説明

圧電振動子及びその製造方法

【課題】本発明は、封止後の周波数のためのレーザービームの照射を減らしてガスの発生を減らすことを目的とする。
【解決手段】レーザービームで第1の金属膜形成領域56の一部を除去する。第1の金属膜形成領域56の一部が除去された圧電振動片10を、振動腕14が基部12から枠壁部64に向かって延びるように配置して、底部62に固定する。シーム接合によって枠壁部64に蓋を接合して、圧電振動片10が固定されたパッケージ60の開口を蓋100によって塞ぐ。その後、光透過性部材114を介して、認識マーク55の位置を認識してレーザービームで第2の金属膜形成領域58の一部を除去する。光透過性部材114は、蓋100がパッケージ60の開口を塞いだときに、第2の金属膜形成領域58及び認識マーク55とオーバーラップするが第1の金属膜形成領域56とはオーバーラップしないように、蓋100の枠壁部64との接合部から離れた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動片をパッケージ内に固定して蓋で封止することが知られおり、封止後に内部の光学的な認識が可能になるように窓部材が設けられた蓋を使用することが知られている(特許文献1)。また、窓部材を通して、レーザービームによって、圧電振動片の振動腕に形成された金属膜を除去することで軽くして、周波数を調整することも知られている。しかし、レーザービームによる金属膜の除去はガスを発生させるので、できるだけこれを少なくすることが要望されている。
【特許文献1】特開2005−191314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、封止後の周波数のためのレーザービームの照射を減らしてガスの発生を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明に係る圧電振動子の製造方法は、
基部と、前記基部から延びる振動腕と、前記振動腕に形成された第1及び第2の金属膜形成領域との相対的位置が固定された認識マークと、を有し、前記第2の金属膜形成領域は前記第1の金属膜形成領域よりも前記基部に近い領域に形成されている圧電振動片を用意する工程と、
前記第1の金属膜形成領域の一部を除去し、第1の金属膜除去部を形成する工程と、
底部と前記底部を囲む枠壁部とを含み前記底部の上方に開口を有するパッケージを用意する工程と、
前記第1の金属膜形成領域の一部が除去された前記圧電振動片を、前記振動腕が前記基部から前記枠壁部に向かって延びるように配置して、前記底部に固定する工程と、
貫通穴を有する枠体と、前記貫通穴に設けられた光透過性部材と、を有する蓋を用意する工程と、
前記枠壁部に前記蓋を接合して、前記圧電振動片が固定された前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程と、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程の後に、前記光透過性部材を介して、前記認識マークの位置を認識してレーザービームで前記第2の金属膜形成領域の一部を除去する工程と、
を含み、
前記蓋が前記パッケージの前記開口を塞いだときに、前記光透過性部材は、前記第2の金属膜形成領域及び前記認識マークとオーバーラップし、前記枠体の前記貫通孔の周りが、前記第1の金属膜除去部とオーバーラップするように、前記蓋の前記枠壁部との接合部から離れた位置に配置されてなる。
【0005】
本発明によれば、蓋封止前に第1の金属膜除去部を形成して周波数を所望の値に近づけているので、蓋封止後における周波数調整のための第2の金属膜形成領域の除去量は少ない量で足り、ガスの発生が少ない。また、光透過性部材の径を小さくすることができ、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。シーム接合によって蓋を接合するので、局所的な加熱を行うが全体的な加熱はしない。そのため、熱によって圧電振動片に生じる歪みが少ないので、周波数調整のための第2の金属膜形成領域の除去は少ない量の除去で足り、ガスの発生が少ない。なお、シーム接合を行うときに光透過性部材の歪みを抑えるため、光透過性部材の位置を、シーム接合を行う部分から離してある。また、圧電振動片をパッケージに取り付ける前にレーザービームで第1の金属膜形成領域の一部を除去して、既に周波数調整を行っているため、さらに第2の金属膜形成領域の除去量を少なくすることができる。
(2)この振動子の製造方法において、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程は、シーム接合によって前記枠壁部に前記蓋を接合する工程を含んでも良い。
【0006】
本発明によれば、シーム接合によって蓋を接合するので、局所的な加熱を行うが全体的な加熱はしない。そのため、熱によって圧電振動片に生じる歪みが少ないので、周波数調整のための第2の金属膜形成領域の除去は少ない量の除去で足り、ガスの発生が少ない。なお、シーム接合を行うときに光透過性部材の歪みを抑えるため、光透過性部材の位置を、シーム接合を行う部分から離してある。また、圧電振動片をパッケージに取り付ける前にレーザービームで第1の金属膜形成領域の一部を除去して、既に周波数調整を行っているため、さらに第2の金属膜形成領域の除去量を少なくすることができる。
(3)この振動子の製造方法において、
前記認識マークは、前記第2の金属膜形成領域の前記基部側の端であっても良い。
(4)この振動子の製造方法において、
前記認識マークは、前記第2の金属膜形成領域よりも前記基部側に形成されていても良い。
(5)この振動子の製造方法において、
前記枠体の前記貫通穴の周りが、前記第1の金属膜形成領域とオーバーラップするように、前記蓋が前記パッケージの前記開口を塞ぐ位置に配置されていても良い。
(6)この振動子の製造方法において、
前記第1の金属膜形成領域を、前記第2の金属膜形成領域よりも厚く形成しても良い。
(7)この振動子の製造方法において、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程後であって、前記第2の金属膜形成領域の一部を除去する工程前に、前記蓋によって塞がれた前記パッケージの内部を真空にする工程をさらに含んでも良い。
(8)本発明に係る圧電振動子は、
基部と、前記基部から延びる振動腕と、前記振動腕に形成された第1及び第2の金属膜形成領域との相対的位置が固定された認識マークと、を有し、前記第2の金属膜形成領域は前記第1の金属膜形成領域よりも前記基部に近い領域に形成され、前記第1の金属膜形成領域には第1の金属膜除去部が形成され、第2の金属膜形成領域には第2の金属膜除去部が形成されている圧電振動片と、
底部と前記底部を囲む枠壁部とを含み前記底部の上方に開口を有し、前記振動腕が前記基部から前記枠壁部に向かって延びるように前記圧電振動片が前記底部に固定されたパッケージと、
貫通穴を有する枠体と、前記貫通穴に設けられた光透過性部材と、を有し、前記枠壁部に接合されて、前記パッケージの前記開口を塞ぐ蓋と、
を含み、
前記光透過性部材は、前記第2の金属膜形成領域及び前記認識マークとオーバーラップし、前記枠体の前記貫通穴の周りが、前記第1の金属膜除去部とオーバーラップするように、前記蓋の前記枠壁部との接合部から離れた位置に配置されてなる。
(9)この圧電振動子において、
前記枠体は、シーム接合によって前記枠壁部に接合されていても良い。
(10)この圧電振動子において、
前記第1の金属膜形成領域は、前記第2の金属膜形成領域よりも厚くても良い。
(11)この圧電振動子において、
前記蓋によって塞がれた前記パッケージの内部が真空にされていても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(圧電振動片(圧電振動子に組み込む前))
図1は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子に使用される圧電振動片(音叉型圧電振動片)を示す平面図である。なお、圧電振動片10の底面図は平面図と対称に表れる。圧電振動片10は、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料からなる。圧電振動片10は、基部12と、基部12から延びる一対の振動腕14と、を含む。
【0008】
図2は、図1に示す圧電振動片10のII−II線断面拡大図である。振動腕14は、相互に反対を向く表裏面16と、表裏面16を両側で接続する第1及び第2の側面20,22とを有する。
【0009】
一方(図1で左側)の振動腕14の第1の側面20と、他方(図1で右側)の振動腕14の第2の側面22が対向するように並列している。第1の側面20は、表裏面16の間隔によって定義される振動腕14の厚みの中央方向に高くなる山型となるように形成されている(図2参照)。第1の側面20が描く山型の高さは、第1及び第2の側面20,22の間隔によって定義される振動腕14の幅の、0%超12.5%以下である。
【0010】
振動腕14は、基部12に接続される根本部24において、基部12側に向けて幅を拡げてあり、広い幅で基部12に接続するので剛性が高くなっている。振動腕14は、第1及び第2の側面20,22の間隔によって定義される幅が、基部12から先端に向けて細くなる第1のテーパ部26を含む。第1のテーパ部26を形成することにより、振動腕14は振動しやすくなっている。振動腕14は、第1のテーパ部26よりも先端に近い位置に、幅が第1のテーパ部26から先端に向けて太くなる第2のテーパ部28を含む。第2のテーパ部28は、錘の機能を果たすので、振動周波数を低くすることができる。振動腕14は、第1及び第2のテーパ部26,28が接続される幅変更点Pが長溝30よりも先端近くに位置するように形成されている。
【0011】
振動腕14には、表裏面16に、長手方向に延びる長溝30がそれぞれ形成されている。長溝30によって振動腕14が動きやすくなって効率的に振動するのでCI値を下げることができる。長溝30は、振動腕14の長さの50〜70%の長さを有する。また、長溝30は、振動腕14の幅の60〜90%の幅を有する。
【0012】
長溝30は、第1の側面20と背中合わせに延びる第1の内面32と、第2の側面22と背中合わせに延びる第2の内面34と、を含む。第1の内面32は第2の内面34よりも、表裏面16に対する角度が垂直に近くなっている。第1の内面32は平坦面であってもよい。第2の内面34も平坦面であってもよいが、図2に示す例では、異なる角度の面が接続されてなる。第1及び第2の側面20,22は、第2の内面34よりも表裏面16に対する角度(表裏面16と接続する部分の角度)が垂直に近くなっている。
【0013】
圧電振動片10は、一対の支持腕36を含む。一対の支持腕36は、基部12から一対の振動腕14が延びる方向とは交差方向であってそれぞれ相互に反対方向に延び、一対の振動腕14の延びる方向に屈曲してさらに延びる。屈曲することで、支持腕36は小型化される。支持腕36は、パッケージ60に取り付けられる部分であり、支持腕36での取り付けによって、振動腕14及び基部12は浮いた状態になる。
【0014】
基部12には、振動腕14の表裏面16と同じ側の面に括れた形状が表れるように、相互に対向方向に一対の切り込み38が形成されている。一対の切り込み38は、それぞれ、一対の支持腕36が基部12から延びて屈曲する方向の側で一対の支持腕36に隣接して基部12に形成されている。切り込み38によって、振動腕14の振動の伝達が遮断されるので、振動が基部12や支持腕36を介して外部に伝わること(振動漏れ)を抑制し、CI値の上昇を防止することができる。切り込み38の長さ(深さ)は、基部12の強度を確保できる範囲で長い(深い)ほど、振動漏れ抑制効果は大きい。一対の切り込み38の間の幅(一対の切り込み38に挟まれた部分の幅)は、一対の振動腕14の対向する第1及び第2の側面20,22の間隔よりも小さくしてもよいし大きくしてもよいし、一対の振動腕14の相互に反対を向く第1及び第2の側面20,22の距離よりも小さくしてもよいし大きくしてもよい。
【0015】
振動腕14には、励振電極膜が形成されている。励振電極膜は、100Å以上300Å以下の厚みを有する下地のCr膜と、Cr膜上に形成された200Å以上500Å以下の厚みを有するAu膜と、を含む多層構造であってもよい。Cr膜は水晶との密着性が高く、Au膜は電気抵抗が低く酸化し難い。励振電極膜は、第1及び第2の側面20,22にそれぞれ形成された第1及び第2の側面電極膜42,44と、第1及び第2の内面32,34にそれぞれ形成された第1及び第2の内面電極膜46,48と、を含む。励振電極膜によって、第1及び第2の励振電極50,52が構成される。
【0016】
第1の励振電極50は、長溝30に形成された第1及び第2の内面電極膜46,48を含む。1つの長溝30に形成された第1及び第2の内面電極膜46,48は、相互に連続的に形成されて電気的に接続されている。表裏面16の一方(例えば表面)の長溝30に形成された第1及び第2の内面電極膜46,48と、表裏面16の他方(例えば裏面)の長溝30に形成された第1及び第2の内面電極膜46,48と、は電気的に接続されている。すなわち、表裏面16それぞれに形成された一対の第1の励振電極50は電気的に接続されている。また、一方の振動腕14に形成された一対の第1の励振電極50は、基部12上の表裏面16それぞれに形成された引き出し電極53に接続され、これらの引き出し電極53が、他方の振動腕14の第1又は第2の側面電極膜42,44に接続されることで電気的に接続される。
【0017】
第2の励振電極52は、第1及び第2の側面電極膜42,44を含む。また、第1及び第2の側面電極膜42,44は電気的に接続されている。その電気的接続は、振動腕14の長溝30が形成されていない部分において、表裏面16の少なくとも一方(あるいは両方)上に形成された接続電極54によってなされている。
【0018】
一方の振動腕14に形成された第1の励振電極50と、他方の振動腕14に形成された第2の励振電極52と、は基部12上の引き出し電極53で電気的に接続されている。引き出し電極53は、第2の励振電極52が形成される振動腕14の隣に並ぶ支持腕36上に至るまで形成されている。引き出し電極53は、支持腕36の表裏面16(あるいはさらに側面)に形成されている。支持腕36上で、引き出し電極53を外部との電気的接続部にすることができる。
【0019】
振動腕14には、表裏面16の少なくとも一方上に、第1及び第2の金属膜形成領域56,58が形成されている。
【0020】
図3は、図1に示す圧電振動片10のIII−III線断面拡大図であり、第2の金属膜形成領域58における振動腕14の断面を示している。第2の金属膜形成領域58は圧電材料に100Å以上300Å以下の厚みを有する下地のCr膜91と、Cr膜91上に形成された200Å以上500Å以下の厚みを有するAu膜92と、を含む多層構造から構成される。これらの膜は、励振電極膜と共通の工程で形成する。
【0021】
図4は、図1に示す圧電振動片10のIV−IV線断面拡大図であり、第1の金属膜形成領域56における振動腕14の断面を示している。第1の金属膜形成領域56には、第2の金属膜形成領域58と同様に、Cr膜91と、Au膜92とが積層され、さらに、Au膜93が積層されている。Cr膜91が表面に拡散するのをAu膜92が防いでいるため、Au膜93はAu膜92よりも粒径が大きく、粗雑な膜にしても良い。したがって、Au膜93はAu膜92よりも成膜レートが高いプロセスを用いて形成することができる。
【0022】
また、Cr膜91、Au膜92は、第1の金属膜形成領域56と第2の金属膜形成領域58の間で連続させ、第1及び第2の側面電極膜42,44を電気的に接続する接続電極54として機能している。
【0023】
第1及び第2の金属膜形成領域56,58は、振動腕14の錘の役割を果たしており、その一部を除去することで錘の重さを調整することができる。振動腕14の先端部の重さが重いほど振動腕14の振動周波数が低くなり、軽いほど振動腕14の振動周波数が高くなる。これを利用して周波数調整を行うことができる。第1の金属膜形成領域56には、第1の金属膜除去部57が形成されている。第1の金属膜除去部57から振動腕14の表裏面16が露出している。
【0024】
第2の金属膜形成領域の基部12側の端、すなわち、Cr膜91、Au膜92の端部分は、認識マーク55として利用される。認識マーク55は、第1および第2の金属膜形成領域56、58との相対的な位置が固定される。
【0025】
なお、Au膜93を上面と下面の一方だけに形成する構成にしても良い。すなわち、第1の金属膜形成領域56は、上面と下面の一方だけに設ける構成にしても、周波数を調整するための錘として機能する。また、第2の金属膜形成領域58は、上面と下面の一方だけに設ける構成にしても、周波数を調整するための錘および接続電極54として機能する。
【0026】
(圧電振動片(圧電振動子に組み込む前)の変形例)
図10は、本発明にかかる圧電振動片の変形例を示した図である。第1及び第2の金属膜形成領域156,158は、表裏面16に直接形成されており、励振電極膜は、第1及び第2の金属膜形成領域156,158を避けて形成されている。第2の金属膜形成領域158は、第1の金属膜形成領域156よりも振動腕14の先端から離れて形成されている。また、第1の金属膜形成領域156は、第2の金属膜形成領域158よりも厚く形成する。第1の金属膜形成領域156には、第1の金属膜除去部157が形成されている。第1の金属膜除去部157から振動腕14の表裏面16が露出している。
【0027】
振動腕14には、認識マーク155が形成されている。認識マーク155は、第2の金属膜形成領域158よりも振動腕14の先端から離れて(基部12に近くなるように)形成されている。認識マーク155は、第2の金属膜形成領域158の縁(例えば、第1の金属膜形成領域156とは反対側の辺)であってもよい。認識マーク155は、第1及び第2の金属膜形成領域156,158との相対的位置が固定されている。
【0028】
(圧電振動片の動作)
本実施の形態では、第1の側面電極膜42と第1の内面電極膜46との間に電圧を印加し、第2の側面電極膜44と第2の内面電極膜48との間に電圧を印加することで、振動腕14の一方の側端を伸ばし、他方の側端を縮ませて振動腕14を屈曲させて振動させる。言い換えると、1つの振動腕14において、第1及び第2の励振電極50,52間に電圧を印加して、振動腕14の第1及び第2の側面20,22を伸縮させることで振動腕14を振動させる。なお、第1及び第2の励振電極50,52は、振動腕14の70%までは、長いほどCI値が下がることが分かっている。
【0029】
図2は、本実施の形態に係る圧電振動片10の動作を説明する図である。図2に示すように、一方の振動腕14の第1及び第2の励振電極50,52に電圧が印加され、他方の振動腕14の第1及び第2の励振電極50,52に電圧が印加される。ここで、一方(左側)の振動腕14の第1の励振電極50と他方(右側)の振動腕14の第2の励振電極52が同じ電位(図2の例では+電位)となり、一方(左側)の振動腕14の第2の励振電極52と他方(右側)の振動腕14の第1の励振電極50が同じ電位(図2の例では−電位)となるように、第1の励振電極50及び第2の励振電極52は、クロス配線によって交流電源に接続され、駆動電圧としての交番電圧が印加されるようになっている。印加電圧によって、図2に矢印で示すように電界が発生し、これにより、振動腕14は、互いに逆相振動となるように(振動腕14の先端側が互いに接近・離間するように)励振されて屈曲振動する。また、基本モードで振動するように交番電圧が調整されている。
【0030】
(圧電振動子)
図5は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子を示す平面図であり、図6は、図5に示す圧電振動子の一部拡大図であり、図7は、図5に示す圧電振動子のVII−VII線断面図であり、図8は、図5に示す圧電振動子の底面図である。
【0031】
圧電振動子に組み込まれた圧電振動片10では、第2の金属膜形成領域58に第2の金属膜除去部59が形成されている。第2の金属膜除去部59から振動腕14の表裏面16が露出している。
【0032】
圧電振動子は、パッケージ60を有する。パッケージ60は、圧電振動片10が固定される底部62と、底部62を囲む枠壁部64と、を含む。底部62には、真空引きを行うための通気孔66が形成され、通気孔66は、ロウ材(AuGe等)からなるシール部68で塞がれている。
【0033】
パッケージ60の底部62に圧電振動片10が固定されている。圧電振動片10は、振動腕14が基部12から枠壁部64に向かって延びるように固定されている。支持腕36が底部62に固定されて、振動腕14がパッケージ60から浮いた状態になっている。底部62は、振動腕14の先端部と対向する領域が低くなっており、振動腕14が曲がっても底部62に接触し難いようになっている。導電性接着剤70を使用して、支持腕36上の引き出し電極53(図1参照)と、底部62に形成された配線72と、が電気的に接続されている。配線72は、パッケージ60の底面の外部電極74に電気的に接続されている。なお、圧電振動片10は2つの支持腕36を有し、パッケージ60には2つの外部電極74が形成され、一方の支持腕36上の引き出し電極53が一方の外部電極74に電気的に接続され、他方の支持腕36上の引き出し電極53が他方の外部電極74に電気的に接続されている。外部電極74は、ハンダによって、電気的に接続されて回路基板(図示せず)に実装される。
【0034】
パッケージ60は、その全体を金属で形成してもよいが、主としてセラミックス等の非金属で形成する場合には、枠壁部64の上端面76はメタライズされている。例えば、枠壁部64の非金属部上に、Mo(又はW)膜、Ni膜及びAu膜が順に積層されて、上端面76はAuからなる。上端面76は、底部62の上方を囲む形状をなしている。
【0035】
上端面76には、例えばAgを含む合金からなるロウ材層78を介して、リング80が固定されている。リング80は、上端面76とオーバーラップして、底部62の上方を切れ目なく囲む。リング80は、シーム溶接用のものであり、例えばコバールから構成される層を有する。リング80には、蓋100が固定されている。
【0036】
蓋100は、圧電振動片10が固定されるパッケージ60とオーバーラップしてパッケージ60の開口を塞ぐ。蓋100は、表面102及び裏面104を貫通する貫通穴106を有する枠体108を含む。枠体108の表面102及び裏面104は、蓋100の表面102及び裏面104でもある。貫通穴106は、円形の開口形状をなしている。
【0037】
蓋100は、ガラス又は樹脂などの熱によって軟化する材料からなる光透過性部材114を含む。光透過性部材114は、平行な上面116及び下面118を少なくとも中央部に有する。光透過性部材114は、その上面116が枠体108の表面102と同じ方向を向き、その下面118が枠体108の裏面104と同じ方向を向くように貫通穴106に設けられている。光透過性部材114は、貫通穴106の内面に密着してなる。光透過性部材114の上面116及び下面118は貫通穴106との界面近傍で、通常は曲率Rを有するが、上面116及び下面118の一方または両方を平坦に加工し、枠体108の表面102又は裏面104と面一(表面102又は裏面104から突出しない形状)にすることが望ましい。このようにすると、周波数調整に用いるレーザービームの屈曲が抑制され、貫通穴106の径を小さくしても、高い周波数調整精度を維持できる。光透過性部材114は、第2の金属膜形成領域58及び認識マーク55とオーバーラップするが第1の金属膜形成領域56とはオーバーラップしないように、蓋100の枠壁部64との接合部から離れた位置に配置されてなる。つまり、光透過性部材114を通して、第2の金属膜形成領域58及び認識マーク55に対しては光が進行する(光学的に認識できる)が、第1の金属膜形成領域56に対しては枠体108によって遮蔽されて光が進行しない(光学的に認識できない)。
【0038】
蓋100は、光透過性部材114の下面118が第2の金属膜形成領域58と対向するように配置され、底部62及び枠壁部64とオーバーラップしてパッケージ60の開口を塞ぐ。
【0039】
(圧電振動子の変形例)
図11は、本発明にかかる圧電振動子の変形例の平面図を示した図である。図6で示した実施の形態と異なり、貫通穴206は第1の金属膜形成領域56の一部とオーバーラップする。ここで、蓋200を封止した後において、周波数誤差が高い場合は、第1の金属膜形成領域56を除去し、第3の金属膜除去部51を形成する。このような構成にすることで、蓋200を封止した後においても、錘効果が高い第1の金属膜形成領域56を除去できるため、広い範囲での周波数調整が可能になる。
【0040】
(圧電振動子の製造方法)
図9は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子の製造方法を説明する図である。圧電振動子の製造方法は、圧電振動片10の形成を含む。圧電振動片10を水晶から構成する場合、水晶ウエハは、X軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、Z軸を中心に時計回りに0度ないし5度の範囲で回転して切り出した水晶Z板であって所定の厚みに切断研磨して得られるものを用いる。1つの水晶ウエハから複数の圧電振動片10を連結された状態で切り出し、最終的に個々の圧電振動片10に切断する。圧電振動片10には、励振電極膜及び第1及び第2の金属膜形成領域56,58を形成する。
【0041】
第1の金属膜形成領域56の一部を除去する工程を、圧電振動片10をパッケージ60に固定する工程前に行う。つまり、圧電振動子に組み込む前(水晶ウエハから連結された状態で切り出された複数の圧電振動片10を個々に切断する前であっても後でもよい。)に、第1の金属膜形成領域56の一部を除去する(第1の金属膜除去部57を形成する)ことで周波数調整を行う。第1の金属膜形成領域56の一部の除去は、レーザービームによって行う。第1の金属膜形成領域56は、第2の金属膜形成領域58よりも振動腕14の先端に近いので、振動腕14を振動しやすくする(周波数を上げる)効果が大きい。しかも、第1の金属膜形成領域56は、第2の金属膜形成領域58よりも厚く形成されているので、同じ面積で除去した場合に、体積が大きくなるので、この効果は一層大きい。第1の金属膜形成領域56に対して行う周波数調整プロセスは、おおまかな調整を目的としたもので粗調整ということができる。圧電振動片10をパッケージ60に取り付ける前にレーザービームで第1の金属膜形成領域56の一部を除去して、既に周波数調整を行っているため、次に行う第2の金属膜形成領域58の除去量を少なくすることができる。
【0042】
圧電振動子の製造方法では、パッケージ60を用意する。なお、パッケージ60の枠壁部64には、ロウ接合によってリング80を固定しておく。そして、圧電振動片10を底部62に固定する。また、圧電振動子の製造方法は、光透過性部材114の下面118が金属膜と対向するように蓋100を配置し、枠壁部64及び蓋100(枠体108)を接合することを含む。接合は、シーム溶接によって行う。こうして、パッケージ60の開口を蓋100によって塞ぐ。シーム接合によって蓋100を接合するので、局所的な加熱を行うが全体的な加熱はしない。そのため、熱によって圧電振動片10に生じる歪みが少ないので、周波数調整のための第2の金属膜形成領域58の除去は少ない量の除去で足り、ガスの発生が少ない。なお、シーム接合を行うときに光透過性部材114の歪みを抑えるため、光透過性部材114の位置を、シーム接合を行う部分から離してある。
【0043】
パッケージ60の開口を蓋100によって塞いだ後に、パッケージ60に形成された通気孔66を介して、蓋100によって塞がれたパッケージ60内を真空にし、その後、ロウ材134で通気孔66を塞ぐ。
【0044】
さらに、圧電振動子の製造方法は、第2の金属膜形成領域58の一部を除去する工程をさらに含む。この工程は、パッケージ60の開口を蓋100によって塞いだ後(例えばさらに真空引き工程後)に行う。この工程は、光透過性部材114を通して、認識マーク55の位置を光学的に認識して、第2の金属膜形成領域58に対してレーザービームを照射して行う。第2の金属膜形成領域58は、第1の金属膜形成領域56よりも振動腕14の先端から離れているので、振動腕14を振動しやすくする(周波数を上げる)効果は小さいが、このことから逆に微調整が可能であると言える。しかも、第2の金属膜形成領域58は、第1の金属膜形成領域56よりも薄く形成されているので、同じ面積で除去した場合に体積が小さいので微調整の効果は一層大きい。
【0045】
本実施の形態に係る圧電振動子の製造方法は、上記プロセスを含み、上述した圧電振動子の構成から自明の製造プロセスをさらに含む。
【0046】
(圧電振動子の応用例)
上述した圧電振動子を使用して、発振器又はセンサを構成することができる。圧電振動子を含む発振回路で発振器を構成すると、周波数精度の高い交流信号を得ることができる。また、圧電振動子を使用したセンサは、物理量に応じて圧電振動片10の周波数が変動することを利用してその物理量を検出するセンサである。例えば、温度、加速度によって発生する応力、角速度によって発生するコリオリ力などを検出するセンサが例に挙げられる。
【0047】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子に使用される圧電振動片(音叉型圧電振動片)を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す圧電振動片のII−II線断面拡大図である。
【図3】図3は、図1に示す圧電振動片のIII−III線断面拡大図である。
【図4】図4は、図1に示す圧電振動片のIV−IV線断面拡大図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子を示す平面図である。
【図6】図6は、図5に示す圧電振動子の一部拡大図である。
【図7】図7は、図5に示す圧電振動子のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、図5に示す圧電振動子の底面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子の製造方法を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子に使用される圧電振動片(音叉型圧電振動片)の変形例を示す平面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る圧電振動子の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…圧電振動片、 12…基部、 14…振動腕、 16…表裏面、 20…第1の側面、 22…第2の側面、 24…根本部、 26…第1のテーパ部、 28…第2のテーパ部、 30…長溝、 32…第1の内面、 34…第2の内面、 36…支持腕、 38…切り込み、 42…第1の側面電極膜、 44…第2の側面電極膜、 46…第1の内面電極膜、 48…第2の内面電極膜、 50…第1の励振電極、 52…第2の励振電極、 53…引き出し電極、 54…接続電極、 55…認識マーク、 56…第1の金属膜形成領域、 57…第1の金属膜除去部、 58…第2の金属膜形成領域、 59…第2の金属膜除去部、 60…パッケージ、 62…底部、 64…枠壁部、 66…通気孔、 68…シール部、 70…導電性接着剤、 72…配線、 74…外部電極、 76…上端面、 78…ロウ材層、 80…リング、 91…Cr膜、 92、93…Au膜、 100…蓋、 102…表面、 104…裏面、 106…貫通穴、 108…枠体、 114…光透過性部材、 116…上面、 118…下面、 134…ロウ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から延びる振動腕と、前記振動腕に形成された第1及び第2の金属膜形成領域との相対的位置が固定された認識マークと、を有し、前記第2の金属膜形成領域は前記第1の金属膜形成領域よりも前記基部に近い領域に形成されている圧電振動片を用意する工程と、
前記第1の金属膜形成領域の一部を除去し、第1の金属膜除去部を形成する工程と、
底部と前記底部を囲む枠壁部とを含み前記底部の上方に開口を有するパッケージを用意する工程と、
前記第1の金属膜形成領域の一部が除去された前記圧電振動片を、前記振動腕が前記基部から前記枠壁部に向かって延びるように配置して、前記底部に固定する工程と、
貫通穴を有する枠体と、前記貫通穴に設けられた光透過性部材と、を有する蓋を用意する工程と、
前記枠壁部に前記蓋を接合して、前記圧電振動片が固定された前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程と、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程の後に、前記光透過性部材を介して、前記認識マークの位置を認識してレーザービームで前記第2の金属膜形成領域の一部を除去する工程と、
を含み、
前記蓋が前記パッケージの前記開口を塞いだときに、前記光透過性部材は、前記第2の金属膜形成領域及び前記認識マークとオーバーラップし、前記枠体の前記貫通孔の周りが、前記第1の金属膜除去部とオーバーラップするように、前記蓋の前記枠壁部との接合部から離れた位置に配置されてなる圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程は、シーム接合によって前記枠壁部に前記蓋を接合する工程を含む圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記認識マークは、前記第2の金属膜形成領域の前記基部側の端である圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記認識マークは、前記第2の金属膜形成領域よりも前記基部側に形成されている圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記枠体の前記貫通穴の周りが、前記第1の金属膜形成領域とオーバーラップするように、前記蓋が前記パッケージの前記開口を塞ぐ位置に配置されている圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記第1の金属膜形成領域を、前記第2の金属膜形成領域よりも厚く形成する圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載された圧電振動子の製造方法において、
前記パッケージの前記開口を前記蓋によって塞ぐ工程後であって、前記第2の金属膜形成領域の一部を除去する工程前に、前記蓋によって塞がれた前記パッケージの内部を真空にする工程をさらに含む圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
基部と、前記基部から延びる振動腕と、前記振動腕に形成された第1及び第2の金属膜形成領域との相対的位置が固定された認識マークと、を有し、前記第2の金属膜形成領域は前記第1の金属膜形成領域よりも前記基部に近い領域に形成され、前記第1の金属膜形成領域には第1の金属膜除去部が形成され、第2の金属膜形成領域には第2の金属膜除去部が形成されている圧電振動片と、
底部と前記底部を囲む枠壁部とを含み前記底部の上方に開口を有し、前記振動腕が前記基部から前記枠壁部に向かって延びるように前記圧電振動片が前記底部に固定されたパッケージと、
貫通穴を有する枠体と、前記貫通穴に設けられた光透過性部材と、を有し、前記枠壁部に接合されて、前記パッケージの前記開口を塞ぐ蓋と、
を含み、
前記光透過性部材は、前記第2の金属膜形成領域及び前記認識マークとオーバーラップし、前記枠体の前記貫通穴の周りが、前記第1の金属膜除去部とオーバーラップするように、前記蓋の前記枠壁部との接合部から離れた位置に配置されてなる圧電振動子。
【請求項9】
請求項8に記載された圧電振動子において、
前記枠体は、シーム接合によって前記枠壁部に接合されている圧電振動子。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された圧電振動子において、
前記第1の金属膜形成領域は、前記第2の金属膜形成領域よりも厚い圧電振動子。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項に記載された圧電振動子において、
前記蓋によって塞がれた前記パッケージの内部が真空にされている圧電振動子。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図1】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−17005(P2009−17005A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174051(P2007−174051)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】