説明

回路板装置の製造法

【課題】低温での接続が可能で、回路部材に対する熱的影響を軽減し、かつ接続後における接続部の信頼性に優れ、さらには従来より有する簡便な取扱い性の品質に影響を与えないフィルム状回路接続材料を用い、相対峙する電極同士を電気的に接続することによって得られる回路板装置の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が光透過性を有する2つの回路部材である第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に、(1)ラジカル重合性物質、(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物、(3)導電性粒子を必須とする回路接続材料であって、示差走査熱量測定(DSC)における発熱ピーク温度が110〜150℃である回路接続材料を介在させ、一定時間の加熱加圧および一定時間の光照射を併用することによって、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化成分と導電性粒子を含有する回路接続材料を用いて相対峙する電極同士が電気的に接続された回路板装置の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状回路接続材料は、金属粒子等の導電性粒子を所定量含有した接着剤からなるもので、このフィルム状回路接続材料を電子部品と電極や回路の間に設け、加圧または加熱加圧を行うことによって、両者の電極同士が電気的に接続されると共に、隣接電極間の絶縁性を付与して、電子部品と回路とが接着固定されるものである。フィルム状回路接続材料に用いられる接着剤としては、スチレン系やポリエステル系等の熱可塑性物質や、エポキシ系やシリコーン系等の熱硬化性物質が知られている。これらの物質を含む接着剤を硬化させるには硬化剤が必要であり、さらにその硬化剤には、フィルム状回路接続材料の保存安定性を高めるために、常温では不活性であり、活性温度以上でのみ反応するという潜在性が伴っていなければならない。このため接着剤を硬化させるためには、樹脂成分の流動性の向上および硬化反応の促進のための加熱加圧が必要となる。すなわち、接着剤を溶融、流動させ、導電性粒子を変形して回路との接触面積を増大し、かつ回路部材との密着性を高めるために温度や圧力が必要となり、これらは接着剤の種類や硬化成分による。この他にフィルム状以外の形態を有する回路接続材料としては、光硬化性樹脂を用いたペースト状材料が知られているが、これらの回路接続材料は加圧もしくは加熱加圧によって回路部材を接続し、その後光照射によって接着剤を硬化させることを特徴としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹脂硬化の際の加熱加圧に伴う回路部材に対する熱や圧力の影響はその大小を問わず存在し、特に熱的な影響に関しては、回路部材自体への影響のみならず、回路部材接続時の影響も大きい。すなわち前者の場合、例えば液晶パネル等の回路部材を接続する際、偏光板等液晶パネル自体に対する影響が懸念され、これによって従来より低温での接続、あるいは従来より短時間での接続が要求されている。また後者の場合、加熱加圧時の温度が高い条件で接続を行うと、対向する2つの回路部材が異なっておりそれぞれの熱膨張係数(α)の差が大きい場合には、回路の位置ずれが発生する可能性が高い。これは隣接回路間のピッチが狭くなるにつれてさらに発生確率が高くなる。本発明は、光照射を併用することによって従来より低温での接続が可能で、回路部材に対する熱的影響を軽減し、かつ接続後における接続部の信頼性に優れ、さらには従来より有する簡便な取扱い性の品質に影響を与えないフィルム状回路接続材料を用い、相対峙する電極同士を電気的に接続することによって得られる回路板装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも一方が光透過性を有する2つの回路部材、すなわち第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に、(1)ラジカル重合性物質、(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物、(3)導電性粒子を必須とする回路接続材料であって、示差走査熱量測定(DSC)における発熱ピーク温度が110〜150℃である回路接続材料を介在させ、一定時間の加熱加圧および一定時間の光照射を併用することによって、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることを特徴とするものである。また、一定時間の加熱加圧の開始後、所定間隔経過後に一定時間の光照射を開始し、光照射が行なわれている間は加熱加圧状態が保持されていることを特徴とするものである。
【0005】
本発明において、回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板、ポリイミドやポリエステルを基材としたフレキシブル配線板、液晶パネル等ガラス上に酸化インジウム(ITO)やクロム等で配線した透明電極等が用いられる。半導体チップや基板の電極パッド上には、めっきで形成されるバンプや金ワイヤの先端をトーチ等により溶融させ、金ボールを形成し、このボールを電極パッド上に圧着した後、ワイヤを切断して得られるワイヤバンプ等の特記電極を設け、接続端子として用いることができる。
【0006】
これらの回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でも良い)設けられており、少なくとも一方が光透過性を有する前記回路部材の少なくとも1組を、それらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも1部を対向配置し、対向配置した接続端子間に接着剤を介在させ、加熱加圧および光照射して対向配置した接続端子同士を電気的に接続して接続体とする。この時、光透過性を有する回路部材の厚みは、1.2mm以下が光透過性の面で好ましい。また、ラジカル重合性物質を含有する回路接続材料の形態をフィルム状とすることで、従来のペースト状回路接続材料に比べて取扱い性が優れている点や接続厚みの均一化が図れる点等で有利である。さらに、回路部材との密着性を高めるために、硬化反応がほとんど進行せず樹脂が流動する程度の加熱を行う場合、接続材料の加熱を行って接続端子−導電性粒子−接続端子間の導通を確保した後、冷却工程を導入することによって接続材料の溶融粘度を再上昇させることが可能であり、これによって加熱−冷却のみによる導電性粒子の圧接状態を維持し樹脂の固定が図れる。
【0007】
本発明では、第一の接続端子と第二の接続端子とを対向配置し、その間に(1)ラジカル重合性物質、(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物、(3)導電性粒子の各成分を必須成分とする回路接続材料を介在させ、加熱加圧および光照射によって前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる。フィルム状回路接続材料の硬化は主として光硬化によって行なわれるために、加熱加圧工程の役割としては、接着剤を溶融、流動させ、接続端子と導電性粒子が接触する部分周辺の樹脂成分を十分に排除し、接続端子間に導電性粒子を充分に圧接させることである、と考えることができる。このため接着剤のTg以上、もしくは導電性粒子の十分な変形に必要な接着剤の流動が得られる温度まで加熱すればよく、その温度はフィルム形成材料である高分子樹脂の種類にもよるが、概ね80〜140℃の範囲内である。これは従来の熱硬化性樹脂を硬化成分として用いているフィルム状回路接続材料の接続に必要な加熱温度である150〜190℃よりも低い。したがって上記方法によって回路部材の接続温度の低温化を図ることができる。また、示差走査熱量測定(DSC)における接着剤成分の発熱ピーク温度を110〜150℃とすることによって、前記した接着剤の溶融、流動する際に与える温度を接着剤成分、特に光照射によって活性ラジカル発生物質を熱的に活性にする温度に利用することが可能である。したがって、光硬化単独の場合と比較して、熱的効果によって反応系全体がより活性になり、接着剤の硬化特性がより向上することが期待される。しかし、DSC発熱ピーク温度が110℃より低い場合は、温度によるポットライフ(可使時間)が短くなることから注意を要する。これらの示差走査熱量測定は、例えばTAインスツルメンツ(株)製910型DSCを用い、試料重量1〜10mg、昇温速度10℃/min、温度範囲25〜300℃の各条件で測定することが可能である。
【0008】
また(1)ラジカル重合性物質、(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物、(3)導電性粒子を必須成分に、フィルム形成能を有する高分子樹脂をさらに配合分散することによって、光硬化が可能なフィルム状の回路接続材料を提供することが可能である。これは、用いる高分子樹脂は分子量が10,000以上であって常温で固形であり、フィルム形成能力が高いことに起因している。この高分子樹脂とラジカル重合性物質を混合することによって、従来の、光硬化性樹脂を用いた回路接続材料の短所であった、取扱い性の向上や接続厚みの均一化等を図ることが可能である。
【0009】
さらには、加熱加圧と光照射を同時に行う場合は、接着剤の流動によって導電性粒子の接触を十分に行うために、溶融流動性と光照射能力との調整が必要である。ここでいう光照射能力は、用いる光照射装置の光源に依存しており、光量の少ない光源を使用している光照射装置の場合には、接着剤の硬化速度が遅くなり、その間に樹脂流動が十分に行なわれるため、加熱加圧と光照射を全く同時に行うことができる。また光量の多い光源を使用している光照射装置の場合には、樹脂流動を優先させるために加熱加圧工程と光照射工程の間に1〜数秒の間隔を設け、加熱加圧開始後に光照射を行うこともできる。この場合光照射を遅延して行うため、樹脂が流動し導電性粒子による接続端子の導通が確保された後、光量を増加して短時間で急速に硬化させてもよい。
【0010】
一定時間の加熱加圧および一定時間の光照射を行う際の順序に関しては、前述した様に溶融流動性と光照射能力との調整を行い、加熱加圧と光照射を同時に開始し同時に終了するのが、その所要時間を考えると最も理想的であるが、より優れた接続信頼性を確実に得るには、加熱加圧工程と光照射工程との間に適当な間隔を設け、接着剤樹脂が十分に流動するための時間を確保する方法が最適である。設ける間隔は加熱加圧を開始し、接着剤樹脂の流動がほぼ完全に終了するまでの時間とするのが理想的であり、この場合0.5〜10秒とするのが好ましいが、加熱加圧時間および接着剤樹脂の溶融粘度の点から2〜5秒とすることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着剤にラジカル重合性物質をおよび導電性粒子を必須成分とするフィルム状回路接続材料を介在させ、加熱加圧と同時に、あるいは加熱加圧後に光照射によって回路部材を接続するため、接続に要する温度を従来より低くすることが可能で、また熱的にも活性な光開始剤を含有することによって、より効率的に優れた接着強度や良好な電気的導通を得ることができ、優れた信頼性を有する回路板装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いる回路接続材料としては(1)ラジカル重合性物質および(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物から成る光硬化成分を必須とする接着剤成分、そして(3)導電性粒子から成っており、さらにフィルム形成能を有する高分子樹脂を含有させ、接続材料をフィルム状とすることで回路部材接続時の取扱い性の向上を図ることができる。
【0013】
本発明に用いるラジカル重合性物質としては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等の光重合性オリゴマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート2−シアノエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2ーヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の光重合性単官能および多官能アクリレートモノマー等といったアクリル酸エステル等、およびこれらと類似したtーブチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等の光重合性単官能および多官能メタクリレートモノマーといったメタクリル酸エステル等に代表される光重合型の樹脂があり、必要に応じてこれらの樹脂を単独あるいは混合して用いてもよいが、接着剤硬化物の硬化収縮を抑制し、柔軟性を与えるためにはウレタンアクリレートオリゴマーを配合するのが好ましい。また上述した光重合性オリゴマーは高粘度であるために、粘度調整のために低粘度の光重合性多官能アクリレートモノマー等のモノマーを配合するのが好ましいが、その際には所望の接着剤特性を得るために1種あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
これらのラジカル重合性物質は光照射によって活性ラジカルを発生する化合物を用いて重合、硬化させる。本発明に用いる光開始剤としてはベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類およびその誘導体、チオキサントン類、ビスイミダゾール類等があり、これらの光開始剤に必要に応じてアミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比で添加してもよい。この際、用いる光源の波長や所望の硬化特性等に応じて最適な光開始剤を選択する必要がある。本発明に用いるフィルム形成能を有する高分子樹脂としては、含有した場合の取扱い性がよく硬化時の応力緩和に優れるものが好ましく、水酸基等の官能基を有する場合には被着体との接着性が向上するためより好ましい。各ポリマーをラジカル重合性の官能基で変性したものがより好ましい。これらポリマーの分子量は10000以上が好ましいが1000000以上になると混合性が悪くなる。また、これらのラジカル重合性物質とポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂等があり、これらを1種あるいは2種類以上を混合して用いることができる。また、被着体が無機物の場合にはシランカップリング剤を接着剤樹脂に混合して被着体との接着強度を高めることが可能である。シランカップリング剤としてはビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(βメトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、イソシアン酸プロピルトリエトキシシラン等があるが、ラジカル重合性物質との反応性を高めるにはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いるのがより好ましい。
【0015】
硬化に用いる光は、一般的に広く使用されている紫外線を用いることができ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ等で発生させることができる。また、硬化反応としてラジカル反応を用いた場合、酸素が反応禁止剤として作用するので、光照射の雰囲気中の酸素量はラジカル重合性物質の硬化に影響を与える。これはラジカル重合性物質、光開始剤、増感剤等の種類や濃度にも大きく左右されるので、個々の配合系で詳細に検討する必要がある。本発明に用いる導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、これらおよび非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等によって形成したものでもよい。プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧によって変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。導電性粒子は、接着剤成分100体積部に対して、0.1〜30体積部の広範囲で用途によって使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには、0.2〜15体積部とするのがより好ましい。この時の導電性粒子の平均粒径は、その添加量にもよるが1〜15μmとするのがより好ましい。また導電性粒子の圧縮弾性率は、加熱加圧および光照射を中断した時に、接着剤の弾性による粒子の復元を抑制するために、1000〜10000MPaの範囲内とすることが好ましい。
【0016】
本発明には用途に応じて無機充填剤、有機充填剤、白色顔料、重合抑制剤、増感剤およびその組合せから選択される添加物を含有してもよい。その添加量としては接着剤樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部が好ましいが、添加物の種類や性質が得られる回路板の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がない、あるいは著しく低くなるような範囲内で用いる必要がある。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45,000)40gを、重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤60gに溶解して、固形分40%の溶液とした。ラジカル重合性物質は、エポキシアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKオリゴEA−1020)およびアクリレートモノマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKエステルA−TMM−3L)を、3/1の重量比で用いた。光開始剤はビスイミダゾール型光開始剤(黒金化成製、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,4’,5,5’−テトラフェニル1,2−ビイミダゾール)を用い、これに増感剤として4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(保土ケ谷化学工業株式会社製、商品名EAB)を、光開始剤/増感剤=5/1となるように混合して用いた。またポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。固形重量比でフェノキシ樹脂50、ラジカル重合製物質50、光開始剤5、増感剤1となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。得られた接着剤成分のDSCにおける発熱ピーク温度は約130℃であった。上記製法によって得たフィルム状回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、紫外線照射併用型熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃、2MPaで20秒間の加熱加圧およびITOガラス側からの紫外線照射を同時に行って幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、接続体を作製した。接着剤に照射される紫外線照射量は2.0J/cm2とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。
【0018】
実施例2
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、紫外線照射併用型熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃、2MPaで20秒間の加熱加圧およびITOガラス側からの紫外線照射を同時に行って幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、接続体を作製した。接着剤に照射される紫外線照射量は2.0J/cm2とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。また20秒間の接続の際、加熱加圧のみを開始して3秒経過した後17秒間の紫外線照射を開始し、加熱加圧20秒後に2工程が同時に終了するようにした。
【0019】
実施例3
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料のラジカル重合性物質を、ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKオリゴUA−512)およびアクリレートモノマー(A−TMM−3L)に代えた他は、実施例2と同様にして接続体を作製した。
【0020】
実施例4
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料の導電性粒子を、平均粒径5μmのニッケル粒子(大同特殊綱株式会社製、商品名DSP3101、比重8.5)に代えた他は、実施例2と同様にして接続体を作製した。
【0021】
実施例5
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料の光開始剤を、ベンゾフェノン誘導体(日本油脂株式会社製、商品名BTTB)に代えた他は、実施例2と同様にして接続体を作製した。得られた接着剤成分のDSCにおける発熱ピーク温度は約120℃であった。
【0022】
実施例6
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45,000)40gを、重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤60gに溶解して、固形分40%の溶液とした。ラジカル重合性物質は、エポキシアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKオリゴEA−1020)およびアクリレートモノマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKエステルA−TMM−3L)を、3/1の重量比で用いた。光開始剤はビスイミダゾール型光開始剤(黒金化成製、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,4’,5,5’−テトラフェニル1,2−ビイミダゾール)を用い、これに増感剤として4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(保土ケ谷化学工業株式会社製、商品名EAB)を、光開始剤/増感剤=5/1となるように混合して用いた。またポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。固形重量比でフェノキシ樹脂50、ラジカル重合製物質50、光開始剤5、増感剤1となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%、および無機充填剤(無水シリカ微粒子、1次粒子平均径約12nm)を5重量%配合分散し、、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。上記製法によって得たフィルム状回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、紫外線照射併用型熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃、2MPaで20秒間の加熱加圧およびITOガラス側からの紫外線照射を同時に行って幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、接続体を作製した。接着剤に照射される紫外線照射量は2.0J/cm2とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。また10秒間の接続の際、加熱加圧のみを開始して2秒経過した後8秒間の紫外線照射を開始し、加熱加圧10秒後に2工程が同時に終了するようにした。
【0023】
比較例1
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料の光開始剤を、ベンゾインエチルエーテルに代えた他は、実施例2と同様にして接続体を作製した。得られた接着剤成分のDSCにおける発熱ピーク温度は約190℃であった。
【0024】
比較例2
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、紫外線照射併用型熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃、2MPaで10秒間の加熱加圧およびITOガラス側からの紫外線照射を同時に行って幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、接続体を作製した。紫外線照射量は5.0J/cm2とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。
【0025】
比較例3
実施例1で使用したフィルム状回路接続材料の配合樹脂であるフェノキシ樹脂と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂を、固形重量比でフェノキシ樹脂50、液状エポキシ樹脂50となるように配合し、さらに実施例1で用いた導電性粒子を3体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。上記製法によって得たフィルム状回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、コンスタントヒート型熱圧着装置(当社製)を用いて130℃、2MPaで20秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、これを接続終了とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。
【0026】
比較例4
ラジカル重合性物質は、エポキシアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKオリゴEA−1020)およびアクリレートモノマー(新中村化学工業株式会社製、商品名NKエステルA−TMM−3L)を、3/1の重量比で用い、光開始剤にはビスイミダゾール型光開始剤(黒金化成製、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,4’,5,5’−テトラフェニル1,2−ビイミダゾール)を用い、これに増感剤として4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(保土ケ谷化学工業株式会社製、商品名EAB)を、光開始剤/増感剤=5/1となるように混合して用いた。また、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。これらを用い、固形重量比でラジカル重合性物質100、光開始剤5、増感剤1となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、ペースト状回路接続材料を得た。上記製法によって得たペースト状回路接続材料を用いて、イン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、紫外線照射併用型熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて130℃、2MPaで20秒間の加熱加圧およびITOガラス側からの紫外線照射を同時に行って幅2mmにわたり接続し、時間経過後圧力開放して、接続体を作製した。接着剤に照射される紫外線照射量は2.0J/cm2とした。この時、あらかじめITOガラス上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、フッ素樹脂フィルムを剥離してもう一方の被着体であるFPCと接続した。また10秒間の接続の際、加熱加圧のみを開始して2秒経過した後8秒間の紫外線照射を開始し、加熱加圧10秒後に2工程が同時に終了するようにした。
【0027】
実施例1〜6、比較例1〜4で得た接続体について初期抵抗および接着性について評価した。初期抵抗については、回路部材の接続後、上記接続部を含むFPCの隣接回路間の抵抗値を、マルチメータで測定した。測定電流は1mAとし、抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均(x+3σ)で示した。FPCならびにITOガラスに対する接着性については、接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
【0028】
加熱加圧と紫外線照射を同時に開始、終了している実施例1では、初期抵抗、接着強度のいずれも良好な値を示した。また実施例2の場合、20秒の加熱加圧、17秒の紫外線照射を3秒の間隔を設けて行っているため、接着剤樹脂が加熱によって十分に流動し、接続端子と導電性粒子との接触面積がより大きくなるため、特に初期抵抗に関して実施例1よりさらに良好な接続特性を有する回路板が得られた。さらに導電性粒子、ラジカル重合性物質、光開始剤を代えた実施例3〜5においても良好な接続状態の確保が可能であった。さらに無機充填剤を添加した実施例6の場合、無添加の場合とほぼ同等の良好な初期接着強度が得られたことから、充填剤による光硬化反応の阻害はほとんど起こらず、また耐湿信頼性試験処理後の接着強度においても、無機充填剤の応力緩和作用によって無添加の場合に比べて向上する。
【0029】
一方、光開始剤としてベンゾインエチルエーテルを用いた比較例1の場合、DSCにおける発熱ピーク温度が実施例1〜6に比べて高いため、硬化反応に及ぼす熱的効果がほとんどなく、実施例1〜6と比較して接着強度が低くなった。また光照射量5.0J/cm2の条件下で加熱加圧と紫外線照射を同時に行った比較例2では、接着剤の硬化反応が樹脂の流動よりも早く進行するため、導電性粒子が回路部材に十分に接触しておらず、導通不良となった。熱硬化性樹脂を主成分とした接着剤を用いている比較例3では、130℃、2MPa、20秒の接続条件では接着剤の反応率が低くなるため、十分な硬化が得られず、接着強度がかなり低くなり初期抵抗も高くなった。比較例4の場合には、フィルム形成性を付与する高分子樹脂が含有されていないために、硬化収縮が大きくなり、接着強度、特に耐湿信頼性試験処理後の接着強度が低くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が光透過性を有する2つの回路部材である第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に、(1)ラジカル重合性物質、(2)光照射によって活性ラジカルを発生する化合物、(3)導電性粒子を必須とする回路接続材料であって、示差走査熱量測定(DSC)における発熱ピーク温度が110〜150℃である回路接続材料を介在させ、一定時間の加熱加圧および一定時間の光照射を併用することによって、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路板装置の製造法。
【請求項2】
一定時間の加熱加圧の開始後、所定間隔経過後に一定時間の光照射を開始し、光照射が行なわれている間は加熱加圧状態が保持されている請求項1記載の回路板装置の製造法。
【請求項3】
回路接続材料中に、さらにフィルム形成能を有する高分子樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載の回路板装置の製造法。
【請求項4】
回路接続材料中に、さらに無機充填剤、有機充填剤、白色顔料、重合抑制剤、増感剤およびその組合せから選択される添加物を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の回路板装置の製造法。

【公開番号】特開2008−252098(P2008−252098A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92915(P2008−92915)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【分割の表示】特願平10−85169の分割
【原出願日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】