説明

基材上に層システムを製造するための方法、並びに層システム

被覆工程(110)で、平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である金属層(14)が基材(12)上に施与され、それに引き続いてさらなる被覆工程(140)で所定の層厚を有するさらなる層(24)が施与される、誘電性基材(12)上に層システムを製造するための方法が企図されており、この際、さらなる層(24)がさらなる被覆工程(140)で同じ層厚で基材(12)上に施与された場合、さらなる層(24)の平面抵抗は<1Mオームであり、かつ金属層(14)とさらなる層(24)からの層システム(10)の平面抵抗は>10Mオームである。本発明はさらに、被覆工程(110)で、平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である金属層(14)が基材(12)上に施与され、それに引き続いてさらなる被覆工程(140)で所定の層厚を有するさらなる層(24)が施与されている層システムに関し、この際、さらなる層(24)がさらなる被覆工程(140)で同じ層厚で基材(12)上に施与された場合、さらなる層(24)の平面抵抗は<1Mオームであり、かつ金属層(14)とさらなる層(24)からの層システム(10)の平面抵抗は>10Mオームである。加えて、本発明による層システムを有するケースも企図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に層システムを製造するための方法、並びに基材上の層システム(それぞれ独立請求項の上位概念に相当する)に関する。本発明はさらに、前記層システムを有する電子装置用ケースに関する。
【0002】
誘電性基材のメタライゼーション、例えば真空メタライゼーションを用いるものは、すでに少し前から公知である。真空メタライゼーション法としては例えば、熱による蒸発又はカソード噴霧(スパッタリング)を使用することができる。
【0003】
遅くとも米国特許US 4,431,711以来、金属、例えばインジウム(In)又はスズ(Sn)は真空メタライゼーションで、まずアイランド成長で成長させることができることが、さらに公知である。この際に金属薄膜は、電気的に相互に接触していないアイランドから成る。前記層は、すでに光学的な金属特性、例えば金属光沢を有しているが、しかしながら伝導性ではなく、従って電気化学的な腐食メカニズムに影響されない状態であり得る。
【0004】
電気的に非伝導性の真空メタライゼーションされた層(Non-Conductive Vacuum Metallized、NCVM層)とは以下、真空被覆法によって製造されており、かつ好適には約400MHz〜約5GHzの周波数範囲で目立った反射を有さない金属又は金属合金から成る層と理解される。
【0005】
数年前から、NCVM層のための新たな適用が開かれている:それは例えば、無線コミュニケーション機能を有する携帯装置のためのケースであり、例えば携帯電話、電子部品収納容器(elektronische Organizer)、GPSナビゲーション装置、レーダー距離センサーのためのケースである。これらのケースは金属のような外観を有する一方で、内側に設置されたアンテナに対してほとんど障害をもたらさない周辺環境である。電気伝導性の金属層は、通常使用される周波数の約400MHz〜約5MHzで電波を少なくとも部分的に反射し、それによって望ましくない送信損失若しくは受信損失につながるのだろう。従ってこのようなケースは、伝導性金属層ではなく、NCVM層を備える。
【0006】
NCVM層の高周波特性はコストのかかる測定法でしか試験できないため、簡単な測定装置(例えば簡易マルチメーター)でも測定可能な平面直流抵抗、例えば20Mオーム/、又は1Gオーム/がしばしば基準とされる。厚さがdの層の平面抵抗ρは、異方性比抵抗ρの場合、
ρ=ρ/d
と定義される。
【0007】
層の平面抵抗は、四点法によって、又はファンデアポー法で測定することができる。以下、平面抵抗の単位は簡単な書き方で、「オーム」と記載する。
【0008】
金属製反射板用の、色が付いた層システムは、様々な方法で実現可能である:
・例えば窒化物、カルボニトリド、酸化物、及びこれらの化学量論未満の変異体を含む、部分吸収性の高屈折性層を有する反射板、
・誘電性層を有する反射板、並びに半透過性反射層。
【0009】
このような層システムは通常、電気伝導性である。
【0010】
さらに、一連の高屈折性及び低屈折性の誘電性層から成る、色の付いた干渉層システムは、公知である。この層システムの欠点は、生成する色調が層厚の変動に依存して非常に敏感なことである。
【0011】
JP 05 065 650 Aの文献から、金属粒子が埋め込まれた誘電性層の製造は公知であるが、これは複雑な工程構成という欠点を有するものである。
【0012】
金属に見える被覆、着色された被覆も、塗料システムによって施与することができる。これには幾つかの欠点がある。よって例えば、塗料欠陥の結果、最大60%という高い収率損失がしばしば問題となる。さらにたいていは複数の塗装工程(着色コート、クリアコート)が必要であり、このことが付加的なコストの原因となる。
【0013】
本発明の課題は、金属的な外観と、電波周波数範囲で透過性を有する、電気的に非伝導性の層システムを提供することである。
【0014】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0015】
請求項1に記載の、誘電性基材上に層システムを製造するための本発明による方法では、被覆工程で基材上に金属層を施与し、そしてそれに引き続き、さらなる被覆工程で所定の層厚を有するさらなる層を施与し、この際、金属層は平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である。さらなる層がさらなる被覆工程で同じ層厚で基材上に施与された場合、さらなる層の平面抵抗は<1Mオームとなること、及び金属層とさらなる層からの層システムの平面抵抗は>10Mオームであることが、企図されている。
【0016】
本願において誘電性基材とは、誘電性材料からの基材であり、この際に前記基材は、金属層が被覆工程で施与される誘電性部分層を有していてもよい。金属層とは、層の材料が金属又は金属の合金から成るものである。第一の及び/又は第二の被覆工程はそれぞれ、部分工程を有することができる。
【0017】
本発明によればさらなる層の施与によって、例えば着色効果を有する、電気的に非伝導性の層システムが生成される。その上さらなる層は、層システムが高周波透過性を失うことなく、機械的な保護を保証することができるか、又はこのために役立つ特定の表面特性を調整することができる。本発明は、電気的には非伝導性の金属層が金属アイランドからの構造を有するという知見から出発する。本発明によれば、このような層を層システムの基礎としてさらなる被覆工程に供し、この際にアイランドの急勾配の縁は、アイランド間の範囲を少なくとも部分的に被覆の影響からカバーする(abschatten)。その結果、事後的に施与された層は同様にアイランド構造を有し、同様に電気的に非伝導性であり、少なくとも400MHz〜5GHzの電波(RF)の範囲で透過性である。
【0018】
本発明に従って複数のさらなる層も金属層上に施与でき、この際に金属層とさらなる層からの層システムの平面抵抗が>10Mオームであることは、自明である。この際にさらなる層は、それぞれ同一の層厚で、相応する被覆工程で基材上に施与された場合、平面抵抗は<1Mオームとなる。
【0019】
金属層は好適にはNCVM層であり、よって真空法で施与される。金属層は、PVD法(例えば蒸発、スパッタリング、若しくはこの両方の組み合わせ)によって、又はPECVD法によって施与することができる。さらなる層は好適には、真空法で、とりわけ反応性PVD法又はPECVD法で施与する。真空法を用いる場合、従来技術で使用される着色コートであれば生じたであろう収率損失を回避できることが有利である。
【0020】
本方法によって、容易な方法で様々な厚さの層システムを製造できることが有利である。金属層とさらなる層とからの層システムの総厚は、例えばスズ層上のTixy層の場合、好適には100nm〜400nmである。金属層の総厚はこの際、30nm〜100nmの範囲、とりわけ50nm〜100nmの範囲である。さらなる層は好ましくは、厚さが20nm〜300nmである。
【0021】
本発明による方法によって有利には、基材と異なる色調を有する層システムを製造することができる。この際、色調の特性決定のために、L***表色系を考慮することができる。CIE委員会が発展させてきた標準系、精神物理学的な色刺激記述のためのL***表色系(Commision Internationale de Leclairage, Publication CIE No. 15.2, Colorimetry, 2nd., Central Bureau of the CIE, ウィーン 1986)は例えば、ASTM Designation 308-01(Standard Practice for Computing the Colors of Objects by Using the CIE System, November 2001)に記載されており、これは人間の知覚特性に基づくものである。
【0022】
本発明によれば、施与された層システムを有する基材の色調と、層システムを有さない基材の色調との間の色距離が好適には、
ΔE*=[L*s−L*2+(a*s−a*2+(b*s−b*21/2>2.0
であり、ここで層システムの色調は
=(L*s,a*s,b*s)であり、
基材の色調は
F=(L*,a*,b*)である。L*は明度に対する基準であり、a*は色調の赤−緑の値に対する基準、そしてb*は色調の黄−青の値に対する基準である。ここで色調は、さらなる層の層厚次第で変えることができる。
【0023】
請求項9に記載の本発明による層システムは、誘電性基材上に施与されており、被覆工程で施与された金属層を基材上に有し、そしてそれに引き続き、さらなる被覆工程で施与された、所定の層厚を有するさらなる層を有し、この際、金属層は平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である。この層システムは、さらなる層がさらなる被覆工程で同じ層厚で基材上に施与された場合、さらなる層の平面抵抗は<1Mオームとなること、及び金属層とさらなる層からの層システムの平面抵抗が>10Mオームであることによって特徴付けられる。
【0024】
層システムは非伝導性金属層と、さらなる非伝導性層との組み合わせにより、新規の、これまで達成できなかった、とりわけ色付きの装飾効果を有することができる。さらには、改善された光耐性を達成することができる。と言うのも、UV分解に関係し得る有機着色剤が存在しないからである。
【0025】
金属層は好適には、NCVM層である。さらなる層はまた好適には、真空法で施与されている。
【0026】
金属層はスズ、インジウム、鉛、ビスマス、ガリウム、アルミニウム、セリウム、クロム、又はイリジウムの群のうち少なくとも1つの元素から、又はスズ、インジウム、鉛、ビスマス、ガリウム、アルミニウム、セリウム、クロム、又はインジウムの群のうち少なくとも2つの元素からの合金から製造されていてよく、その結果、有利なことに、様々な適用領域に適合させた様々な特性を有する層を達成することができる。
【0027】
さらなる層のバルク材料の比抵抗は<1Mオームcmであるが、にも拘わらず層システムは平面抵抗が>10Mオームである。
【0028】
さらなる層のための材料として好ましくは、適切な金属の酸化物、窒化物、オキシナイトライド、炭化物、カーボナイトライド、又はホウ化物が企図されている。と言うのもこれらによって、色の付いた層が比較的容易に製造できるからである。
【0029】
さらなる層は有利には、チタン、ジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イリジウム、クロム、ケイ素、ニオブ、又はタンタルの群ののうち少なくとも1つの元素を、窒素、炭素、酸素、ホウ素の群のうち少なくとも1つの元素を含む反応性ガスで反応性スパッタリングすることによって施与されていてよい。
【0030】
層システムの平均反射率が、好適には400MHz〜5GHzの周波数範囲で<25%、層システムを有さない基材の相応する平均反射率と異なっていれば、相対的に反射性が低い層システムである。有利には、施与された層システムを有する基材の色調と、層システムを有さない基材の色調との間の色距離が、
ΔE*=[L*s−L*2+(a*s−a*2+(b*s−b*21/2>2.0
である。ここで層システムの色調は
=(L*s,a*s,b*s)であり、
基材の色調は
F=(L*,a*,b*)である。
【0031】
本発明を、色の付いた反射層用の層システムの製造に適用することができる:基材と非閉鎖性金属層とを有する基礎反射体上には、反応性スパッタリングされたTixy(ただし1<x<1.5、かつ0.5<y<2)からの層が施与される。Tixy層の具体的な化学量論に依存して、光学特性(屈折率と吸収率)が調整され、この光学特性が、Tixy層の層厚と、その下にある金属層の光学特性と一緒に、層システムの反射色を決定づける。層システムは金属的な外観を有することができる。と言うのも、金属層は非常に薄いにも拘わらず、充分に光が反射されるからである。
【0032】
層システムのさらなる利点は、すでに述べた本発明による方法の利点に相応する。
【0033】
請求項17に記載の本発明によるケースは、誘電性材料、好ましくはポリカーボネートを有する誘電性基材として役立つジャケットを有し、また基材上に施与された本発明による層システムを有する。
【0034】
平面抵抗が大きいことが原因で、ケースは400MHz〜5GHzの間で高周波放射に対して透過性であるが、にも拘わらず金属的な、若しくは色の付いた外観を有する。その上、基材材料がプラスチック、例えばポリカーボネートからできていれば、ケースは軽い。
【0035】
本発明による方法及び層システムのさらなる態様、利点、及び特徴は、以下の実施例と図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】例示的な層システムの概略図である。
【図2】a*−b*平面上にL*、a*、b*色空間を投影させた、Tixy層の層厚により調整可能な色のグラフによる記述である。
【図3】本発明による方法の典型的なフロー図である。
【0037】
図1には、誘電性基材12上に施与されている層システム10が概略的に表されている。基材12は好ましくは、誘電性材料、とりわけプラスチックから製造されている。特に好ましくは、基材12はポリカーボネートから成る。基材12は、ジャケット、例えば携帯電話、ラップトップ、又は他の電気装置若しくは電子装置のためのジャケット、或いはケースの一部であってよい。もちろんケースは、固定式装置が企図されていてもよい。
【0038】
基材12上に直接施与された層14は、金属元素又は金属合金を含有するアイランド16を有する。アイランド16は、非閉鎖性金属層を基材12上に形成する。アイランド16の間には、谷22が形成される。金属層は、平面抵抗が>10Mオームである。
【0039】
前述の金属層14上には、さらなる層24が施与され、好ましくは同様に真空法によって施与される。さらなる層24は同様にアイランド20を有し、その結果、さらなる層24にも非閉鎖性層が形成される。よって、電気的な伝導プロセスにつながっている道筋は存在しない。従ってさらなる層24は同様に、電気的に非伝導性であり、400MHz〜5GHzの範囲の高周波放射に対して透過性である。平均反射率は好ましくは、50%超である。
【0040】
さらなる層24が基材14上に施与されていたとすれば、その平面抵抗は<1Mオームであろう。
【0041】
さらなる層24の材料のバルク比抵抗は、1Mオーム未満である。さらなる層24は金属若しくは金属合金と、反応性ガスとから製造される。典型的に使用される金属はチタンであり、この際、反応性ガスとして窒素が使用され、好ましくは化学量論未満の窒化チタン層が形成される。しかしながらまた、酸化物、窒化物、又はオキシナイトライド、炭化物、又はホウ化物を形成可能な他の金属を使用することもできる。
【0042】
金属層14と、さらなる層24とからの層システムは好ましくは、透明な耐引掻性の塗料によって保護される。この塗料は、図1には示されていない。
【0043】
施与された層システム10を有する基材12、及び層システムを有さない基材12は、色距離
ΔE*=[L*s−L*2+(a*s−a*2+(b*s−b*21/2
を有することができ、この値は好ましくは2より大きい。ここで、層システムの色調は、
=(L*s,a*s,b*s)であり、
基材の色調は
F=(L*,a*,b*)である。
【0044】
本方法はまた、基材12の、及び金属層14を有する基材の前処理工程及び/又は洗浄工程を含むことができる。このような洗浄方法及び/又は前処理方法は、プラズマ前処理であってよい。ここで基材12はプラズマによって洗浄され、そして後続の金属層14のより良好な接着のために、活性化される。
【0045】
層システム製造方法の実施例:
以下、スズからの金属層14と、窒化チタンからのさらなる層24(Sn/Tixy、ただし1<x<1.5、及び0.5<y<2)の製造方法を記載する。基材を被覆装置、例えばLeyboldのAluMet 900Hの真空チャンバに入れる。モリブデンコイルを、スズペレットで充填する。被覆カートに取り付けられた試料ホルダに、基材を設置する。被覆カートを、真空チャンバへと移動させる。真空チャンバは、5×10-3Paに脱気する。
【0046】
試料ホルダを回転させ、この際、加熱コイルによってスズペレットを蒸発させるため、電流を基材面に導く。この際に基材面は、スズペレットを有する加熱コイルに対向して設置されている。蒸発されたスズ粒子が基材表面上で凝縮し、スズ層になる。スズ層の厚さは典型的には、35nmである。施与された層は、光学密度が約1.5の金属光沢を有する。これは、約3%の残留透過率に相当する。さらに金属層14は、可視波長範囲で60〜70%の反射率と、10Mオーム超の平面抵抗を有する。被覆工程が終わったら、真空チャンバを換気し、金属層14を有する基材を取り出す。
【0047】
次の方法工程では、金属層14を有する基材12を被覆装置、例えばLeyboldの反応性スパッタリング装置Topazに取り付ける。真空チャンバ中の工程圧力は、2×10-3Paである。110sccmのアルゴン、及び200sccmの窒素というスパッタリング雰囲気で、チタンターゲットを15kWの出力でスパッタリングする。この際、窒化反応を促進するため、同時に500Wのプラズマ40kHzを照射する。
【0048】
【表1】

【0049】
表1が示しているのは、スパッタリング時間(秒)と生成する層厚(nm)を基準にとった、ガラス基材上にある非伝導性スズ層上のTixy層の色座標L*、a*、b*である。色座標L*は明度を表し、a*は赤−緑の変位を、そしてb*は黄−青の変位を表す。
【0050】
右のコラムには、測定された平面抵抗Rがそれぞれ、Mオームで記載されている。非伝導性金属層上で厚さが20〜110nmのTixy層は、抵抗が>10Mオームである。
【0051】
表1の最後の行には比較のために、同一の工程パラメータ、及び180秒の工程時間でガラス基材上に施与された、厚さ約80nmのTixy層の値が示されており、ここで平面抵抗は0.03Mオームと測定された。
【0052】
測定の際に色調L***は、CIE標準照度で、好適にはD65、及び2゜又は10゜の観察者で測定した。スペクトル反射率の測定のためには例えば、X-Rite Inc.社(4300 44th Street SE, Grand Rapids, MI, 49512 USA)の色測定装置SP60型を使用することができる。
【0053】
図2が例示的に示しているのは、L***色空間をa**平面に、スズ層上の一連の厚さとして投影させた、Tixy層の厚さに依存した色である。x軸にa*をとり、y軸にb*をとった。層厚はそれぞれ、測定点に記載されている。20nm〜110nmという様々な層厚に、様々な色が配置されていることがわかる。
【0054】
図3は、電気的に非伝導性の層システムを、本発明に従って製造する方法のフロー図である。
【0055】
方法工程100では、基材12を真空チャンバに入れ、そして真空チャンバを排気し、典型的には圧力を5×10-3Paにする。
【0056】
方法工程110では、基材を被覆し、そして非閉鎖性金属層14を基材上に堆積させる。
【0057】
方法工程120では、真空チャンバを換気し、そして金属層14を有する基材12をここから取り出す。方法工程130では、基材12を第二の真空チャンバに取り付け、そして前記チャンバを脱気し、典型的には圧力を2×10-3Paにする。
【0058】
方法工程140では、さらなる層24を施与するための被覆工程を行う。
【0059】
出願人の試験において典型的に達成される、Tixy層のためのさらなる層24の厚さは、20nm〜300nmである。さらなる層24の所望の厚さが達成されれば、金属層14とさらなる層24とを有する基材12を、方法工程150で装置から取り出す。
【0060】
本方法が2つの異なる真空装置のための方法であったとしても、本方法はまた真空を中断させることなく、そのために適切な真空装置で実施することができ、この際、中間での基材の取り付けと取り外しは省くことができる。
【0061】
本方法は、ここには明示的には記載されていないさらなる前工程、洗浄工程、及び/又は方法工程を含むことができる。
【符号の説明】
【0062】
10 層システム、 12 基材、 14 施与された金属層、 16 金属アイランド、 20 アイランド、 22 谷、 24 さらなる層、 100 基材の取り付け、真空装置の脱気、 110 金属層による被覆、 120 換気、及び金属層を有する基材の取り外し、 130 さらなる層のための被覆装置への取り付け、 140 さらなる層を有する被覆工程の実施、 150 換気、及び層システムを有する基材の取り外し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆工程(110)で、平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である金属層(14)が基材(12)上に施与され、それに引き続いてさらなる被覆工程(140)で所定の層厚を有するさらなる層(24)が施与される、誘電性基材(12)上に層システムを製造するための方法において、
さらなる層(24)がさらなる被覆工程(140)で同じ層厚で基材(12)上に施与された場合、さらなる層(24)の平面抵抗が<1Mオームであり、かつ金属層(14)とさらなる層(24)からの層システム(10)の平面抵抗が>10Mオームである、前記製造方法。
【請求項2】
金属層(14)が>30nm〜<100nmの層厚で、かつ/又はさらなる層(24)が>20nm〜<300nmの層厚で施与されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属層(14)が、スズ、インジウム、鉛、ビスマス、アルミニウム、セリウム、クロム、ガリウム、又はイリジウムの群のうち少なくとも1つの元素から製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属層(14)が、スズ、インジウム、鉛、ビスマス、アルミニウム、セリウム、クロム、ガリウム、又はイリジウムの群のうち少なくとも2つの元素からの合金から製造されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層が、真空法、とりわけPVD法若しくはPECVD法によって施与され、かつ/又はさらなる層(24)が、真空法、とりわけ反応性PVD法若しくはPECVD法によって施与されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらなる層(24)が、チタン、ジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イリジウム、クロムの群のうち少なくとも1つの元素を、窒素、炭素、酸素、ホウ素、ケイ素、ニオブ、タンタルの群のうち少なくとも1つの元素を含む反応性ガスで反応性スパッタリングすることにより施与されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
層システム(10)の平均反射率が、好適には400MHz〜5GHzの周波数範囲で、層システム(10)を有さない基材(12)の相応する平均反射率と<25%異なることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
施与された層システム(10)を有する基材(12)の色調と、層システムを有さない基材(12)の色調との間の色距離が
ΔE*=[L*s−L*2+(a*s−a*2+(b*s−b*21/2>2.0
であり、
ここで、層システムの色調が
=(L*s,a*s,b*s)であり、
基材(12)の色調が
F=(L*,a*,b*)である
ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
被覆工程(110)で、平面抵抗が>10Mオームであり、かつ平均反射率が>50%である金属層(14)が基材(12)上に施与され、それに引き続いてさらなる被覆工程(140)で所定の層厚を有するさらなる層(24)が施与されている誘電性基材(12)上の層システムにおいて、
さらなる層(24)がさらなる被覆工程(140)で同じ層厚で基材(12)上に施与された場合、さらなる層(24)の平面抵抗が<1Mオームであり、かつ金属層(14)とさらなる層(24)からの層システム(10)の平面抵抗が>10Mオームである、前記層システム。
【請求項10】
金属層(14)の層厚が、>30nm〜100nmであり、かつ/又はさらなる層(24)の層厚が>20nm〜300nmであることを特徴とする、請求項9に記載の層システム。
【請求項11】
金属層(14)が、スズ、インジウム、鉛、ビスマス、ガリウム、アルミニウム、セリウム、クロム、又はイリジウムの群のうち少なくとも1つの元素から成ることを特徴とする、請求項9又は10に記載の層システム。
【請求項12】
金属層(14)が、スズ、インジウム、鉛、ビスマス、ガリウム、アルミニウム、セリウム、クロム、又はイリジウムの群のうち少なくとも2つの元素からの合金から成ることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載の層システム。
【請求項13】
前記金属層が、真空法、とりわけPVD法若しくはPECVD法によって施与され、かつ/又はさらなる層(24)が、真空法、とりわけ反応性PVD法若しくはPECVD法によって施与されていることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載の層システム。
【請求項14】
さらなる層(24)が、チタン、ジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イリジウム、クロムの群のうち少なくとも1つの元素を、窒素、炭素、酸素、ホウ素、ケイ素、ニオブ、タンタルの群のうち少なくとも1つの元素を含む反応性ガスで反応性スパッタリングすることにより施与されていることを特徴とする、請求項13に記載の層システム。
【請求項15】
層システム(10)の平均反射率が、好適には400MHz〜5GHzの周波数範囲で、層システム(10)を有さない基材(12)の相応する平均反射率と<25%異なることを特徴とする、請求項9から14までのいずれか1項に記載の層システム。
【請求項16】
施与された層システム(10)を有する基材(12)の色調と、層システムを有さない基材(12)の色調との間の色距離が
ΔE*=[L*s−L*2+(a*s−a*2+(b*s−b*21/2>2.0
であり、
この際、層システムの色調が
=(L*s,a*s,b*s)であり、
基材(12)の色調が
F=(L*,a*,b*)である
ことを特徴とする、請求項9から15までのいずれか1項に記載の層システム。
【請求項17】
誘電性基材として役立つジャケットと、請求項9から16までのいずれか1項に記載の層システムとを有する、ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−529134(P2011−529134A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519083(P2011−519083)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005368
【国際公開番号】WO2010/009889
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(502239900)ライボルト オプティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Leybold Optics GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 88, D−63755 Alzenau, Germany
【Fターム(参考)】