説明

地図表示装置および地図表示方法

【課題】中心位置から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で描画する地図表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る地図表示装置は、所定の位置を基点204として、所定の時間以内に到達可能な範囲211を地図上に表示する地図表示装置であって、基点204から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索部106と、前記地図を複数の領域に分割する領域分割部107と、各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域205を判別する領域種別判別部108と、所要時間内領域205をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理部110と、描画処理部110が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図表示装置および地図表示方法に関し、特に、所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(Hard Disk Drive)またはDVD(Digital Video Disk/ Digital Versatile Disk)に記憶される地図情報をもとに、入力された目的地に至る経路を探索し自車両を目的地まで誘導するナビゲーション装置が広く普及している。このようなナビゲーション装置では、入力された目的地までの距離に関する情報、および、探索された経路に関する現在、過去の交通情報などを参照し、目的地に到着するおおよその時間を算出してユーザに提示する。このようなナビゲーション装置では、ユーザにより目的地が設定されることが前提となっているため、目的地が1つに定まっていないような場合には、どのくらいの時間でどのあたりまで到達可能であるのかを知ることができない。そこで、ユーザから所要時間に関する入力を受け付け、自車両の現在位置を中心に、その所要時間以内で到達可能な範囲を地図上に表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、あらかじめ目的地が明確ではなくても、ユーザは、到達可能な範囲が表示された地図を見ることで、どこに行くのにどのくらいの時間がかかるのかを把握することができる。また、表示された到達可能な範囲に基づいて目的地を設定することも可能である。
【0003】
また、このように地図上に到達可能な範囲を表示するためのアルゴリズムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の技術は、現在位置から一定時間内に到達可能な交差点を探索し、移動体の現在位置を中心に方位を分割した領域ごとに移動体の現在位置から最も遠い交差点を表示ノードとして抽出する。そして、隣接する領域の表示ノード同士を結び、全体として閉曲線を地図上に重畳表示することで到達可能範囲を表示している。具体例を図16を用いて説明する。
【0004】
図16は、特許文献2記載の地図表示装置における自車両が到達可能な範囲の表示例を示す図である。図16に示すように特許文献2記載の地図表示装置は、自車両が進入できない領域である海301と、海岸線302と、自車位置304と、自車両が到達可能な範囲を示す閉曲線311とを表示する。また、図16において、領域305は、自車両が移動可能な領域である陸地のうち自車両が所定時間内に到達可能な領域(以下、所要時間内領域とよぶ)であり、領域306は、自車両が所定時間内に到達できない領域(以下、所要時間外領域とよぶ)である。なお、所要時間内領域305および所要時間外領域306は、説明のために図16に示しているものであり、特許文献2記載の地図表示装置では、地図情報(海301および海岸線302等)および閉曲線311のみが表示され、所要時間内領域305および所要時間外領域306の区分は表示されない。
【0005】
特許文献2記載の地図表示装置における閉曲線311の算出方法は、まず、地図を自車位置304を中心とする方位方向に分割する。例えば、図16に示すように、地図を領域1〜領域8に8分割する。次に、分割された各領域に対し、所要時間内領域305のなかで自車位置304から最も遠いノードを代表ノード314として抽出する。各代表ノード314を順に閉曲線311で結ぶことで、自車位置304から所定時間以内で到達可能な領域を示している。
【特許文献1】特許第3385657号公報
【特許文献2】特開平11−16094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図16に示すように自車位置304を中心として方位を分割する方法では次のような課題が存在する。領域2から領域4に関しては、自車位置304からの直線距離が近いほうから順に所要時間内領域305、所要時間外領域306が存在する。よって、所要時間内領域305に代表ノード314を設けると、所要時間外領域306は閉曲線311の外側に存在する。すなわち、閉曲線311と、各領域の位置関係の整合性が保たれる。一方、領域7や領域8では、自車位置304からの直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域306、所要時間内領域305、所要時間外領域306が存在するため、所要時間内領域305に代表ノード314をとると、閉曲線311の内側に所要時間外領域306が存在してしまい、齟齬をきたす。例えば、図16における所要時間外領域306aは、閉曲線311の内側であるが、所要時間内で到達できない領域である。このような状況は、図16のように湾や河川などを挟んだ対岸の地点が存在するような地形で見られ、従来の地図表示装置のアルゴリズムで閉曲線311を描画すると、ユーザは本来所要時間以内でたどり着くことができない地点をたどり着けると勘違いしてしまう。すなわち、従来の地図表示装置が表示する自車位置304から所定時間内で到達可能な範囲は、精度が十分でないという問題がある。
【0007】
上記問題を鑑み、本発明は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示する地図表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る地図表示装置は、所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示装置であって、前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索手段と、前記地図を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別手段と、前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理手段と、前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示手段とを備える。
【0009】
この構成によれば、本発明に係る地図表示装置は、領域種別判別手段により分割された各領域に含まれる地点までの所要時間が、所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する。これにより、自車位置からの距離方向に対し、所要時間内領域と所要時間外領域とが混在する場合(例えば、自車位置の直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域となる領域が存在する場合)であっても、各領域が所定時間内領域であるか所定時間外領域であるかを正しく判別することができる。よって、本発明に係る地図表示装置は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示することができる。
【0010】
また、前記描画処理手段は、前記所要時間内領域の集合の外周となる閉曲線を描画してもよい。
【0011】
この構成によれば、描画処理手段により所定の時間以内に到達可能な範囲が閉曲線で描画され、表示手段により所定の時間以内に到達可能な範囲を示す閉曲線が地図上に表示される。よって、所定の時間以内に到達可能な範囲の表示が、色分け等で表示する場合に比べ明確になり、ユーザに認識しやすくなる。
【0012】
また、前記領域種別判別手段は、前記所要時間内領域の中で,所要時間外領域と隣接する領域をオープン領域として判別し、前記描画処理手段は、前記オープン領域を介す閉曲線を描画してもよい。
【0013】
この構成によれば、領域種別判定手段は、所要時間内領域の集合の外周に相当する領域をオープン領域と判定する。描画処理手段は、オープン領域を介す閉曲線を描画することで、所要時間内領域の外周となる閉曲線を描画することができる。これにより、従来の地図表示装置のように、所定の時間以内に到達可能な範囲と表示された領域に、所要時間外領域が含まれることはない。よって、本発明に係る地図表示装置は、所定の時間以内に到達可能な範囲を閉曲線を用い高い精度で表示することができる。
【0014】
また、前記地図表示装置は、さらに、前記オープン領域のうち一つを選択し、選択したオープン領域に隣接しており、かつ1度も選択されていないオープン領域を順次選択し、最初に選択されたオープン領域を再度選択するまで選択を繰り返す遷移処理手段を備え、前記描画処理手段は、前記遷移処理手段が、選択したオープン領域の遷移の軌跡を前記閉曲線として描画してもよい。
【0015】
この構成によれば、遷移処理手段により選択されたオープン領域の軌跡から所定の時間以内に到達可能な範囲を示す閉曲線を描画することができる。
【0016】
また、前記遷移処理手段は、前記軌跡が交差しないようにオープン領域を選択してもよい。
【0017】
また、前記遷移処理手段は、前記オープン領域の全てを選択してもよい。
また、前記領域種別判別手段は、前記オープン領域に判別された領域を、前記所要時間内領域の集合の外側に位置する所要時間外領域と隣接する外延オープン領域と、前記所要時間内領域の集合の内側に位置する所要時間外領域と隣接する内包オープン領域とに区分し、前記描画処理手段は、前記外延オープン領域を介す第1の閉曲線と、前記内包オープン領域を介す第2の閉曲線とを描画してもよい。
【0018】
この構成によれば、所要時間内領域の集合の内側に所要時間外領域が存在する場合であっても、高い精度で所定の時間以内に到達可能な範囲を閉曲線を用い表示することができる。
【0019】
また、前記領域分割手段は、前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割してもよい。
【0020】
この構造によれば、地図を自車位置からの距離方向に対して複数の領域に分割するので、自車位置からの距離方向に対して、所要時間内領域と所要時間外領域とが混在する場合(例えば、自車位置の直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域となる領域が存在する場合)であっても、各領域が所定時間内領域であるか所定時間外領域であるかを正しく判別することができる。よって、本発明に係る地図表示装置は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示することができる。
【0021】
また、前記領域分割手段は、分割する領域の周辺の地形情報に基づいて分割する領域の大きさを決定する領域決定手段を備え、前記領域分割手段は、前記地図を前記領域決定手段が決定した大きさの複数の領域に分割してもよい。
【0022】
この構成によれば、交差点等の地図上の複数の地点の密集度に応じて、分割する領域の大きさを変更することができる。例えば、密集度が高い場合には、分割する領域を小さくすることでより高精度で所定の時間以内に到達可能な範囲を表示することができる。また、密集度が低い場合には、分割する領域を大きくすることで、分割した領域に交差点等の地点が存在しない状態を回避することができる。また、分割する領域を大きくすることで、処理量を低減することができる。
【0023】
また、前記領域決定手段は、分割する領域の周辺に存在する進入不可能な領域の大きさに基づき、分割する領域の大きさを決定してもよい。
【0024】
この構成によれば、交差点等の地図上の地点が、湾または河川等の進入不可能な領域を介して存在する場合は、分割する領域を小さくすることで、湾または河川等の進入不可能な領域を介して存在する2以上の地点が同じ領域にならないようにすることができる。これにより、進入不可能な領域を介して、所定の時間以内に到達可能な地点と、所定の時間内に到達不可能な地点とが存在する場合であっても、高精度で所定の時間以内に到達可能な範囲を表示することができる。
【0025】
また、前記領域決定手段は、分割する領域の周辺の前記地点の密集度合いが高い場合には分割する領域を小さくし、分割する領域周辺の前記地点の密集度が低い場合には分割する領域を大きくしてもよい。
【0026】
この構成によれば、交差点等の地図上の複数の地点の密集度が高い場合には、分割する領域を小さくすることでより高精度で所定の時間以内に到達可能な範囲を表示することができる。また、密集度が低い場合には、分割する領域を大きくすることで、分割した領域に交差点等の地点が存在しない状態を回避することができる。また、分割する領域を大きくすることで、処理量を低減することができる。
【0027】
また、前記描画処理手段は、前記オープン領域に対し前記所要時間外領域が隣接する方向に近い前記オープン領域内の点を介す前記閉曲線を描画してもよい。
【0028】
この構成によれば、領域の中心点を介すように閉曲線を表示する場合に比べ、広い範囲を所定の時間以内に到達可能な範囲として閉曲線で表示することができる。
【0029】
また、本発明に係る地図表示方法は、所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示方法であって、前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索ステップと、前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割する領域分割ステップと、前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別ステップと、前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理ステップと、前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示ステップとを含む。
【0030】
これによれば、本発明に係る地図表示方法は、領域分割ステップにおいて、所定の位置を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により地図を複数の領域に分割する。これにより、自車位置からの距離方向に対し、所要時間内領域と所要時間外領域とが混在する場合(例えば、自車位置の直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域となる領域が存在する場合)であっても、各領域が所定時間内領域であるか所定時間外領域であるかを正しく判別することができる。よって、本発明に係る地図表示方法は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示することができる。
【0031】
また、本発明に係るプログラムは、所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示方法のプログラムであって、前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索ステップと、前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割する領域分割ステップと、前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別ステップと、前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理ステップと、前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示ステップとをコンピュータに実行させる。
【0032】
これによれば、本発明に係る地図表示方法のプログラムは、領域分割ステップにおいて、所定の位置を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により地図を複数の領域に分割する。これにより、自車位置からの距離方向に対し、所要時間内領域と所要時間外領域とが混在する場合(例えば、自車位置の直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域となる領域が存在する場合)であっても、各領域が所定時間内領域であるか所定時間外領域であるかを正しく判別することができる。よって、本発明に係る地図表示方法のプログラムは、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示する地図表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態に係る地図表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、地図表示装置を自動車に設置されるナビゲーション装置に適用した例について説明する。
【0035】
本実施の形態に係る地図表示装置は、地図をメッシュ状の複数の領域に分割し、自車位置から所要時間内で到達可能な領域である所要時間内領域を探索し、所要時間内領域の外周を介す閉曲線を表示することで、高い精度で所要時間以内で到達可能な範囲を表示することができる。
【0036】
まず、本実施の形態に係る地図表示装置の構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係る地図表示装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
図1に示す地図表示装置100は、所定の位置(例えば、自車位置)を基準として、ユーザから指定された所定の時間内に到達可能な範囲を地図上に表示する。地図表示装置100は、地図データ保持部101と、測位部102と、入力部103と、表示部104と、制御部105とを備える。
【0038】
以下、各構成について詳細に述べる。
地図データ保持部101は、地図データ111を保持する。例えば、地図データ保持部は、HDDまたはDVD再生装置である。
【0039】
地図データ111は、道路、交差点およびランドマーク等の地図情報である。例えば、地図データ111は、HDDに保持されている地図情報またはDVDに記憶されている地図情報である。地図データ111は、ノードデータ112と、リンクデータ113と、ランドマークデータ114とを含む。なお、地図データ保持部101は、RAM等であり、地図データ111を格納するセンター設備より使用する地図データ111を無線通信(例えば、携帯電話等)によってダウンロードし、格納してもよい。
【0040】
図2は、地図データ111に含まれるノードデータ112、リンクデータ113およびランドマークデータ114の構成を示す図である。
【0041】
図2(A)は、ノードデータ112の構成を示す図である。ノードデータ112は、交差点や合流地点等の幾方向かに道路が分岐する地点であるノードの情報である。ノードデータ112は、各ノードの緯度・経度などの位置情報と、該ノードに接続する後述するリンクの数と、リンクのIDとを含む。
【0042】
図2(B)は、リンクデータ113の構成を示す図である。リンクデータ113は、ノードとノードとを結ぶ道路を表すリンクの情報である。リンクデータ113は、各リンクの端点である始点ノードおよび終点ノードと、リンクの長さ(単位はメートルまたはキロメートル等)と、リンクの幅(単位はメートル等)と、一般道路および高速道路等の道路種別とを含む。
【0043】
図2(C)は、ランドマークデータ114の構成を示す図である。ランドマークデータ114は、地図上の施設等であるランドマークの情報である。ランドマークデータ114は、ランドマークが属するジャンルと、施設名称と、近接するノードIDと、ランドマークの位置情報とを含む。
【0044】
測位部102は、地図表示装置100が設置される車両に取り付けられ、自車両の現在位置、速度、方位および現在時刻を測位する。例えば、測位部102は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、車速センサ、ジャイロ(角速度)センサまたは加速度センサ等である。GNSS受信機は、例えば、GPS受信機であり、複数の衛星からの電波を受信し、それを復調することで受信機の絶対位置を計測する。なお、現在位置、速度および方位の測位には、GNSS受信機や各種センサを単独または複合を利用して行う。
【0045】
入力部103は、ユーザからの指示が入力される。入力部103は、例えば、押圧式のスイッチを所定数並べた構成の入力装置、タッチパネル式の入力装置、リモコン、または、利用者の声を認識して地図表示装置への入力情報に変換する音声認識装置(マイクロフォンまたは音声認識エンジン等)等である。ユーザは、入力部103に、所要時間に関する情報を入力する。また、自車位置以外からの所定の時間内で到達可能な範囲を表示させる場合には、ユーザは、入力部130に、経路探索を行う中心位置に関する情報を入力する。
【0046】
表示部104は、制御部105により作成される表示画像データに従って画像を表示する、例えば、表示部104は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等である。なお、表示部104は、入力部103と一体となったタッチパネルであってもよい。
【0047】
制御部105は、地図データ保持部101が保持する地図データ111と、測位部102が測位した現在位置、速度、方位および現在時刻と、入力部103に入力されたユーザの指示に基づき、地図情報を表示部104に表示するための処理を行う。例えば、制御部105は、CPU等である。制御部105は、探索部106と、領域分割部107と、領域種別判別部108と、遷移処理部109と、描画処理部110とを備える。
【0048】
探索部106は、測位部102により測位された自車位置を中心として地図上の複数の地点までの所要時間の探索である経路探索を行う。探索部106による経路探索は、ダイクストラ法など既存の手法を用いてなされる。通常、ユーザの目的地が決まっている場合には、経路探索は自車位置を探索開始地点、目的地を探索終了地点として行われるが、本実施の形態では目的地に関する情報を利用しない。そのため、ユーザにより入力された所要時間に関する情報に基づいて探索範囲を求め、その範囲においてダイクストラ法などを利用する。具体的には車両の平均車速を30km/時などのように想定し、入力された時間が10分であれば10分で走行可能な直線距離として5kmを算出する。そして自車位置を中心として半径5kmの圏内を探索範囲として決定する。探索部106により算出される各ノードまたはランドマークまでのコスト情報から、それぞれの地点までのおおよその所要時間を求めることができる。なお、ユーザから別途、自車位置以外の探索開始地点に関する入力があった場合には、その位置を中心に探索を行ってもよい。
【0049】
領域分割部107は、地図データ111の地図をメッシュ状の複数の小さな領域に分割する。領域分割部107による領域の分割の具体例について述べる。
【0050】
図3は、表示部104に表示される地図を模式的に示す図である。図3において、ドットで示された領域201は海、太い実線202は海岸線であり、白い領域203は陸地である。また、黒い三角形のアイコン204は自車位置を表す。
【0051】
図4は、図3に示す地図に対して、領域分割部107が細分化を行った地図を示す図である。領域分割部107は、図4に示すように、図3に示す地図を矩形(正方形を含む)のメッシュ状の領域に分割する。すなわち、領域分割部107は、自車位置を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割を行う。メッシュの大きさは予め定められた一定の大きさでもよいし、自車位置が中心となるように所定の大きさのメッシュを適宜決定してもよい。また、分割される領域の周辺の地図情報に基づいてメッシュの大きさを決定してもよい。さらに、分割される領域の周辺のノードの密集度合いに応じてメッシュの大きさを決定してもよい。具体的には、領域分割部107は、分割した領域に少なくとも1つのノードが存在するように分割する。すなわち、都心部などのノードやリンクが密集しているエリアは、メッシュの大きさを小さくする。また、山間部や田園地帯などノードの数が少ないエリアは、メッシュの大きさを大きくする。メッシュの大きさを一定にした場合、山間部や田園地帯などノードの数が少ないエリアにおいて、分割した各領域内にノード、ランドマークおよびリンクなど要素が存在しない場合が発生する。探索部106は、自車位置からの所要時間をノードおよびランドマーク等の要素に対して算出する。よって、メッシュ内部にこれらの要素が存在しない場合は、該メッシュに対する自車位置からの所要時間を算出することができない。ノードの密集度合いに応じてメッシュの大きさを適応的に変化させることで、領域内にノード、ランドマークおよびリンクなど要素が存在しない状況を回避することが可能となる。また、ノードの密集度合いが低い場合には、メッシュの大きさを大きくすることで、処理量を低減することができる。また、図4に示すように湾等の進入不可能な領域が存在する地形では、進入不可能な領域の大きさに基づき、メッシュの大きさを決定してもよい。すなわち、湾の対岸のノードが同一メッシュ内に存在しないようにメッシュの大きさを決定してもよい。このようにする利点については、後述する遷移処理部109および描画処理部110の処理の説明後に詳述する。なお、領域の大きさは一様である必要はなく、同一画面内にノードの密集地域と非密集地域が共存する場合には、それぞれ異なる大きさのメッシュを設定してもよい。これは湾や河川などが存在する場合も同様で、湾や河川周辺のメッシュの大きさを内陸部のメッシュの大きさに比べて小さくしてもよい。また、分割される領域の形状は矩形に限定されるものではなく、円形、三角形など任意に設定することができる。本実施の形態においては、分割される領域の形状は矩形で、大きさが一定である場合について述べる。
【0052】
領域種別判別部108は、領域分割部107により分割された領域ごとに、あらかじめ定められた領域種別のいずれに属するかの判定を行う。まず、領域種別について説明する。領域種別は、所要時間内領域と、所要時間外領域と、オープン領域と、クローズド領域とを含む。所要時間内領域は、ユーザにより入力された所要時間に対して、探索部106により算出された領域内のノードへの到達時間がいずれも所要時間以下の領域である。所要時間外領域は、領域内のノードへの到達時間が所要時間以上のノードが1つ以上存在する領域である。このような定義以外にも、領域内のノードへの到達時間が所要時間以下のノードが1つ以上存在すれば所要時間内領域、領域内のノードへの到達時間がいずれも所要時間以上の領域を所要時間外領域というように定めてもよい。あるいは、領域内のリンク、ランドマークへの到達時間を加味してそれぞれを定義してもよい。
【0053】
図5は、図4に示す分割された領域に対して、所要時間内領域および所要時間外領域を判別した例を示す図である。図5において、所要時間内領域205は白塗りのメッシュ、所要時間外領域206は斜線のメッシュで表す。図5に示すように、領域種別判定部108は、分割された各領域に含まれるノードまでの所要時間が、ユーザにより入力された所定時間以下であるか否かに基づき、該領域を所定時間内で到達可能な所要時間内領域205と、所定時間内で到達不可能な所要時間外領域206とに判別する。
【0054】
次に、オープン領域およびクローズド領域について定義する。オープン領域は、所要時間内領域の中で、所要時間外領域と隣接する領域である。すなわち、オープン領域は、所要時間内領域であり、かつ領域の4辺のうちいずれか1辺が所要時間外領域、または、海、河川などメッシュが存在しない領域と接している領域である。海、河川にもメッシュが存在する場合はそのメッシュには到達できないため所要時間外領域と扱ってもよい。ただし、橋などの通行手段が用意されている場合にはこの限りではない。一方クローズド領域は、所要時間内領域であり、かつ領域の4辺がいずれも所要時間内領域と接する領域である。
【0055】
図6は、図5に示す所要時間内領域205に対して、オープン領域およびクローズド領域の判別例を示す図である。図6において、オープン領域207は、縦縞を施したメッシュとして表示する。また、クローズド領域208は、白抜きのメッシュとして表示する。図6のように、所要時間内領域集合の外周部がオープン領域207となる。
【0056】
遷移処理部109は、領域種別判別部108により判別されたオープン領域同士を閉曲線で結ぶために、その順序を決定する。遷移処理部109は、オープン領域のうち一つを選択し、選択したオープン領域に隣接するオープン領域を順次選択し、最初に選択されたオープン領域を再度選択するまで選択を繰り返す。すなわち、遷移処理部109は、あるオープン領域が選択された場合に、閉曲線がそのオープン領域の次にどの領域を通るのかを選択し、領域間の遷移順序として求める。遷移順序の決定方法について述べるにあたり、初期領域、遷移元領域、遷移候補領域および遷移先領域という語の定義を行う。
【0057】
初期領域は、遷移処理部109が遷移順序を決定するにあたり、最初に選択するオープン領域である。初期領域はオープン領域の中から任意の領域を選択することが可能である。なお、閉曲線の性質上、初期領域から開始された遷移は、最終的に初期領域へと戻ってくる必要がある。
【0058】
遷移元領域は、遷移先を探す基準となるオープン領域である。また、遷移候補領域は、遷移元領域に対して、後述する遷移規則に該当する、遷移候補となるオープン領域である。遷移先領域は、遷移元領域から遷移する遷移先の領域であり、遷移候補領域の中から選択される。始めに選択された初期領域は遷移元領域となり、遷移候補領域を探す。遷移候補領域の中から遷移先領域が選択される。選択された遷移先領域は、遷移元領域となり、新たな遷移候補領域を探すことになる。
【0059】
以下、遷移処理部109の遷移順序の決定方法について詳細に述べる。
図7は、遷移処理部109の遷移順序の決定方法のフローチャートである。
【0060】
遷移処理部109は、まずオープン領域の中から1つの領域を選択し初期領域に設定する(ステップS101)。選択された初期領域は、遷移元領域に設定される(ステップS102)。遷移元領域が確定すると、遷移処理部109は遷移規則に従って遷移候補領域が2つ以上存在するか否か判定を行う(ステップS103)。
【0061】
ここで遷移規則について図8を参照して述べる。図8は、遷移処理の一例を示す図である。図8において、便宜上9つの分割された各領域にIDを付与する。
【0062】
図8(A)は、図6に示す領域209であり、初期領域としてID5の領域が選択された場合の、遷移先領域の選択動作例を示す図である。図8(A)に示すように、ID5の領域が初期領域(遷移元領域)として選択された場合、遷移候補領域は、ID5の領域の周囲(8方向)に隣接する領域のうちオープン領域207であるID3およびID7の領域となる。遷移処理部109は、ID3およびID7の領域のうち一方を遷移先領域として選択する。
【0063】
図8(B)は、図6に示す領域210であり、ID19の領域から遷移しID18の領域が選択された場合の、遷移先領域の選択動作例を示す図である。図8(B)に示すように、ID19の領域がかつて遷移元領域であった場合には遷移候補からはずれ、ID15およびID17の領域が遷移候補領域となる。
【0064】
このような遷移規則に従って、遷移候補の判定が行われ、遷移候補領域の数が1つである場合には(ステップS103でNo)、その遷移候補領域が遷移先領域として選択される。また、遷移候補領域の数が2つ以上存在する場合には(ステップS103でYes)、遷移候補リストが作成される(ステップS104)。
【0065】
図9は、遷移候補リストの構成の一例を示す図である。
図9に示す遷移候補リストは、遷移候補領域を複数有する遷移元領域に対して、遷移候補領域をすべて列挙して管理しておくためのものである。例えば、図8(A)の場合には、遷移元領域であるID05の領域に、遷移候補領域であるID3およびID7の領域が存在することが遷移候補リストに示される。また、図8(B)の場合には、遷移元領域であるID18の領域に、遷移候補領域であるID15およびID17の領域が存在することが遷移候補リストに示される。
【0066】
遷移候補リストが作成されると、あるいはすでに存在する遷移候補リストに追加されると、遷移処理部109は、遷移候補リストに示される遷移候補領域の中から1つの遷移候補領域を選択して遷移先領域とする(ステップS105)。選択された遷移先領域が初期領域でない場合(ステップS106でNo)、選択された遷移先領域を遷移元領域に設定し(ステップS102)、同様に新たな遷移先領域を選択する処理を繰り返す。選択された遷移先領域が初期領域である場合(ステップS106でYes)、暫定的に決定された遷移順序が終了条件を満たすかどうかの判定が行われる(ステップS107)。
【0067】
終了条件は以下の3つである。
(I)遷移順序の軌跡は交差しない。
(II)遷移先として選択されなかったオープン領域が1つも存在しない。
(III)すべてのオープン領域が遷移先領域として1度だけ選択されている。
【0068】
暫定的に決定された遷移順序が上記3つの条件をすべて満たす場合は(ステップS107でYes)、その遷移順序は記憶されて処理は終了する(ステップS109)。一方、終了条件のうち1つでも満足しない要件が存在する場合には(ステップS108でNo)、暫定的に決定された遷移順序は不適切であるため破棄され、図9の遷移候補リストの遷移候補領域の中で未だ選択されていない遷移候補領域を遷移先領域として選択する(ステップS110)。具体例を以下に示す。
【0069】
図8(B)に示すようにID19の領域から遷移し、ID18の流域が選択された場合には、遷移候補領域としてID15およびID17の領域が存在する。遷移処理部109は、例えば、ID15の領域を遷移先領域として選択する。選択されたID15の領域は遷移元領域となり、ID13およびID17の領域が遷移候補領域となる。例えば、遷移処理部109は、ID13の領域を遷移先領域に選択し、その後順次遷移を繰り返す。遷移先領域が初期領域を選択した時点で、閉曲線は完成するが、上述した遷移動作では、ID17の領域は選択されない。すなわち、遷移動作の終了条件(III)を満たさない。よって、上述した遷移順序は不適切であるため破棄され、再度、遷移動作が行われる。2回目の遷移動作では、図8(B)のID18の領域からの遷移において、遷移候補リストに基づき、前回選択されなかったID17の領域が選択される。その後、ID15およびID13が順次選択される。その後順次遷移を繰り返され、遷移先領域が初期領域を選択した時点で、閉曲線は完成する。2回目の遷移動作では、全てのオープン領域が選択される。すなわち、遷移動作の終了条件(I)〜(III)を満たす。よって、2回目の遷移動作の遷移順序が記憶される。
【0070】
なお、図8(B)において、ID18の領域からID15の領域に遷移したのち、ID17の領域に遷移すると、ID17の領域からの遷移先領域がなくなる。このような場合にも、遷移終了の条件判定を満たさなかった場合(S107でNo)と同様に、遷移結果を破棄し、再度遷移動作をやり直せばよい。
【0071】
図10は、遷移処理部109により決定された遷移順序の軌跡の例を示す図である。図10に示すように、遷移順序は初期領域を出発し、上述した3つの終了条件を満たすような軌跡となる。図10に示すように、遷移処理部109により決定された遷移順序の軌跡は、所要時間内領域を囲む形状となる。
【0072】
描画処理部110は、遷移処理部109により決定されたオープン領域の遷移順序の軌跡を閉曲線として描画する。すなわち、描画処理部110は、所要時間内領域の外周を結んだ閉曲線を描画する。
【0073】
図11は、描画処理部110による閉曲線の描画において、各領域内で閉曲線が通過する点の一例を示す図である。描画処理部110は、以下の2つの描画方法のうちいずれか一つをもちいて描画することができる。
【0074】
第1の方法は、図11の(A)に示すように通過点を領域の中心位置付近に設定する方法である。第2の方法は、各オープン領域の所要時間外領域との隣接状況に応じて通過点を設定する方法である。例えば、描画処理部110は、各オープン領域に対し所要時間外領域が隣接する方向に近い該オープン領域内の点を介す閉曲線を描画する。具体的には図11(B)に示すように、オープン領域の左辺のみが所要時間外領域と接している場合には該オープン領域の左辺上の点(例えば辺の中点)を閉曲線の通過点とする。また、図11(C)に示すように、オープン領域の左辺および上辺が所要時間外領域と接している場合には2辺の交点(該オープン領域の左上の頂点)を閉曲線の通過点とする。また、図11(D)に示すように、オープン領域の左辺、上辺および右辺の3辺が所要時間外領域と接している場合には該オープン領域の上辺上の点(例えば上辺の中点)を閉曲線の通過点とする。また、図11(E)に示すように、オープン領域の向かい合う2辺(左辺および右辺)が所要時間外領域と接している場合には該オープン領域の中心点を閉曲線の通過点として設定する。このように通過点を設定することで、所要時間内領域の集合をできるだけ広く含む閉曲線を描画することが可能となる。
【0075】
なお、所要時間内領域および所要時間外領域の定義を、領域内のノードへの到達時間が所要時間以下のノードが1つ以上存在すれば所要時間内領域、領域内のノードへの到達時間がいずれも所要時間以上の領域を所要時間外領域と定めた場合には、所要時間内領域の集合をできるだけ狭く含む閉曲線を描画してもよい。すなわち、図11(B)のように左辺が所定時間外領域と接している場合には、右辺上の点を通過点とし、図11(C)のように左辺および上辺が所要時間外領域と接している場合には右下の頂点を通過点とし、図11(D)のように左辺、上辺および右辺の3辺が所要時間外領域と接している場合には下辺を通過点としてもよい。
【0076】
図12は、表示部104に表示される閉曲線の例を示す図である。図12に示すように、本実施の形態に係る地図表示装置は、自車位置の方位方向の距離の近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域が存在する場合であっても、自車位置から所要の時間内でいける範囲を正確に表示することができる。なお、図12において、通常の地図表示(図12では省略しているが、道路、ランドマーク、地名および交差点名称などを含む地図表示)に閉曲線のみを表示する例について示しているが、領域分割部107が分割した便宜上のメッシュや、あるいは領域種別判別部108により判別された種別ごとに区別された表示態様のメッシュなどをあわせて表示してもよい。
【0077】
ここで、描画処理部110は、閉曲線を用い、所定時間内流域と所要時間外領域との区分をできるだけ正確に描画することを目的としている。そのため、領域分割部107で説明したようにメッシュの大きさを適切に設定しなければ、湾等の自車両が進入不可能な領域を挟んだ対岸に存在する所要の時間内で到達できるノードと所要の時間内で到達できないノードとが同一の領域(メッシュ)に存在することとなる。所要時間内に到達可能な1つ以上のノードを含む領域を所定時間内領域とする場合には、該領域は所定時間内領域と判別される。これにより、対岸の所要の時間内で到達できないノードおよび湾を含む閉曲線が描画される。すなわち、自車両が到達可能な範囲を正確に示す閉曲線を描画することができなくなる。そのため、湾および河川等の幅を考慮して所要時間内で到達可能な地点(ノードおよびランドマーク等)と、所要時間内で到達不可能な地点が同一の領域に存在することのないように、メッシュの大きさを適切に設定することによる利点は大きい。
【0078】
次に、以上のように構成される地図表示装置100の処理の流れについて説明する。
図13は、地図表示装置100の所要時間内に到達可能な範囲を表示する処理の流れを示すフローチャートである。入力部103を介してユーザから所要時間に関する情報が入力されると(ステップS201でYes)、探索部106は、地図データ保持部101から地図データ111を参照して入力された所要時間に応じた探索範囲において探索処理を行う(ステップS202)。領域分割部107は地図データ111を、あらかじめ定められたメッシュ、または、探索の開始位置(特に指定がなければ自車両の現在位置)の周辺の地形等(ノードの密集度合いおよび湾等の幅)に応じて定められるメッシュに分割する(ステップS203)。領域が分割されると、領域種別判別部108は、各領域をあらかじめ定義された領域種別(所要時間内領域、所要時間外領域、オープン領域およびクローズド領域)に判別する(ステップS204)。領域種別が判別されると、遷移処理部109は、遷移規則および終了条件に従って、オープン領域を順次遷移する遷移順序を確定する(ステップS205)。描画処理部110は、確定された遷移順序に従って閉曲線を描画し、表示部104に対して出力処理を行う。表示部104は、描画処理部110が描画した閉曲線を、地図データ111に重畳して表示する。
【0079】
なお、探索処理(S202)の後に領域の分割(S203)を行っているが、領域の分割(S203)の後に探索処理を行ってもよい。
【0080】
また、本実施の形態においては、種別ごとに判別された領域においてオープン領域同士を閉曲線で結ぶことにより、ユーザにより所要時間以内で到達可能な範囲を正確に表示する例について説明したが、閉曲線で結ぶことなくユーザに情報を伝えることも可能である。すなわち、描画処理部110は、分割された領域が所要時間内領域であるか否かを、ユーザが識別可能な状態に描画すればよい。例えば、判別された領域ごとに配色や模様を違えて表示するようにしてもよい。配色、模様を違える表示では、閉曲線を描画するのに比べて処理量は少なくなるが、ユーザからの地図表示の見易さは多少低下する可能性がある。一方、本実施の形態のように閉曲線を描画する表示では、地図表示の文字などの見易さは確保できるが、処理量が多くなる。そのため、いずれの表示態様を選択するかは、地図表示装置のハードウェア性能や見易さの重視度合いなどを勘案して決定すればよい。
【0081】
また、本実施の形態では、オープン領域を「所要時間内領域であり、かつ領域の4辺のうちいずれか1辺が所要時間外領域、あるいは、海、河川などメッシュが存在しない領域と接している領域」として定義したが、この限りではなく、所要時間内領域の集合の中で、その集合の外周に近い領域をオープン領域とするのであれば、他の定義も可能である。要はオープン領域同士を閉曲線で結んだときに、その閉曲線内部に存在する所要時間外領域と、閉曲線外部に存在する所要時間内領域ができるだけ少なくなるようにオープン領域を定義できればよい。
【0082】
また、上述した説明では、所要時間外領域が所要時間内領域の集合の外側のみに存在する例について述べたが、地形、道路の状況によっては、所要時間内領域の集合の内側に所要時間外領域が存在する場合もある。以下に、所要時間内領域の集合の内側に所要時間外領域が存在する状況における閉曲線の描画手法について述べる。
【0083】
図14は、所要時間内領域の集合の内側に所要時間外領域が存在する場合の領域種別判別部108による領域種別の判定例を示す図である。図14に示すように所要時間内領域208の集合の内側に所要時間外領域206aが存在する場合について説明する。
【0084】
まず、内包オープン領域と外延オープン領域という語の定義をする。内包オープン領域は、オープン領域の中で、所要時間内領域の集合の内側の所要時間外領域と隣接する領域である。外延オープン領域は、オープン領域の中で、所要時間内領域の集合の外側の所要時間外領域に隣接する領域である。
【0085】
領域種別判別部108は、オープン領域を内包オープン領域と外延オープン領域にさらに区別する。図14においては、斜線で表された所要時間外領域206に対して、内包オープン領域212は横縞で、外延オープン領域213は縦縞で示されている。
【0086】
遷移処理部109は、内包オープン領域212および外延オープン領域213それぞれに対して図7のフローチャートに示した処理手順、および、終了条件に従って遷移順序を決定する。遷移規則としては、基本的に別種別のオープン領域への遷移(内包オープン領域212から外延オープン領域213への遷移、および、外延オープン領域213から内包オープン領域212への遷移)は禁止される。しかしながら、地理条件またはメッシュの大きさ等により、内包オープン領域および外延オープン領域の2つの性質をもつ領域も存在する場合がある。このような場合には、少なくとも同じ種別のオープン領域の性質を持つ領域への遷移は認められる。これにより、両方の性質をもつ領域は、2回の遷移が認められることになる。遷移処理部109の処理の結果、内包オープン領域212および外延オープン領域213それぞれに対して、独立な遷移順序の軌跡が定まる。
【0087】
描画処理部110は、遷移処理部109により決定された遷移順序に従って、その軌跡を表す閉曲線を描画する。
【0088】
図15は、所要時間内領域の集合の内部に所要時間外領域が存在する場合の描画処理部110による閉曲線の描画例を示す図である。図15に示すように、所要時間内領域の集合の内側に所要時間外領域が1つ存在する場合には、外延オープン領域213に対する遷移順序の軌跡である閉曲線214と、内包オープン領域212に対する遷移順序の軌跡である閉曲線215とが描画される。
【0089】
なお、所要時間内領域の集合の内側に、互いに隣接しない所要時間外領域が複数存在する場合には、各所要時間外領域に対応する内包オープン領域に対し遷移順序の軌跡が生成され、各所定時間外領域に対応した独立した複数の閉曲線が描画される。
【0090】
以上より、本発明の実施の形態に係る地図表示装置は、地図をメッシュ状の複数の領域に分割する。分割した領域に含まれるノードが所要の時間内に到達可能であるか否かに基づき、自車両が所要の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、自車両が所要の時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する。さらに、所要時間内領域のうち、所要外時間領域と隣接する領域をオープン領域と判別する。判別したオープン領域を介す閉曲線を描画する。これにより、自車位置からの距離方向に対し、所要時間内領域と所要時間外領域とが混在する場合(例えば、自車位置の直線距離が近いほうから順に、所要時間外領域、所要時間内領域、所要時間外領域となる領域が存在する場合)であっても、各領域が所定時間内領域であるか所定時間外領域であるかを正しく判別することができる。よって、本発明に係る地図表示装置は、中心位置(自車位置)から所要時間以内で到達可能な範囲を高い精度で表示することができる。
【0091】
なお、上記説明において、自動車が進入不可の領域の一例として海101を用いているが、河川、池または山岳地帯等で道路が存在しない場合にも適用することができる。
【0092】
また、上記説明において、本実施の形態に係る地図表示装置を、自動車に設置されるナビゲーション装置に適用した例について説明したが、歩行者が利用するナビゲーション装置に適用してもよい。例えば、歩行者が利用するナビゲーション装置は、専用の歩行者用ナビゲーション装置、GPS機能等を有する携帯電話およびノート型パーソナルコンピュータ等である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明は、地図表示装置に適用でき、特に、カーナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、携帯電話等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る地図表示装置のブロック図である。
【図2】地図データの構成を示す図である。
【図3】表示部に表示される地図の表示例を示す図である。
【図4】領域分割部による領域に分割例を示す図である。
【図5】所要時間内領域と所要時間外領域との判別例を示す図である。
【図6】オープン領域の判別例を示す図である。
【図7】遷移処理部による処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】遷移処理部による遷移の規則を表した図である。
【図9】遷移処理部により作成される遷移候補リストの構成を示す図である。
【図10】遷移処理部により決定された遷移順序の軌跡を示す図である。
【図11】オープン領域内部で、閉曲線が通過する点を決定する規則を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る地図表示装置の所定時間内で到達可能な範囲の表示例を示した図である。
【図13】本発明の実施の形態における地図表示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】外延オープン領域と内包オープン領域との判別例を示す図である。
【図15】外延オープン領域および内包オープン領域に対応する閉曲線を描画する例を示す図である。
【図16】従来の地図表示装置の所定時間内で到達可能な範囲の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
100 地図表示装置
101 地図データ保持部
102 測位部
103 入力部
104 表示部
105 制御部
106 探索部
107 領域分割部
108 領域種別判別部
109 遷移処理部
110 描画処理部
111 地図データ
112 ノードデータ
113 リンクデータ
114 ランドマークデータ
201、301 海
202、302 海岸線
203 陸
204、304 自車位置
205、305 所要時間内領域
206、206a、306、306a 所要時間外領域
207 オープン領域
208 クローズド領域
211、214、215、311 閉曲線
212 内包オープン領域
213 外延オープン領域
314 代表ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示装置であって、
前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索手段と、
前記地図を複数の領域に分割する領域分割手段と、
前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別手段と、
前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理手段と、
前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示手段とを備える
ことを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記描画処理手段は、前記所要時間内領域の集合の外周となる閉曲線を描画する
ことを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記領域種別判別手段は、前記所要時間内領域の中で,所要時間外領域と隣接する領域をオープン領域として判別し、
前記描画処理手段は、前記オープン領域を介す閉曲線を描画する
ことを特徴とする請求項2記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記地図表示装置は、さらに、
前記オープン領域のうち一つを選択し、選択したオープン領域に隣接しており、かつ1度も選択されていないオープン領域を順次選択し、最初に選択されたオープン領域を再度選択するまで選択を繰り返す遷移処理手段を備え、
前記描画処理手段は、前記遷移処理手段が、選択したオープン領域の遷移の軌跡を前記閉曲線として描画する
ことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記遷移処理手段は、前記軌跡が交差しないようにオープン領域を選択する
ことを特徴とする請求項4記載の地図表示装置。
【請求項6】
前記遷移処理手段は、前記オープン領域の全てを選択する
ことを特徴とする請求項4または5記載の地図表示装置。
【請求項7】
前記領域種別判別手段は、前記オープン領域に判別された領域を、前記所要時間内領域の集合の外側に位置する所要時間外領域と隣接する外延オープン領域と、前記所要時間内領域の集合の内側に位置する所要時間外領域と隣接する内包オープン領域とに区分し、
前記描画処理手段は、前記外延オープン領域を介す第1の閉曲線と、前記内包オープン領域を介す第2の閉曲線とを描画する
ことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項8】
前記領域分割手段は、前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の地図表示装置。
【請求項9】
前記領域分割手段は、分割する領域の周辺の地形情報に基づいて分割する領域の大きさを決定する領域決定手段を備え、
前記領域分割手段は、前記地図を前記領域決定手段が決定した大きさの複数の領域に分割する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の地図表示装置。
【請求項10】
前記領域決定手段は、分割する領域の周辺に存在する進入不可能な領域の大きさに基づき、分割する領域の大きさを決定する
ことを特徴とする請求項9記載の地図表示装置。
【請求項11】
前記領域決定手段は、分割する領域の周辺の前記地点の密集度合いが高い場合には分割する領域を小さくし、分割する領域周辺の前記地点の密集度が低い場合には分割する領域を大きくする
ことを特徴とする請求項9記載の地図表示装置。
【請求項12】
前記描画処理手段は、前記オープン領域に対し前記所要時間外領域が隣接する方向に近い前記オープン領域内の点を介す前記閉曲線を描画する
ことを特徴とする請求項3記載の地図表示装置。
【請求項13】
所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示方法であって、
前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索ステップと、
前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別ステップと、
前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理ステップと、
前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示ステップとを含む
ことを特徴とする地図表示方法。
【請求項14】
所定の位置を基点として、所定の時間以内に到達可能な範囲を地図上に表示する地図表示方法のプログラムであって、
前記基点から前記地図上の複数の地点までの所要時間を探索する探索ステップと、
前記基点を中心とした放射方向とは異なる方向の分割を含む分割により、前記地図を複数の領域に分割する領域分割ステップと、
前記分割された各領域に含まれる前記地点までの所要時間が、前記所定の時間以下であるか否かに基づき、該領域を前記所定の時間内で到達可能な領域である所要時間内領域と、前記所定の所要時間内で到達不可能な領域である所要時間外領域とに判別する領域種別判別ステップと、
前記所要時間内領域をユーザが識別可能な状態に描画する描画処理ステップと、
前記描画処理手段が描画したデータを、前記地図に重畳して表示する表示ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−298744(P2007−298744A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126579(P2006−126579)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】