説明

反射偏向素子、相対傾斜測定装置および非球面レンズ測定装置

【課題】互いに平行に形成された2つの面の相対的な傾きを、該2つの面が不透明な部材の表裏両側に位置するような場合でも、1つの測定系により測定可能とする反射偏向素子、相対傾斜測定装置および非球面レンズ測定装置を得る。
【解決手段】干渉計30からの測定光の一部を、反射偏向素子10Bを介して第1被検面71に対し垂直に照射するとともに、測定光の他の一部を、反射偏向素子10Bを介さずに第2被検面72に対し垂直に照射する。第1被検面71から再帰反射され、反射偏向素子10Bを介して干渉計30に戻る測定光により形成される第1解析用画像と、第2被検面71から再帰反射されて干渉計30に戻る測定光により形成される第2解析用画像とに基づき、第1被検面71および第2被検面72の相対的な傾きが解析される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定光を反射して偏向する反射偏向素子および該反射偏向素子を用いた測定装置に関し、特に、互いに平行に形成された2つの面の相対的な傾きを測定する場合や非球面レンズの面倒れを測定する場合に、測定光を偏向して被測定面に照射するために用いる光学素子として好適な反射偏向素子並びに該反射偏向素子を備えた相対傾斜測定装置および非球面レンズ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非球面レンズの製造誤差として生じる面ずれ(非球面レンズを構成する2つのレンズ面それぞれの軸同士の相対的な位置ずれ)や面倒れ(非球面レンズを構成する2つのレンズ面それぞれの軸同士の相対的な傾きずれ)を測定するための測定手法が各種提案されている。
【0003】
モールド成形された非球面レンズの場合、光軸に対し垂直となる鍔状の張出部がレンズ部の周囲に形成されることがある。この張出部を構成する、光軸方向に離間した2つの面は、面倒れが発生していない場合には互いに平行となり、面倒れが発生している場合には相対的に傾くこととなるので、該張出部の2つの面の相対的な傾き(平行度)を測定することにより面倒れを求めることが可能となる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、オートコリメータを用いて、基準平面に対する張出部の上下2つの面の傾きをそれぞれ測定し、その測定結果に基づき、2つの面の相対的な傾きを求める手法が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、干渉計を用いて張出部の透過波面測定を行い、その測定結果に基づき、張出部の上下2つの面の相対的な傾きを求める手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3127003号公報
【特許文献2】特開2008−249415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の手法は、張出部の2つの面(以下、一方を第1面、他方を第2面と称する)の測定を別々に行う必要があるため、測定手順が煩雑となるという問題がある。第1面を測定する測定系と第2面を測定する測定系とを別個に設けて、第1面の測定と第2面の測定を同時に行うことも考えられるが、2つの測定系が必要となるので装置構成が複雑になるという問題が生じる。
【0008】
上記特許文献2に記載の手法は、張出部が透明な場合には有効であるが、不透明な場合には適用できないという問題がある。また、張出部の第1面と第2面が測定光軸に対し垂直な方向に互いにずれた位置に配置されている場合にも適用することができない。
【0009】
なお、このような問題は、非球面レンズの面倒れを測定する場合に限られるものではなく、互いに平行に形成された2つの面(例えば、平行平板の両面)の相対的な傾きを測定する場合にも同様に生じるものである。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、互いに平行に形成された2つの面の相対的な傾きを、該2つの面が不透明な部材の表裏両側に位置するような場合でも、1つの測定系により測定可能とする反射偏向素子並びに該反射偏向素子を備えた相対傾斜測定装置および非球面レンズ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明に係る反射偏向素子は、第1の頂角を有する第1の直円錐面により構成された第1反射面と、該第1の直円錐面の内側において該第1の直円錐面に対し同軸でかつ逆向きに配置された、前記第1の頂角との和が180度となる第2の頂角を有する第2の直円錐面により構成された第2反射面とを有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る反射偏向素子において、前記第1の頂角および前記第2の頂角を共に90度に設定することができる。また、前記第1反射面および前記第2反射面の軸に対し垂直なアライメント用反射平面を設けることができる。
【0013】
また、本発明に係る相対傾斜測定装置は、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面の相対的な傾きを測定する相対傾斜測定装置であって、
本発明に係る上述の反射偏向素子と、
平行光からなる測定光を出射し、該測定光の一部を、前記反射偏向素子を介して前記第1被検面に対し垂直に照射するとともに、該測定光の他の一部を、前記反射偏向素子を介さずに前記第2被検面に対し垂直に照射する測定系と、
前記第1被検面から再帰反射され、前記反射偏向素子を介して前記測定系に戻る測定光が担持する波面情報により形成される第1解析用画像と、前記第2被検面から再帰反射されて該測定系に戻る測定光により形成される第2解析用画像とに基づき、該第1被検面および該第2被検面の相対的な傾きを解析する相対傾斜解析手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る相対傾斜測定装置において、前記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部を備えることができる。また、前記測定系として干渉計を用いることができる。
【0015】
また、本発明に係る非球面レンズ測定装置は、少なくとも一方が回転非球面とされた2つのレンズ面を有するとともに、該2つのレンズ面の一方側および他方側に、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面をそれぞれ備えた非球面レンズの面倒れおよび面ずれを測定する非球面レンズ測定装置であって、
本発明に係る上述の反射偏向素子と、
平行光からなる測定光を出射し、該測定光の一部を、前記反射偏向素子を介して前記第1被検面に対し垂直に照射するとともに、該測定光の他の一部を、前記反射偏向素子を介さずに前記第2被検面に対し垂直に照射する干渉計と、
前記第1被検面から再帰反射され、前記反射偏向素子を介して前記干渉計に戻る測定光が担持する波面情報により形成される第1解析用画像と、前記第2被検面から再帰反射されて該干渉計に戻る測定光により形成される第2解析用画像とに基づき、前記非球面レンズの面倒れを解析する面倒れ解析手段と、
前記干渉計から出射されて前記2つのレンズ面を透過した測定光を再帰反射するヌル光学素子と、
前記ヌル光学素子から再帰反射され、前記2つのレンズ面を再び透過して前記干渉計に戻る測定光により形成される解析用透過波面干渉縞画像に基づき、前記非球面レンズの面ずれを解析する面ずれ解析手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る非球面レンズ測定装置において、前記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部を備えることができる。
【0017】
本発明において、「直円錐面」とは直円錐の側面を意味し、「頂角」とは直円錐の軸と母線とのなす角の2倍の角度を意味する。
【0018】
また、「第1被検面」および「第2被検面」は、平面に限定されるものではなく、曲面上において互いに平行とみなせる領域を含む。例えば、2つの円筒面が、各々の円筒面の尾根線が互いに平行となるように対向して配置されている場合に、一方の円筒面の尾根線の領域を第1被検面、他方の円筒面の尾根線の領域を第2被検面とすることができる。
【0019】
また、「第1解析用画像を径方向に反転して再構築する」とは、第1解析用画像を構成する各画素(厳密には各画素が有する各濃度値)の配列を、画像中心から放射状に延びる各半直線上において、画像中心から所定距離の地点を反転の基準点として、該基準点よりも画像中心から離れた外側の領域に位置する画素が該基準点よりも画像中心に近い内側の領域に位置するように変更する画像処理、または該内側の領域に位置する画素が該外側の領域に位置するように変更する画像処理を行って、画像処理前の第1解析用画像とは画素配列が異なる新たな第1解析用画像を構築(形成)することを意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る反射偏向素子、相対傾斜測定装置および非球面レンズ測定装置は、上述の特徴を備えていることにより、以下のような作用効果を奏する。
【0021】
すなわち、本発明の反射偏向素子によれば、第1反射面および第2反射面の円錐軸に平行な方向から入射した平行光を、第1反射面において第1の頂角と等しい角度、第2反射面において第2の頂角と等しい角度だけそれぞれ偏向することにより、入射方向に対し180度偏向した逆の方向に出射することが可能となる。
【0022】
これにより、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面が不透明な部材の表裏両側に位置する場合でも、一方の被検面側に位置する測定系から該一方の被検面に対し垂直に照射された測定光の一部を、180度偏向して他方の被検面に対し垂直に照射させることができ、また、該他方の被検面から再帰反射された測定光を、180度偏向して測定系に戻すことができる。
【0023】
したがって、本発明の相対傾斜測定装置によれば、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面が不透明な部材の表裏両側に位置する場合でも、これら2つの被検面の相対的な傾きを、1つの測定系により測定することが可能となる。
【0024】
同様に、本発明の非球面レンズ測定装置によれば、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面が不透明な部材の表裏両側に位置する場合でも、これら2つの被検面の相対的な傾きを、1つの測定系により測定することが可能となり、その測定結果に基づき、非球面レンズの面倒れを求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る反射偏向素子の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る反射偏向素子の概略構成を示す断面図である。
【図3】第2実施形態に係る反射偏向素子の概略構成を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る反射偏向素子の概略構成を示す断面図である。
【図5】一実施形態に係る相対傾斜測定装置の概略構成図である。
【図6】図5に示す解析装置の構成を示すブロック図である。
【図7】再構築前の第1解析用画像を示す図である。
【図8】再構築後の第1解析用画像を示す図である。
【図9】一実施形態に係る非球面レンズ測定装置の概略構成図である。
【図10】図9に示す非球面レンズ測定装置の面倒れ測定時の概略構成図である。
【図11】図9に示す解析制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】測定対象となる非球面レンズの正面図(A)および平面図(B)である。
【図13】非球面レンズの面倒れと面ずれの説明図((A)は面倒れのみの状態、(B)は面ずれのみの状態、(C)は面倒れと面ずれが共に生じている状態)である。
【図14】再構築前の第1解析用画像を示す図である。
【図15】再構築後の第1解析用画像を示す図である。
【図16】他の形態の測定系を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、上述の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明に使用する各図は概略的な説明図であり、詳細な形状や構造を示すものではなく、各部材の大きさや部材間の距離等については適宜変更して示してある。
【0027】
〈反射偏向素子の第1実施形態〉
第1実施形態に係る反射偏向素子10は、図1,2に示すように、第1反射面11、第2反射面12およびアライメント用反射平面13を備えてなる。
【0028】
第1反射面11は、第1の頂角α(図2参照)が90度の第1の直円錐面(頂点Pに近い部分を仮想的に2点鎖線で示す)により構成されており、第2反射面12は、第1の直円錐面の内側において該第1の直円錐面に対し同軸(図中の光軸C10が共通の軸となる)でかつ逆向きに配置された、第2の頂角α(図2参照)が90度の第2の直円錐面(頂点P)により構成されている。また、アライメント用反射平面13は、第1反射面11および第2反射面12の軸(光軸C10)に対し垂直に形成されている。なお、第1の頂角αおよび第2の頂角αの設定角度は90度に限定されるものではない。αは0<X<180を満たす任意の角度Xに設定することができ、それに応じてαは(180−X)度の角度に設定することができる。このように、第1の頂角αと第2の頂角αとの和が180度となるように設定することにより、光軸C10を含む平面上において、第1の直円錐面の母線と第2の直円錐面の母線とのなす角の大きさは90度となる。
【0029】
この反射偏向素子10は、光軸C10に沿って第1反射面11に入射した平行光を、該第1反射面11において光軸C10の放射方向内向きに90度偏向するように反射した後、第2反射面12において光軸C10の方向(図中下向き)に90度偏向するように反射することにより、入射光を入射方向に対し180度偏向して出射するように構成されている。同様に、光軸C10に沿って第2反射面12に入射した平行光を、該第2反射面12において光軸C10の放射方向外向きに90度偏向するように反射した後、第1反射面11において光軸C10の方向(図中下向き)に90度偏向するように反射することにより、入射光を入射方向に対し180度偏向して出射するように構成されている。また、光軸C10に沿ってアライメント用反射平面13に入射した平行光を再帰反射するように構成されている。
【0030】
〈反射偏向素子の第2実施形態〉
第2実施形態に係る反射偏向素子10Aは、図3,4に示すように、第1反射面11A、第2反射面12Aおよびアライメント用反射平面13Aを備えてなる。
【0031】
第1反射面11Aは、第1の頂角β(図4参照)が90度の第1の直円錐面(頂点P1Aに近い部分を仮想的に2点鎖線で示す)により構成されており、第2反射面12Aは、第1の直円錐面の内側において該第1の直円錐面に対し同軸(図中の光軸C10Aが共通の軸となる)でかつ逆向きに配置された、第2の頂角β(図4参照)が90度の第2の直円錐面(頂点P2Aに近い部分を仮想的に2点鎖線で示す)により構成されている。また、アライメント用反射平面13Aは、第1反射面11Aおよび第2反射面12Aの軸(光軸C10A)に対し垂直に形成されている。なお、第1の頂角βおよび第2の頂角βの設定角度は90度に限定されるものではない。βは0<X<180を満たす任意の角度Xに設定することができ、それに応じてβは(180−X)度の角度に設定することができる。このように、第1の頂角βと第2の頂角βとの和が180度となるように設定することにより、光軸C10Aを含む平面上において、第1の直円錐面の母線と第2の直円錐面の母線とのなす角の大きさは90度となる。
【0032】
この反射偏向素子10Aは、光軸C10Aに沿って第1反射面11Aに入射した平行光を、該第1反射面11Aにおいて光軸C10Aの放射方向内向きに90度偏向するように反射した後、第2反射面12Aにおいて光軸C10Aの方向(図中下向き)に90度偏向するように反射することにより、入射光を入射方向に対し180度偏向して出射するように構成されている。同様に、光軸C10Aに沿って第2反射面12Aに入射した平行光を、該第2反射面12Aにおいて光軸C10Aの放射方向外向きに90度偏向するように反射した後、第1反射面11Aにおいて光軸C10Aの方向(図中下向き)に90度偏向するように反射することにより、入射光を入射方向に対し180度偏向して出射するように構成されている。また、光軸C10Aに沿ってアライメント用反射平面13Aに入射した平行光を再帰反射するように構成されている。
【0033】
上述した第1実施形態の反射偏向素子10は、図1,2に示すように、第2反射面12が第2の直円錐面の頂点Pを含む領域まで形成されているので、光軸C10に近い位置での入射光の偏向が可能となっている。すなわち、第1反射面11の外縁部分に入射した光を、第2反射面12を経由して光軸C10に近接した位置から出射することができる。同様に、光軸C10に近接した位置から第2反射面12に入射した光を、第1反射面11の外縁部分を経由して出射することができる。この点が、第1実施形態の反射偏向素子10と第2実施形態の反射偏向素子10Aとの作用上の違いとなっている。
【0034】
〈相対傾斜測定装置の実施形態〉
図5に示す相対傾斜測定装置20は、半導体ウエハ等の平行平板70(被検体載置台54を介して被検体アライメント調整ステージ52により保持されている)の表裏面からなる第1被検面71および第2被検面72の相対的な傾きを測定するものであり、反射偏向素子10Bと干渉計30と解析部40とを備えてなる。なお、被検体載置台54には、図中上下方向に貫通する孔によりそれぞれ構成される第1窓部54a、第2窓部54bが形成されている。
【0035】
上記反射偏向素子10Bは、上述の反射偏向素子10と同タイプのものであり、光軸C10Bを共通の軸とする直円錐面からなる第1反射面11Bおよび第2反射面12Bと、光軸C10Bに対し垂直なアライメント用反射平面13Bとを備えてなり、反射偏向素子アライメント調整ステージ51により保持されている。
【0036】
上記干渉計30は、レーザ光源31と、ビーム径変換用レンズ32と、該ビーム径変換用レンズ32を介してレーザ光源31から出力されたレーザ光を、光束分岐面33aにおいて図中上方に向けて反射するビームスプリッタ33と、該ビームスプリッタ33からの光束を平行光からなる測定光に変換し、測定光軸C30に沿って出射するコリメータレンズ34と、該コリメータレンズ34からの測定光を参照基準面35aにおいて2つに分岐し、一方を参照光としてコリメータレンズ34に向けて反射するとともに、他方を平行平板70に向けて出射する参照基準板35(基準板アライメント調整ステージ53により保持されている)と、を備えている。また、干渉縞画像を撮像するための結像レンズ36および撮像カメラ37(CCDやCMOS等からなる撮像素子38を有する)を備えている。
【0037】
上記解析部40は、コンピュータ等からなる解析装置41と、干渉縞画像等を表示するモニタ装置42と、解析装置41に対する各種入力を行うための入力装置43とを備えており、この解析装置41は、図6に示すように、コンピュータ内に搭載されるCPUやハードディスク等の記憶部および該記憶部に格納されたプログラム等により構成される干渉縞画像生成部44および相対傾斜解析部45(本実施形態における相対傾斜解析手段を構成する)を備えてなる。
【0038】
上記干渉縞画像生成部44は、上記撮像カメラ37(図5参照)により撮像された画像信号に基づき、第1被検面71の傾斜情報を担持した干渉縞画像(第1解析用画像)と、第2被検面72の傾斜情報を担持した干渉縞画像(第2解析用画像)とを生成するように構成されており、上記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部44aを備えている。
【0039】
上記相対傾斜解析部45は、生成された上記第1解析用画像(再構築されたもの)と上記第2解析用画像とに基づき、第1被検面71および第2被検面72の相対的な傾きを解析するように構成されている。
【0040】
以下、本実施形態に係る相対傾斜測定装置20の作用について説明する。測定を実施するのに先立ってアライメント調整が行われるので、まず、その手順について簡単に説明する。
【0041】
(アライメント調整)
〈1〉参照基準板35の参照基準面35aが、測定光軸C30に対し垂直となるように、参照基準板35の傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、参照基準面35aの上にコーナーキューブ(図示略)を設置して測定光を照射し、該コーナーキューブからの反射光と参照基準面35aからの反射光とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、基準板アライメント調整ステージ53を用いて行われる。
【0042】
〈2〉平行平板70が測定光軸C30に対し垂直となるように、平行平板70の傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、参照基準板35を介して平行平板70の第2被検面72に測定光を照射し、該第2被検面72からの反射光と参照基準面35aからの反射光(参照光)とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、被検体アライメント調整ステージ52を用いて行われる。
【0043】
〈3〉反射偏向素子10Bの光軸C10Bが測定光軸C30と平行となるように、反射偏向素子10Bの傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、参照基準板35を介して反射偏向素子10Bのアライメント用反射平面13Bに測定光を照射し、該アライメント用反射平面13Bからの反射光と参照基準面35aからの反射光(参照光)とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、反射偏向素子アライメント調整ステージ51を用いて行われる。
【0044】
なお、このようなアライメント調整によっては完全に調整し切れなかった場合は、残ったアライメント誤差を求めておき、このアライメント誤差に起因する測定誤差を、解析時に補正することが好ましい。
【0045】
アライメント調整後、平行平板70の第1被検面71および第2被検面72の相対的な傾きの測定を行う。以下、その測定時における作用について説明する。
【0046】
(測定時の作用)
〈1〉図5に示すレーザ光源31からレーザ光が出射される。このレーザ光は、ビーム径変換用レンズ32を介してビームスプリッタ33に入射する。
【0047】
〈2〉ビームスプリッタ33に入射したレーザ光は、ビームスプリッタ33の光束分岐面33aにおいて図中上方に反射されてコリメータレンズ34に入射する。コリメータレンズ34に入射した光束は、平行光に変換されて参照基準板35に向けて出射される。
【0048】
〈3〉参照基準板35に入射した光束は、参照基準面35aにおいて、再帰反射される参照光と透過する測定光とに分岐される。
【0049】
〈4〉参照基準面35aを透過した測定光の一部は、被検体載置台54の第1窓部54aを通過して反射偏向素子10Bの第1反射面11Bに入射し、該第1反射面11Bおよび第2反射面12Bにおいて順次反射されることにより、180度偏向されて平行平板70の第1被検面71に対し垂直に照射される。
【0050】
〈5〉一方、参照基準面35aを透過した測定光の他の一部は、被検体載置台54の第2窓部54bを通過し、反射偏向素子10Bを介さずに、平行平板70の第2被検面72に対し垂直に照射される。
【0051】
〈6〉反射偏向素子10Bを介して第1被検面71に照射された測定光は、該第1被検面71から再帰反射されて(このとき測定光は第1被検面71の傾きに応じた波面情報を担持する)反射偏向素子10Bの第2反射面12Bに入射し、該第2反射面12Bおよび第1反射面11Bにおいて順次反射されることにより180度偏向され、元の光路を略逆進して参照基準面35aに入射し、参照光と合波されて干渉光(以下「第1干渉光」と称する)を形成する。
【0052】
〈7〉一方、第2被検面72に照射された測定光は、該第2被検面72から再帰反射され(このとき測定光は第2被検面72の傾きに応じた波面情報を担持する)、元の光路を略逆進して参照基準面35aに入射し、参照光と合波されて干渉光(以下「第2干渉光」と称する)を形成する。
【0053】
〈8〉上記第1干渉光は、コリメータレンズ34およびビームスプリッタ33を経由して結像レンズ36に入射し、該結像レンズ36により撮像カメラ37の撮像素子38上に集光されて干渉縞画像(以下「第1干渉縞画像」と称する)が結像される。結像された第1干渉縞画像は撮像カメラ37により撮像され、その画像信号が干渉縞画像生成部44(図6参照)に出力される。
【0054】
〈9〉同様に、上記第2干渉光は、コリメータレンズ34およびビームスプリッタ33を経由して結像レンズ36に入射し、該結像レンズ36により撮像カメラ37の撮像素子38上に集光されて干渉縞画像(以下「第2干渉縞画像」と称する)が結像される。結像された第2干渉縞画像は撮像カメラ37により撮像され、その画像信号が干渉縞画像生成部44に出力される。なお、本実施形態では、上記第1干渉縞画像は撮像素子38上においてリング状の領域に結像され、上記第2干渉縞画像は、このリング状の領域の内側に結像されるため、第1干渉縞画像と第2干渉縞画像を同時に撮像し得るようになっている。
【0055】
〈10〉干渉縞画像生成部44に入力された画像信号により、該干渉縞画像生成部44において第1解析用画像(第1干渉縞画像をデジタル化した画像)および第2解析用画像(第2干渉縞画像をデジタル化した画像)が生成され、その画像データ(以下、第1解析用画像の画像データを「第1解析用画像データ」、第2解析用画像の画像データを「第2解析用画像データ」と称する)が、上述の相対傾斜解析部45に入力される。なお、上記第1干渉縞画像は、反射偏向素子10Bを介して撮像されたものであるため、その画像データに基づき第1解析用画像を生成すると、図7に示すように、通常に撮像された干渉縞画像に対し、径方向に反転された状態の干渉縞画像となる。そこで、上記画像再構築部44aにおいて、この第1解析用画像を径方向に反転して再構築し、その再構築後の第1解析用画像(図8参照)の画像データを第1解析用画像データとして出力する。
【0056】
第1解析用画像の再構築は、具体的には、以下の手順で行われる。まず、再構築前の第1解析用画像において、画像中心Oから放射状に延びる各半直線上において、画像中心Oから所定距離eの地点を反転の基準点として設定する。図7では、1つの半直線Rと、各半直線上における反転の基準点を結んで形成される円Eを図示しており、以下、反転の基準点を円Eとして説明する。そして、各半直線上において、円Eの外側の領域に位置する画素が円Eの内側の領域に位置するように変更する画像処理を行って画像を再構築する。図7では、半直線R上において、円Eの外側の2点K,Kに位置する画素が、円Eの内側の2点K´,K´にそれぞれ配列し直されることを例示している。
【0057】
なお、点Kと点K´は、半直線R上における円Eからの距離が互いに等しくなっている(点Kと点K´についても同じ)。これは、第1反射面11Bを構成する直円錐の頂角(図2のαに相当)と第2反射面12Bを構成する直円錐の頂角(図2のαに相当)が共に90度に設定されていることによる。各々の頂角が90度と異なる角度に設定された場合には、その設定角度に応じて、点Kと点K´の円Eからの各距離の比が適宜決定されることとなる(点Kと点K´についても同じ)。また、図7では、反転の基準点(円E)よりも外側の領域に位置する画素が内側の領域に位置するように変更されるが、これとは逆に、反転の基準点よりも内側の領域に位置する画素が外側の領域に位置するように変更される場合もある。例えば、平行平板70に替えて、中央部(光軸近傍の領域)に開口を有する平行平板(図示略)の表裏面(第1被検面および第2被検面)の相対的な傾きを測定する際に、第2被検面側から出射された測定光を、平行平板の中央部の開口を通過させて反射偏向素子10Bの第2反射面12Bおよび第1反射面11Bをこの順に経由させて第1被検面に照射する場合において、その際に形成される第1解析用画像の反転、再構築を行う場合がこれに該当する。
【0058】
〈11〉上記相対傾斜解析部45に入力された第1解析用画像データおよび第2解析用画像データに基づき、該相対傾斜解析部45において解析が行われ、平行平板70の第1被検面71および第2被検面72の相対的な傾きが求められる。具体的には、再構築後の第1解析用画像を解析することにより(通常の縞解析法を適用することができる)、第1被検面71の参照基準面35aに対する傾きが求められ、第2解析用画像を解析することにより第2被検面72の参照基準面35aに対する傾きが求められる。そして、参照基準面35aに対する第1被検面71および第2被検面72の各傾きに基づき、被検面71および第2被検面72の相対的な傾きが求められる。
【0059】
〈非球面レンズ測定装置の実施形態〉
図9に示す非球面レンズ測定装置25は、非球面レンズ90(レンズ載置台55を介して被検体アライメント調整ステージ52Aにより保持されている)の面倒れおよび面ずれを測定するものであり、反射偏向素子10Cと干渉計30Aと解析部40Aとヌル光学素子60を備えてなる。なお、レンズ載置台55には、図中上下方向に貫通する孔によりそれぞれ構成される第1窓部55a、第2窓部55b(図10参照)および第3窓部55c(図9参照)が形成されている。
【0060】
上記非球面レンズ90は、図12に示すように、少なくとも一方が回転非球面とされた2つのレンズ面(第1レンズ面91aおよび第2レンズ面91b)を有するレンズ部91と、該レンズ部91の外周部に鍔状に形成された張出部92とからなる。本実施形態においては、張出部92が測定光に対し不透明に構成されており、該張出部92の図中上側の面が第1レンズ面91aの側に形成された第1被検面92aとされ、張出部92の図中下側の面が第2レンズ面91bの側に形成された第2被検面92b(第1被検面92aに対し平行に設計されている)とされている。
【0061】
なお、本実施形態においては、図13(A)に示すように、第1レンズ面91aの中心軸C91a(第1レンズ面91aの非球面式によって決定される)と、第2レンズ面91bの中心軸C91b(第2レンズ面91bの非球面式によって決定される)との相対的な傾き角γ(2つの中心軸C91a,C91bのなす角;2つの中心軸C91a,C91bが互いに交わらない場合は、それぞれの方向ベクトルのなす角)を、非球面レンズ90の面倒れと定義する。また、第1レンズ面91aおよびその中心軸C91aは、第1レンズ面91aの中心点Q(中心軸C91aと第1レンズ面91aとの交点)を回転中心として傾き、第2レンズ面91bおよびその中心軸C91bは、第2レンズ面91bの中心点Q(中心軸C91bと第2レンズ面91bとの交点)を回転中心として傾くと仮定する。
【0062】
また、図13(B)に示すように、本実施形態においては、第1レンズ面91aの中心軸C91aと第2レンズ面91bの中心軸C91bとの相対的な位置ずれd(中心軸C91a,C91bは互いに平行)を、非球面レンズ90の面ずれと定義する。
【0063】
さらに、図13(C)に示すように、非球面レンズ90に面倒れと面ずれが共に生じている場合には、図13(C)に示す状態から面倒れを取り除いた状態(第1レンズ面91aおよび中心軸C91aを、中心点Qを回転中心として回転させて、2つの中心軸C91a,C91bが互いに平行となるようにした状態)において残存する、2つの中心軸C91a,C91b同士の相対的な位置ずれを、非球面レンズ90の面ずれと定義する。
【0064】
上記反射偏向素子10Cは、上述の反射偏向素子10Aと同タイプのものであり、図9に示すように、光軸C10Cを共通の軸とする直円錐面からなる第1反射面11Cおよび第2反射面12Cと、光軸C10Cに対し垂直なアライメント用反射平面13Cとを備えてなり、反射偏向素子アライメント調整ステージ51Aにより保持されている。
【0065】
上記干渉計30Aは、レーザ光源31Aと、ビーム径変換用レンズ32Aと、該ビーム径変換用レンズ32Aを介してレーザ光源31Aから出力されたレーザ光を、光束分岐面33Aaにおいて図中上方に向けて反射するビームスプリッタ33Aと、該ビームスプリッタ33Aからの光束を平行光からなる測定光に変換し、測定光軸C30Aに沿って出射するコリメータレンズ34Aと、該コリメータレンズ34Aからの測定光を参照基準面35Aaにおいて2つに分岐し、一方を参照光としてコリメータレンズ34Aに向けて反射するとともに、他方を非球面レンズ90に向けて出射する参照基準板35A(基準板アライメント調整ステージ53Aにより保持されている)と、を備えている。また、干渉縞画像を撮像するための結像レンズ36Aおよび撮像カメラ37A(CCDやCMOS等からなる撮像素子38Aを有する)を備えている。
【0066】
上記解析部40Aは、コンピュータ等からなる解析装置41Aと、干渉縞画像等を表示するモニタ装置42Aと、解析装置41Aに対する各種入力を行うための入力装置43Aとを備えており、この解析装置41Aは、図11に示すように、コンピュータ内に搭載されるCPUやハードディスク等の記憶部および該記憶部に格納されたプログラム等により構成される干渉縞画像生成部44A、面倒れ解析部46(本実施形態における面倒れ解析手段を構成する)および面ずれ解析部47(本実施形態における面ずれ解析手段を構成する)を備えてなる。
【0067】
上記干渉縞画像生成部44Aは、上記反射偏向素子10Cを用いた測定時に上記撮像カメラ37A(図9参照)により撮像された画像信号に基づき、第1被検面92aの傾斜情報を担持した干渉縞画像(第1解析用画像)と、第2被検面92bの傾斜情報を担持した干渉縞画像(第2解析用画像)とを生成するとともに、上記ヌル光学素子60を用いた測定時に上記撮像カメラ37Aにより撮像された画像信号に基づき、解析用透過波面干渉縞画像を生成するように構成されており、上記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部44Aaを備えている。
【0068】
上記面倒れ解析部46は、生成された上記第1解析用画像(再構築されたもの)と上記第2解析用画像とに基づき、非球面レンズ90の面倒れを解析するように構成されている。
【0069】
上記面ずれ解析部47は、生成された上記解析用透過波面干渉縞画像に基づき、非球面レンズ90の面ずれを解析するように構成されている。
【0070】
上記ヌル光学素子60は、非球面レンズ90のレンズ部91を透過した後、一旦収束して発散する光束を再帰反射させるヌルミラー部61と、該ヌルミラー部61の中心軸である光軸C60に対し垂直に配された反射平面部62とを備えてなり、ヌル光学素子アライメント調整ステージ56により保持されている。
【0071】
なお、上記反射偏向素子10Cおよび上記ヌル光学素子60は、さらに電動X軸ステージ57、電動Y軸ステージ58および電動Z軸ステージ59により順次支持されており、非球面レンズ90の測定時において自動的に位置調整されるようになっている。
【0072】
以下、本実施形態に係る非球面レンズ測定装置25の作用について説明する。測定を実施するのに先立ってアライメント調整が行われるので、まず、その手順について簡単に説明する。
【0073】
(アライメント調整)
〈1〉参照基準板35Aの参照基準面35Aaが、測定光軸C30Aに対し垂直となるように、参照基準板35Aの傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、参照基準面35Aaの上にコーナーキューブ(図示略)を設置して測定光を照射し、該コーナーキューブからの反射光と参照基準面35Aaからの反射光とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、基準板アライメント調整ステージ53Aを用いて行われる。
【0074】
〈2〉非球面レンズ90の張出部92が測定光軸C30Aに対し垂直となるように、非球面レンズ90の傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、参照基準板53Aを介して張出部92の第2被検面92bに測定光を照射し、該第2被検面92bからの反射光と参照基準面35Aaからの反射光(参照光)とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、被検体アライメント調整ステージ52Aを用いて行われる。
【0075】
〈3〉反射偏向素子10Cの光軸C10Cが測定光軸C30Aと平行となるように、反射偏向素子10Bの傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、電動X軸ステージ57、電動Y軸ステージ58および電動Z軸ステージ59を用いて反射偏向素子10Cを非球面レンズ90の図中上方に位置するように移動させた後、参照基準板53Aを介して反射偏向素子10Cのアライメント用反射平面13Cに測定光を照射し、該アライメント用反射平面13Cからの反射光と参照基準面35Aaからの反射光(参照光)とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、反射偏向素子アライメント調整ステージ51Aを用いて行われる。
【0076】
〈4〉ヌル光学素子60の光軸C60が測定光軸C30Aと平行となるように、ヌル光学素子60の傾き調整を行う。この傾き調整は、例えば、電動X軸ステージ57、電動Y軸ステージ58および電動Z軸ステージ59を用いてヌル光学素子60を非球面レンズ90の図中上方に位置するように移動させた後、参照基準板53Aを介してヌル光学素子60のアライメント用反射平面部62に測定光を照射し、該反射平面62からの反射光と参照基準面35Aaからの反射光(参照光)とにより形成される干渉縞画像がヌル縞状態となるように、ヌル光学素子アライメント調整ステージ56を用いて行われる。
【0077】
なお、このようなアライメント調整によっては完全に調整し切れなかった場合は、残ったアライメント誤差を求めておき、このアライメント誤差に起因する測定誤差を、解析時に補正することが好ましい。
【0078】
アライメント調整後、非球面レンズ90の測定を行う。以下、その測定時における作用について説明する。
【0079】
(測定時の作用)
〈1〉図9に示すように、電動X軸ステージ57、電動Y軸ステージ58および電動Z軸ステージ59によりヌル光学素子60が非球面レンズ90の図中上方に位置するように移動される。このとき、非球面レンズ90に対するヌル光学素子60の相対位置の調整が行われる。この位置調整は、例えば、前掲の特許文献2に記載の手法を用いて行われる。
【0080】
〈2〉ヌル光学素子60が設置された後、レーザ光源31Aからレーザ光が出射される。このレーザ光は、ビーム径変換用レンズ32Aを介してビームスプリッタ33Aに入射し、該ビームスプリッタ33Aの光束分岐面33Aaにおいて図中上方に反射されてコリメータレンズ34Aに入射する。コリメータレンズ34Aに入射した光束は、平行光に変換されて参照基準板35Aに向けて出射される。
【0081】
〈3〉参照基準板35Aに入射した光束は、参照基準面35Aaにおいて、再帰反射される参照光と透過する測定光とに分岐される。
【0082】
〈4〉参照基準面35Aaを透過した測定光の一部は、レンズ載置台55の第3窓部55cを通過して非球面レンズ90のレンズ部91に入射し、該レンズ部91を透過してヌル光学素子60のヌルミラー部61に照射される。
【0083】
〈5〉ヌルミラー部61に照射された測定光は、該ヌルミラー部61から再帰反射されて非球面レンズ90のレンズ部91に再入射し、該レンズ部91を透過して参照基準面35Aaに入射し、参照光と合波されて干渉光(以下「透過波面干渉光」と称する)を形成する。
【0084】
〈6〉上記透過波面干渉光は、コリメータレンズ34Aおよびビームスプリッタ33Aを経由して結像レンズ36Aに入射し、該結像レンズ36Aにより撮像カメラ37Aの撮像素子38A上に集光されて干渉縞画像(以下「透過波面干渉縞画像」と称する)が結像される。結像された透過波面干渉縞画像は撮像カメラ37Aにより撮像され、その画像信号が干渉縞画像生成部44A(図11参照)に出力される。
【0085】
〈7〉干渉縞画像生成部44Aに入力された画像信号により、該干渉縞画像生成部44Aにおいて解析用透過波面干渉縞画像(透過波面干渉縞画像をデジタル化した画像)が生成され、その画像データ(以下「解析用透過波面干渉縞画像データ」と称する)が、上述の面ずれ解析部47に入力される。
【0086】
〈8〉図10に示すように、電動X軸ステージ57、電動Y軸ステージ58および電動Z軸ステージ59により反射偏向素子10Cが非球面レンズ90の図中上方に位置するように移動される。
【0087】
〈9〉反射偏向素子10Cが設置された後、レーザ光源31Aからレーザ光が出射される。このレーザ光は、ビーム径変換用レンズ32Aを介してビームスプリッタ33Aに入射し、該ビームスプリッタ33Aの光束分岐面33Aaにおいて図中上方に反射されてコリメータレンズ34Aに入射する。コリメータレンズ34Aに入射した光束は、平行光に変換されて参照基準板35Aに向けて出射される。
【0088】
〈10〉参照基準板35Aに入射した光束は、参照基準面35Aaにおいて、再帰反射される参照光と透過する測定光とに分岐される。
【0089】
〈11〉参照基準面35Aaを透過した測定光の一部は、レンズ載置台55の第1窓部55aを通過して反射偏向素子10Cの第1反射面11Cに入射し、該第1反射面11Cおよび第2反射面12Cにおいて順次反射されることにより、180度偏向されて非球面レンズ90の第1被検面92aに対し垂直に照射される。
【0090】
〈12〉一方、参照基準面35Aaを透過した測定光の他の一部は、レンズ載置台55の第2窓部55bを通過し、反射偏向素子10Cを介さずに、非球面レンズ90の第2被検面92bに対し垂直に照射される。
【0091】
〈13〉反射偏向素子10Cを介して第1被検面92aに照射された測定光は、該第1被検面92aから再帰反射されて(このとき測定光は第1被検面92aの傾きに応じた波面情報を担持する)反射偏向素子10Cの第2反射面12Cに入射し、該第2反射面12Cおよび第1反射面11Cにおいて順次反射されることにより180度偏向され、元の光路を略逆進して参照基準面35Aaに入射し、参照光と合波されて干渉光(以下「第1干渉光」と称する)を形成する。
【0092】
〈14〉一方、第2被検面92bに照射された測定光は、該第2被検面92bから再帰反射され(このとき測定光は第2被検面92bの傾きに応じた波面情報を担持する)、元の光路を略逆進して参照基準面35Aaに入射し、参照光と合波されて干渉光(以下「第2干渉光」と称する)を形成する。
【0093】
〈15〉上記第1干渉光は、コリメータレンズ34Aおよびビームスプリッタ33Aを経由して結像レンズ36Aに入射し、該結像レンズ36Aにより撮像カメラ37Aの撮像素子38A上に集光されて干渉縞画像(以下「第1干渉縞画像」と称する)が結像される。結像された第1干渉縞画像は撮像カメラ37Aにより撮像され、その画像信号が干渉縞画像生成部44A(図11参照)に出力される。
【0094】
〈16〉同様に、上記第2干渉光は、コリメータレンズ34Aおよびビームスプリッタ33Aを経由して結像レンズ36Aに入射し、該結像レンズ36Aにより撮像カメラ37Aの撮像素子38A上に集光されて干渉縞画像(以下「第2干渉縞画像」と称する)が結像される。結像された第2干渉縞画像は撮像カメラ37Aにより撮像され、その画像信号が干渉縞画像生成部44Aに出力される。なお、本実施形態では、上記第1干渉縞画像は撮像素子38A上においてリング状の領域に結像され、上記第2干渉縞画像は、このリング状の領域の内側に結像されるため、第1干渉縞画像と第2干渉縞画像を同時に撮像し得るようになっている。
【0095】
〈17〉干渉縞画像生成部44Aに入力された画像信号により、該干渉縞画像生成部44Aにおいて第1解析用画像(第1干渉縞画像をデジタル化した画像)および第2解析用画像(第2干渉縞画像をデジタル化した画像)が生成され、その画像データ(以下、第1解析用画像の画像データを「第1解析用画像データ」、第2解析用画像の画像データを「第2解析用画像データ」と称する)が、上述の面倒れ解析部46に入力される。なお、上記第1干渉縞画像は、反射偏向素子10Cを介して撮像されたものであるため、その画像データに基づき第1解析用画像を生成すると、図14に示すように、通常に撮像された干渉縞画像に対し、径方向に反転された状態の干渉縞画像となる。そこで、上記画像再構築部44Aaにおいて、この第1解析用画像を径方向に反転して再構築し、その再構築後の第1解析用画像(図15参照)の画像データを第1解析用画像データとして出力する。
【0096】
〈18〉上記面倒れ解析部46に入力された第1解析用画像データおよび第2解析用画像データに基づき、該面倒れ解析部46において解析が行われ、非球面レンズ90の第1被検面92aと第2被検面92bとの相対的な傾きが求められ、その結果に基づき、非球面レンズ90の面倒れが求められる。
【0097】
〈19〉上記相面ずれ解析部47に入力された解析用透過波面干渉縞画像データに基づき、非球面レンズ90の面ずれが求められる。具体的には、解析用透過波面干渉縞画像データに基づき非球面レンズ90の全体のコマ収差が求められ、この全体のコマ収差から上記手順〈18〉で求められた面倒れに起因して発生する面倒れ分コマ収差が差し引かれることにより、面ずれに起因して発生する面ずれ分コマ収差が求められる。この面ずれ分コマ収差に基づき、非球面レンズ90の面ずれが求められる。なお、このような手法の詳細については、前掲の特許文献2に記載されている。
【0098】
〈測定系の変形態様〉
上述の相対傾斜測定装置20および非球面レンズ測定装置25においては、測定系として干渉計30,30Aが用いられているが、図16に示すようなオートコリメータ80を測定系として用いることも可能である。
【0099】
このオートコリメータ80は、光源81、コンデンサレンズ82、十字線等の標線が形成された光源側焦点鏡83、ビームスプリッタ84(光束分岐面84a)、対物レンズ85、撮像側焦点鏡86、結像レンズ87および撮像カメラ88を備え、光源側焦点鏡83および撮像側焦点鏡86は、対物レンズ85の焦点面にそれぞれ配置されている。
【0100】
このオートコリメータ80の測定光軸C80上に、図示せぬ反射偏向素子(上記各実施形態のものを用いることが可能)を配置し、オートコリメータ80からの測定光一部を、反射偏向素子を介して第1被検面(図示略)に対し垂直に照射するとともに、該測定光の他の一部を、反射偏向素子を介さずに第2被検面(図示略)に対し垂直に照射する。第1被検面から再帰反射され、反射偏向素子を経由してオートコリメータ80に戻る光は対物レンズ85により集光され、撮像側焦点鏡86上に第1の標線像が形成される。一方、第2被検面から再帰反射された光も、同様に対物レンズ85により集光され、撮像側焦点鏡86上に第2の標線像が形成される。これら第1および第2の標線像を、結像レンズ87を介して撮像カメラ88内の撮像素子89上に結像させて撮像し、その画像データを、図示せぬ解析装置において解析することにより、第1被検面および第2被検面の相対的な傾きを求めることができる。なお、第1の標線像については、反射偏向素子を介して撮像されたものであるため、通常に撮像された標線像に対し、径方向に反転された状態の標線像となる。そこで、この第1の標線像を径方向に反転して再構築することが好ましい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に態様が限定されるものではなく、種々の態様のものを実施形態とすることができる。
【0102】
例えば、上述の反射偏向素子10,10Aは、アライメント用反射平面13,13Aをそれぞれ備えているが、このようなアライメント用反射平面を備えていない構成の反射偏向素子(図示略)を形成することも可能である。
【0103】
また、上述の干渉計30,30Aはフィゾータイプとされているが、マイケルソンタイプ等の他のタイプの干渉計を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10,10A,10B,10C 反射偏向素子
11,11A,11B,11C 第1反射面
12,12A,12B,12C 第2反射面
13,13A,13B,13C アライメント用反射平面
20 相対傾斜測定装置
25 非球面レンズ測定装置
30,30A 干渉計
31,31A レーザ光源
32,32A ビーム径変換用レンズ
33,33A ビームスプリッタ
33a,33Aa 光束分岐面
34,34A コリメータレンズ
35,35A 参照基準板
35a,35Aa 参照基準面
36,36A 結像レンズ
37,37A 撮像カメラ
38,38A 撮像素子
40,40A 解析部
41,41A 解析装置
42,42A モニタ装置
43,43A 入力装置
44,44A 干渉縞画像生成部
44a,44Aa 画像再構築部
45 相対傾斜解析部
46 面倒れ解析部
47 面ずれ解析部
51,51A 反射偏向素子アライメント調整ステージ
52,52A 被検体アライメント調整ステージ
53,53A 基準板アライメント調整ステージ
54 被検体載置台
55 レンズ載置台
56 ヌル光学素子アライメント調整ステージ
57 電動X軸ステージ
58 電動Y軸ステージ
59 電動Z軸ステージ
60 ヌル光学素子
61 ヌルミラー部
62 反射平面部
70 平行平板
71,92a 第1被検面
72,92b 第2被検面
80 オートコリメータ
81 光源
82 コンデンサレンズ
83 光源側焦点鏡
85 対物レンズ
86 撮像側焦点鏡
90 非球面レンズ
91 レンズ部
92 張出部
10,C10A,C10B,C10C,C60 光軸
30,C30A,C80 測定光軸
91a,C91b 中心軸
,P 頂点
,Q 中心点
α,β 第1の頂角
α,β 第2の頂角
O 画像中心
E 円(反転の基準点)
e 所定距離
,K,K´,K´ 画素の位置
R 半直線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の頂角を有する第1の直円錐面により構成された第1反射面と、該第1の直円錐面の内側において該第1の直円錐面に対し同軸でかつ逆向きに配置された、前記第1の頂角との和が180度となる第2の頂角を有する第2の直円錐面により構成された第2反射面とを有してなることを特徴とする反射偏向素子。
【請求項2】
前記第1の頂角および前記第2の頂角が共に90度に設定されていることを特徴とする請求項1記載の反射偏向素子。
【請求項3】
前記第1反射面および前記第2反射面の軸に対し垂直なアライメント用反射平面を有してなることを特徴とする請求項1または2記載の反射偏向素子。
【請求項4】
互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面の相対的な傾きを測定する相対傾斜測定装置であって、
請求項1〜3のうちいずれか1項記載の反射偏向素子と、
平行光からなる測定光を出射し、該測定光の一部を、前記反射偏向素子を介して前記第1被検面に対し垂直に照射するとともに、該測定光の他の一部を、前記反射偏向素子を介さずに前記第2被検面に対し垂直に照射する測定系と、
前記第1被検面から再帰反射され、前記反射偏向素子を介して前記測定系に戻る測定光が担持する波面情報により形成される第1解析用画像と、前記第2被検面から再帰反射されて該測定系に戻る測定光により形成される第2解析用画像とに基づき、該第1被検面および該第2被検面の相対的な傾きを解析する相対傾斜解析手段と、を備えてなることを特徴とする相対傾斜測定装置。
【請求項5】
前記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部を備えていることを特徴とする請求項4記載の相対傾斜測定装置。
【請求項6】
前記測定系が干渉計であることを特徴とする請求項4または5記載の相対傾斜測定装置。
【請求項7】
少なくとも一方が回転非球面とされた2つのレンズ面を有するとともに、該2つのレンズ面の一方側および他方側に、互いに平行に形成された第1被検面および第2被検面をそれぞれ備えた非球面レンズの面倒れおよび面ずれを測定する非球面レンズ測定装置であって、
請求項1〜3のうちいずれか1項記載の反射偏向素子と、
平行光からなる測定光を出射し、該測定光の一部を、前記反射偏向素子を介して前記第1被検面に対し垂直に照射するとともに、該測定光の他の一部を、前記反射偏向素子を介さずに前記第2被検面に対し垂直に照射する干渉計と、
前記第1被検面から再帰反射され、前記反射偏向素子を介して前記干渉計に戻る測定光が担持する波面情報により形成される第1解析用画像と、前記第2被検面から再帰反射されて該干渉計に戻る測定光により形成される第2解析用画像とに基づき、前記非球面レンズの面倒れを解析する面倒れ解析手段と、
前記干渉計から出射されて前記2つのレンズ面を透過した測定光を再帰反射するヌル光学素子と、
前記ヌル光学素子から再帰反射され、前記2つのレンズ面を再び透過して前記干渉計に戻る測定光により形成される解析用透過波面干渉縞画像に基づき、前記非球面レンズの面ずれを解析する面ずれ解析手段と、を備えてなることを特徴とする非球面レンズ測定装置。
【請求項8】
前記第1解析用画像を径方向に反転して再構築する画像再構築部を備えていることを特徴とする請求項7記載の非球面レンズ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−242544(P2011−242544A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113581(P2010−113581)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】