説明

圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置

【課題】弁体の直進性を維持しつつ、連通流路の流路面積を十分に確保することができると共に、軸部が流路壁に引っかかるのを抑えることができる。
【解決手段】1次室167および2次室169と、1次室167と2次室169とを連通する連通流路173と、連通流路173を1次室167側から開閉する弁体211と、弁体211を開閉動作させるダイヤフラム171と、弁体211を閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね217と、を備え、弁体211は、弁座Sに対し直接開閉動作するOリング214と、Oリング214を保持する保持部212と、保持部212から延びてダイヤフラム171に当接する軸部213と、を有し、連通流路173は、軸部213が挿通する第1連通流路221と、弁座Sと第1連通流路221との間に穿孔した第2連通流路222と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入ポートを介して1次室に供給された液体を、圧力調整して2次室から流出ポートを介して供給する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成された流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁を連通する連通流路と、1次室側の連通流路開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉するダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。
一方、弁体は、弁座に直接接触するバルブシールと、バルブシールを保持する保持部、および保持部から前方に延びる軸部から成る弁ホルダーと、を有している。そして、軸部は、連通流路を挿通してダイヤフラムに当接している。すなわち、ダイヤフラムと弁体ばねが拮抗した状態で、ダイヤフラムの挙動を受けて弁体が開閉するようになっている。また、連通流路は、軸部で狭められている分の流路を確保すべく、断面十字状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような圧力調整弁では、連通流路が断面十字状に形成されているため、軸部が接触する連通流路の流路壁が周方向において断続する形態を有している。ゆえに、弁体が前後する際に軸部が流路壁に接触すると、軸部が小さい接触面積で流路壁に接触するため、軸部が流路壁に引っかかり易いという問題があった。軸部が流路壁に引っかかってしまうと、これに起因して過度な抵抗が生まれ、弁体の開閉動作が鈍くなってしまう。ひいては、弁体が円滑に応答せず、圧力調整を精度良く行うことができない。また、これに対し、連通流路を断面円形に形成することも考えられる。しかしながら、かかる場合、軸部に対する連通流路の径方向の遊びを狭くすると、連通流路の流入面積を十分確保できないという問題があり、一方、当該径方向の遊びを広くすると、連通流路は弁体の直進性を保つためのガイドとしての役割も担っているため、当該ガイド機能が低下してしまい、弁体の直進性が低下してしまうという問題がある。弁体の直進性が低下してしまうと、弁体の開閉を精度良く行うことができず、圧力調整を精度良く行うことができない。
【0005】
本発明は、弁体の直進性を維持しつつ、連通流路の流路面積を十分に確保することができると共に、軸部が流路壁に引っかかるのを抑えることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、隔壁に貫通形成され、1次室と2次室とを連通する連通流路と、連通流路を形成した隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、連通流路を1次室側から開閉する弁体と、隔壁に平行な2次室の1の面を構成すると共に弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、隔壁に対向する1次室の1の壁面を受けとして、受圧膜体と拮抗しつつ弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備え、弁体は、1次室に配設され弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体を保持する保持部と、保持部から連通流路を挿通して延びると共に受圧膜体に当接する作動軸部と、を有し、連通流路は、作動軸部が挿通する第1連通流路と、弁座と第1連通流路との間において隔壁に穿孔した第2連通流路と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、作動軸部がスライドする連通流路(第1連通流路)と、液体を流入する連通流路(第2連通流路)とを別々に設けることで、連通流路の流路壁を、周方向において連続する形態にすることができるため、作動軸部が流路壁に引っかかるのを抑えることができる。また、作動軸部に対する第1連通流路の径方向の遊びを狭くすることができ、弁体の直進性を維持することができると共に、第2連通流路により、十分な面積の流路を確保することができる。
【0008】
この場合、第2連通流路は、第1連通流路の周囲において、周方向に均等配置した複数の小孔から成ることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第2連通流路を容易に形成することができると共に、弁座と第1連通流路との間の狭い部分に十分な面積の流路を確保することができる。
【0010】
この場合、流入ポートを介して機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整し、流出ポートを介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、機能液滴吐出ヘッドへの機能液の供給に、圧力調整を精度良く行うことができる圧力調整弁を用いることで、機能液滴吐出ヘッドからの吐出量を安定させることができ、機能液の吐出を精度良く行うことができる。
【0012】
本発明の液滴吐出装置は、上記の圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行うことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、圧力調整を精度良く行うことができる上記圧力調整弁を用いることで、機能液滴吐出ヘッドでの描画処理を精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】機能液滴吐出ヘッドを搭載したヘッドユニットを模式的に表した平面図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図8】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図9】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図10】連通流路周りを示した断面図(a)および側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の圧力調整弁を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入したインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。特に、弁体の軸部が流路壁に引っかかるのを抑えることができる圧力調整弁を備え、機能液滴吐出ヘッドの圧力調整を精度良く行うことができる。
【0016】
図1、図2および図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17が搭載された10個のキャリッジユニット51と、から成り、10個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバー6と、チャンバー6を貫通して、チャンバー6の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101を有した機能液供給ユニット7と、各ユニットを制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0017】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット14、吸引ユニット15、ワイピングユニット16および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットによって、機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、メンテナンス装置5を構成する各ユニットのうち、フラッシングユニット14および吐出性能検査ユニット18は、X軸テーブル11に搭載され、吸引ユニット15およびワイピングユニット16は、X軸テーブル11から直角に延び、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台上に配設されている。
【0018】
図2または図3に示すように、X軸テーブル11は、ワークWを吸着セットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記のフラッシングユニット14および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。
【0019】
Y軸テーブル12は、10個の各キャリッジユニット51をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート52と、10個のブリッジプレート52を両持ちで支持する10組のY軸スライダー(図示省略)と、上記した一対のY軸支持ベース3上に設置され、10組のY軸スライダーを介してブリッジプレート52をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル12は、各キャリッジユニット51を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド17を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド17をメンテナンス装置5(吸引ユニット15およびワイピングユニット16)に臨ませる。なお、Y軸リニアモーターの駆動を制御することにより、各キャリッジユニット51を独立させて個別に移動させることも可能であるし、10個のキャリッジユニット51を一体として移動させることも可能である。
【0020】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつのヘッド群54に分けて支持するヘッドプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット51は、ヘッドユニット13をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構61と、θ回転機構61を介して、ヘッドユニット13をY軸テーブル12(各ブリッジプレート52)に支持させる吊設部材62と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット51は、その上部に後述するサブタンク121が配設されている(実際には、ブリッジプレート52上のタンクケース55内に配設)。
【0021】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91に連なる2連のヘッド基板93と、機能液導入部91の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7(機能液供給装置101)に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると(ピエゾ圧電素子に電圧が印加され)、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0022】
ノズル面97には、多数の吐出ノズル98からなる2つのノズル列99が相互に平行に形成されている。そして、2つのノズル列99同士は、相互に半ノズルピッチ分位置ずれしている。
【0023】
液滴吐出装置1の描画動作は、ワークWに対し機能液滴吐出ヘッド17を相対的に移動させながら、ワークW上に機能液を吐出して行う。具体的には。まず、ワークWをX軸テーブル11により、X軸方向で移動させながら、第1描画動作(往動パス)を行う。その後、ヘッドユニット13を2ヘッド分Y軸方向に移動(副走査)させて、改めて、ワークWをX軸方向で移動させながら、第2描画動作(復動パス)を行う。そして、再度ヘッドユニット13を2ヘッド分副走査し、もう一度、ワークWをX軸方向で移動させながら、第3描画動作(往動パス)を行う。このような描画動作により、R・G・B3色の描画処理を効率良く行っている。
【0024】
フラッシングユニット14は、一対の描画前フラッシングユニット71,71と、定期フラッシングユニット72とを有し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークWの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。吸引ユニット15は、複数のキャップユニット86を有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、各機能液滴吐出ヘッド17のキャッピングを行う。ワイピングユニット16は、ワイピングシート75を有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。
【0025】
次に、図1および図6を参照して機能液供給ユニット7について説明する。機能液供給ユニット7は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置101を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0026】
図6に示すように、各色の機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク111,111を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた10個のサブタンク(機能液供給手段)121と、タンクユニット122と10個のサブタンク121を接続する上流側機能液流路126と、各サブタンク121と各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する10組の下流側機能液流路127と、を備えている。
【0027】
各メインタンク111,111内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備102からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路126を介して10個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、各種開閉弁に接続した圧縮エアー供給設備103の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、これに接続したガス排気設備104を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、下流側機能液流路127を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。
【0028】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク111,111と、一対のメインタンク111,111に接続されると共に、上流側機能液流路126に接続した切換え機構113と、を備えている。各メインタンク111には、窒素ガス供給設備102に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。なお、タンクユニット122は、チャンバー6の側壁の一部に設けられたタンクキャビネット84に収納されている。
【0029】
上流側機能液流路126は、上流側をタンクユニット122に接続したタンク側主流路131と、タンク側主流路131から10方に分流し、下流側を各サブタンク121に接続した10本の枝流路133と、を備えている。各下流側機能液流路127は、上流側を各サブタンク121に接続したヘッド側主流路146と、ヘッド側主流路146から4方に分流し、下流側を各機能液滴吐出ヘッド17に接続した4本のヘッド側枝流路148と、を備えている。すなわち、上流側機能液流路126の10分岐と、下流側機能液流路127の4分岐により、タンクユニット122から10×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット7は、R・G・Bで3組の機能液供給装置101を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給される。そして、各ヘッド側枝流路148には、各機能液滴吐出ヘッド17への供給圧力を調整する圧力調整弁150がそれぞれ介設されている。
【0030】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁150について説明する。図7に示すように、圧力調整弁150は、ヘッド側枝流路148に介設されており、流入側の継手を構成すると共に、流入ポート175に連なる流入コネクタ161(ユニオン継手)と、流出側の継手を構成すると共に、流出ポート190に連なる流出コネクタ162(ユニオン継手)と、を有している。なお、図7および図9においては、図中上側を、圧力調整弁150の上側とし、図中下側を圧力調整弁150の下側とする。すなわち、圧力調整弁150は、流入コネクタ161側を上側とし、流出コネクタ162側を下側として立設されている。
【0031】
図7および図8に示すように、圧力調整弁150は、本体ケーシング166と、本体ケーシング166と共に内部に1次室167を形成する蓋ケーシング168と、本体ケーシング166と共に内部に2次室169を形成し本体ケーシング166にダイヤフラム(受圧膜体)171を固定するリングプレート170との3部材でバルブケーシング(バルブハウジング)が構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、本体ケーシング166には、その中心位置に1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。
【0032】
蓋ケーシング168およびリングプレート170は、本体ケーシング166に対し、前後からリングプレート170および蓋ケーシング168を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム171の中心を通る軸線と同心円となる円形あるいは多角形(8角形)の外観を有している。そして、蓋ケーシング168および本体ケーシング166は、パッキン172を介して相互に気密に突合せ接合され、本体ケーシング166およびリングプレート170は、ダイヤフラム171の縁部およびパッキン172を挟み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0033】
本体ケーシング166と蓋ケーシング168とで形成された1次室167は、ダイヤフラム171と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋ケーシング168により閉蓋されている。また、本体ケーシング166の1次室167側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室167から径方向斜めに延びる流入ポート175が形成されている。流入ポート175には上記の流入コネクタ161が接続されている。
【0034】
図8に示すように、流入ポート175は、本体ケーシング166の外周面に開口した流入口176と、フィルター181を収容するフィルター収容部177と、フィルター収容部177と1次室167の内周面とを連通する流入経路178とから成り、流入口176に対し流入経路178は、1次室167側に偏心して形成されている。流入口176には、流入コネクタ161が螺合(テーパネジ)される。なお、フィルター181と、螺合した流入コネクタ161との間にはフィルター181の押えばね182が収容される。
【0035】
図8および図9に示すように、2次室169は、ダイヤフラム171と、本体ケーシング166に形成した内面壁185とによって、全体としてダイヤフラム171を底面とする略円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム171は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室169の1の面を構成している。また、内面壁185は、2次室169のダイヤフラム171の面(1の面)を除いた各面で構成されている。
【0036】
内面壁185は、略円錐台形状の頂面となる円形の平面壁部185aと、段部を存して平面壁部185aの外側に連なる環状平面壁部185bと、環状平面壁部185bの外側に連なる環状テーパー壁部185cと、から構成されている。平面壁部185aには、ダイヤフラム171と同心となるように、その中心部に連通流路173の2次室側開口部が開口し、環状平面壁部185bには、その下部に、後述する流出流路193の流出開口部187が形成されている。
【0037】
図9に示すように流出ポート190は、本体ケーシング166の下部に位置する傾斜ボス部191に形成されており、傾斜ボス部191の下部に開口した流出口192と、2次室169の流出開口部187と、これらを連通する流出流路193とで構成されている。流出流路193は、内面壁185の環状平面壁部185bから斜めに延びて下向きの流出口192に連通している。流出口192には、流出流路193の軸線方向から流出コネクタ162が螺合している。2次室169から流出する機能液は、流出開口部187から流出流路193の勾配に従って斜めに流下し、機能液滴吐出ヘッド17側に流出する。
【0038】
図8および図9に示すように、ダイヤフラム171は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体206と、ダイヤフラム本体206の内側に貼着した樹脂製の受圧板207とで構成されている。受圧板207は、ダイヤフラム本体206と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体206に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体211の軸部213が当接する。ダイヤフラム本体206は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、本体ケーシング166の前面と同径の円形に形成されている。
【0039】
弁体211は、弁座Sとなる連通流路173の1次室側開口縁部に直接開閉動作する環状のOリング(弁体本体)214と、Oリング214を保持する段付き円柱状の保持部212と、保持部212の中心から一方向(2次室169側)に延びる軸部(作動軸部)213と、で構成されている。保持部212は、Oリング214を嵌め込む形で保持する円柱状の保持部本体212aと、後述する弁体付勢ばね217の一端に取り付けられた段付き円板状のばね取付け部212bと、を備えている。ばね取付け部212bは、その小径部を、弁体付勢ばね217の一端に入れ込むと共に、その大径部の端面を当該一端の端面に当接することで、弁体付勢ばね217に取り付けられる。保持部212および軸部213は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング214は、特殊なゴムで環状に形成されている。このため、弁体211の閉弁時には、連通流路173を形成した隔壁Pの1次室側開口縁部を弁座Sとして、Oリング214が当接して、連通流路173が1次室167側から液密に閉塞される。
【0040】
軸部213は、連通流路173(の後述する第1連通流路221)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム171の受圧板207に当接する。すなわち、ダイヤフラム171が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部213の前端と受圧板207との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム171がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部213の前端と受圧板207が当接し、さらにダイヤフラム171のマイナス変形がすすむと、受圧板207が軸部213を介して保持部212を押し開弁させることになる。
【0041】
弁体211の背面(ばね取付け部212b)と1次室167の壁体(1の壁面)216との間には、弁体211を2次室169側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね(弁体ばね)217が介設されている。同様に、受圧板207と内面壁185(平面壁部185a)の間には、受圧板207を介してダイヤフラム本体206を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね218が介設されている。この場合、弁体付勢ばね217は、弁体211の背面に加わるサブタンク121の水頭を補完するものであり、サブタンク121の水頭とこの弁体付勢ばね217のばね力により、弁体211が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね218は、ダイヤフラム171のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室169が負圧になるように作用する。
【0042】
圧力調整弁150は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド17に連なる2次室169との圧力バランスによりダイヤフラム171(およびこれが当接する弁体211)が変形(進退)することで開閉し、2次室169側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね217および受圧板付勢ばね218に力が分散して作用し、且つ特殊なゴムのOリング214(の弾性力)により、弁体211は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体211の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド17の吐出駆動に影響を与えないようになっている。
【0043】
ここで図7(b)、図8および図10を参照して、連通流路173について説明する。図7(b)、図8および図10に示すように、本体ケーシング166における1次室167および2次室169の隔壁Pには、1次室167および2次室169を連通する連通流路173が形成されている。すなわち、この連通流路173は、上記隔壁Pに貫通形成されている。連通流路173は、本体ケーシング166の中心部に穿孔されると共に、軸部213が挿通する第1連通流路221と、弁体211の弁座Sおよび第1連通流路221の間で、第1連通流路221周りに穿孔された第2連通流路222と、を有している。第2連通流路222は、第1連通流路221の周囲において、周方向に均等配置された複数の小孔223から成る。
【0044】
第1連通流路221および第2連通流路222(複数の小孔223)は、2次室169における内面壁185の平面壁部185aから、1次室167の2次室側壁面に掛けて穿孔されている。第1連通流路221は、軸部213をスライド自在に遊嵌することを主目的とし、第2連通流路222は、機能液を2次室169へ流入させることを主目的としている。すなわち、圧力調整の際、第1連通流路221内で、弁体211の軸部213がスライドすると共に、第2連通流路222から機能液が流入する。なお、第1連通流路221は、軸部213の直進性を保つためのガイドとしての役割を担っているものの、弁体211の開閉動作の際、軸部213が第1連通流路221の流路壁に接触しないことが好ましい。すなわち、好ましくは、軸部213と第1連通流路221の流路壁との間に間隙を有した状態(軸部213と流路壁との間に機能液が流れる状態)で、弁体の開閉動作が行われる。また、1次室167、2次室169および第1連通流路221は、いずれもダイヤフラム171と同心の円形断面を有している。
【0045】
以上のような構成によれば、軸部213がスライドする連通流路(第1連通流路221)と、機能液を流入する連通流路(第2連通流路222)とを別々に設けることで、連通流路の流路壁を、周方向において連続する形態にすることができるため、軸部213が流路壁に引っかかるのを抑えることができる。また、軸部213に対する第1連通流路221の径方向の遊びを狭くすることができ、弁体211の直進性を維持することができると共に、第2連通流路222により、十分な面積の流路を確保することができる。
【0046】
また、第2連通流路222が、第1連通流路221の周囲において、周方向に均等配置した複数の小孔223から成ることにより、第2連通流路222を容易に形成することができると共に、弁座Sと第1連通流路221との間の狭い部分に十分な面積の流路を確保することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:液滴吐出装置、 17:機能液滴吐出ヘッド、 121:サブタンク、 150:圧力調整弁、 166:本体ケーシング、 167:1次室、 168:蓋ケーシング、 169:2次室、 170:リングプレート、 171:ダイヤフラム、 173:連通流路、 175:流入ポート、 190:流出ポート、 211:弁体、 212:保持部、 213:軸部、 214:Oリング、 216:壁体、 217:弁体付勢ばね、 221:第1連通流路、 222:第2連通流路、 223:小孔、 P:隔壁、 S:弁座、 W:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、
前記隔壁に貫通形成され、前記1次室と前記2次室とを連通する連通流路と、
前記連通流路を形成した前記隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、前記連通流路を前記1次室側から開閉する弁体と、
前記隔壁に平行な前記2次室の1の面を構成すると共に前記弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、
前記隔壁に対向する前記1次室の1の壁面を受けとして、前記受圧膜体と拮抗しつつ前記弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備え、
前記弁体は、前記1次室に配設され前記弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、前記弁体本体を保持する保持部と、前記保持部から前記連通流路を挿通して延びると共に前記受圧膜体に当接する作動軸部と、を有し、
前記連通流路は、前記作動軸部が挿通する第1連通流路と、前記弁座と前記第1連通流路との間において前記隔壁に穿孔した第2連通流路と、を有していることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記第2連通流路は、前記第1連通流路の周囲において、周方向に均等配置した複数の小孔から成ることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記流入ポートを介して機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整し、前記流出ポートを介してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行うことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−198435(P2010−198435A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43775(P2009−43775)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】