説明

地図データ、地図データ更新装置、地図データ更新プログラム及び地図データの更新方法

【課題】地図データ更新時におけるリンク情報の管理を容易とする。
【解決手段】この地図データでは、各リンクが、始点ノード、同一リンク列における次リンク、及び、上位リンクの各参照情報を有している。また、各リンクはリスト状に記憶されており、リンクの追加や削除の際にもリンクリストにおける位置を変更しないようにすることで、各リンクをリンクリストにおける位置で直接参照できるようにしている。このため、例えば、リンク1,2,4,5からなるリンク列のうち、リンク2及びリンク5がそれぞれ2つに分割された場合にも、リンク2,5をそれぞれ2つに分割する新たなノード6,7を始点ノードとするリンク7,8をリンクリストの末尾に追加するとともに、リンク2の次リンクをリンク3からリンク7に、リンク5の次リンクをリンク6からリンク8に変更すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路がリンク単位で表され、同一属性の連続する複数のリンクがリンク列として規定された地図データに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置用の地図データのフォーマットとして、日本ではKIWI/A方式が一般的に用いられている。この方式では、地図上の道路がリンク単位で表され、各リンクは始点ノード及び終点ノードの参照情報を有している。また、この方式に基づく地図データは経路探索の高速化などの目的で複数段階に階層化されており、最下位層の各リンクには識別情報としてのリンクIDが付与されている。特に、同一属性の道路の描画の効率化やデータ圧縮などの目的で、属性が同一であって連続するリンクのグループはリンク列として規定されており、リンク列を構成するリンクには連続した値のリンクIDが付与されている。これにより、リンク列を上位階層で表現する際には、そのリンク列の始端側及び終端側の各リンクのリンクIDに基づき、その間のリンクを特定することができる。
【0003】
ところで、こうした地図データは、実際の道路の変化等に伴い部分的に更新する必要が生じるが、更新に伴い既存のリンクを複数に分割したり複数のリンクを1つに統合したりする場合には、リンクIDの連番性を保つために大規模なリンクIDの振り直しを行う必要があり、更新処理の負荷が大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、地図データの最下位層の各リンクに対して固有のリンクID番号範囲(例えば1000〜1099)を設定し、同一リンク列のリンクには、連続したリンクID番号範囲(例えば1000〜1099と1100〜1199)を設定する方法が提案されている(特許文献1参照)。このようにすることで、例えば既存のリンクを分割する必要が生じた場合にも、1000〜1049と1050〜1099とに分割するといったようにリンクID番号範囲で対応することが可能となり、リンクID番号の連続性を保つことができる。
【特許文献1】特許第3725022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の方法では、リンクの分割数がリンクID番号範囲で対応可能な限界を超えた場合には、後方のリンクIDを振り直す必要が生じるため、根本的には問題は解決されていない。ここで、リンクID番号範囲を十分に大きくしておくことも考えられるが、データ量が大幅に増加してしまうというデメリットがある。しかも、この方法では、リンクID範囲をどのような割合で分割するかといった複雑なID管理が必要になるという問題もある。
【0006】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、地図データ更新時におけるリンク情報の管理を容易とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の地図データは、道路がリンク単位で表され、同一属性の連続する複数のリンクがリンク列として規定されたものである。そして、この地図データでは、各リンクが、当該リンクの属するリンク列における次リンクの参照情報を有する。
【0008】
このような地図データによれば、リンクの有する次リンクの参照情報をたどることでリンク列を特定することができるため、従来のように同一リンク列に属するリンクに連続したリンクIDを付与する必要がない。つまり、リンクIDを連続にしなければならないという制約がない。このため、地図データの更新に伴い既存のリンクが複数に分割される場合にも、既存のリンクの識別情報を変更することなく更新を行うことができる。この結果、地図データ更新時のデータ変更量を少なくすることができ、リンク情報の管理を容易とすることができる。
【0009】
また、このような地図データによれば、既存のリンクの分割や統合が生じた場合にも既存のリンクの識別情報については変更する必要がないため、従来の地図データで用いられていたリンクIDという識別情報自体を不要とすることができる。具体的には、例えばリンクをリスト状に管理し、リストにおける既存のリンクの位置を変化させないように情報の更新を行うようにすれば、各リンクをリストにおける位置で特定することができる。このようにすることで、リンクIDが不要となる分、データ量を削減することができる。
【0010】
ここで、リストにおける既存リンクの位置を変化させない情報の更新方法としては、例えば、新規リンクをリストの末尾に追加する、既存リンクをリストから削除する際に空白情報として残す(リストにおける順番を詰めない)といった方法が挙げられる。なお、新規リストの追加位置は、リストの末尾に限定されるものではなく、例えば、既存リンクが削除された空白情報部分であってもよく、また、全く異なる記憶領域であってもよい。
【0011】
特に、このようなリンクの管理方法によれば、従来のようにリンクIDをリストから検索する場合に比べ、リストにおける位置を直接参照する分、処理の高速化を図ることができる。
【0012】
ところで、地図データが複数段階に階層化されている場合の階層間のリンク対応については、例えば、下位階層のリンク列と上位階層のリンクとの対応関係を別途記憶しておくことによって対応付けることが可能であるが、例えば請求項2に記載のように、下位階層の各リンクがその上位階層のリンクの参照情報を有していてもよい。このようにすれば、別途対応関係を記憶することなく、地図データの階層間の対応関係を特定することができる。
【0013】
一方、本発明の地図データでは、各リンクが、リンク列における次リンクの参照情報を有するが、リンク列における最終リンクについては、次リンクが存在しないため、他のリンクとは異なる情報(例えば終端のリンクであることの情報)を含めることで対応する必要がある。この点、最終リンクについても他のリンクと同様のデータ構成とするためには、例えば請求項3のように、リンク列における最終リンクの次リンクとして、実際には存在しない仮想リンクを設定するとよい。このようにすれば、最終リンクについても他のリンクと同様のデータ構成とすることができる。
【0014】
次に、請求項4に記載の地図データ更新装置は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データのリンクをリスト状に管理し、リストにおける更新対象リンクの位置情報を指定した更新データに基づきリストを更新するものである。そして、この地図データ更新装置では、更新データの指定する位置情報がリストに存在しない場合には、リスト拡張手段が、その位置情報が存在するようにリストを拡張し、情報更新手段が、更新データの指定する位置情報のリンクの情報を更新データに基づき更新する。
【0015】
このような地図データ更新装置によれば、リストにおける既存のリンクの位置を変化させないように情報の更新を行うことができる。この結果、各リンクをリストにおける位置で特定することができ、従来の地図データで用いられていたリンクIDという識別情報自体を不要とすることでデータ量を削減することができる。しかも、従来のようにリンクIDをリストから検索する場合に比べ、リストにおける位置を直接参照する分、処理の高速化を図ることができる。
【0016】
また、請求項5に記載の地図データ更新プログラムは、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データのリンクをリスト状に管理し、リストにおける更新対象リンクの位置情報を指定した更新データに基づきリストを更新する地図データ更新装置としてコンピュータを機能させるためのものである。具体的には、この地図データ更新プログラムは、更新データの指定する位置情報がリストに存在しない場合には、その位置情報が存在するようにリストを拡張するリスト拡張手段と、更新データの指定する位置情報のリンクの情報を更新データに基づき更新する情報更新手段としてコンピュータを機能させる。
【0017】
このような地図データ更新プログラムによれば、請求項4に記載の地図データ更新装置としてコンピュータを機能させることができ、これにより前述した効果を得ることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の更新方法は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データの更新方法であって、リンクをリスト状に管理し、リストにおける既存のリンクの位置を変化させないように情報の更新を行うことを特徴としている。
【0019】
このような更新方法によれば、各リンクをリストにおける位置で特定することができ、従来の地図データで用いられていたリンクIDという識別情報自体を不要とすることでデータ量を削減することができる。しかも、従来のようにリンクIDをリストから検索する場合に比べ、リストにおける位置を直接参照する分、処理の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.地図データの概要]
まず、実施形態の地図データの概要について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の地図データの基本構造を説明するための説明図である。
本実施形態の地図データは、リンク列を連結リストとして表現する点を特徴としている。具体的には、各リンクが、開始点(始点ノード)の参照情報と、当該リンクの属するリンク列における次リンク(リンク列において一定方向に連続する順番が次のリンク)の参照情報とを持っており、これにより、当該リンクの2端点が特定される。すなわち、従来(KIWI/A)方式の地図データでは、各リンクが、始点ノード及び終点ノードの参照情報を持っているが、本実施形態の地図データでは、終点ノードの参照情報の代わりに次リンクの参照情報を持っており、この情報から終点ノードを特定可能となっている。
【0022】
例えば図1における左側に示すように、リンクL1,L2,L3,L4からなるリンク列において、リンクL1は、開始点としてN1、次リンクとしてL2の参照情報を持ち、リンクL2は、開始点としてN2、次リンクとしてL3の参照情報を持ち、リンクL3は、開始点としてN3、次リンクとしてL4の参照情報を持つ。なお、リンク列における最終リンクであるリンクL4には、次リンクが存在しないため、この例では、次リンクとして最終ノード(終点ノード)の参照情報が格納されている。
【0023】
また、本実施形態の地図データは、更新の際に、既存のリンクの識別情報を変更することなく整合性を維持するようになっている。すなわち、例えば図1における右側に示すように、既存のリンクL2が新たなノードN6によって2つに分割され、これによりノードN6を始点ノードとする新たなリンクL5が発生した場合には、新たなリンクL5の情報をリンク情報(リンクリスト)の末尾に追加し、既存のリンクL2の次リンクをL5に変更する。このように、既存リンクの識別情報を変更することなく更新を行うことができる。
【0024】
なお、図1に例示した地図データでは、上位階層との対応関係を表すリンク列情報として、リンク列を構成する先頭のリンクの参照情報のみを持つようにすることで、データ容量を削減している。
【0025】
図2は、本実施形態の地図データのデータベースの論理設計を説明するための説明図である。
本実施形態の地図データは、リンクテーブルと、ノードテーブルと、付加的情報テーブルと、形状点情報と、辞書テーブル(種別コード等)とを備える。
【0026】
リンクテーブルには、リンクID(主キー)、始点ノードのノードID(外部キー)、次リンクのリンクID(外部キー)、上位リンクのリンクID(外部キー)、辞書テーブル参照ID、リンク長といったデータが格納される。なお、図2の例では、各リンクが上位リンクの参照情報を有しているため、階層間のリンクの対応関係を別途記憶することなく特定することができる。
【0027】
また、ノードテーブルには、ノードID(主キー)、正規化座標X,Y、隣接ノードのノードID(外部キー)といったデータが格納される。その他、付加的情報テーブルには、リンクID、付加的情報といったデータ、形状点情報には、リンクID(外部キー)、形状序列番号、正規化座標X,Yといったデータ、辞書テーブルには、ID、種別コードといったデータがそれぞれ格納される。
【0028】
図3(a)は、交差点の論理設計(ノード)を説明するための説明図であり、図3(b)は、道路の論理設計(リンクの設計)を説明するための説明図である。
ノードとは、周知のように、基本的には交差点のことである。なお、従来は、経路用のデータと描画用のデータとを別オブジェクトとしていたが、本実施形態の地図データでは単一オブジェクト化している。
【0029】
一方、リンクとは、周知のように、道路のことである。各リンクは、始点ノードの参照情報を有し、複数のリンクによってリンク列を構成し、リンク列中の次リンクと結合する。また、この例では、リンク列における最終リンクの次リンクとして、実際には存在しない仮想リンクが設定されている。
【0030】
このように、本実施形態の地図データでは、従来(KIWI/A)方式の地図データにおいてリンクIDを昇順連番にすることで規定していたリンク列を、連結リストとして表現する。このような連結リスト型リンク列のメリットとしては、リンクIDの連番性から解放されることが挙げられる。また、始点ノード及び次リンクの2つの情報でリンク間の接続性と連続性を表現することから、重複情報の無い論理設計が可能となることもメリットとして挙げられる。
【0031】
すなわち、図4に示すように、従来方式の地図データでは、各リンクは、2端点のノードの参照情報を有しているが、リンクの連続性を表現するためには、更に追加の情報(例えば一筆書き情報)が必要であった。
【0032】
また、このような従来方式の地図データでは、リンク列を構成するリンクのリンクIDが連番であることから、リンクの連続性やレベル間の関連を、「リンクID=開始側連続番号+差分番号」の形で表現している。
【0033】
例えば、図5における左側に示すように、レベル0(最下位層)のリンクL2,L3からなるレベル1のリンクは、開始側連続番号(L2)と、始端側のリンク(L2)と終端側のリンク(L3)とのリンクIDの差分とから、L2−1と表現することができる。また、レベル0のリンクL1のみからなるレベル1のリンクは、差分が0であることから、L1−0と表現される。同様に、レベル0のL1〜L3からなるレベル2のリンクは、L1−2と表現することができる。このように、リンクIDの表現によって、リンク列を構成するリンクを特定することができる。
【0034】
しかしながら、このようなデータ構造では、地図データの差分更新を行う際に、整合性(序列)維持のため、最下位リンクの変更が、後方のリンクや上位レベルのリンクに対してまで連鎖的な変更を引き起こすという問題があった。例えば図5における右側に示すように、レベル0の既存のリンクL1が2つに分割された場合、その後方のリンクのリンクIDだけでなく、上位レベルのリンクのリンクIDについても更新する必要が生じる。
【0035】
これに対し、図6に示すように、本実施形態の地図データの差分更新では、リンク間に明示的な参照を定義し、参照関係を直接表現することにより、変更を要する影響範囲を局所化することを可能とした。図6における左側に示す例では、レベル0のリンクL4は、上位リンクの参照情報として、レベル1のリンクL2の参照情報を有しており、同様にレベル0のリンクL5,L6は、上位リンクの参照情報として、それぞれレベル1のリンクL3の参照情報を有している。また、レベル1のリンクL2,L3は、上位リンクの参照情報として、それぞれレベル2のリンクL1の参照情報を有している。
【0036】
このようなデータ構造によれば、従来方式の地図データのような序列維持の制約がないことから、例えば図6における右側に示すようにレベル0の既存のリンクL4が2つに分割された場合にも、後方のリンクや上位レベルのリンクの識別情報を変更することなく差分更新を行うことができる。
【0037】
なお、図6では、下レイヤのリンクが上レイヤのリンクの参照情報を有し、逆に、上レイヤのリンクも下レイヤのリンクの参照情報を有しているが、実際には、例えば図7に示すように、下レイヤのリンクが上レイヤのリンクをただ一つ参照するようにすればよい。このようにすれば、上から下への参照は、参照元を集計することで算出可能であり、このように集計により算出可能な情報は重複情報となるからである。また、各リンクがそれぞれ上位リンクの情報を有している必要はなく、例えばリンク列における1つのリンク(例えば先頭のリンク)のみを上位リンクと関連付けるようにすれば、データ量を一層削減することができる。
【0038】
[2.ナビゲーション装置の構成]
次に、このような地図データの具体的な使用例として、車両に搭載されるナビゲーション装置の実施例について説明する。
【0039】
[2−1.全体構成]
図8は、ナビゲーション装置10の概略構成を表すブロック図である。
このナビゲーション装置10は、位置検出器11、地図データ入力器12、操作デバイス13、表示装置14、音声出力装置15、制御回路16などを備えている。
【0040】
位置検出器11は、当該ナビゲーション装置10を搭載した車両の現在位置を検出するためのものであり、周知のジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機を有している。
【0041】
地図データ入力器12は、DVD−ROMやハードディスク装置等の記憶媒体に格納されている地図データ等を入力するための装置である。
操作デバイス13は、ユーザからの各種指示を入力するためのものであり、表示装置14の画面前面に配置されたタッチパネルや、ステアリングの近傍に設けられたステアリングスイッチ等が用いられ、地図の縮尺変更やスクロール等の操作や目的地設定などナビゲーション装置10のすべての操作を行うことが可能である。
【0042】
表示装置14は、フルカラー表示が可能なものであり、表示装置14の画面には位置検出器11により検出された車両の現在位置を表す現在位置マークと、地図データ入力器12より入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等の付加データとを重ねて表示することができる。
【0043】
音声出力装置15は、スピーカ、オーディオアンプなどから構成され、制御回路16により合成された音声等を出力する。音声出力装置15は、ナビゲーション装置10の構成として省くこともできる。その場合、他の装置が備えている音声出力装置(例えば車両本体の音声出力装置)を利用してもよい。
【0044】
制御回路16は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えている。そして、CPUは、ROMに記憶されているプログラムに従い、位置検出器11、地図データ入力器12、操作デバイス13から入力された各種情報に基づき、所定の処理(後述する地図データ更新処理等)を実行する。
【0045】
[2−2.地図データの説明]
次に、ナビゲーション装置10で使用される地図データについて説明する。
図9に示すように、従来(KIWI/A)方式の地図データでは、各リンクが、始点ノード及び終点ノードの参照情報を有している。また、同一属性の連続する複数のリンクがリンク列として規定され、階層間のリンク対応は、リンク列を構成するリンクのリンクIDを昇順連番とする前提で、リンク列における始端側及び終端側の各リンクIDに基づき特定される。
【0046】
これに対し、本実施例のナビゲーション装置10で使用される地図データは、図10に示すように、各リンクが、始点ノードの参照情報と、同一リンク列における次リンクの参照情報と、上位リンクの参照情報とを有している。また、リンク列における最終リンクに対する次リンクとして、実際には存在しない仮想リンクが設定されている。これにより、最終リンクにも次リンクが存在することとなり、最終リンクを他のリンクと同様のデータ構成とすることができる。なお、この地図データでは、リンクの識別情報がレベル間で独立管理されている。
【0047】
また、各リンクはリスト状に記憶されており、リンクの追加や削除の際にもリンクリストにおける既存リンクの位置(配列添字)を変更しないようにすることで、各リンクをリンクリストにおける位置(配列添字)で特定できるようにしている。このため、各リンクは、リンクIDを有しておらず、その分、従来方式の地図データに比べ、データ量が削減されている。なお、リンクだけでなく、ノードについても同様にリスト状に記憶されており、ノードの追加や削除の際にもノードリストにおける既存ノードの位置(配列添字)を変更しないようにすることで、各ノードをノードリストにおける位置(配列添字)で特定できるようにしている。
【0048】
[2−3.地図データの更新方法の概要]
次に、ナビゲーション装置10が実行する地図データの更新方法の概要について説明する。
【0049】
図9に示した従来(KIWI/A)方式の地図データでは、地図データの差分更新を行う際に、既存のリンクが複数に分割されると、後方のリンクに対してまで連鎖的な変更が生じるという問題がある。例えば図11に示すように、リンク11,12,13,14からなるリンク列のうち、既存のリンク12及びリンク14がそれぞれ2つに分割された場合、後方のリンクIDをすべて変更する必要が生じる。
【0050】
これに対し、本実施例のナビゲーション装置10で使用される地図データによれば、後方のリンクに対して連鎖的な変更が生じないようにすることができる。例えば図12に示すように、リンク1,2,4,5からなるリンク列のうち、既存のリンク2及びリンク5がそれぞれ2つに分割された場合について説明する。この場合、リンク2を2つに分割する新たなノード6を始点ノードとするリンク7と、リンク5を2つに分割する新たなノード7を始点ノードとするリンク8とを、リンクリストの末尾に追加する。ここで、リンク7の始点ノードはノード6、次リンクはリンク3(仮想リンク)、上位リンクはリンク1となる。また、リンク8の始点ノードはノード7、次リンクはリンク6(仮想リンク)、上位リンクはリンク2となる。一方、既存のリンク2については、次リンクをリンク3からリンク7に変更すればよく、同様に、既存のリンク5については、次リンクをリンク6からリンク8に変更すればよい。
【0051】
[2−4.更新データの説明]
次に、地図データの差分更新を行うための更新データについて説明する。
ナビゲーション装置10は、更新データを外部から取得することにより、地図データを更新するための処理を実行する。ここで、更新データは、図13(a)〜(d)に示すように、4つの種別に大別される。なお、図面上の各四角形が、意味のあるバイナリ値の並びとなる。
【0052】
図13(a)は、リンクリストへの新規リンクの追加処理、又は、リンクリストに登録されている既存リンクに関する情報の更新処理をナビゲーション装置10に実行させるための更新データである。この更新データは、種別データ(リンク追加/更新)と、追加処理又は更新処理を行うリンクの識別情報(リンクリストにおける位置情報)である対象リンクNo.と、始点ノードNo.(始点ノードの参照情報)と、次リンクNo.(次リンクの参照情報)と、その他の情報(上位リンクの参照情報等)とから構成される。
【0053】
図13(b)は、リンクリストに登録されている既存リンクの削除処理をナビゲーション装置10に実行させるための更新データであり、種別データ(リンク削除)と、削除処理を行うリンクの識別情報である対象リンクNo.とから構成される。
【0054】
図13(c)は、ノードリストへの新規ノードの追加処理、又は、ノードリストに登録されている既存ノードに関する情報の更新処理をナビゲーション装置10に実行させるための更新データである。この更新データは、種別データ(ノード追加/更新)と、追加処理又は更新処理を行うノードの識別情報(ノードリストにおける位置)である対象ノードNo.と、その他の情報とから構成される。
【0055】
図13(d)は、ノードリストに登録されている既存ノードの削除処理をナビゲーション装置10に実行させるための更新データであり、種別データ(ノード削除)と、削除処理を行うノードの識別情報である対象ノードNo.とから構成される。
【0056】
なお、ナビゲーション装置10が更新データを外部から取得する方法としては、例えば、車両外部のサーバとの間で直接通信を行うことによりダウンロードする方法、PC等の情報処理装置を介してサーバから間接的に取得する方法、更新データが記憶されたメディアから取得する方法などが考えられる。
【0057】
[2−5.地図データ更新処理]
次に、更新データを外部から取得することによりナビゲーション装置10の制御回路16が実行する地図データ更新処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
制御回路16は、地図データ更新処理を開始すると、まずS101で、未処理の更新データが存在しないか否かを判定する。つまり、取得した更新データのすべてについて、後述するS102以降の処理を実行したか否かを判定している。
【0059】
このS101で、未処理の更新データが存在すると判定した場合には、S102へ移行し、更新データを1エントリ読み込む。
続いて、S103では、S102で読み込んだ更新データのデータ種別を判定する。
【0060】
そして、S103で、更新データのデータ種別が「リンク追加/更新」であると判定した場合には、S104へ移行し、その更新データの対象リンクNo.が、現在のリンク情報数(リンクリストの項目数)よりも大きいか否かを判定する。ここで、対象リンクNo.が現在のリンク情報数よりも大きい場合とは、現時点のリンクリストに存在しないリンクが対象となっていることを意味する。つまり、リンクリストの末尾に新規リンクを追加する処理を意味する。
【0061】
このため、S104で、対象リンクNo.が現在のリンク情報数よりも大きいと判定した場合には、S105へ移行し、リンク情報数が対象リンクNo.数となるようにリンクリストを拡張した後、S106へ移行する。
【0062】
一方、S104で、対象リンクNo.が現在のリンク情報数よりも大きくない(換言すれば、対象リンクNo.が現時点のリンクリストに存在する)と判定した場合には、S105をスキップしてS106へ移行する。
【0063】
S106では、リンクリストにおける対象リンクNo.のリンク情報を、更新データの情報(始点ノードNo.、次リンクNo.及び他の情報)で上書きした後、S101へ戻る。これにより、対象リンクNo.のリンク情報として既存リンクの情報が存在していた場合にはその情報が更新されることになり、既存リンクの情報が存在していなかった場合(S105で新たに拡張された箇所である場合や、後述するS107の処理により無効値が格納されていた場合)には、新規リンクの情報が追加されることになる。
【0064】
一方、S103で、更新データのデータ種別が「リンク削除」であると判定した場合には、S107へ移行し、リンクリストにおける対象リンクNo.のリンク情報を無効値で埋めた後、S101へ戻る。つまり、対象リンクNo.の既存リンクを削除する。
【0065】
また、S103で、更新データのデータ種別が「ノード追加/更新」であると判定した場合には、S108へ移行し、その更新データの対象ノードNo.が、現在のノード情報数(ノードリストの項目数)よりも大きいか否かを判定する。ここで、対象ノードNo.が現在のノード情報数よりも大きい場合とは、現時点のノードリストに存在しないノードが対象となっていることを意味する。つまり、ノードリストの末尾に新規ノードを追加する処理を意味する。
【0066】
このため、S108で、対象ノードNo.が現在のノード情報数よりも大きいと判定した場合には、S109へ移行し、ノード情報数が対象ノードNo.数となるようにノードリストを拡張した後、S110へ移行する。
【0067】
一方、S108で、対象ノードNo.が現在のノード情報数よりも大きくない(換言すれば、対象ノードNo.が現時点のノードリストに存在する)と判定した場合には、S109をスキップしてS110へ移行する。
【0068】
S110では、ノードリストにおける対象ノードNo.のノード情報を、更新データの情報(他の情報)で上書きした後、S101へ戻る。これにより、対象ノードNo.のノード情報として既存ノードの情報が存在していた場合にはその情報が更新されることになり、既存ノードの情報が存在していなかった場合(S109で新たに拡張された箇所である場合や、後述するS111の処理により無効値が格納されていた場合)には、新規ノードの情報が追加されることになる。
【0069】
一方、S103で、更新データのデータ種別が「ノード削除」であると判定した場合には、S111へ移行し、ノードリストにおける対象ノードNo.のノード情報を無効値で埋めた後、S101へ戻る。つまり、対象ノードNo.の既存ノードを削除する。
【0070】
その後、S101で、未処理の更新データが存在しないと判定すると、本地図データ更新処理を終了する。
[3.効果]
以上説明したように、本実施形態の地図データでは、各リンクが、当該リンクの属するリンク列における次リンクの参照情報を有しており、次リンクの参照情報をたどることで、リンク列という構造を明示的に持つことなくリンク列を特定することができる。このため、本実施形態の地図データでは、従来のように同一リンク列に属するリンクに連続したリンクIDを付与する必要がない。つまり、リンクIDを連続にしなければならないという制約がない。したがって、地図データの更新に伴い既存のリンクが複数に分割される場合にも、既存のリンクの識別情報を変更することなく更新を行うことができる。この結果、地図データ更新時のデータ変更量を少なくすることができ、リンク情報の管理を容易とすることができる。
【0071】
すなわち、従来(KIWI/A)方式の地図データでは、図15(a)に示すように、既存のリンクが複数に分割されると、リンクIDの連番性を保つために、後方のリンクIDをすべて振り直す必要が生じる。
【0072】
一方、前述した特許文献1に記載の地図データでは、図15(b)に示すように、既存リンクの分割数がそのリンクのリンクID番号範囲で対応可能な場合には、後方のリンクIDを振り直す必要がない。しかしながら、図15(c)に示すように、既存リンクの分割数がリンクID番号範囲で対応可能な限界を超えた場合には、後方のリンクIDを振り直す必要が生じるため、根本的には問題は解決されていない。ここで、リンクID番号範囲を十分に大きくしておくことも考えられるが、データ量が大幅に増加してしまうというデメリットがある。しかも、この方法では、リンクID範囲をどのような割合で分割するかといった複雑なID管理が必要となるという問題もある。
【0073】
これに対し、本実施形態の地図データによれば、リンクIDを連続にしなければならないという制約自体がないため、後方のリンクIDを振り直すことなく地図データを更新することができ、リンク情報の管理を容易とすることができる。
【0074】
また、各リンクが始点ノード及び次リンクの参照情報を有しており、終点ノードについては次リンクの始点ノードから特定することができるため、従来のように各リンクが始点ノード及び終点ノードの両方の参照情報を有している必要がない。
【0075】
さらに、本実施形態では、ナビゲーション装置10が、地図データのリンクをリスト状に管理し、このリンクリストにおける既存のリンクの位置を変化させないように情報の更新を行うようにしている。このため、各リンクをリンクリスト上の何番目の位置であるかという情報(配列添字)で参照することができ、リンクIDという識別情報自体を明示的に持つ必要がない分、データ量を削減することができる。しかも、リンクIDではなく配列添字を直接参照する分、リンクIDをリンクリストから検索する方式に比べ、処理の高速化を図ることができる。
【0076】
[4.特許請求の範囲との対応]
なお、本実施形態のナビゲーション装置10が地図データ更新装置に相当し、特に、S104,S105の処理を実行する制御回路16がリスト拡張手段に相当し、S106,S107の処理を実行する制御回路16が情報更新手段に相当する。
【0077】
[5.他の形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
例えば、上記実施形態では、本発明の地図データ更新装置としてナビゲーション装置10を例示したが、これに限定されるものではなく、ナビゲーション装置用の更新地図データを生成する装置などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態の地図データの基本構造を説明するための説明図である。
【図2】実施形態の地図データのデータベースの論理設計を説明するための説明図である。
【図3】(a)は交差点の論理設計(ノード)を説明するための説明図、(b)は道路の論理設計(リンクの設計)を説明するための説明図である。
【図4】従来の地図データにおける各リンクの参照情報の説明図である。
【図5】従来の地図データにおけるリンク情報のデータ構造の説明図である。
【図6】実施形態の地図データにおけるリンク情報のデータ構造の説明図である。
【図7】下レイヤのリンクが上レイヤのリンクをただ一つ参照する例の説明図である。
【図8】ナビゲーション装置の概略構成を表すブロック図である。
【図9】従来(KIWI/A)方式の地図データにおけるリンク情報の説明図である。
【図10】実施例のナビゲーション装置で使用される地図データにおけるリンク情報の説明図である。
【図11】従来(KIWI/A)方式の地図データの差分更新の説明図である。
【図12】実施例のナビゲーション装置で使用される地図データの差分更新の説明図である。
【図13】更新データの説明図である。
【図14】地図データ更新処理のフローチャートである。
【図15】従来方式の地図データの問題点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10…ナビゲーション装置、11…位置検出器、12…地図データ入力器、13…操作デバイス、14…表示装置、15…音声出力装置、16…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路がリンク単位で表され、同一属性の連続する複数のリンクがリンク列として規定された地図データであって、
各リンクが、当該リンクの属するリンク列における次リンクの参照情報を有すること
を特徴とする地図データ。
【請求項2】
当該地図データは複数段階に階層化されており、下位階層の各リンクが、その上位階層のリンクの参照情報を有すること
を特徴とする請求項1に記載の地図データ。
【請求項3】
リンク列における最終リンクの次リンクとして、実際には存在しない仮想リンクが設定されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地図データ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データのリンクをリスト状に管理し、前記リストにおける更新対象リンクの位置情報を指定した更新データに基づき前記リストを更新する地図データ更新装置であって、
前記更新データの指定する位置情報が前記リストに存在しない場合には、その位置情報が存在するように前記リストを拡張するリスト拡張手段と、
前記更新データの指定する位置情報のリンクの情報を前記更新データに基づき更新する情報更新手段と、
を備えることを特徴とする地図データ更新装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データのリンクをリスト状に管理し、前記リストにおける更新対象リンクの位置情報を指定した更新データに基づき前記リストを更新する地図データ更新装置としてコンピュータを機能させるための地図データ更新プログラムであって、
前記更新データの指定する位置情報が前記リストに存在しない場合には、その位置情報が存在するように前記リストを拡張するリスト拡張手段と、
前記更新データの指定する位置情報のリンクの情報を前記更新データに基づき更新する情報更新手段
としてコンピュータを機能させることを特徴とする地図データ更新プログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の地図データの更新方法であって、
リンクをリスト状に管理し、前記リストにおける既存のリンクの位置を変化させないように情報の更新を行うこと
を特徴とする地図データの更新方法。

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−32640(P2010−32640A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192544(P2008−192544)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(503002167)株式会社高速屋 (4)
【Fターム(参考)】