半導体装置
【課題】ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流を均一にし、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体基板と、半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むようにゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、チャネル領域のチャネル幅は、半導体基板から離れるほど狭く形成され、第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、半導体基板から離れるほど広く形成される。
【解決手段】半導体基板と、半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むようにゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、チャネル領域のチャネル幅は、半導体基板から離れるほど狭く形成され、第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、半導体基板から離れるほど広く形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GAA構造の半導体装置に係わり、特に、同一面積上に複数のチャネル領域を形成した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高機能化、高集積化に伴い、MOSトランジスタの微細化が進んでいる。しかしながら、従来のMOSトランジスタでは、オン・オフ比が小さい。そのため、所望のオン電流を得るためには、ゲート電極の幅を所定の値以上にする、又は、同一平面上に複数のゲート電極を形成する必要がある。これらの方法では、電界効果トランジスタの占有面積が増大し、回路密度の向上に問題がある。
【0003】
そこで、所望のオン電流を得るための構造として、例えば、ゲート・オール・アラウンド(Gate All Around:以下、GAAと略記する)トランジスタが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
GAAトランジスタは、ゲート電極がチャネル領域を包み込むように形成されている。そのため、ゲート電極に電圧が印加された際、チャネル領域に電界が集中しやすく、スイッチング電流のオン・オフ比が大きく設定できる。また、同一面積上に多数のチャネル領域を形成することが可能であり、オン電流を大きくすることも可能である。
【0005】
GAAトランジスタに多数のチャネル領域を形成する際、上層と下層のチャネル領域に加工変換差が生じるため、チャネル領域のチャネル幅がばらついてしまう。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際のチャネルの抵抗値がそれぞれ異なる。従って、チャネルそれぞれに電流が均一に流れず、抵抗値の低いチャネルに電流が集中してしまう。その結果、全てのチャネルに電流が等しく流れた際に想定されるオン電流を得ることが出来ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−229107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流を均一にし、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性を向上させ得る半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例に係わる半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、前記第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、前記チャネル領域のチャネル幅は、前記半導体基板から離れるほど狭く形成され、前記第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど広く形成される。
【0009】
本発明の例に係わる半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上にシリコンで構成された第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、前記第2の半導体層の同一レイヤ間それぞれを接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、前記第2の半導体層の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど厚く形成され、前記複数のチャネル領域それぞれは、チャネル長方向と垂直な方向の断面が円形に形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流が均一化され、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係わるGAAトランジスタを模式的に示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係わる図1のII−II線に沿ったGAAトランジスタの断面図。
【図3】第1の実施形態に係わる図1のIII−III線に沿ったGAAトランジスタの断面図。
【図4】第2の実施形態に係わるGAAトランジスタのナノワイアチャネルを模式的に示した図。
【図5】第2の実施形態におけるGAAトランジスタのナノワイアチャネルを従来例と比較して示した平面図。
【図6】第2の実施形態に係わるGAAトランジスタのチャネル長方向と垂直な方向に沿った断面図。
【図7】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図8】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図9】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図10】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図11】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図12】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図13】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図14】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【図15】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【図16】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
1. 概要
本発明の例において、GAAトランジスタの複数のナノワイアチャネルは、上層のナノワイアチャネルと下層のナノワイアチャネルの外周の長さの違いを考慮して膜厚が形成される。つまり、下層に形成されるナノワイアチャネルの膜厚を薄く形成し、上層に形成されるナノワイアチャネルの膜厚を厚く形成する。
【0014】
ナノワイアチャネルの膜厚をそれぞれ変えて形成することにより、ナノワイアチャネルそれぞれで外周の長さが等しくなる。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際のナノワイアチャネルの抵抗値のばらつきを抑えることが出来る。従って、GAAトランジスタの動作時において、ナノワイアチャネルそれぞれに電流が均一に流れる。その結果、所定のオン電流を得ることが可能となる。更に、ナノワイアチャネルそれぞれに電流が均一に流れるため、チャネル領域の劣化の速度が均一となり、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0015】
2. 実施形態
(1) 第1の実施形態
図1は、GAAトランジスタを模式的に示す平面図である。
【0016】
素子分離領域101に取り囲まれた領域に一つのGAAトランジスタ102が形成されている。GAAトランジスタ102のソース・ドレイン領域104は、一定の間隔を有して2つ形成されている。更に、ソース・ドレイン領域104に挟まれてゲート電極103が形成されている。また、ソース・ドレイン領域104それぞれには、配線層とコンタクトを取るためのコンタクト部105が形成される。
【0017】
GAAトランジスタのゲート電極103は、ナノワイアチャネルを包み込むように形成される。そのため、図1で示している点線領域daには、周囲をゲート電極103で覆われたナノワイアチャネルが形成される。
【0018】
図2は、GAAトランジスタにおける図1のII−II線に沿った断面図を示している。
【0019】
図2において、P+型半導体基板106上には、SiGe(シリコンゲルマニウム)層107a,107b,107c及びSi(シリコン)層108a,108b,108cが交互に形成された積層構造を有する。また、この積層構造は、GAAトランジスタのソース・ドレイン領域104として機能する。ここで、SiGe層及びSi層の積層構造のみではなく、Si層、SiGe層、SiC層及びSiGeC層のいずれか2つを組み合わせた積層構造であってもよい。
【0020】
この積層構造は、一定の間隔を有して2つ形成されている。積層構造内の2つのSi層108aに挟まれた領域には、Si(シリコン)で構成されたワイア状のナノワイアチャネル109aが形成される。更に、積層構造内の2つのSi層108bに挟まれた領域、及び、2つのSi層108cに挟まれた領域にも、Siで構成されたワイア状のナノワイアチャネル109b及び109cがそれぞれ形成される。
【0021】
このように、GAAトランジスタは、同一面積上に複数のチャネル領域を有する構造となる。
【0022】
また、SiGe層107及びSi層108が相対する側壁を覆い、ナノワイアチャネル109それぞれを包み込むようにゲート絶縁膜110が形成される。
【0023】
更に、ナノワイアチャネル109を包み込むようにゲート絶縁膜110を介してゲート電極103が形成される。
【0024】
また、Si層108cの上部には、コンタクトプラグ111が形成される。
【0025】
最も上部に形成されたゲート電極103の上部には、絶縁膜112が形成され、その側面には、絶縁膜113が形成される。更に、絶縁膜112及び絶縁膜113を覆うように絶縁膜114が形成される。
【0026】
図3は、図1のIII−III線に沿った断面図を示している。
【0027】
図3に示したように、例えば、上層に形成されたナノワイアチャネル109cは、チャネル幅が狭くなり、下層に形成されたナノワイアチャネル109aは、チャネル幅が広くなる。また、ナノワイアチャネル109それぞれの上面の表面積は、下面の表面積よりも小さくなる。
【0028】
これは、シリコン基板上に多層のSi層を形成し、このSi層からGAAトランジスタのナノワイアチャネル109を形成する。この際、ナノワイアチャネルとなる領域を残すようエッチングすることによってSi層に開口部が形成される。しかしながら、この開口部は、上層と下層との加工変換差に起因して、順テーパー形状となってしまう。
【0029】
従って、従来のように全てのSi層の膜厚を同じにした場合、GAAトランジスタのナノワイアチャネル109は、上層のナノワイアチャネル109cのチャネル幅が下層のナノワイアチャネル109aより狭くなってしまう。そのため、上層のナノワイアチャネル109cの外周の長さは、下層のナノワイアチャネル109aの外周の長さと比較して短くなる。
【0030】
そこで、第1の実施形態において、ナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さの違いを考慮して膜厚を形成する。つまり、下層に形成されるナノワイアチャネル109の膜厚を薄く形成し、上層に形成されるナノワイアチャネル109の膜厚を厚く形成する。
【0031】
このように形成することで、全てのナノワイアチャネル109の外周の長さ等しくすることが可能となる。そのため、GAAトランジスタのゲート電極103に所定の電圧を印加してオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが低減できる。従って、GAAトランジスタの動作時、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れ、所定のオン電流を得ることができる。
【0032】
更に、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れるため、ナノワイアチャネル109の劣化の速度も等しくなる。そのため、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0033】
(2) 第2の実施形態
図4は、GAAトランジスタのナノワイアチャネルを模式的に示しており、図5(a)は、従来のGAAトランジスタのナノワイアチャネルのみを模式的に示した平面図である。
【0034】
GAAトランジスタのナノワイアチャネル109を形成する際、RIE法を用いてSi層がエッチングされる。しかしながら、このRIE法によってエッチングされた面は、図4で示すように凹凸が生じてしまう。更に、図4及び図5(a)で示すように、RIE法によって形成されたナノワイアチャネル109は、うねっている。この凹凸及びうねりに起因してナノワイアチャネル109内のキャリアが散乱されてしまい、GAAトランジスタをオン状態にした際、ナノワイアチャネル109に流れる電流値が低下してしまう。その結果、GAAトランジスタをオン状態にした際、それぞれのナノワイアチャネル109の抵抗値は、凹凸の形状及びうねりの形状によってばらつくという問題がある。
【0035】
更に、ナノワイアチャネル109のチャネル長方向と垂直な方向における断面が四角形となっている場合、その角部に電界が集中し易い。そのため、角部近傍の絶縁膜に高い電圧が印加されてしまい、絶縁膜を破壊してしまう可能性が高まる。その結果、GAAトランジスタの信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0036】
図6は、第2の実施形態における図1のIII−III線に沿った断面図を示している。また、図5(b)は、第2の実施形態におけるGAAトランジスタのナノワイアチャネルのみを模式的に示した平面図である。
【0037】
第2の実施形態では、上記の問題を解決するため、まず、第1の実施形態と同様に、全てのナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さを等しく形成する。
【0038】
その後、例えば、800度程度のH2を含む雰囲気下でアニールを行い、ナノワイアチャネル109の表面のマイグレーションを行う。このプロセスによりナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向の断面は、四角形から円形に変形する。
【0039】
ナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向の断面を円形に形成し直すことによりRIE法によって形成された凹凸をなくすことが出来る。更に、図5(b)で示すように、ナノワイアチャネル109それぞれは、円形に形成される際、直線状に形成するよう制御することが出来る。そのため、GAAトランジスタのゲート電極103に所定の電圧を印加してオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが低減できる。
【0040】
更に、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様にナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さは、等しくなるよう形成される。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが更に低減できる。その結果、GAAトランジスタの動作時、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れ、所定のオン電流を得ることができる。
【0041】
また、ナノワイアチャネル109それぞれは、均一に電流が流れるため、ナノワイアチャネル109それぞれの劣化の速度も等しくなる。更に、図6で示すようにナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向における断面は、円形になる。そのため、ナノワイアチャネル109に角部が形成されなくなり、電界の集中する場所が無くなりため、ゲート絶縁膜の破壊が抑制される。その結果、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0042】
(3) 第3の実施形態
第3の実施形態において、図7〜図16を参照しながら、本発明の第2の実施形態におけるGAAトランジスタの製造方法の一例について説明する。
【0043】
先ず、図7に示すように、半導体基板にP型の不純物をイオン注入し、P+型半導体基板106を形成する。これは、半導体基板に寄生チャネルを形成するのを防止するためである。次に、ナノワイアチャネル及びソース・ドレインとなるSiGe(シリコンゲルマニウム)層201a及びSi(シリコン)層202aの積層構造をエピタキシャル成長により形成する。更に、SiGe層201b,Si層202b,SiGe層201c及びSi層202cを順次エピタキシャル成長により形成する。
【0044】
ここで、本実施形態の製造方法において、SiGe層及びSi層からなる積層構造が3層の場合について説明しているが、2層の積層構造を形成しても、3層より多層の積層構造を形成してもよい。
【0045】
次に、図8に示すように、最上部に形成されたSi層202c上にナノワイアチャネルのエッチングマスクとして用いるマスク材203をプラズマCVD法により形成する。このマスク材203は、例えば、シリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aの積層膜である。
【0046】
次に、図示はしないが、GAAトランジスタが形成される領域にシリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aが残存するようパターニングを行い、RIE法によりSTI(Shallow Trench Isolation)溝を形成する。その後、プラズマCVD法によりSTI溝内に素子分離絶縁膜を埋め込む。この素子分離絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜である。更に、CMP法によりSTI溝に埋め込まれた素子分離絶縁膜の平坦化を行い、STI構造の素子分離絶縁膜を形成する。
【0047】
その後、シリコン窒化膜203aをリソグラフィー工程及びRIE法により所望のナノワイアパターンに形成する。
【0048】
次に、図9に示すように、ダマシンゲート溝をエッチングするために用いるマスク材204をプラズマCVD法により堆積する。このマスク材204は、例えば、シリコン酸化膜204b及びシリコン窒化膜204aの積層膜である。
【0049】
次に、図10に示すように、リソグラフィー工程及びRIE法により、シリコン窒化膜204aを選択的にエッチングした後、シリコン酸化膜203b及びシリコン酸化膜204b選択的にエッチングすることでゲート電極を形成するためのゲートダマシン溝を形成する。
【0050】
この時、ナノワイアチャネルを形成する領域の上部に形成したシリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aは選択的に残す。
【0051】
次に、図11に示すように、ナノワイアチャネルを形成するため、シリコン酸化膜203b及びシリコン酸化膜204bをマスクに用いてSiGe層201b,201c及びSi層202a,202b,202cがワイア状になるよう順次エッチングを行う。
【0052】
この時、Si層202aをエッチングする際、オーバーエッチングを行うことにより、ナノワイアチャネルが形成されるSi層202上のシリコン窒化膜203a,シリコン酸化膜203bを選択的に除去すると共に、シリコン酸化膜204bを除去する。
【0053】
Si層202a,202b,202cを順次エッチングする際、上層のSi層202cと下層のSi層202aとでは、エッチングの加工変換差が生じてしまう。そのため、このエッチングによって形成された溝は、順テーパー形状が形成される。そのため、ナノワイアチャネルが形成されるSi層202のチャネル長方向と垂直な方向に沿った断面は、台形となってしまう。
【0054】
また、図12に示すように、ナノワイアチャネルを形成するためのSi層202a,202b,202cそれぞれの下部に形成されたSiGe層201a,201b,201cを等方的にエッチングする。ここで、等方エッチングとして、ドライエッチングで行う場合、例えば、三フッ化塩素(ClF3)を含んだガスを用いれば良く、ウェットエッチングで行う場合、例えば、エッチャントとしてフッ硝酸を用いれば良い。この時、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cそれぞれの全面が露出する様にエッチングを行う。
【0055】
この時、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cは、それぞれSi層202のチャネル長方向と垂直な方向における断面が四角い形状をしている。
【0056】
次に、図13に示すように、この形状ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cそれぞれのチャネル長方向と垂直な方向における断面を円形にするため、例えば、約800度のH2雰囲気下でアニールを行う。
【0057】
また、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cのチャネル長方向と垂直な方向の断面を円形に形成した後、ナノワイアチャネルを形成する領域にP型の不純物を斜めからイオン注入し、結晶回復のためのアニールを行う工程を加えてもよい。
【0058】
これ以後の図14乃至図17は、図13のA−A線に沿った断面図を示している。
【0059】
次に、図14に示すように、例えば、例えば、窒素、酸素、塩化水素(N2,O2,HCl)の混合ガス雰囲気中で、900度の熱処理を行い、ゲート絶縁膜として機能するシリコン酸化膜208を形成する。
【0060】
次に、図15に示すように、メタルCVD法により、金属化合物209をゲートダマシン溝に埋め込む。この金属化合物209は、例えば、窒化チタンとタングステンの化合物で構成される。その後、金属化合物209をCMP法によって平坦化する。続けて、RIE法により、金属化合物209上にリセスを形成する。更に、CVD法によりシリコン窒化膜210とα−シリコン層211をリセス内に形成する。その後、CMP法によりα−シリコン層211を平坦化する。
【0061】
次に、図16に示すように、α−シリコン層211をマスクとしてマスク材203及びシリコン酸化膜204bを選択的に除去する。その後、α−シリコン層211を選択的に除去する。
【0062】
次に、通常の工程で金属化合物の側壁に絶縁膜が形成される。更に、通常の工程で、Si層202cの上部、シリコン窒化膜210の上部に絶縁膜が形成される。更に、通常の工程でSi層202cの上部に形成された絶縁膜にコンタクト孔を開口し、コンタクトプラグを形成することで、図2に示すGAAトランジスタが完成する。
【0063】
4. むすび
本発明によれば、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流が均一され、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性が向上する。
【0064】
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
101: 素子分離絶縁膜、 102: GAAトランジスタ、 103: ゲート電極、 104: ソース・ドレイン領域、 105: コンタクト部、 106: P+型半導体基板、 107:SiGe層、 108: Si層、 109: ナノワイアチャネル、 110: ゲート絶縁膜、 111: コンタクトプラグ、 112:絶縁膜、113: 絶縁膜: 114: 絶縁膜、 201: SiGe層、 202: Si層、 203: マスク材、 203a: シリコン窒化膜、 203b: シリコン酸化膜、 204: マスク材、 204a: シリコン窒化膜、 204b: シリコン酸化膜、 207: Si層、 208: シリコン酸化膜、 209: 金属化合物、 210: シリコン窒化膜、 211: α−シリコン層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、GAA構造の半導体装置に係わり、特に、同一面積上に複数のチャネル領域を形成した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高機能化、高集積化に伴い、MOSトランジスタの微細化が進んでいる。しかしながら、従来のMOSトランジスタでは、オン・オフ比が小さい。そのため、所望のオン電流を得るためには、ゲート電極の幅を所定の値以上にする、又は、同一平面上に複数のゲート電極を形成する必要がある。これらの方法では、電界効果トランジスタの占有面積が増大し、回路密度の向上に問題がある。
【0003】
そこで、所望のオン電流を得るための構造として、例えば、ゲート・オール・アラウンド(Gate All Around:以下、GAAと略記する)トランジスタが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
GAAトランジスタは、ゲート電極がチャネル領域を包み込むように形成されている。そのため、ゲート電極に電圧が印加された際、チャネル領域に電界が集中しやすく、スイッチング電流のオン・オフ比が大きく設定できる。また、同一面積上に多数のチャネル領域を形成することが可能であり、オン電流を大きくすることも可能である。
【0005】
GAAトランジスタに多数のチャネル領域を形成する際、上層と下層のチャネル領域に加工変換差が生じるため、チャネル領域のチャネル幅がばらついてしまう。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際のチャネルの抵抗値がそれぞれ異なる。従って、チャネルそれぞれに電流が均一に流れず、抵抗値の低いチャネルに電流が集中してしまう。その結果、全てのチャネルに電流が等しく流れた際に想定されるオン電流を得ることが出来ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−229107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流を均一にし、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性を向上させ得る半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例に係わる半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、前記第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、前記チャネル領域のチャネル幅は、前記半導体基板から離れるほど狭く形成され、前記第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど広く形成される。
【0009】
本発明の例に係わる半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上にシリコンで構成された第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、前記第2の半導体層の同一レイヤ間それぞれを接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを具備し、前記第2の半導体層の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど厚く形成され、前記複数のチャネル領域それぞれは、チャネル長方向と垂直な方向の断面が円形に形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流が均一化され、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係わるGAAトランジスタを模式的に示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係わる図1のII−II線に沿ったGAAトランジスタの断面図。
【図3】第1の実施形態に係わる図1のIII−III線に沿ったGAAトランジスタの断面図。
【図4】第2の実施形態に係わるGAAトランジスタのナノワイアチャネルを模式的に示した図。
【図5】第2の実施形態におけるGAAトランジスタのナノワイアチャネルを従来例と比較して示した平面図。
【図6】第2の実施形態に係わるGAAトランジスタのチャネル長方向と垂直な方向に沿った断面図。
【図7】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図8】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図9】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図10】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図11】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図12】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図13】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す鳥瞰図。
【図14】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【図15】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【図16】第3の実施形態に係わるGAAトランジスタの製造工程を示す図13のA−A線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
1. 概要
本発明の例において、GAAトランジスタの複数のナノワイアチャネルは、上層のナノワイアチャネルと下層のナノワイアチャネルの外周の長さの違いを考慮して膜厚が形成される。つまり、下層に形成されるナノワイアチャネルの膜厚を薄く形成し、上層に形成されるナノワイアチャネルの膜厚を厚く形成する。
【0014】
ナノワイアチャネルの膜厚をそれぞれ変えて形成することにより、ナノワイアチャネルそれぞれで外周の長さが等しくなる。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際のナノワイアチャネルの抵抗値のばらつきを抑えることが出来る。従って、GAAトランジスタの動作時において、ナノワイアチャネルそれぞれに電流が均一に流れる。その結果、所定のオン電流を得ることが可能となる。更に、ナノワイアチャネルそれぞれに電流が均一に流れるため、チャネル領域の劣化の速度が均一となり、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0015】
2. 実施形態
(1) 第1の実施形態
図1は、GAAトランジスタを模式的に示す平面図である。
【0016】
素子分離領域101に取り囲まれた領域に一つのGAAトランジスタ102が形成されている。GAAトランジスタ102のソース・ドレイン領域104は、一定の間隔を有して2つ形成されている。更に、ソース・ドレイン領域104に挟まれてゲート電極103が形成されている。また、ソース・ドレイン領域104それぞれには、配線層とコンタクトを取るためのコンタクト部105が形成される。
【0017】
GAAトランジスタのゲート電極103は、ナノワイアチャネルを包み込むように形成される。そのため、図1で示している点線領域daには、周囲をゲート電極103で覆われたナノワイアチャネルが形成される。
【0018】
図2は、GAAトランジスタにおける図1のII−II線に沿った断面図を示している。
【0019】
図2において、P+型半導体基板106上には、SiGe(シリコンゲルマニウム)層107a,107b,107c及びSi(シリコン)層108a,108b,108cが交互に形成された積層構造を有する。また、この積層構造は、GAAトランジスタのソース・ドレイン領域104として機能する。ここで、SiGe層及びSi層の積層構造のみではなく、Si層、SiGe層、SiC層及びSiGeC層のいずれか2つを組み合わせた積層構造であってもよい。
【0020】
この積層構造は、一定の間隔を有して2つ形成されている。積層構造内の2つのSi層108aに挟まれた領域には、Si(シリコン)で構成されたワイア状のナノワイアチャネル109aが形成される。更に、積層構造内の2つのSi層108bに挟まれた領域、及び、2つのSi層108cに挟まれた領域にも、Siで構成されたワイア状のナノワイアチャネル109b及び109cがそれぞれ形成される。
【0021】
このように、GAAトランジスタは、同一面積上に複数のチャネル領域を有する構造となる。
【0022】
また、SiGe層107及びSi層108が相対する側壁を覆い、ナノワイアチャネル109それぞれを包み込むようにゲート絶縁膜110が形成される。
【0023】
更に、ナノワイアチャネル109を包み込むようにゲート絶縁膜110を介してゲート電極103が形成される。
【0024】
また、Si層108cの上部には、コンタクトプラグ111が形成される。
【0025】
最も上部に形成されたゲート電極103の上部には、絶縁膜112が形成され、その側面には、絶縁膜113が形成される。更に、絶縁膜112及び絶縁膜113を覆うように絶縁膜114が形成される。
【0026】
図3は、図1のIII−III線に沿った断面図を示している。
【0027】
図3に示したように、例えば、上層に形成されたナノワイアチャネル109cは、チャネル幅が狭くなり、下層に形成されたナノワイアチャネル109aは、チャネル幅が広くなる。また、ナノワイアチャネル109それぞれの上面の表面積は、下面の表面積よりも小さくなる。
【0028】
これは、シリコン基板上に多層のSi層を形成し、このSi層からGAAトランジスタのナノワイアチャネル109を形成する。この際、ナノワイアチャネルとなる領域を残すようエッチングすることによってSi層に開口部が形成される。しかしながら、この開口部は、上層と下層との加工変換差に起因して、順テーパー形状となってしまう。
【0029】
従って、従来のように全てのSi層の膜厚を同じにした場合、GAAトランジスタのナノワイアチャネル109は、上層のナノワイアチャネル109cのチャネル幅が下層のナノワイアチャネル109aより狭くなってしまう。そのため、上層のナノワイアチャネル109cの外周の長さは、下層のナノワイアチャネル109aの外周の長さと比較して短くなる。
【0030】
そこで、第1の実施形態において、ナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さの違いを考慮して膜厚を形成する。つまり、下層に形成されるナノワイアチャネル109の膜厚を薄く形成し、上層に形成されるナノワイアチャネル109の膜厚を厚く形成する。
【0031】
このように形成することで、全てのナノワイアチャネル109の外周の長さ等しくすることが可能となる。そのため、GAAトランジスタのゲート電極103に所定の電圧を印加してオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが低減できる。従って、GAAトランジスタの動作時、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れ、所定のオン電流を得ることができる。
【0032】
更に、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れるため、ナノワイアチャネル109の劣化の速度も等しくなる。そのため、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0033】
(2) 第2の実施形態
図4は、GAAトランジスタのナノワイアチャネルを模式的に示しており、図5(a)は、従来のGAAトランジスタのナノワイアチャネルのみを模式的に示した平面図である。
【0034】
GAAトランジスタのナノワイアチャネル109を形成する際、RIE法を用いてSi層がエッチングされる。しかしながら、このRIE法によってエッチングされた面は、図4で示すように凹凸が生じてしまう。更に、図4及び図5(a)で示すように、RIE法によって形成されたナノワイアチャネル109は、うねっている。この凹凸及びうねりに起因してナノワイアチャネル109内のキャリアが散乱されてしまい、GAAトランジスタをオン状態にした際、ナノワイアチャネル109に流れる電流値が低下してしまう。その結果、GAAトランジスタをオン状態にした際、それぞれのナノワイアチャネル109の抵抗値は、凹凸の形状及びうねりの形状によってばらつくという問題がある。
【0035】
更に、ナノワイアチャネル109のチャネル長方向と垂直な方向における断面が四角形となっている場合、その角部に電界が集中し易い。そのため、角部近傍の絶縁膜に高い電圧が印加されてしまい、絶縁膜を破壊してしまう可能性が高まる。その結果、GAAトランジスタの信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0036】
図6は、第2の実施形態における図1のIII−III線に沿った断面図を示している。また、図5(b)は、第2の実施形態におけるGAAトランジスタのナノワイアチャネルのみを模式的に示した平面図である。
【0037】
第2の実施形態では、上記の問題を解決するため、まず、第1の実施形態と同様に、全てのナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さを等しく形成する。
【0038】
その後、例えば、800度程度のH2を含む雰囲気下でアニールを行い、ナノワイアチャネル109の表面のマイグレーションを行う。このプロセスによりナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向の断面は、四角形から円形に変形する。
【0039】
ナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向の断面を円形に形成し直すことによりRIE法によって形成された凹凸をなくすことが出来る。更に、図5(b)で示すように、ナノワイアチャネル109それぞれは、円形に形成される際、直線状に形成するよう制御することが出来る。そのため、GAAトランジスタのゲート電極103に所定の電圧を印加してオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが低減できる。
【0040】
更に、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様にナノワイアチャネル109それぞれの外周の長さは、等しくなるよう形成される。そのため、GAAトランジスタをオン状態にした際、ナノワイアチャネル抵抗値のばらつきが更に低減できる。その結果、GAAトランジスタの動作時、ナノワイアチャネル109それぞれに均一な電流が流れ、所定のオン電流を得ることができる。
【0041】
また、ナノワイアチャネル109それぞれは、均一に電流が流れるため、ナノワイアチャネル109それぞれの劣化の速度も等しくなる。更に、図6で示すようにナノワイアチャネル109それぞれのチャネル長方向と垂直な方向における断面は、円形になる。そのため、ナノワイアチャネル109に角部が形成されなくなり、電界の集中する場所が無くなりため、ゲート絶縁膜の破壊が抑制される。その結果、GAAトランジスタの信頼性が向上する。
【0042】
(3) 第3の実施形態
第3の実施形態において、図7〜図16を参照しながら、本発明の第2の実施形態におけるGAAトランジスタの製造方法の一例について説明する。
【0043】
先ず、図7に示すように、半導体基板にP型の不純物をイオン注入し、P+型半導体基板106を形成する。これは、半導体基板に寄生チャネルを形成するのを防止するためである。次に、ナノワイアチャネル及びソース・ドレインとなるSiGe(シリコンゲルマニウム)層201a及びSi(シリコン)層202aの積層構造をエピタキシャル成長により形成する。更に、SiGe層201b,Si層202b,SiGe層201c及びSi層202cを順次エピタキシャル成長により形成する。
【0044】
ここで、本実施形態の製造方法において、SiGe層及びSi層からなる積層構造が3層の場合について説明しているが、2層の積層構造を形成しても、3層より多層の積層構造を形成してもよい。
【0045】
次に、図8に示すように、最上部に形成されたSi層202c上にナノワイアチャネルのエッチングマスクとして用いるマスク材203をプラズマCVD法により形成する。このマスク材203は、例えば、シリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aの積層膜である。
【0046】
次に、図示はしないが、GAAトランジスタが形成される領域にシリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aが残存するようパターニングを行い、RIE法によりSTI(Shallow Trench Isolation)溝を形成する。その後、プラズマCVD法によりSTI溝内に素子分離絶縁膜を埋め込む。この素子分離絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜である。更に、CMP法によりSTI溝に埋め込まれた素子分離絶縁膜の平坦化を行い、STI構造の素子分離絶縁膜を形成する。
【0047】
その後、シリコン窒化膜203aをリソグラフィー工程及びRIE法により所望のナノワイアパターンに形成する。
【0048】
次に、図9に示すように、ダマシンゲート溝をエッチングするために用いるマスク材204をプラズマCVD法により堆積する。このマスク材204は、例えば、シリコン酸化膜204b及びシリコン窒化膜204aの積層膜である。
【0049】
次に、図10に示すように、リソグラフィー工程及びRIE法により、シリコン窒化膜204aを選択的にエッチングした後、シリコン酸化膜203b及びシリコン酸化膜204b選択的にエッチングすることでゲート電極を形成するためのゲートダマシン溝を形成する。
【0050】
この時、ナノワイアチャネルを形成する領域の上部に形成したシリコン酸化膜203b及びシリコン窒化膜203aは選択的に残す。
【0051】
次に、図11に示すように、ナノワイアチャネルを形成するため、シリコン酸化膜203b及びシリコン酸化膜204bをマスクに用いてSiGe層201b,201c及びSi層202a,202b,202cがワイア状になるよう順次エッチングを行う。
【0052】
この時、Si層202aをエッチングする際、オーバーエッチングを行うことにより、ナノワイアチャネルが形成されるSi層202上のシリコン窒化膜203a,シリコン酸化膜203bを選択的に除去すると共に、シリコン酸化膜204bを除去する。
【0053】
Si層202a,202b,202cを順次エッチングする際、上層のSi層202cと下層のSi層202aとでは、エッチングの加工変換差が生じてしまう。そのため、このエッチングによって形成された溝は、順テーパー形状が形成される。そのため、ナノワイアチャネルが形成されるSi層202のチャネル長方向と垂直な方向に沿った断面は、台形となってしまう。
【0054】
また、図12に示すように、ナノワイアチャネルを形成するためのSi層202a,202b,202cそれぞれの下部に形成されたSiGe層201a,201b,201cを等方的にエッチングする。ここで、等方エッチングとして、ドライエッチングで行う場合、例えば、三フッ化塩素(ClF3)を含んだガスを用いれば良く、ウェットエッチングで行う場合、例えば、エッチャントとしてフッ硝酸を用いれば良い。この時、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cそれぞれの全面が露出する様にエッチングを行う。
【0055】
この時、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cは、それぞれSi層202のチャネル長方向と垂直な方向における断面が四角い形状をしている。
【0056】
次に、図13に示すように、この形状ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cそれぞれのチャネル長方向と垂直な方向における断面を円形にするため、例えば、約800度のH2雰囲気下でアニールを行う。
【0057】
また、ナノワイアチャネルが形成されるSi層207a,207b,207cのチャネル長方向と垂直な方向の断面を円形に形成した後、ナノワイアチャネルを形成する領域にP型の不純物を斜めからイオン注入し、結晶回復のためのアニールを行う工程を加えてもよい。
【0058】
これ以後の図14乃至図17は、図13のA−A線に沿った断面図を示している。
【0059】
次に、図14に示すように、例えば、例えば、窒素、酸素、塩化水素(N2,O2,HCl)の混合ガス雰囲気中で、900度の熱処理を行い、ゲート絶縁膜として機能するシリコン酸化膜208を形成する。
【0060】
次に、図15に示すように、メタルCVD法により、金属化合物209をゲートダマシン溝に埋め込む。この金属化合物209は、例えば、窒化チタンとタングステンの化合物で構成される。その後、金属化合物209をCMP法によって平坦化する。続けて、RIE法により、金属化合物209上にリセスを形成する。更に、CVD法によりシリコン窒化膜210とα−シリコン層211をリセス内に形成する。その後、CMP法によりα−シリコン層211を平坦化する。
【0061】
次に、図16に示すように、α−シリコン層211をマスクとしてマスク材203及びシリコン酸化膜204bを選択的に除去する。その後、α−シリコン層211を選択的に除去する。
【0062】
次に、通常の工程で金属化合物の側壁に絶縁膜が形成される。更に、通常の工程で、Si層202cの上部、シリコン窒化膜210の上部に絶縁膜が形成される。更に、通常の工程でSi層202cの上部に形成された絶縁膜にコンタクト孔を開口し、コンタクトプラグを形成することで、図2に示すGAAトランジスタが完成する。
【0063】
4. むすび
本発明によれば、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの複数のチャネルそれぞれに流れる電流が均一され、ゲート・オール・アラウンドトランジスタの信頼性が向上する。
【0064】
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
101: 素子分離絶縁膜、 102: GAAトランジスタ、 103: ゲート電極、 104: ソース・ドレイン領域、 105: コンタクト部、 106: P+型半導体基板、 107:SiGe層、 108: Si層、 109: ナノワイアチャネル、 110: ゲート絶縁膜、 111: コンタクトプラグ、 112:絶縁膜、113: 絶縁膜: 114: 絶縁膜、 201: SiGe層、 202: Si層、 203: マスク材、 203a: シリコン窒化膜、 203b: シリコン酸化膜、 204: マスク材、 204a: シリコン窒化膜、 204b: シリコン酸化膜、 207: Si層、 208: シリコン酸化膜、 209: 金属化合物、 210: シリコン窒化膜、 211: α−シリコン層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、
前記第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を具備し、
前記チャネル領域のチャネル幅は、前記半導体基板から離れるほど狭く形成され、
前記第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど広く形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数のチャネル領域それぞれは、上面の表面積より下面の表面積の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の半導体層はそれぞれ、Si、SiGe、SiC、SiGeCのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、
前記第2の半導体層の同一レイヤ間それぞれを接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を具備し、
前記第2の半導体層の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど厚く形成され、
前記複数のチャネル領域それぞれは、チャネル長方向と垂直な方向の断面が円形に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の半導体層はそれぞれ、Si、SiGe、SiC、SiGeCのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、
前記第2の半導体層の同一レイヤ間をそれぞれ接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を具備し、
前記チャネル領域のチャネル幅は、前記半導体基板から離れるほど狭く形成され、
前記第2の半導体層及びチャネル領域の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど広く形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数のチャネル領域それぞれは、上面の表面積より下面の表面積の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の半導体層はそれぞれ、Si、SiGe、SiC、SiGeCのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板上に一定の間隔をおいて形成された第1の半導体層上に第2の半導体層を形成した積層構造が複数積み重なったソース・ドレイン領域と、
前記第2の半導体層の同一レイヤ間それぞれを接続するようにワイア状に形成された複数のチャネル領域と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように形成されたゲート絶縁膜と、
前記複数のチャネル領域をそれぞれ包み込むように前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
を具備し、
前記第2の半導体層の膜厚は、前記半導体基板から離れるほど厚く形成され、
前記複数のチャネル領域それぞれは、チャネル長方向と垂直な方向の断面が円形に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の半導体層はそれぞれ、Si、SiGe、SiC、SiGeCのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−29503(P2011−29503A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175553(P2009−175553)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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