説明

四輪駆動車両の駆動力配分制御装置

【課題】車両挙動を不安定にしたり、カント路面を駆け上がるモーメントを発生させることのない、オーバーステアおよびアンダーステア緩和用左右駆動力差制御を提供する。
【解決手段】S14でオーバーステアと判定する場合、S17で後輪合計駆動力用のフィードバック制御係数K1を0とし、後輪駆動力差用のフィードバック制御係数K2も0とすることで、二輪駆動走行状態にする。よって当該オーバーステア状態で、四輪駆動走行されることによる旋回走行不安定を回避することができる。S15でアンダーステアと判定する場合、S18でK1=1とし、K2=0とすることにより、四輪駆動走行させるも左右後輪間に駆動力差を設定しない。これにより、当該アンダーステア状態で四輪駆動走行による優れた走破性を享受しつつ、左右後輪間に駆動力差が設定されることによる、カント路面駆け上がり現象を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主駆動輪に向かう駆動力の一部を副駆動輪へ制御下に伝達可能であると共に、該一部の駆動力を左副駆動輪および右副駆動輪へ制御下に分配出力可能な四輪駆動車両の駆動力配分制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪駆動車両の駆動力配分制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
この提案技術は、車両の旋回挙動であるヨーレートと目標ヨーレートとを比較し、オーバーステア状態であるときは、大きすぎる実ヨーレートが小さくなって目標ヨーレートに近づくように旋回方向内外輪間に駆動力差を持たせ、アンダーステア状態であるときは、小さすぎる実ヨーレートが大きくなって目標ヨーレートに近づくように旋回方向内外輪間に駆動力差を持たせる構成となしたものである。
【0003】
かかる従来の駆動力配分制御によれば、ヨーレートのフィードバックにより、実ヨーレートが目標ヨーレートから外れた場合であっても、実ヨーレートを目標ヨーレートに収束させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−017277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記した従来の駆動力配分制御においては、オーバーステア時に過大な実ヨーレートを目標ヨーレートに近づくよう低下させることから、旋回方向内輪側の駆動力を大きくすることを意味し、
アンダーステア時に過小な実ヨーレートを目標ヨーレートに近づくよう大きくさせることから、旋回方向外輪側の駆動力を大きくすることを意味し、以下のような問題を生ずる。
【0006】
つまり、オーバーステア状態である場合、旋回方向内輪側が荷重移動により輪荷重を低下され、旋回方向内輪がスリップし易くなって大きな駆動力を伝達し得ない。
それにもかかわらず、従来のようにオーバーステア時に旋回方向内輪側の駆動力を大きくするのでは、当該大きくした駆動力を旋回方向内輪が確実に伝達し得ず、所定の効果が得られないばかりか、逆に旋回方向内輪の駆動スリップで車両の旋回安定性が損なわれるという問題を生ずる。
【0007】
また、車幅方向に傾斜している所謂カント路面において、運転者がこの路面傾斜に伴う車両ヨーレートを打ち消すための(車両に実ヨーレートが発生しないようにするための)操舵角を与えている場合、操舵しているのにヨーレートが発生していないことから、この操舵から求めた目標ヨーレートと実ヨーレートとの比較結果がアンダーステア状態であるとの判定を下す。
当該アンダーステアの判定が行われると従来の駆動力配分制御では、ヨーレートが発生していない状態から目標ヨーレートと同じヨーレートが発生するよう、操舵方向外輪側の駆動力を大きくすることとなり、車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントを付与する。
【0008】
ところで運転者は、カント路面の路面傾斜に伴う車両ヨーレートを打ち消すために操舵を行ったものであり、旋回を希望して操舵を行ったものでないことから、
車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントが付与されて、車両が対応方向へ進路を変更されると、運転者を戸惑わせるという問題を生ずる。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑み、目標ヨーレートと実ヨーレートとの比較によるオーバーステア判定時やアンダーステア判定時は、むしろ内外輪間駆動力差制御を行わない方が良いとの結論に達し、これを具体化して上記の問題を解消し得た四輪駆動車両の駆動力配分制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明による四輪駆動車両の駆動力配分制御装置は、
主駆動輪に向かう駆動力の一部を制御下に副駆動輪へ伝達可能で、該副駆動輪への合計駆動力を左右副駆動輪へ制御下に分配出力する四輪駆動車両の駆動力配分制御装置に対し、
車両運転状態から求めた目標旋回挙動に対して実旋回挙動が過剰なオーバーステア状態であるのを判定するオーバーステア判定手段と、
該手段でオーバーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするオーバーステア用左右駆動力差制御手段とを設けたり、
前記目標旋回挙動に対して実旋回挙動が不足しているアンダーステア状態を判定するアンダーステア判定手段と、
該手段でアンダーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするアンダーステア用左右駆動力差制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる本発明による四輪駆動車両の駆動力配分制御装置にあっては、目標旋回挙動と実旋回挙動との比較によるオーバーステア状態の判定時や、アンダーステア状態の判定時に、左右副駆動輪間の駆動力差を0にするため、以下の効果が奏し得られる。
【0012】
つまり、オーバーステア判定時に輪荷重が低下した旋回方向内輪側の副駆動輪に大きな駆動力が向かうことがない。
従って、当該副駆動輪が輪荷重を低下されているのに加え、大きな駆動力を伝達されて駆動スリップするようなことがなく、この駆動スリップにより車両の旋回安定性が損なわれるという問題を回避することができる。
【0013】
また、カント路面の路面傾斜に伴う車両の旋回挙動を打ち消すための操舵時にアンダーステア状態と誤判定されても、操舵方向外輪側の駆動力が大きくされて、車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントを付与するようなことがなく、運転者の意に反して車両が対応方向へ進路を変更されるという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例になる駆動力配分制御装置を具えた四輪駆動車両の車輪駆動系を車両上方から見て、四輪駆動制御システムと共に示す概略平面図である。
【図2】図1における四輪駆動コントローラを示す機能別ブロック線図である。
【図3】図2におけるヨーレート偏差演算部およびフィードバック制御係数演算部が実行するフィードバック制御係数の決定プログラムを示すフローチャートである。
【図4】オーバーステア領域、アンダーステア領域、およびニュートラルステア領域を示す領域線図である。
【図5】後輪合計駆動力用フィードバック制御係数の変化特性図である。
【図6】図2における左右後輪目標駆動力演算部が左右後輪目標駆動力を演算するときのプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる駆動力配分制御装置を具えた四輪駆動車両の車輪駆動系を車両上方から見て、四輪駆動制御システムと共に示す概略平面図である。
図中、1L,1Rはそれぞれ、主駆動輪としての左右前輪を示し、2L,2Rはそれぞれ、副駆動輪としての左右後輪を示す。
なお、本明細書中において「駆動力」と称するは、パワーに非ず、「トルク値」を意味するものとする。
【0016】
3は、原動機としてのエンジンで、エンジン3からの回転動力は変速機(ディファレンシャルギヤ装置4aを含むトランスアクスル)4により変速して、左右アクスルシャフト5L,5Rを介し左右前輪1L,1Rに向かわせ、これら左右前輪1L,1Rの駆動に供する。
【0017】
変速機4により変速された後に左右前輪1L,1Rへ向かう駆動力の一部を、トランスファー6により方向変換して左右後輪2L,2Rに向かわせるが、そのための伝動系を以下のような構成となす。
【0018】
トランスファー6は入力側ハイポイドギヤ6aおよび出力側ハイポイドギヤ6bより成る傘歯車組を具える。
入力側ハイポイドギヤ6aは、ディファレンシャルギヤ装置4aの入力回転メンバであるディファレンシャルギヤケースと共に回転するようこれに結合する。
出力側ハイポイドギヤ6bにはプロペラシャフト7の前端を結合し、このプロペラシャフト7を左右後輪駆動力配分ユニット8に向け後方へ延在させる。
【0019】
なおトランスファー6は、左右前輪1L,1Rに向かう駆動力の一部を増速してプロペラシャフト7へ出力するよう、ハイポイドギヤ6aおよび出力側ハイポイドギヤ6bより成る傘歯車組のギヤ比を決定する。
【0020】
プロペラシャフト7への増速回転動力は、左右後輪駆動力配分ユニット8による後述の制御下で左右後輪2L,2Rへ分配出力する。
そのため左右後輪駆動力配分ユニット8は、左右後輪2L,2Rのアクスルシャフト9L,9R間において、これらシャフト9L,9Rの軸線方向に延在するセンターシャフト10を具える。
左右後輪駆動力配分ユニット8は更に、センターシャフト10および左後輪アクスルシャフト9L間にあって、これらシャフト10,9L間を結合制御するための左後輪側クラッチ(左副駆動輪側摩擦要素)11Lと、
センターシャフト10および右後輪アクスルシャフト9R間にあって、これらシャフト10,9R間を結合制御するための右後輪側クラッチ(右副駆動輪側摩擦要素)11Rとを具える。
【0021】
トランスファー6から車両後方へ延在するプロペラシャフト7の後端と、センターシャフト10との間は、入力側ハイポイドギヤ12aおよび出力側ハイポイドギヤ12bより成る傘歯車式終減速機12を介して駆動結合する。
【0022】
なお該終減速機12の減速比は、トランスファー6の前記した増速ギヤ比(ハイポイドギヤ6aおよび出力側ハイポイドギヤ6bより成る傘歯車組の増速ギヤ比)との関連において、左右前輪1L,1Rに向かう駆動力の一部をセンターシャフト10へ増速下に向かわせるようなギヤ比とし、
本実施例においては、左右前輪1L,1Rに対してセンターシャフト10が増速回転されるように、トランスファー6および終減速機12のトータルギヤ比を設定する。
【0023】
かようにトランスファー6および終減速機12のトータルギヤ比を決定する理由を以下に説明する。
上記センターシャフト10の増速回転を行わせない場合、左右後輪2L,2Rのうち、旋回走行中に外輪となる後輪2L(または2R)の回転速度がセンターシャフト10の回転速度よりも高速となる。
この状態で旋回方向外輪となる後輪2L(または2R)側におけるクラッチ11L(または11R)を締結するとき、当該後輪の高い回転速度が、低速回転しているセンターシャフト10に引き摺られ、センターシャフト10の回転速度まで低下されることとなる。
このことは、センターシャフト10から旋回方向外側の後輪2L(または2R)へ駆動力を伝達することができないことを意味し、結果として狙い通りの駆動力配分制御が不可能になり、四輪駆動制御にとって不都合を生ずる。
【0024】
そこで本実施例においては、かかる旋回走行中もセンターシャフト10の回転速度が旋回方向外側後輪2L(または2R)の回転速度未満になって駆動力配分制御が不能になることのないよう、トランスファー6および終減速機12のトータルギヤ比を上記のごとくに決定して、センターシャフト10を上記の通り増速回転させるようになす。
かかるセンターシャフト10の増速回転により、後述する駆動力配分制御を狙い通りに遂行し得る。
【0025】
上記した四輪駆動車両の車輪駆動系にあっては、エンジン3からの回転動力が変速機(トランスアクスル)4による変速下で左右前輪1L,1Rに達し、これら左右前輪1L,1Rを駆動する。
【0026】
この間、左右前輪1L,1Rに向かう駆動力の一部がトランスファー6から順次、プロペラシャフト7、および終減速機12を経てセンターシャフト10へ増速下に達し、
この増速分だけクラッチ11L,11Rがスリップするようこれらクラッチ11L,11Rを締結力制御しつつ、左右後輪2L,2Rを駆動する。
かくて車両は、左右前輪1L,1Rの駆動、および、左右後輪2L,2Rの駆動により、四輪駆動走行が可能である。
【0027】
従って上記の四輪駆動車両においては、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの締結力制御が必要である。
上記の四輪駆動車両においては更に、車両の発進性能や加速性能を向上させるために、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの合計締結力制御を介して前後輪駆動力配分制御を行い得るようになすほか、
車両の旋回性能を向上させたり、車両の実挙動(実ヨーレートなど)が車両の運転状態や走行条件に応じた目標通りのものとなるようにする挙動制御を行うために、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの締結力制御を介して左右輪駆動力配分制御を行い得るようになす。
【0028】
そのため、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの締結力制御システムを以下のようなものとする。
左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rはそれぞれ、供給電流に応じて締結力を決定される電磁式とし、これらクラッチ11L,11Rの締結力がそれぞれ、四輪駆動(4WD)コントローラ21で後述のごとくに求めた左右後輪2L,2Rの目標駆動力TcL,TcRに対応した締結力となるよう当該クラッチ11L,11Rへの供給電流を電子制御することで、上記の前後輪駆動力配分制御および左右輪駆動力配分制御を行うものとする。
【0029】
四輪駆動コントローラ21には、上記した左後輪2Lの目標駆動力TcLおよび右後輪2Rの目標駆動力TcRを演算するために、
車輪1L,1R,2L,2Rの車輪速Vwを個々に検出する車輪速センサ群22からの信号と、
アクセルペダル踏み込み量であるアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ23からの信号と、
ステアリングホイール操舵角θを検出する操舵角センサ24からの信号と、
変速機出力回転数Noを検出する変速機出力回転センサ25からの信号と、
エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ26からの信号と、
車両の重心を通る鉛直軸線周りにおけるヨーレートφを検出するヨーレートセンサ27からの信号と、
車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ28からの信号と、
車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサ29からの信号とをそれぞれ入力する。
【0030】
四輪駆動コントローラ21は、これら入力情報を基に、後で詳述する前後輪駆動力配分制御および左右輪駆動力配分制御用の左後輪目標駆動力TcLおよび右後輪目標駆動力TcRを演算し、
左右後輪2L,2Rの駆動力がこれら目標駆動力TcL,TcRに一致するよう、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの締結力(電流)を電子制御するものとする。
【0031】
<駆動力配分制御>
四輪駆動コントローラ21が実行する前後輪駆動力配分制御および左右輪駆動力配分制御、つまり左後輪目標駆動力TcLおよび右後輪目標駆動力TcRの決定要領を、以下に説明する。
【0032】
四輪駆動コントローラ21は、機能別ブロック線図で示すと図2に示すごときもので、入力信号処理部31と、後輪合計駆動力演算部32と、左右後輪駆動力差演算部33と、フィードバック制御部34と、左右後輪目標駆動力演算部35とで構成する。
【0033】
入力信号処理部31は、車輪速センサ群22、アクセル開度センサ23、操舵角センサ24、変速機出力回転センサ25、エンジン回転センサ26、ヨーレートセンサ27、前後加速度センサ28、 横加速度センサ29の検出信号からノイズを除去すると共に、後述の演算に用い得るよう前処理する。
かように前処理した信号のうち、エンジン回転数Neおよびアクセル開度APOを用いて、エンジントルク推定部36でエンジントルクTeを推定し、
またエンジン回転数Neおよび変速機出力回転数Noを用いて、変速機ギヤ比演算部37で変速機ギヤ比γを演算する。
【0034】
後輪合計駆動力演算部32は、左右後輪2L,2Rへの合計駆動力目標値rTcLR(以下、合計駆動力rTcLRと言う)を例えば以下のように求める。
先ずエンジントルクTeおよび変速機ギヤ比γからディファレンシャルギヤ装置4aへの入力トルクTiを演算する。
次いで、車輪速センサ群22からの信号(車輪速Vw)を基に左右前輪平均速および左右後輪平均速をそれぞれ求め、両者の比較により推定した左右前輪1L,1Rの駆動スリップ程度(前後輪回転差)や、前後加速度Gxや、アクセル開度APOに応じ、上記入力トルクTiのうちのどの程度を左右後輪2L,2Rに向かわせるべきかを決定して、これら後輪への合計駆動力rTcLRとする。
【0035】
なお後輪への合計駆動力rTcLRは、上記前輪スリップの程度が高いほど、この駆動スリップ抑制のために大きくする必要があり、また前後加速度Gxおよびアクセル開度APOが大きいほど、運転者が大きな駆動力を要求していることから、これに応えるため後輪への合計駆動力rTcLRを大きくする。
【0036】
左右後輪駆動力差演算部33は、定常制御演算部33aおよび過渡制御演算部33bを具え、左右後輪2L,2R間の駆動力差目標値rΔTcLR(以下、駆動力差rΔTcLRと言う)を例えば以下のように求める。
【0037】
定常制御演算部33aは、運転者が定常的に要求している車両旋回挙動のための左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRを以下のようにして求める。
つまり、エンジントルクTeと、変速機ギヤ比γとから、車両に発生している前後加速度Gxを推定し、操舵角θおよび車輪速Vw(車速VSP)から車両に発生している横加速度Gyを推定し、これら推定した前後加速度Gxおよび横加速度Gyの組み合わせから判る車両のアンダーステア状態(目標旋回挙動に対し実旋回挙動が不足する状態)を解消するのに必要な左右後輪駆動力差を、左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRとして定める。
ここで、前後加速度Gxの検出値ではなく推定値、また横加速度Gyの検出値ではなく推定値を用いる理由は、定常制御演算部33aがフィードフォワード制御系であって、結果値である検出値よりも、推定値の方が制御の実態にマッチしているためである。
【0038】
かくして左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRは、操舵角θが0近辺を示す(車輪非転舵状態である)間は、横加速度Gy=0に起因して0に保たれ、また、
操舵角θが0近辺でない(車輪転舵状態である)間は、操舵角θが大きいほど、また車速VSPが高いほど、横加速度Gyが大きくなって車両のアンダーステア傾向が強くなることから、左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRは大きくなり、更に、
前後加速度Gxが大きいほど、車両のアンダーステア傾向が強くなることから、左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRは大きくなる。
【0039】
過渡制御演算部33bは、運転者が現在の車速VSPのもとで操舵角θの変化速度により過渡的に要求している旋回応答のための左右後輪駆動力差過渡制御分dΔTcLRを以下のようにして求める。
つまり、車輪速Vw(車速)と、操舵角θとから、運転者が希望している目標ヨーレートtφを演算し、これを横加速度Gyに応じて上限設定する。
この目標ヨーレートtφを微分演算して該目標ヨーレートtφの変化速度dtφを求め、当該目標ヨーレートtφの変化速度dtφから、運転者が過渡的に要求している旋回応答のための目標値である左右後輪駆動力差過渡制御分dΔTcLRをマップ検索により求める。
【0040】
この左右後輪駆動力差過渡制御分dΔTcLRは、目標ヨーレートtφの変化速度dtφが高いほど、高い旋回応答を希望していることから、これに対応して大きな値となる。
ここで、ヨーレート検出値φの変化速度ではなく目標ヨーレートtφの変化速度dtφを用いる理由は、過渡制御演算部33bがフィードフォワード制御系であって、結果値である検出値φよりも、推定値である目標ヨーレートtφの方が制御の実態にマッチしているためである。
【0041】
左右後輪駆動力差演算部33は、定常制御演算部33aで前記のごとくに求めた左右後輪駆動力差定常制御分cΔTcLRと、過渡制御演算部33bで上記のごとくに求めた左右後輪駆動力差過渡制御分dΔTcLRとの和値を、車両旋回挙動時の目標とすべき左右後輪駆動力差rΔTcLRと定める。
【0042】
ただし、かかる左右後輪駆動力差rΔTcLRの付与により車両が実際に発生する実旋回挙動(実ヨーレートφ)は、横風などの外乱により、運転者がステアリング操作により要求している上記の目標旋回挙動(目標ヨーレートtφ)と一致しないことがある。
フィードバック制御部34は、これら実ヨーレートφと目標ヨーレートtφとが一致しない場合に、上記の後輪合計駆動力rTcLRおよび後輪駆動力差rΔTcLRを以下のごとくに補正して最終的な後輪合計駆動力TcLRおよび後輪駆動力差ΔTcLRとなすもので、以下のように構成する。
【0043】
フィードバック制御部34は、目標ヨーレート演算部34aと、ヨーレート偏差演算部34bと、フィードバック制御係数演算部34cとを具える。
目標ヨーレート演算部34aは、操舵角θと、横加速度Gyと、車輪速Vwを基に求めた車速VSPとから、運転者が希望している目標ヨーレートtφを演算する。
ヨーレート偏差演算部34bおよびフィードバック制御係数演算部34cは、図3の制御プログラムを実行して、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1(0または1)、および後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2(0または1)をそれぞれ決定する。
【0044】
フィードバック制御係数K1は、後輪合計駆動力rTcLRに乗じて補正後の最終的な後輪合計駆動力TcLRを求めるのに用い、
フィードバック制御係数K2は、後輪駆動力差rΔTcLRに乗じて補正後の最終的な後輪駆動力差ΔTcLRを求めるのに用いる。
【0045】
ヨーレート偏差演算部34bは、図3のステップS11において、演算部34aで上記のごとくに求めた目標ヨーレートtφと、検出した実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差Δφ(=φ−tφ)を演算する。
【0046】
フィードバック制御係数演算部34cは、図3のステップS12〜ステップS15において上記のヨーレート偏差Δφを基に、目標ヨーレートtφに対し実ヨーレートφが不感帯を超えて過剰なオーバーステア状態(φ>tφ+不感帯)か、目標ヨーレートtφに対し実ヨーレートφが不感帯を超えて不足しているアンダーステア状態(φ<tφ−不感帯)か、これら過不足が生じていないニュートラルステア状態(tφ−不感帯≦φ≦tφ+不感帯)かを判定し、その結果に応じステップS16〜ステップS18においてフィードバック制御係数K1,K2を決定する。
【0047】
上記ステア状態の判定に当たりフィードバック制御係数演算部34cは、先ずステップS12において、ヨーレート偏差Δφが図4の0を基準としてこれより上側の正値か否かを、またステップS13において、ヨーレート偏差Δφが図4の0を基準としてこれより下側の負値か否かをチェックする。
【0048】
ステップS12でヨーレート偏差ΔφがΔφ>0と判定する場合、ステップS14において、実ヨーレートφが目標ヨーレートtφに対し図4に例示した不感帯を超えて過剰なオーバーステア状態(φ>tφ+不感帯)か否かをチェックするため、ヨーレート偏差|Δφ|が図4に示すオーバーステア判定値|Δφos|を超えているか否かを判定する。
従ってステップS12およびステップS14は、本発明におけるオーバーステア判定手段に相当する。
【0049】
ステップS13でヨーレート偏差ΔφがΔφ<0と判定する場合、ステップS15において、実ヨーレートφが目標ヨーレートtφに対し図4に例示した不感帯を超えて過剰なアンダーステア状態(φ<tφ−不感帯)か否かをチェックするため、ヨーレート偏差|Δφ|が図4に示すアンダーステア判定値|Δφus|を超えているか否かを判定する。
従ってステップS13およびステップS15は、本発明におけるアンダーステア判定手段に相当する。
【0050】
ここで不感帯は例えば、運転者が車両のヨーレート変化を感じない程度の僅かなヨーレート偏差Δφに対応させる。
【0051】
ステップS12でΔφ>0に非ずと判定し、且つステップS13でΔφ<0に非ずと判定する場合、つまり実ヨーレートφが目標ヨーレートtφに一致してヨーレート偏差ΔφがΔφ=0である場合や、
ステップS14で|Δφ|≦|Δφos|と判定したり、ステップS15で|Δφ|≦|Δφus|と判定する場合、つまり実ヨーレートφが目標ヨーレートtφに対し不感帯を超えた過不足を生じておらず(tφ−不感帯≦φ≦tφ+不感帯)、ヨーレート偏差Δφが(Δφus−不感帯)≦Δφ≦(Δφos+不感帯)の不感帯内のものである場合は、
図4に示すように、オーバーステア状態でもなく、アンダーステア状態でもない、ニュートラルステア状態であることから、制御をステップS16に進めて、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1を図5に示すごとく1にすると共に、後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2も1にする。
【0052】
フィードバック制御係数K1=1は、最終的な後輪合計駆動力TcLRをTcLR=rTcLRとなし、フィードバック制御係数K2=1は、最終的な後輪駆動力差ΔTcLRをΔTcLR=rΔTcLRとなして、車両を演算部32での演算結果通りに四輪駆動走行させると共に、左右後輪間に演算部33での演算結果通りの駆動力差を設定することを意味し、
これにより、当該ニュートラルステア状態で四輪駆動走行による優れた走破性を享受しつつ、左右後輪間における駆動力差による優れた旋回応答および旋回安定性を実現することができる。
【0053】
ところでフィードバック制御係数演算部34cは、ステップS14においてオーバーステア状態(|Δφ|>|Δφos|)と判定する場合、オーバーステア用左右駆動力差制御手段に相当するステップS17において、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1を図5に示すごとく0とし、後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2も0とする。
フィードバック制御係数K1=0は、最終的な後輪合計駆動力TcLRを0となし、フィードバック制御係数K2=0は、最終的な後輪駆動力差ΔTcLRも0となして、車両を二輪駆動走行させることを意味し、これにより当該オーバーステア状態で、四輪駆動走行されることによる弊害を、後で詳述するごとく排除することができる。
【0054】
またフィードバック制御係数演算部34cは、ステップS15でアンダーステア状態(|Δφ|>|Δφus|)と判定する場合、アンダーステア用左右駆動力差制御手段に相当するステップS18において、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1を図5に示すごとく1とし、後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2を0とする。
フィードバック制御係数K1=1は、最終的な後輪合計駆動力TcLRをTcLR=rTcLRとなし、フィードバック制御係数K2=0は、最終的な後輪駆動力差ΔTcLRを0となして、車両を演算部32での演算結果通りに四輪駆動走行させるも左右後輪間に駆動力差を設定しないことを意味し、これにより、当該アンダーステア状態で四輪駆動走行による優れた走破性を享受しつつ、左右後輪間に駆動力差が設定されることによる弊害を、後で詳述するごとくに排除することができる。
【0055】
左右後輪目標駆動力演算部35は、図6に示すプロセスにより、上記した補正後の最終的な目標とすべき左右後輪合計駆動力TcLRと左右後輪駆動力差ΔTcLRとの双方を満足する左後輪目標駆動力TcLおよび右後輪目標駆動力TcRを求める。
【0056】
ステップS11においては、前記のフィードバック制御により補正した最終的な後輪合計駆動力TcLRを読み込み、
ステップS12においては、前記のフィードバック制御により補正した最終的な左右後輪駆動力差ΔTcLRを読み込む。
【0057】
ステップS13においては、ステップS11で読み込んだ後輪合計駆動力TcLRの左右均等配分量TcLR/2を求め、ステップS14においては、ステップS12で読み込んだ後輪駆動力差ΔTcLRの左右均等配分量ΔTcLR/2を求める。
ステップS15においては、後輪合計駆動力左右均等配分量TcLR/2に後輪駆動力差左右均等配分量ΔTcLR/2を加算して、旋回方向外側後輪の目標駆動力TcOUT(=TcLR/2+ΔTcLR/2)を求める。
ステップS16においては、後輪合計駆動力左右均等配分量TcLR/2から後輪駆動力差左右均等配分量ΔTcLR/2を減算して、旋回方向内側後輪の目標駆動力TcIN(=TcLR/2−ΔTcLR/2)を求める。
【0058】
かようにして求めた旋回方向外側後輪の目標駆動力TcOUTおよび旋回方向内側後輪の目標駆動力TcINは、後輪合計駆動力TcLRと後輪駆動力差ΔTcLRとの双方を達成するための旋回方向外側後輪の駆動力および旋回方向内側後輪の駆動力である。
【0059】
ステップS21以降においては、上記のごとくに求めた旋回方向外側後輪の外輪側目標駆動力TcOUTおよび旋回方向内側後輪の内輪側目標駆動力TcINを基に、左後輪目標駆動力TcLおよび右後輪目標駆動力TcRを以下の要領により決定する。
先ずステップS21において、操舵角θやヨーレートφに基づき、車両の旋回走行が左旋回か、右旋回かを判定する。
【0060】
左旋回であれば、ステップS22において、旋回方向内側輪となる左後輪の目標駆動力TcLに上記の内輪側目標駆動力TcINをセットすると共に、旋回方向外側輪となる右後輪の目標駆動力TcRに上記の外輪側目標駆動力TcOUTをセットする。
逆に右旋回であれば、ステップS23において、旋回方向外側輪となる左後輪の目標駆動力TcLに上記の外輪側目標駆動力TcOUTをセットすると共に、旋回方向内側輪となる右後輪の目標駆動力TcRに上記の内輪側目標駆動力TcINをセットする。
【0061】
図1の四輪駆動コントローラ21は左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rの締結力がそれぞれ、図2の演算部35で上記のごとく決定した左後輪目標駆動力TcLおよび右後輪目標駆動力TcRに対応したものとなるよう、左後輪側クラッチ11Lおよび右後輪側クラッチ11Rへの供給電流を制御する。
【0062】
<実施例の効果>
上述した本実施例になる四輪駆動車両の駆動力配分制御によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 図3のステップS14でオーバーステア状態(|Δφ|>|Δφos|)と判定するとき、ステップS17において、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1を0にし、後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2も0とすることで、後輪へ駆動力が伝達されない二輪駆動走行状態にするため、以下の作用効果が奏し得られる。
【0063】
つまりオーバーステア状態では、旋回方向内輪側が荷重移動により輪荷重を低下されるため、内側後輪がスリップし易くなって大きな駆動力を伝達し得ない。
ところで、オーバーステア状態を解消するためには当該内側後輪の駆動力を大きくする必要がある。
オーバーステア状態では内側後輪が上記のごとく、輪荷重の低下により大きな駆動力を伝達し得ないのに、これを無視してオーバーステア状態解消のため内側後輪への駆動力を大きくすると、内側後輪が駆動スリップを生じて、肝心なオーバーステア状態の解消が不能であるばかりでなく、車両の旋回安定性が損なわれるという問題を生ずる。
【0064】
しかして本実施例によれば、オーバーステア状態では後輪へ駆動力が伝達されないようにしたため、内側後輪の駆動スリップを生ずることがなく、車両の旋回安定性が損なわれるという上記の問題を回避することができる。
【0065】
なお、オーバーステア状態で本実施例のごとく後輪へ駆動力が伝達されない二輪駆動走行状態にすることは必須ではなく、四輪駆動走行状態のままでも、ステップS17でのK2=0により左右後輪間に駆動力差を設定しないようにすれば、つまり内側後輪の駆動力をオーバーステア状態の解消用に増大しなければ、内側後輪の駆動スリップが緩和されて、車両の旋回安定性が損なわれるという上記の問題を或る程度は回避することができる。
従って、ステップS17ではK2=0を実行するのみとしてもよい。
【0066】
(2)また 図3のステップS15でアンダーステア状態(|Δφ|>|Δφus|)と判定するとき、ステップS18において、後輪合計駆動力rTcLR用のフィードバック制御係数K1を1にし、後輪駆動力差rΔTcLR用のフィードバック制御係数K2を0とすることで、後輪へ、演算部32での演算結果通りの駆動力が伝達される四輪駆動走行状態を保ち、また左右後輪の駆動力配分を、演算部33での演算結果にかかわらず、同じにするため、以下の作用効果が奏し得られる。
【0067】
つまり、車幅方向に傾斜しているカント路面において、運転者がこの路面傾斜に伴う車両ヨーレートを打ち消すための(車両に実ヨーレートが発生しないようにするための)操舵角を与えている場合、操舵しているのにヨーレートが発生していないことから、この操舵から求めた目標ヨーレートtφと実ヨーレートφとの比較によるステア状態の判定が、本実施例のステップS15におけるように、アンダーステア状態との判定を下す。
当該アンダーステアの判定が行われると従来の駆動力配分制御では、ヨーレートが発生していない状態から目標ヨーレートと同じヨーレートが発生するよう、操舵方向外側後輪の駆動力を大きくすることとなり、車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントを付与する。
【0068】
ところで運転者は、カント路面の路面傾斜に伴う車両ヨーレートを打ち消すために操舵を行ったものであり、旋回を希望して操舵を行ったものでないことから、
車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントが付与されて、車両が対応方向へ進路を変更されると、運転者を戸惑わせるという問題を生ずる。
【0069】
しかし本実施例では、ステップS15でアンダーステア状態(|Δφ|>|Δφus|)と判定するとき、ステップS18において、K2=0により左右後輪の駆動力配分を同じにするため、車両にカント路面を駆け上がるようなヨーモーメントを付与することがなく、車両が対応方向へ進路を変更されて運転者を戸惑わせるという問題を解消することができる。
【0070】
しかも、このアンダーステア判定時は、同時にステップS18で、K1=1により後輪への駆動力伝達を継続するため、四輪駆動走行による優れた走破性を享受しつつ、上記の問題解決を実現することができる。
【0071】
<その他の実施例>
なお本実施例では図5に示すように、ヨーレート偏差Δφがオーバーステア判定値Δφosを超えるオーバーステア判定時に後輪合計駆動力用フィードバック制御係数K1を1から0に切り替え、ヨーレート偏差Δφがオーバーステア判定値Δφosまで低下するニュートラルステア判定時に後輪合計駆動力用フィードバック制御係数K1を0から1に切り替えるようにしたが、
この切り替えがヨーレート偏差Δφに応じて徐々に切り替わるようにし、これにより後輪合計駆動力TcLR(図2参照)が、演算部32での演算値rTcLRと0との間で急変することのないようにするのが、違和感を防止する上で好ましい。
【符号の説明】
【0072】
1L,1R 左右前輪(左右主駆動輪)
2L,2R 左右後輪(左右副駆動輪)
3 エンジン
4 変速機(トランスアクスル)
5L,5R 左右前輪アクスルシャフト
6 トランスファー
7 プロペラシャフト
8 左右後輪駆動力配分ユニット
9L,9R 左右後輪アクスルシャフト
10 センターシャフト
11L 左後輪側クラッチ(左副駆動輪側クラッチ)
11R 右後輪側クラッチ(右副駆動輪側クラッチ)
12 終減速機
21 四輪駆動コントローラ
22 車輪速センサ
23 アクセル開度センサ
24 操舵角センサ
25 変速機出力回転センサ
26 エンジン回転センサ
27 ヨーレートセンサ
28 前後加速度センサ
29 横加速度センサ
31 入力信号処理部
32 後輪合計駆動力演算部
33 左右後輪駆動力差演算部
33a 定常制御演算部
33b 過渡制御演算部
34 フィードバック制御部
34a 目標ヨーレート演算部
34b ヨーレート偏差演算部
34c フィードバック制御係数演算部
35 左右後輪目標駆動力演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動輪に向かう駆動力の一部を制御下に副駆動輪へ伝達可能で、該副駆動輪への合計駆動力を左右副駆動輪へ制御下に分配出力する四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
車両運転状態から求めた目標旋回挙動に対して実旋回挙動が過剰なオーバーステア状態であるのを判定するオーバーステア判定手段と、
該手段でオーバーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするオーバーステア用左右駆動力差制御手段とを具備してなることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【請求項2】
主駆動輪に向かう駆動力の一部を制御下に副駆動輪へ伝達可能で、該副駆動輪への合計駆動力を左右副駆動輪へ制御下に分配出力する四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
車両運転状態から求めた目標旋回挙動に対して実旋回挙動が不足しているアンダーステア状態を判定するアンダーステア判定手段と、
該手段でアンダーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするアンダーステア用左右駆動力差制御手段とを具備してなることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【請求項3】
主駆動輪に向かう駆動力の一部を制御下に副駆動輪へ伝達可能で、該副駆動輪への合計駆動力を左右副駆動輪へ制御下に分配出力する四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
車両運転状態から求めた目標旋回挙動に対して実旋回挙動が過剰なオーバーステア状態であるのを判定するオーバーステア判定手段と、
該手段でオーバーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするオーバーステア用左右駆動力差制御手段と、
前記目標旋回挙動に対して実旋回挙動が不足しているアンダーステア状態を判定するアンダーステア判定手段と、
該手段でアンダーステア状態と判定されるとき、前記左右副駆動輪間の駆動力差を0にするアンダーステア用左右駆動力差制御手段とを具備してなることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【請求項4】
請求項1または3に記載された四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
前記オーバーステア判定手段は、前記目標旋回挙動に対して実旋回挙動が不感帯を超えた過剰状態である時をもってオーバーステア状態と判定するものであることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載された四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
前記アンダーステア判定手段は、前記目標旋回挙動に対して実旋回挙動が不感帯を超えた不足状態である時をもってアンダーステア状態と判定するものであることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【請求項6】
請求項1,3,4のいずれか1項に記載された四輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
前記オーバーステア判定手段でオーバーステア状態と判定されるとき、主駆動輪側から副駆動輪側へ伝達される前記副駆動輪への合計駆動力を0にするオーバーステア用副駆動輪駆動力制御手段とを具備してなることを特徴とする四輪駆動車両の駆動力配分制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−17052(P2012−17052A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156665(P2010−156665)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】