説明

周波数補正回路

【課題】送信波の周波数に同期された周波数又はその逓倍波を容易かつ正確に出力できる周波数補正回路を提供する。
【解決手段】第1電圧制御発振器16の出力信号と基準発振信号との位相差に応じた位相差信号を第1位相比較器10により生成し、第1ループフィルタ12を介して第1位相差信号に応じた第1発振制御信号により第1制御発振器16の発振をフィードバック制御する第1フェーズロックループ回路106と、第2電圧制御発振器36の出力信号と比較対象信号との位相差に応じた位相差信号を第2位相比較器30により生成し、第2ループフィルタ32を介して第2位相差信号に応じた第2発振制御信号により第2制御発振器36の発振をフィードバック制御する第2フェーズロックループ回路114とを備え、第1発振制御信号に応じて第2発振制御信号を変動させることによって比較対象信号に応じて出力信号をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数補正回路に関する。特に、フェーズロックループ回路を用いた周波数補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
人体等の生物の組織を介して通信を行う通信装置が知られている。例えば、送信装置を搭載した携帯電話等の携帯電気機器をユーザの衣服のポケットに入れた状態や首から提げた状態で受信装置に手をかざすたけでデータをやり取りすることができる技術が知られている(非特許文献1等)。
【0003】
例えば、送信装置は符号化部、送信アンプ、環境側電極及び生体側電極を備え、受信装置は復号化部、受信アンプ、環境側電極及び生体側電極を備える。送信装置は、ユーザが携帯する携帯電気機器等に搭載される。受信装置は、駅の改札、自動販売機、店頭等に設置される。送信装置は、人体等の生物の組織(以下、人体等という)を介して受信装置と容量結合する。受信装置の受信アンプは、外部環境グランド電位を基準電位として生体側電極の電位との差を増幅して出力する。送信装置を携帯しているユーザの身体と生体側電極との距離が変化すると、その距離の変化に応じた容量結合の変化が受信アンプの出力として検出できる。したがって、例えば、駅の改札に設置された受信装置の生体側電極に送信装置を携帯したユーザが手をかざす(又は、触れる)等することによって、近づいてきたユーザとのみ通信を行う等のアプリケーションに応用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Personal Area Networks (PAN): Near-Field Intra-Body Communication", Thomas Guthrie Zimmerman, B.S. Humanities and Engineering Massachusetts Institute of Technology (1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線方式により情報を送受信する送受信システムでは、一般的に、送信器及び受信器において水晶発振器を用いてキャリア周波数を互いに一致させて通信を可能にしている。このとき、送信波から信号成分を抽出するために、受信器ではフェーズロックループ回路(PLL回路)を用いて送信波のキャリア周波数やその逓倍波を生成している。
【0006】
送信波のキャリア周波数を変更したい場合、また、製品毎のばらつき、温度や湿度の変化によって送信側のキャリア周波数が変化するような場合、受信器では送信波のキャリア周波数に合わせてフェーズロックループ回路においてキャリア周波数又はその逓倍波を容易かつ正確に出力できる回路構成を実現する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、第1位相比較器と、第1ループフィルタと、第1制御発振器と、を含み、前記第1電圧制御発振器の第1出力信号と基準発振信号との位相差に応じた第1位相差信号を前記第1位相比較器により生成し、前記第1ループフィルタを介して前記第1位相差信号に応じた第1発振制御信号により前記第1制御発振器の発振をフィードバック制御することにより、前記第1出力信号を前記基準発振信号に応じた第1周波数にロックして前記第1制御発振器から出力する第1フェーズロックループ回路と、第2位相比較器と、第2ループフィルタと、第2制御発振器と、を含み、前記第2電圧制御発振器の第2出力信号と比較対象信号との位相差に応じた第2位相差信号を前記第2位相比較器により生成し、前記第2ループフィルタを介して前記第2位相差信号に応じた第2発振制御信号により前記第2制御発振器の発振をフィードバック制御することにより、前記第2出力信号を前記比較対象信号に応じた第2周波数にロックして前記第2制御発振器から出力する第2フェーズロックループ回路と、を備え、前記第1発振制御信号に応じて前記第2発振制御信号を変動させることによって、前記第2周波数を前記比較対象信号に応じてロックすることを可能とした周波数補正回路である。
【0008】
ここで、前記第1発振制御信号に応じた遅延時間で入力信号を遅延させて出力する遅延部と、前記遅延回路からの出力信号と前記入力信号とに応じて前記入力信号を逓倍して前記比較対象信号として出力する逓倍回路と、を備えることが好適である。
【0009】
また、前記第1フェーズロックループ回路は、前記第1位相差信号に応じた前記第1発振制御信号、を生成して前記第1制御発振器へ出力する第1差動増幅回路を備え、前記第2フェーズロックループ回路は、前記第1発振制御信号に応じた基準値を有し前記第2位相差信号に応じて変調された前記第2発振制御信号、を生成して前記第2制御発振器へ出力する第2差動増幅回路を備えることが好適である。
【0010】
また、前記第1制御発振器と前記第2制御発振器は、同一の半導体基板上に形成された遅延回路を含むリングオシレータを備えることが好適である。
【0011】
また、前記第1制御発振器と前記第2制御発振器は、前記遅延回路と同一の半導体基板上に形成された遅延回路を含むリングオシレータを備えることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信波の周波数に同期された周波数又はその逓倍波を容易かつ正確に出力できる周波数補正回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における周波数補正回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における周波数補正回路の構成の具体例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における周波数補正回路の各部の信号のタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における制御発振器の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における第1制御発振器の出力信号のタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における遅延回路の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における遅延部の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における第2制御発振器の出力信号のタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施の形態における周波数補正回路の各部の信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態における周波数補正回路100は、図1の回路ブロック図に示すように、発振器102、分周回路104、第1フェーズロックループ回路(第1PLL回路)106、リップルフィルタ回路108、遅延部110、逓倍回路112及び第2フェーズロックループ回路(第2PLL回路)114を含んで構成される。
【0015】
周波数補正回路100は、これに限定されるものではないが、図2に示す具体的な回路構成により実現することができる。図2に示す周波数補正回路100は、送信波のキャリア周波数に応じて、送信波の逓倍波である出力信号を生成して出力する回路として機能する。
【0016】
図3は、本実施の形態における周波数補正回路100における各部の信号の時間的な変化を示すタイミングチャートである。図3は、送信波のキャリア成分を変調して出力する場合のタイミングチャートである。以下、図1〜図3を参照しつつ、本実施形態における周波数補正回路100について説明する。
【0017】
発振器102は、周波数補正回路100において使用される基準周波数を生成するための発振信号Soscを生成して出力する。発振信号Soscは、分周回路104においてキャリア周波数に合わせた基準周波数を生成できるように基準周波数の逓倍の周波数を持つ信号とすることが好適である。発振器102は、例えば、水晶発振器を含んで構成すればよい。本実施の形態では、周波数補正回路100では、発振信号Soscの周波数を27MHzとした例を示している。
【0018】
分周回路104は、発振器102からの発振信号Soscを分周して周波数補正回路100で利用される基準周波数frefを有する基準発振信号Srefを生成して出力する。分周回路104は、一般的な回路構成とすればよく、例えば、クロックカウンタを用いて構成することができる。図2の周波数補正回路100では、発振信号の周波数を27MHzとした例を示している。本実施の形態では、発振器102からの27MHzの発振信号を1/3分周した9MHz又は1/4分周した6.75MHzの基準発振信号Srefを出力するものとする。基準発振信号Srefは、第1PLL回路106へ入力される。
【0019】
第1PLL回路106は、第1位相比較器10、第1ループフィルタ(第1LF)12、第1差動増幅回路14、第1制御発振器16、第1電圧源18、第1定電流源20及び第2電圧源22を含んで構成される。第1位相比較器10、第1ループフィルタ(第1LF)12、第1差動増幅回路14及び第1制御発振器16はフェーズロックループ回路を構成し、分周回路104から入力される基準発振信号Srefに同期した第1周波数f1を有する第1出力信号Sout1を生成する。
【0020】
第1位相比較器10は、分周回路104から出力される基準発振信号Srefと、第1制御発振器16から出力される第1出力信号Sout1と、を受けて、基準発振信号Srefと第1出力信号Sout1との位相差に応じた電圧を第1位相差信号Sph1として出力する検波器を含んで構成される。第1位相比較器10は、例えば、排他的論理和素子(EX−OR素子)を用いて構成することができる。第1LF12は、第1位相比較器10から出力される第1位相差信号Sph1を受けて、第1位相差信号から不要周波数成分を除いて第1制御基準電圧Vin2を生成して出力する。
【0021】
第1差動増幅回路14は、第2電圧源22から出力される電圧V2を抵抗分圧した基準電圧Vin1と、第1LF12から出力される第1制御基準電圧Vin2と、を受けて、基準電圧Vin1と第1制御基準電圧Vin2との電圧差に応じた出力電圧Vcnt1を有する第1発振制御信号Scnt1を生成する回路である。
【0022】
第1差動増幅回路14は、図2に示すように、トランジスタTr1〜Tr4を含んで構成することができる。トランジスタTr1及びTr2は差動増幅回路を構成する。また、第1差動増幅回路14には、トランジスタTr5及びTr6で形成されるカレントミラー回路を介して、第1定電流源20からトランジスタTr5に流される電流Iと等しい電流I6がトランジスタTr6を介して流される。第1差動増幅回路14は、トランジスタTr1のゲートに入力される基準電圧Vin1とトランジスタTr2のゲートに入力される第1制御基準電圧Vin2との比で電流Iを分流し、ダイオード接続されたトランジスタTr3及びTr4に電流I1及びI2を流す。これにより、基準電圧Vin1と第1制御基準電圧Vin2との電圧差に応じた出力電圧Vcnt1がトランジスタTr3のアノード−カソード間に発生し、第1発振制御信号Scnt1として第1制御発振器16に入力される。
【0023】
第1制御発振器16は、第1発振制御信号Scnt1を受けて、第1発振制御信号Scnt1の出力電圧Vcnt1に応じた第1周波数f1を有する第1出力信号Sout1を生成して出力する。この第1出力信号Sout1は、第1位相比較器10に負帰還入力される。これによって、第1出力信号Sout1と基準発振信号Srefとの位相差が無くなるように第1出力信号Sout1の周波数調整が行われ、その結果、基準周波数frefと一致した第1周波数f1を有する第1出力信号Sout1が出力される。
【0024】
第1制御発振器16は、図4に示すように、遅延回路16aを含んで構成することが好適である。遅延回路16aは、ループ状に接続されてリングオシレータ回路を構成する。例えば、本実施の形態では4つの遅延回路16a−1〜16a−4を接続したリングオシレータ回路を構成することが好適である。具体的には、第1の遅延回路16a−1の反転出力端子OUT-が第2の遅延回路16a−2の非反転入力端子IN+に接続され、第1の遅延回路16a−1の非反転出力端子OUT+が第2の遅延回路16a−2の反転入力端子IN-に接続される。第2の遅延回路16a−2と第3の遅延回路16a−3及び第3の遅延回路16a−3と第4の遅延回路16a−4の間も同様に接続される。そして、第4の遅延回路16a−4の反転出力端子OUT-が第1の遅延回路16a−1の反転入力端子IN-に接続され、第4の遅延回路16a−4の非反転出力端子OUT+が第1の遅延回路16a−1の非反転入力端子IN+に接続される。また、遅延回路16a−1〜16a−4の非反転出力端子OUT+及び反転出力端子OUT-はバッファ素子を介して出力端子に接続される。このように、4つの遅延回路16a−1〜16a−4によって構成されるリングオシレータ回路の出力端子からは、図5に示すように、各々位相が45°ずれた第1出力信号Sout1を含む信号Sout1〜Sout8が出力される。
【0025】
図6は、遅延回路16aの具体的な構成例を示す。遅延回路16aは、それぞれ前段回路16b及び後段回路16cを含んで構成される。前段回路16bは、トランジスタTr8及びTr9からなる差動増幅回路を含んで構成される。トランジスタTr8のゲートは反転入力端子IN-に接続され、トランジスタTr8のゲートは非反転入力端子IN+に接続される。これにより、トランジスタTr7を介して供給される電流I7が反転入力端子IN-に印加される信号の電圧と非反転入力端子IN+に印加される信号の電圧との比に応じて電流I8及びI9に分流され、トランジスタTr10及びTr11にそれぞれ流れる。トランジスタTr10及びTr11はダイオード接続されており、電流I8及びI9に応じた電圧V10及びV11が後段回路16cへ出力される。後段回路16cは、トランジスタの多段接続回路から構成されており、各段のトランジスタが前段回路16bから出力される電圧V10及びV11によって充放電される時間だけ反転入力端子IN-に印加される電圧と非反転入力端子IN+に印加される信号とが遅延されて反転出力端子OUT-及び非反転出力端子OUT+から出力される。なお、前段階路16bのトランジスタTr7のゲートに接続されるバイアス端子BIASに印加するバイアス電圧を調整することにより、前段回路16bから出力される電圧V10及びV11の比を一定に保ったまま絶対値を変化させることができる。これにより、後段回路16cに含まれるトランジスタの充放電時間がバイアス電圧により調整され、反転出力端子OUT-及び非反転出力端子OUT+から出力される信号の遅延時間が決められる。
【0026】
したがって、遅延回路16aを用いて第1制御発振器16を構成し、遅延回路16aのバイアス端子BIASに第1発振制御信号Scnt1を入力することによって、第1発振制御信号Scnt1の電圧値Vcnt1によって第1出力信号Sout1を含む信号Sout1〜Sout8の周波数が基準発振信号Srefの周波数frefに近づくように制御され、信号Sout1〜Sout8の第1周波数f1は最終的に周波数frefに一致するものとなる。
【0027】
本実施の形態における周波数補正回路100では、このように基準発振信号Srefの周波数frefに第1出力信号Sout1が一致したときの第1発振制御信号Scnt1を用いて遅延部110及び第2PLL回路114を制御する。
【0028】
リップルフィルタ回路108は、ローパスフィルタを含んで構成される。リップルフィルタ回路108は、第1差動増幅回路14から出力される第1発振制御信号Scnt1を平滑化し、遅延部110及び第2PLL回路114へ出力する。例えば、リップルフィルタ回路108は、図2に示すように、CRフィルタを含んで構成することができる。
【0029】
遅延部110は、送信器(図示しない)から送信されてきた送信信号Sinを受けて、送信信号Sinを遅延させて遅延信号Sdlyとして出力する。
【0030】
遅延部110は、例えば図7に示すように、2つの遅延回路16aを直列に接続して構成することができる。このとき、遅延部110を構成する遅延回路16aは、第1制御発振器16を構成する遅延回路16aと同じ回路構成とすることが好適である。さらに、遅延部110を構成する遅延回路16aは、第1制御発振器16を構成する遅延回路16aと同じ半導体基板上に形成することがより好適である。これにより、遅延部110を構成する遅延回路16aと第1制御発振器16を構成する遅延回路16aとの周波数特性を一致させることができ、送信信号Sinに対する遅延時間(位相差)と基準発振信号Srefに対する遅延時間(位相差)の制御を遅延部110と第1制御発振器16とにおいて一致させることが容易となる。
【0031】
すなわち、本実施の形態における周波数補正回路100にように、第1制御発振器16の各遅延回路のバイアス電圧として第1発振制御信号Scnt1を入力すると共に、遅延部110の各遅延回路のバイアス電圧としてリップルフィルタ回路108を介して第1発振制御信号Scnt1を入力することによって、第1制御発振器16及び遅延部110を構成する遅延回路16aのいずれにおいても同じ又は略同等の遅延時間をもたせることができる。これによって、第1制御発振器16では、図5に示すように、基準発振信号Srefの周波数frefに合わせた第1周波数f1を有し、互いに周波数frefに対して45°の位相差を有する信号Sout1〜Sout8が生成され、遅延部110では、図3に示すように、その周波数frefに対して位相差90°に相当する時間ほど送信信号Sinが遅延されて遅延信号Sdlyとして出力される。送信信号Sin及び遅延信号Sdlyは逓倍回路112へ入力される。
【0032】
逓倍回路112は、送信信号Sinの周波数を所定数倍して逓倍信号Smltとして出力する。逓倍回路112から出力される逓倍信号Smltは、第2PLL回路114における出力信号Sout9〜Sout16の基準となる信号である。逓倍回路112は、例えば、図2に示すように、送信信号Sinと遅延信号Sdlyとの排他的論理和を演算して出力する演算素子を含んで構成することができる。これにより、送信信号Sinの2倍波が逓倍信号Smltとして出力される。
【0033】
第2PLL回路114は、第2位相比較器30、第2ループフィルタ(第2LF)32、第2差動増幅回路34及び第2制御発振器36を含んで構成される。第2位相比較器30、第2ループフィルタ(第2LF)32、第2差動増幅回路34及び第2制御発振器36はフェーズロックループ回路を構成し、逓倍回路112から入力される逓倍信号Smltに同期した第2周波数f2を有する出力信号Sout9〜Sout16を生成して出力する。
【0034】
第2位相比較器30は、逓倍回路112から出力される逓倍信号Smltと、第2制御発振器36から出力される第2出力信号Sout9と、を受けて、図3に示すように、逓倍信号Smltと第2出力信号Sout9との位相差に応じた電圧を第2位相差信号Sph2として出力する検波器を含んで構成される。第2位相比較器30は、例えば、排他的論理和素子(EX−OR素子)を用いて構成することができる。第2LF32は、第2位相比較器30から出力される第2位相差信号Sph2を受けて、第2位相差信号Sph2から不要周波数成分を除いて第2制御基準電圧Vin4を生成して出力する。
【0035】
第2差動増幅回路34は、第2電圧源22から出力される電圧V2を抵抗分圧した基準電圧Vin4と、第2LF32から出力される第2制御基準電圧Vin4と、を受けて、基準電圧Vin3と第2制御基準電圧Vin4との電圧差に応じた出力電圧Vcnt2を有する第2発振制御信号Scnt2を生成する回路である。
【0036】
第2差動増幅回路34は、図2に示すように、トランジスタTr12〜Tr15を含んで構成することができる。トランジスタTr12及びTr13は差動増幅回路を構成する。また、第2差動増幅回路34には、トランジスタTr16及びTr17で形成されるカレントミラー回路を介して、リップルフィルタ回路108からの出力電圧に応じた電流I17が流される。第2差動増幅回路34は、トランジスタTr12のゲートに入力される基準電圧Vin3とトランジスタTr13のゲートに入力される第2制御基準電圧Vin4との比で電流I17を分流し、ダイオード接続されたトランジスタTr14及びTr15に電流I14及びI15を流す。これにより、基準電圧Vin3と第2制御基準電圧Vin4との電圧差に応じた出力電圧Vcnt2がトランジスタTr14のアノード−カソード間に発生し、第2発振制御信号Scnt2として第2制御発振器36に入力される。
【0037】
第2制御発振器36は、第2発振制御信号Scnt2を受けて、第2発振制御信号Scnt2の出力電圧Vcnt2に応じた第2周波数f2を有する出力信号Sout9〜Sout16を生成して出力する。このうち、第2出力信号Sout9は、第2位相比較器30に負帰還入力される。これによって、第2出力信号Sout9と逓倍信号Smltとの位相差が無くなるように出力信号Sout9〜Sout16の周波数補正が行われ、その結果、送信信号Sinの周波数を所定数倍した逓倍信号Smltの周波数と一致した第2周波数f2を有する出力信号Sout9〜Sout16が出力される。図3には、出力信号Sout9〜Sout16のうち第2出力信号Sout9を代表として示している。
【0038】
第2制御発振器36は、図4に示すように、第1制御発振器16と同様に遅延回路16aを含むリングオシレータとして構成することが好適である。遅延回路16aは、ループ状に接続されてリングオシレータ回路を構成する。本実施の形態では、第2制御発振器36は、第1制御発振器16と同様に、4つの遅延回路16a−1〜16a−4を接続したリングオシレータ回路を構成することが好適である。
【0039】
また、第2制御発振器36を構成する遅延回路16aは、図6に示すように、第1制御発振器16及び遅延部110を構成する遅延回路16aと同じ回路構成とすることが好適である。さらに、第2制御発振器36を構成する遅延回路16aは、第1制御発振器16及び遅延部110を構成する遅延回路16aと同じ半導体基板上に形成することがより好適である。これにより、第2制御発振器36を構成する遅延回路16aと第1制御発振器16及び遅延部110を構成する遅延回路16aとの周波数特性を一致させることができる。
【0040】
このとき、第2PLL回路114から出力される出力信号Sout9〜Sout16が送信信号Sinの所定数倍の周波数を有する逓倍波となるようにするには、基準発振信号Srefと第1出力信号Sout1との位相差が逓倍信号Smltと第2出力信号Sout9との位相差と同じときに、第2発振制御信号Scnt2の電圧値Vcnt2が第1発振制御信号Scnt1の電圧値Vcnt1の当該所定数倍となるようにすればよい。すなわち、上記位相差の条件が一致し、リップルフィルタ回路108に電圧値Vcnt1を有する第1発振制御信号Scnt1が入力されたときに第2発振制御信号Scnt2の電圧値Vcnt2が電圧値Vcnt1の当該所定数倍となるように、リップルフィルタ回路108に含まれるトランジスタTr18並びにカレントミラー回路を構成するトランジスタTr16及びTr17の特性を設定すればよい。
【0041】
例えば、図2に示すように、送信信号Sinの2倍波を逓倍信号Smltとし、送信信号Sinの2倍波を出力信号Sout9〜Sout16として生成する場合、第2発振制御信号Scnt2の電圧値Vcnt2が第1発振制御信号Scnt1の電圧値Vcnt1の略2倍となるように、リップルフィルタ回路108に含まれるトランジスタTr18並びにカレントミラー回路を構成するトランジスタTr16及びTr17の特性を決めればよい。
【0042】
このように制御された第2発振制御信号Scnt2を、第2制御発振器36を構成する遅延回路16aのバイアス端子BIASに入力することによって、第2発振制御信号Scnt2の電圧値Vcnt2に応じた第2周波数f2を有する出力信号Sout9〜Sout16が出力される。これら出力信号Sout9〜Sout16の1つである第2出力信号Sout9を第2位相比較器30に負帰還させることによって、出力信号Sout9〜Sout16の第2周波数f2が逓倍信号Smltの周波数に近づくように制御され、出力信号Sout9〜Sout16の周波数は最終的に送信信号Sinの周波数を所定数倍した逓倍信号Smltの周波数に一致するものとなる。また、出力信号Sout9〜Sout16は、図8に示すように、互いに位相差45°を有する信号として出力される。
【0043】
以上のように、本実施の形態における周波数補正回路100によれば、送信信号Sinの周波数に合わせて発振器102及び分周回路104から出力される基準発振信号Srefを設定することによって、出力信号Sout9〜Sout16の周波数を補正して送信信号Sinを正確に逓倍化した信号として出力することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、送信波のキャリア成分を変調する場合について説明したが、図9に示すように、送信波がベースバンド成分にて変調されている場合も同様に処理することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 第1位相比較器、12 第1ループフィルタ(第1LF)、14 第1差動増幅回路、16 第1制御発振器、16a 遅延回路、16b 前段回路、16c 後段回路、18 第1電圧源、20 第1定電流源、22 第2電圧源、30 第2位相比較器、32 第2ループフィルタ(第2LF)、34 第2差動増幅回路、36 第2制御発振器、100 周波数補正回路、102 発振器、104 分周回路、106 第1フェーズロックループ回路(第1PLL回路)、108 リップルフィルタ回路、110 遅延部、112 逓倍回路、114 第2フェーズロックループ回路(第2PLL回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位相比較器と、第1ループフィルタと、第1制御発振器と、を含み、前記第1電圧制御発振器の第1出力信号と基準発振信号との位相差に応じた第1位相差信号を前記第1位相比較器により生成し、前記第1ループフィルタを介して前記第1位相差信号に応じた第1発振制御信号により前記第1制御発振器の発振をフィードバック制御することにより、前記第1出力信号を前記基準発振信号に応じた第1周波数にロックして前記第1制御発振器から出力する第1フェーズロックループ回路と、
第2位相比較器と、第2ループフィルタと、第2制御発振器と、を含み、前記第2電圧制御発振器の第2出力信号と比較対象信号との位相差に応じた第2位相差信号を前記第2位相比較器により生成し、前記第2ループフィルタを介して前記第2位相差信号に応じた第2発振制御信号により前記第2制御発振器の発振をフィードバック制御することにより、前記第2出力信号を前記比較対象信号に応じた第2周波数にロックして前記第2制御発振器から出力する第2フェーズロックループ回路と、
を備え、
前記第1発振制御信号に応じて前記第2発振制御信号を変動させることによって、前記第2周波数を前記比較対象信号に応じてロックすることを可能とした周波数補正回路。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数補正回路であって、
前記第1発振制御信号に応じた遅延時間で入力信号を遅延させて出力する遅延部と、
前記遅延回路からの出力信号と前記入力信号とに応じて前記入力信号を逓倍して前記比較対象信号として出力する逓倍回路と、
を備えることを特徴とする周波数補正回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の周波数補正回路であって、
前記第1フェーズロックループ回路は、前記第1位相差信号に応じた前記第1発振制御信号、を生成して前記第1制御発振器へ出力する第1差動増幅回路を備え、
前記第2フェーズロックループ回路は、前記第1発振制御信号に応じた基準値を有し前記第2位相差信号に応じて変調された前記第2発振制御信号、を生成して前記第2制御発振器へ出力する第2差動増幅回路を備えることを特徴とする周波数補正回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の周波数補正回路であって、
前記第1制御発振器と前記第2制御発振器は、同一の半導体基板上に形成された遅延回路を含むリングオシレータを備えることを特徴とする周波数補正回路。
【請求項5】
請求項2に記載の周波数補正回路であって、
前記第1制御発振器と前記第2制御発振器は、前記遅延回路と同一の半導体基板上に形成された遅延回路を含むリングオシレータを備えることを特徴とする周波数補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−228879(P2011−228879A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95801(P2010−95801)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】