説明

回転機の制御装置およびその製造方法

【課題】電動機10の相電流を基本波とすべくインバータINVの出力電圧をフィードフォワード補正したのでは、電動機10のステータの巻線を鎖交する磁束が基本波からずれる場合には、トルク脈動を低減できないこと。
【解決手段】相殺電磁力出力部44は、鎖交磁束の基本波からのずれに起因した電磁力の歪を相殺する相殺電磁力についての、接線方向の相殺電磁力Fnθと、法線方向の相殺電磁力FnRと、軸線方向の相殺電磁力FnTとを各別に出力する。歪補正部36,38,40のそれぞれでは、これら相殺電磁力に応じた電圧を、制御量の制御のための操作量(指令電圧vur,vvr,vwr)に重畳する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、回転機の誘起電圧等の歪に起因して生じる電流の歪みを解消すべく、フィードフォワード制御によってインバータの出力電圧を補正するものも提案されている。これにより、誘起電圧等の歪にかかわらず、回転機に流れる電流を基本波(電気角の1周期を周期とする正弦波によって変化する量)とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−324879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、上記フィードフォワード制御によって回転機に流れる電流を基本波としたとしても、誘起電圧の歪自体が解消するわけではない。一方、電流を基本波とした場合にトルクを一定とすることができるのは、誘起電圧等が基本波となる場合である。このため、上記装置では、誘起電圧等の歪に起因して生じるトルク脈動を解消することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する新たな回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、前記制御量を制御するための操作量としての前記電圧印加回路の出力線間電圧を操作する手段であって且つ、該出力線間電圧を基本波電圧とする手段である操作手段と、前記電圧印加回路の出力電圧に補正電圧を重畳する重畳手段と、を備え、前記補正電圧は、前記回転機の端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれることによる電磁力のずれを補償するための補正電圧であることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、制御量を制御するための上記出力線間電圧に補正電圧を重畳することで、端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれる場合であっても、その影響を抑制することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記補正電圧は、前記回転機を流れる電流を基本波に対して歪ませるものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、前記制御量を制御するための操作量としての前記電圧印加回路の出力線間電圧を操作する操作手段を備え、該操作手段によって操作される前記電圧印加回路の出力線間電圧は、基本波電圧に対して歪んだものであり、該出力線間電圧の歪によって前記回転機を流れる電流を基本波に対して歪ませることで、前記回転機の端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれることによる電磁力のずれが補償されることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、回転機の電流を基本波に対して歪ませるように出力線間電圧を操作することで、端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれる場合であっても、その影響を抑制することができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記補正電圧は、d軸成分を有することを特徴とする。
【0013】
巻線を鎖交する磁束が基本波からずれることによる電磁力のずれについて、これを同一量補正するのに要求されるd軸成分の電圧は、q軸成分の電圧よりも大きい。このため、d軸の電圧を操作する場合、q軸の電圧を操作する場合より高精度な制御を行ないやすい。上記発明では、この点に鑑み、d軸成分の電圧を有する設定とした。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1,2または4記載の発明において、前記補正電圧は、前記電磁力のずれを補償する開ループ操作量であることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,4または5記載の発明において、前記重畳手段は、前記回転機の回転角度に応じて前記補正電圧を可変設定することを特徴とする。
【0016】
上記電磁力のずれは、回転角度に応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、上記設定とした。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1,2,4〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記重畳手段は、前記回転機の回転速度に応じて前記補正電圧を可変設定することを特徴とする。
【0018】
上記電磁力のずれは、回転角度のみならず、回転速度に応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、回転速度に応じて補正電圧を可変設定することで、上記電磁力のずれをより好適に補償することができる。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1,2,4〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記重畳手段は、前記磁束のずれを定量化した物理量を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された物理量の特定の周波数成分を選択する選択手段とを備え、前記補正電圧は、前記選択された周波数成分の物理量に対応するものであることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、選択手段を備えることで、低減することが望まれる周波数成分の電磁力歪のみを補正電圧によって抑制することができる。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項1,2,4〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記重畳手段は、前記磁束のずれに起因した前記回転機の回転方向成分の電磁力、前記回転方向の直交方向成分の電磁力、および前記回転機の軸方向成分の電磁力の少なくとも2つを定量化した物理量を記憶する記憶手段と、前記定量化された物理量のうちの1つ以上を選択する選択手段とを備え、前記補正電圧は、前記選択された物理量に対応するものであることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、選択手段を備えることで、低減することが望まれる方向の電磁力歪のみを補正電圧によって抑制することができる。
【0023】
請求項10記載の発明は、請求項1,2,4〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記回転機は、永久磁石を備えるものであり、前記回転機が回転している状態で前記電圧印加回路から前記回転機に印加する電圧をゼロとすることで、前記巻線の誘起電圧または前記巻線の鎖交磁束を検出する検出手段をさらに備え、前記重畳手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記補正電圧を算出することを特徴とする。
【0024】
誘起電圧の積分値が磁束である。このため、検出手段によれば、磁束の基本波からのずれを直接または間接検出することができる。したがって、上記発明では、補正電圧を制御装置によって算出することができる。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記回転機の回転速度を上昇させた後、前記回転機のトルクを低下させることで前記回転機の回転速度を低下させる手段を備え、前記検出手段は、前記低下させる際に前記検出を行なうことを特徴とする。
【0026】
請求項12記載の発明は、請求項1,2,4〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置を製造する方法において、請求項1,2,4〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置を製造する方法において、前記回転機の電磁力のずれ情報を取得する工程と、該取得されたずれ情報に基づき、前記ずれに関する電磁力を低減するための電磁力に応じた物理量を算出する工程と、前記算出された物理量を前記制御装置に記憶させる工程と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる回転機の誘起電圧の特性を示す図。
【図3】同実施形態にかかる電磁力歪の成分を定義する図。
【図4】同実施形態にかかる相殺電磁力の算出手順を示す流れ図。
【図5】同実施形態の効果を示す図。
【図6】同実施形態の効果を示す図。
【図7】同実施形態の効果を示す図。
【図8】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】同実施形態にかかる相殺電磁力の算出手順を示す流れ図。
【図10】第3の実施形態にかかる相殺電磁力の算出手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載空調装置に搭載されるブロアファン用の電動機の制御装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。ブロワファンを駆動する電動機10は、3相の永久磁石同期モータである。特に本実施形態では、3つの固定子巻線が互いにデルタ結線されて且つ分布巻きのものを想定している。
【0030】
電動機10は、インバータINVを介してバッテリ12に接続されている。インバータINVは、スイッチング素子S*p,S*n(*=u,v,w)の直列接続体を3組備えており、これら各直列接続体の接続点が電動機10のU,V,Wの各端子にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S*#(*=u,v,w;#=p,n)として、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
【0031】
本実施形態では、電動機10やインバータINVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まず電動機10の回転角度(電気角θ)を検出する回転角度センサ14を備えている。また、インバータINVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ16を備えている。
【0032】
上記各種センサの検出値は、制御装置20に取り込まれる。制御装置20では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータINVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータINVのスイッチング素子S*#を操作する信号が、操作信号g*#である。
【0033】
上記制御装置20は、空調装置の送風量に対する要求に応じて電動機10の回転速度を多段階に可変制御する。以下、制御装置20の処理の詳細について説明する。
【0034】
電気角算出部22は、電気角θを入力とし、その時間微分演算によって回転速度(電気角速度ω)を算出する。指令電圧設定部24は、電気角θおよび電気角速度ωを入力とし、電動機10の3つの端子のそれぞれに対する印加電圧の指令値(指令電圧v*r:*=u,v,w)を設定する。これら指令電圧v*rのそれぞれは、1電気角を1周期とする正弦波電圧であり、またこれらの位相は互いに「120°」ずつずれている。なお、指令電圧設定部24の出力する指令電圧v*rは、実際には、電動機10に印加する電圧を電源電圧VDCによって除算することで絶対値に対して規格化がなされたものである。
【0035】
デッドタイム補償部26では、指令電圧vur,vvr,vwrのそれぞれを、電動機10の各端子を流れると想定される電流の極性に基づきフィードフォワード補正するためのデッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwを算出する。ここでは、上記想定される電流の極性と相関を有するパラメータとして電気角θを採用し、電気角θに応じてデッドタイム補正量Δv*を算出する。そして、デッドタイム補正部28,30,32のそれぞれでは、デッドタイム補正量Δvu,Δvv,Δvwのそれぞれに基づき指令電圧vur,vvr,vwrのそれぞれを補正する。
【0036】
こうして補正のなされた指令電圧v*rのそれぞれは、歪補正部36,38,40において補正された後、PWM処理部42に出力される。PWM処理部42では、歪補正部36,38,40の出力信号のそれぞれとキャリアとの大小比較に応じて操作信号g*#(*=u,v,w:#=p,n)を生成し、インバータINVの各スイッチング素子S*#に出力する。ここで、上側アームの操作信号g*pと下側アームの操作信号g*nとのそれぞれの生成処理は、(ア)上記出力信号とキャリアとの大小比較に基づきPWM信号を生成する処理、(イ)PWM信号およびその反転信号のそれぞれについて、立ち上がりエッジをデッドタイムだけ遅延させる処理とを有している。
【0037】
本実施形態では、上記電動機10の各巻線に印加される誘起電圧が、図2に実線にて示すように、意図的に基本波からずれるように設計されている。すなわち、本実施形態にかかる誘起電圧は、矩形に近似して設計されている。これは、正弦波よりも実効値を大きくすることを狙ったものである。これにより、電動機10の体格の割りにその出力を大きくすることができることから、空調装置の小型化に寄与する。ちなみに、電動機10の小型化と高出力化との両立を図る上では、電動機10を高回転で運転して且つ電動機10に印加する電圧を大きくする手法が知られているが、本実施形態では、この手法を適用することは適切ではない。なぜならブロワファンの回転速度はユーザにとって適切な送風量によって制約されるからである。もっとも、電動機10とブロワファンとの間に変速手段を備えることでこの制約を解消することは可能であるが、この場合、変速手段を新たに設けることによる空調装置の大型化、コストアップが無視できない。
【0038】
上記のように誘起電圧を基本波から意図的にずらす場合、各巻線に正弦波形状の電流を流したとしても、電磁力に歪が生じ、トルク脈動が大きくなる。そこで本実施形態では、歪補正部36,38,40において、この電磁力の歪を低減するための電圧の補正を行なう。
【0039】
詳しくは、先の図1に示す相殺電磁力出力部44では、上記誘起電圧の基本波からのずれに起因した電磁力の歪を相殺する相殺電磁力を、電気角θおよび電気角速度ωに応じて出力する。ここで電気角θを用いるのは、上記誘起電圧の基本波からのずれ量が電気角θに応じて変化することに鑑みた設定である。また、電気角速度ωを用いたのは、電磁力の歪が電気角速度ωに応じて変化することに鑑みた設定である。詳しくは、本実施形態では、接線方向の相殺電磁力Fnθと、法線方向の相殺電磁力FnRと、軸線方向の相殺電磁力FnTとを各別に出力する。ここで、接線方向の相殺電磁力Fnθとは、図3に示すように、回転方向の電磁力の歪成分を相殺する電磁力のことである。また、法線方向の相殺電磁力FnRとは、図3に示すように、回転方向に直交する電磁力の歪成分を相殺する電磁力のことである。さらに、軸線方向の相殺電磁力FnTとは、図3に示すように、回転軸に平行な電磁力の歪成分を相殺する電磁力のことである。なお、図3では、電動機10としてアウターロータ型のものを例示することで各方向を示した。
【0040】
上記相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTは、いずれも電気角の「n」倍の周波数成分のものである。本実施形態にかかる相殺電磁力出力部44は、「n」について1から所定の自然数(>1)までの各周波数成分を選択的に出力可能としている。ここで、いずれの周波数成分の相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTを出力するかは、制御装置20の端子T1を介して指示可能とされている。
【0041】
上記相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTは、セレクタSLを介して電磁力電流変換部46に出力される。ここで、セレクタSLは、端子T2によって操作可能とされている。このため、電磁力電流変換部46には、相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのうちのいくつかが選択的に入力されることとなる。
【0042】
電磁力電流変換部46は、相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのうち入力されるものをd軸およびq軸の電流(相殺電流Ind,Inq)に変換して出力する。一方、電流電圧変換部48では、相殺電流Ind,Inqを、d軸およびq軸の電圧(相殺電圧vnd,vnq)に変換して出力する。3次元変換部50は、dq軸上の相殺電圧vnd,vnqを電動機10の各端子に印加するための相殺電圧vnu,vnv,vnwに変換して歪補正部36,38,40に出力する。
【0043】
次に、本実施形態にかかる相殺電磁力出力部44の記憶データの生成処理について説明する。図4に、上記生成処理の手順を示す。この処理は、制御装置20の製造の完了に先立って実行される。
【0044】
この一連の処理では、まずステップS10において、電動機10の構造(寸法、形状等)に関する情報を取得する。続くステップS12においては、得られた情報に基づき、FEM解析を行なう。ここでは、電動機10に電流が流れない条件下、電動機10の回転速度を実際に使用される際の回転速度のそれぞれに設定し、各相(UおよびV間、VおよびW間、WおよびU間)の巻線を鎖交する磁束の大きさを算出(シミュレート)する。続くステップS14においては、磁束歪をFFT(高速フーリエ変換)によって分析することで、電気角周波数の整数倍の各周波数成分の大きさと、磁束に歪がない場合(磁束が基本波である場合)との位相差を特定する。
【0045】
続くステップS16においては、上記各周波数成分に対応する電磁力歪を算出する。これは、各周波数成分に、電動機10を流れると想定される基本波電流を乗算することで行なうことができる。ここで、基本波電流は、電動機10の回転速度に応じて変化する。このため、n次の電磁力歪は、ステップS12におけるFEM解析時に想定された回転速度毎に、それぞれ各別に算出されることとなる。ちなみに、基本波電流は、制御装置20の制御設定によって定まるものであり、本実施形態では、特に指令電圧設定部24によって設定される指令電圧v*rに応じて定まるものである。なお、ここでの電磁力歪は、先の図3に示した接線方向、法線方向および軸方向のそれぞれについて各別に算出される。
【0046】
続くステップS18においては、相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTを、電動機10の回転速度毎に算出する。ここでは、相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのそれぞれの絶対値を、対応する電磁力歪の絶対値の「0.5〜2」倍とする。また、相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのそれぞれの位相を、対応する電磁力歪の位相と、「150〜210°」ずれたものとすることで、位相が「180°」ずれた成分を有するようにする。
【0047】
図5に、本実施形態について、特に6次の相殺電磁力Fnθ,FnR,FnT(n=6)を用いた場合の効果を示す。
【0048】
図5(b)に示すように、誘起電圧が基本波からずれることに起因した電磁力歪(図中、三角印)は、相殺電磁力Fnθ,FnR(図中、四角印)によって好適に相殺される。これに対し、図5(a)に、上記特許文献1に記載の技術を示す。この場合、電流が基本波からずれることを回避すべく電圧が補正されることで生じる電磁力は、電磁力歪を相殺するものとはならない。このため、この場合には、図5(c)に示すように、電気6次のノイズが大きくなっている。これに対し、本実施形態では、この6次のノイズを好適に低減できる。
【0049】
図6(a)に、電動機10に流れる相電流を基本波とする場合を示し、図6(b)に、本実施形態において流れる相電流を示す。本実施形態では、相電流を歪ませることで、図6の下方の電気6次のd軸電圧歪とノイズとの関係、および電気6次のq軸電圧歪とノイズとの関係に示されるように、電磁力歪を相殺することができる。図示されるように、電気6次の電圧歪(先の図1の電流電圧変換部48の出力する相殺電圧vnd,vnq)の大きさを調節することで、ノイズを好適に低減することができる。ちなみに、図6(b)では、先の図4のステップS18の処理において、相殺電磁力をステップS16において算出されたものと絶対値が同一で逆位相とした場合を示している。なお、上記相電流とは、電動機10の一対の端子間(UおよびV間、VおよびW間、WおよびU間)に接続される各巻線を流れる電流のことである。
【0050】
図6は、d軸の相殺電圧vndによるノイズの低減効果と同等の効果をq軸の相殺電圧vnqによって得る上では、q軸の相殺電圧vnqの絶対値を非常に小さくすることが要求されることがわかる。ただし、過度に小さい相殺電圧を精度良く生成することは実際には困難である。このため、d軸の相殺電圧vndを利用することがノイズ低減制御の制御性の向上を容易とする。
図7は、d軸の相殺電圧vndのみを重畳した場合と、q軸の相殺電圧vnqのみを相殺した場合とについて、その絶対値を略同じ大きさの領域において可変設定した場合を示すものである。図中、実線の楕円にて囲った領域内のプロットは、d軸の相殺電圧vndを可変設定した場合のノイズレベルを示しており、図中、破線の楕円にて囲った領域内のプロットは、q軸の相殺電圧vnqを可変設定した場合のノイズレベルを示している。これら楕円内においては、d軸の相殺電圧vndおよびq軸の相殺電圧vnqのいずれも絶対値を小さくすることでノイズがより小さくなっている。
こうした事情に鑑み、本実施形態では、特に、d軸の相殺電圧vndを用いることで、電磁力歪の低減制御の制御性を向上させている。
【0051】
上記相殺電圧vnd,vnqを用いることで、本実施形態では、電磁力歪を好適に低減することができるためトルク脈動を好適に低減することができる。このため、電動機10をブロワファンの他の部品等とユニットとして構成して且つ他の部材との共振現象でノイズが増幅されうる状況にあっても、ノイズを好適に低減することができる。しかも、制御によってノイズを低減するため、先の図2に示した誘起電圧の設定にもかかわらず、振動吸収手段を備えて電動機10を固定する必要も生じることがないことから、ハードウェア全体の小型化に寄与する。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0053】
(1)指令電圧vur,vvr,vwrに相殺電圧vnu,vnv,vnwを重畳することで、電磁力歪を好適に低減することができる。
【0054】
(2)電磁力を相殺するための相殺電磁力にd軸成分(相殺電圧vnd)を含めた。このため、電磁力歪の低減制御を高精度に行なうことが容易となる。
【0055】
(3)相殺電圧vnu,vnv,vnwを電気角速度ωに応じて可変設定した。これにより、電磁力歪をより好適に補償することができる。
【0056】
(4)相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのいずれを利用するかを、端子T1を介して指示可能とした。これにより、たとえば共振現象を生じやすい成分等に限って利用することも可能となる。
【0057】
(5)相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTのどの周波数成分(次数)を利用するかを、端子T2を介して指示可能とした。これにより、たとえば共振現象を生じやすい成分等に限って利用することも可能となる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0058】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材や処理に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0059】
図示されるように、本実施形態では、相殺電磁力算出部66を備える。相殺電磁力算出部66は、電動機10の各端子の電圧の検出結果に基づき相殺電磁力を算出するものである。すなわち、電動機10の各端子とバッテリ12の負極との間の電圧は、電圧センサ60,62,64によって検出され、これらが相殺電磁力算出部66に出力される。ちなみに、電圧センサ60,62,64とインバータINVとの間には、これらの間を開閉する開閉手段(リレーRL)が設けられている。これらリレーRLは、電動機10の回転時に、誘起電圧を起電力として、インバータINVのダイオードD*#を介して電動機10に電流が流れることを回避するための手段である。
【0060】
図9に、相殺電磁力算出部66の行なう処理の手順を示す。この処理は、たとえば制御装置20の製造完成後、電動機10の使用回転速度領域の全域において相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTが算出されるまで適宜のタイミングで実行される。
【0061】
この一連の処理では、まずステップS20において、電動機10の回転速度を上昇させる処理を行なう。続くステップS22においては、リレーRLを開状態とし、電動機10の各相に現れる誘起電圧e$($=uv,vw,wu)を検出する。ここで、リレーRLを開状態とするのは、インバータINVのダイオードD*#を介して電動機10の各端子が接続される閉ループ回路が生じることを回避するためである。すなわち、閉ループ回路が生じると、誘起電圧e$によってダイオードD*#を介して電流が流れることで、電動機10の各端子の電位は、バッテリ12の正極電位または負極電位と同一となるため、端子の電位によって誘起電圧を検出することができなくなる。
【0062】
ちなみに、上記誘起電圧e$は、電動機10の一対の端子間の電位差として検出することができる。すなわち、たとえば誘起電圧euvは、電圧センサ60,62の電圧の検出値同士の差によって検出することができる。また、この処理は、リレーRLを開とすることで、電動機10の回転速度が低下する過程における各回転速度毎に実行されるものであり、各回転速度毎に、少なくとも1電気角周期分の電圧の変化を検出する処理である。
【0063】
続くステップS24においては、検出された誘起電圧の時系列データに基づき、誘起電圧の時間積分演算によって、磁束φ*を算出する。この処理は、回転速度毎に各別に行なわれる。続くステップS26〜S30においては、先の図4のステップS14〜S18の処理と同様の処理を行なう。
【0064】
このように本実施形態では、制御装置20内で相殺電磁力を算出するため、電動機10と制御装置20とを備えるシステムの完成後、自動的に相殺電磁力を算出することができる。このため、上記システムの製造工程を簡素化することができ、また、電動機10の個体差に起因した電磁力歪についてもこれを好適に低減することが可能となる。
【0065】
なお、上記のように回転速度が低下していく過程で各回転速度毎に誘起電圧を検出するのは、ブロワファンのイナーシャが比較的大きいことに鑑みたものである。この場合、回転速度の低下速度が小さくなるため、低下する過程において各回転速度毎の誘起電圧を検出しやすい。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図10に、本実施形態にかかる相殺電磁力算出部66の行なう処理の手順を示す。この処理は、たとえば制御装置20の製造完成後、電動機10の使用回転速度領域の全域において相殺電磁力Fnθ,FnR,FnTが算出されるまで適宜のタイミングで実行される。なお、図10において、先の図9に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0067】
この一連の処理では、まずステップS20aにおいて、電動機10の回転速度を、空調装置の使用時に制御される目標回転速度のいずれかに制御する。なお、この処理は、実際に空調装置が使用されるに際して、ユーザによる送風量の要求に応じた目標回転速度に制御する処理としてもよい。もっとも、これに代えて、制御装置20および電動機10を備えるシステムの製品出荷前に行なうようにしてもよい。続くステップS22aにおいては、リレーRLを一時的に開操作して、磁束を検出する。ここで磁束の検出は、磁束を検出する周知の手段によって行なえばよい。なお、この磁束の検出は、電動機10の3つの巻線の鎖交磁束を直接検出する処理に限らず、磁束検出用に別途設けられたコイルの鎖交磁束の検出であってもよい。この場合であっても、この鎖交磁束の位相をシフトさせることで、構造上のずれ等を除き各巻線の鎖交磁束となる。
【0068】
こうして磁束が検出されると、先の図9のステップS26〜S30の処理を行なう。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0069】
「操作手段について」
操作手段としては、電気角θと電気角速度ωとから指令電圧vur,vvr,vwrを算出するものに限らない。たとえば、電動機10の電流を指令電流にフィードバック制御するための操作量として指令電圧を算出するものであってもよい。また、電動機10のトルクを指令値にフィードバック制御するための操作量としてインバータINVの出力電圧の位相を操作して且つ、電気角速度ωとトルクの指令値とに基づき出力電圧のベクトルノルムを設定するものであってもよい。
【0070】
また、出力線間電圧を基本波とする手段としては、各端子に対する印加電圧の指令値を基本波とするものに限らず、たとえば回転機として固定子巻線がスター結線されたものを用いて且つ、各端子に印加される電圧を2相変調するものや、これらに3次高調波を重畳するものであってもよい。
【0071】
「デッドタイム補償について」
たとえば、電流フィードバック制御を行なう場合において、電流の指令値の位相が可変設定される制御を行なう場合等にあっては、これに応じてデッドタイム補正量ΔVu,ΔVv,ΔVwを可変とすることが望ましい。
【0072】
なお、デッドタイム補償を行なわない場合であっても、デッドタイムに起因した電磁力歪以外の歪については、相殺電磁力を用いて抑制することができる。
【0073】
「記憶手段について」
回転方向の相殺電磁力Fnθ、直交方向の相殺電磁力FnRおよび軸方向の相殺電磁力FnTを記憶するものに限らず、これらのうちの少なくとも2つを記憶する手段であってもよい。この際、相殺電磁力Fnθや、相殺電磁力FnR、相殺電磁力FnTのそれぞれの次数を複数とする代わりに単一の次数の電磁力のみを記憶することも可能である。
【0074】
また、相殺電磁力Fnθや、相殺電磁力FnR、相殺電磁力FnTのいずれか1つのみを記憶するようにしてもよい。さらに「n」は、所定次数(>1)までの各自然数とするものに限らず、たとえば6次と12次のみとするなどしてもよい。
【0075】
相殺電磁力Fnθや、相殺電磁力FnR、相殺電磁力FnTを記憶する代わりに、相殺電流Ind,Inqを記憶したり、相殺電圧Vnd,Vnqを記憶したりするものであってもよい。
【0076】
「選択手段について」
端子T1,T2を介して操作するものに限らない。たとえば、相殺電磁力Fnθや、相殺電磁力FnR、相殺電磁力FnTのうちのいずれとするかの選択のみを行なう上では、端子T2のみを備える構成であってもよい。
【0077】
「重畳手段について」
上記各実施形態では、電気角θと電気角速度ωとのそれぞれに応じて補正電圧を可変としたが、これに限らず、たとえば電気角θのみに応じて可変としてもよい。
【0078】
補正電圧としては、d軸およびq軸の双方からなるものに限らない。たとえばd軸の補正電圧(相殺電圧vnd)のみであってもよい。この場合、q軸の補正電圧(相殺電圧vnq)のみを用いる場合と比較して、電磁力歪をゼロに制御するうえでの制御性を向上させやすい。ただしこれは、相殺電圧vnqのみを用いることができないことを意味しない。
【0079】
たとえば、上記第1の実施形態における指令電圧設定部24の出力に、3次元変換部50の出力電圧が予め重畳されるようにしてもよい。これは、この電圧と、電気角θおよび電気角速度ωとの関係を定めたマップを作成することで実現することができる。この場合、補正電圧を重畳する処理を制御装置20が実施しないこととなる。
【0080】
「相殺電磁力の利用対象について」
各相の巻線に誘起される電圧を意図的に基本波からずらした電動機に限らない。一般に、各相の巻線に誘起される電圧を完全な基本波とするのは困難であるため、製造された電動機10は、各相の巻線に誘起される電圧が基本波からずれる傾向がある。このため、このずれに起因した電磁力の歪を補償する上では相殺電磁力を利用することが有効である。
【0081】
「相殺電磁力に応じた印加電圧の設定について」
上記実施形態では、相殺電磁力を、生じると想定される電磁力歪の絶対値からずらしたり、想定される電磁力歪の位相から180°ずれた位相に対してずらしたりしたがこれに限らない。相殺電磁力を想定される電磁力と絶対値が同一であって且つ位相を180°ずれたものとし、電磁力電流変換部46や電流電圧変換部48、3次元変換部50において、相殺電磁力の位相や絶対値を変更するようにしてもよい。
【0082】
「検出手段による検出時期について」
電動機10の電気角速度ωを低下させる際に限らない。たとえば、電気角速度ωを上昇させる過程であってもよい。この場合であっても、上昇処理を一旦中断し、リレーRLを開操作することで誘起電圧等を検出することができる。
【0083】
「回転機の種類について」
巻線同士の結線方式としては、デルタ結線に限らず、たとえばスター結線であってもよい。ただし、この場合、上記第2の実施形態において、電動機10の各端子と中性点との間の電位差を検出する手段を備えることが望ましい。すなわち、中性点の電圧は、3相の電圧が理想的な正弦波である場合にはゼロとなるものの、正弦波からずれることでゼロからずれるため、中性点電位の検出を行なうことなく端子電圧によって相電圧を高精度に検出することは困難である。ただし、上記実施形態のように巻線の鎖交磁束を意図的に基本波からずらすような設計を行なうことなく、基本波を意図して設計する場合にあっては、端子電圧の検出のみによっても誘起電圧を比較的高精度に検出することができる可能性がある。ちなみに、こうした状況は、相殺電磁力を電動機10の個体差を補償するために利用する場合等に生じうる。
【0084】
また、分布巻きに限らず、集中巻であってもよい。なお、上記実施形態のように分布巻の場合、電動機10の回転速度の変動を低減しやすいため、制御装置20によって誘起電圧や鎖交磁束を高精度に検出しやすいというメリットがある。
【0085】
さらに、永久磁石を有する同期機にも限らず、たとえば巻線界磁型同期機等であってもよい。この場合であっても、ロータの巻線による磁束がステータの巻線を鎖交する際の鎖交磁束の基本波からのずれに起因した電磁力歪を補償するうえでは、相殺電磁力を利用することが有効である。
【0086】
「回転機の用途について」
車載空調装置が備えるブロワファン用の電動機に限らない。たとえば車載内燃機関の冷却水を冷却するためのファン用の電動機であってもよい。またたとえば、車載内燃機関の燃料ポンプに搭載される電動機であってもよい。さらにたとえば、車載空調装置の備える電動コンプレッサ用の電動機であってもよい。
【0087】
もっとも、回転機としては、電動機としてのみ機能するものに限らず、たとえば発電機として機能するものであってもよい。
【0088】
「電圧印加回路について」
電圧印加回路としては、直流電圧源の正極および負極のそれぞれに回転機の端子を選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路(インバータIV)に限らない。たとえば特願2008−30825号に記載されているように、回転機の各端子に接続されるコンバータであってもよい。
【0089】
「そのほか」
上記第2の実施形態において、電圧検出手段による誘起電圧の検出対象を1の相としてもよい。この場合であっても、検出される誘起電圧の位相をずらすことで、構造上のずれ等を除き他の相の誘起電圧とすることができる。
【0090】
回転角度センサ14を備える代わりに、回転機の電気的な状態量によって電気角θを推定算出するセンサレス制御を行なってもよい。
【符号の説明】
【0091】
10…電動機、20…制御装置、44…相殺電磁力出力部、46…電磁力電流変換部、48…電流電圧変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
前記制御量を制御するための操作量としての前記電圧印加回路の出力線間電圧を操作する手段であって且つ、該出力線間電圧を基本波電圧とする手段である操作手段と、
前記電圧印加回路の出力電圧に補正電圧を重畳する重畳手段と、
を備え、
前記補正電圧は、前記回転機の端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれることによる電磁力のずれを補償するための補正電圧であることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記補正電圧は、前記回転機を流れる電流を基本波に対して歪ませるものであることを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
回転機の端子に電圧を印加する電圧印加回路の操作によって前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
前記制御量を制御するための操作量としての前記電圧印加回路の出力線間電圧を操作する操作手段を備え、
該操作手段によって操作される前記電圧印加回路の出力線間電圧は、基本波電圧に対して歪んだものであり、
該出力線間電圧の歪によって前記回転機を流れる電流を基本波に対して歪ませることで、前記回転機の端子に接続された巻線を鎖交する磁束が基本波からずれることによる電磁力のずれが補償されることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項4】
前記補正電圧は、d軸成分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記補正電圧は、前記電磁力のずれを補償する開ループ操作量であることを特徴とする請求項1,2または4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記重畳手段は、前記回転機の回転角度に応じて前記補正電圧を可変設定することを特徴とする請求項1,2,4または5記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記重畳手段は、前記回転機の回転速度に応じて前記補正電圧を可変設定することを特徴とする請求項1,2,4〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記重畳手段は、前記磁束のずれを定量化した物理量を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された物理量の特定の周波数成分を選択する選択手段とを備え、
前記補正電圧は、前記選択された周波数成分の物理量に対応するものであることを特徴とする請求項1,2,4〜7のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記重畳手段は、前記磁束のずれに起因した前記回転機の回転方向成分の電磁力、前記回転方向の直交方向成分の電磁力、および前記回転機の軸方向成分の電磁力の少なくとも2つを定量化した物理量を記憶する記憶手段と、前記定量化された物理量のうちの1つ以上を選択する選択手段とを備え、
前記補正電圧は、前記選択された物理量に対応するものであることを特徴とする請求項1,2,4〜8のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記回転機は、永久磁石を備えるものであり、
前記回転機が回転している状態で前記電圧印加回路から前記回転機に印加する電圧をゼロとすることで、前記巻線の誘起電圧または前記巻線の鎖交磁束を検出する検出手段をさらに備え、
前記重畳手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記補正電圧を算出することを特徴とする請求項1,2,4〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記回転機の回転速度を上昇させた後、前記回転機のトルクを低下させることで前記回転機の回転速度を低下させる手段を備え、
前記検出手段は、前記低下させる際に前記検出を行なうことを特徴とする請求項10記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
請求項1,2,4〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置を製造する方法において、
前記回転機の電磁力のずれ情報を取得する工程と、
該取得されたずれ情報に基づき、前記ずれに関する電磁力を低減するための電磁力に応じた物理量を算出する工程と、
前記算出された物理量を前記制御装置に記憶させる工程と、
を有することを特徴とする回転機の制御装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−244735(P2012−244735A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111495(P2011−111495)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】