説明

圧縮機

【課題】車両の坂道走行・でこぼこ道走行等いかなる走行状態においても、車両用空調装置の圧縮機貯油部に貯えられた潤滑油面が波立って潤滑油中にガス成分が混入することを防止すること。
【解決手段】φ0.5〜2mmを無数設けた油面安定板A21aと油圧安定板B21bとシート21cで構成する油圧安定板完成21を高圧室10下部の貯油部10aに設け、油面安定板支持ガイド22により支持する構造にすることにより、いかなる車両走行においても潤滑油中にガス成分が潤滑油中に混入することを抑制することになり、ベーン背圧部16及び潤滑部位にガス成分を含まない安定した潤滑油を供給することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、この種の圧縮機の高圧室内には、圧縮された気流体から潤滑油を分離する機構と分離された潤滑油を貯える貯油部が設けられている。圧縮運転時には、ベーン背圧付与装置により、貯油部に貯えられた潤滑油をベーン背圧部に供給し、ベーンをロータから押し出しシリンダに押し付ける働きと、シリンダ・ベーン・ロータ等の摺動部及び微小隙間部の潤滑を行っている。供給する潤滑油の中にガス成分が混入し、信頼性・性能の低下を及ぼさないように、貯油部に溜っている潤滑油面が波立たないようにするため、油面安定板を設けている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−118365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、前記従来の油面安定板の構造では油面安定板底面に入り込んだガス成分が若干残るという課題を有していた。
【0003】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ベーン背圧部及びシリンダ・ベーン・ロータ等の細部へ供給する潤滑油中にガス成分を含まないようにし、圧縮機の信頼性・性能が向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機は、高圧ケース内の貯油部に設けられた油面安定板にφ0.5〜2mmの無数の穴を設けたものである。これによって、潤滑油中に混入し混ざったガス成分を潤滑油中より放出させる効果があるため、ベーン背圧部、シリンダ・ベーン・ロータ等の細部へ供給する潤滑油中にガス成分をほとんど含まないようになる。また、油面安定板の断面形状を波状にすることにより、潤滑油面上の油面安定板の揺れを抑制するようになる。
【発明の効果】
【0005】
本発明の圧縮機は、潤滑油中のガス混入を抑制し、圧縮機の振動・騒音の発生、圧縮機の摺動部、細かな隙間部分の潤滑性能、耐久信頼性が向上させ、空調のシステム効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
第1の発明は、油面安定板にφ0.5〜2mmの無数の穴を設けることにより、潤滑油中に混入したガス成分が潤滑油中より高圧室上部に放出されるため、ベーン背圧部及び潤滑部位に送られる潤滑油中にガス成分の混入をほとんど無くすることができる。
【0007】
第2の発明は、油面安定板の板の断面形状を波状とすることにより、油面に対し油面安定板の設置面積が増えるため、油面安定板の揺れ・波立ち防止効果をさらに抑制することができ、潤滑油中への気泡の混入を抑制することができる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における圧縮機の横断面図である。
【0010】
図1から図3において、円筒内壁を有するシリンダ1内に、略円筒状のロータ2がその外周の一部がシリンダ1の内壁と微小隙間を形成して収容配置されると共に回転自在に支持されている。ロータ2には複数(図示した実施形態では3つ)のベーンスロットが周方向に等間隔に設けられており、ベーンスロット内には摺動自在にベーン3がそれぞれ挿入されている。ロータ2には駆動軸4が一体的に結合されており、駆動軸4を回転させることでロータ2が回転する。シリンダ1の前後の両端面はそれぞれ前部側板5と後部側板6が接合されて閉鎖され、シリンダ1の内部に冷媒ガスの圧縮を行う作動室が形成されている。また、ベーンスロットと前部側板5及び後部側板6で仕切られたベーン3背部の空間がベーン背圧部16として構成している。
【0011】
作動室には吸入口及び吐出孔7に吐出弁8が配設されている。高圧室10の下部は貯油部10aを構成している。貯油部10aには、作動室で圧縮されたガス冷媒中にミスト状になって含まれる潤滑油が衝突式の油分離手段により分離された潤滑油が溜まるようになっている。高圧ケース11の上部には圧縮された流体(冷媒ガス)を高圧ケース11から空調装置のシステムサイクルに排出するガス排出口12が形成されている。後部側板6の高圧ケース11上部にベーン背圧付与装置13が設けられており、ベーン背圧付与装置13には圧縮機取り付け静止時の潤滑油面と略垂直となるように潤滑油供給口14を設けている。
【0012】
エンジン等の駆動源より動力伝達を受けて駆動軸4及びロータ2が回転すると、圧縮された気流体は吐出孔7より吐出弁8を押し上げて高圧通路9を通じて高圧室10に流入する。この時高圧室10の内部壁面との衝突によって圧縮された気流体から潤滑油の一部が分離され、高圧室10の下部の貯油部10aに貯えられる。高圧室10で潤滑油の一部が分離された気流体はガス排出口12より空調装置のシステムサイクル中へ吐出される。
【0013】
油面安定板完成21は、油面安定板A21aと油面安定板B21bをシート21c(たとえばゴムシート材料H−NBRで厚み1.5mm)を接合したものである。また、油面安定板完成21は潤滑油に浮かぶ構造を持ち、貯油部10aの潤滑油面が増減変動しても、油面安定板完成21のシート21cの長穴部を貫通する2本の円柱状の油面安定板支持ガイド22に沿って移動できるようにしている。シート21cの長穴は、油面安定板支持ガイド22の円柱の径より大きくしているが、ベーン背圧付与装置13、シリンダ11の内壁にぶつからないように考慮している。
【0014】
また、油面安定板A21aにφ0.5〜2mmの無数の小さな穴を明け、油面安定板A21aの底面(潤滑油面と油面安定板の間)に入り込んだガス成分が潤滑油中に溶け込み潤滑油供給口14に入りベーン背圧部16へ供給されることを防止するよう構成している。
【0015】
以上のように構成された圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0016】
圧縮機が前後左右に傾くと、油面安定板完成21は貯油部10aに溜まった潤滑油面に沿うように傾く。また、油面安定板A21aと油面安定板B21bをシート21cで接合することにより、油面の波立ちの吸収を2面に分けることができ、油面の変動に対する即応性が良くなる。
【0017】
また潤滑油中に混入したガス成分は、油面安定板A21aに開いている無数の穴より放出するため、ベーン背圧部16及び潤滑部位にガス成分を含まない安定した潤滑油を供給することができるようになるため、ベーン3がベーンスロットより吐出しシリンダ1に衝突する騒音・振動を抑制することになり、圧縮機の信頼性及び耐久性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように、本発明の圧縮機の潤滑油中ガス成分混入防止構造は、貯油部の潤滑油面の乱れを防止し潤滑油油中への気泡の混入を防止するため、空調用圧縮機、ポンプ等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における圧縮機の断面図
【図2】図1のシリンダ部における縦断面図
【図3】図1のA−A断面図(高圧ケース側のみ)
【図4】従来例を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 シリンダ
2 ロータ
3 ベーン
4 駆動軸
5 前部側板
6 後部側板
7 吐出孔
8 吐出弁
9 高圧通路
10 高圧室
10a 貯油部
11 高圧ケース
12 ガス排出口
13 ベーン背圧付与装置
14 潤滑油供給口
16 ベーン背圧部
21 油面安定板完成
21a 油面安定板A
21b 油面安定板B
21c シート
22 油面安定板支持ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を含む気流体を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構部により圧縮された気流体が導かれる高圧室と、潤滑油と前記圧縮機構により圧縮された前記気流体に含まれる潤滑油の少なくとも一部が分離されて貯えられる貯油部を備え、前記貯油部の潤滑油面の傾きに合わせて傾きが変わる油面安定板を備えた圧縮機において、前記油面安定板にφ0.5mm〜φ2mmの無数の穴を設けたことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記油圧安定板の板の断面形状を波状とした請求項1に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−180121(P2008−180121A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13330(P2007−13330)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】