説明

半導体集積回路およびその動作方法

【課題】道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減する。
【解決手段】半導体集積回路1は、特に3次元画像処理機能14を具備する。映像入力装置10は、カメラ2で撮影される車両前方空間の映像信号を画像メモリ3に格納する。3次元画像処理機能14は画像メモリ3の前方空間の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、画像メモリ3に格納する。画像処理ユニット11、12は、画像メモリ3の平面視2次元画像の1フレームの濃度累積処理により道路白線を認識する。道路白線の認識後、表示装置4の画面に表示される表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画する。映像出力装置13は、表示直線が描画された画像メモリ3の表示画像データを、表示装置4の画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載可能な半導体集積回路およびその動作方法に関し、特に道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減するのに有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の運転者の判断操作の補助、全面的な自動運転等を目的として、従来から種々の走行路検出装置が提案されている。走行路検出装置の基本的な機能は、走行路面の画像を採取して、画像処理して道路白線の部分を際立てさせて、路面画像の座標系を使用して路面画像上の白線の位置を表示するものである。
【0003】
下記特許文献1には、従来の道路白線認識装置では画像処理速度が遅く道路白線の認識に基づいて何らかの制御を実行しても適切な制御とならないと言う問題を解決するために、車速センサとヨーレイトセンサとの検出結果によって画像情報処理手段によって認識された道路白線認識情報を補正することが記載されている。尚、ヨーレイト(Yaw Rate)は、コーナリング中の自動車を真上から観測した際の車両の旋回方向への回転角の変化速度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−243326号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は本発明に先立って、車両前方カメラ情報から白線を認識する車載用半導体集積回路の開発に従事した。
【0006】
本発明に先立って本発明者等は、上記非特許文献1に記載された技術に関して検討を行った。この技術によれば、カメラは車両の走行方向の道路を撮影して、撮影した画像を電子制御ユニット(ECU)の画像処理手段に出力する。カメラでは遠近画像が撮影されるので、画像処理手段は画像処理によって遠近画像を平面視2次元画像に変換する。しかし、画像処理手段による処理時間が長くかかるので、この間に車両の移動や姿勢変化を生じると、画像処理手段から出力される道路白線認識情報は画像取得時点と異なるものとなる。従って、車速センサで検出された車速とヨーレイトセンサで検出されたヨーレイトとを算出手段に供給して車両の移動量と姿勢変化量とを算出して、画像処理手段で認識された道路白線位置に対して車両の移動量と姿勢変化量とに基づいて補正手段にて補正を行うものである。
【0007】
しかし、本発明者等による検討によって、しかしながら上記非特許文献1に記載の技術では、車速センサやヨーレイトセンサの検出精度の問題が解決できないばかりか、移動量と姿勢変化量とに基づく補正処理のためのソフトプログラムの開発が困難であると言う問題が明らかとされた。また更にこのソフトプログラムの開発がされたとしても、プログラム制御が複雑であるので、補正手段での補正処理に時間が必要となって、やはり適切な制御とならないと言う問題も、本発明者等による検討によって明らかとされた。
【0008】
また更に、本発明者等による検討によって、本発明に先立って検討された道路白線認識装置や走行路検出装置では、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合には、道路白線の位置認識精度が低下すると言う問題が明らかとされた。
【0009】
図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路の構成を示す図である。
【0010】
図1に示す車載用半導体集積回路は、車両前方カメラ情報から白線を認識する機能を有するものである。図1に示すように、車載用半導体集積回路1は、車載カメラ2と画像メモリ3と表示装置4に電気的に接続可能とされ、車載用半導体集積回路1は、映像入力装置10、画像処理ユニット11、中央演算処理装置12、映像出力装置13を有して、画像処理ユニット11は画像処理装置110と濃度累積メモリ111とを含んでいる。
【0011】
図2は、図1に示した本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路による白線認識処理のフローを示す図である。
【0012】
図2の最初に1フレーム分の画像の処理が開始されると、ステップ1で車両の前方空間は車載カメラ2によって撮像され、撮像された映像信号は車載用半導体集積回路1の映像入力装置10に供給される。
【0013】
従って次のステップ2で、映像入力装置10は映像信号を受信した後、輝度信号Yと色差信号U(=Y−B)、V(=Y−R)とによるカラー画像もしくは白黒のグレースケール等の任意の画像データを生成して、車載用半導体集積回路1の外部に接続された画像メモリ3に格納する。
【0014】
次のステップ3で、映像入力装置10が1フレーム分の画像取込みを完了すると、中央演算処理装置12に割り込み信号を送信する。すると割り込み信号を受け取った中央演算処理装置12は、ステップ4で取り込まれた画像に対する白線認識の処理を開始する。次のステップ5で、中央演算処理装置12は、画像処理ユニット11に対してステップ4で取り込まれた遠近画像で一定の角度の直線に沿って濃度累積処理を開始するようレジスタ設定を実行する。濃度累積処理は、遠近画像の内部の一定の角度の直線に沿って、画素の輝度の統計分布を獲得する処理を意味するものである。
【0015】
ステップ6では、画像処理ユニット11の画像処理装置110は、画像メモリ3から遠近画像を読み出し、遠近画像の一定の角度の直線に沿った各画素の輝度分布を算出する。その後、画像処理ユニット11の濃度累積メモリ111の対応する番地に、一定の角度の直線に沿った各画素の輝度分布が格納される。
【0016】
図3は、図2に示す本発明に先立って本発明者等によって検討された白線認識処理のフローのステップ6で実行される濃度累積処理の様子を示す図である。
【0017】
図3に示すように、車載カメラ2によって撮像された遠近画像30で、一定の角度θの直線Lに沿った各画素の輝度分布が測定されることができる。直線Lは、X軸でのX切辺もしくはY軸でのY切辺と角度θとによって規定されることが可能となる。従って、遠近画像30での濃度累積処理は、X軸でのX切辺またはY軸でのY切辺を最小値から最大値まで変化させ、角度θを最小値から最大値まで変化させることによって、遠近画像30の全ての直線に沿った全画素の輝度分布が測定されることが可能となる。
【0018】
このようにしてステップ6における1フレーム分の濃度累積処理が終了すると、次のステップ7で、画像認識処理装置110は動作終了を示す割り込み信号を中央演算処理装置12に送信する。すると、割り込み信号を受信した中央演算処理装置12は更に次のステップ8で、濃度累積メモリ111から測定結果を順次に読み出して、全ての測定結果の中で高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度の濃度累積メモリ111の番地を記録する。
【0019】
ステップ8Aでは、所定範囲の角度θの処理が終了したことを中央演算処理装置12が確認すると、次のステップ9に移行して、全ての測定結果の中で高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度の直線を白線として認識して、画像メモリ3の遠近画像に対して白線としての直線を描画する。
【0020】
次のステップ10では、映像出力装置13は、白線としての直線が描画された遠近画像である車両の前方映像を表示装置4に出力する。
【0021】
しかし、図2に示す本発明に先立って検討された白線認識処理のフローでは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合には、道路白線の位置認識精度が低下すると言う問題があることが、本発明者等による検討によって明らかとされたものである。
【0022】
図4は、図2に示した本発明に先立って検討された白線認識処理のフローでは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合には、道路白線の位置認識精度が低下することを説明する図である。
【0023】
図4に示すように、車載カメラ2によって撮像された車両前方画像は遠近画像となっているので、車載カメラで撮像された車両前方画像には一定のパースペクティブ(perspective:遠近法)がかかっており、画像の上では手前の白線Lnは面積が大きく、遠方の白線Lfは面積が小さい。そのため、遠方にある白線Lfの断片は累積濃度に寄与する率が小さく、また、手前にある白線Lnの断片は面積が大きい。従って、遠方にある白線Lfを横切る直線が少ないのに対して、手前にある白線Lnを横切る直線が多くなる。その結果、遠方の白線Lfの近くに白い車両等の物体Wが存在した場合には、高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度のピークがずれることになる。その結果、正確な白線位置Aから物体Wの方向にずれた方向Bに、白線認識誤差が生じるものとなる。
【0024】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等による検討の結果、なされたものである。
【0025】
従って、本発明の目的とするところは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減することにある。
【0026】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0028】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態は、映像入力装置(10)と画像処理ユニット(11、12)と映像出力装置(13)とを具備する半導体集積回路(1)である。
【0029】
前記映像入力装置(10)は車載カメラ(2)と接続され、前記カメラによって撮影される車両の前方空間の映像信号が供給され、前記映像信号を画像メモリ(3)に格納する。
【0030】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記映像信号に基づいて1フレームでの直線上の画素の輝度分布の獲得による濃度累積処理によって、前記1フレームに含まれる道路白線を認識する。
【0031】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置(13)によって表示装置(4)の画面に表示される前記画像メモリ(3)の表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画する。
【0032】
前記映像出力装置(13)は、前記表示直線が描画された前記画像メモリ(3)の前記表示画像データを、前記表示装置(4)の前記画面に表示する。
【0033】
前記半導体集積回路(1)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記前方空間の前記映像信号の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、当該平面視2次元画像を前記画像メモリ(3)に格納する3次元画像処理機能(14)を更に具備する。
【0034】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記3次元画像処理機能(14)によって変換され前記画像メモリ(3)に格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能することを特徴とするものである(図5、図8、図9参照)。
【発明の効果】
【0035】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0036】
すなわち、本発明によれば、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路による白線認識処理のフローを示す図である。
【図3】図3は、図2に示す本発明に先立って本発明者等によって検討された白線認識処理のフローのステップ6で実行される濃度累積処理の様子を示す図である。
【図4】図4は、図2に示した本発明に先立って検討された白線認識処理のフローでは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合には、道路白線の位置認識精度が低下することを説明する図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1の構成を示す図である。
【図6】図6は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1と車載カメラ2とを搭載した車両の走行中の撮影範囲を断面方向と平面方向とで示す図である。
【図7】図7は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローを示す図である。
【図8】図8は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローのステップ3で実行される遠近画像の逆パースペクティブの補正処理の様子を示す図である。
【図9】図9は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローでは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において道路白線の位置認識精度が低下しないことを説明する図である。
【図10】図10は、図5に示す本発明の実施の形態1の車載用半導体集積回路1による2本の白線間スペース測定機能によって前方路面の勾配検出が可能となることを説明する図である。
【図11】図11は、図10で説明した図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による前方路面の勾配検出機能を利用することで、車載用半導体集積回路1による前方路面勾配の変化に対して車両のエンジンやモータを自動制御することも可能となることを説明する図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1の構成を示す図である。
【図13】図13は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線間の略中央の走行中の様子を平面で示す図である。
【図14】図14は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線間の右寄りを走行中の様子を平面で示す図である。
【図15】図15は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線の右側の1本の白線の左寄りを走行中の様子を平面で示す図である。
【図16】図16は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図13に示すよう2本の白線間の略中央の走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【図17】図17は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図14に示すよう2本の白線間の右寄りを走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【図18】図18は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図14に示すよう2本の白線間の左寄りを走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0039】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、映像入力装置(10)と画像処理ユニット(11、12)と映像出力装置(13)とを具備する半導体集積回路(1)である。
【0040】
前記映像入力装置(10)はカメラ(2)と接続可能とされて、前記カメラによって撮影される車両の前方空間の映像信号が供給可能とされ、前記映像信号を画像メモリ(3)に格納可能とされる。
【0041】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記映像信号に基づいて1フレームでの直線上の画素の輝度分布の獲得による濃度累積処理によって、前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされる。
【0042】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置(13)によって表示装置(4)の画面に表示される前記画像メモリ(3)の表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画可能とされる。
【0043】
前記映像出力装置(13)は、前記表示直線が描画された前記画像メモリ(3)の前記表示画像データを、前記表示装置(4)の前記画面に表示可能とされる。
【0044】
前記半導体集積回路(1)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記前方空間の前記映像信号の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、当該平面視2次元画像を前記画像メモリ(3)に格納する3次元画像処理機能(14)を更に具備する。
【0045】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記3次元画像処理機能(14)によって変換され前記画像メモリ(3)に格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされたことを特徴とするものである(図5、図8、図9参照)。
【0046】
前記実施の形態によれば、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減することができる。
【0047】
好適な実施の形態は、前記画像処理ユニット(11、12)は、前記平面視2次元画像の手前の2本の白線間スペース(LSn)と遠方の2本の白線間スペース(LSf)とを比較することによって、前記車両の前記前方空間の路面の勾配を判断可能とされたことを特徴とするものである(図10参照)。
【0048】
他の好適な実施の形態は、前記路面の前記勾配に関する情報は、前記車両のスピードを制御するスピード制御装置(ECU)に供給可能とされたことを特徴とするものである(図10参照)。
【0049】
更に他の好適な実施の形態は、前記3次元画像処理機能(14)はハードウェアで構成された3Dグラフィック処理装置であることを特徴とするものである(図5参照)。
【0050】
より好適な実施の形態による前記半導体集積回路(1)は、左面画像処理装置(15)と右面画像処理装置(16)とを更に具備する。
【0051】
前記左面画像処理装置(15)は前記車両の左方空間の映像信号を処理可能とされ、前記右面画像処理装置(16)は前記車両の右方空間の映像信号を処理可能とされる(図12参照)。
【0052】
前記画像処理ユニット(11、12、18)は、前記左面画像処理装置(15)の左方処理情報(L)と前記右面画像処理装置(16)の左方処理情報(L)とから、前記画像処理ユニット(11、12)によって認識される2本の白線に対しての前記車両の位置を判断可能とされたことを特徴とするものである(図13、図14、図15参照)。
【0053】
他のより好適な実施の形態は、前記画像処理ユニット(11、12、18)によって判断された前記車両の位置の情報に基づき、前記2本の白線の認識処理のための前記画像処理ユニット(11、12)による前記濃度累積処理の範囲が制限されることを特徴とするものである(図16、図17、図18参照)。
【0054】
具体的な実施の形態は、前記左面画像処理装置(15)の前記左方処理情報(L)と前記右面画像処理装置(16)の前記左方処理情報(L)とのいずれかが前記画像処理ユニット(11、12)によって認識される前記2本の白線のいずれか一本と前記車両との間の距離が小さくなり過ぎることに応答して、前記画像処理ユニット(11、12、18)は警報の生成を指示するものであることを特徴とするものである(図12参照)。
【0055】
より具体的な実施の形態は、前記車両の方向指示器が操作されたことを示す操作信号が前記半導体集積回路(1)に供給された場合には、前記画像処理ユニット(11、12、18)は前記警報の生成を禁止することを特徴とするものである(図12参照)。
【0056】
最も具体的な実施の形態は、前記画像メモリ(3)は前記半導体集積回路(1)の半導体チップとは別のチップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とするものである。
【0057】
他の最も具体的な実施の形態は、前記画像メモリ(3)は前記半導体集積回路(1)の半導体チップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とするものである。
【0058】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、映像入力装置(10)と画像処理ユニット(11、12)と映像出力装置(13)とを具備する半導体集積回路(1)の動作方法である。
【0059】
前記映像入力装置(10)はカメラ(2)と接続可能とされて、前記カメラによって撮影される車両の前方空間の映像信号が供給可能とされ、前記映像信号を画像メモリ(3)に格納可能とされる。
【0060】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記映像信号に基づいて1フレームでの直線上の画素の輝度分布の獲得による濃度累積処理によって、前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされる。
【0061】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置(13)によって表示装置(4)の画面に表示される前記画像メモリ(3)の表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画可能とされる。
【0062】
前記映像出力装置(13)は、前記表示直線が描画された前記画像メモリ(3)の前記表示画像データを、前記表示装置(4)の前記画面に表示可能とされる。
【0063】
前記半導体集積回路(1)は、前記画像メモリ(3)に格納された前記前方空間の前記映像信号の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、当該平面視2次元画像を前記画像メモリ(3)に格納する3次元画像処理機能(14)を更に具備する。
【0064】
前記画像処理ユニット(11、12)は、前記3次元画像処理機能(14)によって変換され前記画像メモリ(3)に格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされる。
【0065】
前記動作方法は、
前記カメラによって撮影された前記車両の前方空間の前記映像信号を前記画像処理ユニット(11、12)によって前記画像メモリ(3)に格納するステップ(STEP2)と、
前記画像メモリ(3)に格納された前記前方空間の前記映像信号の前記3次元遠近画像を前記3次元画像処理機能(14)によって前記平面視2次元画像に変換して、前記平面視2次元画像を前記画像メモリ(3)に格納するステップ(STEP3)と、
前記3次元画像処理機能(14)によって変換され前記画像メモリ(3)に格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記画像処理ユニット(11、12)による前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる前記道路白線を認識するステップ(STEP4)と、
前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置(13)によって表示装置(4)の画面に表示される前記画像メモリ(3)の表示画像データに認識された前記道路白線としての前記表示直線を前記画像処理ユニット(11、12)によって描画するステップ(STEP5)と、
前記表示直線が描画された前記画像メモリ(3)の前記表示画像データを、前記映像出力装置(13)によって前記表示装置(4)の前記画面に表示するステップ(STEP6)とを、
含むことを特徴とするものである(図7参照)。
【0066】
前記実施の形態によれば、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において、道路白線の位置認識精度の低下を軽減することができる。
【0067】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0068】
[実施の形態1]
《車載用半導体集積回路の構成》
図5は、本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1の構成を示す図である。
【0069】
図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1は、図1に示した本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路1と同様に、車載カメラ2と画像メモリ3と表示装置4に電気的に接続可能とされ、車載用半導体集積回路1は、映像入力装置10、画像処理ユニット11、中央演算処理装置12、映像出力装置13を有して、画像処理ユニット11は画像処理装置110と濃度累積メモリ111とを含んでいる。
【0070】
図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1が、図1に示した本発明に先立って本発明者等によって検討された車載用半導体集積回路1と相違するのは、次の点である。
【0071】
すなわち、図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1には、中央演算処理装置12と接続され、画像メモリ3と接続可能に構成された3Dグラフィック処理装置14が追加されている。3Dグラフィック処理装置14は、中央演算処理装置12よりのレジスタ設定に応答して、画像メモリ3に格納された遠近画像の逆パースペクティブ(逆遠近)の補正処理を実行することによって平面視2次元画像を生成する。従って、3Dグラフィック処理装置14は、3次元画像(遠近画像)から平面視2次元画像(非遠近画像)を生成する機能を有するものである。
【0072】
尚、画像メモリ3は同期型ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM:Synchronous Dynamic Random Access Memory)によって構成される。また、映像出力装置13と表示装置4とは、カーナビゲーションシステムで使用される映像出力装置と表示装置とを兼用使用することができる。また更に画像メモリ3は、カーナビゲーションシステムで使用される映像出力装置の表示情報を一時的に格納するためのバッファメモリを兼用使用することができる。
【0073】
また、図5に示す車載用半導体集積回路1に追加された3Dグラフィック処理装置14は、従来からカーナビゲーションシステムで使用されている3Dグラフィック処理装置と相違することに注意されたい。すなわち、カーナビゲーションシステムはGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)やジャイロや車速パルス等の自立航法装置を利用して、自動車の運転中に現在位置や目的位置までの走行経路案内等の表示を行う電子装置である。GPSと自立航法装置を利用して現在位置の道路地図情報をDVD−ROMやHDD等の記憶装置から読み出して、読み出した2次元道路地図情報を3Dグラフィック処理装置によって遠近画像に変換して表示が行われるものである。このように、従来からカーナビゲーションシステムで使用されている3Dグラフィック処理装置は2次元地図情報から遠近画像への変換を実行するのに対して、図5に追加された3Dグラフィック処理装置14は3次元画像(遠近画像)から平面視2次元画像(非遠近画像)を生成するものであり、両者の機能は基本的に相違している。
【0074】
《車両の走行中の撮影範囲》
図6は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1と車載カメラ2とを搭載した車両の走行中の撮影範囲を断面方向と平面方向とで示す図である。
【0075】
《白線認識処理のフロー》
図7は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローを示す図である。
【0076】
図7の最初に1フレーム分の画像の処理が開始されると、ステップ1で車両の前方空間は車載カメラ2によって撮像され、撮像された映像信号は車載用半導体集積回路1の映像入力装置10に供給される。
【0077】
従って次のステップ2で、映像入力装置10は映像信号を受信した後、輝度信号Yと色差信号U(=Y−B)、V(=Y−R)とによるカラー画像もしくは白黒のグレースケール等の任意の画像データを生成して、車載用半導体集積回路1の外部に接続された画像メモリ3に格納する。
【0078】
次のステップ3で、映像入力装置10が1フレーム分の画像取込みを完了すると、中央演算処理装置12に割り込み信号を送信する。すると割り込み信号を受け取った中央演算処理装置12は、3Dグラフィック処理装置14へのレジスタ設定を実行する。このレジスタ設定に応答して、3Dグラフィック処理装置14は、画像メモリ3に格納された遠近画像を読み出して、読み出した遠近画像の逆パースペクティブ(逆遠近)の補正処理を実行して平面視2次元画像を生成する。3Dグラフィック処理装置14は、生成した平面視2次元画像を画像メモリ3に格納する。
【0079】
次のステップ4で、3Dグラフィック処理装置14は、平面視2次元画像の画像メモリ3への格納を割り込み信号として中央演算処理装置12に送信する。すると割り込み信号を受け取った中央演算処理装置12は、画像処理ユニット11に対して白線認識の処理を指示する。その結果、画像処理ユニット11は、画像メモリ3へ格納された非遠近の平面視2次元画像で一定の角度の直線に沿って濃度累積処理を開始するようレジスタ設定を実行する。濃度累積処理は、非遠近の平面視2次元画像の内部の一定の角度の直線に沿って、画素の輝度の統計分布を獲得する処理を意味するものである。
【0080】
すると、画像処理ユニット11の画像処理装置110は、画像メモリ3から非遠近の平面視2次元画像を読み出し、非遠近の平面視2次元画像の一定の角度の直線に沿った各画素の輝度分布を算出する。その後、画像処理ユニット11の濃度累積メモリ111の対応する番地に、一定の角度の直線に沿った各画素の輝度分布が格納される。
【0081】
このようにして1フレーム分の濃度累積処理が終了した後に、画像認識処理装置110は動作終了を示す割り込み信号を中央演算処理装置12に送信する。すると割り込み信号を受信した中央演算処理装置12は、濃度累積メモリ111から測定結果を順次に読み出して、全ての測定結果の中で高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度の濃度累積メモリ111の番地を記録する。
【0082】
次のステップ5では、中央演算処理装置12は全ての測定結果の中で高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度の直線を白線として認識して、画像メモリ3の遠近画像に対して白線としての直線を描画する。
【0083】
次のステップ6では映像出力装置13は、白線としての直線が描画された遠近画像である車両の前方映像を表示装置4に出力する。
【0084】
《逆パースペクティブの補正処理》
図8は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローのステップ3で実行される遠近画像の逆パースペクティブの補正処理の様子を示す図である。
【0085】
図8の上部には車両の前方空間は車載カメラ2によって撮像され画像メモリ3に格納された遠近画像が示され、図8の下部には3Dグラフィック処理装置14による遠近画像の逆パースペクティブ補正処理により生成される平面視2次元画像が示されている。
【0086】
《道路白線の位置認識精度》
図9は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識処理のフローでは、道路白線の近傍を白い車両が走行している場合等において道路白線の位置認識精度が低下しないことを説明する図である。
【0087】
図9に示すように、図7の白線認識処理のフローのステップ4では、画像メモリ3へ格納された非遠近の平面視2次元画像が使用される。従って、図9に示す非遠近の平面視2次元画像では、画像の上では手前の白線Lnは面積と遠方の白線Lfの面積とは同一である。そのため、遠方にある白線Lfの断片の累積濃度の寄与率と手前の白線Lnの断片の累積濃度の寄与率は、同一である。従って、遠方にある白線Lfを横切る直線と手前にある白線Lnを横切る直線とは、同一の数となる。その結果、遠方の白線Lfの近くに白い車両等の物体Wが存在した場合等において、高い輝度の画素が多数存在する最高累積濃度のピークがずれることが軽減される。その結果、正確な白線位置Aから物体Wの方向にずれた方向Bに、白線認識誤差が生じることが軽減されるものとなる。
【0088】
《カーナビ遠近画像への白線追加》
図7で説明した白線認識処理フローのステップ4にて高精度で認識された白線は、ステップ5にて車載カメラ2によって撮影された画像メモリの遠近画像ではなくカーナビゲーションシステムの3Dグラフィック処理装置によって2次元地図情報から変換された遠近画像に白線として直線描画されることができる。この場合には、白線認識処理フローのステップ6で、映像出力装置12は高精度で認識された白線が追加されたカーナビゲーションシステムによる遠近画像を表示装置4に出力するものである。
【0089】
《前方路面の勾配検出機能》
図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による白線認識機能を2本の白線間スペース測定に発展させることで、車載用半導体集積回路1による前方路面の勾配検出機能の実現も可能である。
【0090】
図10は、図5に示す本発明の実施の形態1の車載用半導体集積回路1による2本の白線間スペース測定機能によって前方路面の勾配検出が可能となることを説明する図である。
【0091】
図10は、図5に示した本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1と車載カメラ2を搭載した車両が勾配路面の直前を走行中の様子を断面方向と平面方向とで示す図である。
【0092】
図10の上部には車両が上り勾配路面の直前を走行中に車載カメラ2によって上り勾配路面が撮像される様子が断面方向から示され、図10の下部には車両が上り勾配路面の直前を走行中に車載カメラ2によって上り勾配路面が撮像される様子が平面方向から示されている。
【0093】
図10の上部に示すように、実際の上り勾配路面RSを車載カメラ2によって撮影しても撮影された遠近画像では上り勾配路面が判別されないので、表示装置4には勾配の無い水平仮想画像路面VSのように表示されてしまう。
【0094】
図10の下部に示すように、実際の上り勾配路面RSでは手前の2本の白線間スペースLSnと遠方の2本の白線間スペースLSfとは同一の長さである。しかし、上り勾配路面RSであるので、車載カメラ2と水平仮想画像路面VSとの間の仮想距離よりも、車載カメラ2と実際の路面RSとの間の距離が短いものとなる。従って、車載カメラ2によって撮影された遠近画像の3Dグラフィック処理装置14による逆パースペクティブ補正処理によって生成される平面視2次元画像では、手前の2本の白線間スペースLSnよりも遠方の2本の白線間スペースLSfが長くなるものである。従って、図9に示す非遠近の平面視2次元画像にて、画面上部に表示される遠方の2本の白線間スペースLSfと画面下部に表示される手前の2本の白線間スペースLSnとを中央演算処理装置12が比較することによって、車両前方の路面の勾配が判断されることが可能となる。
【0095】
遠方の2本の白線間スペースLSfが手前の2本の白線間スペースLSnよりも長い場合には、中央演算処理装置12は車両前方の路面が上り勾配であると判断する。遠方の2本の白線間スペースLSfが手前の2本の白線間スペースLSnと略等しい場合には、中央演算処理装置12は車両前方の路面が略水平であると判断する。遠方の2本の白線間スペースLSfが手前の2本の白線間スペースLSnよりも短い場合には、中央演算処理装置12は車両前方の路面が下り勾配であると判断する。
【0096】
《面勾配の変化に対するスピード制御》
図10で説明した図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による前方路面の勾配検出機能を利用することで、車載用半導体集積回路1による前方路面勾配の変化に対して車両のエンジンやモータを自動制御することも可能である。
【0097】
図11は、図10で説明した図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1による前方路面の勾配検出機能を利用することで、車載用半導体集積回路1による前方路面勾配の変化に対して車両のエンジンやモータを自動制御することも可能となることを説明する図である。
【0098】
図11に示すように車載用半導体集積回路1の前方路面の勾配検出情報信号がエンジン制御装置(ECU)に供給されるので、ガソリン供給量が車両前方の路面勾配によって自動的に制御される。
【0099】
車両前方の路面が上り勾配であると判断された場合には、車載用半導体集積回路1の前方路面の勾配検出情報信号によってガソリン供給量が増加され、車両のスピードが増加される。従って、この機能を利用することによって、高速道路の上り勾配で車両のスピードが減速することによる高速道路の渋滞の緩和が可能となる。車両前方の路面が下り勾配であると判断された場合には、車載用半導体集積回路1の前方路面の勾配検出情報信号によってガソリン供給量が減少され、エンジンブレーキが作動するので車両のスピードが減少される。従って、この機能を利用することによって、高速道路の下り勾配で車両のスピードが加速することによる高速道路の交通事故の低減が可能となる。
【0100】
また、電気自動車やエンジンとモータの併用のハイブリッド車両の場合には、モータへの電気エネルギー供給量が車両前方の路面勾配によって自動的に制御されことによって、車両のスピードが制御可能となる。
【0101】
[実施の形態2]
《より好適な車載用半導体集積回路の構成》
図12は、本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1の構成を示す図である。
【0102】
図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1は、図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1と同様に、車載カメラ2と画像メモリ3と表示装置4に電気的に接続可能とされ、車載用半導体集積回路1は、映像入力装置10、画像処理ユニット11、中央演算処理装置12、映像出力装置13を有して、画像処理ユニット11は画像処理装置110と濃度累積メモリ111とを含んでいる。
【0103】
図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1が、図5に示す本発明の実施の形態1による車載用半導体集積回路1と相違するのは、次の点である。
【0104】
すなわち、図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1は、車両前方に搭載される車載カメラ2だけではなく、車両の左側と右側と後側とにそれぞれ搭載される左面カメラ2Lと右面カメラ2Rと後面カメラ2Bと電気的に接続可能とされている。更に、図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1に、左面画像処理装置15と右面画像処理装置16と後面画像処理装置17と自車位置判定装置18とが追加されている。
【0105】
左面カメラ2Lと左面画像処理装置15を使用して車両左側を撮影して表示装置4に車両左側の道路状況を把握して安全確認が可能となり、右面カメラ2Rと右面画像処理装置16を使用して車両右側を撮影して表示装置4に車両右側の道路状況を把握して安全確認が可能となり、後面カメラ2Bと後面画像処理装置17を使用して車両後側を撮影して表示装置4に車両後側の道路状況を把握して安全確認が可能となる。
【0106】
《濃度累積処理のデータ演算量の削減》
更に、図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1では、左面画像処理装置15と右面画像処理装置16とに接続された自車位置判定装置18による自車位置判定を利用して、白線認識処理のための濃度累積処理に際してのデータ演算量の削減が可能となる。すなわち、図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1によれば、左面カメラ2Lと左面画像処理装置15を使用して車両左側の白線と車両との左側距離の測定が可能となり、右面カメラ2Rと右面画像処理装置16を使用して車両右側の白線と車両との右側距離の測定が可能となり、自車位置判定装置18を使用して左側距離と右側距離との比較により自車が2本の白線間のどの位置に存在しているかを判定することが可能となる。
【0107】
図13は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線間の略中央の走行中の様子を平面で示す図である。車両には、前面カメラ2と左面カメラ2Lと右面カメラ2Rと後面カメラ2Bとにそれぞれ対応するフロントカメラFCとレフトカメラLCとライトカメラRCとバックカメラBCとが搭載されている。図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1によれば、自車位置判定装置18を使用して左側距離Lと右側距離Lとが略等しく自車が2本の白線間の略中央の位置に存在していることを判定することが可能となる。
【0108】
図16は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図13に示すよう2本の白線間の略中央の走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【0109】
図16の上部に示すように、車載カメラ2によって撮像された車両の前方空間の遠近画像からも、車両が2本の白線間の略中央の走行中であることが理解される。図16の下部に示したように、グラフィック処理装置14により生成される平面視2次元画像で、左側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲と右側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲とは左右対称となることが理解される。それ以外の範囲は、白線認識処理の濃度累積処理の対象から削除されるので、2本の白線の白線認識処理の濃度累積処理に際してのデータ演算量の削減が可能となる。
【0110】
図14は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線間の右寄りを走行中の様子を平面で示す図である。図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1によれば、自車位置判定装置18を使用して左側距離Lよりも右側距離Lが短く自車が2本の白線間の右寄りの位置に存在していることを判定することが可能となる。
【0111】
図17は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図14に示すよう2本の白線間の右寄りを走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【0112】
図17の上部に示すように、車載カメラ2によって撮像された車両の前方空間の遠近画像からも、車両が2本の白線間の右寄りを走行中であることが理解される。図17の下部に示したように、グラフィック処理装置14により生成される平面視2次元画像で、右側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲は略車両の進行方向に傾斜しているのに対して左側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲は略車両の進行方向と垂直の方向に傾斜していることが理解される。それ以外の範囲は、白線認識処理の濃度累積処理の対象から削除されるので、2本の白線の白線認識処理の濃度累積処理に際してのデータ演算量の削減が可能となる。
【0113】
図15は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が2本の白線の右側の1本の白線の左寄りを走行中の様子を平面で示す図である。図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1によれば、自車位置判定装置18を使用して左側距離Lよりも右側距離Lが長く自車が2本の白線間の左寄りの位置に存在していることを判定することが可能となる。
【0114】
図18は、図12に示した本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1を搭載した車両が図14に示すよう2本の白線間の左寄りを走行中の場合に、2本の白線を認識するための白線認識処理の濃度累積処理の範囲を示す図である。
【0115】
図18の上部に示すように、車載カメラ2によって撮像された車両の前方空間の遠近画像からも、車両が2本の白線間の左寄りを走行中であることが理解される。図18の下部に示したように、グラフィック処理装置14により生成される平面視2次元画像で、左側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲は略車両の進行方向に傾斜しているのに対して右側の1本の白線認識処理の濃度累積処理の範囲は略車両の進行方向と垂直の方向に傾斜していることが理解される。それ以外の範囲は、白線認識処理の濃度累積処理の対象から削除され、2本の白線の白線認識処理の濃度累積処理に際してのデータ演算量の削減が可能となる。
【0116】
《カーナビ遠近画像への白線追加》
図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1でも高精度で認識された白線は、車載カメラ2によって撮影された画像メモリの遠近画像ではなく、カーナビゲーションシステムの3Dグラフィック処理装置14により2次元地図情報から変換された遠近画像に白線として直線描画されることができる。白線の直線描画の前に、カーナビゲーションシステムのGPSや種々の自立航法装置を利用した運転中の現在位置を自車位置判定装置18による自車位置判定情報で補正することで高精度の現在位置情報を得ることが可能となる。この高精度の現在位置情報に従って、道路地図情報をDVD−ROMやHDD等の記憶装置から読み出して、読み出した2次元道路地図情報を3Dグラフィック処理装置によって遠近画像に変換して表示を行う。この高精度の現在位置情報に従って生成されるカーナビゲーションシステムによる高精度遠近画像に白線の直線描画を行うことができる。
【0117】
《警報の生成》
更に、図12に示す本発明の実施の形態2による車載用半導体集積回路1では、自車位置判定装置18による自車位置判定を利用して、危険な運転状態で警報を生成することが可能である。
【0118】
例えば、図13で左側距離Lが小さくなりすぎるかまたはゼロとなると、中央演算処理装置12は警報の生成のコマンドを音声生成ユニット(図示せず)に出力するものである。ただし、運転者の意図による走行車線(レーン)変更などの場合には、事前に方向指示器(ウインカー)の操作があるので、この操作信号が車載用半導体集積回路1に供給された場合には、警報生成は禁止されるものである。
【0119】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0120】
例えば、3次元画像から平面2次元画像を生成する機能を有する3Dグラフィック処理装置14は、ハードウェアのみに限定されるものではなく、ソフトウェア処理により実現されることも可能である。この場合には、中央演算処理装置12はマルチプロセッサで構成され、その1個のプロセッサのソフトウェア処理によって3Dグラフィックソフトウェア処理が実現されることが可能である。
【0121】
また、車載用半導体集積回路1がロジックとDRAMとの混載半導体製造プロセスで製造される場合には、同期型ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)の画像メモリ3は車載用半導体集積回路1の半導体チップに集積化されることができる。
【0122】
また、更に車載用半導体集積回路1の半導体チップと画像メモリ3の同期型ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)の半導体チップとを1個の樹脂封止パッケージに搭載したシステムインパッケージ(SIP:System-In Package)の構成を採用することも可能である。
【0123】
更に本発明は道路白線だけではなく、追い越し禁止を表示する道路の黄色線の認識にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1…車載用半導体集積回路
2…車載カメラ
3…画像メモリ
4…表示装置
10…映像入力装置
11…画像処理ユニット
12…中央演算処理装置
13…映像出力装置
14…3Dグラフィック処理装置
110…画像処理装置
111…濃度累積メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像入力装置と画像処理ユニットと映像出力装置とを具備する半導体集積回路であって、
前記映像入力装置はカメラと接続可能とされて、前記カメラによって撮影される車両の前方空間の映像信号が供給可能とされ、前記映像信号を画像メモリに格納可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記画像メモリに格納された前記映像信号に基づいて1フレームでの直線上の画素の輝度分布の獲得による濃度累積処理によって、前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置によって表示装置の画面に表示される前記画像メモリの表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画可能とされ、
前記映像出力装置は、前記表示直線が描画された前記画像メモリの前記表示画像データを、前記表示装置の前記画面に表示可能とされ、
前記半導体集積回路は、前記画像メモリに格納された前記前方空間の前記映像信号の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、当該平面視2次元画像を前記画像メモリに格納する3次元画像処理機能を更に具備して、
前記画像処理ユニットは、前記3次元画像処理機能によって変換され前記画像メモリに格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記画像処理ユニットは、前記平面視2次元画像の手前の2本の白線間スペースと遠方の2本の白線間スペースとを比較することによって、前記車両の前記前方空間の路面の勾配を判断可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記路面の前記勾配に関する情報は、前記車両のスピードを制御するスピード制御装置に供給可能とされたことを特徴と請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記3次元画像処理機能はハードウェアで構成された3Dグラフィック処理装置であることを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記半導体集積回路は、左面画像処理装置と右面画像処理装置とを更に具備して、
前記左面画像処理装置は前記車両の左方空間の映像信号を処理可能とされ、前記右面画像処理装置は前記車両の右方空間の映像信号を処理可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記左面画像処理装置の左方処理情報と前記右面画像処理装置の左方処理情報とから、前記画像処理ユニットによって認識される2本の白線に対しての前記車両の位置を判断可能とされたことを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記画像処理ユニットによって判断された前記車両の位置の情報に基づき、前記2本の白線の認識処理のための前記画像処理ユニットによる前記濃度累積処理の範囲が制限されることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記左面画像処理装置の前記左方処理情報と前記右面画像処理装置の前記左方処理情報とのいずれかが前記画像処理ユニットによって認識される前記2本の白線のいずれか一本と前記車両との間の距離が小さくなり過ぎることに応答して、前記画像処理ユニットは警報の生成を指示するものであることを特徴とする請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記車両の方向指示器が操作されたことを示す操作信号が前記半導体集積回路に供給された場合には、前記画像処理ユニットは前記警報の生成を禁止することを特徴とする請求項7に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記画像メモリは前記半導体集積回路の半導体チップとは別のチップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とする請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記画像メモリは前記半導体集積回路の半導体チップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とする請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
映像入力装置と画像処理ユニットと映像出力装置とを具備する半導体集積回路の動作方法であって、
前記映像入力装置はカメラと接続可能とされて、前記カメラによって撮影される車両の前方空間の映像信号が供給可能とされ、前記映像信号を画像メモリに格納可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記画像メモリに格納された前記映像信号に基づいて1フレームでの直線上の画素の輝度分布の獲得による濃度累積処理によって、前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置によって表示装置の画面に表示される前記画像メモリの表示画像データに認識された前記道路白線としての表示直線を描画可能とされ、
前記映像出力装置は、前記表示直線が描画された前記画像メモリの前記表示画像データを、前記表示装置の前記画面に表示可能とされ、
前記半導体集積回路は、前記画像メモリに格納された前記前方空間の前記映像信号の3次元遠近画像を平面視2次元画像に変換して、当該平面視2次元画像を前記画像メモリに格納する3次元画像処理機能を更に具備して、
前記画像処理ユニットは、前記3次元画像処理機能によって変換され前記画像メモリに格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる道路白線を認識可能とされ、
前記動作方法は、
前記カメラによって撮影された前記車両の前方空間の前記映像信号を前記画像処理ユニットによって前記画像メモリに格納するステップと、
前記画像メモリに格納された前記前方空間の前記映像信号の前記3次元遠近画像を前記3次元画像処理機能によって前記平面視2次元画像に変換して、前記平面視2次元画像を前記画像メモリに格納するステップと、
前記3次元画像処理機能によって変換され前記画像メモリに格納された前記平面視2次元画像で構成される前記1フレームでの前記画像処理ユニットによる前記濃度累積処理によって前記1フレームに含まれる前記道路白線を認識するステップと、
前記道路白線を認識した後、前記映像出力装置によって表示装置の画面に表示される前記画像メモリの表示画像データに認識された前記道路白線としての前記表示直線を前記画像処理ユニットによって描画するステップと、
前記表示直線が描画された前記画像メモリの前記表示画像データを、前記映像出力装置によって前記表示装置の前記画面に表示するステップとを、
含むことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項12】
前記画像処理ユニットは、前記平面視2次元画像の手前の2本の白線間スペースと遠方の2本の白線間スペースとを比較することによって、前記車両の前記前方空間の路面の勾配を判断可能とされたことを特徴とする請求項11に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項13】
前記路面の前記勾配に関する情報は、前記車両のスピードを制御するスピード制御装置に供給可能とされたことを特徴と請求項12に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項14】
前記3次元画像処理機能はハードウェアで構成された3Dグラフィック処理装置であることを特徴とする請求項13に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項15】
前記半導体集積回路は、左面画像処理装置と右面画像処理装置とを更に具備して、
前記左面画像処理装置は前記車両の左方空間の映像信号を処理可能とされ、前記右面画像処理装置は前記車両の右方空間の映像信号を処理可能とされ、
前記画像処理ユニットは、前記左面画像処理装置の左方処理情報と前記右面画像処理装置の左方処理情報とから、前記画像処理ユニットによって認識される2本の白線に対しての前記車両の位置を判断可能とされたことを特徴とする請求項14に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項16】
前記画像処理ユニットによって判断された前記車両の位置の情報に基づき、前記2本の白線の認識処理のための前記画像処理ユニットによる前記濃度累積処理の範囲が制限されることを特徴とする請求項15に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項17】
前記左面画像処理装置の前記左方処理情報と前記右面画像処理装置の前記左方処理情報とのいずれかが前記画像処理ユニットによって認識される前記2本の白線のいずれか一本と前記車両との間の距離が小さくなり過ぎることに応答して、前記画像処理ユニットは警報の生成を指示するものであることを特徴とする請求項16に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項18】
前記車両の方向指示器が操作されたことを示す操作信号が前記半導体集積回路に供給された場合には、前記画像処理ユニットは前記警報の生成を禁止することを特徴とする請求項17に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項19】
前記画像メモリは前記半導体集積回路の半導体チップとは別のチップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とする請求項18に記載の半導体集積回路の動作方法。
【請求項20】
前記画像メモリは前記半導体集積回路の半導体チップに集積化されたダイナミックランダムアクセスメモリであることを特徴とする請求項18に記載の半導体集積回路の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−114524(P2011−114524A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268405(P2009−268405)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】