説明

半田付け装置

【課題】雰囲気ガスの熱やフラックスガスによるシール部材の劣化を防止した半田付け装置を提供する。
【解決手段】処理室1,2,3を形成する上下の筐体20,21の合わせ面部にシール部材28が装着されている半田付け装置において、前記処理室と合わせ面部との間に合わせ面部に沿ってバッファ室23を有し、前記バッファ室23と処理室1,2,3は仕切壁22aで仕切られており、バッファ室23にはバッファ室23を処理室1,2,3側と合わせ面部(シール部材28)側とに仕切る仕切壁29が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー半田付け装置等の半田付け装置に関し、特に上下の筐体の合わせ面部に装着されたシール部材の劣化を防止した半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー半田付け装置は、一般に、予熱室、リフロー室、及び冷却室をコンベヤの搬送ラインに沿って順に有しており、電子部品を搭載した基板がコンベヤによって各室内を搬送される。電子部品を搭載した基板は、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られており、予熱室で所定の高温度に加熱され、リフロー室で高温の半田付け温度まで加熱されて、基板上のクリーム半田が溶融される。そして、リフロー室に続く冷却室を通る間に溶融半田が冷却固化され、半田付けが完了する。
【0003】
前記装置において、メンテナンスなどのために、一般に、上記の室は上側筐体と下側筐体とが合わせられて形成され、上側筐体が開閉可能に構成されている。そして、室内には、半田付け部の酸化を防止するために窒素ガス等の不活性ガスが供給されており、上側筐体と下側筐体の合わせ面部にシール部材が装着され、室内の気密性を高めている(特許文献1参照)。シール部材は従来、シリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムなどで形成されている。
【特許文献1】特許第3141306号公報
【0004】
一方、近年、リフロー半田付け装置で使用される半田は、鉛を使用しない鉛フリー半田が主流となってきており、従来使用されてきた半田よりも半田付け温度が高くなっている。そのため、リフロー室内の雰囲気は例えば240℃〜260℃になる。また、半田付け処理において、基板に塗布されたクリーム半田が加熱されると、クリーム半田に含まれているフラックスやアルコール等がガス(以下、フラックスガスという。)となって蒸発し、室内の雰囲気ガス中に混合される。なお、鉛フリー半田を使用する半田付け処理においては半田に含まれているフラックスの成分も従来と異なっている場合がある。
【0005】
上記従来の装置においては、室内の雰囲気ガスがシール部材に直接当たるため、シール部材がシリコーンゴムの場合、雰囲気ガスに含まれているフラックスガスにより劣化することがあり、エチレンプロピレンゴムの場合は雰囲気ガスの熱で劣化することがある。その結果、シール効果が低下する。
【0006】
そのため、シール部材の耐熱・耐薬品性を向上させた半田付け装置が提案されている(特許文献2参照)。すなわち、耐熱・耐薬品性部材例えばフッ素樹脂又はポリイミド樹脂等の保護材でシール部材の表面を被覆することが提案されている。しかしながら、保護材が接触などにより破けたり、孔が開いてしまう場合がある。また、保護材をシール部材に装着する作業が発生するため、手間がかかる問題もある。
【特許文献2】特開2007−234634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、雰囲気ガスの熱やフラックスガスによるシール部材の劣化を防止した半田付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、処理室を形成する上下の筐体の合わせ面部にシール部材が装着されている半田付け装置において、
前記処理室と合わせ面部との間に合わせ面部に沿ってバッファ室を有し、前記バッファ室と処理室は仕切壁で仕切られており、バッファ室にはバッファ室を処理室側と合わせ面部側とに仕切る仕切壁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
前記バッファ室と処理室はバッファ室の下部で互いに連通しており、前記バッファ室内の仕切壁はバッファ室の底面から上方に延びていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、処理室と合わせ面部(シール部材)との間にバッファ室を設け、処理室内の雰囲気ガスがシール部材に直接当たらないように構成したので、処理室内の雰囲気ガスの熱やフラックスガスによるシール部材への悪影響を低く抑えることができる。また、バッファ室内に仕切壁を設けることで、処理室内の雰囲気ガスの熱やフラックスガスによるシール部材への悪影響を更に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
リフロー半田付け装置は、図1に示されているように、3個の予熱室1と、1個のリフロー室2と、1個の冷却室3とをコンベヤ4の搬送ラインに沿って順に有している。各室1,2,3内には、半田の酸化を防止するために不活性ガス、本実施形態では窒素ガスが供給されており、電子部品を搭載したプリント基板5がコンベヤ4によって各室1,2,3内を搬送される。電子部品を搭載したプリント基板5は、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られている。
【0013】
図1において、6は各室1,2,3を仕切る仕切壁、7は送風機、8は送風機7を駆動するモータ、9はヒータ、10は導風装置である。これらで熱風循環装置11が構成され、予熱室1とリフロー室2には熱風循環装置11がコンベヤ4を挟んで上下に設けられている。冷却室3には、コンベヤ4を挟んで上下に冷却風循環装置12が設けられている。冷却風循環装置12は、上記熱風循環装置11とはヒータを備えていない点でのみ相違し、他の構成は同じである。
【0014】
図1〜図3に示すように、上記の各室1,2,3は上側筐体20と下側筐体21とで形成されている。上側筐体20は上記の各室1,2,3を形成するための上側本体ケーシング22と、バッファ室23を形成するための上側バッファ室ケーシング24とから構成されている。上側本体ケーシング22は下面が開放されている直方体形状の箱体で、内部は仕切壁6によって各室1,2,3に仕切られている。上側バッファ室ケーシング24は各室1,2,3に沿って上側本体ケーシング22の両側面の下部に隣接して形成されている。上側バッファ室ケーシング24は直方体形状の箱体から下面と上側本体ケーシング22側の側面とを開放した箱状体で、上側本体ケーシング22の側面下部に連結板を介して固定されている。
【0015】
下側筐体21は上記の各室1,2,3を形成するための下側本体ケーシング25と、バッファ室23を形成するための下側バッファ室ケーシング26とから構成されている。下側本体ケーシング25は上面が開放されている直方体形状の箱体で、内部は仕切壁6によって各室1,2,3に仕切られている。下側バッファ室ケーシング26は各室1,2,3に沿って下側本体ケーシング25の両側面に固定されている。下側バッファ室ケーシング26は直方体形状の箱体から上面と下側本体ケーシング25側の側面とを開放した箱状体で、底面が下側本体ケーシング25の上面と面一になるように配置されて、下側本体ケーシング25の側面に連結板を介して固定されている。したがって、下側バッファ室ケーシング26は下側本体ケーシング25の側面の上方位置に配置している。
【0016】
上記の上側筐体20と下側筐体21とが合わせられて、各室1,2,3及びその外側にバッファ室23が形成される。すなわち、上側本体ケーシング22と下側本体ケーシング25とで予熱室1、リフロー室2及び冷却室3が形成され、上側バッファ室ケーシング24、下側バッファ室ケーシング26及び上側本体ケーシング22の下部側壁とでバッファ室23が形成される。したがって、上側本体ケーシング22の下部の側壁が各室1,2,3とバッファ室23とを仕切る仕切壁22aとして構成されている。
【0017】
そして、上側本体ケーシング22の下面と、下側本体ケーシング25の上面との間には隙間27が形成されるように構成されている。これは、上側筐体20がシリンダ装置(図示せず)によって上下の高さ位置を調節可能に構成されており、半田付けされる電子部品の高さに応じて上側筐体20の高さを調節して、各室1,2,3間を通過するコンベヤ4の通路の隙間をできるだけ小さくし、各室1,2,3間の雰囲気ガスの流入による悪影響をできる限り小さくするものである。したがって、各室1,2,3とバッファ室23とはバッファ室23の下部において隙間27を通じて互いに連通している。
【0018】
上側バッファ室ケーシング24の下面と下側バッファ室ケーシング26の上面の合わせ面部にはシール部材28が装着され、各室1,2,3とバッファ室23を外部から気密に保持している。シール部材28としては例えば、断面円形の中実のシリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムからなる弾性部材が用いられる。シール部材28の表面をポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂やポリイミド樹脂等の耐熱・耐薬品性部材で被覆してもよい。シール部材28は、上側筐体20がシリンダ装置によって閉じられることによって上側筐体20と下側筐体21の合わせ面、すなわち上側バッファ室ケーシング24の下面と下側バッファ室ケーシング26の上面の合わせ面部で挟圧され、室内を気密に保持する。
【0019】
バッファ室23の内部には仕切壁29が設けられている。仕切壁29は下側バッファ室ケーシング26の底面から上方に延び、バッファ室23を室1,2,3側とシール部材28側とに仕切る。仕切壁29は上側バッファ室ケーシング24の上面の手前位置まで延びており、上部に隙間30を形成している。仕切壁29のシール部材28側の側面にはポリイミドシート等からなる仕切部材31が固定されている。仕切部材31はシール部材28よりも上方位置に配置され、仕切壁29で仕切られたバッファ室23のシール部材28側の空間に配置されるように設けられている。
【0020】
以下、上記リフロー半田付け装置の動作を説明する。
【0021】
電子部品を搭載したプリント基板5は、コンベヤ4によって各室1,2,3内を搬送されながら、プリント基板5上のクリーム半田が、予熱室1内を循環する加熱された雰囲気ガス(熱風)によって所定の温度に加熱され、更に、リフロー室2内を循環する加熱された雰囲気ガス(熱風)によって加熱溶融され、冷却室3で冷却室3内を循環する雰囲気ガス(冷却風)によって溶融半田が冷却固化され、電子部品が基板上に半田付けされる。
【0022】
電子部品を搭載したプリント基板5に塗布されたクリーム半田が予熱室1とリフロー室2で加熱されると、クリーム半田に含まれているフラックスやアルコール等がガスとなって蒸発し、フラックスガスが雰囲気ガス中に混合される。
【0023】
このフラックスガスを含む雰囲気ガスは仕切壁22aによりバッファ室23内に流入するのを低く抑えられる。そして、このフラックスガスを含む雰囲気ガスが上側本体ケーシング22の下面と下側本体ケーシング25の上面との間の隙間27からバッファ室23内に流入しても、バッファ室23内の仕切壁29によって遮られてシール部材28に直接当たることは避けられる。そして、このバッファ室23で上記雰囲気ガスは温度低下するため、上昇気流になりにくく、仕切壁29を越えにくい。そのため、雰囲気ガスの熱やフラックスガスによるシール部材28への悪影響を低く抑えることができる。
【0024】
また、バッファ室23内で上部の隙間30を通り、仕切壁29を越えてシール部材28側の空間に流入しても、雰囲気ガスは温度低下しているため、雰囲気ガスに含まれているフラックスガスは液状化又は凝固化して仕切部材31の表面に付着し、シール部材28への付着を低く抑えることができる。
【0025】
なお、本実施形態では室内の雰囲気ガスとして窒素ガスを使用したものを示したが、雰囲気ガスは窒素ガスに限らない。例えば、空気を使用する場合もある。
【0026】
また、上記実施形態では、本発明をリフロー半田付け装置に適用した例を示したが、本発明は他の半田付け装置、例えば噴流式やディップ式の半田付け装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す正面図である。
【図2】同縦断面図である。
【図3】図2の一部分を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・予熱室、2・・リフロー室、3・・冷却室、4・・コンベヤ、5・・電子部品を搭載したプリント基板、6・・仕切壁、7・・送風機、8・・モータ、9・・ヒータ、10・・導風装置、11・・熱風循環装置、12・・冷却風循環装置、20・・上側筐体、21・・下側筐体、22・・上側本体ケーシング、22a・・仕切壁、23・・バッファ室、24・・上側バッファ室ケーシング、25・・下側本体ケーシング、26・・下側バッファ室ケーシング、27・・隙間、28・・シール部材、29・・仕切壁、30・・隙間、31・・仕切部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を形成する上下の筐体の合わせ面部にシール部材が装着されている半田付け装置において、
前記処理室と合わせ面部との間に合わせ面部に沿ってバッファ室を有し、前記バッファ室と処理室は仕切壁で仕切られていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記バッファ室にはバッファ室を処理室側と合わせ面部側とに仕切る仕切壁が設けられていることを特徴とする請求項1記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記バッファ室と処理室はバッファ室の下部で互いに連通しており、前記バッファ室内の仕切壁はバッファ室の底面から上方に延びていることを特徴とする請求項2記載の半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299921(P2009−299921A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151532(P2008−151532)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(500379509)有限会社ヨコタテクニカ (31)
【Fターム(参考)】