説明

回転位置決めテーブル装置

【課題】製作が容易で高精度な回転位置決めテーブル装置を提供すること。
【解決手段】回転テーブル14と、回転テーブル14を回転自在に支持するエアベアリング16と磁気吸引部18、20、22と、回転テーブル14端部に回転力を付与するローラフォロア32と、ローラフォロア32を回転駆動するリニアアクチュエータ30とを備え、エアベアリング16により回転テーブル14の一部の領域を浮上させ、回転テーブル14の他の領域を磁気吸引部18、20、22で垂直方向に吸引し、回転テーブル14の片持ちによるアンバランス成分と搭載物の重力方向の負荷のバランスをとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転位置決めテーブル装置に係り、特に、半導体や液晶の製造等を行う各種精密機械に用いられるものであって、テーブル上に搭載されたワークや光学ヘッドなどの位置決め対象物を微小な角度で位置決めすることができる回転位置決めテーブル装置の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブルの位置決め装置としては、軸受を回転テーブルの中央に配置し、回転テーブルの外周部に突出されたアーム部を駆動して回転位置決めするようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−341076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の回転位置決めテーブルでは、ターブルの中抜き穴を大きくしたり、あるいはテーブルのサイズを大きくしたりする必要が生じた場合、回転軸受そのものを大きくしなければならない。回転軸受を大きくすると、加工精度の限界により、回転精度の維持が極めて困難であり、製造コストが高くなるととともに、製作納期もかかるという課題があった。
【0004】
そこで、本発明は、製作が容易で高精度な回転位置決めテーブル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、回転テーブルの中央に回転軸受を配置せずに、回転テーブルの端部に回転軸受を配置し、回転テーブルの片持ちによるアンバランスの負荷と、搭載物の重力方向の負荷を、回転テーブルの他方の端部に設けられた磁気吸引部材の磁気吸引力で補償するようにしたものである。
【0006】
具体的には、本発明は、回転自在に配置された回転テーブルと、前記回転テーブルに対して分散して配置されて前記回転テーブルを回転自在に支持する複数の支持部材と、前記回転テーブルを回転駆動する駆動部とを備え、前記複数の支持部材のうち一部の支持部材は、前記回転テーブルの一部の領域を浮上させて前記回転テーブルの回転方向を拘束し、他の支持部材は、前記回転テーブルの他の領域を垂直方向に吸引してなる回転位置決めテーブル装置を構成したものである。
【0007】
本発明によれば、回転テーブルの中央に回転軸受を配置せずに、回転テーブルの一部の領域を一部の支持部材で浮上させ、回転テーブルの片持ちによるアンバランスの負荷と、搭載物の重力方向の負荷を、回転テーブルの他方の領域に設けられた他の支持部材の磁気吸引力で補償するようにしたため、小型で精度が良い回転位置決めテーブル装置を実現できるとともに、大きな軸受を用いずに、大きなサイズの回転テーブルを実現できるから、用途に合わせて意図した大きさに自由に設計できるばかりか、コスト低減および製作納期を短くすることができる。また、搭載物の負荷の重力補償を非接触でできるから、回転精度を悪化させる要因が限りなくゼロであり、高精度でありながら、大形サイズへの展開を容易に実現できる。
【0008】
前記回転位置決めテーブル装置を構成するに際しては、一部の支持部材を、静圧空気軸受で構成したり、駆動部を、直線に沿って往復運動をリニアアクチュエータと、リニアアクチュエータの往復運動を回転運動に変換して回転テーブルの端部に回転力を付与するローラフォロアと、回転テーブル端部とリニアアクチュエータとを連結し、回転テーブル端部をリニアアクチュエータ側に引っ張る弾性体とから構成したりすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型で精度が良い回転位置決めテーブル装置を実現できるとともに、大きな軸受を用いずに、大きなサイズの回転テーブルを実現できるから、用途に合わせて意図した大きさに自由に設計できるばかりか、コスト低減および製作納期を短くすることができる。また、搭載物の負荷の重力補償を非接触でできるから、回転精度を悪化させる要因が限りなくゼロであり、高精度でありながら、大形サイズへの展開を容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示す回転位置決めテーブル装置の平面図、図2は、回転位置決めテーブル装置のA−A線に沿う断面図、図3は、回転位置決めテーブル装置の側面図である。図1乃至図3において、回転位置決めテーブル装置10は、基台(θ軸基台)12と回転テーブル14を備えており、略長方形に形成された基台12上には静圧空気軸受16と磁気吸引部18、20、22が略四隅に分かれて固定され、静圧空気軸受16と磁気吸引部18、20、22の各上面には回転テーブル14が固定されている。
【0011】
静圧空気軸受16は、エアベアリングとして構成され、固定体16aが基台12に固定され、回転体16bの上面が回転テーブル14底面に固定され、回転テーブル14の中抜き穴14aと角部14bとの間の領域を非接触で浮上させるようになっている。
磁気吸引部18、20、22は、L字型の吸引材24、L字型の支持部材26、マグネット28を備えて構成されており、吸引材24は、その一端側端部が回転テーブル14底面に固定され、他端側が回転テーブル14と略平行になってマグネット28と相対向して配置されている。支持部材26は、その一端側端部が基台12に固定され、他端側が回転テーブル14と略平行になって配置されている。支持部材26の吸引材24との対向面側にはマグネット28が固定されている。マグネット28は吸引材24と一定の間隙を保って相対向して配置されており、マグネット28の磁気吸引力で吸引材24が常に上方(回転テーブル14側)に、引き付けられている。
【0012】
すなわち、磁気吸引部18は、回転テーブル14の中抜き穴14aと角部14cとの間の領域を磁気吸引力で垂直方向に吸引し、磁気吸引部20は、回転テーブル14の中抜き穴14aと角部14dとの間の領域を磁気吸引力で垂直方向に吸引し、磁気吸引部22は、回転テーブル14の中抜き穴14aと角部14eとの間の領域を磁気吸引力で垂直方向に吸引するようになっている。
これにより、回転テーブル14の片持ちによるアンバランス成分と搭載物の重力方向の負荷のバランスをとることができる。この際、回転テーブル14の自重と搭載物の負荷に合わせて各磁気吸引部18の吸引力を適宜設定することが望ましい。その手法としては、例えば、マグネット28の磁束密度、大きさ、マグネット28と吸引材24のギャップ調整などは特に問わないし、マグネット28による磁気吸引の場所や数も適宜設定しても構わない。
【0013】
一方、可動体である回転テーブル14の端部14f近傍には、直線方向の位置決めが可能な一軸アクチュエータ(リニアアクチュエータ)30が設置されている。一軸アクチュエータ30は、駆動部の一要素として構成されており、一軸アクチュエータ30の先端には、本実施例ではローラフォロア32が連結されている。このローラフォロア32は、一軸アクチュエータ30と回転テーブル14の端部14fを結ぶ引っ張りコイルばね(弾性体)34の弾性力により、回転テーブル14の端部14fに押し付けられている。この状態で、一軸アクチュエータ30が回転テーブル14に対して、前進、後退駆動すると、一軸アクチュエータ30の前進、後退に伴う往復直線運動がローラフォロア32によって回転運動に変換されて、回転力が回転テーブル14に付与され、回転テーブル14の位置決めが行われるようになっている。
一軸アクチュエータ30は、静圧空気軸受16とは異なる位置に配置されているので、静圧空気軸受16の回転中心と一軸アクチュエータ30の駆動点(回転テーブル14の端部14f)までの距離を大きく設定することにより、回転位置決めの分解能を静圧空気軸受16の回転中心と一軸アクチュエータ30の駆動点までの距離に比例して高くすることが可能になる。
【0014】
本実施例によれば、小型で精度が良い回転位置決めテーブル装置10を実現できる。具体的には、大きな軸受を用いずに、大きなサイズの回転テーブルを実現できるから、用途に合わせて意図した大きさに自由に設計できるばかりか、コスト低減および製作納期を短くすることができる。
【0015】
また、搭載物の負荷の重力補償を非接触にできるから、回転精度を悪化させる要因が限りなくゼロであり、高精度でありながら、大形サイズへの展開を容易に実現できる。
さらに、高精度にしたい場合、回転軸受に静圧空気軸受を用いることで、アンバランス負荷の重力補償が可能であるため、小型の空気軸受を用いることができ、低コストで高精度な回転位置決めテーブル装置10が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示す回転位置決めテーブル装置の平面図である。
【図2】回転位置決めテーブル装置のA−A線に沿う断面図である。
【図3】回転位置決めテーブル装置の側面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 回転位置決めテーブル装置
12 基台
14 回転テーブル
16 静圧空気軸受
18、20、22 磁気吸引部
24 吸引材
28 マグネット
30 一軸アクチュエータ
32 ローラフォロア
34 引っ張りコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に配置された回転テーブルと、前記回転テーブルに対して分散して配置されて前記回転テーブルを回転自在に支持する複数の支持部材と、前記回転テーブルを回転駆動する駆動部とを備え、前記複数の支持部材のうち一部の支持部材は、前記回転テーブルの一部の領域を浮上させて前記回転テーブルの回転方向を拘束し、他の支持部材は、前記回転テーブルの他の領域を垂直方向に吸引してなる回転位置決めテーブル装置。
【請求項2】
前記一部の支持部材は、静圧空気軸受で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の回転位置決めテーブル装置。
【請求項3】
前記駆動部は、直線に沿って往復運動をリニアアクチュエータと、前記リニアアクチュエータの往復運動を回転運動に変換して前記回転テーブルの端部に回転力を付与するローラフォロアと、前記回転テーブル端部と前記リニアアクチュエータとを連結し、前記回転テーブル端部を前記リニアアクチュエータ側に引っ張る弾性体とから構成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の回転位置決めテーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−64626(P2008−64626A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243241(P2006−243241)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】