説明

固体撮像装置

【課題】何れかの読出用配線が断線している場合に画素データを補正して解像度が高い画像を得ることができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】固体撮像装置1は、受光部10、信号読出部20、制御部30および補正処理部40を備える。受光部10では、入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードと接続された読出用スイッチと、を各々含むM×N個の画素部P1,1〜PM,Nが、M行N列に2次元配列されている。各画素部Pm,nで発生した電荷は読出用配線LO,nを経て積分回路Sに入力され、その電荷量に応じて積分回路Sから出力された電圧値は保持回路Hを経て出力用配線Loutへ出力される。補正処理部40では、信号読出部20から繰り返し出力される各フレームデータについて補正処理が行われ、その補正処理後のフレームデータが出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置として、CMOS技術を用いたものが知られており、その中でもパッシブピクセルセンサ(PPS: Passive Pixel Sensor)方式のものが知られている(特許文献1を参照)。PPS方式の固体撮像装置は、入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードを含むPPS型の画素部がM行N列に2次元配列されていて、各画素部において光入射に応じてフォトダイオードで発生した電荷を、積分回路において容量素子に蓄積し、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力するものである。
【0003】
一般に、各列のM個の画素部それぞれの出力端は、その列に対応して設けられている読出用配線を介して、その列に対応して設けられている積分回路の入力端と接続されている。そして、第1行から第M行まで順次に行毎に、画素部のフォトダイオードで発生した電荷は、対応する読出用配線を経て、対応する積分回路に入力されて、その積分回路から電荷量に応じた電圧値が出力される。
【0004】
PPS方式の固体撮像装置は、様々な用途で用いられ、例えば、シンチレータパネルと組み合わされてX線フラットパネルとして医療用途や工業用途でも用いられ、更に具体的にはX線CT装置やマイクロフォーカスX線検査装置等においても用いられる。このような用途で用いられる固体撮像装置は、M×N個の画素部が2次元配列される受光部が大面積であり、各辺の長さが10cmを超える大きさの半導体基板に集積化される場合がある。したがって、1枚の半導体ウェハから1個の固体撮像装置しか製造され得ない場合がある。
【特許文献1】特開2006−234557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような固体撮像装置において、何れかの列に対応する読出用配線が製造途中で断線した場合、その列のM個の画素部のうち、積分回路に対し断線位置より近いところにある画素部は読出用配線により積分回路と接続されているが、積分回路に対し断線位置より遠いところにある画素部は積分回路と接続されていない。したがって、積分回路に対し断線位置より遠いところにある画素部において光入射に応じてフォトダイオードで発生した電荷は、積分回路へ読み出されることがなく、該フォトダイオードの接合容量部に蓄積されていく一方である。
【0006】
フォトダイオードの接合容量部に蓄積される電荷の量が飽和レベルを越えると、飽和レベルを越えた分の電荷が隣の画素部へ溢れ出す。したがって、1本の読出用配線が断線すると、その影響は、その読出用配線と接続された列の画素部に及ぶだけでなく、両隣の列の画素部にも及び、結局、連続した3列の画素部について欠陥ラインが生じることになる。
【0007】
欠陥ラインが連続しておらず、1本の欠陥ラインの両隣が正常ラインであれば、これら両隣の正常ラインの各画素データを用いて欠陥ラインの画素データを補間することも可能である。しかし、連続した3列の画素部について欠陥ラインが生じた場合には、上記のような補間をすることが困難である。特に、上述したように大面積の受光部を有する固体撮像装置は、読出用配線が長いことから断線が生じる確率が高くなる。
【0008】
特許文献1には、このような問題点を解消することを意図した発明が提案されている。この発明では、欠陥ラインの隣にある隣接ラインの全画素データの平均値を求めるとともに、更に隣にある正常な数ライン分の全画素データの平均値をも求め、これら2つの平均値の差が一定値以上であれば隣接ラインも欠陥であると判定して、該隣接ラインの画素データを補正し、さらに、該隣接ラインの画素データの補正後の値に基づいて欠陥ラインの画素データを補正する。
【0009】
特許文献1に記載された発明では、欠陥であると判定された隣接ラインの画素データの補正の際には、該隣接ラインに対して両側の直近の正常ライン上の2つの画素データの平均値を求め、その平均値を該隣接ラインの画素データとする。また、欠陥ラインの画素データの補正の際には、該欠陥ラインに対して両側の隣接ライン上の2つの画素データの平均値を求め、その平均値を該欠陥ラインの画素データとする。
【0010】
しかし、特許文献1に記載された発明では、欠陥ライン(および、欠陥ラインの近傍にある欠陥と判定されたライン)の画素データを補正するために、2つの画素データの平均を求めるという処理を複数回繰り返すことになるので、補正後の画像において欠陥ライン近傍では解像度が低くなる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、何れかの読出用配線が断線している場合に画素データを補正して解像度が高い画像を得ることができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る固体撮像装置は、(1) 入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードと接続された読出用スイッチと、を各々含むM×N個の画素部P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列された受光部と、(2)受光部における第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれに含まれる読出用スイッチと接続され、M個の画素部P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素部に含まれるフォトダイオードで発生した電荷を、該画素部に含まれる読出用スイッチを介して読み出す読出用配線LO,nと、(3)読出用配線LO,1〜LO,Nそれぞれと接続され、読出用配線LO,nを経て入力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する信号読出部と、(4)受光部における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチの開閉動作を制御するとともに、信号読出部における電圧値の出力動作を制御して、受光部におけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして信号読出部から繰り返し出力させる制御部と、を備える。ただし、M,Nは2以上の整数であり、mは1以上M以下の各整数であり、nは1以上N以下の各整数である。
【0013】
本発明に係る固体撮像装置は、上記の受光部,読出用配線LO,n,信号読出部および制御部に加えて、信号読出部から繰り返し出力される各フレームデータを取得して補正処理を行う補正処理部を更に備える。また、本発明に係るフレームデータ補正方法は、上記の受光部,読出用配線LO,n,信号読出部および制御部を備える固体撮像装置から出力されるフレームデータを補正する方法である。
【0014】
本発明に係る固体撮像装置に含まれる補正処理部、または、本発明に係るフレームデータ補正方法は、(a) 読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの第n1列の読出用配線LO,n1が断線しているときに、第n1列のM個の画素部P1,n1〜PM,n1のうち読出用配線LO,n1の断線に因り信号読出部に接続されない画素部を画素部Pm1,n1とし、第n1列の隣の第n2列にあって画素部Pm1,n1に隣接する画素部を画素部Pm1,n2として、(b) 信号読出部から出力されるフレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を、該電圧値を入力変数とする関数式に従って変換して補正するとともに、(c) フレームデータのうち画素部Pm1,n1に対応する電圧値を、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正後の値に基づいて決定する、ことを特徴とする。ただし、m1は1以上M以下の整数であり、n1,n2は1以上N以下の整数である。
【0015】
本発明によれば、読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの第n1列の読出用配線LO,n1が断線しているときに、第n1列のM個の画素部P1,n1〜PM,n1のうち読出用配線LO,n1の断線に因り信号読出部に接続されない画素部が画素部Pm1,n1とされ、また、第n1列の隣の第n2列にあって画素部Pm1,n1に隣接する画素部が画素部Pm1,n2とされる。そして、信号読出部から出力されるフレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値は、該電圧値を入力変数とする関数式に従って変換されて補正される。その後、フレームデータのうち画素部Pm1,n1に対応する電圧値は、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正後の値に基づいて決定される。
【0016】
このように、断線している第n1列の読出用配線LO,n1に隣接する第n2列の読出用配線LO,n2上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値Vを補正する際に、正常ライン上の画素部に対応する電圧値を用いる必要がない。したがって、特許文献1に記載された発明と比較して、本発明では、補正後の画像において欠陥ライン近傍における解像度が高くなる。
【0017】
本発明に係る固体撮像装置に含まれる補正処理部、または、本発明に係るフレームデータ補正方法は、関数式として多項式を用いるのが好ましく、画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性と、に基づいて決定される値を、上記の多項式の係数として用いるのが好ましい。
【0018】
本発明に係る固体撮像装置に含まれる補正処理部、または、本発明に係るフレームデータ補正方法は、読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの複数の読出用配線が断線しているときに、その断線している複数の読出用配線それぞれに応じて係数を設定して、フレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を補正するのが好ましい。
【0019】
固体撮像装置が複数組の受光部および信号読出部を備える場合に、本発明に係る固体撮像装置に含まれる補正処理部、または、本発明に係るフレームデータ補正方法は、複数の受光部のうちの何れかの受光部に含まれる何れかの列の読出用配線が断線しているときに、その受光部に含まれる画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性とに基づいて求めた係数を用いるのが好ましい。補正係数は、製品使用前の検査により測定した「正常画素」及び「隣接画素」の電圧出力の入射光強度依存性に基いて予め設定される。
【0020】
また、本発明に係るX線CT装置は、(1) 被写体に向けてX線を出力するX線出力部と、(2)X線出力部から出力されて被写体を経て到達したX線を受光し撮像する上記の本発明に係る固体撮像装置と、(3) X線出力部および固体撮像装置を被写体に対して相対移動させる移動手段と、(4) 固体撮像装置から出力される補正処理後のフレームデータを入力し、そのフレームデータに基づいて被写体の断層画像を生成する画像解析部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、何れかの読出用配線が断線している場合に画素データを補正して解像度が高い画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る固体撮像装置1の概略構成図である。本実施形態に係る固体撮像装置1は、受光部10、信号読出部20、制御部30および補正処理部40を備える。また、X線フラットパネルとして用いられる場合、固体撮像装置1の受光面10の上にシンチレータパネルが重ねられる。
【0024】
受光部10は、M×N個の画素部P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列されたものである。画素部Pm,nは第m行第n列に位置する。ここで、M,Nそれぞれは2以上の整数であり、mは1以上M以下の各整数であり、nは1以上N以下の各整数である。各画素部Pm,nは、PPS方式のものであって、共通の構成を有している。
【0025】
第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれは、第m行選択用配線LV,mにより制御部30と接続されている。第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれの出力端は、第n列読出用配線LO,nにより、信号読出部20に含まれる積分回路Sと接続されている。
【0026】
信号読出部20は、N個の積分回路S〜SおよびN個の保持回路H〜Hを含む。各積分回路Sは共通の構成を有している。また、各保持回路Hは共通の構成を有している。
【0027】
各積分回路Sは、読出用配線LO,nと接続された入力端を有し、この入力端に入力された電荷を蓄積して、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力端から保持回路Hへ出力する。N個の積分回路S〜Sそれぞれは、放電用配線Lにより制御部30と接続されている。
【0028】
各保持回路Hは、積分回路Sの出力端と接続された入力端を有し、この入力端に入力される電圧値を保持し、その保持した電圧値を出力端から出力用配線Loutへ出力する。N個の保持回路H〜Hそれぞれは、保持用配線Lにより制御部30と接続されている。また、各保持回路Hは、第n列選択用配線LH,nにより制御部30と接続されている。
【0029】
制御部30は、第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行選択用配線LV,mへ出力して、この第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに与える。M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)は順次に有意値とされる。制御部30は、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)を順次に有意値として出力するためにシフトレジスタを含む。
【0030】
制御部30は、第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LH,nへ出力して、この第n列選択制御信号Hsel(n)を保持回路Hに与える。N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)も順次に有意値とされる。制御部30は、N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)を順次に有意値として出力するためにシフトレジスタを含む。
【0031】
また、制御部30は、放電制御信号Resetを放電用配線Lへ出力して、この放電制御信号ResetをN個の積分回路S〜Sそれぞれに与える。制御部30は、保持制御信号Holdを保持用配線Lへ出力して、この保持制御信号HoldをN個の保持回路H〜Hそれぞれに与える。
【0032】
制御部30は、以上のように、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWの開閉動作を制御するとともに、信号読出部20における電圧値の保持動作および出力動作を制御する。これにより、制御部30は、受光部10におけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして信号読出部20から繰り返し出力させる。
【0033】
補正処理部40は、信号読出部20から繰り返し出力される各フレームデータを取得して補正処理を行い、その補正処理後のフレームデータを出力する。この補正処理部40における補正処理内容については後に詳述する。
【0034】
図2は、本実施形態に係る固体撮像装置1に含まれる画素部Pm,n,積分回路Sおよび保持回路Hそれぞれの回路図である。ここでは、M×N個の画素部P1,1〜PM,Nを代表して画素部Pm,nの回路図を示し、N個の積分回路S〜Sを代表して積分回路Sの回路図を示し、また、N個の保持回路H〜Hを代表して保持回路Hの回路図を示す。すなわち、第m行第n列の画素部Pm,nおよび第n列読出用配線LO,nに関連する回路部分を示す。
【0035】
画素部Pm,nは、フォトダイオードPDおよび読出用スイッチSWを含む。フォトダイオードPDのアノード端子は接地され、フォトダイオードPDのカソード端子は読出用スイッチSWを介して第n列読出用配線LO,nと接続されている。フォトダイオードPDは、入射光強度に応じた量の電荷を発生し、その発生した電荷を接合容量部に蓄積する。読出用スイッチSWは、制御部30から第m行選択用配線LV,mを経た第m行選択制御信号が与えられる。第m行選択制御信号は、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWの開閉動作を指示するものである。
【0036】
この画素部Pm,nでは、第m行選択制御信号Vsel(m)がローレベルであるときに、読出用スイッチSWが開いて、フォトダイオードPDで発生した電荷は、第n列読出用配線LO,nへ出力されることなく、接合容量部に蓄積される。一方、第m行選択制御信号Vsel(m)がハイレベルであるときに、読出用スイッチSWが閉じて、それまでフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、読出用スイッチSWを経て、第n列読出用配線LO,nへ出力される。
【0037】
第n列読出用配線LO,nは、受光部10における第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWと接続されている。第n列読出用配線LO,nは、M個の画素部P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素部に含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷を、該画素部に含まれる読出用スイッチSWを介して読み出して、積分回路Sへ転送する。
【0038】
積分回路Sは、アンプA,積分用容量素子Cおよび放電用スイッチSWを含む。積分用容量素子Cおよび放電用スイッチSWは、互いに並列的に接続されて、アンプAの入力端子と出力端子との間に設けられている。アンプAの入力端子は、第n列読出用配線LO,nと接続されている。放電用スイッチSWは、制御部30から放電用配線Lを経た放電制御信号Resetが与えられる。放電制御信号Resetは、N個の積分回路S〜Sそれぞれに含まれる放電用スイッチSWの開閉動作を指示するものである。
【0039】
この積分回路Sでは、放電制御信号Resetがハイレベルであるときに、放電用スイッチSWが閉じて、積分用容量素子Cが放電され、積分回路Sから出力される電圧値が初期化される。放電制御信号Resetがローレベルであるときに、放電用スイッチSWが開いて、入力端に入力された電荷が積分用容量素子Cに蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路Sから出力される。
【0040】
保持回路Hは、入力用スイッチSW31,出力用スイッチSW32および保持用容量素子Cを含む。保持用容量素子Cの一端は接地されている。保持用容量素子Cの他端は、入力用スイッチSW31を介して積分回路Sの出力端と接続され、出力用スイッチSW32を介して電圧出力用配線Loutと接続されている。入力用スイッチSW31は、制御部30から保持用配線Lを経た保持制御信号Holdが与えられる。保持制御信号Holdは、N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31の開閉動作を指示するものである。出力用スイッチSW32は、制御部30から第n列選択用配線LH,nを経た第n列選択制御信号Hsel(n)が与えられる。第n列選択制御信号Hsel(n)は、保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示するものである。
【0041】
この保持回路Hでは、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じて、そのときに入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子Cに保持される。また、第n列選択制御信号Hsel(n)がハイレベルであるときに、出力用スイッチSW32が閉じて、保持用容量素子Cに保持されている電圧値が電圧出力用配線Loutへ出力される。
【0042】
制御部30は、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれの受光強度に応じた電圧値を出力するに際して、放電制御信号Resetにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれに含まれる放電用スイッチSWを一旦閉じた後に開くよう指示した後、第m行選択制御信号Vsel(m)により、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWを所定期間に亘り閉じるよう指示する。制御部30は、その所定期間に、保持制御信号Holdにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31を閉状態から開状態に転じるよう指示する。そして、制御部30は、その所定期間の後に、列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)により、N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32を順次に一定期間だけ閉じるよう指示する。制御部30は、以上のような制御を各行について順次に行う。
【0043】
次に、本実施形態に係る固体撮像装置1の動作について説明する。本実施形態に係る固体撮像装置1では、制御部30による制御の下で、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M),N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N),放電制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれが所定のタイミングでレベル変化することにより、受光面10に入射された光の像を撮像してフレームデータを得ることができ、さらに、補正処理部40によりフレームデータを補正することができる。
【0044】
図3は、本実施形態に係る固体撮像装置1の動作を説明するタイミングチャートである。この図には、上から順に、(a) N個の積分回路S〜Sそれぞれに含まれる放電用スイッチSWの開閉動作を指示する放電制御信号Reset、(b) 受光部10における第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWの開閉動作を指示する第1行選択制御信号Vsel(1)、(c) 受光部10における第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWの開閉動作を指示する第2行選択制御信号Vsel(2)、および、(d) N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31の開閉動作を指示する保持制御信号Hold が示されている。
【0045】
また、この図には、更に続いて順に、(e) 保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第1列選択制御信号Hsel(1)、(f) 保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第2列選択制御信号Hsel(2)、(g) 保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第3列選択制御信号Hsel(3)、(h) 保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第n列選択制御信号Hsel(n)、および、(i) 保持回路Hに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第N列選択制御信号Hsel(N) が示されている。
【0046】
第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しは、以下のようにして行われる。時刻t10前には、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M),N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N),放電制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれは、ローレベルとされている。
【0047】
時刻t10から時刻t11までの期間、制御部30から放電用配線Lに出力される放電制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSWが閉じて、積分用容量素子Cが放電される。また、時刻t11より後の時刻t12から時刻t15までの期間、制御部30から第1行選択用配線LV,1に出力される第1行選択制御信号Vsel(1)がハイレベルとなり、これにより、受光部10における第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWが閉じる。
【0048】
この期間(t12〜t15)内において、時刻t13から時刻t14までの期間、制御部30から保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0049】
期間(t12〜t15)内では、第1行の各画素部P1,nに含まれる読出用スイッチSWが閉じており、各積分回路Sの放電用スイッチSWが開いているので、それまでに各画素部P1,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素部P1,nの読出用スイッチSWおよび第n列読出用配線LO,nを通って、積分回路Sの積分用容量素子Cに転送されて蓄積される。そして、各積分回路Sの積分用容量素子Cに蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路Sの出力端から出力される。
【0050】
その期間(t12〜t15)内の時刻t14に、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じることにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じ、そのときに積分回路Sの出力端から出力されて保持回路Hの入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子Cに保持される。
【0051】
そして、期間(t12〜t15)の後に、制御部30から列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じて、各保持回路Hの保持用容量素子Cに保持されている電圧値は出力用スイッチSW32を経て電圧出力用配線Loutへ順次に出力される。この電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDにおける受光強度を表すものである。N個の保持回路H〜Hそれぞれから電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、電圧出力用配線Loutを通って補正処理部40に入力される。
【0052】
続いて、第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しが以下のようにして行われる。
【0053】
時刻t20から時刻t21までの期間、制御部30から放電用配線Lに出力される放電制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSWが閉じて、積分用容量素子Cが放電される。また、時刻t21より後の時刻t22から時刻t25までの期間、制御部30から第2行選択用配線LV,2に出力される第2行選択制御信号Vsel(2)がハイレベルとなり、これにより、受光部10における第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWが閉じる。
【0054】
この期間(t22〜t25)内において、時刻t23から時刻t24までの期間、制御部30から保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0055】
そして、期間(t22〜t25)の後に、制御部30から列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じる。
【0056】
以上のようにして、第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDにおける受光強度を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力される。N個の保持回路H〜Hそれぞれから電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、電圧出力用配線Loutを通って補正処理部40に入力される。
【0057】
以上のような第1行および第2行についての動作に続いて、以降、第3行から第M行まで同様の動作が行われて、1回の撮像に得られる画像を表すフレームデータが得られる。また、第M行について動作が終了すると、再び第1行から同様の動作が行われて、次の画像を表すフレームデータが得られる。このように、一定周期で同様の動作を繰り返すことで、受光部10が受光した光の像の2次元強度分布を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力されて、繰り返してフレームデータが得られる。これらのフレームデータは補正処理部40に入力される。
【0058】
ところで、第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWが閉じている期間において、第m行の各画素部Pm,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素部Pm,nの読出用スイッチSWおよび第n列読出用配線LO,nを経て、積分回路Sの積分用容量素子Cに転送される。この際に、第m行の各画素部Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部の蓄積電荷が初期化される。
【0059】
しかし、或る第n列読出用配線LO,nが途中の位置で断線している場合には、その第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nのうち、積分回路Sに対し断線位置より遠いところにある画素部は、積分回路Sと接続されておらず、積分回路Sへ電荷を転送することができないので、この電荷転送に因るフォトダイオードPDの接合容量部の蓄積電荷の初期化をすることができない。このままでは、これらの画素部において光入射に応じてフォトダイオードで発生した電荷は、該フォトダイオードの接合容量部に蓄積されていく一方であり、飽和レベルを越えると両隣の列の画素部へ溢れ出して、連続した3列の画素部について欠陥ラインを生じさせることになる。
【0060】
そこで、本実施形態に係る固体撮像装置1では、補正処理部40は、信号読出部20から繰り返し出力される各フレームデータを取得して、そのフレームデータに対して以下のような補正処理を行う。
【0061】
以下では、読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの第n1列の読出用配線LO,n1が断線しているとする。そして、第n1列のM個の画素部P1,n1〜PM,n1のうち読出用配線LO,n1の断線に因り信号読出部20に接続されない欠陥ライン上の画素部を画素部Pm1,n1とする。また、第n1列の隣の第n2列にあって画素部Pm1,n1に隣接する隣接ライン上の画素部を画素部Pm1,n2とする。ここで、m1は1以上M以下の整数であり、n1,n2は1以上N以下の整数であり、n1とn2との差は1である。
【0062】
補正処理部40は、信号読出部20から出力されるフレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を、該電圧値を入力変数とする関数式に従って変換して補正する。このとき、補正処理部40は、上記の関数式として任意のものを用い得るが、多項式を用いるのが簡便である。また、補正処理部40は、画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性と、に基づいて決定される値を、上記の多項式の係数として用いることができる。
【0063】
また、補正処理部40は、読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの複数の読出用配線が断線しているときに、その断線している複数の読出用配線それぞれに応じて上記の係数を設定して、フレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を補正するのも好ましい。
【0064】
さらに、補正処理部40は、フレームデータのうち欠陥ライン上の画素部Pm1,n1に対応する電圧値を、隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正後の値に基づいて決定する。この決定に際しては、両隣の隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値に基づいて補間計算をして決定するのが好ましい。
【0065】
そして、補正処理部40は、隣接ライン上の画素部Pm1,n2および欠陥ライン上の画素部Pm1,n1それぞれに対応する電圧値を上記のようにして補正した後のフレームデータを出力する。
【0066】
隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正処理について更に詳細に説明すると以下のとおりである。
【0067】
図4は、信号読出部20から出力されるフレームデータのうち正常ラインおよび隣接ラインそれぞれの画素部に対応する電圧値の関係を示す図である。ここでは、受光部10の全体に一様な強度の光を入射させ、その入射光強度を変化させて、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値Vと正常ライン上の画素部に対応する電圧値Vとの関係を求めて図中で実線で示した。図中には、「V=V」のラインを破線で示した。なお、これらの電圧値V,Vはダーク補正後のものである。正常ラインとは、読出用配線が断線している欠陥ラインでもなく、欠陥ライン上の画素部から電荷が流入してくる隣接ラインでもない。
【0068】
この図に示されるように、正常ライン上の画素部に対応する電圧値Vは、一般に下記(1)式で表されるように、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値Vを入力変数とする関数で表される。また、簡便には下記(2)式で表されるように、正常ライン上の画素部に対応する電圧値Vは、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値Vを入力変数とする例えば4次の多項式で表される。
【0069】
図4では受光部10の全体に一様な強度の光を入射させていることから、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値Vは、欠陥ライン上の画素部からの電荷の流入等がなければ、正常ライン上の画素部に対応する電圧値Vと等しい値となるべきであるが、欠陥ライン上の画素部からの電荷の流入等により、異なる値となっている。
【0070】
ここで、同一の強度の光が当たっている場合に、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値がV、正常ライン上の画素部に対応する電圧値がVを関係付ける式として(1)式を定義する。より具体的には多項式の(2)式として、製品の検査時に係数a〜eを決定しておく。すなわち、隣接ライン上の画素部で電圧値Vが得られた場合は、(2)式にVを代入してVを求める。(1)式および(2)式はあくまで、一様な強度の光を照射したときの隣接ラインと正常ライン上の画素部の出力する電圧値の関係を示す式であるため、(3)式を、隣接ライン上の画素部の電圧値Vから、補正値V‘を求める式とする。
【0071】
具体的には、図4中に示す様に、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値がVの場合に、(1)式(より具体的には、係数の決定された(2)式)により求められる値Vが、欠陥ライン上の画素部からの電荷の流入等がない場合の、隣接ライン上の画素部に対応する電圧値がVの値となるため、補正値(V’)としてそれを採用する。
【0072】
すなわち、(1)式および(2)式を、隣接ラインの電圧値と正常ラインの電圧値とを関係付ける式と考えて、隣接ラインの電圧値から正常ラインの電圧値を求めて、それを欠陥ライン上の画素部からの電荷の流入等ない場合の隣接ラインの電圧値にする。
【数1】


【数2】

【0073】
この様に、信号読出部20から出力されるフレームデータのうち隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値Vは、該電圧値を入力変数とする下記(3)式の多項式に従って変換して補正される。そして、補正処理部40は、この補正後の電圧値V’に基づいて、欠陥ライン上の画素部Pm1,n1に対応する電圧値を決定する。
【数3】

【0074】
補正処理部40は、以上のような処理をするに際して、信号読出部20から出力されるフレームデータの各画素部に対応する電圧値に対してダーク補正を予め行っておくのが好ましい。また、補正処理部40は、以上のような処理をアナログ処理で行ってもよいが、信号読出部20から出力されるフレームデータをデジタル変換した後にデジタル処理を行うのが好ましく、フレームデータをデジタル値として記憶するフレームメモリを備えるのが好ましい。
【0075】
補正処理部40は、以上のような処理をするために、読出用配線LO,1〜LO,Nのうちの断線している読出用配線、および、その断線している読出用配線における断線位置を、予め記憶する記憶部を備えるのが好ましい。さらに、固体撮像装置1の製造途中または製造後の検査において得られた断線情報を外部から上記の記憶部に記憶させることができるのが好ましい。
【0076】
また、補正処理部40は、受光部10,信号読出部20および制御部30とともに一体に設けられていてもよい。この場合、固体撮像装置1の全体が半導体基板上に集積化されているのが好ましい。また、受光部10,信号読出部20および制御部30が一体とされているのに対して、これらとは別に補正処理部40が設けられていてもよい。この場合、補正処理部40は例えばコンピュータにより実現され得る。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態に係る固体撮像装置1、または、固体撮像装置1の信号読出部20から出力されるフレームデータを補正する方法では、フレームデータのうち隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値を関数式に従って補正する。すなわち、隣接ライン上の画素部Pm1,n2に対応する電圧値を補正する際に、正常ライン上の画素部に対応する電圧値を用いる必要がない。したがって、特許文献1に記載された発明と比較して、本実施形態では、補正後の画像において欠陥ライン近傍における解像度が高くなる。
【0078】
なお、信号読出部20によるフレームデータの出力動作と、補正処理部40による補正処理とは、交互に行われてもよいし、また、並列的に行われてもよい。前者の場合、信号読出部20によるフレームデータFの出力動作の後、補正処理部40によるフレームデータFの補正処理が行われ、その補正処理が終了した後、信号読出部20から次のフレームデータFk+1が補正処理部40へ出力される。一方、後者の場合、信号読出部20によるフレームデータFの出力動作の後、補正処理部40によるフレームデータFの補正処理が行われ、その補正処理の期間と少なくとも一部が重なる期間において、信号読出部20から次のフレームデータFk+1が補正処理部40へ出力される。
【0079】
また、欠陥ライン上の画素部から隣接ライン上の画素部への電荷の漏れ出しは、欠陥ラインの両側の隣接ライン上の画素部に対して生じる。したがって、欠陥ラインの両側の隣接ライン上の画素部に対して、以前のフレームデータの電圧値を利用した補正を行なうことが好ましい。ただし、欠陥ラインに対して一方の側に隣接する隣接ライン上の画素部の電圧値と、同じ側で更に隣接する正常ライン上の画素部の電圧値とを、ビニング(加算)して読み出す場合には、欠陥ラインに対して他方の側に隣接する隣接ライン上の画素部の電圧値に対してのみ、以前のフレームデータの電圧値を利用した補正を行う。この場合にも、特許文献1に記載された発明と比較して、高い解像度が得られる。
【0080】
次に、本発明に係る固体撮像装置の他の実施形態について説明する。図5は、他の実施形態に係る固体撮像装置2の構成図である。この固体撮像装置2は、受光部10A,10B、信号読出部20A,20B、制御部30、補正処理部40、および、バッファ部50A,50Bを備える。また、X線フラットパネルとして用いられる場合、固体撮像装置2の受光面10A,10Bの上にシンチレータパネルが重ねられる。
【0081】
固体撮像装置2に含まれる受光部10A,10Bそれぞれは、固体撮像装置1に含まれる受光部10と同様のものである。また、固体撮像装置2に含まれる信号読出部20A,20Bそれぞれは、固体撮像装置1に含まれる信号読出部20と同様のものである。
【0082】
固体撮像装置2に含まれる制御部30は、第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行選択用配線LV,mへ出力して、この第m行選択制御信号Vsel(m)を、受光部10A,10Bそれぞれに含まれる第m行の画素部Pm,1〜Pm,Nに与える。制御部30は、信号読出部20Aに含まれる各保持回路Hに与えるべき第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LHA,nへ出力するとともに、信号読出部20Bに含まれる各保持回路Hに与えるべき第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LHB,nへ出力する。
【0083】
また、制御部30は、信号読出部20A,20Bそれぞれに含まれる各積分回路Sに与えるべき放電制御信号Resetを放電用配線Lへ出力する。制御部30は、信号読出部20A,20Bそれぞれに含まれる各保持回路Hに与えるべき保持制御信号Holdを保持用配線Lへ出力する。
【0084】
制御部30は、以上のように、受光部10A,10Bそれぞれにおける第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSWの開閉動作を制御するとともに、信号読出部20A,20Bにおける電圧値の保持動作および出力動作を制御する。これにより、制御部30は、受光部10A,10BそれぞれにおけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして信号読出部20A,20Bから繰り返し出力させる。
【0085】
このように、固体撮像装置2は、複数組の受光部および信号読出部を備えることにより、受光領域を拡大することができ、或いは、画素数を増加させることができる。また、複数の信号読出部を互いに並列的に動作させることが可能であり、画素データの高速読出しが可能である。
【0086】
尚、バッファ部は、複数組の受光部および信号読出部の各組から、補正処理部に信号を送るための信号出力部となる。受光部および信号読出部の各組は、それぞれ異なる半導体基板上に形成することが可能であり、この場合、補正処理部は、受光部及び信号読出部が形成された何れかの半導体基板上、又は更に別の半導体基板上に形成することが可能である。又、バッファ部はバッファアンプのみで構成しても良い。
【0087】
補正処理部40は、信号読出部20Aに含まれる各保持回路Hから順次に電圧出力用配線Lout_Aに出力されてバッファ部50Aを経た電圧値を入力するとともに、信号読出部20Bに含まれる各保持回路Hから順次に電圧出力用配線Lout_Bに出力されてバッファ部50Bを経た電圧値を入力する。そして、補正処理部40は、信号読出部20A,20Bから繰り返し出力される各フレームデータを取得して補正処理を行い、その補正処理後のフレームデータを出力する。
【0088】
この補正処理部40における処理内容は前述したとおりである。ただし、バッファ部50Aとバッファ部50Bとは動作特性が必ずしも一致しておらず、入力電圧値が同一であっても出力電圧値が異なる場合がある。そこで、補正処理部40では、受光部20Aに含まれる何れかの列の読出用配線が断線している場合には、その受光部20Aに含まれる画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部(正常ライン)に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2(隣接ライン)に対応する電圧値の入射光強度依存性とに基づいて決定した係数a〜eを用いるのが好ましい。
【0089】
同様に、補正処理部40では、受光部20Bに含まれる何れかの列の読出用配線が断線している場合には、その受光部20Bに含まれる画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部(正常ライン)に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2(隣接ライン)に対応する電圧値の入射光強度依存性とに基づいて決定した係数a〜eを用いるのが好ましい。
【0090】
本実施形態に係る固体撮像装置1、または、固体撮像装置1の信号読出部20から出力されるフレームデータを補正する方法は、X線CT装置において好適に用いられ得る。そこで、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えるX線CT装置の実施形態について次に説明する。
【0091】
図6は、本実施形態に係るX線CT装置100の構成図である。この図に示されるX線CT装置100では、X線源106は被写体に向けてX線を発生する。X線源106から発生したX線の照射野は、1次スリット板106bによって制御される。X線源106は、X線管が内蔵され、そのX線管の管電圧、管電流および通電時間などの条件が調整されることによって、被写体へのX線照射量が制御される。X線撮像器107は、2次元配列された複数の画素部を有するCMOSの固体撮像装置を内蔵し、被写体を通過したX線像を検出する。X線撮像器107の前方には、X線入射領域を制限する2次スリット板107aが設けられる。
【0092】
旋回アーム104は、X線源106およびX線撮像器107を対向させるように保持して、これらをパノラマ断層撮影の際に被写体の周りに旋回させる。また、リニア断層撮影の際にはX線撮像器107を被写体に対して直線変位させるためのスライド機構113が設けられる。旋回アーム104は、回転テーブルを構成するアームモータ110によって駆動され、その回転角度が角度センサ112によって検出される。また、アームモータ110は、XYテーブル114の可動部に搭載され、回転中心が水平面内で任意に調整される。
【0093】
X線撮像器107から出力される画像信号は、AD変換器120によって例えば10ビット(=1024レベル)のデジタルデータに変換され、CPU(中央処理装置)121にいったん取り込まれた後、フレームメモリ122に格納される。フレームメモリ122に格納された画像データから、所定の演算処理によって任意の断層面に沿った断層画像が再生される。再生された断層画像は、ビデオメモリ124に出力され、DA変換器125によってアナログ信号に変換された後、CRT(陰極線管)などの画像表示部126によって表示され、各種診断に供される。
【0094】
CPU121には、信号処理に必要なワークメモリ123が接続され、さらにパネルスイッチやX線照射スイッチ等を備えた操作パネル119が接続されている。また、CPU121は、アームモータ110を駆動するモータ駆動回路111、1次スリット板106bおよび2次スリット板107aの開口範囲を制御するスリット制御回路115,116、X線源106を制御するX線制御回路118にそれぞれ接続され、さらに、X線撮像器107を駆動するためのクロック信号を出力する。
【0095】
X線制御回路118は、X線撮像器107により撮像された信号に基づいて、被写体へのX線照射量を帰還制御することが可能である。
【0096】
以上のように構成されるX線CT装置100において、X線撮像器107は、本実施形態に係る固体撮像装置1の受光部10,信号読出部20および制御部30に相当し、受光部10の前面にシンチレータパネルが設けられている。また、CPU121およびワークメモリ123は、本実施形態に係る固体撮像装置1の補正処理部40に相当する。
【0097】
X線CT装置100は、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えるとともに、固体撮像装置から出力される補正処理後に基づいて被写体の断層画像を生成する画像解析部としてCPU121を備えていることにより、欠陥ライン近傍における解像度が高い断層画像を得ることができる。特に、X線CT装置では、短期間に多数(例えば300)のフレームデータを連続的に取得するとともに、固体撮像装置1の受光部10への入射光量がフレーム毎に変動するので、欠陥ライン上の画素部から隣接ライン上の画素部へ溢れ出す電荷の量はフレーム毎に変動する。このようなX線CT装置において、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えることにより、フレームデータに対して有効な補正をすることができる。なお、X線CT装置100は、固体撮像装置1に替えて固体撮像装置2を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係る固体撮像装置1の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る固体撮像装置1に含まれる画素部Pm,n,積分回路Sおよび保持回路Hそれぞれの回路図である。
【図3】本実施形態に係る固体撮像装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】信号読出部20から出力されるフレームデータのうち正常ラインおよび隣接ラインそれぞれの画素部に対応する電圧値の関係を示す図である。
【図5】他の実施形態に係る固体撮像装置2の構成図である。
【図6】本実施形態に係るX線CT装置100の構成図である。
【符号の説明】
【0099】
1,2…固体撮像装置、10,10A,10B…受光部、20,20A,20B…信号読出部、30…制御部、40…補正処理部、P1,1〜PM,N…画素部、PD…フォトダイオード、SW…読出用スイッチ、S〜S…積分回路、C…積分用容量素子、SW…放電用スイッチ、A…アンプ、H〜H…保持回路、C…保持用容量素子、SW31…入力用スイッチ、SW32…出力用スイッチ、LV,m…第m行選択用配線、LH,n…第n列選択用配線、LO,n…第n列読出用配線、L…放電用配線、L…保持用配線、Lout…電圧出力用配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードと接続された読出用スイッチと、を各々含むM×N個の画素部P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列された受光部と、
前記受光部における第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれに含まれる読出用スイッチと接続され、前記M個の画素部P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素部に含まれるフォトダイオードで発生した電荷を、該画素部に含まれる読出用スイッチを介して読み出す読出用配線LO,nと、
前記読出用配線LO,1〜LO,Nそれぞれと接続され、前記読出用配線LO,nを経て入力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する信号読出部と、
前記受光部における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチの開閉動作を制御するとともに、前記信号読出部における電圧値の出力動作を制御して、前記受光部におけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして前記信号読出部から繰り返し出力させる制御部と、
前記信号読出部から繰り返し出力される各フレームデータを取得して補正処理を行う補正処理部と、
を備え、
前記補正処理部が、
前記読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの第n1列の読出用配線LO,n1が断線しているときに、第n1列のM個の画素部P1,n1〜PM,n1のうち前記読出用配線LO,n1の断線に因り前記信号読出部に接続されない画素部を画素部Pm1,n1とし、第n1列の隣の第n2列にあって画素部Pm1,n1に隣接する画素部を画素部Pm1,n2として、
前記信号読出部から出力されるフレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を、該電圧値を入力変数とする関数式に従って変換して補正するとともに、
前記フレームデータのうち画素部Pm1,n1に対応する電圧値を、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正後の値に基づいて決定する、
ことを特徴とする固体撮像装置(ただし、M,Nは2以上の整数、mは1以上M以下の各整数、nは1以上N以下の各整数、m1は1以上M以下の整数、n1,n2は1以上N以下の整数)。
【請求項2】
前記補正処理部が、
前記関数式として多項式を用い、
画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性と、に基づいて決定される値を、前記多項式の係数として用いる、
ことを特徴とする請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記補正処理部が、前記読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの複数の読出用配線が断線しているときに、その断線している複数の読出用配線それぞれに応じて前記係数を設定して、フレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を補正する、
ことを特徴とする請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
複数組の前記受光部および前記信号読出部を備え、
前記補正処理部で用いられる係数が、複数の前記受光部のうちの何れかの受光部に含まれる何れかの列の読出用配線が断線しているときに、その受光部に含まれる画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性とに基づいて決定される、
ことを特徴とする請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項5】
被写体に向けてX線を出力するX線出力部と、
前記X線出力部から出力されて前記被写体を経て到達したX線を受光し撮像する請求項1〜4の何れか1項に記載の固体撮像装置と、
前記X線出力部および前記固体撮像装置を前記被写体に対して相対移動させる移動手段と、
前記固体撮像装置から出力される補正処理後のフレームデータを入力し、そのフレームデータに基づいて前記被写体の断層画像を生成する画像解析部と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードと、このフォトダイオードと接続された読出用スイッチと、を各々含むM×N個の画素部P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列された受光部と、
前記受光部における第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれに含まれる読出用スイッチと接続され、前記M個の画素部P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素部に含まれるフォトダイオードで発生した電荷を、該画素部に含まれる読出用スイッチを介して読み出す読出用配線LO,nと、
前記読出用配線LO,1〜LO,Nそれぞれと接続され、前記読出用配線LO,nを経て入力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する信号読出部と、
前記受光部における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチの開閉動作を制御するとともに、前記信号読出部における電圧値の出力動作を制御して、前記受光部におけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして前記信号読出部から繰り返し出力させる制御部と、
を備える固体撮像装置から出力されるフレームデータを補正する方法であって、
前記読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの第n1列の読出用配線LO,n1が断線しているときに、第n1列のM個の画素部P1,n1〜PM,n1のうち前記読出用配線LO,n1の断線に因り前記信号読出部に接続されない画素部を画素部Pm1,n1とし、第n1列の隣の第n2列にあって画素部Pm1,n1に隣接する画素部を画素部Pm1,n2として、
前記信号読出部から出力されるフレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を、該電圧値を入力変数とする関数式に従って変換して補正するとともに、
前記フレームデータのうち画素部Pm1,n1に対応する電圧値を、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の補正後の値に基づいて決定する、
ことを特徴とするフレームデータ補正方法(ただし、M,Nは2以上の整数、mは1以上M以下の各整数、nは1以上N以下の各整数、m1は1以上M以下の整数、n1,n2は1以上N以下の整数)。
【請求項7】
前記関数式として多項式を用い、
画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性と、に基づいて決定される値を、前記多項式の係数として用いる、
ことを特徴とする請求項6記載のフレームデータ補正方法。
【請求項8】
前記読出用配線LO,1〜LO,Nのうち何れかの複数の読出用配線が断線しているときに、その断線している複数の読出用配線それぞれに応じて前記係数を設定して、フレームデータのうち画素部Pm1,n2に対応する電圧値を補正する、
ことを特徴とする請求項7記載のフレームデータ補正方法。
【請求項9】
前記固体撮像装置が複数組の前記受光部および前記信号読出部を備え、
複数の前記受光部のうちの何れかの受光部に含まれる何れかの列の読出用配線が断線しているときに、その受光部に含まれる画素部Pm1,n1および画素部Pm1,n2の何れでもない画素部に対応する電圧値の入射光強度依存性と、画素部Pm1,n2に対応する電圧値の入射光強度依存性とに基づいて前記係数を求める、
ことを特徴とする請求項7記載のフレームデータ補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−65377(P2009−65377A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230553(P2007−230553)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】