説明

圧電デバイス

【課題】ICチップ又はパッケージの反りならびに破損を回避し、薄型化が可能となる圧電デバイスを提供する。
【解決手段】パッケージ1に形成されている貫通部8の少なくとも一部を塞ぐようにして、ICチップ2が第二凹部6内に配置され、接合力を有する樹脂等からなる接着剤により第二凹部6を構成する回路基板12の下面に固定されている。そして、ICチップ2と第二凹部6との間には、エポキシ樹脂等の接合力を有する樹脂からなる封止部7が形成されている。このようにして、貫通部8はICチップ2と封止部7とにより塞がれている。このため、第二凹部6内にICチップ2が配置された構造となっていることから、従来のように収納凹部を形成するパッケージ凹部の底面の上にICチップが配置された構造と比べて、ICチップ2又はパッケージ1の反りならびに破損を回避して収納凹部の底面の厚み分、水晶発振器10の薄型化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電デバイスは、水晶振動子に代表される圧電振動子および発振回路を備え、パーソナルコンピュータまたは移動体通信機器など様々な電子機器のクロック周波数源として用いられている。
【0003】
近年、圧電デバイスを搭載する電子機器の小型化および薄型化に伴い、圧電デバイスも一層の小型化および薄型化が要求されている。例えば、セラミックからなるパッケージに形成された収納凹部内にICチップを配置し、そのICチップの上方に圧電素子を配置して、収納凹部を蓋体により気密封止された構造の圧電デバイスが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平3−272207号公報(4〜6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の圧電デバイスの構造において、より一層の小型化、特に薄型化を実現するために、ICチップの薄型化またはICチップが配置されている収納凹部の底面の厚みの薄型化を図ることが必要となる。しかしながら、これらの薄型化を図ることにより、ICチップまたはパッケージの反りならびに破損などを引き起こすという問題があり、上記従来の構造では圧電デバイスのさらなる薄型化を実現することは困難である。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、ICチップまたはパッケージの反りならびに破損を回避し、薄型化が可能となる圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の圧電デバイスは、一方の面に第一凹部、他方の面に第二凹部が形成され、該第一凹部および該第二凹部の間を一部貫通する貫通部が形成されたパッケージと、前記第一凹部内に収納された圧電素子と、前記第一凹部の上方に配置された蓋体と、前記パッケージに固定され、前記貫通部の一部を塞ぐように前記第二凹部内に配置されたICチップと、前記第二凹部に形成された封止部とを備え、前記ICチップと前記封止部とが前記貫通部を塞ぎ、前記蓋体により前記第一凹部内が気密に封止されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、パッケージに形成されている貫通部の少なくとも一部を塞ぐようにして、ICチップが第二凹部内に配置され、接合力を有するエポキシ樹脂などからなる接着剤により第二凹部に固定されている。そして、ICチップと第二凹部との間には、接合力を有するエポキシ樹脂などからなる封止部が形成されている。このようにして、貫通部はICチップと封止部とにより塞がれている。このため、第二凹部内にICチップが配置された構造となっていることから、従来のように収納凹部を形成するパッケージ凹部の底面の上にICチップを配置された構造と比べて、ICチップまたはパッケージの反りならびに破損を回避して収納凹部の底面の厚み分、圧電デバイスの薄型化を実現することができる。
【0009】
本発明の圧電デバイスは、前記第二凹部の少なくとも一つの側面が開放されていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、従来のように収納凹部内に収納されるICチップよりも、大きいICチップを第二凹部内に収納することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第一実施形態)
【0012】
以下の実施形態では、圧電デバイスとして水晶発振器の例を挙げて説明する。
図1は、第一実施形態における水晶発振器の部品を示す分解斜視図である。
図2は、第一実施形態の水晶発振器の構成を示し、図2(a)は、概略平面図であり、図2(b)は、同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図であり、図2(c)は、同図(a)の概略底面図である。
【0013】
水晶発振器10は、図1に示すように、セラミックなどで形成されたパッケージ1と、圧電素子としての水晶振動子3と、水晶振動子3を発振させる機能などを備えたICチップ2と、金属などで形成された蓋体4とを備えている。また、パッケージ1は、一方の面に第一凹部5、一方の面と表裏の関係にある他方の面に第二凹部6が形成されている。
【0014】
パッケージ1は、図2に示すように、例えば絶縁材料である酸化アルミニウム質からなる回路基板11,12,13を積層して焼結することによって形成されている。
第一凹部5は、回路基板11が枠形に形作られることにより形成されている。また、第二凹部6は、回路基板13が二つに分割されて形成され、対向する二つの側面が開放された構造となっている。
そして、第一凹部5の底部14の一部から第二凹部6に貫通する貫通部8が、回路基板12に形成されている。
第一凹部5の底部14には、タングステンなどからなるメタライズ層が形成され、ニッケルメッキおよび金メッキなどが施されることにより、電極部15が形成されている。
また同様に、回路基板13には、タングステンなどからなるメタライズ層が形成され、ニッケルメッキおよび金メッキなどが施されることにより、外部接続端子17が複数形成されている。
【0015】
ICチップ2は、パッケージ1に形成されている貫通部8の少なくとも一部を塞ぐようにして第二凹部6内に配置され、接合力を有するエポキシ樹脂などからなる接着剤により第二凹部6を構成する回路基板12の下面に固定されている。これにより、回路基板12の下面に固定されたICチップ2の上面は、回路基板13の上面と略同一平面上に配置されている。
ICチップ2と第二凹部6との間には、接合力を有するエポキシ樹脂や高い気密性が得られるよう低融点ガラスなどからなる封止部7が形成されている。このようにして、貫通部8はICチップ2と封止部7とにより塞がれている。
なお、封止部7はICチップ2と第二凹部6との間を塞ぐだけに限らず、第二凹部6を埋めるようにしてICチップ2の下面を覆っていてもよい。
貫通部8から顕出するICチップ2の上面の一部に、金(Au)またはアルミニウム(Al)などからなる複数のIC接続パッド21が形成されている。また、回路基板13の上面には、Auなどからなる複数の内部接続端子19が形成されている。そして、略同一平面上に形成されたIC接続パッド21と内部接続端子19とは、Au線またはAl線などの金属ワイヤー9により接続されている。このようにして、ICチップ2は、金属ワイヤー9および内部接続端子19を経由して外部接続端子17に接続され、水晶発振器10の外部との接続を可能にしている。
そして、IC接続パッド21と金属ワイヤー9と内部接続端子19とを覆うようにして、絶縁性を有する樹脂などからなる保護膜16が形成されている。
【0016】
水晶振動子3は、第一凹部5に形成された電極部15に、接合力を有する樹脂に銀などの導電性粒子が含有された導電性接着剤18により固定され、水晶振動子3に設けられた励振電極と電極部15とが接続されている。そして、水晶振動子3は、電極部15および金属ワイヤー9を経由してICチップ2に接続されている。
【0017】
蓋体4は、パッケージ1に形成された第一凹部5をパッケージ1の外部から閉ざすように配置され、パッケージ1に接合されている。このようにして、水晶発振器10は、蓋体4とICチップ2と封止部7とにより、第一凹部5の電極部15に固定された水晶振動子3がパッケージ1内に気密封止された構造となっている。
【0018】
以上、本実施形態の水晶発振器10は、パッケージ1に形成されている貫通部8の少なくとも一部を塞ぐようにして、ICチップ2が第二凹部6内に配置され、接合力を有する樹脂などからなる接着剤により第二凹部6を構成する回路基板12の下面に固定されている。そして、ICチップ2と第二凹部6との間には、エポキシ樹脂などの接合力を有する樹脂からなる封止部7が形成されている。このようにして、貫通部8はICチップ2と封止部7とにより塞がれている。このため、第二凹部6内にICチップ2が配置された構造となっていることから、従来のように収納凹部を形成するパッケージ凹部の底面の上にICチップが配置された構造と比べて、ICチップ2またはパッケージ1の反りならびに破損を回避して収納凹部の底面の厚み分、水晶発振器10の薄型化を実現することができる。また、従来のように収納凹部内に収納されるICチップよりも、大きいICチップ2を第二凹部6内に収納することが可能となる。
(変形例)
【0019】
図3は、前記第一実施形態の変形例を示し、図3(a)は、概略平面図であり、図3(b)は、同図(a)のB−B断線に沿う概略断面図であり、図3(c)は、同図(a)の概略底面図である。
【0020】
変形例の水晶発振器20は、前記第一実施形態における金属ワイヤーによるICチップの接続方法をフリップチップ実装としたことに特徴を有し、他の構成は前記第一実施形態を示した図2と同じであるため、同一の符号を付与して説明を省略する。
【0021】
ICチップ22は、IC接続パッド21と第二凹部6の底面に形成されたAuなどからなる内部接続端子29とをAuなどの導電性のバンプを介して接続するようパッケージ1に形成されている第二凹部6内にフリップチップ実装されている。ICチップ22は、導電性のバンプを経由して水晶振動子3および外部接続端子17に接続されている。
【0022】
以上のように、ICチップ22の接続方法をフリップチップ実装とした水晶発振器20においても、第一実施形態と同様な効果を享受することができる。
(第二実施形態)
【0023】
図4は、第二実施形態のSAW(Surface Acoustic Wave)発振器の構成を示し、図4(a)は、概略平面図であり、図4(b)は、同図(a)のC−C断線に沿う概略断面図であり、図4(c)は、同図(a)の概略底面図である。
【0024】
SAW発振器30は、導電性接着剤によるSAW共振子33の固定および接続方法を接着剤による固定および金属ワイヤーによる接続としたことに特徴を有し、他の構成は第一実施形態を示した図2と同じであるため、同一の符号を付与して説明する。
【0025】
SAW発振器30は、セラミックなどで形成されたパッケージ31と、圧電素子としてのSAW共振子33と、SAW共振子33を共振させる機能などを備えたICチップ2と、金属などで形成された蓋体4とを備えている。また、パッケージ31は、一方の面に第一凹部5、一方の面と表裏の関係にある他方の面に第二凹部6が形成されている。
そして、第一凹部5の底部34の一部から第二凹部6に貫通する貫通部8が、回路基板38に形成されている。
【0026】
パッケージ31は、例えば絶縁材料である酸化アルミニウム質からなる回路基板37,38,39を積層して焼結することによって形成されている。
第一凹部5は、回路基板37が枠形に形作られることにより形成されている。また、第二凹部6は、回路基板39が二つに分割されて形成され、対向する二つの側面が開放された構造となっている。
そして、第一凹部5の底部34の一部から第二凹部6に貫通する貫通部8が、回路基板38に形成されている。
第一凹部5の底部34には、タングステンなどからなるメタライズ層が形成され、ニッケルメッキおよび金メッキなどが施されることにより、電極部35が形成されている。
また同様に、回路基板39には、タングステンなどからなるメタライズ層が形成され、ニッケルメッキおよび金メッキなどが施されることにより、外部接続端子17が複数形成されている。
【0027】
ICチップ2は、パッケージ31に形成されている貫通部8の少なくとも一部を塞ぐようにして第二凹部6内に配置され、接合力を有するエポキシ樹脂などからなる接着剤により第二凹部6を構成する回路基板38の下面に固定されている。これにより、回路基板38の下面に固定されたICチップ2の上面は、回路基板39の上面と略同一平面上に配置されている。
ICチップ2と第二凹部6との間には、接合力を有するエポキシ樹脂などからなる封止部7が形成されている。このようにして、貫通部8はICチップ2と封止部7とにより塞がれている。
なお、封止部7はICチップ2と第二凹部6との間を塞ぐだけに限らず、第二凹部6を埋めるようにしてICチップ2を覆い形成されていてもよい。
貫通部8から顕出するICチップ2の上面の一部に、金(Au)またはアルミニウム(Al)などからなる複数のIC接続パッド21が形成されている。また、回路基板39の上面には、Auなどからなる複数の内部接続端子19が形成されている。そして、略同一平面上に形成されたIC接続パッド21と内部接続端子19とは、Au線またはAl線などの金属ワイヤー9により接続されている。このようにして、ICチップ2は、金属ワイヤー9および内部接続端子19を経由して外部接続端子17に接続され、SAW発振器30の外部との接続を可能にしている。
そして、IC接続パッド21と金属ワイヤー9と内部接続端子19とを覆うようにして、絶縁性を有する樹脂などからなる保護膜16が形成されている。
【0028】
SAW共振子33は、第一凹部5の底部34に、接合力を有する樹脂などからなる接着剤により固定され、SAW共振子33に設けられた励振電極と電極部35とはアルミニウム(Al)線などの金属ワイヤー36により接続されている。そして、SAW共振子33は、電極部35および金属ワイヤー36を経由してICチップ2に接続されている。
【0029】
蓋体4は、パッケージ31に形成された第一凹部5をパッケージ31の外部から閉ざすように配置され、パッケージ31に接合されている。このようにして、SAW発振器30は、蓋体4とICチップ2と封止部7とにより、第一凹部5の電極部35に固定されたSAW共振子33がパッケージ31に気密封止された構造となっている。
【0030】
以上、本実施形態のSAW発振器30は、パッケージ31に形成されている貫通部8の少なくとも一部を塞ぐようにして、ICチップ2が第二凹部6内に配置され、接合力を有する樹脂などからなる接着剤により、第二凹部6を構成する回路基板38の下面に固定されている。ICチップ2と第二凹部6との間には、エポキシ樹脂などの接合力を有する樹脂からなる封止部7が形成されている。このようにして、貫通部8はICチップ2と封止部7とにより塞がれている。このため、第二凹部6内にICチップ2が配置された構造となっていることから、従来のように収納凹部を形成するパッケージ凹部の底面の上にICチップが配置された構造と比べて、ICチップ2またはパッケージ31の反りならびに破損を回避して収納凹部の底面の厚み分、SAW発振器30の薄型化を実現することができる。また、従来のように収納凹部内に収納されるICチップよりも、大きいICチップ2を第二凹部6内に収納することが可能となる。
【0031】
なお、第二実施形態では、本発明をIC接続パッド21と内部接続端子19とを金属ワイヤー9を用いて導通接続した構成を有するSAW発振器30を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、SAW発振器30のICチップの接続構造の部分を図3に示す水晶発振器20の場合と同じく導電性のバンプを用いたフリップチップ実装構造に替えた構成を有するSAW発振器に適用してもよい。
【0032】
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前述の実施形態では、第一凹部の対向する二辺が開放された構造としたが、少なくとも一つの側面が開放された構造としてもよい。
また、前述の実施形態では、封止部はエポキシ樹脂などの接合力を有する樹脂からなるとしたが、ガラスなどの絶縁体により形成されてもよい。
【0033】
本発明の圧電デバイスは、前述の水晶発振器だけに限らず、温度補償型水晶発振器、電圧制御型水晶発振器または弾性表面波フィルタにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第一実施形態における水晶発振器の分解斜視図。
【図2】(a)は、第一実施形態に係る水晶発振器の概略平面図であり、(b)は、(a)のA−A断線に沿う概略断面図であり、(c)は、(a)の概略底面図。
【図3】第一実施形態に係る変形例の構成を示す概略図。
【図4】(a)は、第二実施形態に係るSAW発振器の概略平面図であり、(b)は、(a)のC−C断線に沿う概略断面図であり、(c)は、(a)の概略底面図。
【符号の説明】
【0035】
1…パッケージ、2…ICチップ、3…水晶振動子、4…蓋体、5…第一凹部、6…第二凹部、7…封止部、8…貫通部、9…金属ワイヤー、10…水晶発振器、11,12,13…回路基板、14…底部、15…電極部、16…保護膜、17…外部接続端子、18…導電性接着剤、19…内部接続端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に第一凹部、他方の面に第二凹部が形成され、該第一凹部および該第二凹部の間を一部貫通する貫通部が形成されたパッケージと、
前記第一凹部内に収納された圧電素子と、
前記第一凹部の上方に配置された蓋体と、
前記パッケージに固定され、前記貫通部の一部を塞ぐように前記第二凹部内に配置されたICチップと、
前記第二凹部に形成された封止部とを備え、
前記ICチップと前記封止部とが前記貫通部を塞ぎ、前記蓋体により前記第一凹部内が気密に封止されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記第二凹部の少なくとも一つの側面が開放されていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−318286(P2007−318286A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143735(P2006−143735)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】