の支持体に搭載されて半導体発光装置とされる。さらに、半導体発光装置は、支持体に形成させた電極を介して所定の電力が半導体発光素子に投入され半導体発光素子から光を出射させる。
【0003】
また、半導体発光素子は、高出力発光させるとき投入電力の増加により発熱を伴うため、半導体発光装置の高出力化には、半導体装置全体の耐熱性や放熱性の向上が必要不可欠となってきている。このような要求に答えるため、例えば、支持体の材料をセラミックスや金属材料とすることにより半導体発光素子の発熱に耐えうる構造にしたり、半導体発光素子からの発熱を支持体の裏面側より外部の実装基板側に伝達させ、半導体発光素子からの放熱性を向上させたりすることとしている(例えば、特開平2−90655号公報参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−90655号公報。
【0005】
【特許文献2】特開昭63−16644号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような半導体発光装置の一例として、セラミックスを材料とする支持基板を有する発光デバイスについて以下説明する。セラミックスを材料とする支持基板の形成方法として、まず、セラミックスを材料とする基板上に、正負一対の導体配線を導電性部材にてパターンニングして支持基板とする。そして、半導体発光素子を支持基板上に配置および固定し、上記正負一対の導体配線に対して導電性ワイヤにより電気的に接続する。さらに、半導体発光素子および導電性ワイヤを外部環境から保護するため、その基板上の所定の位置にガラスレンズを接着し、半導体素子および導電性ワイヤを気密封止する。このとき、支持基板の導体配線における短絡を防止するため、あるいは気密性の向上のため、有機系接着材料(例えばエポキシ樹脂)のような絶縁性接着材を使用する必要がある。しかしながら、有機系樹脂を接着材とすると、樹脂の硬化時において発生する反応性揮発ガスがガラスレンズ内に残留し、半導体素子や半導体素子を被覆する別の樹脂材料に悪影響を及ぼすことがある。さらに、接着材とされた樹脂材料は、半導体発光素子からの高出力光に曝される。そのため、樹脂が着色劣化したり接着力が低下したりすることにより信頼性の高い半導体装置とすることができない。
【0007】
また、セラミックスを材料とする支持体の形成方法として、種々の形状の貫通孔を有する未焼成セラミックスグリーンシートに導電体含有の樹脂ペーストによりパターニングを施した後、積層させ、焼結することにより支持体とする形成方法がある(例えば、特開昭63−16644号公報参照。)。しかしながら、このような形成方法は、導体配線および貫通孔の形状を保持しなければならないなどの理由により、焼結させる前のセラミックスグリーンシート積層体を十分に圧縮することができない。そのため、セラミックス成分の凝集密度を上げることができず、上記形成方法による支持基板の熱伝導率は、セラミックスの粉を十分に圧縮して平板状に成型させた後で焼結するセラミックス基板そのものに比べ非常に低い。したがって、上記形成方法にかかる支持基板を利用した半導体装置は、半導体素子からの発熱を効率よく外部に放熱させることができず、高出力な半導体発光装置とすることができない。
【0008】
そこで、本発明は、上述したような種々の問題点を解決し、高出力かつ信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、絶縁性部材に導電性部材が配された支持体と、該支持体に搭載される半導体素子とを有する半導体装置であって、上記支持体は、上記半導体素子が配される凹部と、少なくとも上記半導体素子を覆う透光性部材とを備え、上記導電性部材は、前記半導体素子と電気的に接続されており、上記凹部の底部に配される第一の導電性部材と、該第一の導電性部材から絶縁された上記凹部の側壁部に配される第二の導電性部材とからなり、上記透光性部材が導電性材料を介して上記凹部の側壁部に配されていることを特徴とする。これにより、耐熱性および信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0010】
また、上記側壁部は、上記半導体素子に近接する突出部を有する。これにより、半導体素子の電極との電気的接続を容易に行うことができる。また、その突出部は、半導体素子や半導体素子がフリップチップ実装された支持部材の位置決めとして利用することができる。
【0011】
また、上記第一の導電性部材は、前記凹部の側壁部の外側に延出される。これにより、外部の電極と、支持体凹部の底部に延出された導電性部材との導通を図ることが容易にできる。
【0012】
また、上記半導体素子は、同一面側に正負一対の電極を有し、該電極と接続される導体配線を有する支持部材を介して上記支持体の凹部に載置される。これにより、半導体素子を所定の位置に配置することができる。例えば、半導体素子の側面から出射する光を半導体装置に出射させるべく、凹部側壁の上面より高い位置に半導体素子を配置させた半導体装置とすることができる。
【0013】
また、上記支持体は、上記半導体素子を覆う透光性部材が導電性材料により接合されており、上記第二の導電性部材の一部は、該透光性部材の端部の外側に延出されている。これにより、外部の電極と凹部の側壁上面に延出させた導電性部材との導通をとることが容易にできる。また、支持体を構成する板材の厚みを利用して、上記第一の導電性部材が延出される位置の高さに差を設けることが容易にできる。そのため、第二の導電性部材と極性の異なる上記第一の導電性部材の延出部との判別をすることが容易にできる。
【0014】
また、上記第一の導電性部材および/または第二の導電性部材は、導電性ワイヤにて上記半導体素子と電気的に接続されている。これにより、簡易な構成の半導体装置とすることができる。
【0015】
また、上記半導体装置は、上記半導体素子から照射された光を所定の方向に出射させる反射部材を備え、上記突出部あるいは上記導電性ワイヤは、上記所定の方向の側に配されている。これにより、突出部あるいは上記導電性ワイヤが半導体素子から出射される光を遮光することがなく、光学特性に優れた半導体装置とすることができる。
【0016】
また、上記透光性部材は、上記半導体素子からの光を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された波長変換部材を備える。これにより、蛍光体により波長変換された高出力な光を出射する半導体装置とすることができる。
【0017】
また、上記波長変換部材と上記透光性部材との間に、上記半導体素子からの光のうち、400nm以下の波長の光を反射あるいは吸収する部材を有する。これにより、安全性が高く高出力な光を出射する半導体装置とすることができる。
【0018】
また、上記蛍光物質は、少なくとも上記発光素子からの光により励起され可視光領域の光を発する二種以上の蛍光体からなり、それらの蛍光体の発光が合成され白色系の混色光を発する。これにより、本発明にかかる半導体装置は、高出力な白色系の混色光を出射することができる。
【0019】
また、上記絶縁性部材は、セラミックス材料からなる。これにより、耐熱性が高く信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0020】
また、上記導電性部材は、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材、あるいは、AuおよびAgから選択された少なくとも一種を含む鑞材である。これにより、簡易な構成にて信頼性、耐熱性および放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0021】
また、上記第一の導電性部材の融点(Ta)、上記支持部材を前記支持体に接合する導電性部材の融点(Tb)および上記透光性部材を接合する導電性材料の融点(Tc)の関係は、Ta≧Tb>Tcである。すなわち、本発明における半導体装置の形成方法において、後工程で取り付けられる構成部材の接合材の融点を低くさせてある。これにより、先に取り付けた構成部材の剥離を生じさせることなく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0022】
また、上記支持体と上記透光性部材とからなる中空部に封入されたガスのリーク量が1×10−6Pa・m/sec以下であることが好ましい。これにより、気密性の高い半導体装置とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる半導体装置の支持基板は、絶縁性部材の接合材としての導電性部材を半導体素子に電力を供給する導体配線としても利用することができるため、簡易な構成にて耐熱性および放熱性の高い半導体装置とすることができる。また、本発明の支持体は、その支持体に施される導体配線の正負絶縁分離を絶縁性基板の厚みを利用して行っており、透光性部材を接着しようとする同一の主面側に極性の異なる導体配線が配されることがない。したがって、透光性部材は、上述したような課題を有する樹脂系接着材を接着材として用いることなく、導電性部材にて透光性部材を主面側に接着して固定することができる。これにより、絶縁性基板に施される導電性部材に対して透光性部材を導電性材料にて接着させることもでき、透光性部材を支持体に強固に固定することができるとともに、簡易な構成で信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置を例示するものであって、本発明は半導体装置を以下に限定するものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0025】
絶縁性部材に導電性部材が配されてなる支持体と、該支持体に搭載される半導体素子とを有する半導体装置において、上述したような課題を解決するため、本発明者らは種々の検討を行った。その結果、支持体は、半導体素子を載置する凹部109を有し、導電性部材は、凹部109の底部109bに露出して配される第一の導電性部材110と、絶縁性基板により該第一の導電性部材110から絶縁され凹部109の側壁部109aに配される第二の導電性部材111とからなることを特徴とすることにより、簡易な構成で耐熱性および信頼性の高い半導体装置とすることができるに至った。
【0026】
すなわち、本発明における支持体は、複数の絶縁性部材が導電性部材により接合されてなる。この導電性部材は、絶縁性部材を接合するとともに、支持体における導体配線ともなるものである。図1および図2を参照してより具体的に説明すると、支持体を形成する絶縁性基板の主面に配された導電性部材の主面側と裏面側の極性を異ならせることができる。つまり、本発明にかかる半導体装置は、支持体における導体配線の絶縁分離を、その支持体を構成する絶縁性基板の同一平面側にて行うことなく、絶縁性基板自体の厚み方向に行っている。このように、絶縁性部材を板材とすることにより、絶縁性基板の厚みを利用した絶縁分離を行うことができる。そのため、導電性部材にて透光性部材を主面側に接着して固定することができ、より簡易な構成にて耐熱性および放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0027】
また、支持体の凹部109を形成する側壁部109aは、その凹部に配された半導体素子の方向に近接する突出部108を有することが好ましい。これにより、支持体の導体配線とされた導電性部材と、半導体素子の電極との電気的接続を導電性ワイヤなどにより容易に行うことができる。また、導電性ワイヤのボンディングを所定の方向にて行うことができる。また、その突出部は、半導体素子や半導体素子がフリップチップ実装された支持部材の位置決めとして利用することもできる。
【0028】
また、本形態にかかる支持体は、凹部を形成する側壁部の外壁面の側に突出する部位を有し、第一の導電性部材は、その部位の少なくとも主面側に延出して配されることが好ましい。あるいは、支持体を構成する絶縁性基板の主面に配された第一の導電性部材は、その主面側に重ね合わされている別の絶縁性基板における端面の外側方向に延出されることが好ましい。これにより、延出された導電性部材の一部に接続される外部の電極と、支持体の凹部の底面に延出された導電性部材との導通を図ることが容易にできる。このように延出された第一の導電性部材の領域面積は、例えばリード電極や外部電極端子が接触可能な広さとされる。
【0029】
また、同一面側に正負一対の電極を有する半導体素子は、導体配線が施された支持部材を介して支持体の凹部に配されることが好ましい。これにより、半導体素子を所定の位置に配置することができる。例えば、支持部材の厚さを調整して、半導体発光素子の側面方向から出射する光を半導体装置に出射させるべく、支持体の凹部側壁の上面や透光性部材の端部より高い位置に半導体発光素子を配することができる。
【0030】
また、本形態における支持体は、半導体素子を覆う透光性部材が配されていることが好ましい。半導体素子を外部環境から保護し、透光性部材を所定の形状とすることにより、配光性や集光性など種々の光学特性を有する半導体装置とすることができるからである。本形態にかかる透光性部材は、第二の導電性部材の一部が該透光性部材の外側に延出されるように、導電性部材により支持体(特に、第二の導電性部材)に接合されて固定されている。これにより、第二の導電性部材が延出された部分に外部の電極が接続され、外部の電極と、凹部の側壁部109a上面に延出させた導電性部材との導通をとることが容易にできる。また、支持体を側面方向から見ると、第一の導電性部材および第二の導電性部材が配置される高さが異なるため、極性の異なる上記第一の導電性部材の延出部との判別をすることが容易にできる。これにより、簡易な構成で信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0031】
また、半導体装置は、半導体素子から照射された光を所定の方向に出射させる反射部材を備えた照明装置とすることができる。あるいは、半導体装置に照射される光を半導体受光素子に集光する集光部材を有する装置とすることができる。反射部材としては、半導体素子の光学特性を考慮し、楕円曲面や放物面を有する反射面を備えるものとすることができる。また、その反射面に施される金属や反射部材自体の材料として、反射率の高い銀やアルミニウムを選択することができる。このとき、支持体の凹部側壁の突出部あるいは導電性ワイヤは、上記所定の方向の側に配されていることが好ましい。これにより、導電性ワイヤが半導体素子(特に、発光素子の側面方向)から出射される光が遮光されることなく、半導体装置からの光を反射部材にて光学制御することができるため、光学特性に優れた半導体装置とすることができる。
【0032】
また、上記透光性部材は、上記半導体素子からの光を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された波長変換部材を備えることができる。これにより、蛍光体により波長変換された高出力な光を出射する半導体発光装置とすることができる。
【0033】
また、上記波長変換部材と上記透光性部材との間に、上記半導体素子からの光のうち、400nm以下の波長の光を反射あるいは吸収する部材を有する。これにより、人体に有害な短波長の光が外部環境に出射されることがなく、安全性が高く高出力な光を出射する半導体発光装置とすることができる。
【0034】
また、上記蛍光物質は、少なくとも上記発光素子からの光により励起され可視光領域の光を発する二種以上の蛍光体からなり、それらの蛍光体の発光が合成され白色系の混色光を発する。これにより、本発明にかかる半導体装置は、高出力な白色系の混色光を出射することができる。
【0035】
また、本形態において、絶縁性基板の接合材あるいは支持体の導体配線ともなる導電性部材は、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材、あるいは、AuおよびAgから選択された少なくとも一種を含む鑞材とすることができる。このような導電性部材として、例えば、AuとAgとからなる鑞材、あるいは共晶半田(Au−Sn、Ag−Sn、Bi−Sn、Zn−Sn、Cu−Sn、In−Sn、Pb−Sn)を挙げることができる。このような材料を接合材として絶縁性基板および透光性部材を熱圧着させることにより、簡易な構成にて信頼性、耐熱性および放熱性の高い半導体装置とすることができる。なお、本形態において、絶縁性基板の接合方法として熱圧着を採用したが、半田付け、溶着や抵抗溶接など種々の接合方法を採ることができることはいうまでもない。以下、本形態および半導体装置の各構成部材について詳述する。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、本形態にかかる半導体装置の模式的な斜視図であり、図3は、本形態にかかる半導体装置の模式的な断面図である。ここで、図3は、図1に示される半導体装置を、支持体の主面に垂直な面で切断した断面を示す。
【0037】
図1および図2に示すように本実施の形態の半導体装置100は、導電性部材により導体配線が施され、同一面側に正負一対の電極を有する半導体素子102がフリップチップ実装される支持部材103と、該支持部材103を配する凹部109を有する支持体と、該支持体の主面側にて半導体素子102を外部環境から保護する透光性部材101とを有する。
【0038】
本形態における支持体は、セラミックスからなる第一の板材105と、同じくセラミックスからなり凹部109の側壁部を形成するための第二の板材104とからなる。第一の板材105は、上面に第一の導電性部材110が施される。また、第二の板材104は、上記支持部材を収納可能な貫通孔を有し、上面および下面に導電性部材が施されている。上面および下面に施された導電性部材のうち、上面側の導電性部材を第二の導電性部材111とする。ここで、図2に示すように、第一の板材105および第二の板材104は、第一の板材105に施された導電性部材の一部が第二の板材104の端面外側方向に延出するように重ね合わされ、接合部位の導電性部材が熱圧着されることにより支持体とされる。したがって、本形態にかかる支持体は、その側面側に段差形状を有しており、透光性部材が配される支持体の主面側の部位から一段下の部位に、第一の導電性部材110が延出されている。
【0039】
なお、別の実施の形態においては、上記第一の板材105の代わりに、銅などの金属材料の板材を利用することもできる。これにより、さらに放熱性の高い半導体装置とすることができる。また、支持体の機械的強度を向上させることができる。
【0040】
半導体素子は、支持部材(以下「サブマウント」と呼ぶことがある。)に施された導体配線に電気的および機械的に接続された構造を有する。例えば、半導体発光素子は、同一面側に正負一対の電極を有し、それらの電極が金バンプを介して導体配線に対向され、荷重、超音波および熱を加えられ、サブマウントに施された導体配線に溶着されることにより、電気的および機械的に接続される。さらに、そのサブマウントは、上記支持体の凹部の底部に導電性材料にて接着され載置されている。また、上記第一の導電性部材および/または第二の導電性部材は、導電性ワイヤのような金属細線にて上記サブマウントの導体配線と接続され、半導体素子と電気的に接続している。なお、導電性ワイヤにより簡易な電気的接続を行うことができるが、支持体やサブマウントに対し絶縁性材料を介して配された導体配線により電気的に接続させてもよいことは言うまでもない。
【0041】
なお、本形態における支持体の材料は、耐熱性および耐候性の高いセラミックスからなることが好ましいが、ガラスエポキシ樹脂、BTレジンなどの材料とすることもできる。あるいは、支持体を構成する第一の板材105の材料として、熱伝導率の高い銅などの金属材料を選択することもできる。このとき、第一の板材105は、その主面の一部が第二の板材104に形成された貫通孔により露出され、支持体の凹部の底部に配された第一の導電性部材を兼ねる。以下、セラミックからなる支持基板について説明するが、これに限定することなく、ガラスエポキシ、樹脂からなる支持基板にも適用できることは言うまでもない。
【0042】
本形態に係る半導体装置は、半導体発光素子からの光を外部環境に出射させ、その出射光に所望の光学特性を付与するレンズ形状の透光性部材を有することができる。本形態における透光性部材は、第二の導電性部材を有する支持体の主面側に導電性材料により接着されている。ここで、本形態にかかる支持体は、その支持体に施される導体配線の正負絶縁分離を絶縁性基板の厚み方向に行っており、透光性部材が接着される同じ主面側に極性の異なる導体配線が延出されることがない。すなわち、第二の板材の主面側と裏面側とで極性が異なるようにしてある。したがって、上述したように、半導体装置の信頼性を低下させる樹脂材料を接着材として用いることなく、導電性材料を接合材として、第二の導電性部材からなる導体配線部分に透光性部材を直接熱圧着して固定することができる。これにより、透光性部材を支持体に強固に固定することができるとともに、簡易な構成で信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0043】
以下、図2を参照しながら本形態における半導体装置の形成方法の一例について詳述する。まず、一方の主面側に第一の導電性部材110が配された第一の板材105に対し、主面および裏面側に第二の導電性部材111が配され所定の大きさおよび形状の孔が貫通された第二の板材104を熱圧着させる。これにより、第二の板材104に形成された貫通孔の内壁面と第一の板材105の主面とにより凹部109を形成する。また、同一方向において、第一の板材105の端部と第二の板材104の端部を互いにずらすように重ね合わせて、第二の板材端部の外側方向に、第一の板材の端部およびその上面に配された第一の導電性部材110を延出させる。
【0044】
次に、半導体素子102が搭載された支持部材103を凹部109の底部に配された第一の導電性部材110に対し、同じ導電性部材にて固定する。
【0045】
さらに、第二の板材104の主面側に配された第二の導電性部材111に透光性部材101を熱圧着させる。このとき、同一方向において、透光性部材101の端面と第二の板材104の端面とを互いにずらすように載置することにより、第二の板材104の主面側に配された第二の導電性部材111が透光性部材101の外側に延出されるようにする。最後に、所望の大きさ及び形状となるように、透光性部材101の縁部および絶縁性基板を切断することにより個片化し、半導体装置とする。
【0046】
このような形成方法において、第一の導電性部材の融点(Ta)、支持部材を支持体の凹部底面に接合する導電性部材の融点(Tb)および透光性部材を接合する導電性部材の融点(Tc)の関係は、Ta≧Tb>Tcであることが好ましい。すなわち、本発明における半導体装置の形成方法において、後工程で取り付けられる構成部材の接合材の融点を漸次低くさせてある。これにより、先に取り付けた構成部材の剥離を生じさせることなく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0047】
また、上述の形成方法による本形態の発光装置100は、その支持体を側面方向から見ると、第一の導電性部材110および第二の導電性部材111の配置位置が異なる。すなわち、支持体裏面から第一の導電性部材110および第二の導電性部材111が配される板材の主面までのそれぞれの高さは、第二の板材104や第一の導電性部材110の厚み分だけの差がある。そのため、極性の異なる第一の導電性部材110および第二の導電性部材111の判別をすることが容易にできる。以下、図面を参照しながら本形態における各構成部材について詳述する。
【0048】
<支持体>
本形態における支持体とは、搭載された半導体素子を保持し、該半導体素子や外部の電極と電気的に接続される導体配線が施され、さらに透光性部材を配置することもできる部材である。ここで、「半導体素子が搭載される」とは、半導体素子が支持体に直接配置されるものに限定されることなく、サブマウントのような補助的な別の支持部材を介して搭載されるものも含むものとする。
【0049】
このような絶縁性基板の材料としては、ガラスエポキシ基板やセラミックス材料とし、耐熱性の高い半導体装置とすることができる。また、透光性部材の材料と膨張係数の等しい材料を選択することにより、透光性部材と支持体との剥がれを発生させることなく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。絶縁性基板を形成構成するセラミックス材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトあるいは窒化ケイ素などが好ましい。特に、原料粉末の90〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として粘度、タルク、マグネシア、カルシア及びシリカ等が4〜10重量%添加され1500から1700℃の温度範囲で焼結させたセラミックスや原料粉末の40〜60重量%がアルミナで焼結助剤として60〜40重量%の硼珪酸ガラス、コージュライト、フォルステライト、ムライトなどが添加され800〜1200℃の温度範囲で焼結させたセラミックス等が挙げられる。
【0050】
セラミックスからなる絶縁性基板に施される導電性部材は、スパッタリングや蒸着、高融点金属を含有する樹脂ペーストを印刷して焼成するなどの方法により形成される。また、導電性部材は、導電性を有すると共に、光を反射させる機能を合わせ持つことが好ましい。導電性部材の材料として、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材、あるいは、AuおよびAgから選択された少なくとも一種を含む鑞材が挙げられる。さらに、上記金属に対してNiやAu、Agなどの金属を鍍金することによって導体配線のパターンとすることができる。特に、Agは、他の金属と比較して、本形態における発光素子からの光に対して高い反射率を有するため、半導体装置の光取り出し効率を向上させることができる。また、貫通孔を有する絶縁性基板を多層に接合して張り合わせることにより、支持体の一方の主面側に半導体素子を載置する凹部を形成することができる。支持体の凹部の側壁部109aは、例えば、図1および図2に示されるように、透光性部材101の側から見て、絶縁性基板に形成された貫通孔の内壁面の一部を階段状とすることにより、半導体素子に近接する突出部108を有することができる。
【0051】
本形態における支持体は、半導体素子や導電性ワイヤなどを配置させるものである。したがって、半導体素子をダイボンド機器などで直接搭載させると共に半導体素子との電気的接続をワイヤボンディングなどで行えるだけの十分な大きさがあれば良い。なお、支持体と半導体素子あるいは支持部材との固定は、上述の導電性部材と同様の材料によって行うことができる。
【0052】
<透光性部材>
本形態における透光性部材とは、半導体素子や該半導体素子に電気的に接続される導電性ワイヤなどを外部環境から保護するため、それらの部材を覆うように支持体に配置されるものである。半導体発光素子や受光素子においては、半導体素子の光学特性を考慮して種々の光学形状を有する透光性部材とすることもできる。特に、本形態における透光性部材100は、図1および図2に示されるように、半導体素子の視認側に凸であり、半導体素子に対向する側に半球状の空洞を形成する球面部101aと、該球面部101aの外縁から外側方向に広がり、支持体に固定される部位となる端部(縁部)101bとを有する透光性のレンズである。
【0053】
本形態にかかる透光性部材の材料は、ソーダガラス、シリカガラス、ホウ珪酸塩ガラス、アルミノホウ珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラスから選択された少なくとも一種を含む透光性無機材料からなる。これにより、耐光性の高い半導体装置とすることができる。また、透光性部材の材料は、支持基板の材料と線膨張係数の等しい材料を選択することにより、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0054】
また、透光性部材を支持体に接着するための接着材は、ロー材(例えば、金と錫、銅と金、または銅と銀の合金)、ガラス−セラミックス接着材(例えば、商品名;セラゾルザ、(株)黒田テクノ製)あるいはガラスから選択された少なくとも一種を含む材料とすることができる。あるいは、低融点ガラスからなる透光性部材は、支持基板に接触する部分を溶着することにより支持体に固定させることもできる。特に、上記ガラス−セラミックス接着材は、酸化物からなるガラスやセラミックスの接合材として好適に使用することができる。例えば、ガラス−セラミックス接着材は、錫または錫とインジウムの合金を主成分とし、亜鉛とアンチモンとアルミニウムを添加成分とする無鉛ハンダとすることができる。この無鉛ハンダは、ガラスやセラミックスのような無機物や金属に対し酸素を媒介とする化学結合をする。このガラス−セラミックス接着材により透光性部材を支持体に熱圧着させるときに、上記ガラス−セラミックス接着材が支持体の上面に配される第二の導電性部材と溶着される。これにより、透光性部材の支持体に対する接合強度を向上させることができる。
【0055】
特に、本形態において、図2に示されるような透光性部材としての半球面レンズの装着は、上記ガラス−セラミックス接着材を接合材として固定される。すなわち、予め超音波にてガラス−セラミックス接着材を半球面レンズの接着面に塗布し、半球面レンズの縁部と支持体とを熱圧着させる。これにより、半田による接着のように表面を活性化する必要がなく、また、超音波により接着面の空気層が除去され、接合材の濡れ性を向上させ強固な接着をすることができる。
【0056】
<半導体素子>
本形態における半導体素子は、発光素子、受光素子、それらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子(ツェナーダイオードやコンデンサーなど)、あるいはそれらを組み合わせたものとすることができる。特に、本形態における半導体発光素子は、同一面側に正負一対の電極を有する発光素子チップが好適に用いられる。また、蛍光物質を用いた場合、該蛍光物質を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子としてZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また所望に応じて、窒化物半導体にボロンやリンを含有させることもできる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファ層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。また、前記p型層上に金属層を積層した後、半導体用基板を除去してもよい。このように構成された発光素子を前記金属層が実装面側となるように実装すると、放熱性の高い発光装置が得られる。それぞれ露出されたp型層及びn型層上に各電極を形成後、半導体ウエハからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
【0057】
本形態の発光装置において、白色系の光を発光させるには、蛍光物質からの発光波長との補色関係や透光性樹脂の劣化等を考慮して、発光素子の発光波長は365nm以上530nm以下が好ましく、420nm以上490nm以下がより好ましい。発光素子と蛍光物質との励起、発光効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下がさらに好ましい。
【0058】
ここで、発光素子は、例えば、青色の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子であり、この発光素子は、例えばサファイア基板上にn型層、活性層及びp型層を含む窒化物半導体層が形成され、活性層及びp型層の一部を除去して露出させたn型層の上にn電極が形成され、p型層の上にp電極が形成されてなる。
【0059】
[実施の形態2]
図1は、本形態にかかる半導体装置の模式的な斜視図であり、図4および図5は、本形態にかかる半導体装置の模式的な断面図である。本形態にかかる半導体素子は、紫外線領域の波長を含む光を発する発光素子である。また、本形態における透光性部材は、発光素子と対面する凹面状の内壁面に蛍光体層やフィラー含有層とを有する半球面レンズである。なお、蛍光体層とフィラー含有層を有する透光性部材とするときは、発光素子の側から、蛍光体層、フィラー含有層の順に凹部の内壁面に対して積層される。以上の他は、上述の実施の形態1と同様にして半導体装置を形成する。
【0060】
以下、本形態にかかる半導体装置をより詳細に説明する。本形態におけるフィラー含有層とは、発光素子からの光のうち、蛍光体に吸収されることなく、蛍光体層を透過された短波長の光を反射あるいは吸収する材料を含有する部材である。フィラー含有層に含有されるフィラーの材料として、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、酸化セリウムおよびα−酸化鉄から選択された少なくとも一種を含むものとすることができる。特に、二酸化チタンは、380nm以下の短波長の光を効率よく吸収するため、好適に用いられる。
【0061】
また、蛍光体層は、発光素子からの光により励起され可視光領域の第一の発光スペクトルを有する光を発する第一の蛍光体と、発光素子からの光あるいは第一の蛍光体からの光により励起され、可視領域の第二の発光スペクトルを有する光を発する第二の蛍光体とが混合されバインダーにより結着されてなる。蛍光体含有層やフィラー含有層は、スラリー法、塗布液をスプレーで吹き付ける方法、印刷、インクジェット塗布、電気沈着塗装あるいはそれらを組み合わせた方法など、種々の方法とすることができる。
【0062】
また、透光性部材の表面にバインダー(結着剤)にて蛍光物質を付着させる場合、バインダーの材質は特に限定されず、有機物及び無機物のいずれをも用いることができる。
【0063】
バインダーとして有機系材料を使用する場合、具体的材料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂が好適に用いられる。特に、シリコーンを用いると信頼性に優れ且つ蛍光物質の分散性を向上させることができ好ましい。
【0064】
また、透光性部材をガラスレンズとしたとき、バインダーとしてガラスレンズの熱膨張率と近似である無機物を使用すると、蛍光物質を良好に壁面に密着させることができ好ましい。具体的方法として、沈降法やゾル−ゲル法等を用いることができる。例えば、蛍光物質、シラノール(Si(OEt)OH)、及びエタノールを混合してスラリーを形成し、スラリーをノズルから透光性部材の透光性部分に吐出させた後、300℃にて3時間加熱してシラノールをSiOとし、蛍光物質を透光性部材に固着させることができる。
【0065】
また、無機物である結着剤をバインダーとして用いることもできる。結着剤とは、いわゆる低融点ガラスであり、微細な粒子であり且つ紫外から可視領域のふく射線に対して吸収が少なくバインダー中にて極めて安定であることが好ましく、沈殿法により得られた細かい粒子であるアルカリ土類のほう酸塩が適している。また、大きい粒径を有する蛍光物質を付着させる場合、融点が高くても粒子が超微粉体である結着剤、例えば、デグサ製のシリカ、アルミナ、あるいは沈殿法で得られる細かい粒度のアルカリ土類金属のピロリン酸塩、正りん酸塩などを使用することが好ましい。これらの結着剤は、単独、若しくは互いに混合して用いることができる。
【0066】
ここで、結着剤の塗布方法について述べる。結着剤は、ビヒクル中に湿式粉砕しスラリー状にして用いると、結着効果を十分に高めることができ好ましい。ビヒクルとは、有機溶媒あるいは脱イオン水に少量の粘結剤を溶解して得られる高粘度溶液である。例えば、有機溶媒である酢酸ブチルやテルピネオールに対して粘結剤であるエチルセルロースやニトロセルロースを1wt%含有させることにより、有機系ビヒクルが得られる。
【0067】
このようにして得られた結着剤スラリーに蛍光体を含有させて塗布液を作製する。塗布液中の蛍光体量に対して、スラリー中の結着剤の総量は20wt%以下が好ましく、これにより蛍光体を良好に固着させることができ且つ光束維持率を保つことができる。結着剤の添加量が多すぎると光束維持率が低下する傾向にあるため、結着剤の使用量は最小限の使用にとどめることが好ましい。
【0068】
塗布液を透光性部材の内壁面に塗布する。その後、温風あるいは熱風を吹き込み乾燥させる。最後に400℃〜700℃の温度でベーキングを行い、ビヒクルを飛散させる。これにより、透光性部材の表面に蛍光体層が結着剤にて付着される。
【0069】
支持体の主面に固定される透光性部材の材料は、ソーダガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラスから選択された少なくとも一種からなる透光性無機材料からなる。これにより、耐光性の高い半導体装置とすることができる。
【0070】
本形態による半導体装置により、第一の蛍光体および第二の蛍光体からの出力光、あるいは発光素子の光との混色光を観測することができる。また、蛍光体層より発光観測面側に配されているフィラー含有層は、第一の蛍光体あるいは第二の蛍光体に吸収されることなく蛍光体層を透過した400nm以下の短波長の光を吸収あるいは反射させ、半導体装置の発光観測面から出射される短波長の光を少なくすることができる。したがって、本形態にかかる半導体装置により、安全性および信頼性の高い発光装置とすることができる。すなわち、リフロー工程を経た後の半導体装置において、透光性部材と支持基板との強固な接着が維持されており、透光性部材と支持基板との接着部分に隙間が生じることがない。そのため、人体に有害な紫外線が漏れ出すことがなく、安全性および信頼性の高い半導体装置とすることができる。また、フィラー含有層にて蛍光体層の方に反射された光は、蛍光体の励起光として利用されるため、光変換効率の高い半導体装置とすることができる。
【0071】
<蛍光物質>
本形態において、半導体発光素子を有する半導体装置とするとき、半導体発光素子からの光により励起されて異なる波長を有する光を発する蛍光物質を配置することができる。無機蛍光体や有機蛍光体のような種々の蛍光物質は、例えば、以下に述べる各構成部材中および/または各構成部材の周辺に配置または含有させることができる。
(1)半導体発光素子の半導体素子構造や保護膜。例えば、半導体や半導体発光素子の保護膜の成膜工程において、成膜材料に蛍光物質あるいは付活剤(付活剤となる元素のイオン)を含有させることにより形成することができる。
(2)発光素子あるいはサブマウントを覆う透光性部材。例えば図6に示されるように、蛍光物質を含有する透光性部材101とし、透光性部材101自体を波長変換部材とすることができる。あるいは、透光性部材の発光観測面側を被覆するようにシート状に設けられる他、透光性部材の発光観測面側あるいは発光素子から離間させた位置に、蛍光体を含む層、シート、キャップあるいはフィルターとして透光性部材に設けることもできる。例えば、図7に示されるように、波長変換部材201は、透光性部材101の発光観測面側を被覆するようなキャップとして配することができる。このような波長変換部材は、例えば、エポキシ樹脂のような透光性樹脂や、石英、ガラス、耐光性の高いシリコーン樹脂に蛍光物質を含有させて、成型することにより所望の形状とすることができる。
【0072】
特に、フリップチップ実装された発光素子を被覆するように形成される波長変換部材は、蛍光物質と結着剤との混合物を材料として、メタルマスクやスクリーン版によるスクリーン印刷や孔版印刷により形成されることが好ましい。このように形成することにより、発光素子の周囲に均一な膜厚を有する波長変換部材を形成することが容易にできる。
(3)発光素子やサブマウントを支持体に固着させるダイボンド材。例えば、エポキシ樹脂や金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料や、銀ペーストのような金属微粒子含有の導電性ペーストに蛍光物質を含有させて、発光素子やサブマウントを支持体にダイボンドすることができる。
(4)サブマウントおよびパッケージのような支持基体。例えば、サブマウントあるいはパッケージのような支持基体の成型材料に蛍光物質あるいは付活剤を含有させることにより形成することができる。
【0073】
本形態の半導体装置に利用することができる蛍光体は、発光素子から放出される可視光や紫外光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するものである。特に、本形態に用いられる蛍光体は、少なくとも発光素子から発光された光によって励起され、波長変換した光を発光する蛍光体をいい、該蛍光体を固着させる結着剤とともに波長変換部材を構成する。結着剤としては、例えば、エポキシ樹脂のような透光性樹脂や、ガラス、耐光性の高いシリコーン樹脂や金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料とすることもできる。
【0074】
本明細書中における蛍光体の粒径とは、体積基準粒度分布曲線により得られる値であり、体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により蛍光体の粒度分布を測定し得られるものである。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に蛍光体を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmにて測定し得られたものである。
【0075】
本実施の形態において使用される蛍光体は、YAG系蛍光体に代表されるアルミニウム酸化物系蛍光体と、赤色系の光を発光可能な蛍光体、特に窒化物系蛍光体とを組み合わせたものを使用することもできる。これらのYAG系蛍光体および窒化物系蛍光体は、混合して波長変換部材中に含有させてもよいし、複数の層から構成される波長変換部材中に別々に含有させてもよい。以下、それぞれの蛍光体について詳細に説明していく。
【0076】
(アルミニウム酸化物系蛍光体)
本形態におけるアルミニウム酸化物系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、LEDチップから発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。
【0077】
例えば、YAlO:Ce、YAl12:Ce、YAl:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、Tb2.95Ce0.05Al12、Y2.90Ce0.05Tb0.05Al12、Y2.94Ce0.05Pr0.01Al12、Y2.90Ce0.05Pr0.05Al12等が挙げられる。さらに、本実施の形態において、特にYを含み、かつCeあるいはPrで付活され組成の異なる二種類以上のアルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と呼ぶ。)が利用される。特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,Laからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)などが好ましい。
【0078】
YAG系蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが470nm付近などにさせることができる。また、発光ピークも530nm付近にあり720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持たせることができる。
【0079】
本実施の形態に用いられるセリウムで付活された緑色系が発光可能なYAG系蛍光体では、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpも510nm付近にあり700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。一方、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である赤色系が発光可能なYAG系蛍光体でも、ガーネット構造であり熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpが600nm付近にあり750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0080】
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。YAG系蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加させた場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えた発光装置を形成することができる。
【0081】
アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、以下のような方法で製造することができる。まず、蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm、Pr、Tb及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Sm、Pr、Tbの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450°Cの温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。また、別の実施の形態の蛍光体の製造方法では、蛍光体の原料を混合した混合原料とフラックスからなる混合物を、大気中又は弱還元雰囲気中にて行う第一焼成工程と、還元雰囲気中にて行う第二焼成工程とからなる、二段階で焼成することが好ましい。ここで、弱還元雰囲気とは、混合原料から所望の蛍光体を形成する反応過程において必要な酸素量は少なくとも含むように設定された弱い還元雰囲気のことをいい、この弱還元雰囲気中において所望とする蛍光体の構造形成が完了するまで第一焼成工程を行うことにより、蛍光体の黒変を防止し、かつ光の吸収効率の低下を防止できる。また、第二焼成工程における還元雰囲気とは、弱還元雰囲気より強い還元雰囲気をいう。このように二段階で焼成すると、励起波長の吸収効率の高い蛍光体が得られる。従って、このように形成された蛍光体にて発光装置を形成した場合に、所望とする色調を得るために必要な蛍光体量を減らすことができ、光取り出し効率の高い発光装置を形成することができる。
【0082】
(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
本形態におけるルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、一般式(Lu1−a−b(Al1−cGa12(但し、RはCeを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素である。MはSc、Y、La、Gdから選択される少なくとも1種の元素であり、0.0001≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.0001≦a+b<1、0≦c≦0.8である。)で表される蛍光体である。例えば、組成式が(Lu0.99Ce0.01Al12、(Lu0.90Ce0.10Al12、(Lu0.99Ce0.01(Al0.5Ga0.512で表される蛍光体である。
【0083】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「LAG系蛍光体」と呼ぶことがある。)は、次のようにして得られる。蛍光体原料として、ルテチウム化合物、希土類元素Rの化合物、希土類元素Mの化合物、アルミニウム化合物及びガリウム化合物を用い、各化合物について上記一般式の割合になるように秤取し、混合するか、又はこれら蛍光体原料にフラックスを加えて混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をルツボに充填後、還元性雰囲気中、1200〜1600℃で焼成し、冷却後、分散処理することにより、上記一般式で表される本発明の蛍光体を得る。
【0084】
蛍光体原料として、酸化物又は熱分解により酸化物となる炭酸塩、水酸化物等の化合物が好ましく用いられる。また、蛍光体原料として、蛍光体を構成する各金属元素を全部又は一部含む共沈物を用いることもできる。例えば、これらの元素を含む水溶液にアルカリ、炭酸塩等の水溶液を加えると共沈物が得られるが、これを乾燥又は熱分解して用いることができる。また、フラックスとしてはフッ化物、ホウ酸塩等が好ましく、蛍光体原料100重量部に対し0.01〜1.0重量部の範囲で添加する。焼成雰囲気は、付活剤のセリウムが酸化されない還元性雰囲気が好ましい。水素濃度が3.0体積%以下の水素・窒素の混合ガス雰囲気がより好ましい。焼成温度は1200〜1600℃が好ましく、目的の中心粒径の蛍光体を得ることができる。より好ましくは1300〜1500℃である。
【0085】
上記一般式において、Rは付活剤であり、Ceを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素であって、具体的には、Ce、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luである。RはCeのみでもよいが、CeとCe以外の希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含んでいてもよい。Ce以外の希土類元素は、共付活剤として作用するためである。ここで、Rには、CeがR全量に対し70mol%以上含有されていることが好ましい。a値(R量)は、0.0001≦a≦0.5が好ましく、0.0001未満では発光輝度が低下し、0.5を越えても濃度消光によって発光輝度が低下する。より好ましくは、0.001≦a≦0.4、さらに好ましくは、0.005≦a≦0.2である。b値(M量)は、0≦b≦0.5が好ましく、より好ましくは0≦b≦0.4であり、さらに好ましくは0≦b≦0.3である。例えば、MがYの場合、b値が0.5を越えると長波長紫外線〜短波長可視光、特に360〜410nm励起による発光輝度が非常に低下してしまう。c値(Ga量)は、0≦c≦0.8が好ましく、より好ましくは0≦c≦0.5であり、さらに好ましくは0≦c≦0.3である。c値が0.8を越えると発光波長は短波長にシフトし、発光輝度が低下する。
【0086】
LAG系蛍光体の中心粒径は1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜15μmの範囲である。1μmより小さい蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。これに対し、5〜50μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高く、光変換部材も形成しやすい。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性も向上する。また、上記中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0087】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は300nm〜550nmの波長域の紫外線又は可視光により効率よく励起され発光することから、光変換部材に含有される蛍光体として有効に利用することができる。さらに、組成式の異なる複数種のLAG系蛍光体、又はLAG系蛍光体を他の蛍光体とともに用いることにより、発光装置の発光色を種々変化させることができる。半導体発光素子からの青色系の発光と、該発光を吸収し黄色系の発光する蛍光体からの発光との混色により、白色系の混色光を発光する従来の発光装置は、発光素子からの光の一部を透過させて利用するため、構造自体を簡略化できると共に出力向上を行いやすいという利点がある。その一方、上記発光装置は、2色の混色による発光であるため、演色性が十分でなく、改良が求められている。そこで、LAG系蛍光体を利用して白色系の混色光を発する発光装置は、従来の発光装置と比較してその演色性を向上させることができる。また、LAG系蛍光体は、YAG系蛍光体と比較して温度特性に優れるため、劣化、色ずれの少ない発光装置を得ることができる。
【0088】
(窒化物系蛍光体)
本形態における窒化物系蛍光体とは、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体である。窒化物系蛍光体は、赤色系の光を発光可能な蛍光体であり、可視光、紫外線等又は他の蛍光体(例えば、YAG系蛍光体)からの発光を吸収することによって励起され発光する。つまり、この窒化物系蛍光体は、発光素子によって発光された光(例えば、青色光)の一部を吸収して、黄から赤色領域の光を発光する。窒化物系蛍光体を励起する発光スペクトルは、360〜495nmであることが好ましい。さらに、440〜480nm近傍の発光スペクトルを有することが好ましい。窒化物系蛍光体の発光スペクトルは、560〜700nm近傍にピーク波長を有することが好ましい。さらに、600〜680nm近傍にピーク波長を有することが好ましい。例えば、SrSi:Eu,Pr、BaSi:Eu,Pr、MgSi:Eu,Pr、ZnSi:Eu,Pr、SrSi10:Eu,Pr、BaSi10:Eu,Ce、MgSi10:Eu,Ce、ZnSi10:Eu,Ce、SrGe:Eu,Ce、BaGe:Eu,Pr、MgGe:Eu,Pr、ZnGe:Eu,Pr、SrGe10:Eu,Ce、BaGe10:Eu,Pr、MgGe10:Eu,Pr、ZnGe10:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si10:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si10:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge10:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge10:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2SiGeN10:Eu,Y、SrSi:Pr、BaSi:Pr、SrSi:Tb、BaGe10:Ceなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0089】
特に本蛍光体は、Mnが添加された窒化物系蛍光体であることが好ましい。添加物であるMnは、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光効率の向上を図る。この蛍光体の基本構成元素は、一般式LSi(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLSi(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。一般式中、X及びYは、X=2、Y=5又は、X=1、Y=7であることが好ましいが、任意のものも使用できる。具体的には、基本構成元素は、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Eu、SrSi:Eu、CaSi:Eu、SrCa1−XSi10:Eu、SrSi10:Eu、CaSi10:Euで表される蛍光体を使用することが好ましいが、この蛍光体の組成中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれかである。SrとCaは、所望により配合比を変えることができる。蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な蛍光体を提供することができる。
【0090】
次に、本発明に係る蛍光体((SrCa1−XSi:Eu)の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。
【0091】
まず、原料のSr、Caを粉砕し、窒素雰囲気中で窒化する。同様に、原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化して、窒化ケイ素を得る。次に、Sr、Ca若しくはSr−Caの窒化物を粉砕する。Sr、Ca、Sr−Caの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。同様に、原料のSiを粉砕し窒化したSiの窒化物、Euの化合物Euを粉砕する。上記原料中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。また、Mg、Zn、B等の上記元素を以下の混合工程において、配合量を調節して混合することもできる。最後に、Mnが添加されたSr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Euの混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。焼成により、Mnが添加された(SrCa1−XSi:Euで表される蛍光体を得ることができる。
【0092】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1700℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。
【0093】
(酸窒化物系蛍光体)
上述の蛍光物質の他、本形態における蛍光物質には、さらに下記の一般式で表される酸窒化物蛍光体を含有させることができる。
xyz{(2/3x+(4/3)y−(2/3)z}:R
ただし、LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有する。また、Nは窒素で、Oは酸素、Rは希土類元素である。x、y、zは以下の数値を満足する。
x=2、4.5≦y≦6、0.01<z<1.5
またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5
またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5
以下、酸窒化物蛍光体の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されないことは言うまでもない。まず、所定配合比となるように、Lの窒化物、Mの窒化物および酸化物、希土類元素の酸化物を原料として混合する。各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0094】
次に、上記原料の混合物を坩堝に投入し、焼成を行う。焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、特に限定されないが、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことが好ましく、1400から1700℃の焼成温度が、さらに好ましい。本蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質の坩堝、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質の坩堝の他に、アルミナ(Al)材質の坩堝を使用することもできる。また、焼成は、還元雰囲気中で行うことが好ましい。還元雰囲気は、窒素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。以上の製造方法を使用することにより、目的とするオキシ窒化物蛍光体を得ることができる。
【0095】
以上の他、窒化物系蛍光体としては、(Ca、Sr、Ba)Si:Eu、CaSiAlN:Eu、いわゆるサイアロン蛍光体を挙げることができる。
【0096】
(アルカリ土類金属珪酸塩)
本形態における発光装置は、発光素子が発光した光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を有することもできる。アルカリ土類金属珪酸塩は、青色領域の光を励起光とし、暖色系の混色光を発光する発光装置とすることができる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0097】
本実施の形態における発光装置は、アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
【0098】
Me(3−x−y)MgSi:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
次に、本実施の形態におけるアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体の製造工程を説明する。アルカリ土類金属珪酸塩の製造のために、選択した組成に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0099】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、YS:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0100】
(その他の蛍光体)
本実施の形態において、蛍光体として紫外から可視領域の光により励起されて発光する蛍光体も用いることができ、具体例として、以下の蛍光体が挙げられる。
(1)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体;例えば、M(PO(Cl、Br):Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)、Ca10(POClBr:Mn,Euなどの蛍光体。
(2)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体;例えば、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrAl1425:Eu、SrAl:Eu、CaAl:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnなどの蛍光体。
(3)Euで付活された希土類酸硫化物蛍光体;例えば、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどの蛍光体。
(4)(Zn、Cd)S:Cu、ZnGeO:Mn、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、MgAs11:Mn、(Mg、Ca、Sr、Ba)Ga:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、や(5)Euで付活された有機錯体蛍光体。
【0101】
また、これらの蛍光体は、一層からなる波長変換部材中に単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。さらに、二層以上が積層されてなる波長変換部材中にそれぞれ単独で用いても良いし、混合して用いてもよい。
【実施例1】
【0102】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0103】
図1は、本実施例における発光装置100の模式的な斜視図を示す。また、図2は、本実施例における発光装置の各構成部材を示す模式的な斜視図を示す。さらに、図3は、本実施例における発光装置の支持体の主面に垂直な切断面による断面図である。
【0104】
図1に示すように本実施例にかかる発光装置100は、半導体発光素子102がフリップチップ実装されるサブマウント103と、該サブマウント103を配する凹部109を有する支持体と、該支持体の主面側に配される透光性部材としてのガラスレンズ101とを有する。ガラスレンズ101は、発光装置100を上面側から見たとき、発光素子102の視認方向に凸であり、発光素子102に対向する内壁面が凹面状の半球状レンズである。ガラスレンズ101は、凹部109を形成する側壁の上面に配されている。本実施例における発光装置100は、ガラスレンズ101の内壁面と支持体の主面とからなる中空部106を有し、発光素子102は気密封止されている。なお、その中空部106に窒素、アルゴンあるいはヘリウムなどの不活性ガスを封入することもできる。
【0105】
また、本実施例における支持体は、第一の板材(厚さ1mm)105と第二の板材104とからなる。第一の板材(厚さ1mm)105は、第一の導電性部材110としてAu−Sn共晶材が上面に施された窒化アルミニウムからなる。また、第二の板材104は、上記サブマウント103を収納可能な貫通孔を有し第二の導電性部材110としてAu−Sn共晶材が上面に施された酸化アルミニウムからなる。なお、第二の板材104は、その裏面にもAu−Sn共晶材が施されている。
【0106】
さらに、本実施例にかかる支持体は、凹部109を形成している側壁部109aの外壁面の側に突出する部位を有し、Au−Sn共晶材は、その突出された部位の少なくとも主面側に延出して配される。すなわち、支持体が第一の板材105と第二の板材104からなるとき、第一の板材105の端部が側壁部109aの外壁面の側に突出される。このような支持体は、第一の板材105および第二の板材104は、第一の板材105の主面側に施されたAu−Sn共晶材の一部が第二の板材104端面の外側に延出するように、両板材の端面を所定の距離だけずらして重ね合わされ、熱圧着されることにより形成される。
【0107】
本実施例におけるサブマウント103は、窒化アルミニウムを材料とする板材(厚さ1mm)に、Auを材料とするスパッタリングにより導体配線が形成されてなる。なお、本実施例における導体配線は、2つの発光素子が直列接続となるようにパターニングされている。本実施例における半導体発光素子は、同一面側に正負一対の電極を有し、それらの電極が金バンプを介して導体配線に対向され、荷重、超音波および熱を加えられ、サブマウントに施された導体配線に溶着されることにより、電気的および機械的に接続される。さらに、サブマウント103は、上記支持体の凹部底面にAu−Sn共晶材により接着される。また、凹部底面に延出されたAu−Sn共晶材および凹部側壁の上面に延出されたAu−Sn共晶材は、Auワイヤ(図示せず)によりサブマウント103の導体配線と接続され、半導体素子102と電気的に接続される。
【0108】
本実施例における半導体発光素子は、LEDチップである。本実施例におけるLEDチップは、活性層として単色性発光ピークが可視光である460nmのIn0.2Ga0.8N半導体を有する窒化物半導体素子を用いる。より詳細に説明すると、発光素子であるLEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiHとCpMgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
【0109】
本実施例のLEDチップの素子構造は、透光性基板であるサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるGaN層、Siドープのn型電極が形成されたn型コンタクト層となるn型GaN層、アンドープの窒化物半導体であるGaN層を積層させ、さらに、バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層を1セットとして5セット積層して最後にバリア層となるGaN層を積層させて活性層とし、該活性層は多重量子井戸構造としてある。さらに、活性層上にはMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるp型GaN層を順次積層させた構成としてある。なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層とさせてある。また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。
【0110】
エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、p型コンタクト層およびn型コンタクト層の各表面を露出させる。次に、p型コンタクト層上にITO(インジウムと錫の複合酸化物)を材料とするスパッタリングを行い、p型コンタクト層のほぼ全面にストライプ状の拡散電極が設けられる。このような電極とすることにより、拡散電極を流れる電流がp型コンタクト層の広範囲に広がるようにし、およびLEDチップの発光効率を向上させることができる。
【0111】
さらに、p側拡散電極およびn型コンタクト層の一部に対し、Rh/Pt/AuおよびW/Pt/Auを材料とするスパッタリングをそれぞれ順に行って、金属層として積層させ、p側台座電極とn側台座電極とする。最後に、半導体を積層し上記電極が形成されたウエハをダイシングによりチップ化し、□=1mm×1mmのLEDチップとする。本実施例において、ストライプ状に露出されたn型半導体に形成されたn型台座電極は、LEDチップの対向する二辺の上で絶縁性の保護膜(SiO)から露出される。また、エッチングにより露出されたn型半導体は、LEDチップの上面方向からみて、n型台座電極が露出される隅部の位置からLEDチップの中央方向に向かって細くなった括れ部分を有する。また、互いに対向する一対の括れ部分を結ぶように延伸部を有する。さらに、その延伸部を挟むような位置に、p側の半導体層、拡散電極が配置され、あるいはp側台座電極が保護膜から露出されている。
【0112】
LEDチップは、そのp側およびn側台座電極がAuバンプを介してサブマウントの導体配線とそれぞれ対向され、荷重、超音波および熱をかけることにより、バンプを溶着し、サブマウントに接合される。
【0113】
本実施例における発光装置において、複数のLEDチップが同一のサブマウントにフリップチップ実装される。さらに、それらのLEDチップは、蛍光物質を含有する波長変換部材にて被覆されている。
【0114】
波長変換部材に含有させる蛍光物質は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらにフラックスとしてフッ化バリウムを混合した後坩堝に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.0052.750Al12:Ce0.250蛍光物質を形成する。光変換部材の材料は、シリコーン樹脂に、上記蛍光物質を20〜75wt%含有させ、自転公転ミキサーにて5分間攪拌を行い、蛍光体と結着剤であるシリコーン樹脂との硬化性組成物とする。さらに、その硬化性組成物は、フリップチップ実装された半導体発光素子の発光観測側主面であるサファイア基板面に対し、メタルマスクによりスクリーン印刷される。さらに、その硬化性組成物を150℃、1hrで硬化させることにより、層厚が70μmから80μmの波長変換部材とする。
【0115】
以下、図2を参照しながら本実施例における発光装置の形成方法について詳述する。まず、一方の主面側にAu−Sn共晶材が配された第一の板材105に、主面および裏面側にAu−Sn共晶材が配された第二の板材104を熱圧着させる。これにより、第二の板材104に形成された貫通孔の内壁面と第一の板材105の主面とからなる凹部109を形成する。また、凹部109の底面にAu−Sn共晶材を露出させる。また、第一の板材105の端部と第二の板材104の端部を互いにずらして、第二の板材端部の外側方向にAu−Sn共晶材が配された第一の板材主面を延出(図1に示す第一の導電性部材110)させる。次に、LEDチップがフリップチップ実装されたサブマウント103を上記凹部底面に、予めサブマウント103の裏面に施されたAu−Sn共晶材にて固定する。さらに、第二の板材104の主面側に配されたAu−Sn共晶材に、ガラスレンズ101をガラス−セラミックス接合材により熱圧着させる。このとき、ガラスレンズの縁部101b端面と第二の板材104の端面を所定の距離だけ互いにずらすように載置することにより、第二の板材104の主面側に配されたAu−Sn共晶材がガラスレンズの縁部101bの外側に延出(図1に示す第二の導電性部材111)されるようにする。なお、本実施例における形成方法において、第一および第二の板材を接合し、サブマウント103を支持体の凹部底面に接合するAu−Sn共晶材の融点(Ta、Tb)は、250℃以上とし、およびガラスレンズを接合する接合材の融点(Tc)は、250℃未満とする。最後に、所望の大きさ形状に絶縁性基板を切断することにより個片化し、本実施例にかかる半導体発光装置100とする。
【0116】
なお、本実施例における発光装置は、支持体と透光性部材とからなる中空部において、半導体発光素子が気密封止されており、その中空部に封入されたヘリウムガスのリークテストにより、ヘリウムガスのリーク量が1×10−6Pa・m/sec以下、好ましくは1×10−8Pa・m/sec以下に保たれている。したがって、本実施例における発光装置は、良好な気密封止を行うことができる。
【実施例2】
【0117】
図1は、本実施例にかかる発光装置200の模式的な斜視図であり、図4は、断面図である。本実施例にかかる半導体素子102は、発光スペクトルの主発光ピークが400から460nmの紫外線領域の波長を含む光を発する発光素子である。また、本実施例における波長変換部材201は、発光素子を被覆するように形成された実施例1の態様と異なる。すなわち、本実施例における波長変換部材201は、ガラスレンズの球面部に塗布された蛍光体層201である。この蛍光体層201は、スラリー法により、発光素子104と対面する側の凹状の内壁面に塗布されている。以上の他は、上述の実施例1と同様にして発光装置を形成する。
【0118】
本実施例にかかる発光装置200をより詳細に説明すると、蛍光体層201は、発光素子102からの光により励起され可視光領域の発光スペクトルを有する光を発する第一の蛍光体と、発光素子からの光あるいは第一の蛍光体からの光により励起され、可視領域の発光スペクトルを有する光を発する第二の蛍光体とが混合されバインダーにより結着されてなる。本実施例における第一の蛍光体および第二の蛍光体は、それぞれCCA蛍光体(例えば、Ca(POCl:Eu)、YAG系蛍光体(例えば、Y(Al0.8Ga0.212:Ce)とする。また、バインダーは、ニトロセルロース数%含有の酢酸ブチルとする。バインダーと上記蛍光体とを10:9の割合で混合し、スラリーとしたものをレンズの凹状内壁面に滴下し、内壁面全体を塗布して乾燥させることにより蛍光体層201を形成する。
【0119】
本実施例による発光装置200は、第一の蛍光体および第二の蛍光体からの出力光、あるいは発光素子の光との混色光を観測することができる。すなわち、本実施例にかかる半導体発光装置は、高出力な混色光を出射することができる。
【実施例3】
【0120】
図1は、本実施例にかかる発光装置300の模式的な斜視図であり、図5は、断面図である。本実施例にかかる半導体素子102は、発光スペクトルの主発光ピークが400nmから460nmの紫外線領域の波長を含む光を発する発光素子である。また、本実施例における透光性部材101は、発光素子と対面する凹状の球面部の内壁面に蛍光体層201とフィラー含有層301とを有する半球状のレンズである。なお、蛍光体層201とフィラー含有層301とは、発光素子の側から、蛍光体層201およびフィラー含有層301の順に凹状の内壁面に対して積層されている。なお、本実施例における蛍光体層201およびフィラー含有層301は、スラリー法により塗布されている。以上の他は、上述の実施例1と同様にして発光装置を形成する。
【0121】
本実施例にかかる発光装置300をより詳細に説明すると、フィラー含有層301は、二酸化チタンの薄膜からなる。その膜厚は、100μm以下とすることが好ましい。また、蛍光体層201は、発光素子からの光により励起され可視光領域の発光スペクトルを有する光を発する第一の蛍光体と、発光素子からの光あるいは第一の蛍光体からの光により励起され、可視領域の発光スペクトルを有する光を発する第二の蛍光体とが混合されバインダーにより結着されてなる。本実施例における第一の蛍光体および第二の蛍光体は、それぞれCCA、YAGとする。また、蛍光体を結着させるバインダーは、ニトロセルロース数%含有の酢酸ブチルとする。バインダーと蛍光体を10:9の割合で混合しスラリーとしたものを、予め二酸化チタンの薄膜が塗布されたレンズの凹状内壁面に滴下し、乾燥させることにより蛍光体層201を形成する。
【0122】
本実施例による発光装置により、第一の蛍光体および第二の蛍光体からの出力光、並びに発光素子の光との混色光を観測することができる。また、蛍光体層より発光観測面側に配されているフィラー含有層301は、第一の蛍光体あるいは第二の蛍光体に吸収されることなく蛍光体層201を透過した400nm以下の短波長の光を反射あるいは吸収させ、発光装置の発光面方向から出射される短波長の光を少なくすることができる。したがって、本実施例により、安全性の高い高出力な発光装置とすることができる。また、フィラー含有層にて蛍光体層の方に反射された光は、蛍光体の励起に利用されるため、光変換効率の高い発光装置とすることができる。
【実施例4】
【0123】
本実施例においては、蛍光体層を以下のように形成する。まず、酢酸ブチル(ニトロセルロース1〜10%含有):YAG(CCA含む)=8〜15:5〜20で混練して、ホウ珪酸ガラスレンズの内壁面に塗布する。さらに、N雰囲気のもと50〜100℃で予備加熱後、400℃程度で焼き付けることにより形成することができる。以上の他は、実施例2あるいは実施例3と同様にして、発光装置を形成する。
【実施例5】
【0124】
本実施例においては、蛍光体層を以下のように形成する。まず、ITO(インジウムと錫との複合酸化物)をスパッタや蒸着などで成膜することにより導電性薄膜をガラスレンズの内壁面に形成する。次に、溶媒(イオン交換水80〜90%、アクリル系樹脂、シリコーンやエポキシ樹脂系10%程度、蛍光体適宜、IPA5%程度)に投入し、50〜300[V]の電圧を印加することにより、電気沈着塗装する。さらに、N雰囲気のもと50〜100℃で予備加熱後、400℃程度で焼き付けることにより形成することができる。以上の他は、実施例2あるいは実施例3と同様にして、発光装置を形成する。
【実施例6】
【0125】
本実施例においては、蛍光体層を以下のように形成する。まず、シリコーン樹脂:蛍光体=10:3〜12の割合で混合する。次に、N雰囲気のもと、50〜120℃程度で仮硬化する。さらに、150〜200℃程度で本硬化させることにより形成することができる。以上の他は、実施例2あるいは実施例3と同様にして、発光装置を形成する。
【実施例7】
【0126】
本実施例においては、蛍光体層を以下のように形成する。蛍光体層を形成する材料は、エチルセルロース12%含有テルピネオールと蛍光物質を2:1の割合で混合させたものとする。ここで、本実施例における蛍光物質は、CCA、YAG、BAM(例えば、BaMgAl1017:Eu)およびその他の蛍光体を含有させたものとする。また、形成方法および条件は、上述の実施例4と同様にして、発光装置を形成する。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかる半導体発光装置は、信頼性および耐熱性に優れ、高出力発光可能であるため、従来の電球や蛍光灯に代わる照明用光源として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な斜視図である。
【図2】図2は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の各構成部材を示す模式的な斜視図である。
【図3】図3は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な断面図である。
【図6】図6は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な断面図である。
【図7】図7は、本発明における一実施例にかかる半導体装置の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0129】
100、200、300、400、500・・・半導体装置
101・・・透光性部材
101a・・・透光性部材の球面部
101b・・・透光性部材の端部(縁部)
102・・・半導体素子
103・・・支持部材
104・・・第二の板材
105・・・第一の板材
106・・・中空部
107・・・接合材
108・・・突出部
109・・・凹部
109a・・・凹部の側壁部
109b・・・凹部の底部
110・・・第一の導電性部材
111・・・第二の導電性部材
201・・・波長変換部材
301・・・フィラー含有層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性部材に導電性部材が配されてなる支持体と、該支持体に搭載された半導体素子とを有する半導体装置であって、
前記支持体は、前記半導体素子が配される凹部と、少なくとも前記半導体素子を覆う透光性部材とを備え、
前記導電性部材は、前記半導体素子と電気的に接続されており、前記凹部の底部に配される第一の導電性部材と、該第一の導電性部材から絶縁された前記凹部の側壁部に配される第二の導電性部材とからなり、
前記透光性部材は、導電性材料を介して前記凹部の側壁部に配されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記側壁部は、前記半導体素子に近接する突出部を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一の導電性部材は、前記凹部の側壁部の外側に延出される請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子は、同一面側に正負一対の電極を有し、該電極と接続される導体配線を有する支持部材を介して前記支持体の凹部に載置される請求項1乃至3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第二の導電性部材は、前記透光性部材の端部の外側に延出される請求項1乃至4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第一の導電性部材および/または第二の導電性部材は、導電性ワイヤにて前記半導体素子と電気的に接続されている請求項1乃至5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体装置は、前記半導体素子から照射された光を所定の方向に出射させる反射部材を備え、前記突出部あるいは前記導電性ワイヤは、前記所定の方向の側に配されている請求項2乃至6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記透光性部材は、前記半導体素子からの光を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光物質が含有された波長変換部材を備える請求項5乃至7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記波長変換部材と前記透光性部材との間に、前記半導体素子からの光のうち、400nm以下の波長の光を反射あるいは吸収する部材を有する請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記蛍光物質は、少なくとも前記発光素子からの光により励起され可視光領域の光を発する二種以上の蛍光体からなり、それらの蛍光体の発光が合成され白色系の混色光を発する請求項8または9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁性部材は、セラミックス材料からなる請求項1乃至10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記導電性部材は、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材、あるいは、AuおよびAgから選択された少なくとも一種を含む鑞材である請求項1乃至11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第一の導電性部材の融点(Ta)、前記支持部材を前記支持体に接合する導電性部材の融点(Tb)および前記透光性部材を接合する導電性材料の融点(Tc)の関係は、Ta≧Tb>Tcである請求項4乃至12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記支持体と前記透光性部材とからなる中空部に封入されたガスのリーク量が1×10−6Pa・m/sec以下である請求項1乃至13に記載の半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−179520(P2006−179520A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368163(P2004−368163)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】