説明

反応性シリル基含有共重合体を含有する組成物

【課題】優れた防汚性、撥水性を有し、更に水に安定な化合物を提供する。
【解決手段】反応性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル(A)、(メタ)アクリル酸またはそのエステル(B)、シロキサン含有(メタ)アクリル酸エステル(C)、及びアミン含有(メタ)アクリル酸エステル(D)を構成モノマーとして有する共重合体において、モノマー(A)の割合が共重合体中0.1質量%以上25.0質量%未満であり、溶液重合により製造された共重合体と、水とを含有し、組成物中の共重合体濃度が特定量以下であることを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性シリル基含有共重合体を含有する組成物、特にその製剤への適用性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある材料に撥水性や防汚性を付与する方法として、樹脂やシリコーン化合物等を処理し、皮膜を形成させる方法が用いられている。この中でも、近来、シリコーンの皮膜の耐久性を向上させるために、シリコーン化合物中に特定の比率の反応性シリル基を含有させ、加水分解によって該シリコーン間の架橋反応を進行させて皮膜を形成する技術の研究が行われている(例えば、特許文献1〜4参照)。そして、これらのシリコーン化合物は、毛髪、皮膚、繊維等の上に強固な皮膜を形成させることができることから、撥水性や防汚性を付与する目的で、毛髪化粧料、メーキャップ化粧料、又は撥水剤等に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−124312号公報
【特許文献2】特開平11−43415号公報
【特許文献3】特開平11−302129号公報
【特許文献4】特開平11−302140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術のシリコーン化合物においては、撥水性、防汚性の点においては優れているものの、水に対して非常に高い反応性を有し、架橋反応が進行してしまうため、水との共存中においては安定に存在することができなかった。このため、このようなシリコーン化合物を用いた製剤中においては、水の存在は禁忌とされており、配合剤型が水分を含有しないものに限られていた。一方で、近年、人体や環境への影響といった観点から、有機溶剤を多量に配合する製剤は忌避される傾向にある。このような状況により、水分含量の多い製剤(化粧品、毛髪処理剤、衣類処理剤)においても、優れた撥水性、防汚性を付与することができる化合物を開発することが期待されていた。以上のことから、本発明は、優れた防汚性、撥水性を有し、更に水に安定な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために、架橋体を形成でき、且つ水を含有する製剤においても安定性の保たれるような、シリコーン系共重合体の組成の改良について鋭意検討を行った。この結果、共重合体中の反応性シリル基の含有量を低く調整することにより、共重合体中に水が混入しても架橋反応が進行せず、このため、製剤中に水を多く含有する場合においても安定に保たれることを見出した。すなわち、反応性シリル基を有する(メタ)アクリル酸系エステルを構成モノマーとする共重合体において、該構成モノマーの含有量を共重合体全量中0.1質量%以上25.0質量%未満とすることにより、水との共存中においても安定に存在することができ、また、該共重合体及び水を含有する製剤を被処理材料に塗布することにより、被処理材料に良好な撥水性、防汚性が付与することができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
すなわち、本発明の第一の主題は、下記一般式(I)で示されるモノマー(A)、下記一般式(II)で示されるモノマー(B)、下記一般式(III)で示されるモノマー(C)、及び下記一般式(VII)で示されるモノマー(D)を構成モノマーとして有する共重合体において、モノマー(A)の割合が共重合体中0.1質量%以上25.0質量%未満であり、溶液重合により製造された共重合体と、水とを含有し、下記数1で示される組成物中の共重合体濃度Xが、下記数2で示されるX´質量%以下であることを特徴とする組成物である。
【化1】

(一般式(I)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、R、R、Rは、このうちの少なくとも1つが官能基自身もしくはその加水分解物が共重合体分子間を架橋しうる反応性官能基、このうちの反応性官能基を除く他は非反応性官能基を意味する。)
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ化アルキル基、エチレンオキシド(1〜50モル)、プロピレンオキシド(1〜50モル)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体(1〜50モル、ランダムあるいはブロック)、あるいはこれらのアルキレンオキシドの末端OH基が炭素数1〜18のアルキル基のものを意味する。)
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Xは下記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表される基を意味する。)
【化4】

(一般式(IV)中、R10は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【化5】

(一般式(V)中、R11及びR11’は炭素数1〜6のアルキル基、xは正の整数を意味する。)
【化6】

(一般式(VI)中、R、Rは前記定義の通りである。R12は炭素数1〜6のアルキル基、xは正の整数を意味する。)
【化7】

(一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基、R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Yは−N(R15又は−N(R15で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
(数1)
X={A/(A+B)}×100
(ただし、Aは組成物中の前記共重合体の質量(g)、Bは組成物中の全溶媒の質量(g)を表す。)
(数2)
X´=750/(C×D)
(ただし、Cは組成物中に含まれる共重合体中のモノマー(A)の割合(質量%)、Dは組成物中に含まれる全溶媒中の水の割合(質量%)を表す。)
【0007】
また、前記組成物において、前記共重合体が更に親水性モノマーを構成モノマーとして有する共重合体であることが好適である。また、前記組成物において、溶媒が揮発性溶媒からなることが好適である。
【0008】
また、本発明にかかる撥水剤は、前記組成物からなることを特徴とする。また、本発明にかかる化粧料は、前記組成物からなることを特徴とする。また、本発明にかかる毛髪処理剤は、前記組成物からなることを特徴とする。また、本発明にかかる皮膚化粧料は、前記組成物からなることを特徴とする。また、本発明にかかるパック化粧料は、前記組成物からなることを特徴とする。また、本発明にかかる処理方法は、前記組成物を被処理材料に塗布後、加熱又は自然乾燥により、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる共重合体は、これを被処理材料に塗布すると、加熱又は自然乾燥等により溶媒が揮発することにより該共重合体が架橋することによって、その表面に強固な架橋体皮膜を形成し、被処理材料に良好な撥水性、防汚性を付与することができ、更に水、酸、アルカリに対して安定に存在することができるため、湿度、pH等に対して安定性の高い製剤を得ることができる。また、本発明にかかる共重合体は、水分を含有する製剤に安定に配合することが可能であり、このため、相対的に有機溶媒の配合量を減らした、より安全な製剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる共重合体の架橋反応の一例を示す図である。
【図2】本発明にかかる共重合体の架橋反応の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
前記一般式(I)で示されるモノマー(A)は、反応性シリル基−SiR345において少なくとも1つの反応性官能基を含有するアクリル酸もしくはメタアクリル酸のエステル体である。一般式(I)において、R1は水素原子又はメチル基である。また、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはプロピレン基である。R3、R4、R5はこのうちの少なくとも1つが、該官能基自身もしくは該官能基の加水分解物が脱水縮合することによってシロキサン結合Si−O−Siを形成し、これにより本発明の共重合体分子間を架橋し得る反応性官能基であり、例えば、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基等が挙げられるが、共重合体の安定性や、加水分解により生じる副生成物の安全性、後述する架橋反応の反応性等の点から好ましくはヒドロキシル基、もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0012】
なお、前記一般式(I)で示されるモノマー(A)において、R3、R4、R5は同一又は異なっていてもよく、また、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つが前記反応性官能基であれば、3官能性、2官能性、1官能性の何れであってもよい。前記2官能性もしくは1官能性の場合、R、R、Rには、前記反応性官能基の他に、メチル基、エチル基といった低級アルキル基等の非反応性の官能基を、架橋反応に影響を及ぼさない範囲で有することができる。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(A)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0013】
また、前記一般式(I)で示されるモノマー(A)は、前述のような反応性シリル基を有し、前記シロキサン結合の形成により共重合体分子間を架橋することによって、架橋体皮膜を形成する。そして、このような架橋反応を被処理材料上で行うことにより、耐久性のある高い撥水性、防汚性を発揮することができる。
【0014】
本発明の共重合体のモノマー組成としては、共重合体中のモノマー(A)の割合が共重合体中0.1質量%以上25.0質量%以下である。モノマー(A)の割合が0.1質量%以下であると、架橋反応部位が少なく、実質的に架橋反応を生じないか、あるいは生じてもわずかであるために、撥水性や防汚性の効果が十分発揮されない場合があり、一方、モノマー(A)の割合が25.0質量%以上であると、架橋反応部位が多すぎて、水の存在により架橋反応が進行してしまい、ゲル化又は不溶性の沈殿を生じることから、水存在下での共重合体の安定性に懸念がある。
【0015】
更に、本発明の共重合体において、前記一般式(II)で示されるモノマー(B)との中から選ばれる一種類以上を構成モノマーとして有することができる。
前記一般式(II)で表されるモノマー(B)は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸のエステルである。一般式(II)において、R6は水素原子、もしくはメチル基であり、R7は水素原子あるいは炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜18のフッ化アルキル基、エチレンオキシド(1〜50モル)、プロピレンオキシド(1〜50モル)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体(1〜50モル、ランダムあるいはブロック)、及びこれらエチレンオキシド、プロピレンオキシドの末端OH基がアルキル封鎖されたものを意味するが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(B)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0016】
前記一般式(II)で表されるモノマー(B)は、モノマー(A)からなる架橋体皮膜の撥水性に寄与し、Rが水素又はエチレンオキシドの場合には水溶性が高く、Rが長鎖のアルキル基の場合には疎水性により撥水性が高くなるため、両者の組成のバランスをとることにより、架橋体皮膜の性質を調整することが可能である。また、前記モノマー(B)は、これとともに架橋体皮膜のフレーキングやべたつきを抑えることができる。本発明の共重合体において、共重合体中のモノマー(B)の割合は、好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上であるが、共重合体中のモノマー(B)の割合が高くなると、必然的に他のモノマーの割合が低下することとなり、また、共重合体がアルコール系溶媒に難溶性となるため、モノマー(B)の割合は多くとも75質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
【0017】
更に、本発明の共重合体において、前記一般式(III)で示されるモノマー(C)の中から選ばれる一種類以上を構成モノマーとして有することができる。
前記一般式(C)で表されるモノマー(C)は、シロキサン含有(メタ)アクリル酸エステルである。一般式(III)において、R8は水素原子又はメチル基である。R9は炭素数1〜6のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基である。Xは前記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表されるシロキサンを意味する。一般式(IV)〜(VI)において、R10、R11、R11’、R12は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表す。なお、各一般式中にR10、R11、R12がそれぞれ複数存在するが、これらは同一又は異なっていてもよい。R10、R11、R12として好ましくはメチル基である。R11’として好ましくはブチル基が挙げられる。Xが一般式(V)又は一般式(VI)の場合、モノマー(C)の分子量は1,000〜100,000、好ましくは2,000〜20,000である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(C)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0018】
前記一般式(C)で表されるモノマー(C)は、シロキサン部分を有し、これにより架橋体皮膜の撥水性を著しく高めるとともに、繊維になめらかさを付与して良好な仕上がりとすることができ、また、フレーキングも抑制することができる。また、本発明の共重合体において、共重合体中のモノマー(C)の割合は、好ましくは共重合体中1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であるが、モノマー(C)の割合が多すぎると、相対的にその他のモノマーの割合が低下することになり、また耐水性が落ちる傾向にあるので、モノマー(C)の割合は多くとも70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
【0019】
また、本発明の共重合体において、更に前記一般式(VII)で示されるモノマー(D)の中から選ばれる一種類以上を構成モノマーとして有することができる。
前記一般式(VII)で表されるモノマー(D)は、アミン含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーである。一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基である。R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはエチレン基、プロピレン基が挙げられる。Yは−N+(R153又は−N(R152で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。また、−N+(R153基の場合にはハロゲンや有機酸等を対イオンとした塩であってもよい。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(D)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。前記一般式(VII)で表されるモノマー(D)は、親水性のアミン部分を有し、これにより、繊維に対してなめらかさとともにぬめり感が付与され、しっとりとした使用感が得られる。なお、モノマー(D)の割合が多すぎると、モノマー(D)が有するアミン部分によって、皮膜の親水性が高くなり撥水性が劣るようになる傾向にあるので、モノマー(D)の割合は、共重合体中のモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)の総重量に対して1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%の範囲である。
【0020】
本発明の共重合体は、更に親水性モノマーを構成モノマーとして有することができる。
前記親水性モノマーとは、例えば、アミド基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基、オキシエチレン基等に代表されるような親水性基を有するモノマーである。なお、本発明の共重合体においては上記親水性モノマーの1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。前記親水性モノマーを共重合体組成中に含むことにより、水を多く含んだ製剤中でも、溶解状態を安定にとることができ、共重合体としての機能を十分に発揮することができる。なお、親水性モノマーの割合が多すぎると、皮膜の親水性が高くなり撥水性が劣るようになる傾向にあるので、親水性モノマーの割合は、共重合体中の他のモノマーの総重量に対して1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%の範囲である。
【0021】
前記親水性モノマーとしては例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルアクリルアミド、メチルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、エチルアクリルアミド、エチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-ビニルピロリドン、ε-カプロラクタム、ビニルアルコール、無水マレイン酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、エチレンオキシド、ポリジアリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記以外のモノマーを本発明の共重合体の構成モノマーとして有することも可能である。
【0022】
本発明にかかる共重合体は上記モノマーを公知の溶液重合法を用いて重合することにより得ることができる。例えば、各モノマーを求めるモノマー組成にて溶媒に溶解し、窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を添加して加熱撹拌することにより本発明の共重合体を得ることができる。
【0023】
重合の際に用いられる溶媒としては、モノマーを溶解又は懸濁し得るものであって、水を含まない有機溶媒であればいかなる溶媒でも用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系溶媒などの他、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これら溶媒は2種以上混合して用いてもよい。通常、用いる重合開始剤の開始温度よりも沸点が高い溶媒を選択することが好適である。
【0024】
重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙げられる。なお、これらの重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。
【0025】
重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。比較的高分子量のポリマーを得たい場合には、1日程度反応させることが望ましい。反応時間が短すぎると未反応のモノマーが残存し、分子量も比較的小さくなることがある。本発明の共重合体の平均分子量は特に制限されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮し得る。ただし、重合度が小さくなると後述する架橋反応の速度が低下し、また、あまりに重合度が大きすぎると粘度が高くなって塗布性や作業性に劣ることから、その平均分子量は2,000〜150,000程度であることが好ましい。
【0026】
本発明にかかる共重合体の好適な例としては、例えば下記一般式(VIII)で示される共重合体、及び下記一般式(IX)で示される共重合体を挙げることができる。
【化8】

【0027】
【化9】

なお、一般式(VIII)及び一般式(IX)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R13、R14、X,Yは前記定義の通りである。n、m、l、pはそれぞれモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、モノマー(D)のモル比を表す。なお、モノマー(A)のモル比nは、モノマー(A)の割合が共重合体全量中の0.1質量%以上25質量%未満となるように調整される。
【0028】
このようにして得られる本発明の共重合体は、モノマー(A)に由来する反応性シリル基を有している。このため、該反応性シリル基が脱水縮合することによって本発明の共重合体同士が架橋し、架橋体を形成することができる。そして、このような架橋反応を被処理物上で行うことにより、その表面に共重合体の架橋体皮膜が形成され、耐久性のある高い撥水性、防汚性を発揮することができる。
【0029】
また、本発明の共重合体による架橋体皮膜は、繊維材料に対して糊付け性や、しわ伸ばし、防しわ効果を発揮し、また、その使用感に優れる。また、毛髪に対してハリ、コシを付与するとともに、シャンプーを繰り返した後もその効果が失われずに持続するという、優れた耐シャンプー性を発揮する。また、カラーリングした毛髪に対しては、シャンプーした際の色落ちが抑制され、染色持ちが格段に向上するといった効果を与える。また、爪や皮膚、眉、睫等に対して、これを保護するとともに、該皮膜は水や洗剤によっても非常に落ちにくいため、このような保護効果を持続して発揮し、またその使用感に優れる。また、パック化粧料として用いると、パック皮膜とともに皮膚の角栓や、古い角質層、汚れ等がきれいに除去され、使用感も非常に良好であるという特徴を有する。
【0030】
このような効果が発現する作用機構としては次のように考えられる。図1に本発明にかかる共重合体の架橋反応の一例を模式的に示す。すなわち、本発明にかかる共重合体はモノマー(A)に由来する反応性シリル基−SiR345を有している。この反応性シリル基は水、酸、アルカリ等により容易に加水分解され、ヒドロキシシリル基−Si(OH)n(n=1〜3)となる。なお、ここで、図1には、3官能性シリル基(n=3)の場合を示す。このようなヒドロキシシリル基は他のヒドロキシシリル基と反応して安定なシロキサン結合Si−O−Siを形成し、その結果、共重合体分子間が三次元網目状に架橋された架橋共重合体となる。このようにして、本発明の共重合体分子同士が架橋し、架橋体が被処理材料を網目状に強固且つ均一に被覆することにより、撥水性、耐洗浄性に優れる皮膜を形成するものと推察される。
【0031】
ここで、従来技術における反応性シリル基を有する共重合体は、水の存在によりヒドロキシシリル基へと加水分解されると同時に、ヒドロキシシリル基同士の架橋反応が進行してしまい、ゲル化又は不溶性の沈殿を生じてしまうため、水との共存下で安定に存在することができなかった(図2(a))。これに対し、本発明の共重合体は、モノマー(A)の割合を共重合体全量中0.1質量%以上25.0質量%未満と低く調整することによって、水を含有する条件においても、加水分解後のヒドロキシシリル基同士の距離が十分に離れているために架橋反応を進行することなく、分散媒中で安定に存在することができるのである(図2(b))。そして、本発明の共重合体においては、塗布後、加熱又は自然乾燥等によって分散媒が揮発し、共重合体のヒドロキシシリル基同士の距離が近づき、脱水縮合、すなわち架橋反応が起こることにより、ここで初めて皮膜が形成されるのである。また、本発明にかかる共重合体は、同様の理由により、酸、アルカリの存在下においても架橋反応が進行することはなく安定である。
【0032】
このように、本発明にかかる共重合体は、水、酸、アルカリの存在によっても架橋反応は進行せず安定である。このために、本発明にかかる共重合体からなる組成物は、湿度やpH等の外部の影響を受けにくく、従来のシリコーン共重合体と比較し、経時安定性が非常に良好である。また、本発明にかかる共重合体からなる組成物は、これら水、酸、アルカリとともに配合することも可能となるために、製剤等への適用可能範囲が広い。
【0033】
また、本発明にかかる共重合体は、水と共存した状態で組成物とすることが好ましい。すなわち、有機溶剤を多量に配合する製剤は、人体や環境への影響といった観点から好ましくなく、特に人体へ直接用いる化粧料等の製剤においては水を用いた製剤が好ましい。従来の反応性シリコーン共重合体は、水との共存により架橋反応が進行してしまうことから安定に存在することができなかったが、本発明にかかる共重合体は、水との共存状態においても安定に存在することができる。
このような本発明の共重合体と、水とを配合した組成物においては、水の配合量は80質量%以下であることが好適である。水の配合量が80質量%より多いと、共重合体が溶媒に溶けにくくなり沈殿する場合がある。
【0034】
また、本発明の組成物において、下記数5で示される共重合体濃度Xが、下記数6で示されるX´質量%以下であることが好適である。
(数3)
X={A/(A+B)}×100
(ただし、Aは組成物中に含まれる共重合体の質量(g)、Bは組成物中の全溶媒の質量(g)を示す。)
(数4)
X´=750/(C×D)
(ただし、Cは組成物中に含まれる共重合体中のモノマー(A)の割合(質量%)、Dは組成物中に含まれる全溶媒中の水の割合(質量%)を表す。)
本発明にかかる組成物において、前記数5に規定される共重合体濃度Xが、前記数6に規定されるX´質量%より大きいと、組成物中において架橋反応が起こってしまうことによりゲル化を生じ、外観、塗布性、伸展性、使用感等が劣ったりする場合がある。
【0035】
すなわち、通常、本発明の共重合体は、溶媒中に分散した状態で、架橋反応が起こることなく安定に存在していることができるが、溶媒が揮発等により少なくなり、ある一定の共重合体濃度を超えると、共重合体中の架橋反応部位であるヒドロキシシリル基が近づくことにより、架橋反応が起こり始める。ここで、組成物中で架橋を生じることなく、安定に分散可能な共重合体濃度は、共重合体中のモノマー(A)の割合、及び組成物中の全溶媒中における水の割合に依存するため、前記数6の式により予め求めておくことができるのである。したがって、本発明にかかる組成物においては、前記数5で示される共重合体濃度Xが、各共重合体中のモノマー(A)の割合に応じて、前記数6で示されるX´質量%以下となるよう調整されていることが好ましい。
【0036】
なお、組成物中に前記共重合体及び溶媒の他の成分を含むような組成物の場合においても、本発明において規定される共重合体濃度Xは、前記数5に規定されている通り、共重合体の質量、及び溶媒の質量のみによって規定される。すなわち、本発明において規定される共重合体濃度Xは、常に共重合体と溶媒との関係において規定されている必要があり、多成分を含有する組成物において、共重合体濃度として通常の質量%濃度を用いると、前述の共重合体濃度XとX´との関係が成立しない場合がある。
【0037】
また、本発明の組成物において、組成物に含まれる溶媒が揮発性溶媒からなることが好適である。不揮発性の溶媒を用いると、加熱又は自然乾燥等により分散媒を揮発させることができず、皮膜を形成させることが難しい。揮発性溶媒としては、水の他に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化合物炭化水素、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤炭素数1〜4の脂肪族1〜4価アルコール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のセルソルブ系溶剤、ジオキサン、酢酸メチル、ジメチルホルムアミド等の揮発性有機溶媒を用いることが挙げられる。なお、安全性の点から、水を単独で、もしくはこれらの揮発性有機溶媒との混合溶媒として用いることが特に好適である。これら揮発性有機溶媒のうち、毒性や安全性の点から好ましいものは、脂肪族1〜2価のアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールが挙げられ、特に安全性の点からは、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0038】
本発明において処理される材料としては、単繊維、紡績糸、ランダム繊維、織物及び最終製品の任意の形態の繊維材料、また毛髪、皮膚、爪、睫、眉の表皮などが好適である。また、これら以外にも、ガラス板やガラス製品、金属板や金属製品等、撥水性や防汚性が要求されるその他の材料を処理することも可能である。
【0039】
本発明にかかる組成物を用いた被処理材料の処理方法としては、本発明の組成物を被処理材料に塗布後、加熱又は自然乾燥により、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする。すなわち、本発明の組成物を塗布後、加熱又は自然乾燥等により分散媒を揮発させ、組成物中の共重合体間のヒドロキシシリル基同士の距離を近づけることにより脱水縮合し、架橋体を形成するのである。具体的には、シャツ等の衣類においては、アイロン掛けの前に該組成物をスプレーし、その後アイロンやスチームアイロンをかける方法、毛髪においては、該組成物をスプレー又は塗布し、その後ドライヤーをかける方法が好適な方法として挙げられる。
【0040】
本発明にかかる組成物の剤型は特に限定されず、本発明の効果を発揮しうる形態であればどのようなものでもよい。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、ミスト、スプレー、エアゾール、ムース等が挙げられる。
本発明にかかる水分含有組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であればその他の成分を配合することができる。例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、皮膜形成剤、油性成分、高分子化合物、噴射剤等が挙げられる。なお、前記のように本発明の共重合体とともに酸、アルカリを組成物中に配合することも可能である。また、顔料や色素等の色材を配合すれば、耐水性のある着色皮膜を形成することも可能であり、紫外線吸収剤を配合すれば被処理材料の退色を防止することも可能である。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず最初に、本発明で用いた評価方法について説明する。
耐水安定性
各種共重合体10質量%エタノール溶液に各濃度で水を添加し、1ヶ月放置し、そのゲル化の進み具合を視覚判定し、安定性を評価した。
◎ … 変化は全くみられない
○ … 変化はほとんど見られない
△ … ややゲル化が見られる。
× … 完全にゲル化が見られる。
【0042】
撥水性
各共重合体の10質量%水/エタノール溶液を木綿のシャツにスプレーし、自然乾燥させた。このシャツに水を数滴滴下し、視覚判定にて撥水性を評価した。評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0043】
防汚性
前記撥水性試験と同様に処理したシャツにコーヒー液を1滴滴下し、別布でふき取った後の汚れの付着度を視覚判定し、防汚性を評価した。
評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0044】
なめらかさ
各共重合体の10質量%水/エタノール溶液2gを木綿1枚(10g)に塗布し、自然乾燥した。この布のなめらかさを手触りにて専門パネル20名により官能評価した。
評価基準
◎:15名以上が良好と回答した。
○:10〜14名が良好と回答した。
△:5〜9名が良好と回答した。
×:4名以下が良好と回答した。
【0045】
ぬめり感
前記なめらかさの試験と同様に処理した布のぬめり感を手触りにて専門パネル20名により官能評価した。
評価基準
◎:15名以上が良好と回答した。
○:10〜14名が良好と回答した。
△:5〜9名が良好と回答した。
×:4名以下が良好と回答した。
【0046】
分散安定性
各種共重合体濃度の共重合体・水/エタノール溶液を調製し、ゲル化状況を視覚判定し、安定性を評価した。
◎ … 変化は全くみられない
○ … 変化はほとんど見られない
△ … ややゲル化が見られる。
× … 完全にゲル化が見られる。
【0047】
つづいて、本発明で用いた各モノマーの構造を以下に示す。
モノマーA1:
【化10】

【0048】
モノマーB1:
【化11】

【0049】
モノマーB2:
【化12】

【0050】
モノマーC1:
【化13】

【0051】
モノマーC2:
【化14】

【0052】
モノマーC3:
【化15】

【0053】
モノマーD1:
【化16】

【0054】
以下に本発明にかかる共重合体の合成方法について示す。
合成例 共重合体1 3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(モノマーA1)0.5g(2mmol)及びメタクリル酸メチル(モノマーB1)4.75g(47.5mmol)、メタクリル酸ブチル(モノマーB2)4.75g(35.4mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
なお、得られた共重合体はそのNMRスペクトルデータ(溶媒CDCl又はDMSO−d)において、6〜7ppm付近に見られる原料モノマー由来のCH=Cの水素原子のピークが認められず、このことから共重合体の生成が確認された。また、本発明においては、他の共重合体についても同様にして共重合体の生成を確認した。
【0055】
本発明者らは、以上に示した合成方法に準じ、各種の共重合体を調整し、その評価を行った。
モノマー(A)の配合量
本発明者らは、まず最初に、モノマー(A)の配合量を変化させた各種共重合体1〜5を製造し、それぞれの共重合体の水に対する安定性についての評価を行った。表1、2に、それぞれ37℃、50℃における耐水安定性試験の結果を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
上記表1、2に示されるように、モノマーの総量に対してモノマー(A)を5.0〜20.0質量%配合した共重合体1〜3は耐水安定性に優れ、水との共存によっても長期間安定なものであった。これに対し、モノマー(A)を50質量%配合した共重合体5においては、水に対する安定性が悪くゲル化を生じた。これは、水との共存中において、モノマー(A)のヒドロキシシリル基同士が縮合反応を起こし架橋体が生成したためであると考えられる。また、モノマー(A)の含有量が25質量%である共重合体4においても、高温(50℃)になるとゲル化を生じ始める傾向にあった。このため、本発明にかかる共重合体中において、モノマー(A)のヒドロキシシリル基が架橋体を形成しない程度に離れさせて存在させるためには、共重合体中のモノマー(A)の割合は25質量%未満であることが必要であることが明らかとなった。
【0059】
更に、本発明者らは、本発明にかかる前記共重合体1〜3の撥水性、防汚性についてその評価を行った。結果を表3に示す。
【表3】

表3に示されるように、モノマー(A)の割合が少ない共重合体1〜3においても、撥水性、防汚性について良好な結果を示した。
【0060】
共重合体のモノマー組成
以下、本発明者らは、本発明にかかる共重合体の好適なモノマーの組成について更に検討した。
モノマー(A)〜(C)
本発明者らは、モノマー(A)、(B)、(C)を含有する共重合体6〜9について、その評価を行った。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
表4に示されるように、モノマー(A)〜(C)からなる共重合体6〜9は、撥水性、防汚性に非常に優れ、さらにモノマー(A)及び(B)からなる共重合体1〜3と比較し、なめらかな使用感を与えるものであった。このことから、共重合体中にモノマー(C)を用いることにより、撥水性、防汚性に優れ、更に繊維に対してなめらかな感触を与える共重合体を得ることができる。また、モノマー(C)がモノマーC1、C2、C3のいずれの場合でも同様の効果を与えることが示された。なお、モノマー(A)とモノマー(C)からなる共重合体の場合には、べたつきが著しく、使用が非常に困難であったことから、モノマー(B)がべたつきを抑え、適度な皮膜性を与えていることが示唆された。
【0063】
モノマー(D)
さらに、本発明者らは、モノマー(D)を含有する共重合体10、11について、その評価を行った。結果を表5に示す。
【表5】

表5に示されるように、モノマー(A)〜(D)からなる共重合体10、11は、モノマー(D)を用いることにより、更に繊維に対してぬめり感を与え、しっとりした感触を付与することができることが明らかとなった。
【0064】
親水性モノマー
更に、本発明者らによる更なる詳細な検討により、本発明にかかる共重合体において親水性モノマーを組成中に含むことにより、水を多く含んだ製剤中でも溶解状態を安定にとることができ、共重合体としての機能を十分に発揮することができることが明らかとなった。すなわち、本発明にかかる共重合体を大量の水と共存させると、共重合体自身が溶媒に溶けにくくなり、不溶性の沈殿を生じることがある。このような場合に、前述したような親水性モノマーを共重合体組成中に含むことによって、水を多く含む溶媒中に分散した状態で安定に存在することが可能となるのである。
【0065】
組成物中の共重合体濃度
つづいて、本発明者らは、本発明にかかる共重合体を組成物として用いる際の、好適な共重合体濃度(質量%)について検討を行った。
本発明者らはまず、共重合体として、前記共重合体7(モノマー(A)の割合:10質量%)を用い、水:アルコール=60:40の溶媒に分散させた組成物を調製し、共重合体濃度(質量%)を変化させた場合の分散安定性についての試験を行った。結果を表6に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
表6に示されるように、共重合体7(モノマー(A)の割合:10質量%)を用いた場合、組成物中の共重合体濃度が1.5質量%以上となると、架橋反応によるゲル化が生じてしまい、組成物が安定に存在することができない。これは、共重合体分子間のモノマー(A)のヒドロキシシリル基同士が溶媒中での分散により十分に離れることができずに、一部で縮合反応が起こり、架橋体が生成したためであると考えられる。すなわち、本発明の組成物において、モノマー(A)の割合が10質量%である共重合体7を用い、水の割合が60質量%の溶媒中に分散させた場合、共重合体濃度を1.25質量%以下となるよう調整することが必要であることが明らかとなった。
【0068】
ここで、本発明者らは、前述したように、組成物のゲル化、すなわち架橋反応の進行は、共重合体分子中のモノマー(A)のヒドロキシシリル基同士の距離に関係するものであるため、架橋反応が開始する共重合体濃度は、組成物中の共重合体中のモノマー(A)の割合、及び溶媒中の水の配合割合に依存するものであると考えた。そこで、共重合体中のモノマー(A)の割合、及び水の配合割合を変化させた場合の組成物の分散安定性について、前記試験と同様にして試験を行った。
【0069】
1.組成物中の共重合体濃度とモノマー(A)の割合との関係
共重合体として、前記共重合体1(モノマー(A)の割合:5質量%)を用い、水:アルコール=60:40の溶媒に分散させた組成物を調製し、共重合体濃度(質量%)を変化させた場合の分散安定性について試験を行った。結果を表7に示す。
【表7】

【0070】
表7に示されるように、モノマー(A)の割合が5質量%である共重合体1を用いた場合、組成物中の共重合体濃度が2.5質量%を超えると、組成物が安定に存在することができないことが明らかとなった。なお、前記試験結果から、同条件でモノマー(A)の割合が10質量%である共重合体7を用いた組成物の場合には、安定な共重合体濃度は1.25質量%以下であり、これらの結果を鑑みると、組成物中で安定に分散することが可能な共重合体濃度は、共重合体中のモノマー(A)の割合に依存していると考えられる。
【0071】
2.組成物中の共重合体濃度と溶媒中の水配合割合との関係
共重合体として、前記共重合体7(モノマー(A)の割合:10質量%)を用い、水:アルコール=50:50の溶媒に分散させた組成物を調製し、共重合体濃度(質量%)を変化させた場合の分散安定性について試験を行った。結果を表8に示す。
【表8】

【0072】
表8に示されるように、水の配合割合を50質量%とした場合、組成物中の共重合体7の濃度が1.5質量%を超えると、組成物が安定に存在することができないことが明らかとなった。なお、前記試験結果から、共重合体7を用い、水の配合割合が60質量%の場合には、安定な共重合体濃度が1.25質量%以下であり、これらの結果から、安定に分散可能な共重合体の濃度は、水の配合割合にも依存しているものと考えられる。
【0073】
以上のように、本発明にかかる組成物中で安定な共重合体の濃度は、共重合体中のモノマー(A)の割合と、溶媒中の水配合割合との双方に依存していると考えられる。本発明者らが、共重合体濃度と、共重合体中のモノマー(A)の割合、及び溶媒中の水配合割合との関係について更に詳細に検討を行ったところ、共重合体中のモノマー(A)の割合がC質量%であり、溶媒中の水配合割合がD質量%である組成物においては、組成物中の共重合体濃度が下記数7より得られるX´質量%より大きくなると、安定に分散されることができないことが明らかとなった。
(数5)
X´=750/(C×D)
(ただし、Cは組成物中に含まれる共重合体中のモノマー(A)の割合(質量%)、Dは組成物中に含まれる全溶媒中の水の割合(質量%)を表す。)
【0074】
すなわち、共重合体中のモノマー(A)の割合がC質量%、溶媒中の水の割合がD質量%である本発明の組成物においては、共重合体濃度が、前記数7により求められるX´質量%より大きい場合には、組成物中で架橋反応が開始され、これにより系のゲル化が起こってしまうため、組成物を安定に保つことができない。したがって、本発明にかかる組成物を安定に保つためには、共重合体のモノマー(A)の割合、及び全溶媒中の水の配合割合に応じて、組成物中の共重合体濃度を、前記数7より求められるX´質量%以下となるように調整されている必要があり、このように予め調整しておくことが好ましい。
【0075】
なお、前記試験においては、共重合体単一成分溶液を用いて試験を行ったため、共重合体濃度を質量%として示したが、前述のような関係を、多成分を含む組成物において適用するためには、共重合体濃度は下記数8に示す式に準じ算出したものを用いる必要がある。
(数6)
X={A/(A+B)}×100
(ただし、Aは組成物中に含まれる共重合体の質量(g)、Bは組成物中の溶媒の質量(g)を示す。)
すなわち、本発明において規定される共重合体濃度は、常に共重合体と溶媒との関係において規定される必要があると考えられる。このため、本発明にかかる組成物においては、前記数8により示される共重合体濃度Xが、前記数7により求められるX´以下であることが好適である。
【0076】
以下に本発明にかかる共重合体の好適な合成例を示す。
合成例1 3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.5g(2mmol)及びメタクリル酸メチル4.5g(45mmol)、メタクリル酸ブチル4.5g(34mmol)、メタクリルオキシエチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.5mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0077】
合成例2 3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.5g(2mmol)及びメタクリル酸メチル4.0g(40mmol)、メタクリル酸ブチル4.0g(30mmol)、メタクリルオキシエチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.5mmol)、アクリルオキシエチルジエチルアミン1.0g(6.4mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0078】
合成例3 3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.5g(2mmol)及びメタクリル酸メチル3.5g(35mmol)、メタクリル酸ブチル3.5g(26mmol)、アクリルオキシエチルジエチルアミン1.0g(6.4mmol)、メタクリルオキシエチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.5mmol)、アクリルアミド1.0g(14.3mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0079】
合成例4 3−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン1.0g(4mmol)及びメタクリル酸メチル3.5g(30mmol)、メタクリル酸ブチル3.5g(26mmol)、アクリルオキシエチルジエチルアミン1.0g(6.4mmol)、メタクリルオキシエチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.5mmol)、メタクリル酸メトキシポリエトキシエチル0.5gをエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0080】
合成例5 3−メタクリルオキシプロピルメトキシジメチルシラン1.0g(4mmol)及びメタクリル酸メチル3.5g(30mmol)、メタクリル酸ブチル3.5g(26mmol)、アクリルオキシエチルジエチルアミン1.0g(6.4mmol)、メタクリルオキシエチルトリ(トリメチルシロキシ)シラン0.5g(1.5mmol)、メタクリル酸ヒドロキシエチル0.5g(3.8mmol)をエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え一晩反応させて、共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0081】
以下に、本発明にかかる共重合体の好適な配合例を示す。なお、配合量はすべて質量%で表す。
配合例1 ヘアパック 質量%
(1) メチルポリシロキサン 2.0
(2) セタノール 3.0
(3) ベヘニルアルコール 3.0
(4) グリセリン 4.0
(5) ジグリセリン 2.0
(6) 2−エチルヘキサン酸セチル 1.0
(7) モノステアリンサ酸グリセリン 1.0
(8) 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
(9) クエン酸 0.1
(10) 加水分解マリンコラーゲン 0.05
(11) 油溶性植物プロテイン 0.05
(12) アミノ変性ポリシロキサン(東レダウSM8702C) 1.0
(13) 高分子量ポリシロキサン(n=4000) 0.5
(14) 共重合体 7 0.5
(15) パラベン 0.2
(16) 香料 適 量
(17) 精製水 残 量
【0082】
配合例2 毛髪仕上げ用スプレー
原液/LPG=55/45
原液 質量%
(1) メチルフェニルポリシロキサン 0.5
(2) エタノール 残 量
(3) 1,3−ブチレングリコール 0.5
(4) 液状ラノリン 0.2
(5) 2−エチルヘキサン酸セチル 0.5
(6) ラウリン酸ジエタノールアミド 0.5
(7) ピログルタミン酸イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油 0.2
(8) パラベン 0.2
(9) パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.5
(10) 共重合体 6 1.0
(11) 油溶性植物プロテイン 0.02
(12) 加水分解マリンコラーゲン 0.02
(13) 加水分解卵殻膜 0.02
(14) 香料 適 量
(15) 精製水 10.0
【0083】
配合例3 ヘアスプレー
原液/LPG=50/50
原液 質量%
(1) 流動パラフィン 6.0
(2) メチルポリシロキサン 3.0
(3) メチルフェニルポリシロキサン 2.0
(4) エタノール 残 量
(5) 油溶性植物プロテイン 0.03
(6) デシルテトラデカノール 6.0
(7) 2−エチルヘキサン酸セチル 3.0
(8) 共重合体 6 1.0
【0084】
配合例4 泡状セット剤
原液/LPG=90/10
原液 質量%
(1) プロピレングリコール 10.0
(2) ユカフォーマーSM(三菱化学社製) 5.0
(3) 共重合体 6 0.5
(4) ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
(5) モノラウリン酸POE(20)ソルビタン 1.0
(6) リンゴ酸ジイソステアリル 2.0
(7) ジメチルポリシロキサン 1.0
(8) ミリスチン酸 4.0
(9) トリエタノールアミン 2.0
(10) 精製水 残 量
【0085】
配合例5 リンス 質量%
(1) 流動パラフィン 1.0
(2) メチルポリシロキサン 3.0
(3) セタノール 1.0
(4) オクチルドデカノール 3.0
(5) 油溶性植物プロテイン 0.1
(6) プロピレングリコール 5.0
(7) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
(8) ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.5
(9) 塩化アルキルトリメチルアンモニウム 1.5
(10) クエン酸 0.1
(11) 塩化カリウム 0.5
(12) 共重合体 7 0.5
(13) フェノキシエタノール 0.3
(14) ピリチオン亜鉛液(50%) 0.01
(15) 加水分解マリンコラーゲン 0.1
(16) 精製水 残 量
(17) 香料 適 量
【0086】
配合例6 クリーム 質量%
(1) ワセリン 2.0
(2) メチルポリシロキサン 3.0
(3) セタノール 2.0
(4) グリセリン 3.0
(5) 1,3−ブチレングリコール 5.0
(6) 硬化油 2.0
(7) ステアリン酸 2.0
(8) トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 3.5
(9) イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 0.7
(10) モノステアリン酸グリセリン 2.3
(11) 水酸化カリウム 0.15
(12) ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.01
(13) ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(14) アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム 2.0
(15) パラベン 0.3
(16) カルボキシビニルポリマー 0.05
(17) 共重合体 8 0.5
(18) 加水分解マリンコラーゲン 0.1
(19) 油溶性植物プロテイン 0.1
(20) 精製水 残 量
(21) 香料 適 量
【0087】
配合例7 ジェル 質量%
(1) エタノール 5.0
(2) グリセリン 8.0
(3) ポリオキシエチレンメチルグルコシド 4.0
(4) POE(12)ラウリルエーテル 1.0
(5) ラウリルジメチルアミンオキシド 0.3
(6) 水酸化カリウム 0.5
(7) 加水分解マリンコラーゲン 1.0
(8) L−アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
(9) パラベン 0.3
(10) カルボキシビニルポリマー 0.6
(11) 共重合体 7 0.5
(12) 精製水 残 量
(13) 香料 適 量
【0088】
配合例8 美白用クリーム 質量%
(1) 流動パラフィン 5.0
(2) ワセリン 1.0
(3) メチルポリシロキサン 2.0
(4) エタノール 3.0
(5) セタノール 0.5
(6) グリセリン 6.0
(7) 1,3−ブチレングリコール 6.0
(8) ポリエチレングリコール1500 1.0
(9) 硬化油 2.0
(10) 2−エチルヘキサン酸セチル 4.0
(11) イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.0
(12) モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1.0
(13) 水酸化カリウム 0.1
(14) メタリン酸ナトリウム 0.02
(15) 塩酸アルギニン 0.1
(16) 酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
(17) 油溶性植物プロテイン 0.5
(18) ローズマリーエキス 1.0
(19) ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
(20) アルブチン 5.0
(21) フェノキシエタノール 0.3
(22) エデト酸3ナトリウム 0.05
(23) パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 1.0
(24) キサンタンガム 0.1
(25) 共重合体 9 0.5
(26) 精製水 残 量
(27) 香料 適 量
【0089】
配合例9 ヘアマニキュア 質量%
(1) ベンジルアルコール 10.0
(2) N−メチルピロリドン 15.0
(3) クエン酸 3.0
(4) 加水分解マリンコラーゲン 0.1
(5) キサンタンガム 1.0
(6) 共重合体 10 0.5
(7) 酸性染料 0.8
【0090】
配合例10 O/Wサンプロテクター 質量%
(1) ジメチルポリシロキサン 3.0
(2) コハク酸ジオクチル 3.0
(3) オクチルメトキシシンナメート 7.0
(4) カルボキシボニルポリマー 0.3
(5) PEMULEN TR-2TM(グッドリッチ社製) 0.1
(6) 共重合体 10 0.5
(7) グリセリン 10.0
(8) 硬化ヒマシ油 0.5
(9) 微粒子シリカ 0.5
(10) 防腐剤 適 量
(11) pH調整剤 適 量
(12) 香料 適 量
(13) イオン交換水 残 量
【0091】
配合例11 W/Oサンスクリーン 質量%
(1) ジメチルポリシロキサン 5.0
(2) デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
(3) ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体 4.0
(4) 1,3−ブチレングリコール 5.0
(5) オクタン酸セチル 7.0
(6) セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
(7) デキストリンパルミテート処理微粒子酸化亜鉛 10.0
(8) 微粒子酸化チタン 5.0
(9) ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0
(10) 球状ポリメチルメタクリル酸樹脂 4.0
(11) 共重合体 10 1.0
(12) 防腐剤 適 量
(13) pH調整剤 適 量
(14) 香料 適 量
(15) イオン交換水 残 量
【0092】
配合例12 ヘアクリーム 質量%
(1) ジメチルポリシロキサン 5.0
(2) イソパラフィン 7.0
(3) エタノール 5.0
(4) グリセリン 5.0
(5) ポリオキシプロピレンデカグリセリルエーテル 2.0
(6) イソステアリン酸 1.0
(7) 硬化ヒマシ油 0.5
(8) イミダゾリウムベタイン 3.0
(9) キサンタンガム 0.5
(10) 共重合体 11 0.5
(11) 防腐剤 適 量
(12) pH調整剤 適 量
(13) 香料 適 量
(14) イオン交換水 残 量
【0093】
配合例13 ヘアトリートメント 質量%
(1) ジメチルポリシロキサン 3.0
(2) アミノ変性シリコーン 0.6
(3) ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体 0.5
(4) エタノール 10.0
(5) プロピレングリコール 6.0
(6) キサンタンガム 0.1
(7) カルボキシビニルポリマー 0.3
(8) PEMULEN TR-2TM(グッドリッチ社製) 0.1
(9) 共重合体 7 0.5
(10) 防腐剤 適 量
(11) pH調整剤 適 量
(12) 香料 適 量
(13) イオン交換水 残 量
【0094】
配合例14 マスカラ 質量%
(1) 軽質イソパラフィン 7.0
(2) メチルポリシロキサン(5000mPa) 2.0
(3) デカメチルシクロペンタシロキサン 12.0
(4) 1,3−ブチレングリコール 4.0
(5) ジオレイン酸ポリエチレングリコール 1.0
(6) ジイソステアリン酸ポリグリセリル 4.0
(7) パラベン 適 量
(8) 黒酸化鉄 7.0
(9) ベントナイト 0.5
(10) ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 5.0
(11) 重質流動イソパラフィン 5.0
(12) ポリ酢酸ビニル 8.0
(13) ポリビニルアルコール 2.0
(14) 共重合体 11 1.0
(15) ナイロンファイバー 6.0
(16) トリメチルシロキシケイ酸 2.0
(17) 精製水 残 量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるモノマー(A)、下記一般式(II)で示されるモノマー(B)、下記一般式(III)で示されるモノマー(C)、及び下記一般式(VII)で示されるモノマー(D)を構成モノマーとして有する共重合体において、モノマー(A)の割合が共重合体中0.1質量%以上25.0質量%未満であり、溶液重合により製造された共重合体と、
水とを含有し、
下記数1で示される組成物中の共重合体濃度Xが、下記数2で示されるX´質量%以下であることを特徴とする組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、R、R、Rは、このうちの少なくとも1つが官能基自身もしくはその加水分解物が共重合体分子間を架橋しうる反応性官能基、このうちの反応性官能基を除く他は非反応性官能基を意味する。)
【化2】

(一般式(II)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ化アルキル基、エチレンオキシド(1〜50モル)、プロピレンオキシド(1〜50モル)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体(1〜50モル、ランダムあるいはブロック)、あるいはこれらのアルキレンオキシドの末端OH基が炭素数1〜18のアルキル基のものを意味する。)
【化3】

(一般式(III)中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Xは下記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表される基を意味する。)
【化4】

(一般式(IV)中、R10は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【化5】

(一般式(V)中、R11及びR11’は炭素数1〜6のアルキル基、xは正の整数を意味する。)
【化6】

(一般式(VI)中、R、Rは前記定義の通りである。R12は炭素数1〜6のアルキル基、xは正の整数を意味する。)
【化7】

(一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基、R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Yは−N(R15又は−N(R15で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
(数1)
X={A/(A+B)}×100
(ただし、Aは組成物中の前記共重合体の質量(g)、Bは組成物中の全溶媒の質量(g)を表す。)
(数2)
X´=750/(C×D)
(ただし、Cは組成物中に含まれる共重合体中のモノマー(A)の割合(質量%)、Dは組成物中に含まれる全溶媒中の水の割合(質量%)を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記共重合体が更に親水性モノマーを構成モノマーとして有する共重合体であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物において、溶媒が揮発性溶媒からなることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の組成物からなることを特徴とする撥水剤。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の組成物からなることを特徴とする化粧料。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載の組成物からなることを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項7】
請求項1から3の何れかに記載の組成物からなることを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項8】
請求項1から3の何れかに記載の組成物からなることを特徴とするパック化粧料。
【請求項9】
請求項1から3の何れかに記載の組成物を被処理材料に塗布後、加熱又は自然乾燥により、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする該組成物を用いた被処理材料の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−179797(P2009−179797A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14278(P2009−14278)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2003−21087(P2003−21087)の分割
【原出願日】平成15年1月29日(2003.1.29)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】