説明

印刷物検査装置及び印刷物検査方法

【課題】画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定を可能にする。
【解決手段】印刷物検査装置は、印刷物の判定基準画像である閾値画像と、判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像と、判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルとをあらかじめ記憶し、印刷物の画像を入力し、入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と閾値画像とを比較して、検査画像上の欠陥候補を抽出し、検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、欠陥候補中心位置に対応する判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照し、濃度値に関連付けられた判定条件を判定条件テーブル上で参照し、判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の検査に用いられる印刷物検査装置及び印刷物検査方法に関し、特に、紙幣、国債、証券、商品券、金券類、各種帳票類等の検査に適した印刷物検査装置及び印刷物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の検査は、印刷物の印刷工程における様々な印刷精度変動要因を考慮して行うことが要求される。例えば、多色刷り重ね刷り等による刷り合わせの精度、印刷する紙の紙質や材質、温度や湿度等の環境変化による紙伸びや紙縮み、印刷機における印刷物の搬送挙動精度等、多くの印刷精度変動要因がある中で、これらの要因による印刷精度の変動をある程度許容しながら、要求される検査精度で欠陥判定を行い得る検査方法が求められている。
【0003】
また、印刷物の検査における大きな課題は、人間の視覚特性に近似した欠陥判定を実現することや、印刷物の印刷模様の中でも極小の欠陥も許容できない重要な印刷領域については、他の領域とは異なる精度で、可能な限り高精細な検査を実現することである。
【0004】
例えば、紙幣、国債、証券、商品券、金券類、各種帳票類等の同じ印刷模様を連続印刷したシート状印刷物の検査方法としては、検査用のカメラで撮像して得られた二次元の画像を、同一模様が印刷された各小切れ毎に分割するとともに、小切れの画像サイズを正規化し、さらに、正規化した画像について隣り合う小切れ同士で差分画像を生成して検査する方法がある。
この方法で印刷物の検査を行う場合は、検査対象となる欠陥の無い正常な印刷物の差分画像をもとに、判定基準画像となる閾値画像を予め生成しておき、この閾値画像と、検査対象となる印刷物の差分画像とを比較する。
【0005】
ここで、閾値画像よりも画像として差成分の大きい部分を抽出して、判定画像を生成するとともに、その判定画像に出現した欠陥候補画像の大きさが、判定基準の最大許容値を超えるとき、その欠陥候補を当該印刷物の欠陥として判定している。そして、この種の印刷物の検査では、例えば、紙幣に印刷された人物の眼や頬、金券等に印刷された料額等、小さな欠陥も許容できないような重要な印刷領域、すなわち検査精度を上げたい領域と、歩留まり等の関係から逆に検査精度を下げたい領域が存在する。
【0006】
そこで、印刷物の検査画像を複数の判定領域に分け、判定領域毎に検査精度を異ならせる検査方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。例えば、検査画像における印刷部分と余白部分を、刷色濃淡の濃度分布等にもとづいて領域分けし、各領域での検査精度に強弱を付ける検査方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−100386号公報
【特許文献2】特開平11−039482号公報
【特許文献3】特開2005−217931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の印刷物検査方法では、画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定を行うことは困難であった。
また、従来の印刷物検査方法では、数値編集にもとづいて判定領域や判定条件の設定を行う必要があるので、設定作業が極めて煩雑になるだけでなく、設定内容の確認や変更が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定が可能になり、しかも、判定領域の設定作業や変更作業が容易になるだけでなく、各判定領域の検査精度等を目視により認識することができる印刷物検査装置及び印刷物検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の印刷物検査装置は、印刷物の欠陥を判定する印刷物検査装置であって、印刷物の判定基準画像である閾値画像を記憶する閾値画像記憶手段と、判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像を記憶する判定領域画像記憶手段と、前記判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルを記憶する判定条件テーブル記憶手段と、印刷物の画像を入力する画像入力手段と、入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と前記閾値画像とを比較して、前記検査画像上の欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、前記検査画像における欠陥候補の位置を抽出する欠陥候補位置抽出手段と、前記欠陥候補位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する判定領域画像濃度参照手段と、前記濃度値に関連付けられた判定条件を前記判定条件テーブル上で参照する判定条件参照手段と、前記判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行う欠陥判定手段とを備える構成としてある。
【0010】
このようにすると、欠陥候補位置に対応する画素単位に、判定条件として検査精度の強弱等を設定することが可能になるので、検査画像を複数の判定領域に分けて、各領域毎に検査判定の強弱等を設定する印刷物検査装置としては、最も高精細な設定が可能になる。
また、判定領域画像の濃度値と判定条件を判定条件テーブルにおいて関連付けることにより、多くの判定条件を設定することが可能になる。
また、判定領域を画像として編集するので、数値による領域設定に比べ、判定領域の設定作業や変更作業が容易になる。
さらに、印刷物のいずれの領域において、検査精度を甘くしてあるのか、厳しくしてあるのか、或いは、同じ検査精度に設定されているのか等を目視で容易に認識することができる。
【0011】
また、本発明の印刷物検査装置は、前記欠陥候補位置抽出手段が、前記検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、前記判定領域画像濃度参照手段が、前記欠陥候補中心位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する構成としてある。
このようにすると、欠陥候補の位置をより正確に特定し、適正な濃度値(判定条件)を参照することができる。
【0012】
また、本発明の印刷物検査装置は、前記判定条件が、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値及び/又は欠陥面積の最大許容値を定める構成としてある。
このようにすると、判別領域毎に極めて精細な判定条件設定を行うことができる。
【0013】
また、本発明の印刷物検査装置は、前記判定領域画像が、0〜255の濃度値により256階調の白黒濃淡を表現するグレースケール画像としてある。
このようにすると、判定条件テーブルに最大で256通りの判定条件を設定することができる。
【0014】
また、本発明の印刷物検査方法は、印刷物の欠陥を判定する印刷物検査方法であって、印刷物の判定基準画像である閾値画像と、判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像と、前記判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルと、をあらかじめ記憶し、印刷物の画像を入力し、入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と前記閾値画像とを比較して、前記検査画像上の欠陥候補を抽出し、前記検査画像における欠陥候補の位置を抽出し、前記欠陥候補位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照し、前記濃度値に関連付けられた判定条件を前記判定条件テーブル上で参照し、前記判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行う方法としてある。
このようにすると、画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定が可能になり、しかも、判定領域の設定作業や変更作業が容易になるだけでなく、各判定領域の検査精度等を目視により認識することができる。
【0015】
また、本発明の印刷物検査方法は、前記検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、前記欠陥候補中心位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する方法としてある。
このようにすると、欠陥候補の位置をより正確に特定し、適正な濃度値(判定条件)を参照することができる。
【0016】
また、本発明の印刷物検査方法は、前記判定条件が、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値及び/又は欠陥面積の最大許容値を定める方法としてある。
このようにすると、判別領域毎に極めて精細な判定条件設定を行うことができる。
【0017】
また、本発明の印刷物検査方法は、前記判定領域画像が、0〜255の濃度値により256階調の白黒濃淡を表現するグレースケール画像としてある。
このようにすると、判定条件テーブルに最大で256通りの判定条件を設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定が可能になり、しかも、判定領域の設定作業や変更作業が容易になるだけでなく、各判定領域の検査精度等を目視により認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置の概略構成を示すブロック図である。
この図に示すように、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置10は、画像入力部11、数値編集部12、画像編集部13、表示部14、記憶部(閾値画像記憶手段、判定領域画像記憶手段、判定条件テーブル記憶手段)15、制御部16等を備えている。
【0021】
画像入力部11は、検査対象である印刷物の画像を入力するための装置であり、例えば、CCDカメラが用いられる。
数値編集部12は、後述する判定条件テーブル上の数値等を編集するための装置であり、例えば、キーボードやマウスが用いられる。
画像編集部13は、後述する判定領域画像等を編集するための装置であり、例えば、マウスやタブレットが用いられる。
表示部14は、検査画像表示画面や検査結果表示画面の他、判定条件テーブルや判定領域画像の編集画面を表示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイが用いられる。
【0022】
記憶部15は、閾値画像、判定領域画像、判定条件テーブル、処理プログラム等を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスクが用いられる。
制御部16は、印刷物検査装置10を制御するための装置であり、例えば、コンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/O等を含む)が用いられる。
そして、制御部16で所定の処理プログラムを実行することにより、後述する印刷物検査方法による印刷物の検査が行われる。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)の閾値画像生成処理及び検査処理を示すフローチャートである。
この図に示す処理内容は、紙幣等、同じ印刷模様を連続印刷したシート状印刷物を検査対象とした場合の実施例であって、検査処理を実行する上では、入力した画像に対し、縦方向に隣り合う小切れ画像同士の差分画像と、基準となる画像との比較により欠陥候補を抽出し、その欠陥判定を行う。この処理工程で基準となる画像を閾値画像という。
【0024】
まず、閾値画像生成処理における従来例(図7参照)と共通の処理ステップ、すなわち、画像入力(S101)、模様部切出し(S102)、正規化(S103)、最適位置合せ(S104)、差分画像演算(S105)、差分画像収集(S106)、閾値画像生成(S107)について説明する。
【0025】
画像入力(S101)では、CCDカメラにより印刷物の画像入力を行う。
模様部切出し(S102)では、閾値画像生成用の各小切れごとの切出し処理を行い、個々の小切れ画像を生成した後、生成された小切れ画像の余白部を切り取り、印刷部分(模様部)を抽出する。
【0026】
正規化(S103)では、上下方向に隣り合う2枚の小切れ画像の大きさを同一にするために、各小切れ画像のサイズを予め設定される閾値画像の大きさに合わせて伸縮補正する。
最適位置合せ(S104)では、比較を行う上下方向2枚の小切れ画像に対して、差分画像の濃度値の総和値が最も低くなるように、数画素の範囲内で画像の摺りあわせによる位置合せを行う。
【0027】
差分画像演算(S105)では、比較を行う上下方向2枚の小切れ画像に対して、画素毎の画像濃度値の差の絶対値を演算し、差分画像を生成する。
差分画像収集(S106)では、差分画像演算(S105)で得られたデータをもとに、それぞれの小切れの差分画像で各画素の差分値の絶対値の最大値を集めた差分収集画像を生成する。
閾値画像生成(S107)では、差分収集画像をもとに、印刷の位置ずれや濃度むら等を許容するための輪郭強調処理や、画素濃度の加算、乗算処理等の画像演算処理を施し、閾値画像を生成する。
【0028】
つぎに、検査処理における従来例(図7参照)と共通の処理ステップ、すなわち、画像入力(S108:画像入力手段)、模様部切出し(S109)、正規化(S110)、最適位置合せ(S111)、差分画像演算(S112)、閾値画像との比較(S113)、欠陥候補抽出(S114:欠陥候補抽出手段)、判定条件参照(S115:判定条件参照手段)、欠陥判定(S116:欠陥判定手段)について説明する。
【0029】
ただし、検査処理における画像入力(S108)から差分画像演算(S112)までの処理ステップは、閾値画像生成処理における画像入力(S101)から差分画像演算(S105)までの処理ステップと同一処理を行うので、説明を省略する。
【0030】
閾値画像との比較(S113)では、差分画像と閾値画像との比較を行う。
欠陥候補抽出(S114)では、差分画像と閾値画像との比較結果をもとに、閾値画像の画像濃度を超えた画素を抽出し、その画素を欠陥候補とする。
判定条件参照(S115)では、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値、欠陥面積の最大許容値等の判定条件を参照する。
欠陥判定(S116)は、欠陥候補の連続する画素数を計測するとともに、判定条件参照(S115)で得られた欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値、欠陥面積の最大許容値と比較し、いずれかが最大許容値を超える場合、欠陥と判定する。
【0031】
つぎに、閾値画像生成処理及び検査処理における従来例(図7参照)と相違する処理ステップについて説明する。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る印刷物検査方法の閾値画像生成処理については、判定領域画像生成(S201)と、判定条件テーブル生成(S202)を追加し、また、検査処理については、欠陥候補中心位置抽出(S203:欠陥候補位置抽出手段)と、判定領域画像濃度参照(S204:判定領域画像濃度参照手段)を追加し、さらに、判定条件参照(S115:判定条件参照手段)については、参照先を後述する判定条件テーブルとする。
【0032】
図3は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)で用いられる判定領域画像の説明図である。
判定領域画像生成(S201)では、閾値画像と同じ画像サイズの判定領域画像20を生成する。判定領域画像20は、判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした画像であり、判定領域画像20の濃度値は、判定テーブルにおいて判定条件と関連付けされる。例えば、図3は、紙幣小切れ表面を対象とする判定領域画像20の例を示している。
【0033】
判定領域画像20内の各判定領域は、1画素単位で任意形状に編集することができる。ここで下敷きにする画像としては、模様部切出しと正規化の処理が済んだ画像であれば、いずれの処理ステップ(差分画像演算、差分画像収集、閾値画像生成)の画像を使用してもよい。そして、判定領域画像20の編集に際し、これらの下敷き画像を参照しながら、楕円や矩形形状で判定領域を描画し、判定領域の内側を、白黒濃淡を表現するグレースケール画像として、0〜255の数値範囲の濃度値を指定し、塗りつぶす。
【0034】
これにより、判定条件を異ならせる複数の判定領域が、それぞれ濃度値の異なる画素で塗りつぶされ、かつ、画像サイズが正規化された判定領域画像20が生成される。図3に示す紙幣小切れの判定領域画像20では、背景21が第一の濃度値、すき入れ領域22と肖像部眼の領域23が第三の濃度値、肖像部顔の領域24と料額領域25が第二の濃度値として編集してある。
【0035】
図4は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)で用いられる判定条件テーブルの説明図である。
この図に示すように、判定条件テーブルは、判定領域画像20で使用される各濃度値に対して判定条件を関連付けしている。例えば、図3に示す判定領域画像20は、3種類の濃度値で画像編集しており、背景21の濃度値255、すき入れ領域22と肖像部眼の領域23の濃度値0、肖像部顔の領域24と料額領域25の濃度値128に対して、それぞれ判定条件(検査精度)を関連付けしている。
【0036】
ここで、濃度値0のすき入れ領域22と肖像部眼の領域23は、判定条件として、Xmax=2、Ymax=3、Smax=6、濃度値128の肖像部顔の領域24と料額領域25は、Xmax=5、Ymax=8、Smax=16、濃度値255の背景21は、Xmax=8、Ymax=10、Smax=28が設定される。
【0037】
判定条件テーブルの中で示す、Xmax、Ymax、Smax等の値は、欠陥候補画像の大きさ又は面積の最大許容値を示している。例えば、Xmaxは、欠陥寸法の水平方向最大許容値、Ymaxは、欠陥寸法の垂直方向最大許容値、Smaxは、欠陥面積の最大許容値である。また、その他の判定条件を拡張して設定できることは勿論である。これらの数値の最大許容値は、数値が小さい程、欠陥判定条件としては厳しい条件となる。図3に示す判定領域画像と、図4に示す判定条件テーブルによれば、背景21が検査精度としては一番甘く、すき入れ領域22と肖像部眼の領域23が厳しく設定されていることになる。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)における欠陥候補中心位置抽出処理の説明図、図6は、本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)における判定領域画像濃度参照処理の説明図である。
図5に示すように、欠陥候補中心位置抽出(S203)では、欠陥候補抽出により生成される判定画像30上に出現した欠陥候補31に対し、外接する矩形及びその中心位置32を求める。
【0039】
図6に示すように、判定領域画像濃度参照(S204)では、欠陥候補中心位置抽出(S203)により抽出された欠陥候補の中心位置32に対応する判定領域画像20上の画素を特定して、その濃度値を参照する。図6に矢印で示している箇所が特定された画素であり、判定領域画像20における背景21の領域に該当するので、参照される濃度値は255となる。その結果、欠陥候補31の欠陥判定条件としては、判定条件テーブルで濃度値255に関連付けられた判定条件が参照される。つまり、判定条件は、Xmax=8、Ymax=10、Smax=28となる。そして、欠陥候補31の大きさ又は面積が、これらの最大許容値を超える値であれば、欠陥候補31が欠陥と判定され、超えない場合は欠陥ではないと判定される。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の印刷物検査装置10は、印刷物の判定基準画像である閾値画像と、判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像と、判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルとをあらかじめ記憶し、印刷物の画像を入力し、入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と閾値画像とを比較して、検査画像上の欠陥候補を抽出し、検査画像における欠陥候補の位置を抽出し、欠陥候補位置に対応する判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照し、濃度値に関連付けられた判定条件を判定条件テーブル上で参照し、判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行うようにしたので、画素単位で任意に区分けされる複数の判定領域に対して、それぞれ任意の判定条件を定めるような、高精細な検査精度設定が可能になり、しかも、判定領域の設定作業や変更作業が容易になるだけでなく、各判定領域の検査精度等を目視により認識することができる。
【0041】
また、本実施形態の印刷物検査装置10では、検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、欠陥候補中心位置に対応する判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照するようにしたので、欠陥候補の位置をより正確に特定し、適正な濃度値(判定条件)を参照することができる。
【0042】
また、本実施形態の印刷物検査装置10では、判定条件として、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値及び欠陥面積の最大許容値を定めるようにしたので、各判別領域毎に極めて精細な判定条件設定を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の印刷物検査装置10では、判定領域画像を、0〜255の濃度値により256階調の白黒濃淡を表現するグレースケール画像としたので、判定条件テーブルに最大で256通りの判定条件を設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、印刷物の検査に用いられる印刷物検査装置及び印刷物検査方法として利用することができる。特に、紙幣、国債、証券、商品券、金券類、各種帳票類等の検査に好適であるが、その他の印刷物の検査にも広範囲に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)の閾値画像生成処理及び検査処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)で用いられる判定領域画像の説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)で用いられる判定条件テーブルの説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)における欠陥候補中心位置抽出処理の説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る印刷物検査装置(印刷物検査方法)における判定領域画像濃度参照処理の説明図である。
【図7】従来例に係る印刷物検査方法の閾値画像生成処理及び検査処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
10 印刷物検査装置
11 画像入力部
15 記憶部
16 制御部
20 判定領域画像
30 判定画像
31 欠陥候補
32 中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の欠陥を判定する印刷物検査装置であって、
印刷物の判定基準画像である閾値画像を記憶する閾値画像記憶手段と、
判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像を記憶する判定領域画像記憶手段と、
前記判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルを記憶する判定条件テーブル記憶手段と、
印刷物の画像を入力する画像入力手段と、
入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と前記閾値画像とを比較して、前記検査画像上の欠陥候補を抽出する欠陥候補抽出手段と、
前記検査画像における欠陥候補の位置を抽出する欠陥候補位置抽出手段と、
前記欠陥候補位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する判定領域画像濃度参照手段と、
前記濃度値に関連付けられた判定条件を前記判定条件テーブル上で参照する判定条件参照手段と、
前記判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行う欠陥判定手段と
を備えることを特徴とする印刷物検査装置。
【請求項2】
前記欠陥候補位置抽出手段が、前記検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、
前記判定領域画像濃度参照手段が、前記欠陥候補中心位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷物検査装置。
【請求項3】
前記判定条件が、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値及び/又は欠陥面積の最大許容値を定めることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷物検査装置。
【請求項4】
前記判定領域画像が、0〜255の濃度値により256階調の白黒濃淡を表現するグレースケール画像であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物検査装置。
【請求項5】
印刷物の欠陥を判定する印刷物検査方法であって、
印刷物の判定基準画像である閾値画像と、
判定条件を異ならせる複数の判定領域を、それぞれ濃度値が異なる画素で塗りつぶした判定領域画像と、
前記判定領域画像の濃度値と判定条件とを関連付ける判定条件テーブルと、をあらかじめ記憶し、
印刷物の画像を入力し、
入力画像に所定の前処理を施して得られる検査画像と前記閾値画像とを比較して、前記検査画像上の欠陥候補を抽出し、
前記検査画像における欠陥候補の位置を抽出し、
前記欠陥候補位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照し、
前記濃度値に関連付けられた判定条件を前記判定条件テーブル上で参照し、
前記判定条件にもとづいて欠陥候補の欠陥判定を行う
ことを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項6】
前記検査画像における欠陥候補の中心位置を抽出し、
前記欠陥候補中心位置に対応する前記判定領域画像上の画素を特定して、その濃度値を参照する
ことを特徴とする請求項5記載の印刷物検査方法。
【請求項7】
前記判定条件が、欠陥寸法の水平方向最大許容値、垂直方向最大許容値及び/又は欠陥面積の最大許容値を定めることを特徴とする請求項5又は6記載の印刷物検査方法。
【請求項8】
前記判定領域画像が、0〜255の濃度値により256階調の白黒濃淡を表現するグレースケール画像であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の印刷物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−118445(P2008−118445A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300405(P2006−300405)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】