説明

半径流圧縮機インペラとその製造方法

【課題】少なくともAlとCuとを含む熱硬化性合金から成る母材で作られた半径流圧縮機インペラにおいて、被圧縮気体の出口範囲における熱的強度を増大させる。
【解決手段】インペラの外側部を、母材(2、16)との間にグラジエント材料を形成する、Alを含む耐熱合金からなる付加材料(3、17)で形成する。グラジエント材料により母材とインペラとの間に強固な結合を生じさせ、耐久性、耐熱性に優れた半径流インペラを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともAlとCuとを含む熱硬化性合金から成る母材で作った半径流圧縮機インペラとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス駆動式過給機における公知の半径流圧縮機インペラは、AlCuMg合金からなる。この合金を熱硬化すべくT6・熱処理を行う。この処理は、合金をまず約3時間にわたり約500℃の温度に加熱し、それから室温に急冷する。この材料を、続いて8時間にわたり約180〜200℃の熱エージング温度に保ち、その後室温に冷却する。
【0003】
このように製造した半径流圧縮機インペラは、限られた耐熱性しか示さない。空気の出口温度が数時間にわたり熱エージング温度に達するか超過した際、インペラ外縁、即ち圧縮空気の出口範囲に材料の過剰劣化が生ずる。この過剰劣化は強度を低下させ、このために、例えばインペラ部品が折損して損傷を生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、被圧縮気体の出口範囲における熱的強度が増大した、冒頭に述べた形式の半径流圧縮機インペラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明に基づき、インペラの外側部が、母材との間にグラジエント材料を形成する、Alを含む耐熱合金で形成された付加材料から成ることにより解決できる。これに伴い、耐熱性外側部を備えた十分な強度の半径流圧縮機インペラを製造できる。
【0006】
本発明の第1実施態様では、外側部の付加材料は少なくともAlとCuとを含む合金から成る。本発明の他の実施態様では、外側部の付加材料は少なくともAlとFeとを含む合金から成る。
【0007】
頭記の形式の半径流圧縮機インペラを製造すべく、粉末冶金用の母材の付加材料から、等温プレス法でグラジエント材料から成る半製品を製造する。或いは同じ目的で、溶融母材と溶融付加材料のスプレイ凝結によりグラジエント材料から成る半製品を製造する。
【0008】
本発明の他の特徴を、従属請求項と図を参照した本発明の2つの実施例の説明で明らかにする。図1〜5は第1実施例、そして図6と7は第2実施例の製造工程を各々示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施例1)
第1実施例では、カプセル1を薄いAl外被で製造する。その形状は次の工程での材料収縮を考慮に入れた、製造すべき半径流圧縮機インペラの輪郭に相当する。カプセル1内に、半径流圧縮機インペラの主要部を形成する粉末状母材2を詰め込む。母材は少なくとも成分AlとCuとを含む合金から成る。他の合金成分、例えばMgも含有できる。母材を、カプセル1への詰め込み前に細かな粉末に粉砕し又はカプセル1内に噴霧する。
【0010】
続いて図2に示す如く、カプセル1の、後で羽根先端を形成すべく用いる外側領域に、同様に粉末状の付加材料3を詰め込む。この付加材料3は、合金成分AlとC並びに場合によっては他の少量の成分を含んでいる。
【0011】
付加材料3の詰め込み後、カプセル1の蓋4で閉じ、続いて排気する。そしてカプセル1を、図3に示す如く、高温高圧で等温プレス処理する。
【0012】
図4に示す如く、等温プレス処理により均一な半製品5が生ずる。この半製品5は母材2と付加材料3との間に、両材料の成分が混在する遷移領域6を有している。
【0013】
必要に応じ、半製品5に、続く鍛造成形後、母材2に対し上述のT6・熱処理を施す。
【0014】
その後半製品を、図5に示す如く、ロータ本体7と羽根8を形成すべく切削加工する。
【0015】
羽根8の外側部は耐熱性の付加材料3から成る。両材料2、3から成るグラジエント材料により、羽根8の外側部の優れた耐熱性を保証しつつ、インペラの機械的強度を保持できる。
【0016】
(実施例2)
第2実施例では、母材としてAl・Cu合金を利用する。この母材は、Mg等の少量の他成分も含み得る。付加材料として、成分AlとFeとを含む耐熱性の急速硬化合金を利用し、この合金に少量の他の付加合金成分を付加できる。
【0017】
両材料を溶融させ、別個の配管10、11を経て保護ガス封入容器12に供給する。容器12は、下部に回転冷却円板12を有している。配管10、11の先端に夫々ノズル14、15を配置し、該ノズル14、15から液状材料を細かな液滴の形で噴霧する。一方のノズル14は、母材16を冷却円板12上に中央芯として吹き付けるべく向いている。これに対し他方のノズル15は、小液滴状に噴霧した付加材料17を、冷却円板12の回転中に一様に外側から母材16上に吹き付けるべく向いている。容器12には永続的に保護ガスを封入してある。図6に示す如く、冷却円板13上へのスプレイ凝結によって、グラジエント材料から成る円筒体が生じ、該円筒体は内側に母材16を、外側に付加材料17を有し、その両材料間に遷移領域が存在している。その場合、ノズル14、15を円筒体の長手軸線の方向に移動可能に配置するとよい。
【0018】
図7に示す如く、続いて半製品18を形成すべく、グラジエント材料から成る円筒体を水平切断によって分割する。
【0019】
その後半製品18を、第1実施例と同様に鍛造し、T6・熱処理し、続いて切削する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に基づく製造方法の第1実施例における最初の工程の説明図。
【図2】図1の次工程の説明図。
【図3】図2の次工程の説明図。
【図4】図3の次工程の説明図。
【図5】図4の次工程の説明図。
【図6】本発明に基づく製造方法の第2実施例における工程の説明図。
【図7】図6の次の工程の説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 カプセル、2、16 母材、3、17 付加材料、5 半製品、13 冷却円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともAlとCuとを含む熱硬化性合金から成る母材で作られた半径流圧縮機インペラにおいて、インペラの外側部が、母材(2、16)との間にグラジエント材料を形成する、Alを含む耐熱合金で形成された付加材料(3、17)から成ることを特徴とする半径流圧縮機インペラ。
【請求項2】
外側部の付加材料(3)が少なくともAlとCuとを含む合金から成ることを特徴とする請求項1記載のインペラ。
【請求項3】
外側部の付加材料(17)が少なくともAlとFeとを含む合金から成ることを特徴とする請求項1記載のインペラ。
【請求項4】
母材(2)と付加材料(3)とから、等温プレス法によりグラジエント材料から成る半製品(5)を製造することを特徴とする請求項1から3の1つに記載の半径流圧縮機インペラの製造方法。
【請求項5】
溶融母材(16)と溶融付加材料(17)のスプレイ凝結により、グラジエント材料から成る半製品(5)を製造することを特徴とする請求項1から3の1つに記載の方法。
【請求項6】
Al外被から成りインペラの輪郭に相当するカプセル(1)の中に、中央に粉末状母材(2)、外側領域に粉末状付加材料(3)を夫々詰め込み、カプセル(1)を閉鎖し排気した後、グラジエント材料から成る半製品を形成すべく、カプセル(1)上に高温・高圧を加えることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
母材(2)および付加材料(3)を、粉砕或いは噴霧することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
母材(16)と付加材料(17)を粉砕或いは噴霧し、スプレイ凝結によってグラジエント材料から成る円筒体の形にし、該円筒体を母材(16)から成る中央芯と、付加材料(17)から成る外側部とから構成することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
スプレイ凝結のため、回転冷却円板(13)上の中央に母材(16)を、母材(16)の横に付加材料(17)を夫々吹き付けることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
スプレイ凝結を、容器(12)内において保護ガス下で行うことを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
半製品(5、18)を鍛造し、その後、母材(2,16)を硬化すべく熱処理し、続いて最終形状に切削加工することを特徴とする請求項4から10の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−125392(P2006−125392A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294892(P2005−294892)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ、ベーウントヴエー、デイーゼル、アクチエンゲゼルシヤフト (59)
【氏名又は名称原語表記】MAN B&W DIESEL AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】