説明

回路接続方法

【課題】2層FPCを用いる場合にも、十分に高い接着強度を有する接続体を得ることが可能な回路接続方法を提供すること。
【解決手段】ポリイミドフィルム11及びこれの主面上に直接形成された第一の回路電極13を有するフレキシブルプリント配線板10と、回路基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対向するように配置し、第一の回路電極13と第二の回路電極23とを、回路接続材料1を介して電気的に接続する回路接続方法であって、ポリイミドフィルム11の厚みが45μm以上である、回路接続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極を備える回路部材同士を接続する方法として、異方導電性フィルム(ACF)等の熱硬化型接着剤を、回路部材間に介して熱圧着する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。この方法では、熱硬化型樹脂を硬化させて回路部材間の機械的固着を得るとともに、対向する電極間を直接又は導電性粒子を介して接触させて、電気的接続を得ることができる。
【0003】
このような方法として、例えば、TAB(Tape Automated Bonding)実装方法が用いられている。TAB実装方法には、3層からなるフレキシブルプリント配線板(3層FPC)を用いるTCP(Tape Carrier Package)実装方法と、2層からなるフレキシブルプリント配線板(2層FPC)を用いるCOF(Chip On Flex)実装方法がある。従来、TCP実装方法が用いられてきたが、近年では、製品の軽量化や高密度実装化に伴い、より薄膜化、狭電極ピッチ化が可能なCOF実装方法が主流となりつつある。
【特許文献1】特開平01−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、COF実装方法のように2層FPCを用いる場合には、得られる接続体の接着強度が必ずしも高くないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、2層FPCを用いる場合にも、十分に高い接着強度を有する接続体を得ることが可能な回路接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、2層FPCを構成するポリイミドフィルムの厚みを45μm以上とすることによって、COF実装を行う場合にも、十分に高い接着強度を有する接続体を得ることが可能となることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリイミドフィルム及びこれの主面上に直接形成された第一の回路電極を有するフレキシブルプリント配線板と、回路基板及びこれの主面上に形成された第二の回路電極を有する回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極とが対向するように配置し、第一の回路電極と第二の回路電極とを、回路接続材料を介して電気的に接続する回路接続方法であって、ポリイミドフィルムの厚みが45μm以上である、回路接続方法である。ポリイミドフィルムの厚みを45μm以上とすることによって、フレキシブルプリント配線板(FPC)の強度が向上し、それにより、FPCを回路部材と接続して得られる接続体の接着強度も向上するものと考えられる。
【0008】
回路接続材料は、接着剤組成物と当該接着剤組成物中に分散した導電性粒子とを含む異方導電性接着剤であることが、接続信頼性の観点から好ましい。また、回路接続材料は、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質とを含むことが好ましい。すなわち、上記接着剤組成物は、ラジカル硬化系の接着剤組成物であることが好ましい。ラジカル硬化系の接着剤組成物を用いることにより、より低温短時間での接着が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2層FPCを用いる場合にも、十分に高い接着強度を有する接続体を得ることが可能な回路接続方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明に係る回路接続方法により得られる接続体100の一実施形態を示す端面図である。本実施形態に係る回路接続方法は、厚みが45μm以上のポリイミドフィルム11及びこれの主面上に直接形成された第一の回路電極13を有するフレキシブルプリント配線板10と、回路基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対向するように配置し、第一の回路電極13と第二の回路電極23とを、回路接続材料1を介して電気的に接続して、接続体100を得る。
【0012】
接続体100は、ポリイミドフィルム11の厚みが45μm以上であることによって、十分に高い接着強度を備える。さらに、ポリイミドフィルム11の厚みが60μm以上であると、より高い接着強度向上効果が得られることから好ましい。また、接続体100の薄膜化の観点から、ポリイミドフィルム11の厚みは100μm未満であることが好ましい。
【0013】
フレキシブルプリント配線板10は、ポリイミドフィルム11と、ポリイミドフィルム11の主面上に直接形成された第一の回路電極13とを備える2層構造となっている。第一の回路電極13は、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等からなる回路電極である。入手が容易であることから、一般に、銅からなる回路電極が用いられる。フレキシブルプリント配線板10は例えば、ポリイミドフィルムとその主面上に直接形成された銅回路電極からなる2層構造をした2層FPCと呼ばれるものである。
【0014】
回路部材20は、ガラス基板である回路基板21と、回路基板21の主面上に形成された第二の回路電極23とを有する。回路基板21としては、ガラス基板の他にも、半導体、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、又はこれらの複合材からなる基板を用いることができる。第二の回路電極23は、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等からなる回路電極である。入手が容易であることから、一般に、銅からなる回路電極が用いられる。回路部材20は例えば、ガラスとその主面上に形成された銅回路電極とを有するPCB(Print Circuit Board)基板である。
【0015】
図2は、本実施形態に係る回路接続材料1を示す端面図である。本実施形態に係る回路接続材料1は、接着剤組成物3と接着剤組成物3中に分散した導電性粒子5とを含む異方導電性接着剤である。回路接続材料1は、接着剤組成物3のみからなるものでも構わないが、接続信頼性の観点から導電性粒子5を含む異方導電性接着剤であることが好ましい。
【0016】
導電性粒子5としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属からなる粒子や、カーボンからなる粒子が挙げられる。また、導電性粒子5は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属やカーボンを被覆したものでもよく、これらのうち、プラスチックを核とするものが特に好ましい。プラスチックを核とする導電性粒子5は、加熱加圧により変形性を有するため、接続時に回路電極の高さバラツキを吸収する点で好ましく、また、回路電極との接触面積が増加して接続信頼性が向上する点でも好ましい。導電性粒子5の具体例としては、ポリスチレンからなる粒子の表面にニッケル層を設け、さらにその外側に金層を設けたものや、可撓性エポキシ樹脂の硬化物からなる粒子(可撓性エポキシ硬化球)の表面にニッケル層を設けたものなどが挙げられる。
【0017】
さらに、これらの導電性粒子の表面を高分子樹脂などで被覆した粒子(非導電性粒子)を、単独であるいは導電性粒子5と共に、接着剤組成物3中に分散させてもよい。このような非導電性粒子を接着剤組成物3中に分散させることにより、導電性粒子5の配合量を増加した場合に生じ得る導電性粒子5同士の接触による短絡を抑制し、電極回路13同士又は電極回路23同士の間の絶縁性を向上することができる。
【0018】
導電性粒子5の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電性粒子5の配合量は、特に制限されないが、接着剤組成物3に対して0.1〜30容量%とすることが好ましく、0.1〜10容量%とすることがより好ましい。この値が、0.1容量%未満であると導電性が低くなる傾向があり、30容量%を超えると回路の短絡が起こりやすくなる傾向がある。
【0019】
接着剤組成物3は、光照射もしくは加熱により、または、光照射、加熱及び加圧を併用することにより、硬化して接着性を生じるものである。接着剤組成物3は、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質とを含むラジカル硬化系のものであることが好ましい。エポキシ硬化系等、公知のものを使用することもできるが、より低温短時間での接着が可能となるため、ラジカル硬化系のものを用いることが好ましい。
【0020】
このような接着剤組成物3を含む回路接続材料1を、フレキシブルプリント配線板10と回路部材20との間に挟んだ状態で、光照射及び/又は加熱しながら加圧することにより、フレキシブルプリント配線板10と回路部材20とを接続することができる。
【0021】
光照射には、150〜750nmの波長域の照射光を用いることが好ましく、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を用いて0.1〜10J/cmの照射量で硬化することができる。加熱温度は、特に制限されないが、80〜200℃であることが好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限されないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。加熱及び加圧は、0.5秒〜3時間の範囲で行うことが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
回路接続材料の製造
(製造例1)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45000)50gを、トルエン(沸点110.6℃)と酢酸エチル(沸点77.1℃)の混合溶剤(質量比でトルエン:酢酸エチル=1:1)に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を得た。
【0024】
このフェノキシ樹脂溶液に、ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート(平均分子量20000)及びリン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名ライトエステルP−2M)と、硬化剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキサTMH)を、以下の固形質量比で配合し、得られた溶液を「溶液1」とした。
フェノキシ樹脂:ウレタンアクリレート:リン酸エステルジメタクリレート:硬化剤=10:10:2:1
【0025】
ポリスチレンからなる粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設け、平均粒径5μmの導電性粒子を作製した。この導電性粒子を、上記「溶液1」に対して1.5容量%配合し分散させて、混合溶液を得た。
【0026】
得られた混合溶液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより溶剤を除去して、フッ素樹脂フィルム上に形成された厚み40μmのフィルム状の異方導電性接着剤(回路接続材料)を得た。
【0027】
(製造例2)
フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)を、トルエン(沸点110.6℃)と酢酸エチル(沸点77.1℃)の混合溶剤(質量比でトルエン:酢酸エチル=1:1)に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を得た。また、アクリルゴム(平均分子量100000)を、同様の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%のアクリルゴム溶液を得た。
【0028】
これらフェノキシ樹脂溶液及びアクリルゴム溶液と、「ノバキュアHX−3941HP」(旭化成工業株式会社製、商品名)とを、以下の固形質量比で配合し、得られた溶液を「溶液2」とした。
フェノキシ樹脂:アクリルゴム:「ノバキュアHX−3941HP」(固形分)=3:2:5
【0029】
上記「ノバキュアHX−3941HP」は、液状エポキシ樹脂中に非導電性粒子を分散させたものであり、ここで「非導電粒子」は、イミダゾール変性体を核とし、その表面を架橋ポリウレタンで被覆し、マイクロカプセル化した粒子(平均粒径2.5μm)である。
【0030】
可撓性エポキシ樹脂の硬化物からなる粒子(可撓性エポキシ硬化球)の表面に、無電解ニッケルめっきにより厚み0.1μmのニッケル層を設け、平均粒径5.2μmの導電性粒子を作製した。この導電性粒子を、上記「溶液2」に対して1.5容量%配合し分散させて、混合溶液を得た。
【0031】
得られた混合溶液を、厚み50μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム上に塗布し、90℃で15分間乾燥することにより溶剤を除去して、上記ポリプロピレンフィルム上に形成された厚み25μmのフィルム状の異方導電性接着剤(回路接続材料)を得た。
【0032】
回路接続
(実施例1)
厚み75μmのポリイミドフィルム上に銅回路(ライン幅250μm、ピッチ500μm、厚み8μm)が直接形成された2層FPCと、銅回路(ライン幅250μm、ピッチ500μm、厚み35μm)付きPCB基板(厚み0.7mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0033】
製造例1で得たフッ素樹脂フィルム上に形成された回路接続材料(2×40mm)を、フッ素樹脂フィルムが付いた状態で、銅回路付きPCB基板の銅回路側の面に、65℃、0.98MPa(10kgf/cm)にて貼り付けた。その後、フッ素樹脂(セパレータ)を剥離し、2層FPCを、その銅回路側の面が回路接続材料と接するように配置した。その状態で、160℃、3MPaの条件で20秒間加熱及び加圧を行うことにより、2層FPCと銅回路付きPCB基板とを接続し、接続体を得た。
【0034】
(実施例2)
回路接続材料として、製造例2で得た回路接続材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、接続体を得た。
【0035】
(比較例1)
2層FPCとして、ポリイミドフィルムの厚みが20μmである2層FPCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、接続体を得た。
【0036】
(比較例2)
回路接続材料として、製造例2で得た回路接続材料を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、接続体を得た。
【0037】
接着強度
実施例1〜2及び比較例1〜2で得た接続体の接着強度を、JIS−Z0237に準じて90度剥離法により測定した。測定装置としては、東洋ボールドウィン株式会社製、商品名テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を用いた。
【0038】
実施例1で得た接続体の接着強度は700〜800N/m、実施例2で得た接続体の接着強度は600〜700N/mであり、実施例1〜2で得た接続体はいずれも、十分に高い接着強度を示した。これに対し、比較例1〜2で得た接続体の接着強度は、400〜500N/mであり、実施例で得た接続体と比べて顕著に劣る、不十分なものであった。すなわち、本発明に係る回路接続方法によれば、2層FPCを用いる場合にも、十分に高い接着強度を有する接続体を得ることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る回路接続方法は、COF実装により2層FPCと他の回路部材との接続を行う場合に好適に用いられる。具体的には、ドライバICを液晶ディスプレイに対して実装する場合などに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る回路接続方法により得られる接続体の一実施形態を示す端面図である。
【図2】本実施形態に係る回路接続材料を示す端面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…回路接続材料、3…接着剤組成物、5…導電性粒子、10…フレキシブルプリント配線板、11…ポリイミドフィルム、13…第一の回路電極、20…回路部材、21…回路基板、23…第二の回路電極、100…接続体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルム及びこれの主面上に直接形成された第一の回路電極を有するフレキシブルプリント配線板と、
回路基板及びこれの主面上に形成された第二の回路電極を有する回路部材とを、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが対向するように配置し、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを、回路接続材料を介して電気的に接続する回路接続方法であって、
前記ポリイミドフィルムの厚みが45μm以上である、回路接続方法。
【請求項2】
前記回路接続材料が、接着剤組成物と当該接着剤組成物中に分散した導電性粒子とを含む異方導電性接着剤である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記回路接続材料が、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質とを含む、請求項1又は2記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−60075(P2009−60075A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334571(P2007−334571)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】