説明

反応処理装置

【課題】複数の試薬を用いて、これらの試薬を正確に処理することができる反応処理装置を提供すること。
【解決手段】反応処理装置40は、生体物質を収容した処理具1に複数種類の汎用試薬と複数種類の非汎用試薬とを供給して、生体物質を処理する装置である。この反応処理装置40は、装置本体41と、着脱自在に装着される使い捨てのノズルチップ内に液体を吸引・吐出する第1の分注ヘッド42と、使い捨てでない固定式ノズルを有する第2の分注ヘッド43と、第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43を装置本体41に対し移動させるヘッド移動機構44とを備え、複数種類の非汎用試薬については、第1の分注ヘッド42により、種類ごとに前記ノズルチップを交換しつつ処理具1へ分注し、複数種類の汎用試薬については、第2の分注ヘッド43により、種類にかかわらず共通に前記固定式ノズルから処理具1へ分注する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応処理装置の自動化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ関連分野の発展とともに、例えば血液、リンパ液、唾液、尿等の試料(試料液)中のウィルス・細胞・遺伝子・タンパク質・糖タンパク質・ホルモン類・生化学物質等の生体物質を検出する方法が数多く開発されている。
【0003】
例えば、遺伝子を検出する方法としては、in situハイブリダイゼーション法が知られている。
【0004】
in situハイブリダイゼーション法とは、細胞の染色体DNA(デオキシリボ核酸)や組織中のmRNA(リボ核酸)等を標的として、RNAプローブやDNAプローブとハイブリッド形成を行うことにより、特定遺伝子の染色体上での存在位置を検出したり、mRNAの組織中での局在領域を検出したりする方法である。
【0005】
ここで、RNAプローブ、DNAプローブとは、細胞の染色体DNAや組織中のmRNA等の特定部位と特異的に結合する塩基配列であり、当該塩基配列の存在を検出するための放射性同位体や蛍光物質等の標識物が化学結合している。
【0006】
このようなin situハイブリダイゼーション法の具体的な操作は、例えば、細胞(生体物質)の組織構造が操作中に崩れないように細胞を固定する第1工程と、プローブが細胞中の核酸と反応し易くするために、当該細胞の不要部位の除去や蛋白質分解酵素による部分分解処理を行う第2工程と、プローブを細胞中の核酸と反応させる第3工程と、過剰なプローブを洗浄して除去する第4工程と、細胞中の核酸とハイブリッドしたプローブ内標識物を検出するために、標識物と結合する酵素標識抗体等の試薬と反応させる第5工程と、過剰な抗体等を洗浄して除去する第6工程と、抗体を介して酵素と酵素基質とを反応させる第7工程と、過剰な酵素基質を洗浄して除去する第8工程と、酵素基質が酵素反応により発色した像を写真撮影等で記録する第9工程とにより行われる。
【0007】
このうち第2工程〜第8工程は、細胞(生体物質)を、試薬を含有する処理液(反応液や洗浄液)と接触させた後、これらの液を、次の工程で使用する処理液と置換するといった操作を繰り返すことにより行われる。
【0008】
したがって、in situハイブリダイゼーション法を効率的に行うためには、これらの液の置換操作を多数の生体物質について一度に行えることが重要となる。
【0009】
このように、多数の生体物質について、処理液の置換を一括して行える反応装置(処理装置)として、複数のカプセル容器内に生体物質と処理液とをそれぞれ収容し、処理液の交換を、処理液の機械的な吸引による除去と、新たな処理液の供給とにより行うようにしたものが提案されている。
【0010】
しかし、この装置では、処理液の吸引操作等により、軟弱な生体物質を破損する場合があり、また装置自体も高価で汎用性に欠ける。
【0011】
また、この装置では、多数の試薬を用いるため、これらの試薬を必要に応じて、混入を避けて処理することや試薬を保持する際に、適切に温度管理することが強く望まれていた。
【0012】
例えば、生体物質を処理するに際して、前述したようなin situハイブリダイゼーション法を、簡易に行い得る反応容器(処理具)も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
この反応容器901は、図13に示すように、中空管902と、中空管902の内部に設けられた細孔板903と、中空管902内に挿入される中空管904と、中空管904の先端に設けられた細孔板905とで構成されている。
【0014】
この反応容器901は、次のようにして使用される。まず、中空管902内に生体物質を含む液体(試料液)を収納し、中空管902内に中空管904を挿入する。これにより、生体物質を含む液体(試料液)が細孔板903と細孔板905とで画成される空間内に収納させる。
【0015】
次に、この状態で、各種の処理液を細孔板905を介して順次、前記空間内に供給する。これにより、空間内の処理液が順次置換され、生体物質が各処理液により処理される。
【0016】
以上のような一連の処理操作は、人手により行われており、手間と時間とを要しているというのが実情である。
【0017】
【特許文献1】特開2003−169662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、複数の試薬を用いて、これらの試薬を正確に処理することができる反応処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的は、下記の(1)〜(7)の本発明により達成させる。
(1) 生体物質を収容した処理具に複数種類の汎用試薬と複数種類の非汎用試薬とを供給して該生体物質を処理し得る反応処理装置であって、
装置本体と、
使い捨てのノズルチップを着脱自在に装着し、該ノズルチップ内に液体を吸引・吐出する第1の分注ヘッドと、
液体を吐出可能であり、複数回使用される固定式ノズルを有する第2の分注ヘッドと、
前記第1の分注ヘッドおよび前記第2の分注ヘッドを前記装置本体に対し相対的に移動させるヘッド移動機構とを備え、
前記複数種類の非汎用試薬については、前記第1の分注ヘッドにより、その種類ごとにノズルチップを交換しつつ前記処理具へ分注し、前記複数種類の汎用試薬については、前記第2の分注ヘッドにより、その種類にかかわらず共通に前記固定式ノズルから前記処理具へ分注するよう構成されていることを特徴とする反応処理装置。
【0020】
(2) 前記汎用試薬および前記非汎用試薬の少なくとも一方の温度を調整する温度調整部を有する上記(1)に記載の反応処理装置。
【0021】
(3) 前記温度調整部は、前記非汎用試薬を冷却した状態で貯留する冷却貯留部を有する上記(2)に記載の反応処理装置。
【0022】
(4) 前記汎用試薬を種類ごとに貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された汎用試薬を前記固定式ノズルへ送液する送液ポンプと、前記貯留部から前記固定式ノズルへの流路を切り替える流路切替手段とを有し、前記流路切替手段を切り替えることにより、前記固定式ノズルで分注する汎用試薬の種類を選択する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の反応処理装置。
【0023】
(5) 前記固定式ノズルへ供給される汎用試薬を加温するヒーターを有する上記(4)に記載の反応処理装置。
【0024】
(6) 前記各非汎用試薬と前記各汎用試薬とを所定の順序で前記処理具に供給するように、前記第1の分注ヘッドと前記第2の分注ヘッドとの作動を制御する制御手段を備えた上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の反応処理装置。
【0025】
(7) 前記処理具は、先端部に液体を排出可能な排出口を備える筒体と、
該筒体内の前記排出口近傍に固定された第1のフィルタと、
前記筒体内の前記第1のフィルタより基端側に、前記筒体の軸方向に移動可能に設けられ、前記第1のフィルタとの間に形成される空間内に液体を保持し得る第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを前記筒体の軸方向に移動操作する操作部材とを有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の反応処理装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非汎用試薬を処理具へ分注する際には、種類の異なる非汎用試薬同士で、使い捨てのノズルチップを交換して行うため、これらの試薬同士の間でのコンタミネーションを確実に防止することができる。
【0027】
また、温度調整部を備えた場合には、例えば常温で分解し易い非汎用試薬の温度を調整することができ、よって、非汎用試薬を適切に管理することができる。
【0028】
また、複数種類の汎用試薬を処理具へ分注する際には、その種類にかかわらず共通に固定式ノズルからおこなうため、消耗品であるノズルチップの費用がかからないので、コスト低減が図れ、また、ノズルチップ交換の時間を要しないので、処理効率の向上が図れる。
【0029】
このようなことから、本発明によれば、生体物質を簡便かつ正確に処理し得る。また、処理コストが安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の反応処理装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の反応処理装置の実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す反応処理装置における配管図である。
【0032】
図1に示す本発明の反応処理装置40は、装置本体41と、第1の分注ヘッド42と、第2の分注ヘッド43と、第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43を装置本体41に対し移動させるヘッド移動機構44とを備えている。
【0033】
この反応処理装置40は、生体物質を収容した処理具1に複数種類の非汎用試薬と複数種類の汎用試薬とを供給して、この生体物質を例えばin situハイブリダイゼーション法により処理するものである。
なお、処理具1については、後に詳述する。
【0034】
装置本体41は、ほぼ直方体のテーブルのような外観をなしており、内部には各種の機器が収納されている。
【0035】
この装置本体41上には、処理具1を保持する保持部45が設置されている。本実施形態では、保持部45には、多連構成(8連構成)の処理具1を6個設置することができるが、処理具1の設置数はこれに限定されるものではない。
【0036】
第1の分注ヘッド42は、使い捨てのノズルチップ421が着脱自在に装着されるものであり、そのノズルチップ421内に液体を吸引および吐出する機能を有している。
【0037】
なお、本発明で言う「使い捨て」とは、分注する試薬の種類に応じてノズルチップ421を新しいものに交換して使用することを意味し、使用済みのノズルチップ421を廃棄する場合はもちろん、回収した使用済みのノズルチップ421を洗浄・乾燥して再利用する場合も含む。
【0038】
第1の分注ヘッド42は、例えば、プローブ液、抗体液、酵素液等の稀少で高価な試薬、常温(室温)で分解し易い試薬(不安定な試薬)、他の試薬とのコンタミネーションを避けるべき試薬(本発明においては「非汎用試薬」と言う)を処理具1へ分注する。この非汎用試薬は、生体物質が含む検出対象物の検出に用いられるものであり、この検出対象物に反応し得る物質を含有する処理液(反応液)である。
【0039】
装置本体41上には、非汎用試薬を貯留する冷却貯留部(温度調整部)46が設置されている。なお、この冷却貯留部46には、不活性ガスが充填されていてもよい。これにより、非汎用試薬を不活性ガスの雰囲気内で保存することができる。
【0040】
冷却貯留部46には、行列状に多数配置された小容量の小穴と、その隣に複数配置された比較的容量の大きい大穴とが形成されており、各小穴には、使用量の少ない非汎用試薬を種類ごとに分けて貯留することができ、各大穴には、比較的使用量の多い非汎用試薬を種類ごとに分けて貯留することができる。
【0041】
また、冷却貯留部46には、冷却装置が内蔵されており、非汎用試薬を冷却した状態で貯留することができる。これにより、非汎用試薬の変質、劣化を防止することができる。この冷却装置は、特に限定されないが、例えばペルチェ素子等で構成することができる。
【0042】
非汎用試薬を分注する際には、まず、第1の分注ヘッド42を冷却貯留部46に移動させてノズルチップ421内に非汎用試薬を吸引し、次いで、第1の分注ヘッド42を処理具1へ移動して、吸引した非汎用試薬を処理具1内へ吐出する。
【0043】
装置本体41上には、第1の分注ヘッド42からノズルチップ421を取り外すためのチップリムーバ47が設置されている。
【0044】
チップリムーバ47には、円形状の孔472と、半円状の切欠き471とが形成されている。この切欠き471は、孔472の外周の一部に、孔472と一体的に形成されている。
【0045】
孔472の直径は、ノズルチップ421の上端の外径より若干大きくなっている。この孔472には、ヘッド移動機構44(昇降機構441)の駆動により下方へ移動した第1の分注ヘッド42のノズルチップ421が挿入される。
【0046】
また、切欠き471の幅は、ノズルチップ421の上端の外径より小さく、かつノズルチップ421が装着されるチップ装着部の外径より大きい幅になっている。
【0047】
第1の分注ヘッド42からのノズルチップ421の取り外しは、以下のようにして行われる(以下、この工程を「ノズルチップ取外し工程」という)。
【0048】
まず、ノズルチップ421が装着された第1の分注ヘッド42をチップリムーバ47(孔472)上へ移動する。
【0049】
次に、第1の分注ヘッド42を下方へ移動して(下降させて)、ノズルチップ421をその上端まで孔472に挿入する。
【0050】
次に、第1の分注ヘッド42を反応処理装置40の奥行き方向に移動する。これにより、第1の分注ヘッド42のチップ装着部が切欠き471に入り込む。
【0051】
次に、第1の分注ヘッド42を上昇させる。これにより、切欠き471の縁部がノズルチップ421の上端を下方へ押圧して、ノズルチップ421が外れる。
【0052】
チップリムーバ47の下側であって装置本体41の内部には、取り外されたノズルチップ421を集積(回収)する回収容器49が設置されている。
【0053】
この回収容器49は、装置本体41の正面に形成された開口411から取り出し可能になっている。チップリムーバ47で外された使用済みのノズルチップ421は、回収容器49内に落下し、集積される。
【0054】
また、装置本体41上には、新しいノズルチップ421を立てた状態で行列状に多数並べて保持するチップラック48が設置されている。
【0055】
ノズルチップ取外し工程により第1の分注ヘッド42からノズルチップ421を外した後に、新しいノズルチップ421を装着する際には、第1の分注ヘッド42をチップラック48の上方へ移動した後、第1の分注ヘッド42を下降させる。これにより、新しいノズルチップ421の上端開口部内に第1の分注ヘッド42のチップ装着部が嵌入して、このノズルチップ421を装着することができる(以下、この工程を「ノズルチップ装着工程」という)。
【0056】
非汎用試薬を処理具1へ分注する際には、第1の分注ヘッド42により、非汎用試薬の種類ごとにノズルチップ421を新しいものに交換して分注を行う。これにより、種類の異なる非汎用試薬間でのコンタミネーションを確実に防止することができ、生体物質を正確に処理することができる。
【0057】
第2の分注ヘッド43は、第1の分注ヘッド42と異なり、使い捨てでない、すなわち、複数回使用される固定式ノズル431を有している。
【0058】
この第2の分注ヘッド43は、例えば、生理食塩水、エタノール水溶液、比重調整液等の、一般に広く用いられる(汎用性を有する)試薬、他の試薬とのコンタミネーションが行われてもよい試薬、常温(室温)で分解に難い試薬(安定な試薬)(本発明においては「汎用試薬」と言う)を処理具1へ分注(吐出)する。この汎用試薬は、生体物質を非汎用試薬(処理液)で処理する前後において、例えば、非汎用試薬による生体物質の処理効率を向上させる目的、検出対象物の検出効率を向上させる目的、処理具1内において比重の異なる液体同士を円滑に置換させる目的、生体物質を洗浄する目的等で用いられるものである。
【0059】
装置本体41の後方寄りの位置の上方には、棚50が設置されている。
この棚50には、汎用試薬を貯留する複数のタンク(貯留部)51が載置されている。図示の構成では、タンク51は、3個の大容量タンク511と、4個の中容量タンクと、10個の小容量タンク513との3種類で計17個が設置されている。
複数種類の汎用試薬は、使用量の多少に応じ、各タンク51に種類ごとに貯留される。
【0060】
第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43は、それぞれ、ヘッド移動機構44の作動により、装置本体41に対し相対的に移動する。以下、ヘッド移動機構44の各部の構成について順次説明する。
【0061】
第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43は、それぞれ、昇降機構441により、上下方向に移動する。
【0062】
昇降機構441は、装置本体41の横方向に沿って設置された可動橋442に沿って、第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43ごと移動する。
【0063】
可動橋442上には、駆動ベルト443と、この駆動ベルト443を駆動するモータ444とが設置されており、これらの駆動により、昇降機構441が可動橋442に沿って移動する。
【0064】
可動橋442の両端部は、装置本体41の前後方向に沿って設置されたレール445、446に支持されており、このレール445、446に沿って、昇降機構441ごと、装置本体41の前後方向に移動する。
【0065】
レール445、446は、装置本体41の左右両端部付近に立設された壁447、448上に設置されており、装置本体41の上面より高い位置にあるので、可動橋442は、装置本体41上に設置された前記保持部45、冷却貯留部46、チップリムーバ47およびチップラック48等の上を通過可能になっている。
【0066】
上記構成のヘッド移動機構44により、第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43は、一体となって、上下方向、横方向、前後方向に移動する。
【0067】
なお、このような構成と異なり、第1の分注ヘッド42と第2の分注ヘッド43とが別々に移動可能になっていてもよい。
【0068】
図2に示すように、第1の分注ヘッド42のチップ装着部には、チューブ配管52を介して、例えばシリンジポンプで構成される分注ポンプ53が接続されている。
【0069】
分注ポンプ53の作動により発生した吸引・吐出力がチューブ配管52を介して第1の分注ヘッド42に伝達することにより、装着されたノズルチップ421で液体を吸引・吐出することができる。
【0070】
各タンク51から出た流路55は、合流して一つの流路56となり、この一つの流路56は、第2分注ヘッド43の固定式ノズル431に接続されている。
【0071】
合流する前の各流路55の途中には、それぞれ電磁弁(流路切替手段)57が設置されている。また、合流した一つの流路56の途中には、各タンク51の汎用試薬を固定式ノズル431へ送液する送液ポンプ54が設置されている。
【0072】
このような構成において、一つのタンク51への電磁弁57のみを開き、他のタンク51への電磁弁57を閉じておくことにより、その一つのタンク51内の汎用試薬を固定式ノズル431へ送液して分注することができる。そして、開く電磁弁57を切り替えることにより、所望のタンク51から汎用試薬を固定式ノズル431へ送液して分注することができる。
【0073】
このように、複数種類の汎用試薬については、第2の分注ヘッド43を用いて、汎用試薬の種類にかかわらず共通に固定式ノズル431から処理具1へ分注する。これにより、第2の分注ヘッド43については、消耗品であるノズルチップの費用がかからないので、コスト低減が図れる。また、第2の分注ヘッド43については、ノズルチップ交換の時間を要しないので、処理効率の向上が図れる。
【0074】
第2の分注ヘッド43には、固定式ノズル431の手前の流路56の周囲に、供給される汎用試薬を加温するヒーター58が設置されている。このヒーター58によって、処理具1に分注する汎用試薬を加温することにより、処理具1での反応を促進することができる。
【0075】
処理具1を保持する保持部45の内部には、処理具1から排出された液体を受ける液受け部59が設置されている。この液受け部59に溜まった排液は、流路60を通り、排液タンク61に回収・貯留される。
【0076】
排液タンク61は、密閉されており、この排液タンク61には、排液タンク61の内部を減圧する吸引ポンプ62が接続されている。液受け部59と流路60との間に設置された電磁弁63を開くと、液受け部59に溜まった排液は、吸引ポンプ62の吸引力により、排液タンク61に移送される。
【0077】
また、保持部45の下方の装置本体41の内部には、保持部45を振盪する(振動させる)振盪装置(図示せず)が設けられている。この振盪装置の作動により、後述する浮遊攪拌子8を処理具1内に収納された液体内で移動させ、前記液体を攪拌することができる。
【0078】
本実施形態では、液受け部59、流路60、排液タンク61、吸引ポンプ62および電磁弁63により、排液回収手段が構成される。
【0079】
排液タンク61への流路60には、流路65を介してノズル洗浄槽64が接続されている。
【0080】
例えば、第2の分注ヘッド43の固定式ノズル431に供給する汎用試薬の種類を変更した場合には、処理具1へ分注する前に、固定式ノズル431をノズル洗浄槽64へ移動し、送液ポンプ54を作動させ、ある程度の量の汎用試薬をノズル洗浄槽64内へ吐出する。これにより、固定式ノズル431および流路56内に残っていた変更前の種類の汎用試薬を洗い流し、変更後の種類の汎用試薬で置換することができる。よって、その後に処理具1に分注したとき、すぐに、変更後の種類の汎用試薬を固定式ノズル431から吐出することができる。
【0081】
流路65に設置された電磁弁66を開くと、ノズル洗浄槽64に溜まった排液は、吸引ポンプ62の吸引力により、排液タンク61に移送される。
【0082】
反応処理装置40は、分注ポンプ53、送液ポンプ54、ヘッド移動機構44(第1の分注ヘッド42、第2の分注ヘッド43)、冷却貯留部46のペルチェ素子、ヒーター58、電磁弁57、63および66等の反応処理装置40の各部の作動を制御する制御手段70を有しており、この制御手段70は、後述するような処理プロトコル(各非汎用試薬と各汎用試薬とにおける所定の順序による処理具1への供給(処理))を制御プログラムに基づいて実行する。
【0083】
また、反応処理装置40には、例えばキーボード等のボタン類を有する入力部71が設けられている。これにより、例えば、前記処理プロトコル、処理速度等を適宜設定することができる。
【0084】
次に、この反応処理装置40に用いられる処理具1について説明する。
図3は、本発明で用いられる処理具の構成を示す部分断面斜視図、図4〜図11は、それぞれ、本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図(縦断面図)、図12は、第1のフィルタと第2のフィルタ間との間に画成される空間内に収納された液体の比重の変化を示すグラフである。なお、以下の説明では、図3(図4〜図11についても同様)中の上側を「基端」、下側を「先端」と言う。また、図4〜図11では、それぞれ、図が煩雑になるのを避けるため、一部省略して示した。
【0085】
図3に示す処理具1は、カラム本体2と、カラム本体2内に設けられた第1のフィルタ5および第2のフィルタ6とを有している。
【0086】
この処理具1は、カラム本体2内の第1のフィルタ5と第2のフィルタ6とで画成される空間20内に生体物質を含む液体(試料液)を収納し、この状態で、空間20内に第2のフィルタ6を介して、前述したような処理液を供給することにより、生体物質に処理液を接触させて処理を行うものである。
【0087】
また、後述するように、処理具1は、いずれもカラム本体2に対して着脱自在に装着されるエクステンションカップ3、キャップ4および位置決め手段100を有している。
【0088】
そして、本実施形態では、複数のカラム本体2、複数のエクステンションカップ3および複数の位置決め手段100の本体部110がそれぞれ一体的に形成(並べて連結)されている。
【0089】
以下、処理具1の各部の構成について、順次説明する。
カラム本体(筒体)2は、その全体形状がほぼ円筒状をなしている。
【0090】
このカラム本体2は、本体部21と、その先端部に本体部21に対して縮径した排出口22とを有し、これらが一体的に形成されている。
【0091】
カラム本体2(本体部21)内には、基端開口210から処理液や比重調整液等の液体が供給される。そして、処理液により生体物質に対して処理が施される。また、生体物質を処理した後の液体は、排出口22から本体部21外に排出される。
【0092】
カラム本体2の横断面形状は、好ましくは円形であるが、その他、例えば、楕円形、四角形、六角形等のいかなる形状であってもよい。
【0093】
カラム本体2の構成材料としては、例えば、各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、各種金属材料等が挙げられるが、実質的に透明または半透明な材料を用いるのが好ましい。これにより、本体部21内に収納された生体物質等の観察を容易に行うことができる。
【0094】
また、生体物質の処理工程に加熱(加温)工程が含まれる場合には、カラム本体2の構成材料としては、耐熱性に優れる材料を用いるのが好ましい。耐熱性を有する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0095】
カラム本体2(本体部21)は、その内部に設けられた第1のフィルタ5の基端面からカラム本体2の基端までの長さが、5〜30mm程度であるのが好ましく、10〜20mm程度であるのがより好ましい。これにより、例えば光学顕微鏡等を用いて、処理後の生体物質の観察をカラム本体2の基端側から行う場合には、生体物質と対物レンズとの距離を比較的近くすることができ、生体物質の状態をより正確に確認(観察)することができる。
【0096】
本体部21の外径(カラム本体2の最大外径)は、5〜20mm程度であるのが好ましく、8〜15mm程度であるのがより好ましい。
【0097】
本体部21の内径(カラム本体2の最大内径)は、3〜18mm程度であるのが好ましく、6〜13mm程度であるのがより好ましい。
【0098】
また、排出口22の長さは、3〜15mm程度であるのが好ましく、6〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0099】
排出口22の外径は、2.5〜7mm程度であるのが好ましく、3〜5mm程度であるのがより好ましい。
【0100】
排出口22の内径は、0.5〜5mm程度であるのが好ましく、1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0101】
このカラム本体2内には、排出口22近傍に第1のフィルタ5が固定(固着)され、第1のフィルタ5より基端側には、第2のフィルタ6がカラム本体2の軸方向(図3中、上下方向)に移動可能に設けられている。
【0102】
第1のフィルタ5および第2のフィルタ6は、いずれも、多数の比較的細径の連続(貫通)細孔を有する部材で構成されている。
【0103】
これらの第1のフィルタ5および第2のフィルタ6により、カラム本体2(本体部21)内には、空間20が画成される。この空間20内には、生体物質10が収納され、空間20内に供給された処理液により生体物質に対して処理が施される。
【0104】
空間20の容積は、第2のフィルタ6のカラム本体2の軸方向の位置を設定することにより調整することができる。
【0105】
第1のフィルタ5は、空間20内に収納される生体物質や、後述する浮遊攪拌子8が通過できない程度の孔径の細孔を有するものが好適に用いられる。
【0106】
第1のフィルタ5の細孔の平均孔径は、生体物質や浮遊攪拌子8のサイズ等によって適宜設定されるものであり、特に限定されないが、10〜150μm程度であるのが好ましく、20〜100μm程度であるのがより好ましい。
【0107】
また、第1のフィルタ5の平均厚さは、0.5〜5mm程度であるのが好ましく、1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0108】
一方、第2のフィルタ6は、空間20内に液体(試料液、処理液や比重調整液)を保持し得るよう構成されている。
【0109】
具体的には、第2のフィルタ6は、その基端側から液体を供給し、空間20内が液体で満たされ、かつ、基端側に実質的に液体が存在しない状態となると、細孔内で生じる毛細管現象により液体の通過が停止し、この状態から、再度、基端側に液体を供給すると、供給した液体が細孔を通過して空間20内(先端側)に流入するよう構成されている。
【0110】
このような第2のフィルタ6の特性は、例えば、第2のフィルタ6の厚さ、細孔の数、細孔の形状、細孔の孔径等の条件を組み合わせることにより、所望のものに調整することができる。
【0111】
第2のフィルタ6の細孔の平均孔径は、特に限定されないが、10〜150μm程度であるのが好ましく、20〜100μm程度であるのがより好ましい。第2のフィルタ6の細孔の平均孔径が小さ過ぎると、液体の粘度等によっては、液体の通過速度が遅くなり、生体物質10の処理効率が低下するおそれがあり、一方、平均孔径が大き過ぎると、毛細管現象が十分に生じず、空間20内に液体を保持するのが困難となるおそれがある。
【0112】
また、第2のフィルタ6の平均厚さは、0.5〜5mm程度であるのが好ましく、1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0113】
このような第1のフィルタ5および第2のフィルタ6が有する細孔は、直線状のもの他、例えば、傾斜角度が変化する不定形のもの、互いに連通する連続空孔等であってもよい。
【0114】
すなわち、第1のフィルタ5および第2のフィルタ6は、それぞれ、例えば、厚さ方向に貫通する貫通細孔を複数有する細孔板や、織布、不織布のような繊維性多孔質体、その他の非繊維性多孔質体等で構成することができる。これらの中でも、特に、細孔板で構成するのが好ましい。これにより、第1のフィルタ5および第2のフィルタ6の液体の通過抵抗をより低減することができる。
【0115】
第1のフィルタ5および第2のフィルタ6の構成材料としては、それぞれ、前記カラム本体2で挙げた材料と同様のものを用いることができるが、フィルタに十分な強度を確保することができる材料であり、かつ、液体(処理液や比重調整液)またはこれらの液体に含まれる物質(例えば、標識試薬等)との反応性に乏しい材料(実質的に反応が生じない材料)が好ましい。
【0116】
ここで、本明細書中において「反応」とは、電気的な吸着、化学的な結合等を含む概念である。
【0117】
このような材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアミド、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン系樹脂のような各種樹脂材料、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金のような各種金属材料等が挙げられる。
【0118】
また、第1のフィルタ5および第2のフィルタ6は、基材の表面に前記材料で構成される表面層が形成(被覆)されたものであってもよい。
【0119】
このように、第1のフィルタ5および第2のフィルタ6の少なくとも表面付近を、液体(処理液や比重調整液)またはこれらの液体に含まれる物質との反応性に乏しい材料で構成することにより、生体物質の処理精度が低下するのをより確実に防止することができる。
【0120】
さらに、第1のフィルタ5および第2のフィルタ6は、親水性を有するものが好ましい。これにより、フィルタ5、6を液体がより円滑に通過するようになる。
【0121】
親水化の方法としては、例えば、プラズマ処理、紫外線照射、界面活性剤による処理等が挙げられる。
【0122】
第2のフィルタ6の中央部には、第2のフィルタ6をカラム本体2の軸方向に移動操作する棒状の操作部材7が固定(固着)されている。
【0123】
この操作部材7は、第2のフィルタ6と一体的に成形されたものであってもよく、図3に示すように、第2のフィルタ6とは別部材を、融着や接着剤による接着等により第2のフィルタ6に固定したものであってもよい。
【0124】
この操作部材7をカラム本体2の軸方向に移動操作することにより、第2のフィルタ6を第1のフィルタ5に対して接近または離間させることができる。これにより、空間20の容積を調整することができる。
【0125】
また、操作部材7を第2のフィルタ6の中央部に固定することにより、第2のフィルタ6をカラム本体2の軸方向に移動操作する際に、第2のフィルタ6が第1のフィルタ5に対して傾斜するのを好適に防止することができる。
【0126】
また、操作部材7は、カラム本体2のほぼ中央に位置するよう構成されている。これにより、後述するエクステンション(延長筒)3をカラム本体2に装着する際に、操作部材7の基端部が邪魔になるのを防止することができる。
【0127】
操作部材7の横断面積は、0.5〜10mm程度であるのが好ましく、1〜5mm程度であるのがより好ましい。
【0128】
また、操作部材7の長さは、5〜20mm程度であるのが好ましく、10〜15mm程度であるのがより好ましい。
【0129】
空間20内には、浮遊攪拌子(攪拌子)8が収納されている。
この浮遊攪拌子8は、空間20内に収納された液体に浮遊することにより、第2のフィルタ6近傍において、前記液体を攪拌するよう構成されている。
【0130】
これにより、空間20内に収納された液体と、第2のフィルタ6の基端側から第2のフィルタ6を通過して空間20内に流入してきた液体とを、第2のフィルタ6の近傍において攪拌・混合することができ、空間20内に存在する液体の各部における濃度(比重)をより均一にすることができる。
【0131】
浮遊攪拌子8の比重は、各種液体(特に、水)に浮遊するものであればよく、特に限定されないが、0.85〜0.99程度であるのが好ましく、0.9〜0.99程度であるのがより好ましく、0.9〜0.96程度であるのがさらに好ましい。浮遊攪拌子8の比重が小さ過ぎると、浮遊攪拌子8の浮力が大きくなり、第2のフィルタ6との接触摩擦が増大してしまい、攪拌が十分に行えないおそれがある。一方、浮遊攪拌子8の比重が大き過ぎると、浮遊攪拌子8が空間20内に収納された液体に沈み易くなり、第2のフィルタ6近傍における液体の攪拌・混合が不十分となるおそれがある。また、生体物質は一般に第1のフィルタ5に接触した状態で存在することが多いが、浮遊攪拌子8が空間20内に収納された液体(試料液、処理液や比重調整液)に沈むことにより、生体物質に損傷(破損)を与え易くなるおそれがある。
【0132】
このような浮遊攪拌子8は、その少なくとも表面付近が液体(処理液や比重調整液)またはこれらの液体に含まれる物質(例えば、標識試薬等)との反応性に乏しい材料(実質的に反応が生じない材料)で構成されているのが好ましい。これにより、生体物質10の処理精度が低下するのをより確実に防止することができる。
【0133】
かかる材料としては、前記第1のフィルタ5および第2のフィルタ6で挙げた材料と同様のものを用いることができるが、比較的比重の小さいものを用いるのが好ましい。
【0134】
また、浮遊攪拌子8は、疎水性を有するものが好ましい。これにより、浮遊攪拌子8が液体中でより円滑に移動するようになり、液体をより均一に混合することができる。
【0135】
疎水化の方法としては、例えば、界面活性剤による処理等が挙げられる。
浮遊攪拌子8の形態は、中実体、中空体、多孔質体のいずれであってもよい。
【0136】
浮遊攪拌子8を中実体で構成する場合には、浮遊攪拌子8の構成材料は、材料自体の比重を考慮して選択すればよく、また、中空体や多孔質体で構成する場合には、中空部や空孔率等を設定することにより、浮遊攪拌子8の比重を調整することができるため、比較的比重の大きい材料を用いることもできる。
【0137】
また、浮遊攪拌子8の形状は、特に限定されず、粒状、平板状、棒状等のいかなるものであってもよいが、粒状(特に、球状)であるのが好ましい。これにより、第2のフィルタ6との接触摩擦を弱めることができ、自由な浮遊による攪拌効果が得られる。また、浮遊攪拌子8が生体物質に衝突しても、その衝撃を小さくすることができるので、生体物質の破損を好適に防止することができる。
【0138】
浮遊攪拌子8を粒状とする場合、その平均粒径は、0.5〜5mm程度であるのが好ましく、1〜3mm程度であるのがより好ましい。これにより、液体を攪拌する能力を好適に維持しつつ、生体物質への衝撃を小さくすることができる。したがって、例えば、生体物質の破損を好適に防止することができる。
【0139】
このような浮遊攪拌子8は、液体中に気泡を併存させることにより、より円滑かつランダムに移動させることができるようになる。これにより、液体の攪拌・混合をより確実に行うことができる。
【0140】
図3に示すように、カラム本体2の先端部(排出口22)には、ほぼ全体が柔軟性を有するキャップ4が着脱自在に装着される。
【0141】
このキャップ4は、排出口22に装着した状態で、その先端開口221を覆うことができ、排出口22からの取り外し時に、空間20内に収納された液体に、内部の空気(気体)を供給(注入)して、前記液体中に前述したような気泡を生じさせる機能を有するものである。
【0142】
具体的には、キャップ4をカラム本体2の先端部に、排出口22の先端開口221を覆うように装着する。この状態で、空間20内に液体を収納し、キャップ4を指等で把持(挟持)して変形させることにより内部容積を減少させ、キャップ4内の空気を排出口22を介して空間20内に送り出す。これにより、空間20内に収納された液体に空気が供給され、前記液体中に気泡が生じる。
【0143】
このようなキャップ4の構成材料としては、例えば、シリコーンゴム、各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0144】
なお、キャップ4は、その一部に柔軟性を有する部位を有する構成のものであってもよい。この場合、かかる柔軟性を有する部位を変形させることにより、前記と同様にして、空間20内に空気を供給することができる。
【0145】
また、キャップ4の内部容積は、カラム本体2内の第1のフィルタ5より先端側の容積より小さく設定されているのが好ましい。なお、かかる構成により得られる効果は、後に説明する。
【0146】
キャップ4の内部容積の具体的な値は、10〜100mm程度であるのが好ましく、20〜50mm程度であるのがより好ましい。
【0147】
また、図3に示すように、カラム本体2の基端部には、エクステンションカップ(延長筒)3が着脱自在に装着される。
【0148】
エクステンションカップ3は、その全体形状がほぼ円筒状をなしている。
このエクステンションカップ3は、本体部31と、その先端部に本体部31に対して、内径および外径が縮径した装着部(縮径部)32とを有し、これらが一体的に形成されている。
【0149】
装着部32の外径は、カラム本体2の本体部21の内径とほぼ等しいか若干大きく設定されている。装着部32が本体部21の基端部内側に挿入・嵌合することにより、エクステンションカップ3がカラム本体2に装着(固定)される。
【0150】
また、本実施形態のエクステンションカップ3は、カラム本体2に装着(連結)した状態で、その基端から操作部材7の基端が突出しない長さを有している。
【0151】
したがって、エクステンションカップ3をカラム本体2に装着することにより、操作部材7の基端部は、エクステンションカップ3内に収納されることとなる。このため、例えば、第1の分注ヘッド42および第2の分注ヘッド43を用いて、カラム本体2内に液体(処理液や比重調整液)を供給する際に、それらの先端またはそれに装着されるチップ(液体を供給する部材)の先端が、操作部材7に当たる(接触)するのが防止され、カラム本体2内への液体(処理液や比重調整液)の供給をより正確に行うことができる。
【0152】
また、エクステンションカップ3の内面に沿って、チップの先端をカラム本体2内まで案内するようにして使用することもできる。
【0153】
このように、エクステンションカップ3は、カラム本体2内へ液体(処理液や比重調整液)を供給する際に、液体またはこれを供給する部材を、カラム本体2内に案内する機能を有するものである。
【0154】
また、エクステンションカップ3をカラム本体2に装着することにより、処理具1全体の容量を増大させることができるため、一度に比較的大量の液体(処理液や比重調整液)をカラム本体2内に供給することができるようになる。その結果、生体物質10の処理効率を向上させることができる。
【0155】
このようなエクステンションカップ3の長さ(全長)Lは、カラム本体2の長さ(全長)Lの1/10〜3/4程度であるのが好ましく、3/10〜1/2程度であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮されるようになる。
【0156】
エクステンションカップ3の本体部31は、その横断面形状が、カラム本体2の本体部21と相似形であるのが好ましく、特に、その外径(エクステンションカップ3の最大外径)がカラム本体2の本体部21の外径(カラム本体の最大外径)とほぼ等しいのが好ましい。未使用時の処理具1は、エクステンションカップ3をカラム本体2に装着した状態で、複数重ねて収納容器等に収納されるが、この際、デッドスペースが小さくなり、複数の処理具1を効率よく収納することができる。
【0157】
また、エクステンションカップ3をカラム本体2に装着した状態で、これらの間には、液密性(特に、気密性)が確保されているのが好ましい。これにより、例えば、エクステンションカップ3とカラム本体2との接続部(連結部)から、液体が漏れ出すのをより確実に防止することができる。
【0158】
エクステンションカップ3の構成材料としては、前記カラム本体2で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0159】
なお、エクステンションカップ3の横断面形状も、好ましくは円形であるが、前記カラム本体2と同様に、その他、例えば、楕円形、四角形、六角形等のいかなる形状であってもよい。
【0160】
また、エクステンションカップ3に基端面には、その基端開口310を塞ぐように、シート材(シート状の封止部材)9が取り外し可能に貼着され(設けられ)ている。
【0161】
シート材(封止部材)9の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン系樹脂、シリコーンゴムのような各種樹脂材料、各種金属材料等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0162】
シート材9の平均厚さは、0.05〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜5mm程度であるのがより好ましい。
【0163】
このシート材9は、カラム本体2内に処理液や比重調整液を供給する操作を開始する直前に取り外されるものである。これにより、処理液や比重調整液を供給するまでの間、カラム本体2(処理具1)内が密閉され、その内部にゴミ等の異物が入るのを防止することができる。その結果、生体物質10のより正確な処理を行うことができる。
【0164】
また、シート材9をエクステンションカップ3に貼着した状態で、これらの間には、気密性が確保されているのが好ましい。
【0165】
なお、エクステンションカップ3の基端部に装着される封止部材は、シート状のものに限定されず、基端開口310を封止することができればよく、例えば、エクステンションカップ3の基端部外側に嵌合や螺合等により固定されるキャップ状のものや、基端部内側に嵌合や螺合等により固定される栓状のもの等であってもよい。
【0166】
また、本実施形態のように、カラム本体2およびエクステンションカップ3を多連構成とすることにより、一度に、複数の生体物質を処理することができ、便利である。
【0167】
位置決め手段100は、前述したようなカラム本体2の基端部に装着して使用され、第2のフィルタ6のカラム本体2に対する位置決めを行うものである。
【0168】
図1に示すように、位置決め手段100は、カラム本体2(本体部21)の基端部に着脱自在に装着される本体部110と、この本体部110を厚さ方向に貫通して設けられた孔(凹部)120とを有している。
【0169】
本体部110は、その形状がほぼ柱状(ブロック状)をなしている。この本体部110の内径は、カラム本体2の本体部21の外径とほぼ等しいか、または、若干小さく設定されている。これにより、本体部110の先端側がカラム本体2の基端部内側に挿入・嵌合することにより、位置決め手段100がカラム本体2に装着(固定)される。
【0170】
また、本体部110の基端部には、リング状の段差部112が形成されている。
位置決め手段100をカラム本体2に装着した状態(以下、「位置決め手段100の装着状態」と言う。)で、段差部112にカラム本体2の基端が当接することにより、位置決め手段100(本体部110)のカラム本体2の軸方向における位置決めがなされる。
【0171】
孔120には、位置決め手段100の装着状態で操作部材7が挿入される。この孔120は、本体部110の中央部に形成されており、位置決め手段100の装着状態で孔120の中心軸とカラム本体2の中心軸とがほぼ一致するよう構成されている。
【0172】
これにより、位置決め手段100の装着状態では、孔120に挿入される操作部材7の中心軸とカラム本体2の中心軸とをほぼ一致することになる。
【0173】
そして、操作部材7の中心軸とカラム本体2の中心軸とがほぼ一致することにより、第2のフィルタ6の水平方向の位置決めがなされ、第1のフィルタ5と第2のフィルタ6とがほぼ平行に位置するようになる。
【0174】
また、本体部110の先端部には、孔120に連通し、操作部材7を孔120に案内するガイド孔121が形成されている。
【0175】
このガイド孔121は、本体部110の先端に開口し、かつ、孔120に向かって横断面積が漸減しており、ガイド孔121の内面は、すり鉢状をなしている。このようなガイド孔121を設けることにより、位置決め手段100をカラム本体2に装着する際に、操作部材7の中心軸がカラム本体2の中心軸に対して若干ズレている(傾いている)場合でも、操作部材7を孔120に案内して、確実に挿入することができる。
【0176】
このガイド孔121の内面と本体部110の先端面とのなす角度θは、特に限定されないが、30〜60°程度であるのが好ましく、35〜45°程度であるのがより好ましい。これにより、操作部材7をより円滑かつ確実に孔120に挿入することができる。
【0177】
かかる観点からは、操作部材7も、その基端部の径(横断面積)が基端方向に向かって漸減しているのが好ましい。これにより、操作部材7をさらに円滑かつ確実に孔120内に挿入することができる。
【0178】
また、本実施形態では、ガイド孔121の横断面積が先端部でほぼ一定となっており、テーパ状部分との境界部に段差部112が形成されている。位置決め手段100の装着状態では、この段差部112にカラム本体2の基端が当接することにより、位置決め手段100のカラム本体2の軸方向の位置決めがなされる。
【0179】
孔120および操作部材7の横断面形状は、互いに異なっていてもよいが、互いに相似形であるのが好ましい。これらの横断面形状は、それぞれ、好ましくは円形であるが、その他、例えば、楕円形、四角形、六角形等のいかなる形状であってもよい。
【0180】
また、孔120の基端側には、ネジ(挿入部材)130が螺合により挿入され、固定されている。この状態で、位置決め手段100(本体部110)をカラム本体2に装着すると、孔120に挿入された操作部材7の基端がネジ130の先端に当接し、操作部材7は、ネジ130により先端方向に向かって押圧される。これにより、操作部材7は、先端方向に向かって移動(下降)する。
【0181】
また、操作部材7の先端方向への移動に伴って、第2のフィルタ6も先端方向に移動(下降)する。したがって、ネジ130の孔120への挿入深さを調整することにより、操作部材7の先端方向への移動距離を調整することができる。これにより、第2のフィルタ6のカラム本体2の軸方向(鉛直方向)における位置を調整すること、すなわち、第2のフィルタ6のカラム本体2の軸方向における位置決めを行うことができる。
【0182】
なお、挿入部材は、ネジ130に限定されるものではなく、孔120に挿入・固定可能なものであればよく、例えば、ピン等で構成することもできる。なお、挿入部材をネジで構成することにより、位置決め手段100をカラム本体2に装着する際に、操作部材7の基端が操作部材の先端に比較的強い力で当接した場合でも、操作部材が不本意に移動してしまうことや、孔120から抜け落ちる(離脱する)こと等を防止することができる。
【0183】
また、挿入部材の孔120へ挿入される部分(本実施形態では、ネジ130のネジ部)の周面には、軸方向に沿って挿入深さを示す目盛りを設けるようにしてもよい。これにより、挿入部材の孔120への挿入深さを確認することができ便利である。
【0184】
また、本発明では、挿入部材として、孔120に挿入される部分の長さが異なる複数のものを用意しておき、これらの中から適宜選択して使用することにより、挿入部材の孔120への挿入深さ(挿入量)を調整する構成とすることもできる。
【0185】
このような位置決め手段100(本体部110およびネジ130)の構成材料としては、各種樹脂材料、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、各種金属材料等が挙げられる。
【0186】
また、本実施形態にように、位置決め手段100を多連構成とすることにより、複数の第2のフィルタ6のカラム本体2に対する位置決めを一括して行うことができ、便利である。
【0187】
そして、ネジ130を孔120へ挿入するか否か、あるいは、挿入深さを設定することにより、各第2のフィルタ6毎に、それぞれ、鉛直方向(カラム本体2の軸方向)の位置を所望のものに調整することができる。
【0188】
なお、図示の構成では、カラム本体2、エクステンションカップ3および位置決め手段100の全てが多連構成である場合について示したが、これらのうちの1種または2種が多連構成とされたものであってもよい。
【0189】
また、本実施形態では、エクステンションカップ3を1つ(1段)のみ有する構成について示したが、本発明では、複数(多段)のエクステンションカップ3を有し、これらを組み合わせて(接続して)用いる構成のものとすることもできる。
【0190】
この場合、1つのエクステンションカップ3の長さが、カラム本体2の長さに対して前述したような関係を満足すればよい。
【0191】
また、この場合、処理具1は、エクステンションカップ3を多段でカラム本体2に装着した状態で、その基端から操作部材7の基端が突出しないようにして使用される。
【0192】
また、この場合、エクステンションカップ3には、長さの異なるものを用意しておくのが好ましい。これにより、エクステンションカップ3の個数および/または種類を適宜選択して使用することにより、目的や用途等に応じて、処理具1の全長を所望のものに調整することができる。
【0193】
次に、このような反応処理装置40の使用方法(作用)について説明する。
[1] まず、図4(a)に示すように、エクステンションカップ3、および、操作部材7ごと第2のフィルタ6を、カラム本体2から取り外す。
【0194】
そして、カラム本体2を、キャップ4が下方(先端側)となり、第1のフィルタ5がほぼ水平となるように設置する。
【0195】
次に、図4(b)に示すように、生体物質10を含む液体(試料液)11を、カラム本体2の基端開口210からカラム本体2内に供給する。
【0196】
この試料液11としては、生体物質10を生理食塩水や緩衝液等に懸濁または溶解させたものや、血液、リンパ液、唾液、尿、髄液、腹水、胸水、羊水等が挙げられる。
【0197】
ここで、生体物質10としては、例えば、各種細胞、組織切片、ウィルス、細菌のような微生物、遺伝子(DNA、RNA)、タンパク質、糖タンパク質、ホルモン類、生化学物質等が挙げられる。
【0198】
また、生体物質10として、生体組織切片等のブロック状のものを取り扱う場合には、例えば、第1のフィルタ5上に生体物質10を載置した後、生理食塩水や緩衝液等をカラム本体2内に供給する。
【0199】
[2] 次に、第2のフィルタ6を、カラム本体2の軸方向の所定位置に装着する。
この第2のフィルタ6の装着操作は、前述したような位置決め手段100を用いて、以下のようにして行われる。
【0200】
まず、図1および図4(c)に示すように、ネジ130を、所定の挿入深さとなるように、孔130の基端側に螺合により挿入する。
【0201】
次に、図5(d)に示すように、操作部材7の基端部を指等で把持して、第2のフィルタ6を基端開口210から、カラム本体2内に挿入する。
【0202】
次に、図5(d)、図5(e)に示すように、操作部材7が孔120内に挿入されるように、位置決め手段100をほぼ水平にしてカラム本体2に接近させる(下降させる)。これにより、操作部材7の基端部がガイド孔121の内面に摺接しつつ孔120に案内され、孔120に挿入される。そして、操作部材7の基端がネジ130の先端に当接する。
【0203】
さらに、位置決め手段100をカラム本体2に接近させると、操作部材7は、ネジ130に押圧されることにより先端方向に向かって移動(下降)し、これに伴って、第2のフィルタ6も先端方向に向かって移動(下降)する。
【0204】
そして、図5(f)に示すように、カラム本体2の基端部がガイド孔121内に挿入され、段差部112に当接すると、それ以上、位置決め手段100の先端方向への移動が阻止される。これにより、操作部材7および第2のフィルタ6の先端方向への移動が停止し、第2のフィルタ6の鉛直方向(カラム本体2の軸方向)の位置決めがなされる。
【0205】
また、このとき、孔120の中心軸とカラム本体2の中心軸とがほぼ一致する。これにより、操作部材7の中心軸とカラム本体2の中心軸とがほぼ一致し、第2のフィルタ6の水平方向の位置決めがなされ、第1のフィルタ5と第2のフィルタ6とがほぼ平行に位置するようになる。
【0206】
このように、位置決め手段100を用いることにより、これをカラム本体2に装着するという一つの動作で、第2のフィルタ6の水平方向と鉛直方向との双方の位置決めを同時に行うことができる。これにより、処理具1による生体物質10の各種処理をより効率よく行うことが可能となる。
【0207】
次に、図6(g)に示すように、位置決め手段100をカラム本体2から外す(取り除く)。
【0208】
[3] 次に、図6(h)に示すように、カラム本体2の基端部にエクステンションカップ3を装着する。
【0209】
なお、この時点では、エクステンションカップ3の基端面には、基端開口310を塞ぐようにシート材9が貼着されている。
【0210】
[4] 次に、図6(i)に示すように、キャップ4を指等で把持して押し潰す(変形させる)。これにより、キャップ4内の空気が、第1のフィルタ5を通過して、空間20内に供給され、試料液11中には、キャップ4の押し潰し量とほぼ同量の空気の泡(気泡)111が生じる。
【0211】
また、このとき、この気泡111(キャップ4内から供給された空気)の容量分だけ、エクステンションカップ3内の空気が圧縮される。
【0212】
[5] 次に、図7(j)に示すように、キャップ4を押し潰した状態で、排出口22から取り外す。
【0213】
エクステンションカップ3内の圧縮された空気により、試料液11は、先端方向に向かって押圧(加圧)されており、キャップ4を取り外すことにより、第1のフィルタ5の通過を開始する。
【0214】
ここで、前述したように、本実施形態では、キャップ4の内部容量がカラム本体2内の第1のフィルタ5より先端側の容量よりも小さく設定されているので、試料液11が排出口22内から流出することが防止される。これにより、試料液11が外部に飛散することを防止することができ、手や周辺環境等を汚染することがない。
【0215】
したがって、例えば、生体物質10として、微生物等を取り扱う際には、処理操作をより安全に行うことができる。
【0216】
[6] 次に、この状態で、処理具1を反応処理装置40の保持部45に設置した後、図7(k)に示すように、エクステンションカップ3の基端に貼着されたシート材9を取り外す(除去する)。
【0217】
シート材9を取り外すと、空間20内に収納された試料液11が第1のフィルタ5を通過して、排出口22から排出されるとともに、第2のフィルタ6の基端側の試料液11が、第2のフィルタ6を通過して空間20内に流入する。
【0218】
そして、前述したように、第2のフィルタ6の基端側に、実質的に試料液11が存在しない状態となると、排出口22からの試料液11の流出が停止する。
【0219】
なお、排出口22から排出された試料液11は、液受け部59および流路60を介して、排液タンク61に回収・貯留される。
【0220】
[7] 次に、空間20内に収納された試料液11を処理液14と置換する。
そして、空間20内において、置換された処理液14により、生体物質10に対して処理を施す。
【0221】
処理液14には、試料液11の比重より比重が小さいもの、大きいもの、ほぼ等しいものが存在するが、処理液14と試料液11との比重の関係に応じて、適切な方法で置換を行うのが好ましい。
【0222】
[7A] 処理液14の比重が試料液11の比重より小さい場合
まず、ヘッド移動機構44の作動により、第1の分注ヘッド42をチップラック48の上方に移動させた後、下降させる。これにより、第1の分注ヘッド42のチップ装着部にノズルチップ421を装着する。
【0223】
次に、第1の分注ヘッド42を冷却貯留部46の上方に移動させた後、下降させる。そして、ノズルチップ421内に処理液(非汎用試薬)14を吸引する。
【0224】
次に、第1の分注ヘッド42を所定の処理具1の上方に移動させた後、下降させて、ノズルチップ421の先端部をエクステンションカップ3内に位置させる。そして、図8(a)に示すように、エクステンションカップ3内に処理液14を供給する。
【0225】
次に、チップリムーバ取外し工程を行う。すなわち、第1の分注ヘッド42をチップリムーバ47の上方に移動させた後、下降させる。そして、切欠き471にチップ装着部を挿入した状態で第1の分注ヘッド42を上昇させ、ノズルチップ421をチップ装着部から取り外す。
【0226】
以上のような操作を、処理するカラム本体2(処理具1)の数(所定本数)だけ繰り返し行う。
【0227】
カラム本体2内に処理液14を供給すると、試料液11は、第1のフィルタ5を通過して、排出口22からカラム本体2外に排出されるとともに、処理液14は、第2のフィルタ6を通過して空間20内に流入する。
【0228】
このとき、処理液14の比重が試料液11の比重より小さいことにより、図8(b)に示すように、空間20内において、処理液14は、試料液11とは混じり合うことなく、試料液11との境界部に明確な界面141を形成しながら、一様に下降する。これにより、図8(c)に示すように、空間20内を処理液14でほほ完全に置換することができる。
【0229】
なお、この場合、処理液14と試料液11との境界部に明確な界面141を形成することが、置換効率を向上させる点において重要であるため、浮遊攪拌子8による攪拌操作は省略される。
【0230】
[7B] 処理液14の比重が試料液11の比重より大きいまたはほぼ等しい場合
この場合、処理液14をカラム本体2内に供給するのに先立って、空間20内に収納される液体の比重が処理液14の比重より大きくなるように調整する。
【0231】
[7B−1] まず、保持部45の下方の装置本体41の内部に設けられた振盪装置により、処理具1(保持部45)の振盪(振動)を開始する。これにより、浮遊攪拌子8がカラム本体2に対して相対的に移動し、試料液11が攪拌される。
【0232】
処理具1を振盪させる方向は、上下方向、前後方向、左右方向、回転方向またはこれらの組合せでもよいが、水平方向(前後方向、左右方向、水平面内での回転またはこれらの組合せ)であるのが好ましい。これにより、第2のフィルタ6近傍で試料液11と空間20内に流入してくる液体(比重調整液15)とを効率よく攪拌・混合することができる。
【0233】
ここで、試料液11中に気泡111を形成しておくことにより、図9に示すように、浮遊攪拌子8が気泡111と衝突する。これにより、浮遊攪拌子8が第2のフィルタ6に接触し、それらの間の摩擦力により移動できなくなるのを防止することができる。
【0234】
また、浮遊攪拌子8と気泡111とが衝突を繰り返すことにより、浮遊攪拌子8をランダムに移動させることができ、試料液11と空間20内に流入してくる液体とをより効率よく攪拌・混合することができる。
【0235】
[7B−2] 次に、第2の分注ヘッド43を所定の処理具1の上方に移動させた後、下降させて、固定式ノズル431の先端部をエクステンションカップ3内に位置させる。
【0236】
次に、所定の電磁弁57を開放し、送液ポンプ54を作動する。これにより、汎用試薬タンク51から比重調整液(汎用試薬)15を流路55、56を介して第2の分注ヘッド43(固定式ノズル431)に移送する。そして、図10(a)に示すように、エクステンションカップ3内に試料液11よりも比重の大きい比重調整液15を供給する。
【0237】
この比重調整液15としては、生体物質10に影響を及ぼさないもの(生体物質10と実質的に反応しないもの)が好ましく、例えば、処理液14を調整するのに用いる溶媒や分散媒中に、比重調整用の物質を添加したもの等を使用することができる。
【0238】
比重調整液15の比重は、試料液11の比重に対して3倍以下であるのが好ましく、2倍以下であるのがより好ましい。比重調整液15の比重が小さ過ぎると、試料液11の比重が効果的に増大しにくくなるおそれがある。一方、比重調整液15の比重が大き過ぎると、比重調整液15は急速にカラム本体2の壁面に沿って先端方向へ移動(下降)するため、浮遊攪拌子8によって試料液11と混合される前に排出口22からカラム本体2外に排出され、試料液11の比重が効果的に増大しにくくなるおそれがある。
【0239】
比重調整液15を供給することにより、試料液11は、第1のフィルタ5を通過して、排出口22からカラム本体2外に排出されるとともに、比重調整液15は、第2のフィルタ6を通過して空間20内に流入する。
【0240】
ここで、図10(b)に示すように、空間20内に流入した比重調整液15は、試料液11より比重が大きいため、カラム本体2の壁面に沿って先端方向へ移動(下降)を開始するが、第2のフィルタ6近傍で浮遊攪拌子8が試料液11を攪拌していることにより、試料液11と比重調整液15とが攪拌・混合される。
【0241】
そして、試料液11と比重調整液15とが混合されることにより得られた混合液16は、これらのほぼ中間の比重となり、依然として試料液11よりも比重が大きいため、先端方向へ移動(下降)する。
【0242】
その後、図11(c)に示すように、空間20内を混合液16でほぼ完全に置換することができる。
【0243】
なお、混合液16がカラム本体2の壁面に沿って先端方向へ移動(下降)する場合がある。このとき、比重が小さい試料液11は、カラム本体2の中央部で基端方向へ移動(上昇)し、空間20内に流入してくる比重調整液15と混合され、混合液16が得られることとなる。そして、このサイクルは、比重調整液15の供給を停止するまで継続され、図11(c)に示すように、空間20内を混合液16でほぼ完全に置換することができる。
【0244】
次に、比重調整液15と同一の比重調整液15、または、開放する電磁弁57を変更して、比重調整液15より比重の大きい比重調整液15を供給して、以上の操作を繰り返す。これにより、空間20内の液体の比重を、処理液14の比重より大きくなるように調整する。
【0245】
この調節後、図11(d)に示すように、前述したようにして、処理液14をカラム本体2(本体部21)に、第1の分注ヘッド42のノズルチップ421から供給(吐出)する。
【0246】
ここで、例えば、空間20内に収納された比重1.0の試料液11を、比重2.0の処理液14で置換する場合を一例に説明する。
【0247】
この場合、図12に示すように、まず、比重1.0の試料液11が収納されたカラム本体2内に、比重2.0の比重調整液15を、空間20の容積(試料液11)とほぼ等しい量供給すると、空間20内には、比重1.5程度の混合液16が得られる。
【0248】
次に、比重2.0の比重調整液15を、空間20の容積とほぼ等しい量供給すると、空間20内には、比重1.75程度の混合液16が得られる。
【0249】
次に、比重2.0の比重調整液15を、空間20の容積とほぼ等しい量供給すると、空間20内には、比重1.9程度の混合液16が得られる。
【0250】
次に、比重2.5の比重調整液15を、空間20の容積とほぼ等しい量供給すると、空間20内には、比重2.2程度の混合液16が得られる。
【0251】
次に、処理具1の振盪を停止し、前記[7A]で記載したように、カラム本体2内に、処理液14を供給する。
【0252】
ここで、空間20内に収納された混合液16は、処理液14より比重が大きくなっているため、前記[7A]と同様に、図8(b)に示すように、処理液14は、混合液16との境界部に明確な界面141を形成しながら、一様に下降する。これにより、空間20内を処理液14でほほ完全に置換することができる。
【0253】
次に、前述したノズルチップ取外し工程を経て、使用していたノズルチップ421を取り外す。
【0254】
次に、前述したノズルチップ装着工程を経て、第1の分注ヘッド42のを新たな(異なる)ノズルチップ421に交換して、異なるカラム本体2(所定本数のカラム本体2)に対して、前記[7]を実行する(繰り返す)。
【0255】
なお、前記[7]は、複数回繰り返されるのに限定されず、1回のみ実行されてもよい。
【0256】
以上のように、この反応処理装置40(処理具1)では、吸引装置のような機械を使用せず、第2のフィルタ6より基端側に供給される液体の自重により、空間20内に収納される液体を置換することができる。このため、生体物質10の破損等を好適に防止することができる。また、簡易な構成であるので、コストを低く抑えることができる。
【0257】
また、処理液14(非汎用試薬)を処理具1へ分注する際には、第1の分注ヘッド42により、処理液14の種類ごとにノズルチップ421を新しいものに交換して分注を行う。これにより、種類の異なる処理液14同士の間でのコンタミネーションを確実に防止することができ、生体物質10を正確に処理することができる。
【0258】
さらに、複数種類の比重調整液15(汎用試薬)については、第2の分注ヘッド43を用いて、その種類にかかわらず共通に固定式ノズル431から処理具1へ分注する。これにより、第2の分注ヘッド43については、消耗品であるノズルチップの費用がかからないので、コスト低減が図れる。また、第2の分注ヘッド43については、ノズルチップ交換の時間を要しないので、処理効率の向上が図れる。
【0259】
以上、本発明の反応処理装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【0260】
例えば、処理具は、多連構成のものに限定されず、1つずつ個別のものであってもよい。
【0261】
また、処理具に用いる攪拌子としては、前述のような液体中に浮遊するものの他、上部から吊り下げられることにより、第2のフィルタ近傍に支持された吊り下げ型の攪拌子を使用するようにしてもよい。また、攪拌子は、必要に応じて省略することもできる。
【0262】
また、操作部材は、直線状のものに限定されず、例えば、先端側で分岐してY字状をなすもの等であってもよく、また、設置数も1本に限定されず、複数本であってもよい。
【0263】
また、前記実施形態では、キャップは、第1のフィルタと第2のフィルタとの間に形成される空間内に空気(気体)を供給(注入)する機能を有するものとして説明したが、その他の機能を有するものであってもよく、空気(気体)を供給する機能とその他の機能とを兼ね備えるものであってもよい。
【0264】
また、前記実施形態では、気体注入手段(気体供給手段)の一例としてキャップを代表に説明したが、気体注入手段としては、その他、例えば、装置本体内に内蔵され、処理具を保持部に設置して状態で、排出口に装着されるチューブと、チューブの排出口に接続されるのと反対の端部側に接続された気体(ガス)供給源とを有する構成とすることもできる。
【0265】
また、処理具は、2つのフィルタ(2重フィルタ)を有するものに限定されず、例えば、試験管、マイクロプレート、スライドガラス等であってもよい。
【0266】
また、反応処理装置は、非汎用試薬が冷却されるように温度調整が行われるよう構成されているのに限定されず、汎用試薬が冷却されるよう温度調整が行われるよう構成されていてもよい。
【0267】
また、この温度調整は、冷却に限定されず、例えば、定温、加温(加熱)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明の反応処理装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す反応処理装置における配管図である。
【図3】本発明で用いられる処理具の構成を示す部分断面斜視図である。
【図4】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図5】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図6】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図7】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図8】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図9】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図10】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図11】本発明の反応処理装置の使用方法を説明するための図である。
【図12】第1のフィルタと第2のフィルタ間との間に画成される空間内に収納された液体の比重の変化を示すグラフである。
【図13】従来の処理具(反応容器)の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0269】
1 処理具
2 カラム本体
20 空間
21 本体部
210 基端開口
22 排出口
221 先端開口
3 エクステンションカップ
31 本体部
310 基端開口
32 装着部
4 キャップ
5 第1のフィルタ
6 第2のフィルタ
7 操作部材
8 浮遊攪拌子
9 シート材
10 生体物質
11 試料液
111 気泡
14 処理液
15 比重調整液
16 混合液
40 反応処理装置
41 装置本体
411 開口
42 第1の分注ヘッド
421 ノズルチップ
43 第2の分注ヘッド
431 固定式ノズル
44 ヘッド移動機構
441 昇降機構
442 可動橋
443 駆動ベルト
444 モータ
445、446 レール
447、448 壁
45 保持部
46 冷却貯留部
47 チップリムーバ
471 切欠き
472 孔
48 チップラック
49 回収容器
50 棚
51 汎用試薬タンク
511 大容量タンク
512 中容量タンク
513 小容量タンク
52 チューブ配管
53 分注ポンプ
54 送液ポンプ
55、56 流路
57 電磁弁
58 ヒーター
59 液受け部
60 流路
61 排液タンク
62 吸引ポンプ
63 電磁弁
64 ノズル洗浄槽
65 流路
66 電磁弁
66 電磁弁
70 制御手段
71 入力部
100 位置決め手段
110 本体部
112 段差部
120 孔
121 ガイド孔
130 ネジ
141 界面
901 反応容器
902 中空管
903 細孔板
904 中空管
905 細孔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質を収容した処理具に複数種類の汎用試薬と複数種類の非汎用試薬とを供給して該生体物質を処理し得る反応処理装置であって、
装置本体と、
使い捨てのノズルチップを着脱自在に装着し、該ノズルチップ内に液体を吸引・吐出する第1の分注ヘッドと、
液体を吐出可能であり、複数回使用される固定式ノズルを有する第2の分注ヘッドと、
前記第1の分注ヘッドおよび前記第2の分注ヘッドを前記装置本体に対し相対的に移動させるヘッド移動機構とを備え、
前記複数種類の非汎用試薬については、前記第1の分注ヘッドにより、その種類ごとにノズルチップを交換しつつ前記処理具へ分注し、前記複数種類の汎用試薬については、前記第2の分注ヘッドにより、その種類にかかわらず共通に前記固定式ノズルから前記処理具へ分注するよう構成されていることを特徴とする反応処理装置。
【請求項2】
前記汎用試薬および前記非汎用試薬の少なくとも一方の温度を調整する温度調整部を有する請求項1に記載の反応処理装置。
【請求項3】
前記温度調整部は、前記非汎用試薬を冷却した状態で貯留する冷却貯留部を有する請求項2に記載の反応処理装置。
【請求項4】
前記汎用試薬を種類ごとに貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された汎用試薬を前記固定式ノズルへ送液する送液ポンプと、前記貯留部から前記固定式ノズルへの流路を切り替える流路切替手段とを有し、前記流路切替手段を切り替えることにより、前記固定式ノズルで分注する汎用試薬の種類を選択する請求項1ないし3のいずれかに記載の反応処理装置。
【請求項5】
前記固定式ノズルへ供給される汎用試薬を加温するヒーターを有する請求項4に記載の反応処理装置。
【請求項6】
前記各非汎用試薬と前記各汎用試薬とを所定の順序で前記処理具に供給するように、前記第1の分注ヘッドと前記第2の分注ヘッドとの作動を制御する制御手段を備えた請求項1ないし5のいずれかに記載の反応処理装置。
【請求項7】
前記処理具は、先端部に液体を排出可能な排出口を備える筒体と、
該筒体内の前記排出口近傍に固定された第1のフィルタと、
前記筒体内の前記第1のフィルタより基端側に、前記筒体の軸方向に移動可能に設けられ、前記第1のフィルタとの間に形成される空間内に液体を保持し得る第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを前記筒体の軸方向に移動操作する操作部材とを有する請求項1ないし6のいずれかに記載の反応処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−25767(P2006−25767A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213568(P2004−213568)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】