説明

可変容量型過給機の制御装置

【課題】負圧を利用して容量が可変とされる過給機に対し、内燃機関始動時の性能向上を図ることが可能な可変容量型過給機の制御装置を提供する。
【解決手段】バキュームポンプ92からの負圧供給により作動する負圧アクチュエータ95により容量可変とされたターボチャージャ5を、アイドリングストップ制御を行う自動車に搭載する。バキュームポンプ92と負圧アクチュエータ95との間に開閉可能な負圧遮断弁94を設ける。アイドリングストップ条件が成立してエンジン1が停止する際、負圧遮断弁94を閉鎖し、負圧アクチュエータ95内の負圧を維持し、可変ノズルベーン機構51の作動状態を維持する。エンジン始動条件が成立してエンジン1が始動する際、負圧遮断弁94を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内燃機関等に適用される可変容量型過給機の制御装置に係る。特に、本発明は、負圧を利用して容量が可変とされる過給機に対する制御動作の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用エンジン等に適用されるターボチャージャ(過給機)の一種として、例えば下記の特許文献1〜特許文献3に開示されているように、タービン側を可変容量化した可変容量型ターボチャージャが知られている。この種のターボチャージャは、タービンハウジングの排気ガス流路に、この排気ガス流路の流路面積を可変とするノズルベーン(可動ベーンとも呼ばれる)が配設されている。
【0003】
具体的には、タービンホイールの軸線を中心としてこのタービンホイールの外周側に、複数のノズルベーンが周方向に亘って等間隔に配設され、これらノズルベーンが、互いに同期して回動(開閉動作)するようになっている。そして、これらノズルベーンの開度を変更して、互いに隣り合うノズルベーン間の流路面積(スロート面積)を変化させることにより、タービンホイールに向けて導入される排気ガスの流速を調整する。例えば、エンジンの低回転時にノズルベーンを回動させて上記流路面積を減少させることで、排気ガスの流速を増加させ、これにより、エンジン低速域から高い過給圧を得ることが可能になる。
【0004】
また、上記ノズルベーンの開度を変更するための構成として特許文献2及び特許文献3には負圧を利用したものが開示されている。具体的には、ノズルベーンの開度を調整するための可変ノズルベーン機構に連結されたロッドを、ダイアフラムを備えた負圧アクチュエータに接続しておくと共に、この負圧アクチュエータの負圧室に負圧通路を介してバキュームポンプを接続する。また、上記負圧通路にVRV(バキューム・レギュレーティング・バルブ)を備えさせ、このVRVの開度を制御することによって負圧アクチュエータに作用する負圧を調整し、これによって上記ロッドを進退移動させてノズルベーンの開度を調整する構成としたものである。
【0005】
特に、特許文献2には、エンジンの駆動力を受けて作動するバキュームポンプ(機械式負圧ポンプ)からの負圧を負圧アクチュエータに作用させた場合に、ロッドが後退移動してノズルベーンの開度を小さくすることが開示されている。この特許文献2に開示されているものでは、例えば、負圧系統の故障などによって負圧アクチュエータへの負圧の導入が不能になった場合にはノズルベーンの開度を大きくすることになるため、ターボチャージャの破損等を回避するといったフェールセーフの面で優れたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−90242号公報
【特許文献2】特開2004−211649号公報
【特許文献3】特開2007−285222号公報
【特許文献4】特開2008−69838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動車が市街地等を走行する際に交差点の信号待ち等で停車すると、エンジンがアイドリング運転状態となり、その間、燃料を浪費してしまう。この点に鑑み、従来より、自動車が停車するなど一定の条件が成立した場合には、燃焼室への燃料供給を停止(所謂フューエルカット)してエンジンを停止させる所謂「アイドリングストップ制御」が行われている(例えば特許文献4を参照)。
【0008】
また、この「アイドリングストップ制御」によってエンジンが停止している状態(以下、この状態をアイドリングストップ状態と呼ぶ)から所定のエンジン始動条件(例えばオートマチックトランスミッション車にあってはブレーキペダルの踏み込み解除操作等)が成立した場合には、スタータ機構を駆動し、その駆動力をエンジンに伝達(所謂クランキング)してエンジンを再始動させ、車両の発進を可能にしている。
【0009】
このような「アイドリングストップ制御」を行う車両に対して、上述したバキュームポンプからの負圧を利用してノズルベーンの開度を調整する機構、特に、特許文献2に開示されているようにバキュームポンプからの負圧を負圧アクチュエータに作用させた場合にノズルベーンの開度を小さくする機構を適用した場合、以下に述べるような不具合を招く可能性がある。
【0010】
つまり、アイドリングストップ状態になると、エンジンの駆動力によって作動していたバキュームポンプも停止され、これに伴って負圧アクチュエータへの負圧の導入も停止されることになる。その結果、ノズルベーンの開度が大きくなる。その後、エンジン始動条件が成立してエンジンが始動したとしても、上記バキュームポンプからの負圧が所定値に達するまでにはある程度の時間を要し、その間、ノズルベーンの開度は大きい状態のまま維持される。つまり、ノズルベーンの開度が大きいために、タービンホイールに吹き付けられる排気の流速が十分に高くならず、過給効果を殆ど得ることができない状態が継続する。このような状況では、エンジン始動直後における車両の加速性能を十分に得ることができなくなり、運転者に違和感を与えてしまうことになる。
【0011】
このような状況は、「アイドリングストップ制御」を行わない車両のエンジン始動時(イグニッションON時)においても同様に招くことになるが、特に、上述した「アイドリングストップ制御」を行う車両にあっては、エンジン始動条件(例えば上述した如くオートマチックトランスミッション車にあってはブレーキペダルの踏み込み解除操作等)が成立した直後には運転者の加速要求が生じる可能性が高いため、上記不具合による違和感は顕著となってしまう。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、負圧を利用して容量が可変とされる過給機に対し、内燃機関始動時の性能向上を図ることが可能な可変容量型過給機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、負圧導入により過給機の容量が調整されている状態で内燃機関が停止する際、この負圧の導入経路を大気から遮断することで、この負圧の導入状態を維持する。そして、内燃機関の次回の始動時には過給機の容量が上記負圧が導入された状態に設定されるようにしている。
【0014】
−解決手段−
具体的に、本発明は、内燃機関の駆動に伴って発生する負圧を利用して可変容量型過給機の可変容量機構を制御する可変容量型過給機の制御装置を前提とする。この可変容量型過給機の制御装置に対し、上記内燃機関の駆動力を受けて負圧を発生する負圧ポンプと、上記負圧が供給されることに伴って上記可変容量機構を駆動する負圧アクチュエータと、上記負圧ポンプと上記負圧アクチュエータとの間に配設された負圧遮断弁とを備えさせる。そして、少なくとも上記内燃機関の停止から始動までの期間中、上記負圧遮断弁を閉鎖状態に保持する構成としている。
【0015】
この特定事項により、負圧ポンプで発生している負圧を負圧アクチュエータに供給して可変容量機構を駆動している状態から内燃機関が停止する際、負圧遮断弁を閉鎖状態にする。これにより負圧アクチュエータに負圧が作用している状態が維持され、可変容量機構の駆動状態も維持されることになる。その後、内燃機関が始動する場合には、この維持された可変容量機構の駆動状態のまま内燃機関が始動することになるため、負圧アクチュエータに負圧が作用するタイミングが遅れることに伴う内燃機関の性能低下を回避することが可能になる。
【0016】
上記可変容量機構の構成として具体的には、過給機内部の排気ガス流路の流路面積を可変とする複数のノズルベーンを開閉駆動するものであり、また、上記負圧アクチュエータは、上記負圧ポンプで発生した負圧が供給されることによりノズルベーンを駆動して上記排気ガス流路の流路面積を小さくする構成となっている。
【0017】
この構成の場合、負圧アクチュエータに負圧が供給されない状態では排気ガス流路の流路面積が大きくなる。つまり、タービンホイールへ向かう排気ガスの流速が低くなる状態となる。このような過給機に対し、内燃機関の停止時に負圧遮断弁を閉鎖状態にすることで、排気ガス流路の流路面積を小さくした状態が維持され、内燃機関が始動する際におけるタービンホイールへの排気ガスの流速を高くできて、内燃機関始動後の性能を高く得ることが可能である。
【0018】
また、上記可変容量型過給機が適用される内燃機関としては、内燃機関自動停止条件が成立した際に駆動が停止され、且つ内燃機関自動始動条件が成立した際に始動されるものが挙げられる。そして、上記内燃機関自動停止条件の成立から上記内燃機関自動始動条件の成立までの期間中、上記負圧遮断弁を閉鎖状態に保持する構成としている。
【0019】
この場合、上記内燃機関自動始動条件としては、運転者のブレーキペダルの踏み込み解除操作またはアクセルペダルの踏み込み操作を含む。
【0020】
このような内燃機関の自動停止(アイドリングストップ制御)を行う車両にあっては、エンジン始動条件(例えばブレーキペダルの踏み込み解除操作)が成立した直後には運転者の加速要求が生じる可能性が高いものである。このような車両に対して本発明を適用することで、内燃機関の始動直後の運転者の加速要求を満たすことが可能となる。
【0021】
また、上記負圧ポンプと負圧遮断弁との間の負圧通路に負圧検出手段を設け、上記内燃機関の始動時、上記負圧検出手段によって検出される上記負圧通路内の負圧値が上記可変容量機構の駆動を可能にする値に達した後に上記負圧遮断弁を開放させるようにした構成も挙げられる。
【0022】
この構成によれば、負圧遮断弁を開放する際には負圧通路内に十分な負圧が発生しているため、この負圧遮断弁の切り換えに伴う負圧段差(負圧の急激な変化)を防止することができ、車両の乗員に違和感を与えることが回避される。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、負圧導入により過給機の容量が調整されている状態で内燃機関が停止する際、この負圧の導入経路を大気から遮断することで、この負圧の導入状態を維持し、内燃機関の次回の始動時には過給機の容量が上記負圧が導入された状態に設定されるようにしている。このため、内燃機関の始動時に、負圧アクチュエータに負圧が作用するタイミングが遅れることに伴う内燃機関の性能低下を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係るエンジン及びその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】可変ノズルベーン機構をターボチャージャの外側から見た図である。
【図3】可変ノズルベーン機構をターボチャージャの内側から見た図である。
【図4】エンジンECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態におけるエンジン停止・始動制御の動作手順を示すフローチャート図である。
【図6】第2実施形態に係るエンジンのターボチャージャ及び容量可変システムの概略構成を示す図である。
【図7】第2実施形態におけるエンジン停止・始動制御の動作手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、アイドリングストップ制御を行う自動車に対して本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態に係る自動車は、コモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)を搭載したものである。
【0026】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。
【0027】
−エンジンの構成−
図1は本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)1及びその吸排気系の概略構成図である。
【0028】
この図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、基本的には、吸気系から供給される空気と燃料供給系から供給される燃料とを適宜の空燃比で混合して成る混合気を燃焼室2で燃焼させた後、その排気ガスを、排気系を経て大気に放出するようになっている。
【0029】
上記吸気系は、シリンダヘッドに形成された吸気ポート3に接続されるインテークマニホールド21に吸気管22を接続して形成される吸気通路を備え、この吸気通路に、その空気流通方向上流側から順にエアクリーナ23、スロットルバルブ(吸気絞り弁)24を配置した構成となっている。
【0030】
上記燃料供給系は、燃料供給路31に、その燃料供給方向上流側から順に燃料タンク32、サプライポンプ33、コモンレール34、複数の燃料噴射弁(インジェクタ)35,35,…を配置した構成となっている。サプライポンプ33は、エンジン1の図示しないクランクシャフトによって駆動されるもので、燃料タンク32から燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を、燃料供給路31を介してコモンレール34に供給する。コモンレール34は、サプライポンプ33から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁35,35,…に分配する。燃料噴射弁35は、所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室2内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。また、圧電素子(ピエゾ素子)を備えたピエゾ式の燃料噴射弁を適用することもできる。
【0031】
上記排気系は、シリンダヘッドに形成された排気ポート4に接続されるエキゾーストマニホールド41に排気管42を接続して形成される排気通路を有している。
【0032】
また、本実施形態におけるエンジン1には、ターボチャージャ(過給機)5、インタークーラ6、排気再循環装置としてのEGR装置7、触媒装置8が装備されている。
【0033】
ターボチャージャ5は、一般的に公知のように排気ガス圧力を利用して吸入空気を昇圧過給するものであり、主としてコンプレッサハウジング内に収容されたコンプレッサインペラ5aと、タービンハウジング内に収容されたタービンホイール5bとを備えている。コンプレッサインペラ5aは、吸気管22の途中に配置されており、タービンホイール5bは、エキゾーストマニホールド41の集合部と排気管42との間に配置されている。また、本実施形態に係るエンジン1に搭載されているターボチャージャ5は、可変ノズル式(可変容量型)ターボチャージャであって、タービンホイール5b側に可変ノズルベーン機構(可変容量機構)51が設けられており、この可変ノズルベーン機構51に備えられたノズルベーンの開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができるようになっている。この可変ノズルベーン機構51、及び、この可変ノズルベーン機構51を駆動するための容量可変システム9の具体構成については後述する。
【0034】
インタークーラ6は、ターボチャージャ5で昇圧過給した吸入空気を強制的に冷却するものであり、ターボチャージャ5のコンプレッサインペラ5aとスロットルバルブ24との間に配置されている。スロットルバルブ24は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁であり、所定条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
【0035】
EGR装置7は、排気の一部(EGRガス)を吸気系に戻して燃焼室2へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものであり、EGR通路7aに、その上流からEGRクーラ7b、EGRバルブ7cを配置した構成である。
【0036】
上記EGRクーラ7bは、例えばEGR通路7aを通過する排気ガスとエンジン1の冷却水との間で熱交換を行うことにより排気ガスの温度を下げる熱交換器からなる。EGRバルブ7cは、EGR通路7a内を排気系側から吸気系側へ還流される排気ガスの還流量を制御するものである。
【0037】
触媒装置8は、上記ターボチャージャ5より下流側の排気管42に配設されており、酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとを備えた構成とされている。酸化触媒8aは、排気通路において、パティキュレートフィルタ8bよりも上流側に設けられている。
【0038】
パティキュレートフィルタ8bは、例えば一般的に公知のDPFやDPRと呼ばれるものが採用されている。
【0039】
なお、DPFは、多孔質部材を設けた構成とされている。また、DPRは、例えば多孔質セラミックからなるハニカム構造体に酸化触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とするもの)を担持させた構成であり、原理的には、排気ガス中の有害物質を酸化触媒で酸化させ、二酸化炭素と水蒸気に変換し、さらにPM(粒子状物質)をハニカム構造体の多孔質セラミック基材の微細孔に捕集する。
【0040】
−可変ノズルベーン機構51の構成−
次に、上記ターボチャージャ(可変容量型ターボチャージャ)5に備えられた可変ノズルベーン機構51の構成について図2及び図3を用いて説明する。以下で説明する可変ノズルベーン機構51はノズルベーン56,56,…を回動させるための機構の一例であり、後述する構成以外の機構によってノズルベーン56,56,…を回動させるものであってもよい。また、ターボチャージャ5全体の構成(例えばタービンハウジングやタービンホイール5bやコンプレッサインペラ5aの構成)については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0041】
図2は、可変ノズルベーン機構51をターボチャージャ5の外側から見た正面図(可変ノズルベーン機構51をコンプレッサ側から見た図)である。尚、この図2では、可変ノズルベーン機構51の構成の理解を容易にするためにタービンハウジングを省略している。また、図3は、可変ノズルベーン機構51をターボチャージャ5の内側(タービンホイール5bの収容空間(タービンハウジング内)側)から見た図である。
【0042】
上記可変ノズルベーン機構51は、ユニゾンリング52(図2参照)と、このユニゾンリング52の内周側に位置し、ユニゾンリング52に一部が係合する複数のアーム53,53,…と、ユニゾンリング52に対してターボチャージャ軸心方向で対向するように配設されたノズルプレート(NVプレート)54(図3参照)と、上記複数本のアーム53,53,…を駆動させるためのメインアーム55と、上記アーム53に接続されてノズルベーン56を駆動するベーンシャフト57とを備えている。このベーンシャフト57は上記ノズルプレート54に回転自在に支持されて、各アーム53と各ノズルベーン56とをそれぞれ回動一体に連結している。
【0043】
また、図示しないハウジングプレートと上記ノズルプレート54とが対向配置されて、この両者間で上記ノズルベーン56の配設空間を形成している。つまり、これらノズルプレート54とハウジングプレートとの間で排気ガスの流路が形成され、この流路内にノズルベーン56が配設された構成となっている。
【0044】
この可変ノズルベーン機構51は、タービンホイール5bの外周側に等間隔に配設された上記複数(例えば12枚)のノズルベーン56,56,…の回動角度(回動姿勢)を調整するための機構であり、上記メインアーム55に接続されている駆動リンク55aを所定の角度だけ回動させることにより、その回動力が、後述する駆動シャフト55b、メインアーム55、ユニゾンリング52、アーム53,53,…、ベーンシャフト57,57,…を介してノズルベーン56,56,…に伝わり、各ノズルベーン56,56,…が連動して回動する構成とされている。
【0045】
具体的には、上記駆動リンク55aは駆動シャフト55bを中心に回動可能となっている。この駆動シャフト55bは、駆動リンク55aおよびメインアーム55と回動一体に連結されている。このため、駆動リンク55aの回動に伴って駆動シャフト55bが回動すれば、この回動力がメインアーム55に伝えられる。メインアーム55の内周側端部は駆動シャフト55bに固定され、外周側端部はユニゾンリング52に係合している。このため、駆動シャフト55bを中心としてメインアーム55が回動すると、この回動力がユニゾンリング52に伝えられる。ユニゾンリング52の内周面には各アーム53,53,…の外周側端部が嵌まり合っており、ユニゾンリング52が回動すると、この回動力はアーム53,53,…に伝えられる。具体的に、ユニゾンリング52はノズルプレート54に対して摺動可能に配設されており、その内周縁に設けられた複数の凹部52a,52a,…それぞれには、上記メインアーム55およびアーム53,53,…の外周側端部が嵌め合わされている。各アーム53,53,…はベーンシャフト57を中心として回動することが可能であり、アーム53の回動はベーンシャフト57に伝えられる。ベーンシャフト57はノズルベーン56と連結されているため、このノズルベーン56はベーンシャフト57およびアーム53とともに回動することになる。
【0046】
上記タービンホイール5bを収容しているタービンハウジングには図示しないタービンハウジング渦室が設けられており、このタービンハウジング渦室に排気ガスが供給されて、この排気ガスの流れがタービンホイール5bを回転させる。この際、上述したように各ノズルベーン56,56,…の回動位置が調整されて、その回動角度を設定することにより、タービンハウジング渦室からタービンホイール5bへ向かう排気ガスの流量および流速を調整することが可能となっている。これにより、過給性能を調整することが可能になり、例えば、エンジン1の低回転時にノズルベーン56,56,…同士の間の流路面積(スロート面積)を減少させるように各ノズルベーン56,56,…の回動位置を調整すれば、排気ガスの流速が増加して、エンジン低速域から高い過給圧を得ることが可能になる。
【0047】
−容量可変システム9の構成−
次に、上記可変ノズルベーン機構51を駆動するための駆動源となる容量可変システム9(図1を参照)の構成について説明する。
【0048】
この容量可変システム9は、図1に示すように、負圧配管91を備えており、この負圧配管91上に、バキュームポンプ(負圧ポンプ)92、エレクトリック・バキューム・レギュレーティング・バルブ(以下、VRVと呼ぶ)93、本実施形態の特徴とする手段である負圧遮断弁94、負圧アクチュエータ95が配設された構成となっている。
【0049】
上記バキュームポンプ92は、エンジン1のクランクシャフトに駆動連結された機械式負圧ポンプで成っており、このクランクシャフトからの回転駆動力を受けて作動することにより負圧を発生するものである。例えば、このバキュームポンプ92の駆動軸には、エンジン1の補機ベルトが巻き掛けられたプーリが取り付けられており、クランクシャフトの駆動力が補機ベルトを介してプーリに伝達されることによりバキュームポンプ92が駆動して負圧を発生するようになっている。つまり、このバキュームポンプ92は、エンジン1の駆動と共に駆動し、エンジン1の停止と共に停止するものである。このため、このバキュームポンプ92は、エンジン1の停止時には負圧の発生も停止することになる。
【0050】
上記VRV93は、上記バキュームポンプ92で発生した負圧の負圧アクチュエータ95への供給(導入)を調整するものである。具体的に、このVRV93は、大気側に開口された大気導入口(図示省略)を備えており、このVRV93よりも負圧アクチュエータ95側に位置する負圧通路91aと大気導入口とを連通する状態と、VRV93よりもバキュームポンプ92側に位置する負圧通路91bと負圧アクチュエータ95側の負圧通路91aとを連通する状態とが切り換え可能となっている。具体的に、このVRV93は、電磁ソレノイドを備えており、電磁ソレノイドが非励磁状態にあるときは、VRV93よりも負圧アクチュエータ95側に位置する負圧通路91aと大気導入口とを連通する状態とする。一方、電磁ソレノイドが励磁状態にあるときは、VRV93よりもバキュームポンプ92側に位置する負圧通路91bと負圧アクチュエータ95側の負圧通路91aとを連通する状態とする。
【0051】
上記負圧遮断弁94は、開閉自在な電磁弁で構成されており、必要に応じて閉鎖することで、上記VRV93と負圧アクチュエータ95との間の負圧通路91aを遮断し、この負圧遮断弁94から負圧アクチュエータ95に亘る空間91cを密閉空間とするものである。
【0052】
上記負圧アクチュエータ95は、その内部がダイアフラム95aによって負圧室95bと大気室95cとに区画されている。負圧室95bは、上記負圧遮断弁94を介して負圧通路91aに連通しており(負圧遮断弁94の開放時)、また、この負圧室95bには、コイルスプリング95dが内装され、上記ダイアフラム95aに対して付勢力を与えている。また、ダイアフラム95aには、このダイアフラム95aの変形に伴って進退自在なロッド96が取り付けられている。
【0053】
このような構成であるため、容量可変システム9は、上記負圧遮断弁94が開放状態にある場合において、VRV93の電磁ソレノイドが非励磁状態にあるときは、負圧通路91aと大気導入口とが導通状態となり、負圧アクチュエータ95の負圧室95b内が大気圧となる。この場合、負圧アクチュエータ95のロッド96は、コイルスプリング95dの付勢力によって最も進出した状態に保持される。
【0054】
一方、上記負圧遮断弁94が開放状態にある場合において、VRV93の電磁ソレノイドが励磁状態にあるときは、負圧通路91a,91b同士が導通状態となり、負圧アクチュエータ95の負圧室95b内が負圧となる。この場合、負圧アクチュエータ95のロッド96は、コイルスプリング95dの付勢力に抗して変位し、それに伴ってロッド96が最も退行した状態に保持される。
【0055】
また、VRV93の電磁ソレノイドの励磁と非励磁とをデューティ制御することにより上記ロッド96の進退量を調整することも可能となっている。
【0056】
このような負圧アクチュエータ95のロッド96の進退動作により、上記可変ノズルベーン機構51が駆動し、上記各ノズルベーン56,56,…の開度が調整される。
【0057】
例えば、負圧室95b内が負圧となって上記ロッド96が図2中の矢印X方向に引かれた場合には、ユニゾンリング52が図中矢印X1方向に回動し、図3に仮想線で示すように、各ノズルベーン56,56,…が図中反時計回り方向に回動することでノズルベーン開度が小さく設定される。
【0058】
一方、負圧室95b内が大気圧となって上記ロッド96が図2中の矢印Y方向に押された場合には、ユニゾンリング52が図中矢印Y1方向に回動し、図3に実線で示すように、各ノズルベーン56,56,…が図中時計回り方向に回動することでノズルベーン開度が大きく設定される。
【0059】
このようにしてノズルベーン開度が調整されることにより、各ノズルベーン56,56,…同士の間の間隙を変更することが可能となる。即ち、各ノズルベーン56,56,…の回動方向と回動量とを制御することにより、タービンホイール5bに吹き付けられる排気ガスの流速が調節されることになる。具体的には、例えば、エンジン1からの排気ガスの量が少ない場合は、各ノズルベーン56,56,…同士の間の間隙を狭めるように可変ノズルベーン機構51を動作させ、タービンホイール5bに吹き付けられる排気ガスの流速を高めると共に、排気ガスとタービンインペラとの衝突角度がより垂直に近づくため、少ない排気量でもタービンホイール5bの回転速度及び回転力を高めることが可能となる。一方、エンジン1からの排気ガスの量が十分に多い場合は、各ノズルベーン56,56,…同士の間の間隙を広げるように可変ノズルベーン機構51を動作させ、タービンホイール5bに吹き付けられる排気ガスの流速の過剰な上昇が制御され、タービンホイール5bの回転速度及び回転力の過剰な上昇を抑制することが可能となる。
【0060】
尚、上記ノズルプレート54にはピン54a(図2参照)が差し込まれ、このピン54aにはローラ54bが嵌め合わされている。このローラ54bはユニゾンリング52の内周面をガイドする。これにより、ユニゾンリング52はローラ54bに保持されて所定方向に回動することが可能となっている。
【0061】
−制御系−
以上の如く構成されたエンジン1及び容量可変システム9の各種動作は、エンジンECU10により制御される。このエンジンECU10は、一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされ、例えば図4に示すように、CPU101、ROM102、RAM103ならびにバックアップRAM104等から構成されている。
【0062】
なお、ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM102、CPU101、RAM103ならびにバックアップRAM104は、双方向性バス107によって相互に接続されるとともに、入力インターフェース105や出力インターフェース106と接続されている。
【0063】
入力インターフェース105には、図4に示すように、水温センサ71、エアフローメータ72、吸気温センサ73、吸気圧センサ74、A/F(空燃比)センサ75、O2(酸素)センサ76、排気温度センサ77、レール圧センサ78、スロットル開度センサ79、アクセル開度センサ80、クランクポジションセンサ81、排気圧力センサ82、車速センサ83、シフトレバー位置センサ84、ブレーキペダルセンサ85等が接続されている。
【0064】
水温センサ71は、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する。エアフローメータ72は、吸気系のスロットルバルブ24よりも上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ73は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ74は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/Fセンサ75は、排気系の触媒装置8の上流側において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。O2センサ76は、排気系の触媒装置8の下流において排気中の酸素濃度に応じた検出信号を出力する。
【0065】
排気温度センサ77は、触媒装置8において酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとの間に設けられており、酸化触媒8aの出口温度あるいはパティキュレートフィルタ8bの入口温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ78は、コモンレール34内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ79は、スロットルバルブ24の開度を検出する。アクセル開度センサ80は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力する。クランクポジションセンサ81は、エンジン1のクランクシャフト(図示省略)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス信号)を出力する。排気圧力センサ82は、触媒装置8において酸化触媒8aとパティキュレートフィルタ8bとの間に設けられており、パティキュレートフィルタ8bの入口圧力に応じた検出信号を出力する。車速センサ83は、車両の走行速度に応じた検出信号を出力する。シフトレバー位置センサ84は、運転席近傍に配設されたシフトレバーの操作位置を検出し、その操作位置に応じた検出信号を出力する。ブレーキペダルセンサ85はブレーキペダルがON操作(制動操作)された際にブレーキON信号を出力する。
【0066】
一方、出力インターフェース106には、スロットルバルブ24、燃料噴射弁35、EGRバルブ7c、VRV93、負圧遮断弁94等が接続され、エンジン1の運転状態等に応じてこれらバルブ及び弁が制御されるようになっている。
【0067】
−アイドリングストップ制御−
本実施形態に係る自動車は、交差点での信号待ち等のように一時的に停車した際に、エンジン1の各気筒に備えられた燃料噴射弁35からの燃料供給を停止(フューエルカット)してエンジン1を停止させる所謂アイドリングストップ制御を行うようになっている。以下、このアイドリングストップ制御について説明する。
【0068】
図4に示すように、エンジン1の運転状態を制御するエンジンECU10にはアイドリングストップ制御を行うためのアイドルストップコントローラ108が接続されている。このアイドルストップコントローラ108は、アイドリングストップ条件(内燃機関自動停止条件)の成立時に、エンジンECU10に向けてフューエルカット信号を発信する。一方、エンジン始動条件(アイドリングストップ解除条件)が成立した際、このアイドルストップコントローラ108は、エンジンECU10に向けてフューエルカット解除信号を発信すると同時に、始動制御信号を図示しないスタータに送信するようになっている。
【0069】
また、このアイドルストップコントローラ108には、車速センサ83からの車速検知信号、シフトレバー位置センサ84からのシフト位置信号、ブレーキペダルセンサ85からのブレーキペダル踏み込み信号及びブレーキペダル踏み込み解除信号が直接的にまたはエンジンECU10を介して入力されるようになっている。
【0070】
また、アイドルストップコントローラ108は、上記クランクポジションセンサ81により検出されたエンジン回転数信号NEをエンジンECU10から受けるようになっている。
【0071】
本実施形態に係る自動車のアイドリングストップ条件は、イグニッションがONの状態で、例えば車速センサ83からの車速検知信号によって車速が「0」であることが検知され、且つブレーキペダルセンサ85からのブレーキペダル踏み込み信号によってブレーキペダルの踏み込み操作がなされていることが検知された場合に成立する。このアイドリングストップ条件が成立することで、アイドルストップコントローラ108は、エンジンECU10に向けてフューエルカット信号を発信することになる。また、このフューエルカット信号の発信に伴って、エンジンECU10は、燃料噴射弁35の燃料噴射動作を停止する制御を行ってエンジン1を停止させる。
【0072】
一方、このアイドリングストップ制御によってエンジン1が停止している状態からエンジン1を始動させるためのエンジン始動条件は、上記アイドリングストップ条件が成立した後に、ブレーキペダルセンサ85からのブレーキペダル踏み込み解除信号によってブレーキペダルの踏み込み解除操作がされたことが検知されるか、または、アクセルペダルの踏み込み操作がされたことが検知された場合に成立する。このエンジン始動条件が成立することで、アイドルストップコントローラ108がエンジンECU10に向けてフューエルカット解除信号を発信すると同時に、始動制御信号をスタータに送信するようになっている。上記フューエルカット解除信号を受けたエンジンECU10は燃料噴射弁35の燃料噴射動作を開始する制御を行う。また、上記始動制御信号によってスタータのスタータモータが作動してエンジン1のクランキングが行われる。
【0073】
このようにしてエンジン1のクランキングが行われ、エンジン1が始動すると、クランクシャフトの回転に伴って、上記容量可変システム9のバキュームポンプ92が駆動して、上記負圧配管91に負圧が発生することになる。
【0074】
−エンジン停止・始動制御−
次に、本実施形態の特徴とする動作であるエンジン停止・始動制御について説明する。このエンジン停止・始動制御は、上述したアイドリングストップ条件が成立してエンジン1が停止する時点からエンジン始動条件が成立してエンジン1が始動するまでの期間(アイドリングストップ制御が行われている期間)における上記容量可変システム9の制御に係るものである。
【0075】
このエンジン停止・始動制御の概略について説明する。先ず、アイドリングストップ条件が成立してエンジン1を停止させる際に、上記負圧遮断弁94を全閉状態にする。これにより、負圧遮断弁94、上記空間91c、負圧アクチュエータ95の負圧室95bに亘る空間を密閉空間とする。この負圧遮断弁94を全閉状態にする前段階では、上記バキュームポンプ92からの負圧が負圧配管91を介して負圧アクチュエータ95の負圧室95bに供給されていたため、負圧遮断弁94を全閉状態にしたことによって、バキュームポンプ92が停止した後も負圧アクチュエータ95の負圧室95bは負圧状態が維持される。このため、上記ロッド96が図2中のX方向に引かれてノズルベーン開度が小さくなっている状態が維持される。これにより、次回のエンジン始動時(エンジン始動条件の成立に伴うエンジン始動時)には、ノズルベーン開度が小さい状態でエンジン1が始動されることになる。つまり、タービンホイール5bに吹き付けられる排気ガスの流速を高めながらエンジン1が始動されることになる。
【0076】
そして、エンジンの始動後(バキュームポンプ92の駆動開始後)には、上記負圧遮断弁94を全開状態にする。これにより、負圧アクチュエータ95の負圧室95bを上記負圧通路91aに連通させ、上記VRV93の制御に伴う負圧が負圧アクチュエータ95の負圧室95bに作用される状態にする。例えば、上記コイルスプリング95dの付勢力によってロッド96が前進移動し、ノズルベーン開度が大きくなることでタービンホイール5bに吹き付けられる排気ガスの流速を低く設定する。
【0077】
以下、このエンジン停止・始動制御の手順について図5のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートに示される処理は、エンジン1の始動後、上記エンジンECU10により所定の周期で繰り返し実行される。
【0078】
先ず、ステップST1において、エンジン停止フラグが「0」となっているか否かを判定する。このエンジン停止フラグは、エンジン1の停止(例えば、上記アイドリングストップ条件によるエンジン1の停止)に伴って「1」にセットされるフラグであり、エンジン1の駆動中には「0」にリセットされている。
【0079】
エンジン1が駆動中であってエンジン停止フラグが「0」となっており、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、エンジン停止条件(アイドリングストップ条件)が成立したか否かを判定する。具体的には、上述した如く、イグニッションがONの状態で、車速センサ83からの車速検知信号によって車速が「0」であることが検知され、且つブレーキペダルセンサ85からのブレーキペダル踏み込み信号によってブレーキペダルの踏み込み操作がなされていることが検知された場合にエンジン停止条件が成立したと判断される。
【0080】
エンジン停止条件が成立しておらず、ステップST2でNO判定された場合には、そのままリターンされる。
【0081】
一方、エンジン停止条件が成立しており、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、上記負圧遮断弁94を閉鎖(全閉)する。これにより、負圧遮断弁94、上記空間91c、負圧アクチュエータ95の負圧室95bに亘る空間が密閉空間となり、この負圧室95bは負圧状態が維持される。つまり、ノズルベーン開度が小さい状態が維持される。
【0082】
その後、ステップST4において、アイドルストップコントローラ108からエンジンECU10に向けてフューエルカット信号を発信され、燃料噴射弁35からの燃料供給を停止(フューエルカット)することによりエンジン1を停止させ、ステップST5において、エンジン停止フラグを「1」にセットする。
【0083】
このようにして負圧アクチュエータ95の負圧室95b内の負圧を維持し、且つエンジン1を停止させた状態において、ステップST6では、エンジン始動条件が成立したか否かを判定する。
【0084】
未だエンジン停止条件が成立しており、エンジン始動条件が成立していない場合には、ステップST6でNO判定されリターンされ、ステップST1に戻る。この際、エンジン停止フラグは「1」にセットされているため、ステップST1ではNO判定され、ステップST6に移って、エンジン始動条件の成立を待つ。
【0085】
エンジン始動条件が成立し、ステップST6でYES判定された場合には、上記アイドルストップコントローラ108がエンジンECU10に向けてフューエルカット解除信号を発信すると同時に、始動制御信号をスタータに送信する。これにより、燃料噴射弁35の燃料噴射動作、及び、エンジン1のクランキングが行われ、エンジン1の再始動が行われる。
【0086】
その後、ステップST8において、上記負圧遮断弁94を開放(全開)する。これにより、負圧アクチュエータ95の負圧室95bを上記負圧通路91aに連通させ、上記VRV93の制御に伴う負圧が負圧アクチュエータ95の負圧室95bに作用される状態にする。このようにして負圧遮断弁94を開放した後、ステップST9に移り、上記エンジン停止フラグを「0」にリセットして本制御を終了する。
【0087】
このように本実施形態では、バキュームポンプ92で発生している負圧を負圧アクチュエータ95に供給して可変ノズルベーン機構51を駆動している状態からエンジン1が停止する際、負圧遮断弁94を閉鎖状態にすることで、バキュームポンプ92の停止後においても可変ノズルベーン機構51の駆動状態を維持している。このため、エンジン1の再始動時には、この維持された可変ノズルベーン機構51の駆動状態のままエンジン1が始動することになる。従って、エンジン1の再始動時におけるタービンホイール5bへの排気ガスの流速を高くできて、エンジン始動後の性能(発進加速性)を高く得ることが可能になる。特に、アイドリングストップ制御を行う車両の場合にあっては、エンジン始動条件が成立した直後には運転者の加速要求が生じる可能性が高いため、エンジン始動直後の運転者の加速要求を満たすことが可能となる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、上記容量可変システム9の構成が上述した第1実施形態のものとは異なっている。その他の構成は第1実施形態のものと同一であるため、ここでは第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0089】
図6は、本実施形態に係るエンジン1のターボチャージャ5及び容量可変システム9の概略構成を示す図である。この図6では、上記第1実施形態のものと同一の部材については同一の符号を付している。
【0090】
この図6に示すように、本実施形態では、上記負圧通路91b(バキュームポンプ92とVRV93との間の負圧通路)に負圧センサ97が設けられており、この負圧通路91b内の負圧に応じた検出信号がエンジンECU10に出力されるようになっている。
【0091】
以下、本実施形態におけるエンジン停止・始動制御の手順について図7のフローチャートに沿って説明する。本実施形態においても、このフローチャートに示される処理は、エンジン1の始動後、上記エンジンECU10により所定の周期で繰り返し実行される。なお、このフローチャートでは、上記第1実施形態において図5で示したフローチャートにおける各ステップと同一の動作については同ステップ番号を付している。
【0092】
ステップST1〜ステップST7の動作が上記第1実施形態の場合と同様にして実行されてエンジン1が始動すると(ステップST7)、ステップST10において、上記負圧センサ97によって検出される上記負圧通路91bの負圧の値が所定の閾値Aを下回ったか否か、つまり、エンジン1の始動に伴うバキュームポンプ92の起動によって負圧通路91bに十分な負圧が導入される状況になったか否かが判定される。この閾値Aとしては、例えば、上記VRV93の制御による上記ロッド96の進退量の調整が可能となる程度の負圧値として設定されている。
【0093】
このステップST10において、上記負圧通路91bの負圧の値が未だ閾値A以上である場合には、ステップST10でNO判定され、この負圧値が閾値Aを下回るのを待つ。そして、この負圧値が閾値Aを下回り、ステップST10でYES判定された場合には、ステップST8に移り、上記負圧遮断弁94を開放(全開)する。これにより、負圧アクチュエータ95の負圧室95bを上記負圧通路91aに連通させ、上記VRV93の制御に伴う負圧が負圧アクチュエータ95の負圧室95bに作用される状態にする。その他の動作は、上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0094】
本実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果に加えて以下の効果も奏することができる。つまり、負圧遮断弁94を開放する際には負圧配管91内に十分な負圧が発生しているため、この負圧遮断弁94の切り換えに伴う負圧段差(負圧の急激な変化)を防止することができ、車両の乗員に違和感を与えることが回避される。
【0095】
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態は、アイドリングストップ制御を行う自動車に対して本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、アイドリングストップ制御を行わない自動車に対しても適用可能である。つまり、運転者のイグニッションOFF操作に連動して負圧遮断弁94を閉鎖し、イグニッションON操作に連動して負圧遮断弁94を開放するものであり、これによっても上記と同様の効果を奏することが可能である。
【0096】
また、上記実施形態は、コモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンを搭載した車両に対して本発明を適用した場合について説明したが、ガソリンエンジンを搭載した車両や、内燃機関と電動モータとを駆動源とするハイブリッド自動車に対しても本発明は適用可能である。
【0097】
また、容量可変型ターボチャージャとしては、可変ノズル式ターボチャージャに限らず、タービン入口を2つ備えた所謂ツインエントリー式ターボチャージャ(例えば特開2010−121534号公報を参照)に対しても本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、負圧を利用して容量が可変とされる可変容量型過給機を、アイドリングストップ制御を行う車両に対して適用した場合におけるエンジン始動時の性能を高める制御に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 エンジン(内燃機関)
5 ターボチャージャ(可変容量型過給機)
51 可変ノズルベーン機構(可変容量機構)
56 ノズルベーン
9 容量可変システム
91b 負圧通路
92 バキュームポンプ(負圧ポンプ)
94 負圧遮断弁
95 負圧アクチュエータ
97 負圧センサ(負圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の駆動に伴って発生する負圧を利用して可変容量型過給機の可変容量機構を制御する可変容量型過給機の制御装置において、
上記内燃機関の駆動力を受けて負圧を発生する負圧ポンプと、
上記負圧が供給されることに伴って上記可変容量機構を駆動する負圧アクチュエータと、
上記負圧ポンプと上記負圧アクチュエータとの間に配設された負圧遮断弁とを備え、
少なくとも上記内燃機関の停止から始動までの期間中、上記負圧遮断弁を閉鎖状態に保持することを特徴とする可変容量型過給機の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の可変容量型過給機の制御装置において、
上記可変容量機構は、過給機内部の排気ガス流路の流路面積を可変とする複数のノズルベーンを開閉駆動するものであって、
上記負圧アクチュエータは、上記負圧ポンプで発生した負圧が供給されることによりノズルベーンを駆動して上記排気ガス流路の流路面積を小さくする構成とされていることを特徴とする可変容量型過給機の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の可変容量型過給機の制御装置において、
上記内燃機関は、内燃機関自動停止条件が成立した際に駆動が停止され、且つ内燃機関自動始動条件が成立した際に始動されるものであって、
上記内燃機関自動停止条件の成立から上記内燃機関自動始動条件の成立までの期間中、上記負圧遮断弁を閉鎖状態に保持することを特徴とする可変容量型過給機の制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の可変容量型過給機の制御装置において、
上記内燃機関自動始動条件は、運転者のブレーキペダルの踏み込み解除操作またはアクセルペダルの踏み込み操作を含むことを特徴とする可変容量型過給機の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうち何れか一つに記載の可変容量型過給機の制御装置において、
上記負圧ポンプと負圧遮断弁との間の負圧通路には負圧検出手段が設けられ、
上記内燃機関の始動時、上記負圧検出手段によって検出される上記負圧通路内の負圧値が上記可変容量機構の駆動を可能にする値に達した後に上記負圧遮断弁を開放させることを特徴とする可変容量型過給機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7544(P2012−7544A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144690(P2010−144690)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】