説明

回路接続材料及び回路部材の接続体

【課題】狭小化した電極を有する回路部材を接続するために用いても、十分に低い接続抵抗が達成される回路接続材料及び、上記回路接続材料を用いた回路部材の接続体を提供すること。
【解決手段】(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、(B)接着剤成分と、(C)導電粒子と、を含有し、上記シリカフィラーの量が上記接着剤成分の総量に対して10〜60質量%又は5〜30体積%である回路接続材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料及び回路部材の接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)実装の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着剤を回路接続材料として用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、その後、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。なお、ここでいう異方導電性とは、加圧方向に導電性を有しつつ非加圧方向には絶縁性を保つという意味である。
【0003】
従来のCOG実装では、導電粒子を含有する接着剤層と絶縁性接着剤層からなる二層タイプの回路接続材料が使用され、ガラスパネル側に導電粒子を含有する接着剤層を貼っていた(特許文献1)。この方式では、実装時に絶縁性接着剤層が流動しやすいために導電粒子の流動を抑えることができ、導電粒子の電極上の捕捉率を向上させることができる。また、チップ側には絶縁性接着剤層が配置されているため、バンプ間への導電粒子の入り込みを減少させることができ、ショートの発生を改善することができる。
【0004】
一方、フィラーを添加することによって接着剤にチキソトロピー性を付与することができ、樹脂粘度を増加させ、比重の高い導電粒子の沈降を防ぐ検討も行われてきた(特許文献2)。
【0005】
また、接着剤層を帯電させ、その逆電荷で帯電させた導電粒子を接着剤層に散布して一層の導電粒子層を作製する方法も開発されている(特許文献3)。導電粒子を帯電させることによって粒子同士が反発し、分散性が向上する。その結果、使用する導電粒子数が少なく、コストの削減につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−194359号公報
【特許文献2】特開2003−64330号公報
【特許文献3】特開平10−302926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、液晶パネルの小型化、薄型化が進行する中、接続回路面積の狭小化が要求される状況にある。
【0008】
一方で、従来の回路接続材料を、狭小化した電極を有する回路部材を接続するために用いると、回路電極の間に導電粒子が流出することで、バンプとガラスパネルとの間に捕捉される導電粒子数が減少してしまい、結果として、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良が発生することが問題となっていた。
【0009】
そこで本発明では、狭小化した電極を有する回路部材を接続するために用いても、十分に低い接続抵抗が達成される回路接続材料及び、上記回路接続材料を用いた回路部材の接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本発明者らは、フィラーを回路接続材料中に高充填することで樹脂の流動性を低下させ、導電粒子の電極上への捕捉率を向上させる検討を行った。また、フィラーの高充填によって、導電粒子間にフィラーが存在し十分な導電粒子間距離を確保することが可能になれば、絶縁特性の向上も可能になると考えた。
【0011】
一般に、フィラーは、有機フィラーと、シリカフィラーに代表される無機フィラーと、に大別される。有機フィラーの場合、シリカフィラーのような極小微粒子の作製が困難であるため、その平均粒径は、一般に100nmを超える。そのため、導電阻害を引き起こす可能性や、フィルム化時に塗工筋が発生する可能性が高くなる。また、極小微粒子の有機フィラーは高価であるため、大量に使用するのはコストの増大につながる。
【0012】
そこで、本発明者らは、極小微粒子を安価で作製できるシリカフィラーに関して検討を行った。そして、鋭意研究を行った結果、シリカフィラーを疎水化処理することで、回路接続材料中でのシリカフィラーの分散性が向上し、高充填が容易となることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、(B)接着剤成分と、(C)導電粒子と、を含有し、上記シリカフィラーの量が上記接着剤成分の総量に対して10〜60質量%である回路接続材料を提供する。
【0014】
また、本発明は、(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、(B)接着剤成分と、(C)導電粒子と、を含有し、上記シリカフィラーの量が上記接着剤成分の総量に対して5〜30体積%である回路接続材料を提供する。
【0015】
上記構成を備える回路接続材料は、狭小化した電極を有する回路部材を接続するために用いても、十分に低い接続抵抗が達成され、上記回路接続材料を用いた回路部材の接続体を提供することが可能となる。
【0016】
上記シリカフィラーの量は、10〜40質量%であることが好ましい。
【0017】
また一方で、上記シリカフィラーの量は、5〜20体積%であることが好ましい。
【0018】
上記シリカフィラーの平均粒径は、5〜50nmであることが好ましく、5〜15nmであることがより好ましい。
【0019】
上記シリカフィラーは、シリコーンオイルを付着又は結合させることにより、疎水化処理が施されていることが好ましい。
【0020】
上記シリカフィラーの炭素含有率は、3〜10質量%であることが好ましい。
【0021】
上記導電粒子の平均粒径と、上記シリカフィラーの平均粒径との比は、(上記導電粒子の平均粒径)/(上記シリカフィラーの平均粒径)=20〜400であることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記導電粒子の単分散率が、80%以上である上記回路接続材料を提供する。
【0023】
本発明は、3000μm以下の面積の電極を有する回路部材と、他の回路部材とを接続するために用いられる上記回路接続材料を提供する。
【0024】
本発明は、12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極を有する回路部材と、他の回路部材とを接続するために用いられる上記回路接続材料を提供する。
【0025】
本発明は、第一の電極を有する第一の回路部材と、上記回路接続材料が硬化した硬化物と、第二の電極を有する第二の回路部材と、をこの順に備え、上記第一の回路部材と上記第二の回路部材とが、上記第一の電極と上記第二の電極とが対向するように配置されて接続されている、回路部材の接続体を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、狭小化した電極を有する回路部材を接続するために用いても、十分に低い接続抵抗が達成される回路接続材料及び、上記回路接続材料を用いた回路部材の接続体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】フィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
【図2】回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、場合により図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明の回路接続材料は、(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、(B)接着剤成分と、(C)導電粒子と、を含有し、上記シリカフィラーの量が上記接着剤成分の総量に対して10〜60質量%又は5〜30体積%であることを特徴とする。以下、各成分について詳述する。
【0030】
(A:シリカフィラー)
本実施形態に係るシリカフィラーとしては、例えば、乾式シリカ、シリカアエロゲル、湿式シリカ等が挙げられるが、シリカ表面の疎水処理が行いやすいという観点から、乾式シリカが特に好ましい。
【0031】
上記シリカフィラーの平均粒径は、3〜100nmであり、5〜50nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましく、5〜20nmであることが特に好ましく、5〜15nmであることが非常に好ましく、7〜15nmであることが極めて好ましい。上記範囲とすることで、シリカフィラーの凝集が抑制でき、フィルム化するときにも凝集したシリカフィラーに起因する塗工傷や物性ばらつきや厚みばらつきを改善することができ、更にフィルム成型性を維持することが可能になる。一方、上記シリカフィラーの平均粒径が3nm未満では、シリカフィラーの凝集が強く、分散し難くなる傾向にあり、100nmを超えると増粘効果又はチキソトロピー性の改善効果が不十分となる傾向にある。上記シリカフィラーの平均粒径は、動的光散乱法により、測定できる。
【0032】
上記シリカフィラーには、疎水化処理を施す。本実施形態における「疎水化処理」とは、シリコーンオイル又はシランカップリング剤を、シリカフィラーに付着又は結合させることを意味する。上記シリコーンオイル又はシランカップリング剤が、後述する反応性有機基を有する場合、疎水化処理によって、上記シリカフィラーに反応性有機基を担持させることができる。その結果、上記シリカフィラーの回路接続材料への高充填化が容易になる。さらに、上記疎水化処理によって、シリカフィラーの吸水率が低下し、短絡の発生が抑制される。上記反応性有機基は、本発明における接着剤成分と反応し、且つ硬化反応等に特に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。このような反応性有機基としては、例えば、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基、メタクリロキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。これらの反応性有機基のうち、活性水素を有するアミノ基(−NH)、メルカプト基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、ウレイド基(−NHCONH)、及びヒドロキシ基(−OH)は、接着剤成分中の親水基、例えばエポキシ樹脂の端部に存在するエポキシ基(オキシラン環)に付加又は水素結合を形成すると考えられるため好ましい。また、グリシジル基はエポキシ基とアミン系触媒の存在下で開環付加反応すると考えられるため好ましい。
【0033】
これらの反応性有機基をシリカフィラーに担持させるためには、例えば、上記反応性有機基と、シリカフィラーに結合し得る官能基とを分子内に併せ持つ化合物を用いてシリカフィラーの疎水化処理を行うことが好ましい。このような化合物の例としては、以下に示すようなシランカップリング剤やシリコーンオイルが挙げられる。
【0034】
(a)シランカップリング剤
本実施形態に係るシリカフィラーの疎水化処理に好適なシランカップリング剤としては、下記一般式(I)で表される化合物がある。
【0035】
SiY (I)
【0036】
上記式中、Xは、シリカフィラーとの結合をもたらす官能基又は、アルキル基を示し、mは1〜3の整数を示す。Xのうち少なくとも1つは、シリカフィラーとの結合をもたらす官能基であることが好ましい。上記シリカフィラーとの結合をもたらす官能基としては、例えば、アルコキシ基、アシロキシ基、オキシム基(−C(R)=NOH)及びハロゲン原子が挙げられる。シリカフィラーの疎水化処理過程において、これらの基は加水分解されてヒドロキシ基に置換され、シランカップリング剤がシリカフィラーと共有結合及び水素結合等を介して結合すると考えられる。上記アルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、アシロキシ基はアセトオキシ基であることが好ましく、ハロゲン原子は塩素原子であることが好ましい。
【0037】
上記式中のYは、反応性有機基を有する基を示し、例えば、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、メタクリロキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性有機基で置換された炭化水素基が挙げられる。nは1〜3の整数を示し、m+nが4になるように選ばれる。上記炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましく、3〜8がより好ましい。炭化水素基中の炭素原子の一部が酸素原子で置換されていてもよい。
【0038】
このようなシランカップリング剤としては、これらに限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタククリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン及びビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シランが挙げられる。これらは一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
(b)シリコーンオイル
本実施形態に係るシリカフィラーの疎水化処理に、好適に用いられるシリコーンオイルは、ジメチルポリシロキサン及びメチルハイドロジェンポリシロキサン等に代表されるシリコーンオイルにおいて、末端又は側鎖のアルキル基が、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、グリシジル基及びメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性有機基で置換されている変性シリコーンオイル等である。これらの変性シリコーンオイルは、例えば下記一般式(II)で表される構造を有する。
【0040】
【化1】

【0041】
上記式中、Aは、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、グリシジル基、及びメルカプト基から選ばれる反応性有機基を示し、Rは水素又はアルキル基(好ましくはメチル基)を示し、Rはメチレン基等の低級アルキレン基、x及びyは1以上の整数を示し、好ましくは1〜3を示す。なお、反応性有機基Aを有するシロキサン単位はブロック状に連続していてもよいが、一般的には反応性有機基は分子内のシロキサン単位を規則的に又はランダムに置換する。上記反応性有機基によってシリコーンオイルと接着剤成分との反応が可能となる。このような変性シリコーンオイルは、市販品を入手すればよく、例えば、信越化学工業社製のKF96(商品名)が挙げられる。
【0042】
上記反応性有機基の量は、シリコーンオイルを基準として、0.01〜2.0質量%であることが好ましい。この量が0.01質量%未満では接着剤成分との反応が不十分でチキソトロピー性等の改善効果が満足のいく水準に達しない傾向があり、2.0質量%を超えるとシリコーンオイルとしての特徴が損なわれ、シリカフィラーとの結合性が低下する傾向にある。変性シリコーンオイルは、重合度が10〜500のものが好ましい。この重合度が10未満では揮発性が高くシリカフィラーを疎水化処理する際に加熱によって揮散してしまう傾向があり、500を超えると粘度が高くなりシリカフィラーを均一に疎水化処理することができなくなる傾向にある。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
(c)疎水性向上剤
シリカフィラーの疎水性を更に向上させ、接着剤成分の増粘性、チキソトロピー性を向上させるため、シリカフィラーを、上記シランカップリング剤及び/又はシリコーンオイルで疎水化処理した後、又は同時に、疎水性向上剤で処理しても良い。この疎水性向上剤は、シリカフィラーと反応又は物理的に吸着する有機珪素化合物等であることが好ましく、例えば、へキサメチルジシラザン、ジメチルポリシロキサン、アルキルトリアルコキシシラン及びジアルキルジアルコキシシランが挙げられる。これらは一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
シリカフィラーに対して、上記シランカップリング剤、上記シリコーンオイル等を用いて疎水化処理する方法は特に制限されず、一般に知られている方法を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される攪拌装置を備えた容器に、シリカフィラーを装入し、攪拌しながら上記シランカップリング剤又はシリコーンオイルを添加し、均一に混合する。混合がより均一に行われるように、スプレーによって噴霧添加することが好ましい。同時に、又は、これらの疎水化処理の前若しくは後に上記疎水性向上剤を添加してもよい。
【0045】
上記シランカップリング剤及び上記シリコーンオイルの量は、シリカフィラー100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。この量が1質量部未満であると、未処理部分が発生しやすくなる傾向にあり、50質量部を超えると過剰なシリコーンオイルがワニスに溶解する傾向にある。
【0046】
上記シランカップリング剤及び/又はシリコーンオイルの添加混合後、混合物を10分間から1時間程度加熱することが好ましい。加熱温度は、100〜350℃であることが好ましい。この温度が100℃未満では、シランカップリング剤とシリカフィラーとの反応やシリコーンオイルのシリカフィラーへの吸着及び配向が不十分となり、満足な効果を発揮することが困難な傾向にあり、350℃を超えると有機珪素が有する官能基の分解が始まる傾向にある。
【0047】
このように疎水化処理が施されたシリカフィラーの炭素含有率が、3〜10質量%であることが好ましい。炭素含有率がこの範囲であることでシリカフィラーの疎水化が充分にされ、本発明の効果が奏されやすくなる。この炭素含有率は、電量法によって、シリカフィラーに含まれる炭素をCOに変化させて測定する。燃焼によるCOの生成は、例えば、1000℃に電気加熱したチューブ炉で行うことができる。触媒混合物の使用によって、ほぼ完全な燃焼を起こすことができる。電量法測定は、高度に自動化した機器で行われ、LECO社製の器具(商品名:OENORM G 1072)を好適に使用することができる。試料に含まれる炭素は、誘導炉で酸素と反応してCOとなり、更に触媒存在下、450℃で再酸化することでCOに変化し、生成したCOの濃度又は質量は赤外線セルで測定することができる。測定したCO量を基に、次式によってシリカフィラーの炭素含有率を求めることができる。[シリカフィラーの炭素含有率(質量%)]=(検出炭素量/試料量)×100
【0048】
ここではシリカフィラーと接着剤成分とを混合する前に予め疎水化処理をすることを例示したが、接着剤成分中に上記シランカップリング剤、上記シリコーンオイルを含有させ、それにシリカフィラーを分散させることによって疎水化してもよい。
【0049】
シリカフィラーの量は、接着剤成分の総量に対して10〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更により好ましく、20〜40質量%であることが極めて好ましい。この範囲とすることで回路接続材料の接続抵抗値が低く抑えられると共に、回路接続材料中の導電粒子の総数に対する電極上に留まっている導電粒子数の割合(以下、粒子捕捉率と呼ぶ)が向上する。
【0050】
また、シリカフィラーの量は、接着剤成分の総量に対して5〜30体積%であることが好ましく、5〜25体積%であることがより好ましく、5〜20体積%であることが更により好ましく、10〜20体積%であることが極めて好ましい。この範囲とすることで回路接続材料の接続抵抗値が低く抑えられると共に、粒子捕捉率が向上する。
【0051】
さらに、具体的な機構は明らかではないものの、通常、シリカフィラーの高充填に従って低下する回路接続材料のタック力の低下も改善することが可能となる。
【0052】
(B:接着剤成分)
本実施形態に係る回路接続材料に用いられる接着剤成分としては、例えば、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物を好適に用いることができる。このうち、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物を用いることがより好ましい。また、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物や、紫外線等のエネルギー線を照射することによって硬化するエネルギー線硬化性樹脂も接着剤成分として用いることができる。
【0053】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD等と、から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、から誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、或いはグリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、及び脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物から得られるエポキシ樹脂が挙げられる。これらは一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0054】
上記潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、及びジシアンジアミドが挙げられる。市販品としては、例えば、旭化成イーマテリアルズ株式会社製 ノバキュアHX−3941が挙げられる。
【0055】
さらに接着剤成分には、接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、上述の成分に加えてブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコーンゴム等のゴム成分を混合することもできる。また、本発明の課題達成を妨げない範囲内で、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びイソシアネート類等を含有させることもできる。
【0056】
さらに、フィルム形成性の観点から接着剤成分にフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂(フィルム形成性高分子)を配合することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子を配合することは、熱反応性樹脂の硬化時の応力を緩和できる観点からも好ましい。また、接着性向上の観点から、フィルム形成性高分子がヒドロキシ基等の官能基を有することがより好ましい。なお、回路接続材料はペースト状で使用してもよい。
【0057】
(C:導電粒子)
本実施形態に係る導電粒子としては、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、ITO及びはんだ等の金属粒子、並びに、カーボン等の粒子等が挙げられる。導電粒子は、核となる粒子を1又は2以上の層で被覆し、最外層が導電性の層である粒子であってもよい。この場合、最外層はニッケル、金及びパラジウム等が好ましい。また、導電粒子は、ニッケル等の遷移金属類の表面を金やパラジウムで被覆したものでもよい。
【0058】
さらに、導電粒子として、非導電性のガラス、セラミック及びプラスチック等の絶縁粒子に上述した金属等の導電性物質を被覆したものも使用することができる。導電粒子が、絶縁粒子に導電性物質を被覆したものであって、最外層を金若しくはパラジウムとして、核となる絶縁粒子をプラスチックとした場合、又は導電粒子が熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧によって変形性を有し、接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。このような導電粒子は、例えば、核となる絶縁粒子に金属をめっき等によって被覆することで作製することができる。この被覆する方法としては、無電解めっき、置換めっき、電気めっき及びスパッタリング等の方法が挙げられる。これら導電粒子は球状の形状である方が本発明の効果を得られやすく好ましい。
【0059】
上記導電粒子の平均粒径は、接続する回路の電極の高さよりも小さいと、隣接電極間の短絡が減少する傾向にあることから、1〜10μmであると好ましく、1〜8μmであるとより好ましく、2〜6μmであると更により好ましく、3〜5μmであると特に好ましく、3〜4μmであると最も好ましい。また10%圧縮弾性率(K値)が100〜1000kgf/mmのものを適宜選択して使用することができる。
【0060】
上記導電粒子の平均粒径は、次のようにして求めることができる。すなわち、1個の核粒子を任意に選択し、これを示差走査電子顕微鏡で観察してその最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の粒径とする。この方法で、任意に選択した核粒子50個について粒径を測定し、その平均値を導電粒子の平均粒径とする。
【0061】
また、上記導電粒子の平均粒径と上記シリカフィラーの平均粒径との比は、(上記導電粒子の平均粒径)/(上記シリカフィラーの平均粒径)=20〜400が好ましく、300〜400がより好ましい。このような条件にすることで、シリカフィラーの凝集による接続抵抗への影響を小さくすることができる。
【0062】
さらに必要に応じて、これら導電粒子を絶縁被覆処理することができる。絶縁被覆処理としては、絶縁性小粒子を導電粒子に付着又は結合させる方法、導電粒子の表面に絶縁性樹脂による膜を形成する方法等が挙げられる。
【0063】
上記絶縁性小粒子としては、無機酸化物微粒子及び有機微粒子等が挙げられるが、対向する回路電極間の導電性を十分高くする観点から、無機酸化物微粒子であることが好ましい。無機酸化物微粒子としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムから選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物からなる微粒子を好適に用いることができる。これらの中でも絶縁性を良好にする観点から、シリカであることが好ましく、平均粒径を制御した水分散コロイダルシリカであることがより好ましい。
【0064】
絶縁性小粒子の平均粒径は、20〜500nmであることが好ましい。この平均粒径が20nm未満であると、絶縁被覆導電粒子を被覆する絶縁性小粒子が絶縁層として機能せずに、同一基板上で互いに隣り合う回路電極間の短絡を十分に抑制できない傾向がある。一方、500nmを超えると、対向する回路電極間の導電性が低下する傾向がある。
【0065】
このような導電粒子は一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
上記導電粒子の量は、隣り合う電極間の絶縁性及び対向する電極間の導電性を良好にする観点から、接着剤成分の総量に対して、0.1〜30体積%であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。
【0067】
上記導電粒子の単分散率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、導電粒子の単分散率とは、上記回路接続材料中の導電粒子全体における、単独で存在する導電粒子の割合を意味し、次式で表される。[導電粒子の単分散率(%)]=(単独粒子数/全測定粒子数)×100。上記単分散率がこのような範囲にあることで、絶縁特性が向上するという効果を奏する。
【0068】
(フィルム形成と使用方法)
フィルム形成は、例えば、エポキシ樹脂、アクリルゴム及び潜在性硬化剤を含む接着剤成分を有機溶媒に溶解又は分散して液状化し、それに導電粒子及びシリカフィラーを加えて分散させ、剥離性基材上に塗布して硬化剤の活性温度以下で溶媒を除去することによって行われる。有機溶媒としては、例えば、接着剤成分の溶解性向上の観点から、芳香族炭化水素系と含酸素系との混合溶媒が好ましい。芳香族炭化水素系の有機溶媒としては、トルエン等が挙げられ、含酸素系の有機溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0069】
図1は、フィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。フィルム状の回路接続材料1は、複数の導電粒子5が、シリカフィラー及び接着剤成分を含有する樹脂組成物層3中に分散した回路接続材料がフィルム状に成形されたものである。フィルム状の回路接続材料1は、例えば、支持フィルム上に回路接続材料を所定の厚みで塗工することによって、作製することができる。支持フィルムとしては、離型性を有するように表面処理されたPETフィルム等が好適に用いられる。
【0070】
フィルム状の回路接続材料1は、対向する1対の回路部材同士間に挟まれた状態で加熱及び加圧されたときに、溶融流動して対峙する回路電極同士を電気的に接続した後、硬化して接着強度を発現する。
【0071】
図1のフィルム状の回路接続材料1では1層のみ有するが、本発明の回路接続材料は、これに代えて、接着剤成分と導電粒子を含むACF層と、接着剤成分を含み、導電粒子を含まないNCF層との少なくとも二層に分けることもできる。なお、この際、本発明におけるシリカフィラーはACF層及びNCF層の両方に含有させることができるが、ACF層に含有させる場合には、ACF層の接着剤成分の総量に対して10〜60質量%又は5〜30体積%含有させることが好ましい。
【0072】
このようにフィルム形成されたフィルム状の回路接続材料の厚みは、導電粒子の平均粒径及び回路接続材料の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。異方導電性接着剤フィルムの厚みが1μm未満では充分な接着性が得られない傾向があり、100μmを超えると対向する回路電極間の導電性を得るために多量の導電粒子を必要とする傾向がある。
【0073】
上記フィルム状の回路接続材料1は、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ及びコンデンサチップ等のチップ部品又は、プリント基板のような回路部材同士を接続するために用いられる。
【0074】
図2は、回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。図2に示す回路部材の接続体101は、第一の回路基板11及びこれの主面上に第一の回路電極13が形成された第一の回路電極13を有する第一の回路部材10と、第二の回路基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する第二の回路部材20とが、上述の回路接続材料が硬化した硬化物からなり第一及び第二の回路部材10、20の間に形成された回路接続部材1aによって接続されたものである。回路部材の接続体101においては、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙すると共に電気的に接続されている。
【0075】
回路接続部材1aは、シリカフィラー及び接着剤成分を含有する樹脂組成物層の硬化物3a、並びに、これに分散している導電粒子5から構成される。第一の回路電極13と第二の回路電極23とは、導電粒子5を介して電気的に接続されている。
【0076】
第一の回路基板11は、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムである。
【0077】
回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種)で形成されている。複数の回路電極13が、第一の回路基板11の主面上に形成されている。
【0078】
第二の回路基板21はガラス基板であり、第二の回路基板21の主面上には、複数の第二の回路電極23が形成されている。
【0079】
回路部材の接続体101は、例えば、第一の回路部材10と、上記フィルム状の回路接続材料1と、第二の回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することによって、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接続する方法によって、得られる。
【0080】
この方法においては、まず、支持フィルム上に形成されているフィルム状の回路接続材料1を第二の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮接着する。その後、上記支持フィルムを剥離してから、第一の回路部材10を、回路電極の位置を合わせながら載せて、積層体を準備することができる。
【0081】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の接着剤組成物の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。
【0082】
このような回路部材の接続体としては、半導体チップ、抵抗体チップ及びコンデンサチップ等のチップ部品、並びに、プリント基板等の基板等が挙げられる。これらの回路部材の接続体には電極が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられており、回路部材の接続体の少なくとも1組をそれらの回路部材の接続体に設けられた電極の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した電極間に回路接続材料を介在させ、加熱加圧して対向配置した電極同士を電気的に接続して回路部材とする。回路部材の接続体の少なくとも1組を加熱加圧することによって、対向配置した電極同士は、異方導電性接着剤(回路接続材料)の導電粒子を介して電気的に接続することができる。
【0083】
また、本発明の回路接続材料は導電粒子の電極上への捕捉性が向上するので、3000μm以下の面積の電極を有する回路部材や、12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極を有する回路部材等を接続する材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
(シリカフィラー1)
平均粒径12nmの乾式シリカフィラー(日本アエロジル社製、商品名:Aerosil 200)200gを15リットルの反応槽にとり、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF96、重合度:10)を26g添加した。さらに攪拌しながら系内を窒素ガスで置換し窒素ガスを流したまま280℃まで昇温、20分間保持後、室温まで冷却した。その後、変性シリコーンオイルによって疎水化処理が施されたシリカフィラー(シリカフィラー1)を酢酸エチルに分散させて、濃度13質量%の分散液を調製した。疎水化処理されたシリカフィラーの炭素含有率は、5質量%であった。
【0086】
(シリカフィラー2)
ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF96、重合度:10)の代わりにシランカップリング剤(信越化学工業社製、γ−メタククリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名:KBM−503)を用いたこと以外は、シリカフィラー1の場合と同様にしてシリカフィラー2を作製した。その後、シリカフィラー2を酢酸エチルに分散させて、濃度13質量%の分散液を調製した。疎水化処理されたシリカフィラーの炭素含有率は、6質量%であった。
【0087】
(シリカフィラー3)
平均粒径200nmの乾式シリカフィラー200gを15リットルの反応槽にとり、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF96、重合度:10)を26g添加した。さらに攪拌しながら系内を窒素ガスで置換し窒素ガスを流したまま280℃まで昇温、20分間保持後、室温まで冷却した。その後、変性シリコーンオイルによって疎水化処理が施されたシリカフィラー(シリカフィラー3)を酢酸エチルに分散させて、濃度13質量%の分散液を調製した。疎水化処理されたシリカフィラーの炭素含有率は、7質量%であった。
【0088】
(シリカフィラー4)
疎水化処理を施していない乾式シリカフィラー(日本アエロジル社製、商品名:Aerosil 200)を酢酸エチルに分散させて、濃度13質量%の分散液を調整した。疎水化処理を施していないシリカフィラーの炭素含有率は、0―1質量%であった。
【0089】
(実施例1)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)35gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、及びグリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、重量平均分子量:85万)30gとを酢酸エチル20gに溶解し、ポリマー濃度が41質量%の溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185、旭化成イーマテリアルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941)50gを加えて撹拌し、接着剤溶液を作製した。この接着剤溶液に、接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液を添加し、攪拌した。この溶液100gに対して、平均粒径が3.0μmの絶縁被覆導電粒子(プラスチック粒子をニッケルめっき及び金めっきした導電粒子にコロイダルシリカが被覆されている粒子)20gを混合してワニス(接着剤成分の総量に対して絶縁被覆導電粒子の含有量:9体積%)を作製した。
【0090】
このワニスを、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルムであるセパレータ(厚み40μm)上にロールコータで塗布し、80℃で5分間乾燥して厚み25μmのフィルム状回路接続材料を作製した。
【0091】
作製したフィルム状回路接続材料を用いて、金バンプ(面積:30μm×90μm、スペース(ピッチ)10μm、高さ:15μm、バンプ数:362)付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)とITO回路付きガラス基板(ジオマテック製、厚み:0.7mm)との接続を、以下の通り行った。
【0092】
フィルム状回路接続材料のセパレータが設けられた面とは反対側の面をITO回路付きガラス基板のITO回路が形成された面に向けて、所定のサイズ(2mm×19mm)に切断したフィルム状回路接続材料を、ITO回路付きガラス基板の表面上に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付けた。その後、ITO回路付きガラス基板に貼り付けたフィルム状回路接続材料からセパレータを剥離し、フィルム状回路接続材料を介して、チップの金バンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行った。次いで、チップの金バンプが設けられた面をフィルム状回路接続材料のITO回路付きガラス基板が貼り付けられた面とは反対側の面に向けて、190℃、40g/バンプ、10秒間の条件で加熱及び加圧を行って本接続を行い、接続体サンプルを得た。
【0093】
(実施例2)
接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液の代わりに、接着剤成分の総量に対して10質量%のシリカフィラー1(9g)を含む分散液を添加したこと以外は、実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0094】
(実施例3)
接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液の代わりに、接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー2(35g)を含む分散液を添加したこと以外は実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0095】
(実施例4)
平均粒径が3.0μmの絶縁被覆導電粒子(プラスチック粒子をニッケルめっき及び金めっきした導電粒子にコロイダルシリカが被覆されている粒子)の代わりに平均粒径が6.0μmの絶縁被覆導電粒子(プラスチック粒子をニッケルめっき及び金めっきした導電粒子にコロイダルシリカが被覆されている粒子)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0096】
(比較例1)
接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液の代わりに、接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー4(35g)を含む分散液を添加したこと以外は実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0097】
(比較例2)
接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液の代わりに、接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー3(35g)を含む分散液を添加したこと以外は実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0098】
(比較例3)
接着剤成分の総量に対して40質量%のシリカフィラー1(35g)を含む分散液の代わりに、接着剤成分の総量に対して5質量%のシリカフィラー1(4.5g)を含む分散液を添加したこと以外は実施例1と同様にフィルム状回路接続材料を作製した。
【0099】
【表1】

【0100】
[試験結果]
上記作製方法で得られたフィルム状回路接続材料について、以下の試験を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0101】
(接続抵抗値)
接続体サンプルの接続抵抗測定は、4端子法によって測定した。測定装置は、定電流電源装置として(株)アドバンテスト製、R−6145(商品名)を用いて一定電流(1mA)をチップ電極−基板電極間に印加し、印加時における接続部分の電位差を(株)アドバンテスト製、デジタルマルチメーター(商品名:R−6557)を用いて測定し、抵抗値に換算した。接続抵抗値が5Ω未満の接続体サンプルを良好と評価した。
【0102】
(粒子捕捉率の平均値及びばらつき)
30μm×100μmの金バンプで回路構成されたチップ(サイズ2.0mm×15.3mm)を用いて、(株)東レエンジニアリング製、高精細自動ボンダ(商品名:FC−1200)にて接続体サンプルを実装した試験体を作製した。100個の金バンプ上に捕捉されている導電粒子の計数を行い、粒子捕捉率の平均値及びばらつき(C.V.)を求めた。ここで、粒子捕捉率とは、回路接続材料中の導電粒子の総数に対する電極上に留まっている導電粒子数の割合を意味し、[粒子捕捉率(%)]=一定面積のバンプ上に捕捉される粒子数/一定面積に存在する粒子数×100で求められる。
【0103】
(フィルム成形性)
配合を終えた回路接続材料の塗工を行う際の塗工傷、白点の有無及び塗工後のフィルムの割れを顕微鏡を使って観察すると共に、スライドガラスに貼り付けたフィルムをオリエンテック株式会社社製、STA−1150測定機を用いてピールし、タック力を測定した。得られた結果を基に、下記の要領でフィルム成形性を評価した。
A:塗工傷、白点、及びフィルムの割れが無いこと、並びに、高タック力(25kgf以上)であること。
C:塗工傷、白点、又はフィルムの割れの発生、或いはタック力の低下(10kgf未満)があること。
【0104】
(絶縁抵抗値)
回路の接続部に、直流(DC)50Vの電圧を1分間印加し,印加後の絶縁抵抗を,2端子測定法を用いマルチメータで測定した。COG接続体の絶縁抵抗は、隣接電極間距離10μmの試験体の絶縁抵抗測定部を用いた。測定機器として、(株)アドバンテスト製、絶縁抵抗測定機(商品名:TR8611A)を用い、DC50V、30秒印加後の絶縁抵抗値を、各電極間スペースについて複数回路分を一括して測定した。
【0105】
(導電粒子の単分散率)
接着剤層と導電粒子層とをラミネートしたものを1mm角に切断し、一方で別に用意した接着剤層だけのものを3mm角に切断した。これらをそれぞれカバーガラスに乗せ、互いに貼り合わせた後、(株)東レエンジニアリング製、高精細自動ボンダ(商品名:FC−1200)を用いて80℃で40秒圧延した後、更に200℃で20秒で加熱加圧した。キーエンス製、光学顕微鏡(商品名:VH−Z450)を用いて1000倍にて撮像し、導電粒子の単分散率を測定した。ここで、導電粒子層とは、ワニスと導電粒子を配合した異方導電特性を示す層を意味する。また導電粒子の単分散率とは、導電粒子全体における、単独で存在しているである導電粒子の割合を意味し、次式で表される。[導電粒子の単分散率(%)]=(単粒子数/測定粒子数×100)。
【0106】
(吸水性)
異方導電性接着(回路接続材料)1gを純水中に浸水させ、1時間放置後ドライオーブンにて70℃で、3分間乾燥させ、浸水前後での秤量比較を行い、以下のように評価した。
A:浸水前後での秤量差+100mg未満
B:浸水前後での秤量差+100〜300mg
C:浸水前後での秤量差+300mg超
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
実施例1〜4では、接続抵抗値が5Ω未満であり良好な結果であるのに対し、比較例1〜3では、5Ω以上の接続抵抗値を示すことが明らかとなった。このように、本発明に係る回路接続材料は、十分低い接続抵抗値を示し、狭小化した電極を有する回路部材に対しても十分用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
1…フィルム状の回路接続材料、1a…回路接続部材、3…シリカフィラー及び接着剤成分を含有する樹脂組成物層、5…導電粒子、10…第一の回路部材、11…第一の回路基板、13…第一の回路電極、20…第二の回路部材、21…第二の回路基板、23…第二の回路電極、101…回路部材の接続体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、
(B)接着剤成分と、
(C)導電粒子と、
を含有し、前記シリカフィラーの量が前記接着剤成分の総量に対して10〜60質量%である回路接続材料。
【請求項2】
(A)疎水化処理が施されている平均粒径3〜100nmのシリカフィラーと、
(B)接着剤成分と、
(C)導電粒子と、
を含有し、前記シリカフィラーの量が前記接着剤成分の総量に対して5〜30体積%である回路接続材料。
【請求項3】
前記シリカフィラーの量が10〜40質量%である請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記シリカフィラーの量が5〜20体積%である請求項2に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記シリカフィラーの平均粒径が5〜50nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記シリカフィラーの平均粒径が5〜15nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記シリカフィラーが、シリコーンオイルを付着又は結合させることにより、疎水化処理が施されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記シリカフィラーの炭素含有率が、3〜10質量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項9】
(前記導電粒子の平均粒径)/(前記シリカフィラーの平均粒径)=20〜400である請求項1〜8のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項10】
前記導電粒子の単分散率が、80%以上である請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項11】
3000μm以下の面積の電極を有する回路部材と、他の回路部材とを接続するために用いられる請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項12】
12μm以下の間隔を空けて配置された複数の電極を有する回路部材と、他の回路部材とを接続するために用いられる請求項1〜11のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項13】
第一の電極を有する第一の回路部材と、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の回路接続材料が硬化した硬化物と、
第二の電極を有する第二の回路部材と、
をこの順に備え、
前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とが、前記第一の電極と前記第二の電極とが対向するように配置されて接続されている、回路部材の接続体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−233633(P2011−233633A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101115(P2010−101115)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】