説明

型内塗装成形方法

【課題】 製品設計を行う上での自由度の低下を招くことなく、塗膜の形成時における光輝体の配向を整えて製品の意匠性を高めることが可能な型内塗装成形方法を提供する。
【解決手段】 型内塗装成形方法は、固定金型32と第1移動金型とを用いて開口部を有する基材を成形する工程と、固定金型32と第2移動金型とを用いて基材22の表面と第2移動金型との間に塗膜形成用キャビティ38を形成し、これに光輝体を含有する塗料を充填して基材22の表面に塗膜を形成する工程とを備えている。固定金型32には余剰塗料収容部41が設けられ、第2移動金型には塗料注入口39及び凸部40が設けられ、塗料注入口39と余剰塗料収容部41とは互いに凸部40を挟む対向位置にそれぞれ配設されている。そして、塗膜形成用キャビティ38に過剰量の塗料を注入することによって余剰となった塗料を余剰塗料収容部41内に収容した後、塗料を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材の表面に光輝体を含有した塗膜を型内で形成する型内塗装成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のホイールキャップ等の樹脂成形品は、基材を成形した後、該基材の表面に塗膜を形成することによって製造されている。このような樹脂成形品の塗膜には、微細なフレーク状の光輝体を含有することで、外観をメタリック調にしている。しかし、塗膜の形成時に光輝体の配向が乱れると、この配向が乱れた部分において光の乱反射による黒ずみが発生してしまうという問題があった。
【0003】
このため、光輝体の配向を整えつつ該光輝体を含有する塗膜を基材の表面に形成する方法が従来から提案されており、例えば特許文献1では、光輝体を磁性体により構成し、型外において塗膜の形成時に磁場を形成することで光輝体の配向を整えながら、基材に塗料をスプレガンによって塗布している。また、特許文献2では、型内塗装成形法において光輝体の配向が乱れやすい部分である屈曲部に塗料の定常的な流れを作り出すことで光輝体の配向を整えながら、基材の表面に塗膜を形成している。
【特許文献1】特開平5−285448号公報
【特許文献2】特開2002−240091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、溶剤に溶かした塗料をスプレガンによって型外に出した基材に塗布しているため、何度も重ね塗りをしなければならず、手間がかかる上に光輝性も十分に得られなかった。さらに、基材の表面にヒケ等がある場合には、このヒケに沿って塗料が塗布されるので、基材の表面のヒケがそのまま製品の外観に現れることとなり、意匠性が低下する要因となっていた。また、特許文献2では、型内塗装成型方法ではあるものの、基材を成形する金型と塗膜を形成する金型とが同一であり、基材成形後に金型を所定量だけ型開きしてから塗料を注入するため、基材における金型の型開き方向と平行な面に対しては塗膜を形成することができず、製品設計を行う上での自由度の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、製品設計を行う上での自由度の低下を招くことなく、塗膜の形成時における光輝体の配向を整えて製品の意匠性を高めることが可能な型内塗装成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材の表面に塗膜を型内で形成する型内塗装成形方法であって、前記基材を成形する第1工程と、前記基材の表面に塗膜を形成する第2工程とを備え、前記第1工程は、固定金型と第1移動金型とで形成される基材成形用キャビティに合成樹脂を充填して段差部を有する基材を成形する工程であり、前記第2工程は、前記固定金型と第2移動金型とを型締めすることにより、前記基材の表面と前記第2移動金型との間に塗膜形成用キャビティを形成し、該塗膜形成用キャビティに光輝体を含有する塗料を充填して塗膜を形成する工程であり、前記固定金型及び第2移動金型の少なくとも一方には、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から前記塗料が過剰に注入された場合に塗膜形成用キャビティから流出する余剰となった前記塗料を収容するための余剰塗料収容部とが配設され、前記第2移動金型には、前記塗料注入口と前記余剰塗料収容部との間に位置して前記基材の段差部内に挿入される挿入部が配設されており、前記第2工程において、前記塗膜形成用キャビティに過剰量の前記塗料を注入することによって、前記挿入部の周りを通って前記余剰塗料収容部へと向かう前記塗料の定常的な流れを形成し、余剰となった前記塗料を前記余剰塗料収容部内に収容した後、前記塗料を硬化させることを要旨とする。
【0007】
従って、基材を成形する金型と塗膜を形成する金型とが異なるため、基材が金型の型開き方向と平行な面を有していても、この面上に塗膜を形成することが可能となり、製品設計を行う上での自由度の低下がなくなる。
【0008】
また、塗膜内に存在する光輝体が、塗膜形成用キャビティに塗料を注入する際の前記塗料の流れに沿って規則正しく配向された状態となる。塗膜の形成時、挿入部よりも余剰塗料収容部側の領域では、前記挿入部によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記領域においては特に前記光輝体の配向が乱れやすいが、この領域においても前記光輝体が前記塗料の流れに沿って規則正しく配向された状態となる。このため、製品の意匠面に照射される光線の反射光は、塗膜の表面に沿って規則正しく配向された前記光輝体に正反射されて一定方向へと進行し、その散乱が効果的に抑制される。したがって、この製品の意匠面においては、全体に渡ってほぼ均一に光輝性が発揮されるため、その意匠性が高められる。特に、前記領域における反射光の散乱による黒ずみ(いわゆるメタムラ)が解消されて良好な光輝性が確保される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、基材の表面に塗膜を型内で形成する型内塗装成形方法であって、前記基材を成形する第1工程と、前記基材の表面に塗膜を形成する第2工程とを備え、前記第1工程は、固定金型と第1移動金型とで形成される基材成形用キャビティに合成樹脂を充填して段差部を有する基材を成形する工程であり、前記第2工程は、前記固定金型と第2移動金型とを型締めすることにより、前記基材の表面と前記第2移動金型との間に塗膜形成用キャビティを形成し、該塗膜形成用キャビティに磁性を持つ光輝体を含有する塗料を充填して塗膜を形成する工程であり、前記固定金型及び第2移動金型の少なくとも一方には、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を注入するための塗料注入口が配設され、前記第2移動金型には、前記基材の段差部内に挿入される挿入部が配設されており、前記第2工程において、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を充填する際に、パーティングライン面に沿う方向に磁力線が発生するように前記塗膜形成用キャビティに磁場を形成した後、前記塗料を硬化させることを要旨とする。
【0010】
従って、塗膜内に存在する光輝体が、塗膜形成用キャビティに塗料を注入する際に塗膜形成用キャビティに発生する磁力線に沿って規則正しく配向された状態となる。塗膜の形成時には、挿入部よりも前記塗料の下流側の領域では、前記挿入部によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記領域においては特に前記光輝体の配向が乱れやすいが、この領域においても前記光輝体が塗膜形成用キャビティに発生する磁力線に沿って規則正しく配向された状態となる。このため、製品の意匠面に照射される光線の反射光は、塗膜の表面に沿って規則正しく配向された前記光輝体に正反射されて一定方向へと進行し、その散乱が効果的に抑制される。したがって、この製品の意匠面においては、全体に渡ってほぼ均一に光輝性が発揮されるため、その意匠性が高められる。特に、前記領域における反射光の散乱による黒ずみ(いわゆるメタムラ)が解消されて良好な光輝性が確保される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製品設計を行う上での自由度の低下を招くことなく、塗膜の形成時における光輝体の配向を整えて製品の意匠性を高めることが可能な型内塗装成形方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明を自動車のホイールキャップの型内塗装成形方法に具体化した第1実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の型内塗装成形品(製品)としてのホイールキャップ20は、自動車10におけるタイヤ11のホイール(図示略)を覆うように取り付けられる。
【0014】
図2(a)に示すように、ホイールキャップ20は円盤状をなしている。このホイールキャップ20は4つの段差部としての開口部21(貫通孔)を有しており、これらは互いにホイールキャップ20の中心を基準として等角度間隔となるように形成されている。図2(b)に示すように、ホイールキャップ20は熱可塑性樹脂よりなる基材22と、該基材22の表面に薄層状に形成された塗膜23とを備えており、該塗膜23によりホイールキャップ20の意匠面が形成されている。そして、ホイールキャップ20の意匠面をメタリック調にするために、前記塗膜23には微細なフレーク状をなす多数の光輝体23aが含有されており、該光輝体23aは、前記塗膜23内において規則正しく配向されている。
【0015】
次に、前記ホイールキャップ20の製造方法を図3〜図7に基づいて説明する。
ホイールキャップ20は、第1金型30及び第2金型31を用いて製造される。
図3に示すように、第1金型30は、固定金型32と第1移動金型33とから構成されており、上下方向に型締めを行うことにより両金型32,33の間に基材成形用キャビティ34が形成されるようになっている。第1移動金型33には、基材成形用キャビティ34の中央部に前記基材22の材料となる熱可塑性樹脂を注入するための合成樹脂注入口35が設けられている。第1移動金型33のキャビティ面には、前記基材22に前記開口部21を形成するための凸部36が形成されている。
【0016】
図5に示すように、第2金型31は、前記第1移動金型33を第2移動金型37に交換したもの、すなわち前記固定金型32と第2移動金型37とから構成されている。第2金型31は、固定金型32と第2移動金型37とを上下方向に型締めすることにより、基材22の表面と第2移動金型37との間に塗膜形成用キャビティ38が形成されるようになっている。第2移動金型37には、塗膜形成用キャビティ38の中央部に塗料を注入するための塗料注入口39が設けられている。第2移動金型37のキャビティ面には、前記塗膜23に前記開口部21を形成するための凸部40が挿入部として形成されている。
【0017】
前記固定金型32には、塗料注入口39から前記塗料が過剰に注入された場合に、塗膜形成用キャビティ38から流出する余剰となった前記塗料を収容するための余剰塗料収容部41が設けられている。余剰塗料収容部41は、塗膜形成用キャビティ38の外側に位置しており、余剰塗料収容部41と塗膜形成用キャビティ38とは連通している。余剰塗料収容部41と前記塗料注入口39とは、前記第2金型31が型締めされている状態で、互いに前記凸部40を挟んで対向する位置に配設されている。余剰塗料収容部41は、前記凸部40の数(この実施形態では4つ)に対応して同じ数(4つ)だけ設けられている。この4つの余剰塗料収容部41は、前記塗料注入口39を中心として互いに等角度間隔になるように配設されている。
【0018】
さて、前記ホイールキャップ20を製造する工程は、第1金型30を用いて基材22を成形する第1工程と、該基材22の表面に塗膜23を形成する第2工程とを備えている。
前記第1工程において、図3に示すように、固定金型32と第1移動金型33との型締めを行うことにより基材成形用キャビティ34を形成する。この基材成形用キャビティ34に、図4に示すように、合成樹脂注入口35から溶融状態の熱可塑性樹脂を射出して充填し、冷却して固化させることにより開口部21を有する基材22を成形する。このとき、基材22の開口部21の内周壁21a及び基材22の周壁22aは、第1金型30の型開き方向と平行になっている。続いて、第1移動金型33を上方に移動させて第1金型30を開き、第1移動金型33を第2移動金型37に交換した後、第2工程を行う。
【0019】
前記第2工程において、図5に示すように、固定金型32上に前記第1工程で成形された基材22を載置した状態で固定金型32と第2移動金型37とを型締めし、基材22の表面と第2移動金型37との間に塗膜形成用キャビティ38を形成する。このとき、前記第1工程において基材22に形成された開口部21内に第2移動金型37の凸部40が挿入される。引き続き、前記塗膜形成用キャビティ38の中央部に前記塗料注入口39から前記塗膜形成用キャビティ38の体積に対して過剰量の熱硬化性の塗料を注入する。なお、この塗料には、アルミニウム等よりなる微細なフレーク状をなす多数の前記光輝体23aが含有されている。
【0020】
すると、前記塗料は、図6に矢印で示すように、塗膜形成用キャビティ38の中央部から外縁部に向かって放射状に流れて塗膜形成用キャビティ38全体に広がる。このとき、前記塗料内に存在する光輝体23aは、塗料の流れに沿って規則正しく配向される。また、このとき、凸部40よりも余剰塗料収容部41側の領域では、前記凸部40によって2つに分流された前記塗料の流れが合流し、余剰となった前記塗料は余剰塗料収容部41内に流れ込んで収容される。このため、塗膜形成用キャビティ38内には、凸部40の周りを通って余剰塗料収容部41へと向かう前記塗料の定常的な流れが形成される。したがって、前記凸部40よりも余剰塗料収容部41側の領域では、前記凸部40によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記光輝体23aの配向が乱れやすいが、前記領域においても前記光輝体23aが前記塗料の流れに沿って規則正しく配向される。
【0021】
そして、図7に示すように、塗膜形成用キャビティ38に前記塗料が充填された後、該塗料を加熱して硬化させることにより基材22の表面に塗膜23が形成される。このように、前記ホイールキャップ20は、前記第1工程を実施した後、前記第2工程を実施することにより成形される。前記ホイールキャップ20の成形後、第2移動金型37を上方へ型開きすることにより、前記ホイールキャップ20は第2金型31内から取り出される。
【0022】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)前記ホイールキャップ20は、基材22を成形する第1金型30と塗膜23を形成する第2金型31とが異なるため、基材22の開口部21(段差部)の内周壁21aや、基材22の周壁22aが第1金型30の型開き方向と平行であっても、これらの壁面に塗膜23を形成することが可能となる。このため、ホイールキャップ20の設計を行う上での自由度の低下をなくすことができる。加えて、基材22を成形する第1金型30と塗膜23を形成する第2金型31とが異なるため、基材22の表面に塗膜を均一に形成することができる。
(2)熱可塑性の合成樹脂で基材22を成形する第1金型30と、熱硬化性の塗料で塗膜23を形成する第2金型31とが異なるため、これら両金型30,31の温度管理が容易になる。
(3)基材22の表面に型内で塗膜23を形成することで、該塗膜23の表面を意匠面としているため、従来のように溶剤に溶かした塗料をスプレガンによって型外に出した基材に塗布する方法とは異なり、基材22の表面にヒケがあっても、このヒケを塗膜23によって隠すことができるとともに、高い光輝性を得ることができる。
(4)塗膜形成用キャビティ38に塗料を注入する際に、凸部40よりも余剰塗料収容部41側の領域では、前記凸部40によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記領域においては特に前記光輝体23aの配向が乱れやすい。しかし、前記領域においても、余剰塗料収容部41の存在により、前記塗料の定常的な流れを形成することができるので、前記光輝体23aを規則正しく配向させることができる。このため、ホイールキャップ20の意匠面に照射される光線の反射光は、塗膜23の表面に沿って規則正しく配向された前記光輝体23aに正反射されて一定方向へと進行し、その散乱を効果的に抑制することができる。したがって、ホイールキャップ20の意匠面においては、全体に渡ってほぼ均一に光輝性を発揮させることができるため、その意匠性を高めることができる。特に、前記領域において光輝体の配向が乱れることに起因する反射光の散乱による黒ずみ(いわゆるメタムラ)を解消することができ、良好な光輝性を確保することができる。
【0023】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態について前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0024】
図8に示すように、この第2実施形態では、固定金型32には、余剰塗料収容部41が設けられていない。第2移動金型37には、第2金型31のパーティングライン面PLに沿うように延びる電磁石50が埋設されている。電磁石50は、棒状の鉄芯51の外周面を絶縁被覆された導線52によってコイル状に巻回することによって構成されている。導線52の端部は、図示しない電源に接続されている。そして、導線52に通電を行うと、第2金型31のパーティングライン面PLに沿う方向に磁力線53が発生し、塗膜形成用キャビティ38に磁場が形成されるようになっている。なお、この第2実施形態では、前記塗膜23を形成するための塗料には、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を持つ材料よりなる光輝体23aが含有されている。
【0025】
さて、ホイールキャップ20を製造する場合、まず、前記第1実施形態と同様の方法で基材22を成形する。次いで、図8に示すように、第2金型31の型締めを行うことで、塗膜形成用キャビティ38を形成する。そして、導線52に通電を行うことで、第2金型31のパーティングライン面PLに沿う方向に磁力線53を発生させ、塗膜形成用キャビティ38に磁場が形成された状態にする。この状態で、塗料注入口39から前記塗料を注入する。
【0026】
すると、前記塗料は、塗膜形成用キャビティ38の中央部から外縁部に向かって放射状に流れて塗膜形成用キャビティ38全体に広がる。このとき、前記塗料内に存在する光輝体23aは、磁力線53に沿って規則正しく配向される。また、このとき、凸部40よりも塗膜形成用キャビティ38の外縁部側(凸部40よりも前記塗料の下流側)の領域では、前記凸部40によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、特に光輝体23aの配向が乱れやすいが、前記領域においても前記光輝体23aが磁力線53に沿って規則正しく配向される。そして、図9に示すように、塗膜形成用キャビティ38に前記塗料が充填された後、該塗料を加熱して硬化させることにより基材22の表面に塗膜23が形成される。
【0027】
以上詳述した第2実施形態によれば前記第1実施形態の(1)〜(3)に加えて次のような効果が発揮される。
(5)前記塗料に含有される光輝体23aは磁性を持っているため、塗膜形成用キャビティ38に前記塗料を注入する際に、前記光輝体23aは前記塗膜形成用キャビティ38に発生する磁力線53に沿って規則正しく配向させることができる。この場合、凸部40よりも塗膜形成用キャビティ38の外縁部側(凸部40よりも前記塗料の下流側)の領域では、前記凸部40によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記領域においては特に前記光輝体23aの配向が乱れやすい。しかしながら、前記領域においても前記光輝体23aを塗膜形成用キャビティ38に発生する磁力線53に沿って規則正しく配向させることができる。
【0028】
(変更例)
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 第1実施形態において、余剰塗料収容部41は塗膜形成用キャビティ38の外側の全周に渡って設けてもよい。
【0029】
・ 第2実施形態において、電磁石50は第2金型31の外部に設けてもよい。
・ 第2実施形態において、第1実施形態と同様に余剰塗料収容部41を固定金型32に設けてもよい。
【0030】
・ 第1及び第2実施形態において、段差部(開口部21)は4つに限らない。
・ 第1及び第2実施形態において、段差部(開口部21)は、貫通孔でなく、凹部や凸部であってもよい。
【0031】
・ 第1及び第2実施形態において、基材22の開口部21(段差部)の内周壁21a及び基材22の周壁22aは、必ずしも第1金型30の型開き方向と平行でなくてもよい。
【0032】
・ 第1及び第2実施形態において、固定金型32に塗料注入口39を設けてもよい。
・ 第1及び第2実施形態において、第2移動金型37に余剰塗料収容部41を設けてもよい。
【0033】
さらに、前記各実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記塗料注入口は前記塗膜形成用キャビティの中央部に配設され、前記余剰塗料収容部は前記塗膜形成用キャビティの外側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の型内塗装成形方法。
【0034】
このようにすれば、前記挿入部の位置にかかわらず、前記塗料注入口から前記挿入部の周りを通って前記余剰塗料収容部へと向かう塗料の定常的な流れを形成することができる。
(2)前記余剰塗料収容部は前記塗料注入口を中心に等角度間隔に複数配設されていることを特徴とする請求項1に記載の型内塗装成形方法。
【0035】
このようにすれば、前記塗料注入口から前記挿入部の周りを通って前記余剰塗料収容部へと向かう塗料の定常的な流れをバランスよく形成することができる。
(3)前記余剰塗料収容部は前記挿入部と同じ数だけ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の型内塗装成形方法。
【0036】
このようにすれば、塗膜の形成時、前記挿入部よりも余剰塗料収容部側の領域では、前記挿入部によって2つに分流された前記塗料の流れが合流するため、前記領域においては特に前記光輝体の配向が乱れやすいが、特にこれらの領域の全てにおいて前記光輝体を前記塗料の流れに沿って規則正しく配向させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態のホイールキャップが取り付けられた自動車を示す斜視図。
【図2】(a)は第1実施形態のホイールキャップの斜視図、(b)は(a)の2b−2b線断面図。
【図3】第1実施形態の第1工程における第1金型の型締め状態を示す断面図。
【図4】第1実施形態の第1工程における基材の成形状態を示す断面図。
【図5】第1実施形態の第2工程における第2金型の型締め状態を示す断面図。
【図6】第1実施形態の第2工程における塗料の流れを示す平面図。
【図7】第1実施形態の第2工程における塗膜の形成状態を示す断面図。
【図8】第2実施形態の第2工程における第2金型の型締め状態を示す断面図。
【図9】第2実施形態の第2工程における塗膜の形成状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
20…型内塗装成形品(製品)としてのホイールキャップ、21…段差部としての開口部、22…基材、23…塗膜、23a…光輝体、32…固定金型、33…第1移動金型、34…基材成形用キャビティ、37…第2移動金型、38…塗膜形成用キャビティ、39…塗料注入口、40…挿入部としての凸部、41…余剰塗料収容部、53…磁力線、PL…第2金型のパーティングライン面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に塗膜を型内で形成する型内塗装成形方法であって、
前記基材を成形する第1工程と、前記基材の表面に塗膜を形成する第2工程とを備え、
前記第1工程は、固定金型と第1移動金型とで形成される基材成形用キャビティに合成樹脂を充填して段差部を有する基材を成形する工程であり、
前記第2工程は、前記固定金型と第2移動金型とを型締めすることにより、前記基材の表面と前記第2移動金型との間に塗膜形成用キャビティを形成し、該塗膜形成用キャビティに光輝体を含有する塗料を充填して塗膜を形成する工程であり、
前記固定金型及び第2移動金型の少なくとも一方には、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から前記塗料が過剰に注入された場合に塗膜形成用キャビティから流出する余剰となった前記塗料を収容するための余剰塗料収容部とが配設され、前記第2移動金型には、前記塗料注入口と前記余剰塗料収容部との間に位置して前記基材の段差部内に挿入される挿入部が配設されており、
前記第2工程において、前記塗膜形成用キャビティに過剰量の前記塗料を注入することによって、前記挿入部の周りを通って前記余剰塗料収容部へと向かう前記塗料の定常的な流れを形成し、余剰となった前記塗料を前記余剰塗料収容部内に収容した後、前記塗料を硬化させることを特徴とする型内塗装成形方法。
【請求項2】
基材の表面に塗膜を型内で形成する型内塗装成形方法であって、
前記基材を成形する第1工程と、前記基材の表面に塗膜を形成する第2工程とを備え、
前記第1工程は、固定金型と第1移動金型とで形成される基材成形用キャビティに合成樹脂を充填して段差部を有する基材を成形する工程であり、
前記第2工程は、前記固定金型と第2移動金型とを型締めすることにより、前記基材の表面と前記第2移動金型との間に塗膜形成用キャビティを形成し、該塗膜形成用キャビティに磁性を持つ光輝体を含有する塗料を充填して塗膜を形成する工程であり、
前記固定金型及び第2移動金型の少なくとも一方には、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を注入するための塗料注入口が配設され、前記第2移動金型には、前記基材の段差部内に挿入される挿入部が配設されており、
前記第2工程において、前記塗膜形成用キャビティに前記塗料を充填する際に、パーティングライン面に沿う方向に磁力線が発生するように前記塗膜形成用キャビティに磁場を形成した後、前記塗料を硬化させることを特徴とする型内塗装成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−95798(P2006−95798A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283344(P2004−283344)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】