説明

取付ブラケット

【課題】 取付部材の着脱性のよい取付ブラケットを提供することを目的とする。
【解決手段】 トリムボード1の基板11上に取り付けられた取付ブラケット3は、一体に形成されており、基板11に接合された座板31、この上に立設された取付タワー32、取付タワー32と並んで上方へと延びた抜止部33、および座板31上に形成された弾性片34とを備えている。ECUケース2を取付ブラケット3に装着する場合、取付タワー32が挿入されたECUケースを下降させて、抜止部33を押圧して撓ませる。その後、ECUケース2の取付片22が、形状復帰した抜止部33と係合し、ECUケース2がトリムボード1上に固定される。ECUケース2を、取付ブラケット3から取り外す場合、抜止部33を撓ませて、取付片22との係合を解除した状態で、ECUケース2を上方に引き抜いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に取付部材を固定するための取付ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に材料シートを固定するための、ブッシュに関する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。これは、溶接により基材上にスタッドを立った状態で取り付け、合成樹脂材料によって形成されたブッシュを、スタッドの上端部から被せたものである。基材上に材料シートを載置した後、ブッシュをねじ回しにより回転させながら、スタッドに被せていき、ブッシュの上部に形成された傘状部と基材とで、材料シートを挟持することにより、基材に材料シートを固定している。このように、上述した従来技術においては、ブッシュと基材との間で取付部材である材料シートを挟持するため、材料シートを基材に対して強固に固定できる。
【特許文献1】特開平10−311318号公報(第8欄〜第9欄、第6図および第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術においては、取付部材を基材に固定する場合に、ブッシュをねじ込む必要があり、また、一旦、基材に固定した取付部材を再度取り外す場合にも、ブッシュを装着した時と反対方向に回転させながら、スタッドから取り外さなければならず、取付部材の着脱作業性の悪いものであった。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、取付部材の着脱性のよい取付ブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、基材上に取付部材を固定するための取付ブラケットにおいて、前記基材上に立設され、前記取付部材に挿入される突出部、前記突出部を前記取付部材に挿入することにより撓み、その後に形状復帰して前記取付部材と係合し、前記取付部材が前記突出部から抜け出ることを防止する抜止部、および前記取付部材が前記突出部と係合した時に、前記取付部材と当接して、前記取付部材を前記抜止部に向けて押圧する弾性部を備えたことを特徴とする取付ブラケットとした。
【0005】
請求項2の発明は、前記抜止部は前記突出部上に形成されたことを特徴とする請求項1記載の取付ブラケットとした。
【0006】
請求項3の発明は、外部に開口したキャビティを内部に含んだ成形型を、該キャビティの開口が前記基材によって閉塞されるように配置し、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を供給することにより、前記基材上に固着されて形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の取付ブラケットとした。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
基材上に立設され、取付部材に挿入される突出部、突出部を取付部材に挿入することにより撓み、その後に形状復帰して取付部材と係合し、取付部材が突出部から抜け出ることを防止する抜止部、および取付部材が突出部と係合した時に、取付部材と当接して、取付部材を抜止部に向けて押圧する弾性部を備えたことにより、突出部を取付部材に挿入するだけで、取付部材を基材上に固定できるとともに、抜止部を撓ませながら取付部材を突出部から引き抜くだけで、取付部材を取り外しできるため、取付部材の着脱性を向上させることができる。また、取付部材を押圧する弾性部を有することにより、取付部材に振動が発生しても、弾性部が振動を吸収することができる。
【0008】
<請求項2の発明>
抜止部は突出部上に形成された構成としたことにより、取付ブラケット全体を小型化できる。
【0009】
<請求項3の発明>
外部に開口したキャビティを内部に含んだ成形型を、キャビティの開口が基材によって閉塞されるように配置し、キャビティ内に溶融樹脂材料を供給することにより、基材上に固着させる直接成形法によって形成されたことにより、合成樹脂材料中に天然繊維を含んだ基材上にも、ネジ等の別物の固定部材を使用せず、取付ブラケットを設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1乃至図5によって説明する。図1に示すように、一対の取付ブラケット3は、本発明の基材に該当するトリムボード1上に、取付部品であるECUケース2を固定するためのものである。トリムボード1は、これに限定する意図はないが、ケナフ等の靭皮植物の繊維を含み、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂材料をバインダーとして形成された基板11と、その表面に貼着された表皮12とを備えている。トリムボード1は、基板11側において、図示しない車両ドアのインナパネルに取り付けられる内装材である。
【0011】
ECUケース2は、金属あるいは合成樹脂によって一体に形成されており、内部に空間を有した直方体状のケース本体21と、その一対の側面に形成された取付片22とを備えている。ケース本体21の内部には、コンピュータ基板(図示せず)が収容されている。取付片22は平板状に形成され、それぞれECUケース21の側面から水平方向に突出しており、その中央部には取付孔22aが上下方向に貫通している。取付片22の周縁部には、互いに対向するように一対の補強リブ23が、取付片22とECUケース21とを連結するように形成されている。
【0012】
図2に示すように、取付ブラケット3は、熱可塑性樹脂材料にて一体に形成されており、トリムボード1の基板11に接合された平板状の座板31、この上に立設された取付タワー32(本発明の突出部に該当する)、座板31上に取付タワー32と並んで上方へと延びた抜止部33、および同様に座板31上に形成された弾性片34(本発明の弾性部に該当する)とを備えている。取付タワー32は、内部に軽量化のための貫通孔32aが上下方向に形成されて、略円筒形状を呈し、ECUケース2の取付孔22aに挿入し易いように、上端がテーパ状とされている。
【0013】
抜止部33は、上端部が取付タワー32から離れる方向(図2において左方)に撓み可能な板状に形成され、取付タワー32側には、ECUケース2の取付片22を導いて撓みやすいように、その上半分に傾斜面33aが設けられている。傾斜面33aの下端部は、取付タワー32が挿入された取付片22の端部と係合するように、フック部33bが形成されている。弾性片34は、座板31上に取付タワー32を挟んで抜止部33の反対側に設けられ、斜め上方へと板状に延びて、上下方向に撓み可能とされている。
【0014】
上述した取付ブラケット3は、外部に開口したキャビティを内部に含んだ成形型(図示せず)を、キャビティの開口がトリムボード1によって閉塞されるように配置し、キャビティ内に溶融樹脂材料を供給して、これをトリムボード1の基板11内に含まれる樹脂材料と混融させる、および/または靭皮植物の繊維間に入り込ませた後に固化させることにより、樹脂材料からなる部品を基板11上に接合する、いわゆる直接成形法によって、トリムボード1上に固着して形成することができる。
【0015】
次に、図2乃至図5に基づいて、ECUケース2の取付ブラケット3への着脱方法について説明する。ECUケース2の一対の取付孔22aを、それぞれ上方から取付タワー32に対向させ(図2示)、取付タワー32を取付孔22aに下方より挿入していく。取付タワー32に沿って下降していく取付片22は、抜止部33の傾斜面33aを押圧して外側(取付タワー32から離れる方向)へ撓ませていく(図3示)。抜止部33の傾斜面33aを乗り越えた取付片22は、形状復帰した抜止部33のフック部33bと係合することにより、取付片22の上方への抜け止めが行われ、ECUケース2のトリムボード1上への固定が完了する。
【0016】
この時、弾性片34は、下降したECUケース2の底面と当接して、これにより下方へと押圧され、これにより発生する弾性力によって、ECUケース2を抜止部33へ向けて上方へ付勢するため、ECUケース2は抜止部33と弾性片34との間で挟持され、トリムボード1上に強固に固定される(図4示)。また、弾性片34の付勢力により、ECUケース2はトリムボード1上に固定された状態で、トリムボード1との間に所定の隙間が形成されるため、振動等によりECUケース2がトリムボード1の表面と干渉することが無く、異音等を発生させることがない。
【0017】
取付ブラケット3に装着されたECUケース2を、再度、取付ブラケット3から取り外す場合、作業者が手あるいは治具等により、抜止部33を外方に撓ませて、フック部33bの取付片22との係合を解除する。この状態で、ECUケース2を上方に引き抜けば、容易に取付ブラケット3から取り外すことができる(図5示)。
【0018】
本実施形態によれば、トリムボード1上に立設され、ECUケース2に挿入される取付タワー32、取付タワー32をECUケース2に挿入することにより撓み、その後に形状復帰してECUケース2と係合し、ECUケース2が取付タワー32から抜け出ることを防止する抜止部33、およびECUケース2が取付タワー32と係合した時に、ECUケース2と当接して、ECUケース2を抜止部33に向けて押圧する弾性片34を備えたことにより、取付タワー32をECUケース2に挿入するだけで、ECUケース2をトリムボード1上に固定できるとともに、抜止部33を撓ませながらECUケース2を取付タワー32から引き抜くだけで、ECUケース2を取り外しできるため、ECUケース2の着脱性を向上させることができる。また、ECUケース2を押圧する弾性片34を有することにより、ECUケース2またはトリムボード1側に振動が発生しても、弾性片34が振動を吸収することができる。
【0019】
また、外部に開口したキャビティを内部に含んだ成形型を、キャビティの開口がトリムボード1によって閉塞されるように配置し、キャビティ内に溶融樹脂材料を供給することにより、樹脂材料からなる部品がトリムボード1上に固着される直接成形法により形成されたことにより、合成樹脂材料中に天然繊維を含んだトリムボード1上にも、形成可能な取付ブラケット3にすることができる。
【0020】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図6によって説明する。取付ブラケット4は、実施形態1による取付ブラケット3と同様に、トリムボード1の基板11に接合された座板41、この上に立設された取付タワー42、座板41上に取付タワー42と並んで上方へと延びた抜止部43、および同様に座板41上に形成された弾性片44とを備えている。本実施形態における取付ブラケット4の取付タワー42は、その軸方向に垂直な断面形状が十字形をしており、取付ブラケット3のように貫通孔32aを有しないため、型抜きが容易となり、その成形型の型構造を簡素にできる。
【0021】
<実施形態3>
図7および図8は本発明の実施形態3を示す。取付ブラケット5は、実施形態1による取付ブラケット3と同様に、トリムボード1の基板11に接合された座板51、この上に立設された取付タワー52、および同様に座板51上に形成された弾性片54とを備えている。本実施形態における取付ブラケット5の抜止部53は、取付タワー52の外周面にフック状に形成されており、取付タワー52の外周面から突出するとともに、ECUケース2の取付孔22aが通過し易いように、その上部が斜面53aとされている。取付タワー52の抜止部53の下方には、スリット52bが形成されており、貫通孔52aと連通している。これにより、抜止部53を含んだ取付タワー52の外周面は、その半径方向に撓み可能となっている(図7示)。
【0022】
ECUケース2を取付ブラケット5に装着する場合も、取付ブラケット3に装着する時と同様に、ECUケース2の取付孔22aに、取付タワー52を下方より挿入した後、ECUケース2を下降させる。これによって、取付片22が斜面53aを押圧して、取付タワー52の外周面を内方へ撓ませた後、形状復帰した抜止部53と係合する。これにより、ECUケース2は抜止部53と弾性片54との間で挟持され、トリムボード1上に強固に固定される(図8示)。また、ECUケース2を、再度、取付ブラケット5から取り外す場合は、作業者が手あるいは治具等により、抜止部53を取付タワー52の内方に撓ませて、その取付片22との係合を解除し、この状態で、ECUケース2を上方に引き抜いて行われる。本実施形態によれば、抜止部53が取付タワー52上に形成されたことにより、座板51をコンパクト化でき、取付ブラケット5全体をも小型化できる。
【0023】
<実施形態4>
図9および図10は本発明の実施形態4を示す。取付ブラケット6は、実施形態3による取付ブラケット5と同様に、トリムボード1の基板11に接合された座板61、この上に立設された取付タワー62、および取付タワー62上の外周面から突出した抜止部63を備えている。本実施形態における取付ブラケット6の座板61上には、一対の弾性片64が形成されている(図9示)。一対の弾性片64は、取付ブラケット3の弾性片34と同形状に形成され、互いに反対方向に延びており、ECUケース2をトリムボード1上に固定した状態で、ともにECUケース2の底面を抜止部63に向けて、上方に付勢している(図10示)。本実施形態においては、一対の弾性片64の板厚、大きさ等を互いに異ならせて、各々のバネ定数を違った値に設定することにより、振動等でECUケース2に共振が発生することを防ぐことができる。
【0024】
<実施形態5>
図11は本発明の実施形態5を示す。トリムボード1の基板11上には、実施形態1による一対の取付ブラケット3が、互いに対向するように取り付けられている。更に、基板11上には、取付ブラケット3とは異なった一対の補助ブラケット7が、互いに対向するように取り付けられている。補助ブラケット7は、取付ブラケット3と同様に、座板71の上に、取付タワー72と抜止部73を備えているが、弾性片は具備していない。一方、ECUケース2Aは、その4方向の側面にそれぞれ取付孔22aを有した取付片22を備えており、これらが各々取付ブラケット3あるいは補助ブラケット7に装着される。本実施形態によれば、ECUケース2Aが、取付ブラケット3の弾性片34から付勢されて、4方向にある抜止部33、73により保持されるため、安定してトリムボード1上に固定される。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)トリムボードが、天然繊維を含まず、合成樹脂材料のみによって形成される場合、取付ブラケットをトリムボードとともに一体成形によって形成してもよい。また、トリムボードと別体で形成した取付ブラケットを、接着剤等によってトリムボード上に接合してもよい。
(2)本発明の取付ブラケットを設けることができる基材としては、トリムボードのみでなく、車両あるいは住宅用のあらゆる内装材が適用可能である。
(3)本発明の取付ブラケットによって固定する取付部材としては、ECUケースのみでなく、車両あるいは住宅用のあらゆる内装部品が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1による取付ブラケットにより、トリムボード上にECUケースを取り付けるところを示した分解斜視図である。
【図2】図1に示した取付ブラケットに、ECUケースを取り付ける前の状態を示した断面図である。
【図3】図1に示した取付ブラケットに、ECUケースを取り付けているところを示した断面図である。
【図4】図1に示した取付ブラケットによって、ECUケースを固定したところを示した断面図である。
【図5】図1に示した取付ブラケットから、ECUケースを取り外すところを示した断面図である。
【図6】実施形態2による取付ブラケットを、トリムボード上に取り付けたところを示した斜視図である。
【図7】実施形態3による取付ブラケットを、トリムボード上に取り付けたところを示した斜視図である。
【図8】図7に示した取付ブラケットによって、ECUケースを固定したところを示した断面図である。
【図9】実施形態4による取付ブラケットを、トリムボード上に取り付けたところを示した斜視図である。
【図10】図9に示した取付ブラケットによって、ECUケースを固定したところを示した断面図である。
【図11】実施形態5による取付ブラケットにより、トリムボード上にECUケースを取り付けるところを示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…トリムボード
2、2A…ECUケース
3、4、5、6…取付ブラケット
22a…取付孔
32、42、52、62…取付タワー
33、43、53、63…抜止部
34、44、54、64…弾性片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に取付部材を固定するための取付ブラケットにおいて、
前記基材上に立設され、前記取付部材に挿入される突出部、
前記突出部を前記取付部材に挿入することにより撓み、その後に形状復帰して前記取付部材と係合し、前記取付部材が前記突出部から抜け出ることを防止する抜止部、および
前記取付部材が前記突出部と係合した時に、前記取付部材と当接して、前記取付部材を前記抜止部に向けて押圧する弾性部を備えたことを特徴とする取付ブラケット。
【請求項2】
前記抜止部は前記突出部上に形成されたことを特徴とする請求項1記載の取付ブラケット。
【請求項3】
外部に開口したキャビティを内部に含んだ成形型を、該キャビティの開口が前記基材によって閉塞されるように配置し、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を供給することにより、前記基材上に固着されて形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の取付ブラケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−56908(P2007−56908A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240170(P2005−240170)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】