説明

半導体装置

【課題】 多層配線の層間絶縁膜としてlow−k材料を用いた半導体チップを樹脂封止した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜の剥離を防止する。
【解決手段】 半導体装置は、その主面の厚さ方向にローカル層、中間層、グローバル層が順に形成されている半導体チップ1Cと、半導体チップ1Cを被覆する封止樹脂8とを備えている。ローカル層は酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜3を有しており、中間層はlow−k材料からなる層間絶縁膜5を有しており、グローバル層は酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜6を有している。半導体チップ1Cのコーナ部において、層間絶縁膜3、層間絶縁膜5および層間絶縁膜6が除去されて、長溝9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、low−k材料からなる層間絶縁膜を介して多層配線が形成された半導体チップを有する半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の素子から構成される回路およびそれら素子間等を接続する多層配線が、半導体チップ(以下、単にチップと略する)内に形成される。このチップは、ダイシングにより半導体ウエハ(以下、単にウエハと略する)から平面形状が矩形状の数mm角のチップとして切り出される。このチップ上に形成されているパッドにワイヤボンディングを行い、チップ等を封止樹脂により被覆して、半導体装置が形成される。
【0003】
このダイシングによりウエハから複数のチップを切り出す際に、多層配線間に形成された絶縁膜(誘電体膜)にクラックが生じる等の問題がある。この問題に対し、特許文献1は、チップの外周部にクラックを防止する溝の製造方法について記載している。
【0004】
また、非特許文献1は、チップが封止樹脂により被覆された場合、封止樹脂によるせん断応力が、チップのコーナ部で最大となるため、多層配線の層間絶縁膜としてlow−k膜を用いたときに、そのlow−k膜がチップのコーナ部で剥離することに関して記載している。
【特許文献1】日本国特許第2776457号公報
【非特許文献1】S.Okikawa et al. "Stress Analysis of Passivation-Film Crack for Plastic Molded LSI Caused by Thermal Stress", ISTFA, 1983, p275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が検討した半導体装置の一例を以下に示し、本発明が解決しようとする課題を説明する。図14は金属配線M1〜M6が形成された多層配線を有する半導体基板(以下、単に基板と略する)101Sの概略断面図であり、図15はその形成フロー図である。図16は多層配線を有する半導体チップ(以下、単にチップと略する)101Cを封止樹脂108で被覆した状態の半導体装置の概略平面図である。図17および図18は図16のE−E’線の概略断面図である。図19は多層配線および長溝109を有するチップ101Cを封止樹脂108で被覆した状態の半導体装置の概略平面図である。図20は図19のF−F’線の概略断面図である。
【0006】
図14に示すように、半導体基板101S上には、金属配線M1〜M6からなる多層配線が形成されている。
【0007】
詳説すると、この半導体基板101S上には、層間絶縁膜102aが形成されており、層間絶縁膜102aに形成された接続孔にはプラグP1が形成されている。この層間絶縁膜102a上には、層間絶縁膜103が形成されており、層間絶縁膜103に形成された配線溝には金属配線M1が形成されている。
【0008】
この層間絶縁膜103上には、バリア膜104を介して層間絶縁膜105aが形成されており、層間絶縁膜105aに形成された接続孔にはビアホール(Via Hole)V1が形成されている。この層間絶縁膜105a上には、層間絶縁膜105bが形成されており、層間絶縁膜105bに形成された配線溝には金属配線M2が形成されている。同様に、ビアホールV1/金属配線M2上には、ビアホールV2/金属配線M3からビアホールV4/金属配線M5までが形成されている。
【0009】
金属配線M5が形成されている層間絶縁膜105b上には、バリア膜104を介して層間絶縁膜106aが形成されており、層間絶縁膜106aに形成された接続孔にはビアホールV5が形成されている。この層間絶縁膜106a上には、層間絶縁膜106bが形成されており、層間絶縁膜106bに形成された配線溝には金属配線M6が形成されている。
【0010】
この層間絶縁膜106b上には、層間絶縁膜102bが形成されており、層間絶縁膜102bに形成された接続孔にはプラグP2が形成されている。この層間絶縁膜102b上には、最上配線107が形成されている。
【0011】
この基板101S上には、金属配線M1〜M6のうち最下位の金属配線M1と、層間絶縁膜103とで1つの層(以下、ローカル層と称する)が形成されている。また、金属配線M1〜M6のうち最上位の金属配線M6と、層間絶縁膜106bと、ビアホールV5と、層間絶縁膜106aとで1つの層(以下、グローバル層と称する)が形成されている。また、金属配線M1〜M6のうちローカル層とグローバル層との間の配線となる金属配線M2と、層間絶縁膜105bと、ビアホールV1と、層間絶縁膜105aとで1つの層(以下、中間層と称する)が形成されている。同様に、金属配線M3、層間絶縁膜105b、ビアホールV2および層間絶縁膜105aで1つの中間層が形成されている。また、金属配線M4、層間絶縁膜105b、ビアホールV3および層間絶縁膜105aで1つの中間層が形成されている。また、金属配線M5、層間絶縁膜105b、ビアホールV4および層間絶縁膜105aで1つの中間層が形成されている。すなわち、金属配線M1〜M6が形成されている多層配線において、半導体基板101S上には、1つのローカル層と、4つの中間層と、1つのグローバル層とが形成されていることとなる。
【0012】
ローカル層の層間絶縁膜103は、例えばTEOS(tetraethylorthosilicate or tetraethoxysilane)を原料としたCVD法により形成された酸化シリコンを主成分とする絶縁膜(SiO)から形成されている。また、最小配線幅および配線間隔のファインピッチを有する中間層の層間絶縁膜105a、105bは、多層配線の配線間容量低減のための低誘電率膜(以下、low−k膜と称する)から形成され、例えばSiOCなどからなる。また、コースピッチを有するグローバル層の層間絶縁膜106a、106bは、例えばTEOSを原料としたCVD法により形成された酸化シリコンを主成分とする絶縁膜(SiO)から形成されている。
【0013】
また、多層に形成された金属配線M1〜M6は、例えば銅(Cu)などからなり、ローカル層、中間層、グローバル層の各層の間に形成されているバリア膜104は、そのCuからなる金属配線M1〜M6を被覆するために形成されており、例えばSiCNなどからなる。また、グローバル層上には、プラグP2と電気的に接続され、ワイヤボンディングで配線端子を引き出すための最上配線107が形成されており、例えばアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜から形成されている。
【0014】
図14および図15を用いて、基板101S上の多層配線の構造およびその形成方法について説明する。まず、ステップS1では、周知の方法により、例えばシリコン(Si)からなる基板101Sの主面上に、例えばCMIS(Complementary Metal Insulator Semiconductor)トランジスタなど(図示せず)を形成する。
【0015】
次いで、ステップS2では、CMISトランジスタのソース・ドレイン上およびゲート電極上にプラグP1を形成する。プラグP1は、例えばCVD法により酸化シリコンを主成分とした絶縁膜(SiO)からなる層間絶縁膜102aを堆積して凹凸段差を平坦化し、ソース・ドレイン上およびゲート電極上に接続孔をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔してから、例えばCVD法によりタングステン(W)膜からなる金属膜を埋め込まれてなる。
【0016】
次いで、ステップS3では、シングルダマシン法により、ローカル層を1層形成する。これにより、多層配線の1つとなる金属配線M1を形成するための成膜および加工がおこなわれる。すなわち、この金属配線M1は、層間絶縁膜102a上に形成した、例えば酸化シリコンを主成分とした絶縁膜(SiO)からなる層間絶縁膜103に配線溝をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔し、その配線溝に、例えばメッキ法によりCuからなる金属膜を埋め込んだ後、CMP法を用いて平坦化することによって形成される。なお、層間絶縁膜103は、例えばTEOSを用いたCVD法により形成された酸化シリコンを主成分とする絶縁膜(SiO)から形成されている。
【0017】
次いで、ステップS4では、例えばCVD法により、例えばCuからなる金属配線M1を被覆するする例えばSiCNなどからなるバリア膜104を形成する。
【0018】
次いで、ステップS5では、デュアルダマシン法により、中間層を1層形成する。これにより、多層配線の1つである金属配線M2を形成するための成膜および加工を、ビアホールV1の形成とともに行う。すなわち、この金属配線M2およびビアホールV1は、バリア膜104上に形成した例えばSiOCからなるlow−k膜の層間絶縁膜105a、105bに配線溝および接続孔をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔し、その配線溝および接続孔に、例えばメッキ法によりCuを埋め込んだ後、CMP技術を用いて表面を平坦化することによって形成される。
【0019】
次いで、ステップS6では、例えばCVD法により、例えばCuからなる金属配線M2を被覆するする例えばSiCNなどからなるバリア膜104を形成する。
【0020】
このようなステップS5およびステップS6を繰り返すことにより、複数の中間層をバリア膜104を介して形成する。基板101S上には、中間層が4層形成される。すなわち、金属配線M2/ビアホールV1が形成されている中間層上には、金属配線M3/ビアホールV2、金属配線M4/ビアホールV3、金属配線M5/ビアホールV4のそれぞれの中間層が形成されることとなる。
【0021】
次いで、ステップS7では、デュアルダマシン法により、グローバル層を1層形成する。これにより、多層配線の1つである金属配線M6を形成するための成膜および加工を、ビアホールV5の形成とともに行う。すなわち、この金属配線M6およびビアホールV5は、バリア膜104上に形成した、例えば酸化シリコンを主成分とした絶縁膜(SiO)からなる層間絶縁膜106a、106bに配線溝および接続孔をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔し、メッキ法により、その配線溝および接続孔にCuを埋め込んだ後、CMP技術を用いて表面を平坦化することによって形成される。
【0022】
次いで、ステップS8では、グローバル層の金属配線M6上にプラグP2を形成する。プラグP2は、例えばCVD法により、酸化シリコンを主成分とした絶縁膜(SiO)からなる層間絶縁膜102bを堆積して凹凸段差を平坦化しグローバル層の金属配線M6上に接続孔をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔してから、例えばCVD法によりタングステン(W)膜からなる金属膜を埋め込まれてなる。
【0023】
次いで、ステップS9では、最上配線層を形成する。この最上配線層では、例えばアルミニウムなどからなる配線(最上配線107)またはパッドが形成されることとなる。以上により基板101S上に多層配線が形成されることとなる。
【0024】
この多層配線が形成された基板101S、すなわちチップ101Cを例えばモールド樹脂からなる封止樹脂108で被覆した状態の半導体装置を、図16および図17に示す。このチップ101C上の多層配線は、図14で示した多層配線の要部を示すものであり、チップ101C上にローカル層の層間絶縁膜103、中間層の層間絶縁膜105およびグローバル層の層間絶縁膜106の順で形成されている。
【0025】
非特許文献1によると、チップを封止樹脂で被覆した場合、封止樹脂による応力は、垂直応力、せん断応力、および側面応力が発生することとなる。このことから図16および図17に示すように、垂直応力St4は、封止樹脂108からチップ101Cの主面に垂直な方向に発生すると考えられる。また、せん断応力St1、St2はチップ101Cの主面と平行な方向においてチップ101Cのチップ端からチップ中心への方向に発生すると考えられる。このせん断応力St1は、チップ101Cのコーナ部に集中したせん断応力であり、せん断応力St2より大きい。また、側面応力St3は、封止樹脂108からチップ101Cの側面に垂直な方向に発生すると考えられる。
【0026】
ところで、本発明者が検討している半導体装置において多層配線間容量低減のために層間絶縁膜105としてlow−k材料を用いている。また、層間絶縁膜103および層間絶縁膜106の材料として例えばSiOを用いている。この半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行った場合、図18に示すように、low−k材料からなる層間絶縁膜105が剥離する問題が生じた。特に、low−k材料からなる層間絶縁膜105の剥離は、チップ101Cのコーナ部から発生し、層間絶縁膜105の下層となる層間絶縁膜103との界面で発生していた。この剥離する原因として、層間絶縁膜105に用いられるlow−k材料が、従来の材料、例えばSiOに比べて応力に対する耐性が低いため、封止樹脂からの応力により、層間絶縁膜105が剥離するものと考えられる。また、剥離は、チップ101Cの平面形状が矩形状であることから、コーナ部からチップ端から中心に向けてチップの主面上に発生するせん断応力St1が主要因と考えられる。また、せん断応力St1により、層間絶縁膜(low−k)105の上層の層間絶縁膜(SiO)106に引っ張られて層間絶縁膜(low−k)105が変形し、密着性の低い下層の層間絶縁膜(SiO)103との界面で剥離が発生するものと考えられる。
【0027】
また、特許文献1によると、図19に示すように、チップ101Cの外周部に長溝109を設けて層間絶縁膜を除去することで、ダイシングによりウエハから複数のチップ101Cを切り出す際に、チップ101Cに形成された層間絶縁膜にクラックが生じることを防止できる。
【0028】
しかしながら、図19で示した半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行った場合でも、図20に示すように、low−k材料からなる層間絶縁膜105が剥離する問題が生じた。この場合においても、チップ101Cの主面上においてせん断応力St1がチップ101Cのコーナ部からチップ中心に向けて発生しているため、層間絶縁膜105が剥離するものと考えられる。なお、層間絶縁膜105の剥離にせん断応力St1が主要因であると考えられるため、図19および図20では、せん断応力St1のみ図示している。
【0029】
本発明の目的は、多層配線の層間絶縁膜としてlow−k材料を用いた半導体チップを樹脂封止した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜の剥離を防止できる技術を提供することにある。
【0030】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0032】
本発明による半導体装置は、矩形状の半導体チップの主面上に、酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜と、low−k材料からなる層間絶縁膜と、を含む複数層の層間絶縁膜を介して複数層の金属配線が形成され、前記半導体チップの主面上が封止樹脂で被覆されており、前記半導体チップの少なくともコーナ部では、前記複数層の層間絶縁膜を貫通する長溝が最下層のlow−k材料からなる層間絶縁膜を貫通するように形成され、前記コーナ部における前記長溝の平面形状は、多角形または円弧状である。
【発明の効果】
【0033】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0034】
半導体チップのコーナ部の層間絶縁膜を除去することにより、半導体チップのコーナ部のせん断応力を緩和してlow−k材料からなる層間絶縁膜の剥離を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態1で示す半導体装置の一例を図1〜図8により説明する。図1は多層配線を有する半導体チップ(以下、単にチップと略する)1Cの概略平面図であり、図2は図1に示す半導体装置のA−A’線の概略断面図である。図3は本実施の形態で示す半導体装置の他の一例を示した概略平面図である。図4は半導体ウエハ(以下、単にウエハと略する)からチップ1Cが切断される前の状態を示すウエハの概略平面図である。図5〜図8は本実施の形態で示す半導体装置の製造工程中の概略断面図であるとともに、図4のB−B’線の概略断面図である。
【0037】
多層配線が形成されたチップ1Cを例えばモールド樹脂からなる封止樹脂8で被覆した状態の半導体装置が図1および図2に示されている。なお、図2に示す半導体基板(以下、単に基板と略する)1S上の多層配線は、図14で示した多層配線の要部を示すものであり、基板1S上にローカル層の層間絶縁膜3、中間層の層間絶縁膜5およびグローバル層の層間絶縁膜6の順で形成されている。すなわち、本実施の形態で示す半導体装置は、その主面の厚さ方向に、ローカル層、中間層およびグローバル層が順に形成されているチップ1Cと、チップ1Cを被覆する封止樹脂8とを備えている。
【0038】
このローカル層およびグローバル層は、酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜3、層間絶縁膜6を有しており、これら層間絶縁膜3、6の材料として、例えばSiOを用いることができる。また、中間層は、low−k材料からなる層間絶縁膜5を有している。中間層の層間絶縁膜5としてlow−k材料を用いることで多層配線間容量を低減している。この層間絶縁膜3のlow−k材料の誘電率は、3.5以下であって、例えば市販されている米Applied Materials社の「Black Diamond」などのSiOC系材料である。なお、low−k材料としてはSiOC系材料に限らず、SiOCH系材料、SiO系材料、CF系材料およびポーラスlow−k材料であっても良い。
【0039】
チップ主面に平行な面において矩形状をしているチップ1Cは、主面上に形成された長溝9によって囲まれている領域には、例えばCMISトランジスタなどの素子が形成される。図1に示すようにチップ1Cのコーナ部において長溝9が多角形形状となるように、図2に示す層間絶縁膜3、層間絶縁膜5および層間絶縁膜6が除去されている。
【0040】
前記発明が解決しようとする課題の欄において図19および図20を用いて説明したように、チップ101Cの外周部に長溝109を形成することで、ダイシングによりウエハから複数のチップ101Cを切り出す際に、チップ101Cに形成された層間絶縁膜にクラックが生じることを防止することはできる。
【0041】
しかしながら、図19で示した半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行った場合、図20に示すように、low−k材料からなる層間絶縁膜105が剥離する問題が生じてしまう。チップ101Cの平面形状が矩形状であることから、コーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ101Cの主面上に発生するせん断応力St1が剥離の主要因と考えた。
【0042】
そこで、本実施の形態では、せん断応力St1を緩和するように、図1に示すようにチップ1Cのコーナ部において長溝9が多角形形状となるように、図2に示す層間絶縁膜3、層間絶縁膜5および層間絶縁膜6を除去している。
【0043】
したがって、矩形状のチップ101Cのコーナ部に沿って形成した長溝109のコーナ角度を90度(図19参照)から、鈍角化することで(図1参照)、チップ101Cのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ101Cの主面上に発生するせん断応力St1から、チップ1Cのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ1Cの主面上に発生するせん断応力St5へ緩和(分散)している。本実施の形態で示す半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行ったところ、半導体装置の信頼性として許容できる範囲まで、層間絶縁膜5の剥離が発生しなかった。すなわち、多層配線の層間絶縁膜5としてlow−k材料を用いたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜5の剥離を防止できる。
【0044】
さらに、図1で示すようにチップ1Cのコーナ部における長溝の平面形状が、多角形状しているが、図3に示すように、チップ1Cのコーナ部において長溝9が円弧形状となるように、図2に示す層間絶縁膜3、層間絶縁膜5および層間絶縁膜6を除去しても良い。チップ1Cのコーナ部に沿って形成した長溝9のコーナを多角形状(図1参照)から、円弧形状することで(図3参照)、チップ1Cのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ1Cの主面上に発生するせん断応力St5から、せん断応力St6へより緩和することができる。したがって、多層配線の層間絶縁膜5としてlow−k材料を用いたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜5の剥離をより防止できる。
【0045】
図4はウエハからチップ1Cが切断される前の状態を示すウエハの概略平面図である。図4に示すように、平面形状が矩形状のチップ1Cが、マトリクス状に配置されている。そのチップ1C間は、いわゆるダイシングライン(スクライブライン)であり、チップ面積を増加せずに、そのダイシングラインにTEG(Test Element Group)10が形成されている。図4に示すようにTEG10を形成することで、トランジスタ、多層配線などの電気的特性に対する、low−k材料の誘電率などの電気的特性、密度や空孔率などによる影響およびプロセス処理による影響を把握することができる。
【0046】
次に、本実施の形態で示す半導体装置の製造方法について、特に多層配線を有するチップ1Cに長溝9を形成する方法について、図5〜図8により説明する。なお、基板1S上に、ローカル層、中間層、グローバル層などの形成方法に関しては、発明の解決しようとする課題で図15を用いて説明した方法と同様であるので省略する。
【0047】
まず、図5に示すように、基板1S上にローカル層の層間絶縁膜3、中間層の層間絶縁膜5およびグローバル層の層間絶縁膜6を順に形成する。この時、後に形成される長溝部分には、ローカル層、中間層およびグローバル層の金属配線およびビアホールの形成と同時に、金属膜4を形成しておく。また、グローバル層上には最上配線として、例えば配線または電極パッドが形成されるが、この形成と同時に、金属膜4上に金属膜7を形成しておく。
【0048】
次いで、図6に示すように、基板1S上の全体をレジスト膜12で覆い、長溝が形成される領域のレジスト膜12をフォトリソグラフィおよびエッチングにより開孔する。
【0049】
次いで、図7に示すように、エッチングにより開孔したレジスト膜12から層間絶縁膜6、層間絶縁膜5および層間絶縁膜3を除去して、長溝9を形成する。なお、図4で示したTEG10を領域10aに形成することもできる。
【0050】
この長溝9が形成された基板1S、すなわち長溝9を有するチップ1Cを半導体ウエハから切り出し、封止樹脂8で被覆すると図1および図2で示した半導体装置として形成される。
【0051】
さらに、図8に示すように、長溝9を例えばTEOSを原料としたCVD法により形成された酸化シリコンを主成分とする絶縁膜(SiO)を埋め込み、鬆14を形成することもできる。このような場合であっても、長溝9に例えばSiOからなる絶縁膜を埋め込まない場合と同様にせん断応力を緩和することができると考えられる。
【0052】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、図1に示したように長溝9はチップ1Cの外周に沿って形成されているが、本実施の形態では、チップ1Cのコーナ部においてのみ長溝9aが形成されている点で相違する。したがって、以下は相違する点を中心に説明する。
【0053】
図9は多層配線を有する半導体チップ(以下、単にチップと略する)1Cを例えばモールド樹脂からなる封止樹脂8で被覆した状態の半導体装置の概略平面図である。
【0054】
チップ主面に平行な面において矩形状をしているチップ1Cのコーナ部には、長溝9aが形成されている。すなわち、図9に示すようにチップ1Cのコーナ部において長溝9aが多角形形状となるように、多層配線の層間絶縁膜を除去している。なお、図9で示すようにチップ1Cのコーナ部における長溝の平面形状を、多角形形状としているが、図3に示すように、チップ1Cのコーナ部においてのみ長溝9が円弧形状となるように層間絶縁膜を除去しても良い。
【0055】
したがって、図19で示したように矩形状のチップ101Cのコーナ部に沿って形成した長溝109のコーナ角度を90度から、図9に示すように鈍角化することで、チップ101Cのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ101Cの主面上に発生するせん断応力St1から、チップ1Cのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けてチップ1Cの主面上に発生するせん断応力St5へ緩和(分散)している。本実施の形態で示す半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行ったところ、半導体装置の信頼性として許容できる範囲まで、low−k材料からなる層間絶縁膜の剥離が発生しなかった。すなわち、多層配線の層間絶縁膜としてlow−k材料を用いたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜の剥離を防止できる。
【0056】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、図1に示したように長溝9はチップ1Cの外周に沿って形成されているが、本実施の形態では、チップ1Cの外周部の多層配線の層間絶縁膜を除去する点で相違する。したがって、以下は相違する点を中心に説明する。
【0057】
図10は多層配線を有する半導体チップ(以下、単にチップと略する)1Cを例えばモールド樹脂からなる封止樹脂8で被覆した状態の半導体装置の概略平面図である。図11は図10で示した半導体装置のC−C’線の概略断面図である。なお、図11に示すチップ1C上の多層配線は、図14で示した多層配線の要部を示すものであり、チップ1C上にローカル層の層間絶縁膜3、中間層の層間絶縁膜5およびグローバル層の層間絶縁膜6の順で形成されている。
【0058】
チップ主面に平行な面において矩形状をしているチップ1Cの外周部では、多層配線の層間絶縁膜3、層間絶縁膜5および層間絶縁膜6が除去されている。すなわち、除去されずに残った多層配線および層間絶縁膜の平面形状が多角形形状を有するように、チップ1Cのコーナ部において多層配線の層間絶縁膜を除去している。なお、多層配線の層間絶縁膜の除去は、本実施の形態で示すように、チップ1Cの外周部全体ではなく、チップ1Cのコーナ部のみであっても良い。また、チップ1Cのコーナ部において除去されずに残った多層配線および層間絶縁膜の平面形状は、円弧形状であっても良い。
【0059】
したがって、図16に示したようにチップ101Cの多層配線および層間絶縁膜の平面形状が、そのコーナ部で90度であるのに対し、図10に示すようにチップ1Cのコーナ部において層間絶縁膜を除去することでコーナ部を鈍角化し、チップのコーナ部(チップ端)からチップ中心に向けて主面上に発生するせん断応力を、図16に示すせん断応力St1から図10に示すせん断応力St5へ緩和(分散)している。また、本実施の形態で示す半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行ったところ、半導体装置の信頼性として許容できる範囲まで、層間絶縁膜5の剥離が発生しなかった。すなわち、多層配線の層間絶縁膜5としてlow−k材料を用いたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜5の剥離を防止できる。
【0060】
(実施の形態4)
本実施の形態4で示す半導体装置の一例を図12〜図13により説明する。図12は多層配線を有する半導体チップ(以下、単にチップと略する)1Cを例えばモールド樹脂からなる封止樹脂8で被覆した状態の半導体装置の概略平面図である。図13は図12で示した半導体装置のD−D’線の概略断面図である。
【0061】
多層配線が形成されたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した状態の半導体装置が図12および図13に示されている。
【0062】
図13に示すようにチップ1C上の多層配線は、図14で示した多層配線の要部を示すものであり、チップ1C上にローカル層の層間絶縁膜3、中間層の層間絶縁膜5およびグローバル層の層間絶縁膜6の順で形成され、さらに緩衝層16が形成されている。すなわち、本実施の形態で示す半導体装置は、その主面の厚さ方向に、ローカル層、中間層およびグローバル層が順に形成され、さらにグローバル層上に緩衝層16が形成されているチップ1Cと、チップ1Cを被覆する封止樹脂8とを備えている。また、緩衝層16は図14で示したように最上配線107と同時に形成することができ、例えばアルミニウムを主成分とする金属膜からなる。
【0063】
チップ主面に平行な面において矩形状をしているチップ1Cは、そのチップ1Cのコーナ部において幅広の緩衝層16が形成されている。このように緩衝層16を形成することことで、チップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合にチップ1Cの主面上に発生するせん断応力は、緩衝層16がスライドすることにより吸収(緩和)され、low−k材料からなる層間絶縁膜5の界面までせん断応力が伝搬しないこととなる。また、本実施の形態で示す半導体装置に対し、例えばヒートサイクル試験、熱衝撃試験などの信頼性試験を行ったところ、半導体装置の信頼性として許容できる範囲まで、層間絶縁膜5の剥離が発生しなかった。すなわち、多層配線の層間絶縁膜5としてlow−k材料を用いたチップ1Cを封止樹脂8で被覆した場合において、そのlow−k材料からなる層間絶縁膜5の剥離を防止できる。
【0064】
なお、本実施の形態では、前記実施の形態1〜3で示したチップ1Cのコーナ部において多層配線の層間絶縁膜の除去は、行わなくても良い。また、チップ1Cのコーナ部において緩衝層16が形成されていれば、緩衝層16の平面形状はどのようなパターンであっても構わないが、チップ1C上において応力に対して最も変形(スライド)しやすいパターンであることが好ましい。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、前記実施の形態では、封止樹脂にモールド樹脂を適用した場合について説明したが、封止樹脂としてポッテイング樹脂を適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の一例を示した概略平面図である。
【図2】図1に示す半導体装置のA−A’線の概略断面図である。
【図3】実施の形態1で示す半導体装置の他の一例を示した概略平面図である。
【図4】実施の形態1で示す半導体ウエハの概略平面図である。
【図5】実施の形態1で示す半導体装置の製造工程中の概略平面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中における概略断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中における概略断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中における概略断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2における半導体装置の概略平面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における半導体装置の概略平面図である。
【図11】図10に示す半導体装置のC−C’線の概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4における半導体装置の概略平面図である。
【図13】図12に示す半導体装置のD−D’線の概略断面図である。
【図14】本発明者が検討した半導体装置の一例を示した概略断面図である。
【図15】図14に示す半導体装置の製造方法のフロー図である。
【図16】図14に示す半導体装置の概略平面図である。
【図17】図16に示す半導体装置のE−E’線の概略断面図である。
【図18】図16に示す半導体装置のE−E’線の概略断面図である。
【図19】本発明者が検討した半導体装置の他の一例を示した概略平面図である。
【図20】図19に示す半導体装置のF−F’線の概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1C 半導体チップ(チップ)
1S 半導体基板(基板)
3 層間絶縁膜
4 金属膜
5 層間絶縁膜
6 層間絶縁膜
7 金属膜
8 封止樹脂
9、9a 長溝
10 TEG
12 レジスト膜
13 絶縁膜
14 鬆
15 除去部
16 緩衝層
101C 半導体チップ(チップ)
101S 半導体基板(基板)
102a 層間絶縁膜
103 層間絶縁膜
104 バリア膜
105、105a、105b 層間絶縁膜
106、106a、106b 層間絶縁膜
107 最上配線
108 封止樹脂
109 長溝
M1、M2、M3、M4、M5、M6 金属配線
P1、P2 プラグ
St1、St2、St3、St4、St5、St6 応力
V1、V2、V3、V4、V5 ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の半導体チップの主面上に、酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜と、low−k材料からなる層間絶縁膜と、を含む複数層の層間絶縁膜を介して複数層の金属配線が形成され、前記半導体チップの主面上が封止樹脂で被覆された半導体装置であって、
前記半導体チップの少なくともコーナ部では、前記複数層の層間絶縁膜を貫通し、少なくとも最下層の前記low−k材料からなる層間絶縁膜を貫通する長溝が形成され、
前記コーナ部における前記長溝の平面形状は、多角形または円弧状であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
酸化シリコンを主成分とした絶縁膜が、前記長溝に埋め込まれ、
前記長溝には鬆が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記半導体チップがマトリクス状に形成されている半導体ウエハのダイシングラインに、TEGが形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
矩形状の半導体チップの主面上に、酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜と、low−k材料からなる層間絶縁膜と、を含む複数層の層間絶縁膜を介して複数層の金属配線が形成され、前記半導体チップの主面上が封止樹脂で被覆された半導体装置であって、
前記半導体チップの少なくともコーナ部では、前記複数層の層間絶縁膜の少なくとも最下層の前記low−k材料からなる層間絶縁膜が除去され、面取りされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
矩形状の半導体チップの主面上に、酸化シリコンを主成分とする層間絶縁膜と、low−k材料からなる層間絶縁膜と、を含む複数層の層間絶縁膜を介して複数層の金属配線が形成され、前記半導体チップの主面上が封止樹脂で被覆された半導体装置であって、
前記半導体チップの主面上の最上層には緩衝膜が形成され、
前記緩衝膜は、前記半導体チップの少なくともコーナ部において形成されており、前記半導体チップ上において応力に対して最も変形しやすいパターンであることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−179542(P2006−179542A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368668(P2004−368668)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】