説明

地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法

【課題】掘削中の地盤の試料を採取することができる地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法を実現する。
【解決手段】オーガヘッド50を回転させて地盤を掘削する掘削装置100で地盤を掘削する過程において、そのオーガヘッド50による地盤の掘削が不能となった場合に、切削チップ3によって切削された地盤試料Sをパイプ部2に取り込むことができる地盤試料採取装置1をオーガヘッド50の先端部に取り付けて、その掘削不能となった地盤の地盤試料Sを地盤試料採取装置1により採取することによって、その地盤の地質を調査することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法に係り、特に掘削中の地盤の試料を採取する地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先端に装着した掘削工具を回転させて、地盤を掘削する掘削装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この掘削装置を用いて所定の掘削地点を掘削する場合、その掘削地点近傍における柱状図などの地盤情報を参考にして、掘削地点の地盤の地質を判断し、その地盤に適した掘削工具を掘削装置に取り付けて掘削作業を行う。
【特許文献1】特開2002−129861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の場合、参考にした地盤情報と実際の掘削地点での地盤とに相違があった際に、その地盤情報に基づき選択した掘削工具に何らかの不具合が発生するなどして、掘削不能となってしまうことがあった。そのような場合、その掘削地点における確かな地盤情報を取得するために、その掘削地点の地盤調査を行う必要が生じる。
そして、その掘削地点における新たな地盤調査を行うとなると、掘削中の掘削装置を撤去した後にボーリング装置の設置を行わなければならず、また、ボーリング調査後にボーリンク装置を撤去し、再度掘削装置を設置しなければならないので、その費用や時間のロスが問題となることがあった。
【0004】
本発明の目的は、掘削中の地盤の試料を採取することができる地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば、図1〜4、図9に示すように、
掘削ヘッド(例えば、図4、図6のオーガヘッド50)を回転させて地盤を掘削する掘削装置(例えば、図6の掘削装置100)における前記掘削ヘッドに着脱可能に備えられる地盤試料採取装置(1)であって、
地盤を切削する切削チップ(3)と、
地盤試料を取り込む試料採取部(例えば、パイプ部2)と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、切削チップによって切削された地盤試料を試料採取部に取り込むことができる地盤試料採取装置を、掘削装置の掘削ヘッドに装着することができる。
そして、掘削装置の掘削ヘッドを回転させて所定の掘削地点の地盤を掘削する過程において、その掘削ヘッドによる地盤の掘削が不能となった場合に、その掘削ヘッドに地盤試料採取装置を取り付けて、掘削不能となった地盤の地盤試料を地盤試料採取装置によって採取することができる。
【0007】
つまり、掘削中の掘削装置を掘削地点から移動させることなく、また、ボーリング調査用の専用装置を掘削地点に設置することなく、その掘削地点の地盤の地盤試料を採取することができるので、この地盤試料採取装置を使用することによって、より短時間に低コストで地盤調査を行うことができる。
また、地盤試料採取装置によって、掘削中である掘削地点における地盤の地盤試料を採取することができるので、その掘削地点のより正確な地盤情報を得ることができる。そして、その正確な地盤情報に基づいて、その掘削地点に適した掘削ヘッドや掘削手法を検討することが可能になる。
【0008】
よって、この地盤試料採取装置を用いることにより、掘削中の地盤の地盤試料を好適に採取することができ、掘削作業を良好に進めることが可能になる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地盤試料採取装置であって、例えば、図1〜3、図9に示すように、
前記試料採取部が前記地盤試料を取り込む取込口(2a)には、前記地盤試料を採取する際に、前記取込口を開蓋する蓋部(5)が備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、試料採取部が地盤試料を取り込む取込口には、地盤試料を採取する際に、その取込口を開蓋する蓋部が備えられているので、地盤試料採取装置は、地盤試料を採取すべき掘削位置(掘削深度)以外の地盤サンプルを試料採取部に取り込んで採取してしまうことなく、所望する掘削位置(掘削深度)の地盤試料を好適に採取することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の地盤試料採取装置であって、例えば、図5に示すように、
前記蓋部は、前記掘削ヘッドが地盤を掘削する正方向に回転する際には前記取込口を閉蓋し(図5(a)参照)、前記掘削ヘッドが逆方向に回転する際に前記取込口を開蓋する(図5(b)参照)ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、地盤試料採取装置に備えられる蓋部は、掘削ヘッドが地盤を掘削する正方向に回転する際には取込口を閉蓋し、掘削ヘッドが逆方向に回転する際に取込口を開蓋することができるので、所望する掘削位置(掘削深度)までは、掘削ヘッドを正回転させて取込口を蓋部で閉蓋した状態で土砂などを掻き分けるように、その掘削ヘッドを地中に送り込む。そして、掘削不能となった地盤に掘削ヘッドが到達し、地盤試料採取装置がその地盤に突き当たった状態で、掘削ヘッドを逆回転させることによって取込口が開蓋するので、その地盤の地盤試料を地盤試料採取装置の試料採取部に取り込んで採取することができる。
よって、地盤試料採取装置は、地盤試料を採取すべき掘削位置(掘削深度)以外の地盤サンプルを試料採取部に取り込んで採取してしまうことなく、所望する掘削位置(掘削深度)の地盤試料をより好適に採取することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の地盤試料採取装置を用いる地盤試料採取方法であって、例えば、図6〜9に示すように、
掘削ヘッド(例えば、オーガヘッド50)を回転させて地盤を掘削する掘削装置(100)で地盤を掘削する過程において、前記地盤の試料採取が必要となった際に、前記掘削ヘッドに前記地盤試料採取装置(1)を取り付けて、目的深度の地盤試料(S)を前記地盤試料採取装置によって採取することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、掘削ヘッドを回転させて地盤を掘削する掘削装置で地盤を掘削する過程において、地盤の試料採取が必要となった場合に、切削チップによって切削された地盤試料を試料採取部に取り込むことができる地盤試料採取装置を掘削装置の掘削ヘッドに取り付けて、目的深度の地盤の地盤試料を地盤試料採取装置によって採取することができる。
つまり、掘削中の掘削装置を掘削地点から移動させることなく、また、ボーリング調査用の専用装置を掘削地点に設置することなく、その掘削地点の地盤の地盤試料を採取することができる。
従って、地盤試料採取装置を使用する地盤試料採取方法によって、掘削中の地盤の地盤試料を好適に採取することができるので、より短時間に低コストで地盤調査を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、掘削装置の掘削ヘッドを回転させて所定の掘削地点の地盤を掘削する過程において、その掘削ヘッドによる地盤の掘削が不能となった場合に、その掘削ヘッドに地盤試料採取装置を取り付けて、掘削不能となった地盤の地盤試料を地盤試料採取装置によって採取することができる。
このように、掘削装置の掘削ヘッドに着脱可能に備えられる地盤試料採取装置を用いることによって、掘削中の掘削装置を掘削地点から移動させることなく、また、ボーリング調査用の専用装置を掘削地点に設置することなく、その掘削地点の地盤の地盤試料を採取することができるので、この地盤試料採取装置を使用することにより、より短時間に低コストで地盤調査を行うことができる。
また、地盤試料採取装置によって、掘削中である掘削地点の地盤の地盤試料を採取することができるので、その掘削地点におけるより正確な地盤情報や地質情報を得ることができる。
よって、この地盤試料採取装置を用いることにより、掘削中の地盤の地盤試料を好適に採取することができ、掘削作業を良好に進めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態たる地盤試料採取装置及び地盤試料採取方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
地盤試料採取装置1は、図1から図3に示すように、所望する地盤試料を取り込むための試料採取部であるパイプ部2と、パイプ部2の先端側に備えられる複数(本実施形態では4つ)の切削チップ3…と、パイプ部2の基端側に備えられる接続部4と、パイプ部2の先端の開口に取り付けられている蓋部5と、を備えている。
【0018】
パイプ部2は、略円筒形状を呈しており、パイプ部2の上端となる基端側には、後述する掘削装置100の掘削ヘッド(オーガヘッド50)に地盤試料採取装置1を装着するための接続部4が設けられている。
また、パイプ部2の下端となる先端側は開口し、切削チップ3によって切削された地盤試料をパイプ部2内に取り込むための取込口2aが形成されている。取込口2aには、図2に示すように、その開口の円周方向に沿って等間隔に4つの切削チップ3が取り付けられている。
また、パイプ部2の取込口2aの近傍であってパイプ部2の内壁面には、蓋部5の移動を規制するストッパー6が設けられている。
【0019】
切削チップ3は、極めて硬質な材料からなる切削刃を有し、地盤や岩盤を切削する。
【0020】
接続部4は、その断面が多角形状を呈する柱状の軸部材であり、後述する掘削ヘッド(オーガヘッド50)の下端である先端部に設けられた凹状の嵌合孔に挿入可能な形状に形成されている。
特に、接続部4は、後述する掘削装置100の掘削ヘッドに交換可能に備えられる掘削ビット60(図4参照)の接続部60aと同じ形状や構成を有しており、地盤試料採取装置1を掘削ヘッドに着脱可能に装着するために設けられている。そして、図4(a)、(b)に示すように、その掘削ヘッドであるオーガヘッド50の掘削ビット60を取り外して、そのオーガヘッド50の先端部に接続部4を介して地盤試料採取装置1を着脱可能に取り付けることが可能になっている。
なお、オーガヘッド50を備える掘削装置100については後述する。
【0021】
蓋部5は、取込口2aを閉蓋するための円板部5aと、円板部5aの上面においてパイプ部2の内側上方に向かって略T字形状を呈して延在する係合部5bと、円板部5aの下面においてパイプ部2の外側下方に向かって延在する当接部5cと、を有している。
また、円板部5aの側面における係合部5bに対応する位置には、側方に延在する突部5dが形成されており、その突部5dと係合部5bとの間に係合溝5eが形成されている。
【0022】
ストッパー6は、図3、図5に示すように、パイプ部2の内壁面に内接するように設けられ、取込口2aの開口の円周方向に沿う略環形状を呈する第1ストッパー6aと、第1ストッパー6aの上面において取込口2aの開口の中心を挟んで対向する位置にそれぞれ設けられる第2ストッパー6bと、を有している。
なお、第1ストッパー6aにおける取込口2aの開口の中心を挟んで対向する所定位置にはそれぞれ切り欠かれてなる溝部6cが形成されており、第1ストッパー6aは溝部6cによって2つに分断されている。つまり、第1ストッパー6aは、略C字形状を呈する2つのストッパー部材からなる。
【0023】
そして、地盤試料採取装置1のパイプ部2の取込口2aに備えられている蓋部5は、図3、図5(a)に示すように、蓋部5の係合溝5eにストッパーの第1ストッパー6aを係合させるようにして、パイプ部2の取込口2aに取り付けられている。これによって、蓋部5がパイプ部2の中心軸方向に沿って上下に移動しないようになっており、蓋部5がパイプ部2の取込口2aを閉蓋している。
なお、図5(a)に示すように、蓋部5の係合部5bの側面が、ストッパー6の第2ストッパー6bの側面に当接する状態で、蓋部5は取込口2aの開口を閉蓋している。
【0024】
次に、本発明の地盤試料採取装置1が装着されるオーガヘッド50を備える掘削装置100や、その掘削装置100を所定の掘削地点に設置する杭圧入引抜機200について説明する。
【0025】
掘削装置100は、図6に示すように、オーガケーシング10と、オーガケーシング10内の中空部をその軸方向に連通するように配置されるオーガスクリュー20と、オーガスクリュー20をその軸心を中心に正方向と逆方向のそれぞれに回転させるオーガモータ30と、オーガスクリュー20を上下動させる油圧シリンダ40と、オーガスクリュー20の下端である先端部に設けられているオーガヘッド50等を備えている。
なお、図中、オーガモータ30と油圧シリンダ40とオーガケーシング10は杭圧入引抜機200によって支持されている。
そして、掘削装置100は、オーガスクリュー20を介してオーガヘッド50を正方向に回転させることで、地盤を掘削することが可能になっている。
【0026】
杭圧入引抜機200は、地面に圧入された既設の杭(例えば、図6に示す鋼矢板U)から反力をとって地盤に対して新たな杭を圧入すると共に、圧入された杭上を移動できるように構成されている周知の装置である。そして、杭圧入引抜機200は、既設杭上を移動すると共に新たな杭を地盤に圧入することを可能としている。
杭圧入引抜機200は、図6に示すように、既設杭Uを把持するクランプ装置を有するベース部201と、ベース部201上のマスト部202に設けられるリール部203に巻回されている、掘削装置100のオーガモータ30や油圧シリンダ40に作動油を供給するための油圧ホース203aと、図示しないシリンダにより上下に昇降されるチャック装置204等を備えている。
そして、掘削装置100は、図6に示すように、杭圧入引抜機200のチャック装置204によってオーガケーシング10が支持されるようにして、掘削地点である地面に設置されている。
なお、掘削装置100や杭圧入引抜機200の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0027】
次に、本発明の地盤試料採取方法であって、地盤試料採取装置1が地盤試料を採取する際の動作について説明する。
【0028】
図6に示すように、所定の掘削地点に設置された掘削装置100は、オーガヘッド50を正方向に回転させることによって、地盤を掘削しつつ、そのオーガヘッド50を地中深くに掘り進めていく。
そして、図7に示すように、そのオーガヘッド50によって掘削することができない地盤や岩盤にオーガヘッド50が突き当たった場合、そのオーガヘッド50を地中から抜き出して、図4(b)に示すように、オーガヘッド50の掘削ビット60を取り外すとともに、そのオーガヘッド50の先端部に地盤試料採取装置1を取り付ける。
【0029】
次いで、地盤試料採取装置1を取り付けたオーガヘッド50を、再度その掘削地点の地中に螺入させる。
この際、オーガヘッド50を正方向に回転させるようにして、地盤試料採取装置1を地中に螺入させることによって、蓋部5が地盤試料採取装置1のパイプ部2の取込口2aを閉蓋し、パイプ部2内に既に掘削した地盤片や岩盤片が入り込んでしまわないようになっている。
【0030】
具体的には、図5(a)に示すように、オーガヘッド50を正方向に回転させることにより、地盤試料採取装置1も正方向に回転することとなって、パイプ部2やパイプ部2に設けられているストッパー6も地盤試料採取装置1とともに正方向に回転する。そして、地盤片や土砂を掻き分けるようにして地中を掘り進むオーガヘッド50や地盤試料採取装置1には、その地盤片や土砂による土圧がかかり、その土圧によって蓋部5は、パイプ部2の開口から奥側へと向かう下方からの押圧力を受けることとなる。この土圧に伴う押圧力を受けた蓋部5は、地盤側から圧し付けられた作用力(押圧力)によって支持されることとなり、正方向に回転するパイプ部2(ストッパー6)に対して蓋部5は相対的に逆方向に回転するようになり、蓋部5の係合部5bの側面がストッパー6の第2ストッパー6bの側面に当接するように、蓋部5が取込口2aの開口を閉蓋するようになっている(図5(a)参照)。
【0031】
次いで、図8に示すように、オーガヘッド50により掘削することができなかった地盤に地盤試料採取装置1が突き当たった目的の深度において、そのオーガヘッド50を逆方向に回転させる。
このオーガヘッド50を逆方向に回転させることにより、地盤試料採取装置1も逆方向に回転することとなって、パイプ部2やパイプ部2に設けられているストッパー6も地盤試料採取装置1とともに逆方向に回転する。
この際、蓋部5の当接部5cは地盤に当接しているとともに、蓋部5は土圧に伴う押圧力によって支持されているので、図5(b)に示すように、逆方向に回転するパイプ部2(ストッパー6)に対して蓋部5は相対的に正方向に回転するようになる。そして、蓋部5の係合部5bの側面と、ストッパー6の第2ストッパー6bの側面とが離間するように蓋部5が回転し、蓋部5の突部5dと第1ストッパー6aの溝部6cとが位置合わせされる(図5(b)参照)。
そして、地盤の土圧に伴う押圧力によって蓋部5は押し上げられ(図5(c)参照)、蓋部5は取込口2aの開口を開蓋する。
【0032】
次いで、蓋部5が取込口2aの開口を開蓋した状態で、オーガヘッド50を正方向に回転させることに伴い、地盤試料採取装置1を正方向に回転させることにより、地盤試料採取装置1は、その切削チップ3によって地盤を切削する。
【0033】
そして、図9に示すように、切削チップ3により切削されて円柱コア状に刳り貫かれた地盤試料Sは、蓋部5をパイプ部5内に押し上げつつ、パイプ部5の内部に入り込み、パイプ部5内に取り込まれて保持される。
【0034】
次いで、そのオーガヘッド50を地中から抜き出すことによって、地盤試料採取装置1のパイプ部5内に取り込まれて採取されている地盤試料Sを地上に引き上げて、その地盤試料Sに基づき、掘削不能となった地盤の地質などを調査することができる。そして、その地盤試料Sの調査結果に基づき、その地盤に適したオーガヘッドを選択することや好適な掘削手法について検討することができる。
【0035】
このように、本発明に係る地盤試料採取装置1は、掘削装置100のオーガヘッド50の先端部に装着することができるので、オーガヘッド50を回転させて、所定の掘削地点の地盤を掘削する掘削装置100で地盤を掘削する過程において、そのオーガヘッド50による地盤の掘削が不能となった場合に、そのオーガヘッド50に地盤試料採取装置1を取り付けて、掘削不能となった地盤の地盤試料Sを地盤試料採取装置1によって採取することができる。
つまり、掘削中の掘削装置100を移動させることなく、また、ボーリング調査用の専用装置を掘削地点に設置することなく、その掘削地点の地盤の地盤試料Sを採取することができるので、この地盤試料採取装置1を使用することによって、より短時間に低コストで地盤調査を行うことができる。
【0036】
また、地盤試料採取装置1によって、実際に掘削中である掘削地点における地盤の地盤試料Sを採取することができるので、その掘削地点のより正確な地盤情報を得ることができる。そして、その正確な地盤情報に基づいて、その掘削地点に適したオーガヘッドや掘削手法を検討することができ、また、その掘削地点における掘削コストを速やかに算出することが可能になる。
【0037】
特に、地盤試料採取装置1は、オーガヘッド50が地盤を掘削する正方向に回転する際には取込口2aを蓋部5により閉蓋し、また、オーガヘッド50が逆方向に回転する際に取込口2aの蓋部5を開蓋することができるので、所望する掘削位置(掘削深度)まではオーガヘッド50を正回転させて取込口2aを閉蓋し、掘削不能となった地盤にオーガヘッド50が到達し、地盤試料採取装置1がその地盤に突き当たった状態でオーガヘッド50を逆回転させることによって取込口2aを開蓋して、再度オーガヘッド50を正回転させて切削チップ3によって地盤を切削し、その地盤の地盤試料Sをパイプ部2内に取り込んで採取することができる。
よって、地盤試料採取装置1は、地盤試料Sを採取すべき掘削位置(掘削深度)以外の地盤サンプルをパイプ部2に取り込んで採取してしまうことなく、所望する掘削位置(掘削深度)の地盤試料Sをより好適に採取することができる。
従って、その掘削地点におけるより正確な地盤情報を得ることができる。
【0038】
従って、この地盤試料採取装置1を用いる地盤試料採取方法によって、掘削中の地盤の地盤試料Sを好適に採取することができ、掘削作業を良好に進めることが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図10に示すように、切削チップ3により切削されて刳り貫かれた地盤試料Sがパイプ部2内に収容される際に、その地盤試料Sや地盤試料Sにより押し上げられる蓋部5が通過する際にはパイプ部5の円筒壁面中に没入され(図10(a)参照)、蓋部5や地盤試料Sが通過した後に図示しないバネ部材などにより押し戻されて所定位置に復元される(図10(b)参照)サンプル保持部7を地盤試料採取装置1aのパイプ部2に備えるようにしてもよい。
【0040】
サンプル保持部7は、地盤試料採取装置1aのパイプ部2に取り込んだ地盤試料Sの下端を支持し保持することが可能であり、パイプ部2内に取り込んだ地盤試料Sが脱落してしまうことを防ぐことができる。
このサンプル保持部7をパイプ部2に備えることにより、地盤試料採取装置1aによって地盤試料Sをより確実に採取することが可能になる。
なお、このサンプル保持部7に関する技術は、周知のボーリング装置におけるサンプルコア脱落防止機構などに用いられているので、ここでは詳述しない。
【0041】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、三点支持の掘削機器などに、本発明の地盤試料採取装置を装着して使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る地盤試料採取装置を示す側面図である。
【図2】本発明に係る地盤試料採取装置を示す下面図である。
【図3】地盤試料採取装置の一部を破断して示す側面図である。
【図4】掘削装置のオーガヘッド(a)と、地盤試料採取装置を装着したオーガヘッド(b)を示す側面図である。
【図5】地盤試料採取装置の蓋部を示す説明図であり、蓋部が取込口を閉蓋している状態(a)、蓋部の係合部とストッパーの係合が解除された状態(b)、蓋部が取込口を開蓋した状態(c)、を示している。
【図6】掘削装置と杭圧入引抜機を示す説明図である。
【図7】掘削装置のオーガヘッドが地盤を掘削する状態を示す説明図である。
【図8】オーガヘッドに装着された地盤試料採取装置が地盤試料を採取する状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係る地盤試料採取装置内に地盤試料を採取した状態を示す一部破断側面図である。
【図10】本発明の変形例である地盤試料採取装置内に地盤試料を採取する状態を示す一部破断側面図(a)と、その地盤試料採取装置内に地盤試料を採取した状態を示す一部破断側面図(b)である。
【符号の説明】
【0043】
1、1a 地盤試料採取装置
2 パイプ部(試料採取部)
2a 取込口
3 切削チップ
4 接続部
5 蓋部
5a 円板部
5b 係合部
5c 当接部
5d 突部
5e 係合溝
6 ストッパー
6a 第1ストッパー
6b 第2ストッパー
6c 溝部
7 サンプル保持部
10 オーガケーシング
20 オーガスクリュー
30 オーガモータ
40 油圧シリンダ
50 オーガヘッド(掘削ヘッド)
60 掘削ビット
60a 接続部
100 掘削装置
200 杭圧入引抜機
201 ベース部
202 マスト部
203 リール部
203a 油圧ホース
204 チャック装置
S 地盤試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ヘッドを回転させて地盤を掘削する掘削装置における前記掘削ヘッドに着脱可能に備えられる地盤試料採取装置であって、
地盤を切削する切削チップと、
地盤試料を取り込む試料採取部と、
を備えることを特徴とする地盤試料採取装置。
【請求項2】
前記試料採取部が前記地盤試料を取り込む取込口には、前記地盤試料を採取する際に、前記取込口を開蓋する蓋部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤試料採取装置。
【請求項3】
前記蓋部は、前記掘削ヘッドが地盤を掘削する正方向に回転する際には前記取込口を閉蓋し、前記掘削ヘッドが逆方向に回転する際に前記取込口を開蓋することを特徴とする請求項2に記載の地盤試料採取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の地盤試料採取装置を用いる地盤試料採取方法であって、
掘削ヘッドを回転させて地盤を掘削する掘削装置で地盤を掘削する過程において、前記地盤の試料採取が必要となった際に、前記掘削ヘッドに前記地盤試料採取装置を取り付けて、目的深度の地盤試料を前記地盤試料採取装置によって採取することを特徴とする地盤試料採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−231625(P2007−231625A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55003(P2006−55003)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】