説明

地震情報配信システムとその移動通信端末及び地震情報配信装置

【課題】地震速報のリアルタイム性を高め、かつユーザにとって有効性の高い地震情報を提供する。
【解決手段】地震監視サーバDSVから緊急地震情報が送信されたとき、地震情報配信サーバSSV1においてこの緊急地震情報をフォーマット変換してショートメッセージにより移動通信端末MS1〜MSkへ送信する。一方移動通信端末MS1〜MSkでは、上記地震情報配信サーバSSV1から送信されたショートメッセージを受信すると、先ずこの受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として表示する。次に、移動通信端末の現在位置を検出し、この現在位置と上記緊急地震情報とをもとに、上記現在位置における震度階、主要動が到来するまでの余裕時間及び主要動の収束時間をそれぞれ計算により予測し、この予測結果を第2報及び第3報として表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震速報を移動通信端末に向け配信する地震情報配信システムと、このシステムで使用される移動通信端末及び地震情報配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震工学技術の進歩と共に、情報通信技術及びコンピュータ技術の急速な発展は著しい。これらの技術を総合的に利用することによって、地震波の発生を早期に捉え、地震の主要動が到達する前に、地震速報をユーザ端末に伝達し報知しようとする緊急地震速報技術が実用化段階に入っている。
【0003】
地震波は、大きく分けて比較的速く伝搬するP波(プライマリ波;縦波)と、遅れて伝搬されて主要な破壊現象を引き起こすS波(セカンダリ波;横波)とがあり、前者による振動を初期微動、後者による振動を主要動という。地震による破壊は主として後者の主要動によって発生する。
【0004】
緊急地震速報技術は、P波を観測し、その諸特性を分析することにより地震の規模や震源位置を推定し、推定した地震の規模と震源位置に関する地震情報を、地震の主要動を引き起こすS波が到達する際にリアルタイムで各方面に伝達することにより地震の主要動による物的、人的被害を最小限に止めようとするものである。例えば、東海地震が発生したと仮定した場合に、東京に主要動が到達する約50秒前に東京に緊急地震速報を伝達することが可能である。
【0005】
このような緊急地震速報技術は、我が国においてはこれまで、独立行政法人防災科学技術研究所(以後、防災科研と呼称する)や気象庁を中心として開発されてきており、両機関はそれぞれ独自の全国規模の地震観測網を保有している。防災科研が提供するリアルタイムの地震情報は、2004年1月までは「リアルタイム地震情報」と呼ばれており、防災科研が有する高感度地震計等による地震観測網から発生される信号に基づいて生成される。一方、気象庁が提供するリアルタイムの地震情報は、2004年1月までは「ナウキャスト地震情報」と呼ばれており、気象庁が有する多機能型地震計等による地震観測網から発生される信号に基づいて生成される。防災科研の「リアルタイム地震情報」と気象庁の「ナウキャスト地震情報」は、2004年2月からは「緊急地震情報」という呼称に統一された。
【0006】
他方、地震による災害を最小限に止めるためには、地震情報の高精度化や地震検出の高速度化だけでは足りず、検出された地震情報を災害の発生が予想される地域の人々に迅速かつ正確に配信するシステムの研究、開発及び普及が不可欠である。例えば、最近普及がめざましい自動車電話や携帯電話機等の移動通信端末を利用し、ユーザ登録された移動通信端末に対し緊急地震情報を配信するシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2001−307265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、地震速報にはリアルタイム性が要求されるにもかかわらず、従来提案されている地震情報配信システムはリアルタイム性が乏しく、緊急地震情報が地震波の主要動到達後にユーザ端末に届く場合が多い。また、配信される緊急地震情報には、一般に地震発生時刻、震源位置及びマグニチュード等の基本的な情報要素しか含まれていない。このため、ユーザ端末では配信された緊急地震情報が十分に生かされない。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、地震速報のリアルタイム性を高め、かつユーザにとって有効性の高い地震情報を提供できるようにした地震情報配信システムとその移動通信端末及び地震情報配信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1の発明は、地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対し、通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、この地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備する地震情報配信システムにあって、
上記地震情報配信装置に、上記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信する手段と、上記受信された緊急地震情報をショートメッセージにより伝送可能なフォーマットに変換し、変換された緊急地震速報をショートメッセージに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段とを備える。
【0010】
また上記移動通信端末には、上記地震情報配信装置から送信されたショートメッセージを受信する手段と、この受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として当該移動通信端末のユーザに報知する手段と、上記移動通信端末の現在位置を検出する手段と、この検出された現在位置と上記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに地震の主要動が上記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、この予測された到達時刻又は到達余裕時間を第2報として上記ユーザに報知する手段とを備えるように構成したものである。
【0011】
したがって第1の発明によれば、地震観測網から緊急地震情報が発生されると、先ずこの緊急地震情報が地震情報配信装置から、通信事業者が個々に提供するショートメッセージサービス(Short Message Service;SMS)を利用して移動通信端末へ配信され、第1報としてユーザに報知される。このため、例えば地震情報配信装置と移動通信端末との間に通信リンクが確立された後に緊急地震情報を伝送する場合や、インターネットを経由する電子メールを利用して緊急地震情報を配信する場合に比べ、緊急地震情報を少ない遅延時間で配信することが可能となる。
【0012】
また、上記第1報の報知後に、移動通信端末において、自端末の現在位置と受信された緊急地震情報とをもとに地震の主要動が当該移動通信端末の現在位置に到達するまでの余裕時間が予測され、この予測された到達余裕時間が第2報としてユーザに報知される。このため、ユーザは上記第2報により自己が存在する位置に主要動が到達するまでの余裕時間を知ることができ、これにより必要に応じて消火や机の下への避難といった直前の回避行動を取ることが可能となる。
【0013】
すなわち、第1の発明では、先ず緊急地震情報が第1報として報知され、この第1報の報知開始後に主要動の到達余裕時間の予測計算が行われてその結果が第2報として報知される。このため、例えば到達余裕時間の算出終了後に、緊急地震情報と当該到達余裕時間とをまとめて報知する場合に比べ、緊急地震情報の報知遅延を最小限度に止め、これによりリアルタイム性を保持することが可能となる。
【0014】
また、第1の発明では、上記到達余裕時間の予測計算が移動通信端末で行われる。このため、地震情報配信装置は第1報である緊急地震情報をショートメッセージにより伝送するだけでよい。換言すれば、地震情報配信装置に特別な処理機能を新たに設けることなく、既存のメールサーバの機能のままこの発明を実施できる利点がある。
【0015】
一方、上記目的を達成するために第2の発明は、地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対して通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、この地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備する地震情報配信システムにあって、
上記地震情報配信装置に、上記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信する手段と、この受信された緊急地震情報をショートメッセージにより伝送可能なフォーマットに変換してこの変換された緊急地震速報をショートメッセージに挿入して上記移動通信端末へ送信する手段と、上記移動通信端末の現在位置を表す情報を移動通信ネットワークから取得する手段と、この取得された移動通信端末の現在位置と上記受信された緊急地震情報とをもとに地震の主要動が上記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、この予測された到達時刻又は到達余裕時間を電子メールに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段とを備える。
【0016】
また、上記移動通信端末には、上記地震情報配信装置から送信されたショートメッセージを受信する手段と、この受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として当該移動通信端末のユーザに報知する手段と、上記地震情報配信装置から送信された電子メールを受信する手段と、この受信された電子メールに挿入された到達時刻又は到達余裕時間を第2報としてユーザに報知する手段を備えるようにしたものである。
【0017】
したがって第2の発明によれば、上記第1の発明と同様に、地震観測網から緊急地震情報が発生された時点で、この緊急地震情報が先ずショートメッセージにより伝送されてこれが第1報としてユーザに報知される。このため、緊急地震情報を配信するために、地震情報配信装置と移動通信端末との間に通信リンクを確立したり、電子メールを使用する場合に比べ、緊急地震情報を少ない遅延時間で移動通信端末に配信することが可能となる。
【0018】
また、上記ショートメッセージの送信後に、地震情報配信装置において地震の主要動が配信先の移動通信端末に到達するまでの余裕時間が予測され、この到達余裕時間が電子メールにより移動通信端末に配信されて、これが第2報としてユーザに報知される。このため、ユーザは上記第2報により自己が存在する位置に主要動が到達するまでの余裕時間を知ることができ、これにより必要に応じて消火や机の下への避難といった直前の回避行動を取ることが可能となる。
【0019】
すなわち第2の発明では、緊急地震情報の到来に応じ先ずショートメッセージによる緊急地震情報の配信が行われ、この配信後に主要動の到達余裕時間の予測計算が行われて、その計算結果が電子メールにより配信される。このため、例えば緊急地震情報と到達余裕時間の算出結果をまとめて配信する場合に比べ、緊急地震情報の報知遅延を最小限度に止め、これによりリアルタイム性を確保することが可能となる。
【0020】
しかも、上記到達余裕時間の予測計算は地震情報配信装置で行われる。このため移動通信端末は、地震情報配信装置から配信されるショートメッセージ及び電子メールの受信機能さえ備えていればよい。すなわち、移動通信端末には特別な処理機能を新たに設ける必要がなく既存の構成のままこの発明を実施できる利点がある。
【0021】
上記第1及び第2の発明は、次のような各種構成を備えることも特徴とする。
第1の構成は、移動通信端末に対し近距離無線インタフェースを介して外部表示機器が接続可能な場合に、移動通信端末において、上記第1報及び第2報のうちの少なくとも第1報を上記近距離無線インタフェースを介して上記外部表示機器に転送し表示させるようにしたものである。このようにすると、例えば外部表示機器として腕時計を想定すると、ユーザは移動通信端末を鞄等に収容していたり、移動通信端末を充電器にセットしている場合でも、第1報を受信し確認することが可能となる。
【0022】
第2の構成は、緊急地震情報をもとに地震の主要動の収束時刻又は主要動が収束するまでに要する収束時間を予測し、この予測された収束時刻又は収束時間を、先に述べた到達余裕時間を報知する第2報に続き第3報としてユーザに報知するようにしたものである。このようにすると、ユーザは主要動が到達した後に当該主要動が収束するまでの時間を知ることが可能となり、これによりユーザの不安を軽減することが可能となる。
【0023】
第3の構成は、移動通信端末の現在位置と緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末の現在位置における震度階を予測し、この予測された震度階を第2報及び第3報の少なくとも一方に含めてユーザに報知するようにしたものである。このようにすると、ユーザは地震の震度階により地震の大きさを把握することが可能となる。
【0024】
第4の構成は、上記震度階を報知する際に、震度階と当該震度階を形状により表す複数種のシンボル図形とを対応付けて記憶するメモリを設け、予測された震度階に対応する形状のシンボル図形を上記メモリから選択し、この選択されたシンボル図形を点滅又は点灯表示するものである。このようにすると、震度階が形状の異なるシンボル図形を用いて表示されることになり、これによりユーザは震度階を一目で簡単かつ正確に把握することが可能となる。
【0025】
第5の構成は、上記震度階を予測する際に、ユーザが建物内に存在する場合に当該建物内におけるユーザの存在階数を検出し、この検出された存在階数に応じて上記震度階の予測値を補正するものである。一般に、ビル等の建物ではその階層により震度階が異なる。したがって、上記したようにユーザが存在する階層を検出して震度階の予測値を補正することで、震度階をより正確に予測することができる。
【発明の効果】
【0026】
要するに上記第1及び第2の発明では、地震観測網から緊急地震情報が発生されると、先ずこの緊急地震情報を地震情報配信装置からショートメッセージにより移動通信端末へ配信してこれを第1報としてユーザに報知する。そして、続いて移動通信端末又は地震情報配信装置において、移動通信端末の現在位置と上記緊急地震情報とをもとに地震の主要動が移動通信端末の現在位置に到達するまでの余裕時間を予測し、この予測された到達余裕時間を第2報としてユーザに報知するようにしている。
【0027】
したがってこれらの発明によれば、地震速報のリアルタイム性を高め、かつユーザにとって有効性の高い地震情報を提供することが可能な地震情報配信システムとその移動通信端末及び地震情報配信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明に係わるいくつかの実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
この発明の第1の実施形態は、地震情報配信サーバにおいて、地震観測網から緊急地震情報が送信されたとき、この緊急地震情報をフォーマット変換してショートメッセージにより移動通信端末へ送信する。一方移動通信端末においては、上記地震情報配信サーバから送信されたショートメッセージを受信すると、先ずこの受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として移動通信端末のユーザに報知する。次に、移動通信端末の現在位置を検出して、この検出された現在位置と上記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに、上記現在位置における震度階を予測する。またそれと共に、地震の主要動が上記移動通信端末の現在位置に到達するまでの余裕時間及び主要動が収束するまでの収束時間をそれぞれ予測し、この予測された震度階、到達余裕時間及び収束時間を第2報及び第3報としてユーザに順次報知するようにしたものである。
【0029】
図1は、この発明に係わる地震情報配信システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。このシステムは、地震観測網に対し通信ネットワークNWを介して接続される地震情報配信サーバSSV1と、それぞれユーザが所持する複数の移動通信端末MS1〜MSkと、同じくユーザが常に装着する腕時計WT1,WT2とを備えている。
【0030】
地震観測網は、観測地域に分散配置された複数の地震計D1〜Dnと、地震監視サーバDSVとから構成される。地震計D1〜Dnはそれぞれ、地震波を検出するとその検出信号を地震監視サーバDSVへ送信する。地震監視サーバDSVは、上記地震計D1〜Dnから送信された検出信号をもとに緊急地震情報を生成し、この生成された緊急地震情報を通信ネットワークNWを介して地震情報配信サーバSSV1へ送信する。上記緊急地震情報には、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報が含まれる。震源位置は、緯度、経度及び深さにより表され、地震の規模は地震マグニチュードにより表される。
【0031】
通信ネットワークNWは、有線通信ネットワークと移動通信ネットワークとから構成される。有線通信ネットワークには、PSTN(Public Switched Telephone Network)やISDN(Integrated Services Digital Network)等の公衆回線網に加え、インターネット等のコンピュータネットワークや通信事業者の専用線やLAN(Local Area Network)等も含まれる。
【0032】
移動通信ネットワークには、PDC(Personal Digital Cellular)網やIMT2000(International Mobile Telecommunication 2000)網等の携帯電話網と、PHS(Personal Handyphone System)(登録商標)網、無線LAN、業務用無線システムとして使用されるMCA(Multi Channel Access)システム等が含まれる。なお、通信ネットワークNWは、IP(Internet Protocol)網も含む。
【0033】
移動通信ネットワークは、移動通信ネットワーク全体を統括する移動通信制御局と、サービスエリアに分散配置された複数の基地局BS1〜BSmとを備える。上記移動通信端末MS1〜MSkは、上記基地局BS1〜BSmのいずれかに無線回線を介して接続され、この基地局からさらに移動通信制御局及び有線通信ネットワークを介して上記地震情報配信サーバSSV1に接続される。
【0034】
移動通信端末MS1〜MSkと腕時計WT1,WT2との間は、同一ユーザ同士で、BT(Bluetooth)(登録商標)やUWB(Ultra Wide Band)等の近距離無線データ通信規格を採用した無線インタフェースを介して接続される。
【0035】
ところで、上記地震情報配信サーバSSV1は次のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。すなわち、地震情報配信サーバSSV1は中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)11を備える。このCPU11には、バス12を介してプログラムメモリ13及びデータメモリ14が接続され、さらに通信インタフェース15がそれぞれ接続されている。
【0036】
通信インタフェース(通信I/F)15は、CPU11の制御の下、上記地震監視サーバDSV及び移動通信端末MS1〜MSkとの間で、通信ネットワークNWにより規定される通信プロトコルに従い通信を行う。通信プロトコルとしては、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)が使用される。
【0037】
データメモリ14には、ユーザ情報データベース14aと、地震情報蓄積データベース14bが設けられている。地震情報蓄積データベース14bには、地震監視サーバDSVから送られた緊急地震情報の受信履歴と、ユーザに対する上記緊急地震情報の配信履歴が記憶される。
【0038】
ユーザ情報データベース14aには、地震情報配信サービスの利用を希望するユーザの管理情報が記憶される。このユーザ管理情報は、例えば図3に示すように、ユーザ識別情報(ユーザID)と、ユーザの携帯電話番号兼ショートメッセージアドレスと、配信申し込みの有無と、ユーザの現在位置を表す位置情報及びエリア情報とから構成される。ユーザの位置情報は、例えば緯度経度により表され、移動通信端末MS1〜MSkから定期的に取得して更新される。エリア情報としては、地震速報の配信サービスエリアを複数のエリアに分割し、これらのうちユーザが存在する位置を含むエリア番号が記憶される。一つのエリアの大きさは、例えば地震波の伝搬速度をもとに、ほぼ同一の影響を受けると推定される大きさに設定される。
【0039】
さらに、ユーザ情報データベース14aには、予測震度階、揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻の計算結果も記憶される。この予測震度階、揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻は、緊急地震情報の配信終了後に、配信対象のユーザが存在するエリアについて計算される。この計算は、プログラムメモリ13に格納された地震詳細情報計算プログラム(図示せず)によりなされる。
【0040】
プログラムメモリ13には、この発明に係わる制御機能を実現するためのアプリケーションプログラムとして、地震情報受信制御プログラム13aと、地震情報配信制御プログラム13bが格納される。地震情報受信制御プログラム13aは、上記地震監視サーバDSVからの緊急地震情報の到来をリアルタイムに監視し、通信インタフェース15により受信された緊急地震情報を上記地震情報蓄積データベース14bに格納する。
【0041】
地震情報配信制御プログラム13bは、上記緊急地震情報が受信されたとき、この緊急地震情報に含まれる地震発生位置及び地震マグニチュードをもとに配信対象エリアを設定し、この設定された配信対象エリアに存在するユーザを上記ユーザ情報データベース14aから選択する。また、それと並行して上記受信された緊急地震情報をショートメッセージに対応するフォーマットに変換し、このフォーマット変換された緊急地震情報を挿入したショートメッセージを生成する。そして、このショートメッセージを上記選択されたユーザの移動通信端末に向け送信する。
【0042】
一方、移動通信端末MS1〜MSkは次のように構成される。図4はその機能構成を示すブロック図である。
同図において、図示しない基地局から送信された無線信号は、アンテナ21で受信されたのちアンテナ共用器(DUP)22を介して受信回路(RX)23に入力される。受信回路23は、上記受信された無線信号を周波数シンセサイザ(SYN)24から出力された局部発振信号とミキシングして中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)する。そして、このダウンコンバートされた中間周波信号を直交復調して受信ベースバンド信号を出力する。なお、上記周波数シンセサイザ24から発生される局部発振信号の周波数は、制御部32から出力される制御信号SYCによって指示される。
【0043】
上記受信ベースバンド信号はCDMA信号処理部26に入力される。CDMA信号処理部26はRAKE受信機を備える。RAKE受信機では、上記受信ベースバンド信号に含まれる複数のパスがそれぞれ拡散符号により逆拡散処理される。そして、この逆拡散処理された各パスの信号が位相を調停されたのち合成される。かくして、所定の伝送フォーマットの受信パケットデータが得られる。この受信パケットデータは圧縮伸長処理部(以後コンパンダと称する)27に入力される。
【0044】
コンパンダ27は、上記CDMA信号処理部26から出力された受信パケットデータを多重分離部によりメディアごとに分離する。そして、この分離されたメディアごとのデータに対しそれぞれ復号処理を行う。例えば、受信パケットデータにオーディオデータが含まれていれば、このオーディオデータをスピーチコーデックにより復号する。また受信パケットデータにビデオデータが含まれていれば、このビデオデータをビデオコーデックにより復号する。
【0045】
上記復号処理により得られたディジタルオーディオ信号はPCM符号処理部(以後PCMコーデックと称する)28に供給される。PCMコーデック28は、コンパンダ27から出力されたディジタルオーディオ信号をPCM復号してアナログオーディオ信号を出力する。このアナログオーディオ信号は、受話増幅器29にて増幅されたのちスピーカ30より出力される。
【0046】
上記コンパンダ27のビデオコーデックにより復号されたディジタルビデオ信号は、制御部32に入力される。制御部32は、上記コンパンダ27から出力されたディジタルビデオ信号を、ビデオRAMを介してディスプレイ35に表示する。ディスプレイ35はLCD(Liquid Crystal Devise)により構成される。なお、制御部32は、受信されたビデオデータばかりでなく、図示しないカメラにより撮像されたビデオデータについてもビデオRAMを介してディスプレイ35に表示する。
【0047】
また上記コンパンダ27は、受信パケットデータがショートメッセージ及び電子メールの場合には、このショートメッセージ及び電子メールを制御部32へ出力する。制御部32は、上記ショートメッセージ及び電子メールを記憶部36に記憶する。そして、入力部34においてユーザが行った表示操作に応じて、上記記憶部36から上記ショートメッセージ及び電子メールを読み出してディスプレイ35に表示する。なお、ディスプレイ35には、装置の動作モードを表す情報や、着信報知情報、バッテリ37の残量又は充電状態を表す情報、現在時刻を表す時計等も表示される。
【0048】
一方、マイクロホン31に入力された話者の音声信号は、送話増幅器33により適正レベルまで増幅されたのち、PCMコーデック28にてPCM符号化処理が施され、ディジタルオーディオ信号となってコンパンダ27に入力される。また、図示しないカメラから出力されるビデオ信号は、制御部32によりディジタル化されてコンパンダ27に入力される。なお、制御部32において作成された電子メールも、制御部32からコンパンダ27に入力される。
【0049】
コンパンダ27は、PCMコーデック28から出力されたディジタルオーディオ信号より入力音声のエネルギ量を検出し、この検出結果に基づいて送信データレートを決定する。そして、上記ディジタルオーディオ信号を上記送信データレートに応じたフォーマットの信号に符号化し、これによりオーディオデータを生成する。また、制御部32から出力されたディジタルビデオ信号を符号化してビデオデータを生成する。そして、これらのオーディオデータ及びビデオデータを多重分離部で所定の伝送フォーマットに従い多重化して送信パケットデータを生成し、この送信パケットデータをCDMA信号処理部26へ出力する。なお、制御部32から電子メールが出力された場合にも、この電子メールをパケットデータに変換する。
【0050】
CDMA信号処理部26は、上記コンパンダ27から出力された送信パケットデータに対し、送信チャネルに割り当てられた拡散符号を用いてスペクトラム拡散処理を施す。そして、その出力信号を送信回路(TX)25へ出力する。送信回路25は、上記スペクトラム拡散された信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式等のディジタル変調方式を使用して変調する。そして、この変調により生成された送信信号を、周波数シンセサイザ24から発生される局部発振信号と合成して無線信号に周波数変換する。そして、制御部32により指示される送信電力レベルとなるように上記無線信号を高周波増幅する。この増幅された無線信号は、アンテナ共用器22を介してアンテナ21に供給され、このアンテナ21から基地局へ向けて送信される。
【0051】
入力部34には、ダイヤルキーと、複数の機能キーが設けられている。機能キーは、送信キー、終了キー、電源キー、音量調節キー、モード指定キー及びカーソルキーを含む。38は電源回路であり、バッテリ37の出力をもとに所定の動作電源電圧Vccを生成して各回路部に供給する。なお、バッテリ37は図示しない充電回路により充電される。
【0052】
また、この移動通信端末MS1〜MSkはGPS受信機39を備えている。GPS受信機39は、制御部32の指示に従い、複数のGPS衛星から送信されたGPS信号をそれぞれ受信する。そして、この受信された各GPS信号を、自端末の位置算出処理のために制御部32へ供給する。
【0053】
さらに、この移動通信端末MS1〜MSkは、ブルーツゥース(Bluetooth;BT)(登録商標)インタフェース回路(BT I/F)40を備えている。BT I/F40は、制御部32の制御の下で、同一ユーザの腕時計(例えばWT1)との間で無線データの送受信を行う。
【0054】
ところで、制御部32は、例えばマイクロコンピュータを備える。そして、この発明に係わる制御機能として、地震情報受信制御機能32aと、位置情報検出制御機能32bと、地震動揺時間計算機能32cと、地震速報表示制御機能32dと、地震速報転送制御機能32eとを備えている。
【0055】
地震情報受信制御機能32aは、前記地震情報配信サーバSSV1から送信されるショートメッセージを受信し、この受信されたショートメッセージから緊急地震情報を抽出する。
位置情報検出制御機能32bは、GPS受信機39により受信されたGPS信号をもとに、定期的に当該移動通信端末の現在位置(緯度経度)を計算する。
【0056】
地震動揺時間計算機能32cは、上記検出された当該移動通信端末の現在位置と、上記ショートメッセージから抽出された緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末の現在位置における震度階を予測計算する。また、上記検出された移動通信端末の現在位置と、上記ショートメッセージから抽出した緊急地震情報とをもとに、地震の主要動が当該移動通信端末の現在位置に到達するまでの余裕時間を予測計算する。さらに、上記緊急地震情報をもとに、上記主要動が収束するまでに要する収束時間を予測計算する。
【0057】
地震速報表示制御機能32dは、上記ショートメッセージにより緊急地震情報が受信されたとき、この受信された緊急地震情報を第1報として表示部35に表示する。またこの第1報に続いて、上記地震動揺時間計算機能32cにより予測計算された震度階及び主要動の到達余裕時間を第2報として表示部35に表示する。さらに、上記到達余裕時間経過後、つまり主要動が到達した後に、上記予測計算された地震収束時間を上記到達余裕時間に代えて上記震度階と共に表示部35に表示する。
【0058】
地震速報転送制御機能32eは、上記ショートメッセージにより緊急地震情報が受信されたとき、腕時計用の通知メッセージを生成する。そして、この生成された通知メッセージをBT I/F40から腕時計WT1へ送信する。腕時計用の通知メッセージとしては、例えば腕時計にアイコンを点滅表示させるか又は振動を発生させる制御メッセージが用いられる。
【0059】
次に、以上のように構成されたシステムによる地震情報配信動作を説明する。図5はその説明に使用するシーケンス図である。
先ずシステムが提供する地震情報配信サービスを利用する場合、ユーザは自身の移動通信端末MS1〜MSkから地震情報配信サーバSSV1に対しアクセスし、利用登録のための入力処理を行う。この入力処理では、ユーザの氏名等の属性情報に加え、ショートメッセージアドレスが入力される。
【0060】
地震情報配信サーバSSV1は、所定の入力を受け付けると、ユーザIDを発行し、このユーザIDに対応付けて上記入力されたショートメッセージアドレス及び属性情報をユーザ情報データベース14aに格納する。またこの登録処理の過程で地震情報配信サーバSSV1は、登録要求元の移動通信端末MS1〜MSkに対し位置の取得要求を送る。この位置の取得要求を受け取ると移動通信端末MS1〜MSkは、GPS受信機39により受信したGPS信号をもとに自端末の現在位置(緯度経度)を算出し、この算出された現在位置(緯度経度)を地震情報配信サーバSSV1へ返送する。
【0061】
地震情報配信サーバSSV1は、上記移動通信端末MS1〜MSkから返送された現在位置(緯度経度)を当該ユーザIDに対応付けてユーザ情報データベース14aに格納する。またそれと共に、予め記憶してあるエリアマップから、上記格納された現在位置(緯度経度)を含むエリアを選択し、この選択したエリアの番号を当該ユーザIDに対応付けてユーザ情報データベース14aに格納する。
【0062】
かくしてユーザの利用登録処理がなされる。なお、上記利用登録されたユーザの現在位置は、地震情報配信サーバSSV1から移動通信端末MS1〜MSkに対し定期的に位置取得要求を送信し、移動通信端末MS1〜MSkがこの取得要求に応じて最新の現在位置を返送することにより更新される。
【0063】
さて、この状態である地震監視区域で地震が発生したとする。そうすると、当該地震監視区域に設置された各地震計D1〜Dnから地震検出信号が発信され、これらの地震検出信号は地震監視サーバDSVで収集される。地震監視サーバDSVは、図5に示すようにステップ5aで、上記収集された複数の地震検出信号をもとに地震発生時刻、地震発生位置(緯度、経度、深さ)、及び地震マグニチュードを計算し、その計算値を緊急地震情報に含めて地震情報配信サーバSSV1へ向け送信する。
【0064】
地震情報配信サーバSSV1は、地震監視サーバDSVからの緊急地震情報の到来を常時監視している。この状態で緊急地震情報が到来すると、ステップ5bにおいて、上記緊急地震情報に含まれる地震発生位置及び地震マグニチュードをもとに配信対象エリアを設定し、この設定された配信対象エリアに存在するユーザをユーザ情報データベース14aから選択する。なお、この配信対象ユーザの選択は、ユーザ情報データベース14aに記憶されたエリア情報をもとにエリア単位で行われる。このため、緯度経度をもとに選択する場合に比べ、配信対象のユーザの選択をきわめて短時間に行うことが可能となる。
【0065】
また、それと共に地震情報配信サーバSSV1は、上記受信された緊急地震情報をショートメッセージに対応するフォーマットに変換する。例えば、緊急地震情報に含まれる情報要素のデータ量がショートメッセージにより送信可能なデータ量を超えている場合には、緊急地震情報に含まれる各情報要素のデータを切り上げ、切り捨て又は四捨五入して情報量を減らす。また、フォント等が異なる場合にはフォント変換等も行われる。
【0066】
そして、上記変換された緊急地震情報を挿入したショートメッセージを作成し、このショートメッセージを上記選択されたユーザの移動通信端末(例えばMS1)に向け送信する。ショートメッセージは、通信事業者固有のプロトコルとネットワークを使用して伝送される簡易メールであり、作成指示から送信に至るまでに要する時間が短く、かつ伝送所要時間も短い。このため、インターネットを経由して伝送される電子メールを使用する場合に比べ、少ない遅延時間で短時間に配信することが可能である。
【0067】
移動通信端末MS1は、地震情報配信サーバSSV1からショートメッセージが到来すると、図5に示すように先ずステップ5cにおいて、鳴音又は振動を発生させると共に、上記受信されたショートメッセージの緊急地震情報を第1報として表示部35に表示する。またそれと共に、ステップ5dにおいて、上記緊急地震情報のショートメッセージを受信した旨の緊急通知メッセージを生成し、このメッセージをBT I/F40から同一ユーザの腕時計WT1に向け送信する。腕時計WT1は、上記緊急通知メッセージを受信すると鳴音又は振動を発生し、さらに緊急メッセージ受信用のアイコンを点滅させる。したがって、ユーザは仮に移動通信端末MS1を所持していなくても、緊急地震情報の到来を認識することが可能となる。
【0068】
なお、上記移動通信端末MS1及び腕時計WT1において発生する鳴音又は振動を、通常のショートメッセージ及び電子メールを受信した場合に使用するものと異なるように設定するとよい。受信メールが、緊急地震情報を含むショートメッセージであるか、通常のショートメッセージ又は電子メールであるかは、例えば送信元アドレスをもとに判定できる。
【0069】
上記第1報の報知を終了すると移動通信端末MS1は、続いてステップ5eにより自端末の現在位置を検出する。この現在位置の検出は、この時点で受信されたGPS信号をもとに算出してもよいが、記憶部36に記憶されている最も近い過去に検出された現在位置を使用してもよい。これにより現在位置の検出に要する時間を短縮できる。
【0070】
次に移動通信端末MS1は、上記検出された当該移動通信端末の現在位置と、上記ショートメッセージから抽出された緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末MS1の現在位置における震度階を計算により予測する。予測震度階は、地震の強度を示す地震マグニチュードをもとに、緊急地震情報に含まれる震源位置と、移動通信端末MS1の現在位置との間の距離Rに応じた距離減衰を考慮することにより算出できる。
【0071】
またそれと共に移動通信端末MS1は、ステップ5fにおいて、上記検出された移動通信端末の現在位置と、上記ショートメッセージから抽出した緊急地震情報とをもとに、地震の主要動(S波)が当該移動通信端末MS1の現在位置に到達するまでの余裕時間を計算により予測する。
【0072】
すなわち、地震の主要動(S波)の伝搬速度Vsは既知であり、約3.5km/秒である。一方、震源位置から移動通信端末MS1までの距離Rは、上記したように移動通信端末MS1の現在位置と震源位置とから算出することができる。したがって、これらの値から、震源から移動通信端末MS1までの主要動(S波)の伝搬時間Tsは、
Ts=Vs/R
として計算することができる。そして、この主要動(S波)の伝搬時間Tsが算出できれば、上記受信された緊急地震情報に含まれる地震発生時刻t0 と、現在時刻tとを用いて、主要動(S波)が到達するまでの余裕時間Tは、
T=(t0 +Ts)−t
より算出することができる。なお、主要動(S波)が移動通信端末MS1の現在位置に到達するまでの余裕時間Tに代えて、主要動(S波)が移動通信端末MS1の現在位置に到達する絶対時刻(t0 +Ts)を算出してもよい。
【0073】
そうして予測震度階と余裕時間が算出されると、移動通信端末MS1は続いてステップ5gにより、上記算出された震度階及び余裕時間を含む地震詳細情報を生成し、この生成された地震詳細情報を第2報として表示部35に表示する。図6(a)にその表示例を示す。同図に示すように地震詳細情報は、予測震度階を形状の異なるシンボル図形で表すシンボル表示部41と、予測震度階を数値で表示する数値表示部42と、余裕時間表示部43と、注意事項表示部44とを備える。シンボル表示部41は、パニックに陥りやすい状況下にあって、予測震度階を視覚的に一目で簡単かつ正確に確認できるようにするもので、円形のシンボルと、三角形と四角形とを組み合わせたシンボルと、五角形と六角形とを組み合わせたシンボルとから構成される。これらのシンボルのうち円形シンボルは、予測震度階が3未満の場合に青色に点灯される。三角形及び四角形のシンボルはそれぞれ、予測震度階の値が震度3及び4のときに黄色に点灯又は点滅される。五角形及び六角形のシンボルはそれぞれ、予測震度階の値が震度5及び6のときに赤色に点灯又は点滅される。なお、予測震度階が弱のときに「点灯」、強のときに「点滅」させるようにしてもよい。
【0074】
余裕時間は、例えば「主要動到着まであと“ ”秒」のようにメッセージにより表示される。この余裕時間は1秒間隔でカウントダウン表示される。なお、注意事項としては、主要動(S波)到着直前の短い期間にユーザが行動すべき内容が表示される。例えば図6(a)に示すように、「火の元消火」、「机の下に避難」と表示される。
【0075】
また移動通信端末MS1は、上記第2報の表示中に、上記緊急地震情報に含まれる地震発生時刻と地震マグニチュードに基づいて、上記主要動(S波)が収束するまでに要する収束時間(揺れ止まり時間)Teを計算により予測する。この揺れ止まり時間Teの予測には、過去に発生した地震のマグニチュードと地震の継続時間との関係式が用いられる。例えば、地震のマグニチュードと地震の継続時間との関係は図9の実線Aに示すような曲線を描く。この関係式は、R.Dobly等の関係式として知られている。したがって、緊急地震情報により通知された地震マグニチュードと上記関係式とをもとに計算を行うことにより、地震の継続時間(揺れ止まり時間)の予測値Teを算出することができる。
なお、上記R.Dobly等の関係式を使用する予測方法は一例であり、他の既知の予測方法を適用することが可能である。
【0076】
移動通信端末MS1は、上記第2報の余裕時間Tがゼロになると、この余裕時間Tに代わって上記揺れ止まり時間Teを第3報として表示する。図6(b)にその表示例を示す。収束時間Teは、例えば「揺れ収束まであと“ ”秒」のように表示される。この収束時間Teも上記余裕時間Tと同様に1秒間隔でカウントダウン表示される。
【0077】
なお、図6(b)では注意事項として第2報のときと同じ内容を引き続き表示するようにした。しかし、それとは異なる内容を表示するようにしてもよい。この第3報で表示する注意事項としては、例えば揺れが収束したあとのチェック事項や近辺の広域避難場所等が考えられる。
【0078】
また、移動通信端末MS1において、上記算出された予測震度階に応じて異なる振動パターンを発生させるための駆動信号を生成して腕時計WT1に送信し、これにより腕時計WT1において予測震度階を異なる振動パターンにより報知するようにしてもよい。また振動パターンを異ならせる代わりに、発光パターン又は鳴音の発生パターン、さらには異なるメロディを発生させるようにしてもよい。
【0079】
以上述べたように第1の実施形態では、地震監視サーバDSVから緊急地震情報が送信されたとき、地震情報配信サーバSSV1においてこの緊急地震情報をフォーマット変換したのちショートメッセージによりユーザ登録された移動通信端末MS1〜MSkへ送信する。一方、移動通信端末MS1〜MSkでは、上記地震情報配信サーバSSV1から送信されたショートメッセージを受信すると、先ずこの受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として移動通信端末MS1〜MSkのユーザに報知する。次に、移動通信端末MS1〜MSkの現在位置を検出して、この検出された現在位置と上記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに、上記現在位置における震度階を予測する。またそれと共に、地震の主要動が上記現在位置に到達するまでの余裕時間及び主要動が収束するまでの収束時間をそれぞれ予測し、この予測された震度階、余裕時間及び収束時間を第2報及び第3報としてユーザに順次報知するようにしている。
【0080】
したがって、地震監視サーバDSVから緊急地震情報が発生されると、この緊急地震情報が地震情報配信サーバSSV1からショートメッセージにより移動通信端末MS1〜MSkへ配信され、第1報としてユーザに報知される。このため、例えば地震情報配信サーバSSV1と移動通信端末MS1〜MSkとの間に通信リンクを確立して緊急地震情報を伝送する場合や、インターネットを経由する電子メールを使用して緊急地震情報を配信する場合に比べ、緊急地震情報を少ない遅延時間で配信することが可能となる。
【0081】
また、上記第1報の報知後に、移動通信端末MS1〜MSkにおいて、自端末の現在位置と上記受信された緊急地震情報とをもとに、現在位置における予測震度階、及び主要動の到達余裕時間と収束時間が算出され、これが第2報及び第3報としてユーザに報知される。このため、ユーザは上記第2報により自己が存在する位置における予測震度階と、主要動が到達するまでの余裕時間を知ることができ、これにより消火や机の下への避難といった直前の適切な回避行動を取ることが可能となる。さらに、主要動到着後においても、第3報によりその収束時間を確認することができるので、主要動が収束するまでの間の不安感を軽減することができる。
【0082】
すなわち、第1の実施形態では、先ず緊急地震情報が第1報として報知され、この第1報の報知開始後に震度階及び主要動の到達余裕時間の予測計算が行われてその計算結果が第2報として報知され、さらにこの第2報の報知開始後に収束時間の予測計算が行われてその結果が第3報として報知される。したがって、上記予測震度階、余裕時間及び収束時間をすべて計算し終わった後に、緊急地震情報をこれらの計算結果と共にまとめて報知する場合に比べ、緊急地震情報の報知遅延を最小限度に止め、これによりリアルタイム性を保持することが可能となる。
【0083】
さらに、上記震度階、余裕時間及び収束時間の予測計算をすべて移動通信端末MS1〜MSkで行っている。このため、地震情報配信サーバSSV1は第1報である緊急地震情報をショートメッセージにより伝送するだけでよく、地震情報配信サーバDSVに特別な処理機能を新たに設けることなく、既存のメールサーバの機能のまま実施することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、地震観測網から緊急地震情報が到来した場合に、地震情報配信サーバが先ずこの緊急地震情報をフォーマット変換してショートメッセージにより移動通信端末へ送信する。次に、上記配信先の移動通信端末の現在位置を取得し、この取得された移動通信端末の現在位置と上記受信された緊急地震情報とをもとに、上記現在位置における震度階、主要動が上記現在位置に到達するまでの余裕時間をそれぞれ計算により予測し、この計算結果を電子メールに挿入して上記移動通信端末へ配信する。一方、移動通信端末では、上記地震情報配信サーバから送信されたショートメッセージを受信してその緊急地震情報を第1報としてユーザに報知し、続いて上記地震情報配信サーバから送信される電子メールを受信してその本文の内容をもとに地震詳細情報の表示データを作成し、これを第2報としてユーザに報知するようにしたものである。
【0085】
図7は、この発明の第2の実施形態に係わる地震情報配信サーバSSV2の機能構成を示すブロック図である。なお、同図において前記図2と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
プログラムメモリ13には、この発明を実施するためのアプリケーションプログラムとして、地震情報受信制御プログラム13aと、第1報配信制御プログラム13bと、位置情報取得制御プログラム13bと、地震動揺時間計算プログラム13eと、詳細情報配信制御プログラム13fが格納されている。
【0086】
このうち第1報配信制御プログラム13bは、前記第1の実施形態の地震情報配信制御プログラムに対応する。すなわち、地震監視サーバDSVから緊急地震情報が受信されたとき、この緊急地震情報に含まれる地震発生位置及び地震マグニチュードをもとに配信対象エリアを設定し、この設定された配信対象エリアに存在するユーザを上記ユーザ情報データベース14aから選択する。また、それと並行して、上記受信された緊急地震情報をショートメッセージに対応するフォーマットに変換し、このフォーマット変換された緊急地震情報を挿入したショートメッセージを生成して、このショートメッセージを上記選択されたユーザの移動通信端末MS1〜MSkに向け送信する。
【0087】
位置情報取得制御プログラム13bは、地震が発生していない期間において、ユーザ登録された移動通信端末MS1〜MSkに対し定期的にアクセスして位置取得要求を送り、移動通信端末MS1〜MSkにて検出された当該端末の現在位置情報(緯度経度)を取得して、ユーザ情報データベース14aに記憶する。また、緊急地震情報が受信された時点で、ユーザ情報データベース14aに記憶された現在位置が一定期間以上更新されていない場合には、当該移動通信端末に対し位置取得要求を送って当該端末の最新の現在位置(緯度経度)を取得する。
【0088】
地震動揺時間計算プログラム13eは、第1の実施形態で述べた地震動揺時間計算機能32cに対応するもので、上記位置情報取得制御プログラム13bにより取得された移動通信端末の現在位置と、地震監視サーバDSVから受信した緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末の現在位置における予測震度階を計算する。また、上記移動通信端末の現在位置と上記緊急地震情報とをもとに、地震の主要動が当該移動通信端末の現在位置に到着するまでの余裕時間を計算する。さらに、上記緊急地震情報をもとに、上記主要動が収束するまでに要する収束時間を計算する。そして、この計算された予測震度階、余裕時間及び収束時間を、ユーザ情報データベース14aの該当するユーザに対応付けて格納する。
【0089】
詳細情報配信制御プログラム13fは、上記地震動揺時間計算プログラム13eにより計算された震度階、余裕時間及び収束時間を地震詳細情報として電子メール本文に挿入するか又は添付することにより、配信対象の移動通信端末へ送信する。
【0090】
移動通信端末MS1〜MSkは、上記地震情報配信サーバSSV2から送られたショートメッセージ及び電子メールをそれぞれ受信する。そして、ショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として表示部35に表示する。また、電子メールを受信したときには、この電子メールの本文に挿入されているか又は添付されている詳細情報をもとに、地震の詳細を報知するための表示データを作成して、この表示データを第2報として表示部35に表示する。
【0091】
次に、以上のように構成されたシステムによる地震情報配信動作を説明する。図8はその説明に使用するシーケンス図である。なお、システム構成については前記第1の実施形態と同一なので、図1を用いて説明する。
地震監視サーバDSVから緊急地震情報が到来すると、地震情報配信サーバSSV2は先ずステップ8bにおいて、上記緊急地震情報に含まれる地震発生位置及び地震マグニチュードをもとに配信対象エリアを設定し、この設定された配信対象エリアに存在するユーザのうち、配信サービスの申し込みを行っているユーザをユーザ情報データベース14aから選択する。なお、この配信対象ユーザの選択は、ユーザ情報データベース14aに記憶されたエリア情報をもとにエリア単位で行われる。このため、配信対象のユーザの選択はきわめて短時間に行うことが可能である。
【0092】
また、それと共に地震情報配信サーバSSV2は、ステップ8cにおいて、上記受信された緊急地震情報をショートメッセージに対応するフォーマットに変換する。そして、この変換された緊急地震情報を挿入したショートメッセージを作成し、このショートメッセージを上記選択されたユーザの移動通信端末(例えばMS1)に向け、第1報として送信する。第1の実施形態においても述べたように、ショートメッセージサービス(SMS)は通信事業者固有のプロトコルとネットワークを使用して伝送される簡易メールであり、作成指示から送信に至るまでに要する時間が短く、かつ伝送所要時間も短い。このため、インターネットを経由して転送される電子メールを使用する場合に比べ、少ない遅延時間で短時間に配信することが可能である。
【0093】
これに対し移動通信端末MS1は、地震情報配信サーバSSV2からショートメッセージが到来すると、図8に示すように先ずステップ8dにおいて、鳴音又は振動を発生させると共に、上記受信されたショートメッセージの緊急地震情報を第1報として表示部35に表示する。またそれと共に、ステップ8eにおいて、上記緊急地震情報のショートメッセージを受信した旨の緊急通知メッセージを生成し、このメッセージをBT I/F40から同一ユーザの腕時計WT1に向け送信する。腕時計WT1は、上記緊急通知メッセージを受信すると鳴音又は振動を発生し、さらに緊急メッセージ受信用のアイコンを点滅させる。したがって、ユーザは仮に移動通信端末MS1を所持していなくても、緊急地震情報の到来を認識することが可能となる。
【0094】
また、上記ショートメッセージの送信を終了すると地震情報配信サーバSSV2は、ステップ8fにおいて地震動揺時間を予測するための計算を以下のように行う。図10はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、先ずステップ10aによりユーザ情報データベース14aから配信申し込み済みの移動通信端末MS1を選択し、この選択された移動通信端末MS1の現在位置をユーザ情報データベース14aから読み出す。なお、読み出した現在位置が一定期間以上更新されていない場合には、当該移動通信端末MS1に対し位置取得要求を送信し、当該端末の最新の現在位置(緯度経度)を取得する。
【0095】
次にステップ10bにより、上記読み出した現在位置と上記受信された緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末MS1の現在位置における震度階を計算により予測する。予測震度階は、第1の実施形態で述べたように、地震の強度を示す地震マグニチュードをもとに、緊急地震情報に含まれる震源位置と、移動通信端末MS1の現在位置との間の距離Rに応じた距離減衰を考慮することにより算出できる。
【0096】
またそれと共に、上記読み出した現在位置と上記受信された緊急地震情報とをもとに、地震の主要動(S波)が移動通信端末MS1の現在位置に到達する絶対時刻、つまり揺れ開始時刻を計算により予測する。なお、絶対時刻に代えて、主要動(S波)が移動通信端末MS1の現在位置に到達するまでの余裕時間を算出してもよい。さらに、上記緊急地震情報に含まれる地震発生時刻と地震マグニチュードに基づいて、上記ユーザの現在位置における上記主要動(S波)の揺れ止まり時刻を予測する。なお、揺れ止まり時刻に代え、主要動(S波)が収束するまでに要する収束時間を予測するようにしてもよい。
【0097】
そうして、上記予測震度階、揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻が算出されると、地震情報配信サーバSSV2CPU11はステップ10cに移行し、ここで上記算出された予測震度階、揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻を、該当するユーザIDに対応付けてユーザ情報データベース14aに記憶する。
【0098】
また地震情報配信サーバSSV2のCPU11は、図8に示すステップ8gにおいて、上記計算により予測された震度階、揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻を、詳細情報として電子メール本文に挿入するか又は添付し、この電子メールを配信対象の移動通信端末MS1へ送信する。
【0099】
これに対し移動通信端末MS1は、地震情報配信サーバSSV2から電子メールが到来すると、ステップ8hにおいて、上記電子メール本文に挿入又は添付された詳細情報をもとに表示データを作成し、この表示データを表示部35に表示する。図11はこの詳細情報の表示処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0100】
すなわち、移動通信端末MS1は、ステップ11aによりEメールの到来を監視する。この状態でEメールが受信されると、先ずステップ11bにより、当該受信されたEメール本文に挿入又は添付されている詳細情報中の予測震度階を表示する。続いてステップ11cにより、上記受信された詳細情報中の揺れ開始時刻と移動通信端末自身が備える時計の現在時刻との差を計算し、この計算された差を余裕時間としてステップ11dにより表示する。この余裕時間の表示を開始すると、移動通信端末はステップ11eにより当該余裕時間を1秒ごとにカウントダウンし、このカウントダウンされた余裕時間を表示する。図6(a)に、この主要動(S波)到着前の期間における表示結果の一例を示す。
【0101】
一方、上記余裕時間がゼロになると、移動通信端末はステップ11fからステップ11gに移行し、ここで上記受信された詳細情報中の揺れ止まり時刻と移動通信端末自身が備える時計の現在時刻との差を計算し、この計算された差を揺れの収束時間としてステップ11hにより表示する。この収束時間の表示を開始すると、移動通信端末はステップ11iにより当該収束時間を1秒ごとにカウントダウンし、このカウントダウンされた収束時間を表示する。図6(b)に、この主要動(S波)到着後の期間における表示結果の一例を示す。
【0102】
そして、上記収束時間のカウントダウン後の値がゼロなると、移動通信端末はステップ11jからステップ11kに移行し、以後地震の揺れ収束後に役立つ支援情報を表示する。支援情報としては、例えば家屋の点検事項や、近隣の避難場所、携行すべき用品等が考えられる。
【0103】
以上述べたように第2の実施形態では、地震監視サーバDSVから緊急地震情報が送信されると、地震情報配信サーバSSV2から配信対象の移動通信端末MS1〜MSkに対し先ず上記緊急地震情報がショートメッセージにより配信される。次に、地震情報配信かサーバSSV2において、上記配信対象の移動通信端末MS1〜MSkの現在位置と上記緊急地震情報とをもとに、当該移動通信端末MS1〜MSkの現在位置における震度階、主要動の揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻がそれぞれ計算により予測され、これらが地震詳細情報として電子メールにより上記配信対象の移動通信端末MS1〜MSkへ配信される。
【0104】
したがって、緊急地震情報を大幅な遅延を生じることなく移動通信端末MS1〜MSkへ配信することができる。すなわち、緊急地震報知のリアルタイム性を保持することが可能となる。また、上記緊急地震情報の配信に続いて、震度階、主要動の揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻が電子メールにより配信されるので、ユーザは地震の詳細をより的確に把握することができ、これにより主要動の到来直前及び到来中において迅速かつ適切な行動が可能となる。
【0105】
さらにこの実施形態では、震度階、主要動の揺れ開始時刻及び揺れ止まり時刻の予測計算が地震情報配信サーバSSV2で行われる。このため、移動通信端末MS1〜MSkは、特別な処理機能を新たに設ける必要がなく、基本的に地震情報配信サーバSSV2から配信されるショートメッセージ及び電子メールの受信機能さえ備えていればよいので、既存の構成のまま実施できる利点がある。
【0106】
(その他の実施形態)
前記各実施形態では、移動通信端末MS1〜MSkの現在位置を移動通信端末自身がGPS信号をもとに計算し、この現在位置情報を地震情報配信サーバSSV1,SSV2の要求に応じて送信するようにした。しかし、それに限らず、地震情報配信サーバSSV1,SSV2から移動通信ネットワークの制御局に対しアクセスし、当該移動通信制御局がHLR(Home Location Register)において管理している位置情報を取得するようにしてもよい。
【0107】
また、前記第1の実施形態では、地震情報配信サーバSSV1が、全ての加入ユーザの情報を格納するユーザ情報データベース14aを備えた場合を例にとって説明した。しかし、これに限定されるものではなく、全ユーザの中から配信対象のユーザのみを抽出してこの抽出された配信対象のユーザに係わる情報のみをユーザ情報データベースとして記憶するようにしてもよい。図12にその一例を示す。
【0108】
さらに、現在位置に緯度経度だけでなく高さ方向の位置を含め、この高さ方向の位置を考慮して予測震度階を算出するようにしてもよい。このようにすると、例えばユーザがビル内に存在する場合に、上記高さ方向の位置をもとにユーザが存在する階層を推定し、この推定結果をもとに予測震度階を補正することが可能となる。
【0109】
なお、上記高さ方向の位置に応じた予測震度階の補正は、例えば以下のようにして実現できる。すなわち、ビル内の各階に階数を表す情報を発信する無線タグ等の無線標識を設置し、この無線標識から発信される階数情報を移動通信端末で受信する。そして、この階数に応じた補正係数を予測震度階に乗算することにより予測震度階を補正する。また、GPS信号をもとに移動通信端末の高さを算出し、この算出された高さをビルの階数に置換して、この階数に応じた補正係数を予測震度階に乗算することによっても、予測震度階を補正することが可能である。さらに、移動通信端末に気圧センサを内蔵又は付属させ、この気圧センサにより検出された気圧をビルの階数に置換して、この階数に応じた補正係数を予測震度階に乗算することによっても、予測震度階を補正できる。
【0110】
さらに、予測震度階を算出する際に、当該地域固有の地盤増幅率を考慮するようにしてもよい。地盤増幅率とは、地表面近傍の地盤の状態によって地震による震動加速度が加減速される程度を表した値である。この地盤増幅率を考慮した予測震度階の補正は、位置(緯度経度)に対応付けて地盤増幅率を記憶したデータベースを用意しておき、移動通信端末の位置に対応する地盤増幅率を上記データベースから読み出して予測震度階に重み付けすることにより実現できる。
【0111】
さらに、前記実施形態では、予測震度階と余裕時間又は収束時間とを別々に表示するようにした。しかし、予測震度階と余裕時間又は収束時間とを一体的に表示するようにしてもよい。例えば、図6(a),(b)に示した震度階表示用のシンボル図形の大きさを変化させることで余裕時間又は収束時間を表現するようにしてもよい。この表示方法は、携帯電話機や時計等のように表示器の表示サイズが小さい機器において、特に有効である。
【0112】
さらに、前記実施形態では予測震度階や余裕時間、収束時間、注意事項を移動通信端末のディスプレイに視覚的に表示するようにしたが、音声合成技術を使用して合成音声により報知するようにしてもよい。このようにすると、視覚障害者やディスプレイを視認することが困難な状況下でも、ユーザは予測震度階や余裕時間、収束時間、注意事項を把握することが可能となる。
【0113】
また、前記実施形態では地震詳細情報として、予測震度階、余裕時間、収束時間及び注意事項を表示するようにしたが、震源位置が海底にありかつ移動通信端末の現在位置が海岸に近い場合には、津波に対する警報メッセージを併せて表示するようにしてもよい。またその際、地震マグニチュードをもとに津波の高さを推定して併せて表示するようにしてもよい。
【0114】
さらに、前記実施形態では移動通信端末から腕時計に対し緊急通知メッセージを送信し、このメッセージにより腕時計において鳴音又は振動を発生させるようにした。しかし、それに限らず移動通信端末から腕時計に緊急地震情報を転送し、この緊急地震情報を第1報として表示させるようにしてもよい。さらに、予測計算により求めた震度階、余裕時間及び収束時間を移動通信端末から腕時計に転送して、これらを第2報及び第3報として表示するようにしてもよい。図13はその表示結果の一例を示すもので、51は時計本体、52は表示部を示している。
なお、一般に腕時計は移動通信端末よりも表示部の表示サイズがさらに小さい。このため、上記緊急地震情報、余裕時間及び収束時間を腕時計用のフォーマットに変換して転送するとさらによい。
【0115】
さらに外部表示機器としては、腕時計に限らず、他に携帯型のオーディオプレーヤやテレビジョン受信機、ヘッドホン等の携帯電子機器を適用でき、さらにはカーナビゲーション装置のディスプレイ、家電機器等に付属して設けられたディスプレイ、テレビジョン受信装置、パーソナル・コンピュータ等も適用可能である。また、外部表示機器と移動通信端末との間で通信を行うための無線インタフェースは、Bluetooth(登録商標)以外に、無線LAN等のその他の微弱又は小電力型の無線通信方式や、FM通信、赤外線通信等を使用することが可能である。
【0116】
さらに、移動通信端末と腕時計等の外部表示機器との間で、緊急地震情報の到来の有無とは無関係に常時又は定期的に信号の授受を行い、これにより両者間で信号の授受が不可能になったことが検出された場合に、その旨の警報メッセージを腕時計等の外部表示機器において報知するようにしてもよい。このようにすると、ユーザが移動通信端末を机上に置き忘れそうになったり、また紛失しそうになると、時計において警報メッセージが報知されるため、ユーザによる移動通信端末の置き忘れや紛失を未然に防止することができる。この結果、緊急地震情報が到来した場合に、この情報を確実にユーザに知らせることが可能となる。
【0117】
また、移動通信端末に加速度センサを設け、移動通信端末を落としたときの衝撃を加速度センサにより検出して、その旨の警報メッセージを時計等の外部表示機器に送信してユーザに報知するようにしてもよい。このようにすることによっても、移動通信端末の置き忘れや紛失を未然に防止することができる。
【0118】
さらに、移動通信端末と腕時計等の外部表示機器との間の距離が一定長以上離れて信号の授受が不可能になったことが検出された場合に、移動通信端末の操作を拒否する機能を当該移動通信端末に備えるようにするとよい。このように構成すると、例えば置き忘れるか又は紛失した移動通信端末を、第三者が無断で使用したり或いは電話帳等の記憶データを盗み見ることができないようにすることが可能となる。また、上記移動通信端末の操作を拒否する機能が動作している状態で、例えば「この端末はユビキタスウォッチと離れているため、着信以外の機能は停止中です」なるメッセージを表示又は音声報知するようにするとよい。
【0119】
また、以上述べた移動通信端末に対する操作拒否機能は、携帯電話機やPDA等の移動通信端末に限らず据え置き型のパーソナル・コンピュータや固定電話機、ファクシミリにも同様に適用することが可能である。さらに発展させて、机やキャビネット、ロッカ等のオフィス家具にも上記操作拒否機能を設けるようにしてもよい。このようにすると、例えばユーザが席を一定距離以上離れている状態では、第三者が机の引出やキャビネット、ロッカ等を無断で開けることができないようにすることが可能となり、これにより書類等の保管上のセキュリティをさらに高めることができる。
【0120】
さらに、前記各実施形態では緊急地震情報をショートメッセージにより配信するようにしたが、このショートメッセージに代わるものとしてGSM(Global System for Mobile Communication)やcdma2000システムにおいてはセルブロードキャストを利用してもよい。また、PHS(Personal Handyphone System)では、呼設定メッセージ中に用意されているユーザが利用可能な領域(例えばファシリティ)を使用して緊急地震情報を伝送するようにしてもよい。さらに、一般に移動通信システムでは着信報知のために報知チャネルを使用しているが、この報知チャネルにユーザが利用可能な領域があればこの報知チャネルを利用して緊急地震情報を伝送するようにしてもよい。
【0121】
さらに、前記各実施形態では移動通信ネットワークとして自動車・携帯電話システムを例にとって説明したが、他に公衆無線LANや、タクシー無線や運送業等が使用するMCA(Multi Channel Access)システム、PHS等を使用することも可能である。その他、地震情報配信装置及び移動通信端末の種類やその構成、制御手順と制御内容についても、また予測震度階、主要動の揺れ開始時刻(又は到達余裕時間)、及び揺れ止まり時刻(又は収束時間)の算出方法等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0122】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】この発明に係わる地震情報配信システムの第1の実施形態を示す概略構成図。
【図2】図1に示したシステムにおける地震情報配信サーバの機能構成を示すブロック図。
【図3】図2に示した地震情報配信サーバに設けられるユーザ情報データベースの一例を示す図。
【図4】図1に示したシステムにおける移動通信端末の機能構成を示すブロック図。
【図5】図1に示したシステムによる地震情報配信動作を説明するためのシーケンス図。
【図6】図4に示した移動通信端末において表示される主要動到達前と到達後の地震報知情報の一例を示す図。
【図7】この発明の第2の実施形態に係わる地震情報配信サーバの機能構成を示すブロック図。
【図8】図7に示した地震情報配信サーバを含む地震情報配信システムによる地震情報配信動作を説明するためのシーケンス図。
【図9】マグニチュードと地震の継続時間との関係の一例を示す図。
【図10】図7に示した地震情報配信サーバにおける地震動揺時間の計算処理手順とその内容を示すフローチャート。
【図11】図7に示した地震情報配信サーバから配信される情報を受信する移動通信端末において、受信された詳細情報の追加表示処理手順とその内容を示すフローチャート。
【図12】ユーザ情報データベースの他の例を示す図。
【図13】腕時計における地震詳細情報の表示例を示す図。
【符号の説明】
【0124】
NW…通信ネットワーク、BS1〜BSm…基地局、DSV…自身監視サーバ、D1〜Dn…地震計、SSV1,SSV2…地震情報配信サーバ、MS1〜MSk…移動通信端末、WT1,WT2…腕時計、11…CPU、12…バス、13…プログラムメモリ、13a…地震情報受信制御プログラム、13b…地震情報配信制御プログラム、13c…第1報配信制御プログラム、13d…位置情報取得制御プログラム、13e…地震動揺時間計算プログラム、13f…詳細情報配信制御プログラム、14…データメモリ、14a…ユーザ情報データベース、14b…地震情報蓄積データベース、15…通信インタフェース、21…アンテナ、22…アンテナ共用器(DUP)、23…受信回路(RX)、24…周波数シンセサイザ(SYN)、25…送信回路(TX)、26…CDMA信号処理部、27…圧縮伸長処理部(コンパンダ)、28…PCM符号処理部(PCMコーデック)、29…受話増幅器、30…スピーカ、31…マイクロホン、32…制御部、32a…地震情報受信制御機能、32b…位置情報検出制御機能、32c…地震動揺時間計算機能、32d…地震速報表示制御機能、32e…地震速報転送制御機能、33…送話増幅器、34…入力部、35…表示部、36…記憶部、37…バッテリ、38…電源回路、39…GPS受信機、40…BT I/F、51…時計本体、52…時計表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対し、通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、前記地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備し、
前記地震情報配信装置は、
前記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信する手段と、
前記受信された緊急地震情報をショートメッセージにより伝送可能なフォーマットに変換し、変換された緊急地震速報をショートメッセージに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と
を備え、
前記移動通信端末は、
前記地震情報配信装置から送信されたショートメッセージを受信する手段と、
前記受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として当該移動通信端末のユーザに報知する手段と、
前記移動通信端末の現在位置を検出する手段と、
前記検出された現在位置と、前記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに、前記地震の主要動が前記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、
前記予測された到達時刻又は到達余裕時間を第2報として前記ユーザに報知する手段と
を備えることを特徴とする地震情報配信システム。
【請求項2】
前記移動通信端末に対し、近距離無線インタフェースを介して外部表示機器が接続可能な場合に、
前記移動通信端末は、前記第1報及び第2報のうちの少なくとも第1報を、前記近距離無線インタフェースを介して前記外部表示機器に転送し表示させる手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1記載の地震情報配信システム。
【請求項3】
地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対し、通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、前記地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備し、前記地震情報配信装置は、前記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信し、この受信された緊急地震情報をショートメッセージに挿入して送信する機能を備える地震情報配信システムで使用される前記移動通信端末であって、
前記地震情報配信装置から送信されたショートメッセージを受信する手段と、
前記受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として当該移動通信端末のユーザに報知する第1の報知手段と、
前記移動通信端末の現在位置を検出する手段と、
前記検出された現在位置と、前記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに、前記地震の主要動が前記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、
前記予測された到達時刻又は到達余裕時間を第2報として前記ユーザに報知する第2の報知手段と
を具備することを特徴とする移動通信端末。
【請求項4】
前記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報をもとに、前記主要動の収束時刻又は主要動が収束するまでに要する収束時間を予測する手段と、
前記予測された収束時刻又は収束時間を、前記第2報に続き第3報として前記ユーザに報知する第3の報知手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項3記載の移動通信端末。
【請求項5】
前記検出された現在位置と、前記ショートメッセージに挿入された緊急地震情報とをもとに、前記現在位置における震度階を予測する手段と、
前記予測された震度階を前記第2報及び第3報の少なくとも一方に含めて前記ユーザに報知する第4の報知手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項3記載の移動通信端末。
【請求項6】
前記第4の報知手段は、
震度階と当該震度階を形状により表す複数種のシンボル図形とを対応付けて記憶するメモリと、
前記予測された震度階に対応する形状のシンボル図形を前記メモリから選択し、この選択されたシンボル図形を点滅又は点灯表示する手段と
を備えることを特徴とする請求項5記載の移動通信端末。
【請求項7】
前記震度階を予測する手段は、
ユーザが建物内に存在する場合に、当該建物内におけるユーザの存在階数を検出する手段と、
前記震度階の予測値を前記検出された存在階数に応じて補正する手段と
を、さらに備えることを特徴とする請求項5記載の移動通信端末。
【請求項8】
外部表示機器との間で近距離無線インタフェースを介して通信を行う手段と、
前記第1報及び第2報のうちの少なくとも第1報を、前記近距離無線インタフェースを介して前記外部表示機器に転送し表示させる手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項3記載の移動通信端末。
【請求項9】
地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対し、通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、前記地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備し、
前記地震情報配信装置は、
前記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信する手段と、
前記受信された緊急地震情報をショートメッセージにより伝送可能なフォーマットに変換し、変換された緊急地震速報をショートメッセージに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と、
前記移動通信端末の現在位置を表す情報を、前記移動通信ネットワークから取得する手段と、
前記取得された移動通信端末の現在位置と、前記受信された緊急地震情報とをもとに、前記地震の主要動が前記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、
前記予測された到達時刻又は到達余裕時間を電子メールに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と
を備え、
前記移動通信端末は、
前記地震情報配信装置から送信されたショートメッセージを受信する手段と、
前記受信されたショートメッセージに挿入された緊急地震情報を第1報として当該移動通信端末のユーザに報知する手段と、
前記地震情報配信装置から送信された電子メールを受信する手段と、
前記受信された電子メールに挿入された到達時刻又は到達余裕時間を第2報として前記ユーザに報知する手段と
を備えることを特徴とする地震情報配信システム。
【請求項10】
前記移動通信端末に対し、近距離無線インタフェースを介して外部表示機器が接続可能な場合に、
前記移動通信端末は、前記第1報及び第2報のうちの少なくとも第1報を、前記近距離無線インタフェースを介して前記外部表示機器に転送し表示させる手段を、さらに備えることを特徴とする請求項9記載の地震情報配信システム。
【請求項11】
地震発生時に、地震発生時刻、震源位置及び地震規模を表す情報を含む緊急地震情報を送信する地震観測網に対し、通信ネットワークを介して接続される地震情報配信装置と、前記地震情報配信装置との間で移動通信ネットワークを介して通信可能な移動通信端末とを具備する地震速報監視システムで使用される前記地震情報配信装置であって、
前記地震観測網から送信される緊急地震情報を受信する手段と、
前記受信された緊急地震情報をショートメッセージにより伝送可能なフォーマットに変換し、変換された緊急地震速報をショートメッセージに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と、
前記移動通信端末の現在位置を表す情報を、前記移動通信ネットワークから取得する手段と、
前記取得された移動通信端末の現在位置と、前記受信された緊急地震情報とをもとに、前記地震の主要動が前記移動通信端末の現在位置に到達する時刻又は到達するまでの余裕時間を予測する手段と、
前記予測された到達時刻又は到達余裕時間を電子メールに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と
を具備することを特徴とする地震情報配信装置。
【請求項12】
前記受信された緊急地震情報をもとに、前記主要動の収束時刻又は主要動が収束するまでに要する収束時間を予測する手段と、
前記予測された収束時刻又は収束時間を前記電子メールに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項11記載の地震情報配信装置。
【請求項13】
前記取得された移動通信端末の現在位置と、前記受信された緊急地震情報とをもとに、前記現在位置における震度階を予測する手段と、
前記予測された震度階を前記電子メールに挿入して前記移動通信端末へ送信する手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項11記載の地震情報配信装置。
【請求項14】
前記震度階を予測する手段は、
ユーザが建物内に存在する場合に、当該建物内におけるユーザの存在階数を表す情報を前記移動通信端末から取得する手段と、
前記予測された震度階を前記取得された存在階数に応じて補正する手段と
を、さらに備えることを特徴とする請求項13記載の地震情報配信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−47936(P2007−47936A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229977(P2005−229977)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】